従来より、マイクロ・コンピューターによって全体の動作を制御され、給紙装置によって供給された記録紙上に記録紙の幅方向(なお、本明細書においては、当該記録紙の幅方向を、「主走査方向」と適宜称することとする。)で移動するインク・ヘッドを用い、インク・ジェット方式により所定の印刷を行うようにしたインク・ジェット・プリンタが知られている。
こうしたインク・ジェット・プリンタにおいては、インクをインク・ジェット方式により吐出する際の吐出口たるインク・ジェット・ノズルがインク・ヘッドに配設されている。そして、インク・ジェット・プリンタにおいては、このインク・ジェット・ノズルの良好な動作状態を維持して印刷結果の品質を保つため、印刷を行わないときにインク・ジェット・ノズルからインクを吐出する動作、所謂、フラッシングを行うようになされている。
具体的には、図1(a)には、従来のインク・ジェット・プリンタの一例を示す概略構成説明図が示されている。
このインク・ジェット・プリンタ200は、インク・ジェット・ノズル204を備え主走査方向に沿って移動自在に配設されたインク・ヘッド202と、インク・ヘッド202により記録紙300上に印刷が行われる印刷領域外に位置するフラッシング領域に配設されたフラッシング機構206とを有して構成されている。
ここで、印刷領域とフラッシング領域とはいずれも、インク・ヘッド202が主走査方向に移動する移動経路上に位置しており、印刷領域においては、給紙装置によって記録紙300が供給され、当該記録紙300上にインク・ジェット・ノズル204からインクが吐出されて印刷が行われる。一方、フラッシング領域においては、インク・ヘッド202が印刷を行わないときに主走査方向に沿って移動して印刷領域から外れて位置するようになり(図1(b)に示す状態参照)、インク・ジェット・ノズル204から印刷目的ではなくインクが吐出される。
こうしたフラッシング領域に配設されたフラッシング機構206は、スポンジなどによって構成される多孔質部材208を備えており、当該多孔質部材208は、インク・ヘッド202のインク・ジェット・ノズル204が配設されているインクの吐出側202aと所定の間隔W(図1(b)参照)を有するようにして配設されている。
そして、印刷を行わないときにインク・ヘッド202がフラッシング領域に移動してインクを吐出すると、インク・ジェット・ノズル204内におけるインクのメニスカス状態が整い、インク・ジェット・ノズル204内のインクの詰まりが防止されるなどして、インク・ジェット・ノズル204の良好な動作状態が維持される。この際、インク・ジェット・ノズル204から吐出されたインクは、フラッシング機構206の多孔質部材208に落下し吸着されて捕集される(図1(b)参照)。
一方、上記したような多孔質部材208を備えたフラッシング機構206の他に、図2に示すような多くの突出板212を備えたフラッシング機構210も提案されている。
このフラッシング機構210は、開口部214aから延長され屈曲部214bで折り返す長い経路216を形成する筐体214と、筐体214の内周側に配設された多数の突出板212と、経路216の終端216aに配設されたファン218と、ファン218の前段に配設されたフィルター220とを有して構成されている。
そして、フラッシング機構210は、上記したフラッシング機構206(図1(a)(b)参照)に代わってフラッシング領域に配設される。フラッシング領域において印刷を行わないときにインク・ヘッド202から吐出されたインクは、ファン218の駆動により筐体214の経路216内に生起された気流(図2における矢印参照)に乗って、筐体214の開口部214aから経路216の終端216aへと向かって運ばれる。この際、インクの飛滴やミスト化したインクなどは、経路216の途中に位置する多数の突出板212に当接して捕集される。また、気流に乗ったインクが経路216の終端216a近傍にまで至ったとしても、フィルター220によって捕集される。
ところで、従来のインク・ジェット・プリンタ200においては、多孔質部材208を備えたフラッシング機構206(図1(a)(b)参照)を用いてフラッシングによるインクを捕集するにしても、インク・ヘッド202のインクの吐出側202aと所定の間隔Wを有して配設された多孔質部材208に単にインクが落下するだけなので、落下したインクが多孔質部材208上で跳ね返って飛散してしまったり、あるいは、インク・ヘッド202の移動によって発生する風圧などでインクが巻き上げられてしまう恐れがあった。
このため、従来のインク・ジェット・プリンタ200においては、多孔質部材208を備えたフラッシング機構206により、フラッシングによってインク・ヘッド202から吐出されたインクを確実に捕集することができないという問題点があった。
また、近年、インク・ジェット・プリンタにおいて記録紙に印刷を行うためのインクとして紫外線で硬化するUVインクが使用されるようになってきた。こうした照射される光によって固化あるいは増粘する性質を有するインクを使用する場合には、インク・ジェット・ノズル204から記録紙300上に吐出されたUVインクを硬化させるために紫外線が照射されるものである。
