JP4540213B2 - 錫系酸化物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性フィラーとして有用な錫系酸化物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な分野で導電性フィラーが使用されている。例えば、静電気による各種プラスチック製品への埃の付着やプラスチック製容器内に収容された可燃性粉体の粉塵爆発を防止する目的で、その原料プラスチックに粉末状あるいは繊維状等の導電性フィラーを添加して各種プラスチック製品に導電性を付与して帯電防止能を持たせることが行われている。また、乾式プリンターやコピー機等の電子写真分野で使用される黒色トナーやカラートナーにおいても、これらトナー粒子自体の体積抵抗率や摩擦帯電量等の表面物性を制御するために、導電性フィラーが使用されている。更にトナー以外にも電子写真の感光ドラムや帯電部材に用いられる部材の体積抵抗率を制御するために、同様な導電性フィラーが必要となっている。
【0003】
このように、導電性フィラーは各種工業分野で使用され、その用途も拡大・多様化しているが、各用途毎に求められる導電性の程度(体積抵抗率の値)が異なったり、また、導電性以外にも様々な性能が要求されるようになってきている。その要求の一つとして薄色化が挙げられる。例えば、ICやLSI等の製造において使用する電子部品搬送用トレイや、小麦粉などの可燃性粉体用包装袋においては、内容物を識別するために透明性が要求されるため、このような用途に使用する導電性フィラーとしては薄色系であることが望まれている。また、トナー用においても、近年カラー電子写真向けの用途が急増しつつあることから、トナーの着色の自由度を高めるために薄色系の導電性フィラーが求められている。
【0004】
従来汎用的に使用されている導電性フィラーとしては、カーボンブラックや金属粉末があるが、これらを用いると、自由な着色ができず、上記のような要求に応えることは困難である。特に金属粉末を用いた場合には、空気中の水分によって徐々に酸化されるためにその導電性が経時的に低下するという問題があり、トナー用の導電性フィラーとして用いると画質が不均一になることがある。
【0005】
このような薄色化が可能な導電性物質としては二酸化錫等の酸化物系フィラーが考えられるが、一般に酸化錫の導電性は低くその制御可能な幅も小さいため、アンチモンやフッ素、リン、ヒ素、ビスマス、セレン、テルル、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンなどの体積抵抗率を低下させる(導電性を向上させる)作用を有するドーパント(以下、導電性向上用ドーパントともいう。)を添加して導電性を高る必要がある。ところが、これら導電性向上用ドーパントを添加した場合には着色が起こり上記薄色化を達成することができなくなることがあるばかりでなく、上記導電性向上用ドーパントは一般に有害であるものが多いため、その用途が制限されたり、製造時、使用時、又は廃棄時に注意が必要となる。
【0006】
例えば、前記した電子写真装置やトナーの分野においては、使用者が導電性フィラーと直接触れたり、紙などの印刷物に付着したものを乳幼児が誤って口に入れたりすることがあるため、トナーに添加される電荷制御剤として使用されているクロム含有化合物や、感光ドラムの導電性皮膜として使用されている亜鉛系酸化物やアンチモン含有の錫系酸化物などを無害化合物へ転換することが検討され始めている。また、廃棄に関しても、米国カリフォルニア州の廃棄物規制法{該規制法では、廃棄物の重量当たりクロム(3価)は2500ppm以下、亜鉛は5000ppm以下、アンチモンは500ppm以下、バリウムは10000ppm以下、ヒ素は500ppm以下にしなければならないように決められている。}に代表されるように、有害物質を含むものの廃棄に対する規制が強化される傾向にある。
【0007】
この様な理由から、薄色系の導電性フィラーとなり得る二酸化錫系の導電性フィラーにおいて、導電性向上用ドーパントを全く含有しないか、あるいはニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、リンなどの安全性に問題のない導電性向上ドーパントを添加して所望の体積抵抗率に制御することが提案されている。
【0008】