このため、UVインクを硬化させるために照射された紫外線が、インク・ジェット・プリンタ200のフラッシング機構206の多孔質部材208に照射されてしまう恐れがある。
そして、フラッシング機構206の多孔質部材208に紫外線が照射されてしまうと、フラッシングによりインク・ジェット・ノズル204から吐出され多孔質部材208に落下して吸着されていたUVインクが、多孔質部材208において硬化してしまい、多孔質部材208のインクの捕集能力が低下し、以降のインクの吸着を妨げることになってしまう。
その結果、従来のインク・ジェット・プリンタ200においては、UVインクを使用する場合においても、多孔質部材208を備えたフラッシング機構206により、フラッシングによってインク・ヘッド202から吐出されたUVインクを確実に捕集することができないという問題点があった。
さらに、多孔質部材208を備えたフラッシング機構206によって、フラッシングによりインク・ヘッド202から吐出されたインクが確実に捕集されないと、捕集されずに飛散したインクが、インク・ジェット・プリンタ200内の他の構成に付着したり、あるいは、インク・ジェット・プリンタ200の外部にまで拡散してしまうことになる。その結果、インク・ジェット・プリンタ200においては、フラッシングによるインクで、記録紙300が汚れてしまったり、インク・ジェット・プリンタ200の内部の構成あるいはその外部の設置場所などが汚染されてしまい、印刷品質の低下という問題点が招来される。
一方、従来のインク・ジェット・プリンタ200において、突出板212を備えたフラッシング機構210(図2参照)によりフラッシングによるインクを捕集するにしても、筐体214内を気流に乗って運ばれるインクを確実に捕集するためには、経路216の全長を長くしなければならず、フラッシング機構全体が大型化するという問題点があった。
また、筐体214内を気流に乗って運ばれるインクを確実に捕集するためには、多くの突出板212を交互に配設しなければならず、フラッシングのための構成が非常に複雑になってしまうという問題点があった。
また、従来のインク・ジェット・プリンタ200においては、気流に乗って経路216の終端216a近傍にまで至ったインクをフィルター220によって捕集するようになされているが、当該フィルター220は、後段に配設されたファン218による気流の発生を妨げないように、空気を通すエアーフィルターである。このため、ファン218によって生起された気流によってミスト化したインクがフィルター220を通り抜ける恐れがあり、フィルター220の後段に配設されたファン218にインクが付着してダメージを受け易く、ファン218のメンテナンスや交換が必要になるという問題点があった。
なお、本願出願人が特許出願時に知っている先行技術は、上記において説明したようなものであって文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術情報はない。
以下、添付の図面に基づいて、本発明によるインク・ジェット・プリンタの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
図3には、本発明によるインク・ジェット・プリンタの実施の形態の一例を示す概略構成斜視説明図が示されており、このインク・ジェット・プリンタ100は、基台部材112に支持され主走査方向に延長して配設された固定系のベース部材114と、ベース部材114の左右両端でベース部材114に直交して配設された側方部材116L,116Rと、側方部材116R側に配設された側方ユニット118と、左右2つの側方部材116L,116Rを連結する中央壁120と、中央壁120の壁面に主走査方向に延長して配設されたガイド・レール122と、中央壁120の壁面に平行して主走査方向に移動自在に配設されたワイヤー124と、ワイヤー124に固定的に配設されるとともにガイド・レール122に摺動自在に装着されたホルダー126と、ベース部材114上の記録紙300と対向するようにしてホルダー126に配設されたインク・ヘッド128ならびに紫外線ランプ130と、側方ユニット118内に配設されたフラッシング機構10とを有して構成されている。
なお、こうしたインク・ジェット・プリンタ100の全体の動作は、マイクロ・コンピューター(図示せず)によって制御されている。
また、インク・ジェット・プリンタ100においても、媒体としては、記録紙300を用いるものとする。本発明によるインク・ジェット・プリンタ100においては、給紙装置(図示せず)によって記録紙300がベース部材114上に供給される(図3ならびに図4において破線で示す記録紙300参照)。この記録紙300は、幅方向たる主走査方向において所定の長さを有するとともに、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙の長手方向に搬送されるようになされている。なお、主走査方向と直交する方向(即ち、記録紙の搬送方向かつ記録紙の長手方向)を、以下、「副走査方向」と称する。