例えば、特公昭62−1572号公報、特公昭62−1573号公報、特公昭62−1574号公報、及び特開平2−3221号公報には、導電性向上用ドーパントを含有しない二酸化錫粉末においてその体積抵抗率が104〜107Ωcmであることが記載されている。また、特開平6−345429号公報には、第二錫塩を含有する溶液を中和処理して沈殿物を析出させた後に、沈殿物を不活性又は弱還元性雰囲気中で焼成することにより、2.0×108Paと非常に高いプレス圧で圧粉法により測定したときの体積抵抗率が10-1〜104Ωcmの二酸化錫粉末が得られる旨が記載されている。
【0009】
しかしながら、これら二酸化錫粉末では、体積抵抗率の低いものについては前記特開平6−345429号公報中にも説明されているように二酸化錫粉末の表面が局部的に金属錫に還元されるために、得られる二酸化錫粉末は金属錫を含むために着色したり、金属錫の酸化によって経時的に体積抵抗率(導電性)が大きく上昇して、各種プラスチックやトナー添加用途では体積抵抗率の制御が困難になることが予想される。
【0010】
また、一般に静電気の発生を極力防止するため、摩擦帯電量を制御する機能を持たせた導電性フィラーも望まれており、用途によってはそのために導電性フィラーの摩擦帯電量がゼロ又はプラスの値とすることが必要であるが、二酸化錫や上記の安全性に問題のない導電性向上用ドーパントを添加した錫系酸化物は、その摩擦帯電量がマイナスの値をとるものしか知られておらず(例えば、粉体と工業、第28巻、4号、47ページ、1996年)、このような用途に使用することはできない。
【0011】
例えば、電子部品搬送用トレイや可燃性粉体用包装袋などの用途では、可塑剤やシリカなどの他の添加剤を添加しているためと思われるが、該トレイ同士あるいは該包装袋どうし、更には他の物質との摩擦によって発生する摩擦帯電量がマイナスの値をとることが多いため、導電性フィラーとしてはゼロからプラスの値をとるものを添加して、全体としてなるべく摩擦帯電量をプラスマイナスゼロに近づけることが望ましく、また、所謂クリーナーレスシステムの電子写真装置(例えば、特開平11−212337号、特開2000−162849号など)に用いるトナーに添加するための導電性フィラーにおいても特定の方式を採用した場合にはトナーの摩擦帯電量を制御するために添加する導電性フィラー自体の摩擦帯電量をゼロからプラスの値に制御することが望ましいが、上記の安全性に問題のない導電性向上用ドーパントを添加した錫系酸化や二酸化錫は、その摩擦帯電量がマイナスの値であるためこのような用途に使用することはできない。
【0012】
なお、クリーナーレスシステムとは、トナー像を転写材に転写後、感光ドラム上の転写残トナーが付着した場所が帯電部と相対したときに、帯電部の帯電部材(磁性粒子など)によって転写残トナーを掻き取り、帯電部にいったん収納した後、再び感光ドラム上に戻し、その後トナーを有する現像部内に回収し、再利用するシステムであり、廃トナーを出さないので環境保護の観点から好ましいシステムである。該クリーナーレスシステムでは、帯電部にいったん収納された転写残トナーが帯電部材との摺擦によって必要以上に帯電する現象、即ちチャージアップを防止するために、トナーに中程度(102〜109Ωcm)の体積抵抗率を有する微粉末(以下、中抵抗微粉末ともいう。)を含有させ、電荷を逃がす機能を持たせる必要があるが、感光ドラム側をマイナスに帯電させてプラスに帯電させたトナーで現像する方式(該方式は、感光ドラムの寿命が長いため廃棄物の量が低減できるという特徴がある。)を採用した場合には、中抵抗微粉末をトナーに添加しても、トナーがプラスに帯電できるように中抵抗微粉末もゼロからプラスに帯電する性質を有している必要がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このように、二酸化錫を主成分とする錫系酸化物は、工業的に有用な導電性フィラーとなり得ると考えられるが、安全性が高く、薄色系で、体積抵抗率が中程度から高い値を有し、該体積抵抗率が経時変化せず、且つ鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量がゼロからプラスの値を有するものはこれまで知られていない。本発明はこのような錫系酸化物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討を行った。その結果、アンチモン等の有害な元素を含まない二酸化錫においても、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類の元素を添加した場合には、体積抵抗率を低くすることが出来、しかも鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦体電量をゼロ以上(ゼロ又はプラス値)とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、第一の本発明は、酸素欠陥を有していてもよい二酸化錫結晶を含み、実質的にアンチモン、フッ素、ヒ素、ビスマス、セレン、テルル、バナジウム、及びクロムを含まず、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む錫系酸化物であって、該錫系酸化物の粉末を5.6×10Paのプレス圧で圧粉法により測定したときの体積抵抗率が10〜10Ωcmであり、且つ鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量がゼロ又はプラスの値を有することを特徴とする錫系酸化物である。
【0016】
上記本発明の錫系酸化物は、実質的にアンチモン、フッ素、ヒ素、ビスマス、セレン、テルル、バナジウム、及びクロムといった有害な元素を含まないので安全性が高い。また該錫系酸化物は薄色であり、体積抵抗率が中程度から高い値を示し、且つ該体積抵抗率が経時変化しないという性質があり、更には鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量がゼロからプラスの値を有するため、各種プラスチック製品の埃付着防止や可燃性粉体の粉塵爆発防止のための導電性フィラー、あるいは電子写真のトナー用の導電性フィラーなど、様々な分野で使用可能である。
【0017】
また上記本発明の錫系酸化物の中でも、粉末状であって、粒度分布におけるD90の粒径が0.1〜30μmであるものは、粒子同士の凝集が少なく良好な流動性を有して取り扱い易いという特徴がある上、各種プラスチックのフィルムに添加したときにフィルム表面に凹凸が出にくいため、好適である。更に特にトナーに添加するための中抵抗微粉末の用途では、該微粉末はトナーよりもなるべく小さい粒径を有する方がトナー像のエッジがきれいになり、転写及び定着後の印刷物の画質は良くなる性質があるが、本発明の錫系酸化物の中で粒度分布におけるD90の粒径が0.1〜30μmであるものは、トナーよりも大きな粒径の粒子の割合が非常に少ないため好適である。
【0018】
また、第二の本発明は、溶解性酸化錫前駆体、並びにアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む有機溶媒系溶液又は水系溶液と、塩基又は酸とを混合し、前記有機溶媒系又は水系溶液の一部又は全部を中和して不溶性の酸化錫前駆体を析出させ、析出した不溶性酸化錫前駆体を加熱処理することを特徴とする前記本発明の錫系酸化物の製造方法である。
【0019】
これら本発明の製造方法によれば、本発明の錫系酸化物を効率よく得ることができる。
【0020】
なお、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類の元素(以下、帯電量制御ドーパントともいう。)を含む錫系酸化物の鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量が何故ゼロ以上(ゼロ又はプラス)の値を示すかについて、その理由は明らかでないが、二酸化錫と帯電量制御ドーパントとの間の複雑な相互作用によるものと思われる。
【0021】
一般に、帯電量制御ドーパントの酸化物のような塩基性酸化物においては、空気中の水分と接触することによって形成された表面水酸基が異種物質と摩擦されたときにイオンに分離して異種物質にOHが移動し、塩基性酸化物自体はプラスに帯電することが起こり得るが、本発明の錫系酸化物においては、帯電量制御ドーパントの酸化物のほとんどは錫系酸化物中に固溶した状態で存在すること、及び後述する比較例に示されるように塩基性酸化物粉末と二酸化錫粉末を単純に混合した混合粉末における鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量はマイナスの値となることから、本発明の錫系酸化物の鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量がゼロ以上となるのは、上記の様な単純な機構によるものではないと思われる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の錫系酸化物は、酸素欠陥を有していてもよい二酸化錫結晶を含む。該二酸化錫結晶は、単結晶であってもよいが、導電性の観点から、非晶質相を含む多結晶であるのが好適である。本発明の錫系酸化物が二酸化錫結晶を含むことは、X線回折分析を行なったときに二酸化錫の結晶構造である正方晶二酸化錫の回折ピーク(JCPDSカード21−1250に記載されている)が現れることで確認することができる。
【0023】