ここで、インク・ヘッド128は、それぞれ同様な構成を備える複数のインク・ヘッド・ユニット132により構成されており、詳細な図示は省略するが、複数のインク・ヘッド・ユニット132の下面132aには、インクを記録紙300に対して吐出する際の吐出口としての複数個のインク・ジェット・ノズル134(図6参照)がそれぞれ配設されている。
そして、インク・ヘッド128の複数のインク・ヘッド・ユニット132にはそれぞれ、側方ユニット118内に配設されたそれぞれ異なる色の液体状のインクを貯留した複数のインク・カートリッジ(図示せず)からインク・チューブ(図示せず)を介して、それぞれ異なる色のインクが供給されるようになされている。
ここで、図示しない複数のインク・カートリッジのそれぞれに収容されている液体状のインクは紫外線で硬化するUVインクであり、複数のインク・ヘッド・ユニット132はそれぞれ、図示しないインク・チューブによって搬送された異なる色のUVインクをインク・ジェット方式によりそれぞれ記録紙300上に吐出するものである。
こうした複数のインク・ヘッド・ユニット132により構成されるインク・ヘッド128は、複数のインク・ヘッド・ユニット132が主走査方向に沿って一列に配置され、インク・ヘッド・ユニット132のインク・ジェット・ノズル134がベース部材114上の記録紙300に対向可能なようにして、ホルダー126に固定的に配設されている。
紫外線ランプ130は、記録紙300上に吐出されたUVインクに対して紫外線を照射して硬化させる光照射手段である。インク・ジェット方式によりインク・ヘッド・ユニット132のインク・ジェット・ノズル134から記録紙300へ向けてUVインクが吐出されると、当該吐出されたUVインクの飛滴が記録紙300上に落下することになるが、当該記録紙300上に落下したUVインクの飛滴に対して紫外線ランプ130から紫外線が照射されて、当該UVインクの飛滴が記録紙300上で硬化することになり、こうして記録紙300上に印刷が行われることになる。
この紫外線ランプ130は、インク・ヘッド128の左方側に隣接してホルダー126に固定的に配設されている。即ち、主走査方向に沿って一列に配置される複数のインク・ヘッド・ユニット132のうち主走査方向における最も左方側に配置されたインク・ヘッド・ユニット132の左方側に隣接するようにして、紫外線ランプ130はインク・ヘッド128とともに主走査方向に沿って一列に並んでホルダー126に固定的に配設されている。
ここで、ワイヤー124に固定的に配設されたホルダー126は、ワイヤー124がモーターなどの駆動装置(図示せず)によって巻き取られて主走査方向に移動すると、このワイヤー124の移動に伴って中央壁120の壁面に沿って主走査方向に移動する。
このため、ホルダー126に固定的に配設されたインク・ヘッド128ならびに紫外線ランプ130も、ホルダー126の移動に伴って記録紙300上を主走査方向に移動する。即ち、側方部材116R側から側方部材116L側へと主走査方向における行き方向で移動するとともに、側方部材116L側から側方部材116R側へと主走査方向における帰り方向で移動する。
そして、上記したようにしてホルダー126は主走査方向に移動するものであるが、所定のタイミングで、ホルダー126は帰り方向で移動してプリント・エリアE1から外れて側方ユニット118内のフラッシング・エリアE2に留まる。この際、ホルダー126に配設されたインク・ヘッド128が、側方ユニット118内のフラッシング・エリアE2に位置するように制御されている(図4に示す状態参照)。
このフラッシング・エリアE2は、プリント・エリアE1と同様に、ホルダー126の移動に伴ってインク・ヘッド128と紫外線ランプ130とが一体的に主走査方向に沿って移動する移動経路上に位置している。より詳細には、プリント・エリアE1の右方側の端部E1−Rの右方側に隣接するようにしてフラッシング・エリアE2は位置している。
そして、フラッシング・エリアE2に留まるホルダー126によりインク・ヘッド128が待機することになる側方ユニット118内には、インク・ヘッド128のフラッシングのためのフラッシング機構10が配設されている。
図5には、図4に示すA矢視図に対応し図3のインク・ジェット・プリンタのフラッシング機構を中心に示した説明図が示されており、図6には、図5に示すフラッシング機構のB−B線断面図に対応する説明図が示されている。
このフラッシング機構10は、全体が略箱状体の形成され開口部12hを備えた本体部12と、本体部12の開口部12h近傍に配設されたガイド部材14と、本体部12の一方の側の端部に配設された送風手段たるファン16と、本体部12の他方の側の端部に配設された捕集手段たるフィルター18とを有して構成されているものである。
より詳細には、本体部12は、全体が略箱状体に形成されており、略矩形形状の底面部12aと、底面部12aの縁部から立設された正面部12b、背面部12c、左側面部12dならびに右側面部12eと、正面部12b、背面部12c、左側面部12dならびに右側面部12eの上方側の端部に位置し底面部12aと対向する上面部12fとを有し、これら底面部12a、正面部12b、背面部12c、左側面部12d、右側面部12eならびに上面部12fの6つの側壁により中空の内部空間12gが形成されるものである。
また、本体部12の正面部12bには孔12bbが穿設されており、この孔12bbにファン16が取り付け可能となされている。一方、本体部12の背面部12cにも孔12ccが穿設されている。この本体部12において互いに対向した位置に形成された孔12bbと孔12ccとにより内部空間12gにおける空気の流れが確保される。
そして、左側面部12dが側方部材116Lと平行して対向し、右側面部12eが側方部材116Rと平行して対向するようにして、本体部12は側方ユニット118内のフラッシング・エリアE2に配設されている(図4参照)。従って、本体部12の正面部12bが副走査方向の前方側に位置し、背面部12cが副走査方向の後方側に位置し、上面部12fが高さ方向の上方側に位置し、底面部12aが高さ方向の下方側に位置し、本体部12の中空の内部空間12gが副走査方向に沿って延長されるようになる。
なお、本体部12の高さ方向に沿った配設位置は、上面部12fがフラッシング・エリアE2に位置するインク・ヘッド128の複数のインク・ヘッド・ユニット132の下面132aと間隔W(図6参照)を有するようにして設定されている。こうしてホルダー126の移動に伴って記録紙300上を主走査方向に移動するインク・ヘッド128ならびに紫外線ランプ130が、フラッシング機構10と接触することがないようにして各種寸法設定がなされている。
また、開口部12hが上面部12fにおいて開口するの位置は、フラッシング・エリアE2に位置するインク・ヘッド128の複数のインク・ヘッド・ユニット132のインクの吐出側、即ち、複数のインク・ヘッド・ユニット132の下面132aにそれぞれ配設されているインク・ジェット・ノズル134の直下の領域となるようにして寸法設定されている(図6参照)。そして、開口部12hの大きさは、インク・ヘッド128の主走査方向に沿って一列に配置された複数のインク・ヘッド・ユニット132に対応して寸法設定されている。
ガイド部材14は、全体が略板状体であって、平滑な表面を備える係止部14aと、係止部14aの一方の側の端部14bから延設され平滑な表面を備える延設部14cとを有するものである。この係止部14aと延設部14cとのなす角α(図6参照)は90°以上に設定されており、例えば、およそ135°とすることができる。
そして、ガイド部材14は、係止部14aが本体部12の開口部12hと対向するとともに延設部14cが本体部12の底面部12aと平行して対向するようにして、係止部14aの他方の側の端部14dを開口部12h近傍の上面部12fに固定的に取り付けて本体部12に配設されている。つまり、中空の内部空間12gが延長されている方向と一致する副走査方向に沿って、ガイド部材14の一端である端部14dは、本体部12におけるファン16と開口部12hとの間の開口部12h近傍に係止され、ガイド部材14の他端である端部14eは、本体部12の内部空間12gにおける開口部12hとフィルター18との間に配置されている。
ここで、互いに対向するガイド部材14の延設部14cと本体部12の底面部12aとの間の距離たる長さL4(図6参照)は、本体部12の上面部12fと底面部12aとの間の距離たる本体部12の高さ方向に沿った全長L3に比べて短くなり、本体部12の中空の内部空間12gの一部にガイド部材14によって区切られた狭い空間12kが形成される。つまり、ガイド部材14によって、副走査方向に沿って延長されている中空の内部空間12gが副走査方向における前方側から後方側に向かって、即ち、本体部12の正面部12bから背面部12cに向かって本体部12の内径が狭められている。
なお、図4乃至図6に示されている各種寸法は、例えば、本体部12の互いに対向する左側面部12dと右側面部12eとの間の距離たる本体部12の主走査方向に沿った全長L1をおよそ60mmとし、互いに対向する正面部12bと背面部12cとの間の距離たる本体部12の副走査方向に沿った全長L2をおよそ250mmとし、互いに対向する上面部12fと底面部12aとの間の距離たる本体部12の高さ方向に沿った全長L3はおよそ60mmとすることができる。
この実施の形態においては、本体部12の主走査方向に沿った全長、即ち、フラッシング機構10の主走査方向に沿った全長L1は、インク・ヘッド128の主走査方向に沿った全長と略一致するか、あるいは、短くなるようにして寸法設定されており、フラッシング機構10が主走査方向においてインク・ヘッド128の直下の領域からはみ出すことはない。