なお、二酸化錫結晶においては酸素欠陥が存在することが多く、錫と酸素の組成は化学量論比(即ち、1:2)から若干ずれることが多い。このため、二酸化錫は、一般にSnO2-X(0≦X<1)として記述されることが多い。本発明の錫系酸化物に含まれる二酸化錫結晶においてもこのような酸素欠陥を有するものが含まれる。通常、二酸化錫結晶中に酸素欠陥が存在すると、X線回折分析の回折ピーク位置が上記JCPDSカード21−1250記載の正方晶二酸化錫の回折ピーク位置から若干ずれるが、一般的な二酸化錫結晶においては、このときの回折ピーク位置のずれは、2θの値で通常±2°以内である。また、該二酸化錫結晶には、帯電量制御ドーパントや後述する安全性に問題のないドーパントが固溶していてもよいし、非晶質相にこれらドーパントが固溶していてもよい。
【0024】
本発明の錫系酸化物に含まれる上記二酸化錫結晶の含有量は特に限定されないが、二酸化錫結晶があまりにも少な過ぎると、体積抵抗率が高くなったり、着色したりするため、非晶質相を含めた全二酸化錫として80重量%以上、特に90重量%以上であるのが好適である。
【0025】
本発明の錫系酸化物においては、帯電量制御ドーパントや安全性に問題のないドーパントの種類や含有量などによっては、二酸化錫結晶以外の結晶相が生成することもあるが、通常は僅かであるため、本発明の錫系酸化物の各種特性には悪い影響を与えない。但し、作製条件などによって金属錫が析出した場合には、薄色系で且つ体積抵抗率の経時変化がないという効果が得られにくいので、金属錫相を含まないのが好ましい。
【0026】
本発明の錫系酸化物は、二酸化錫の体積抵抗率を低下させる作用を有するドーパント(導電性向上用ドーパント)の中で、アンチモン、フッ素、ヒ素、ビスマス、セレン、テルル、バナジウム、及びクロム(以下、有害性ドーパントともいう。)を実質的に含まないことを特徴とする。ここで、実質的に含まないとは、錫系酸化物全体の重量基準で該有害性ドーパントの総量が1000ppm以下であることを意味する。該有害性ドーパントの含有量が1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下であることにより、前記した安全性や環境保護に関する各種問題を回避することが可能となる。なお、有害性ドーパントは、作為的に添加しなくとも原料に不純物として含まれていることがあるため、このような不純物量についても注意する必要がある。
【0027】
しかしながら、導電性向上ドーパントの中でも比較的安全性が高いニオブ、タンタル、モリブデン、及びタングステンなどの導電性向上用ドーパント(以下、安全性ドーパントともいう。)は、本発明の錫系酸化物中に含まれてもよい。むしろ該安全性ドーパントを含有する方が、用途に応じて体積抵抗率を容易に制御できるため、好ましい。該安全性ドーパントは複数種類含有されていても構わない。該安全性ドーパントの含有量は、体積抵抗率を制御する効果及び摩擦帯電量制御の容易性の観点から、錫酸化物全体の重量に対する安全性ドーパント(元素換算重量)して0.1〜20wt%、さらに0.5〜10wt%、特に1〜5wt%であるのが好適である。
【0028】
錫系酸化物中の有害性ドーパント及び安全性ドーパントの含有量は、誘導結合高周波プラズマ放電を利用する発光分光分析(ICP発光分光分析)装置などの測定機器を使用する化学分析法、或いは蛍光X線分析や電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)法などの物理分析法などにより測定することができる。また特に安全性ドーパントにおいては、原料物質中の錫と安全性ドーパントの仕込み比から計算される添加量と、上記方法で測定された含有量が大きく違わないので、該添加量をもってして安全性ドーパントの含有量とすることもできる。
【0029】
上記安全性ドーパントは錫系酸化物中ではほとんどが酸化物として錫系酸化物中に固溶した状態あるいは非晶質の状態で存在するため、例えばX線回折分析を行った場合、安全性ドーパントの酸化物の回折ピークが検出されないことが多い。但し該ドーパントの含有量が多い場合や、焼成温度が高く、焼成時間が長い場合など、作製条件によっては安全性ドーパントが結晶性の酸化物などの状態で僅かながら分相、析出し、X線回折分析を行うと、安全性ドーパントの酸化物などの回折ピークが低い強度で検出されることもある。
【0030】
本発明の錫系酸化物には、鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量をゼロからプラスの値に制御するために、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類の元素(帯電量制御ドーパント)を含有する必要がある。該帯電量制御ドーパントの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどのアルカリ金属元素、又はマグネシム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属元素、更にはスカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウムなどの希土類元素が挙げられる。これら帯電量制御ドーパントは複数種類含有されていても構わない。但し、本発明の錫系酸化物の用途を考慮すると、ベリリウムなどの有害性のある元素、あるいはフランシウムやアクチノイド系元素などの放射性元素は実質的に含有しない方が好ましい。このような理由から、帯電量制御ドーパントとしては、フランシウム、ベリリウム、及びアクチノイド系元素以外のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類の元素、さらにその中でも放射性を有しないものが好適であり、入手の容易さ、効果の高さ、安全性等の観点から、リチウム、マグネシウム、又はカルシウムを使用するのが最も好適である。
【0031】
本発明の錫系酸化物における帯電量制御ドーパントの含有量は、少な過ぎると鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量をゼロからプラスの値に制御する効果が得られず、多過ぎると効果は飽和する上、二酸化錫以外の結晶相が分相・析出して体積抵抗率に影響を与えたり、摩擦帯電量の制御が困難となる場合があるので、錫系酸化物全体の重量に対する該帯電量制御ドーパントの重量(元素換算)が0.1〜15wt%、さらに0.5〜10wt%、特に1〜8wt%となる量であるのが好適である。
【0032】
本発明の錫系酸化物には、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、上記安全性ドーパント及び帯電量制御ドーパント以外の元素が含まれていてもよい。このような元素としては、ケイ素、アルミニウム、炭素、塩素、窒素、水素などが挙げられる。これら元素のうち、炭素、塩素、水素、窒素等は製造時に不純物として混入することが多いが、ケイ素、アルミニウム等は本発明の錫系酸化物の機械的強度等を高めるため、あるいは該錫系酸化物の粉末特性や表面特性など(例えば、粉末の流動性、ゼータ電位など)を制御するために積極的に添加してもよい。これら元素の含有量には特に制限はないが、あまりにも含有量が増えると体積抵抗率が上昇し過ぎたり、摩擦帯電量の制御が困難となる場合があるので、15wt%以下であるのが好適である。より好ましい含有量は10wt%以下であり、最も好ましい含有量は5wt%以下である。安全性ドーパント及び帯電量制御ドーパント以外の元素の中でも、ケイ素、アルミニウムなど酸化物を形成しやすい元素は、錫系酸化物中では酸化物として固溶した状態や、分相して結晶相や非晶質相の状態で存在することが多い。
【0033】
本発明の錫系酸化物は、該錫系酸化物の粉末について5.6×107Paのプレス圧の圧粉法で測定したときの体積抵抗率(R)が、102〜109Ωcmである必要がある。このような体積抵抗率を有することにより導電性フィラーとして使用することが可能となる。ここで、圧粉法とは粉末をプレスしてペレットを成型し、該ペレットにプレス圧を印加した状態でその抵抗値(r)を4端子法又は2端子法などで測定する方法である。このとき、体積抵抗率(R)は次の式によって求めることができる。
【0034】
R=(r×s)/t
但し、上記式においてrはペレットの抵抗(Ω)を、sはペレットの断面積(cm2)を、tはペレットの厚み(cm)を表す。
【0035】
一般に圧粉法により測定される体積抵抗率は、ペレット成形時及び抵抗測定時に加えるプレス圧の影響を受け、プレス圧が高いほど低い値になる傾向がある。本発明における体積抵抗率はプレス圧5.6×107Paで測定したときの値を意味する。
【0036】
なお、前記したような摩擦帯電量がゼロ又はプラス値であるという特徴が要求される用途に好適に使用できるという観点から、より好適な体積抵抗率は、103〜108Ωcmである。
【0037】