また、本体部12の上面部12fとフラッシング・エリアE2に位置するインク・ヘッド128の複数のインク・ヘッド・ユニット132の下面132aとの間の距離たる間隔Wはおよそ3mmであり、本体部12の開口部12hの主走査方向に沿った全長L7をおよそ25mmとし、開口部12hの副走査方向に沿った全長L8をおよそ40mmとすることができる。
また、ガイド部材14の主走査方向に沿った全長L5をおよそ40mmとし、ガイド部材14の副走査方向に沿った全長L6をおよそ70mmとすることができ、ガイド部材14の延設部14cの端部14eが本体部12の背面部12cに当接することがなく、左方側の端部14Lが本体部12の左側面部12dに当接せず、右方側の端部14Rが本体部12の右側面部12eに当接しないようにして寸法設定されている(図5参照)。また、ガイド部材14の延設部14cと本体部12の底面部12aとの間の距離たる長さL4は、およそ20mm〜30mmとすることができる。
ファン16は、例えば、60mm×25mm程度のサイズで3200rpm、発生負圧1mmH2Oのものを用いることができ、本体部12の正面部12bの外周側に配設されている。そして、ファン16の風圧は、ファン16が配設されている正面部12bに穿設された孔12bbを介して、本体部12の内部空間12gに達するものである。
フィルター18は、例えば、スポンジなどの多孔質材料によって形成されており、本体部12の背面部12cに配設されている。
そして、正面部12bの外周側に配設されたファン16と、背面部12cに配設され本体部12のフィルター18とは、互いに対向する正面部12bと背面部12cと間の距離が本体部12の副走査方向に沿った全長L2を有しているので、本体部12の一方の側の端部と他方の側の端部とに離れて位置するものである。
以上の構成において、このインク・ジェット・プリンタ100を用いて記録紙300上に印刷を行う場合を説明する。
ワイヤー124の巻き取りによりワイヤー124が移動すると、このワイヤー124の移動に伴って、ホルダー126に搭載されたインク・ヘッド128と紫外線ランプ130とが、給紙装置(図示せず)によってベース部材114上に供給された記録紙300上を主走査方向における行き方向および帰り方向に一体的に往復移動する。
この際、インク・ヘッド128はインク・チューブによって搬送されたUVインクを複数のインク・ヘッド・ユニット132のインク・ジェット・ノズル134のそれぞれから記録紙300へ向けて吐出する。そして、インク・ヘッド128から吐出されたUVインクの飛滴は記録紙300上の所定の位置に落下し、記録紙300上に落下したUVインクの飛滴は紫外線ランプ130からの紫外線の照射により硬化されて印刷が行われる。
そして、所定のタイミングで、インク・ヘッド128と紫外線ランプ130とが載置されたホルダー126は帰り方向で移動して、プリント・エリアE1を外れて側方ユニット118内へと移動し、フラッシング・エリアE2に位置するようになる(図4ならびに図6参照)。このフラッシング・エリアE2において、インク・ヘッド128のインクの吐出側にはフラッシング機構10が位置している。
なお、こうしてインク・ヘッド128がフラッシング・エリアE2に移動しフラッシング機構10の上方側に位置するようになる所定のタイミングは、図示しないマイクロ・コンピューターによって制御されており、例えば、インク・ヘッド128が主走査方向に沿って一往復する毎という所定の周期に設定されている。この際、フラッシング・エリアE2はプリント・エリアE1の端部E1−Rの右方側に隣接するようにして位置しているので(図4参照)、印刷の途中でインク・ヘッド128が一往復する毎にフラッシング・エリアE2に移動する距離は短く時間のロスは少ない。
そして、フラッシング・エリアE2に位置するインク・ヘッド128の複数のインク・ヘッド・ユニット132の下面132aにそれぞれ配設されているインク・ジェット・ノズル134の直下に、フラッシング機構10の本体部12の開口部12hが位置した状態で(図6に示す状態参照)、インク・ジェット・ノズル134のそれぞれからフラッシングのために所定量のインクが吐出される。
この際、上方側にインク・ヘッド128が位置しているフラッシング機構10においては、モーターなどの駆動装置(図示せず)の駆動力によりファン16が駆動し、その風圧が正面部12bの孔12bbを介して内部空間12gに達する。このファン16の風圧により本体部12の内部空間12gには、正面部12bから背面部12cに向かう副走査方向に沿った気流が生起される。この内部空間12gに生起された気流は、ガイド部材14によって形成された狭い空間12kにおいて流速が速くなり負圧を生じる。
なお、図6においては、本体部12の内部空間12gに生起された気流を矢印で表している。
こうして本体部12の内部空間12gにおいては、正面部12bから背面部12cに向かう気流とともに内部空間12gの一部分である空間12kにおいてベンチュリー効果により負圧が生じているので、開口部12hと対向するインク・ジェット・ノズル134から吐出されたインクは、開口部12hから容易に内部空間12gへと引き込まれ、開口部12hと対向して位置するガイド部材14の係止部14aと当該係止部14aから延設された延設部14cとによって誘導されて、副走査方向の前方側から後方側へ向かって気流に乗って運ばれる。
この際、フラッシングにより吐出されたインクの量などによっては、インクの自重でガイド部材14の係止部14aに落下するインクが少量あるとしても、ガイド部材14によってキャッチされ延設部14cの端部14eから気流に乗って運ばれる。
そして、本体部12の内部空間12gにおいて気流に乗って運ばれたインクは、本体部12の副走査方向における最も後方側に位置する背面部12c側に到達すると、当該背面部12cに配設されたフィルター18によって捕集される。
こうして印刷の途中ではあるがインク・ヘッド128が主走査方向に沿って一往復した後などのインク・ヘッド128が印刷を行わないときに、インク・ヘッド128は主走査方向に沿って移動しプリント・エリアE1から外れてフラッシング・エリアE2に位置するようになって、インク・ジェット・ノズル134から印刷目的ではなくインクを吐出する。このフラッシング動作により、インク・ジェット・ノズル134内におけるインクのメニスカス状態が整い、インク・ジェット・ノズル134内のインクの詰まりが防止されるなどして回復が図られ、インク・ジェット・ノズル134の良好な動作状態を維持することができ、各種色彩のインクの混色が防止されるなどして、インク・ジェット・プリンタ100において高品質の印刷結果を得ることができる。
上記したようにして、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100においては、ガイド部材14が配設された本体部12を有するフラッシング機構10を配設するようにしたため、ベンチュリー効果によって本体部12の内部空間12gの空間12kにおいて負圧が生じ、フラッシングによりインク・ジェット・ノズル134から吐出されたインクを捕集することができる。
より詳細には、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100においては、フラッシング動作によってインク・ジェット・ノズル134から吐出されたインクが、フラッシング機構10のファン16の風圧によって生起された正面部12bから背面部12cに向かう気流と空間12kの負圧とにより、開口部12hから容易に内部空間12gへと引き込まれ、ガイド部材14によって誘導され気流に乗って運ばれて、フィルター18によって捕集される。
つまり、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100は、フラッシング機構10において気流を利用してフラッシングによるインクを捕集をしており、上記「背景技術」の項に記載した従来のインク・ジェット・プリンタ200のフラッシング機構206(図1(a)(b)参照)のように、単に多孔質部材208にインクが落下する構成ではない。
このため、本発明によれば、単に重力に従って落下するインクが多孔質部材208上で跳ね返って飛散してしまったり、あるいは、インク・ヘッド202の移動によって発生する風圧などでインクが巻き上げられることがない。従って、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100は、フラッシング機構10の気流とガイド部材14による誘導とによって、フラッシングによるインクをフィルター18にまで導き確実に捕集することができる。
また、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100においては、フラッシング機構10は主走査方向においてインク・ヘッド128の直下の領域からはみ出すことがないようにして寸法設定されている。また、インクを捕集するフィルター18は、本体部12の内部に配設され、しかも背面部12cに配設されているので、ホルダー126の移動に伴ってインク・ヘッド128と紫外線ランプ130とが一体的に移動する移動経路上から外れた副走査方向の後方側に位置している。
このため、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100においては、上記したようにしてUVインクが用いられているが、主走査方向に沿って移動するインク・ヘッド128がフラッシング・エリアE2に静止するまでに、インク・ヘッド128とともにホルダー126に配設された紫外線ランプ130が点灯していても、紫外線ランプ130から照射された紫外線がフラッシング機構10、特に、インクを捕集するフィルター18に照射されることがない。従って、本発明によれば、スポンジなどの多孔質材料によって形成されたフィルター18に吸収されて捕集されているUVインクがフィルター18において硬化することがなく、フィルター18のインクの捕集能力は維持され、UVインクを使用する場合においても、フラッシングによるインクを確実に捕集することができる。
そして、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100は、UVインクの使用の有無に関わらず、フラッシングによる各種インクをフラッシング機構10により確実に捕集することができるので、捕集されずに飛散したインクが、インク・ジェット・プリンタ100内の他の構成に付着したり、あるいは、インク・ジェット・プリンタ100の外部にまで放出することが防止でき、記録紙300の汚れや、インク・ジェット・プリンタ100の内部の構成あるいはその外部の設置場所などの汚染を回避して、印刷品質を維持することができる。
また、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100は、フラッシング機構10の両端に離れてファン16とフィルター18とが配設され、ファン16の風圧によって生起された正面部12bから背面部12cに向かう気流と空間12kの負圧とで、フラッシングによるインクを確実に捕集することができる。このため、本発明は、上記「背景技術」の項に記載した従来のインク・ジェット・プリンタ200のフラッシング機構210(図2参照)のインクを確実に捕集するための長い経路216や多数の突出板212を必要とせずに、効率良くインクを捕集でき、フラッシング機構10は非常に簡単な構成でしかもコンパクトである。
さらに、本発明によるインク・ジェット・プリンタ100は、フラッシング機構10の両端に離れてファン16とフィルター18とが配設されているので、正面部12bから背面部12cに向かう気流に乗って運ばれるインクが、正面部12bに配設されたファン16に付着することはなく、ファン16のダメージがない。また、フラッシング機構10の両端に離れてファン16とフィルター18とが別々に配設されているので、メンテナンスや交換などの作業性に優れた構成である。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(9)に説明するように変形してもよい。
(1)上記した実施の形態においては、フラッシング機構10の本体部12は、略直方体形状の箱状体であるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、全体が略円柱状体で中空の内部空間を備える本体部としてもよく、フラッシング機構10の配設位置や全体のサイズなどに応じて適宜形状を変化させてもよい。
なお、本体部12の主走査方向に沿った全長、即ち、フラッシング機構10の主走査方向に沿った全長L1は、インク・ヘッド128の主走査方向に沿った全長と略一致するか、または、インク・ヘッド128の主走査方向に沿った全長に比べて短くなるようにして、あるいは、長くなるようにして寸法設定可能なものであり、各種インク・ヘッドに応じて適宜変更してもよい。
また、本体部12の内部空間12gに生起される気流や負圧の状態を調整するために、開口部12hや孔12bb,12cc以外に外部と連通する孔を穿設するようにしたり、あるいは、孔12bb,12ccの形状を変更したり、孔12ccをなくすようにしてもよい。
さらに、フラッシング機構10の本体部12を上記した実施の形態のようにして、単一の箱状体として形成すれば、インク・ジェット・プリンタ100へのフラッシング機構10の組み付けが容易になるというメリットがある。しかしながら、フラッシング機構10の配置スペースが小さい場合などには、フラッシング機構10の本体部12に代わって、インク・ジェット・プリンタ100の固定系によって所定の方向に沿って延長された中空の内部空間を形成するようにし、適当な位置にガイド部材14、ファン16やフィルター18を配設しても、上記したのと同様にしてインクを捕集することができる。
(2)上記した実施の形態において、さらに、使用するインクの種類やフラッシングの際に吐出するインクの総量などによっては、フラッシング機構10によって捕集されるインクを外部に排出するための排出孔や排出管を本体部12に配設するようにしてもよい。
また、インク・ジェット・ノズル134と対向する開口部12hの外周側に介在部材を取り付けて、あるいは、開口部12h近傍の上面部12fの形状を変形させて、インク・ジェット・ノズル134から吐出されたインクを一層確実に開口部12hから内部空間12gに引き込むようにしてもよい。
(3)上記した実施の形態においては、ガイド部材14の係止部14aと延設部14cとのなす角αはおよそ135°であるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、ガイド部材14の係止部14aと延設部14cとのなす角αが直角になるようにしてもよいし、あるいは、およそ90°〜135°の間の任意の角度としたりするなど、その角度は任意に変更可能なものである。
従って、係止部14aと延設部14cとのなす角αが180°である場合、即ち、ガイド部材14が係止部14aのみによって構成され本体部12の底面部12aと平行して対向する部分がないようにしてもよい。要は、ガイド部材の全体が略板状に延設して形成され、一端が本体部12におけるファン16と開口部12hとの間の開口部12hの近傍に係止されるとともに、他端が本体部12の内部空間12gにおける開口部12hとフィルター18との間に配置されるようにして、ガイド部材によって本体部12の内部空間12gに生起される気流の流速を速め負圧を生じさせる空間が形成されるようにすればよい。
また、上記した実施の形態においては、ガイド部材14の左方側の端部14Lが本体部12の左側面部12dに当接せず、右方側の端部14Rが本体部12の右側面部12eに当接しないようにしたが(図5参照)、これに限られるものではないことは勿論であり、ガイド部材14の端部14Lと端部14Rのいずれか一方が本体部12の左側面部12dあるいは右側面部12eに当接するようにしたり、ガイド部材14の端部14Lと端部14Rとがそれぞれ本体部12の左側面部12dあるいは右側面部12eに当接するようにしてもよい。
例えば、図7(a)(b)に示すように、ガイド部材14の係止部14aと延設部14cとのなす角α(図7(b)参照)を直角にし、ガイド部材14の端部14Lを左側面部12dに当接させ、端部14Rを右側面部12eに当接させて、ガイド部材14と本体部12とによって形成される狭い空間12kにおいて生起される負圧がおよそ1mmH2Oとなるようにすればよく、要はファン16によって生起される気流の流速を速めベンチュリー効果を奏する空間が形成可能な範囲でガイド部材14の形状や寸法を変更可能なものである。
(4)上記した実施の形態においては、本体部12の上面部12fの開口部12hはガイド部材14の係止部14aと対向するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、ガイド部材14の形状や寸法の変更に応じて、あるいは、フラッシングにより吐出されるインクの種類などに応じて、開口部12hとガイド部材14との位置関係は変更可能なものである。
(5)上記した実施の形態においては、フラッシング機構10のフィルター18はスポンジなどの多孔質材料によって形成されるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、インクを捕集可能な各種材料により形成されたフィルターを配設するようにしてもよい。また、フィルター18に代わって、気流に乗って運ばれてくるインクを回収可能な構成を備えた回収装置を本体部12の背面部12cに配設してもよい。
(6)上記した実施の形態においては、側方部材116R側の側方ユニット118内にフラッシング機構10を配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、フラッシング・エリアE2をプリント・エリアE1の左方側の端部E1−L(図4参照)の左方側に隣接するようにしてフラッシング機構10を配設してもよい。また、フラッシング・エリアE2をプリント・エリアE1の端部E1−Rと端部E1−Lとに隣接するようにして2つのフラッシング機構10を配設するようにしてもよい。
さらに、本体部12の右側面部12eが副走査方向の前方側に位置するようにしてフラッシング機構10を配設し、本体部12の中空の内部空間12gが主走査方向に沿って延長されるようにしたり、また、全体が所定の角度で斜めに傾いた状態でフラッシング機構10を配設するようにしてもよい。
(7)上記した実施の形態においては、インク・ヘッド128や紫外線ランプ130などを有するインク・ジェット・プリンタ100にフラッシング機構10を配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、インク・ジェット・プリンタにおけるインク・ヘッドなどの印刷の機能を有する構成や光照射手段、あるいは、カッティングの機能を有する構成やインク・ヘッドのメンテナンスを行う構成のそれぞれの具体的な構成やその総数などは適宜変更可能なものであり、そうした構成に応じてフラッシング機構10の配設位置などを変更すればよい。
(8)上記した実施の形態においては、記録紙300上に紫外線を照射する紫外線ランプ130とUVインクとを用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、紫外線とは異なる放射線の可視光や電子線あるいはその他の光を照射する光照射手段を用い、記録紙上に照射される光によって固化あるいは増粘する性質を有する各種インクを用いるようにしてもよい。
(9)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(8)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。