本発明の錫系酸化物の摩擦帯電量(単位はμC/g)は、鉄粉を摩擦相手物質として測定したときにゼロ又はプラスの値をとる点に大きな特徴がある。ここで、摩擦帯電とは異種の物質が接触した場合、一方から他方に電荷が移動するため、これらを分離したときに双方に異なる符号の電荷が等しい量発生する現象であり、摩擦帯電量とはこのときに発生した電荷の符号と量を表した物性値のことである(例えば、粉体と工業、第28巻、第4号、47ページ、1996年)。この摩擦帯電量の測定は種々の方法があるが、通常、被測定物質と摩擦相手物質を予め混合、摺擦したサンプルを所定重量(m)とり、金網を張った金属円筒からなるファラデーケージ内に入れ、他端から圧縮ガスを吹き付けて被測定物質と摩擦相手物質を分離し、金網の中に残った摩擦相手物質に発生した電荷の符号と量(q)を測定し、逆符号にして単位重量当たりの値、即ち−q/mで算出される値を被測定物質の摩擦帯電量とする(例えば、電子写真学会誌、第30巻、第2号、168ページ、1991年)。このとき被測定物質及び摩擦相手物質は粉末状とし、被測定物質の粒径を摩擦相手物質の粒径よりも小さくしておくことによって、被測定物質の方を金網内から効率よく分離、除去できる。電子写真の分野では、乾式プリンターやコピー機に実際に搭載されている通称キャリアと呼ばれる鉄粉あるいはフェライトなどの酸化物粉末を摩擦相手物質として評価を行うことが多い。したがって本発明における摩擦帯電量は、鉄粉を摩擦相手物質として測定された値とする。
【0038】
本発明の錫系酸化物においては、帯電防止能の高さ及び前記したトナー用に適した摩擦帯電量であるという観点から、鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量は0〜+100μC/g、特に0〜+50μC/gであるのが好ましい。
【0039】
本発明の錫系酸化物の摩擦帯電量は帯電量制御ドーパント量、又は帯電量制御ドーパント量及び安全性ドーパント量によって制御することができる。ただし、その関係は単純な比例関係ではないので、摩擦帯電量を精度よく制御するためには、予め系ごとに帯電量制御ドーパントや安全性ドーパントの含有量と摩擦帯電量との関係を調べておくのが好適である。なお、本発明の錫系酸化物においては、摩擦帯電量と体積抵抗率とを同時に制御できることから帯電量制御ドーパントと安全性ドーパントとの両方を含有するのが好適である。
【0040】
本発明の錫系酸化物の形状は特に限定されないが、各種プラスチック製品の帯電防止剤あるいはトナー用中抵抗微粉末などとして使用する場合の取り扱い易さの観点から、粉末状であるのが好適である。
【0041】
特に、フィルム用プラスチックに添加する場合には、粗大粒が存在すると該フィルム表面の凹凸が大きくなって光沢が損なわれたり、成形時に穴が空いたりすることがあり、また逆にあまりにも粒度が小さくなると取扱いが困難になったり、粒子同士が凝集して該フィルムへの分散性が低下したりするので、粒度分布におけるD90の粒径が0.1〜30μmである粉末であるのが好適である。またトナー用中抵抗微粉末においても、高画質の印刷物を得るという目的のため、トナー粒子よりも小さい粒子が多く含まれる上記D90の粒径が0.1〜30μmである粉末が好適である。
【0042】
ここで、D90の粒径とは、粒度分布測定結果に基づいて、横軸に粒子径、縦軸に体積換算の通過分積算をとって積算分布曲線を描いたときに、通過分積算の値が90%に相当する粒子径を意味する(例えば、化学と工業、第73巻、第12号、576〜587ページ、1999年)。なお、粒度分布測定方法としては、粉末をイオン交換水やアルコールなどの分散溶媒に分散させて市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定計などを用いて測定することができる。D90の粒径は、0.3〜25μm、特に0.5〜20μmであるのがより好適である。
【0043】
また粉末状の本発明の錫系酸化物においては、個々の粒子はどのような形状であっても良いが、粒子同士の凝集が少なく流動性が高く、取り扱い易いという観点から、該粉末を構成する粒子は球状に近い方が好ましい。
【0044】
粉末状の本発明の錫系酸化物においては、体積抵抗率と摩擦帯電量に大きな影響を与えない範囲内において、プラスチック等への分散性をより高めるなどの目的で、表面改質剤を用いて粒子の表面改質を行ってもよい。該表面改質剤としては、市販のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等の公知の表面改質剤を制限なく使用することができる。また結着剤その他の添加物を加えて顆粒状にしてもよい。
【0045】
本発明の錫系酸化物の製造方法は特に限定されないが、次のような方法により好適に製造することができる。
【0046】
即ち、溶解性酸化錫前駆体及び帯電量制御ドーパントを含む有機溶媒系又は水系溶液を濃縮乾固してゲル粉末などのゲル状物とした後、該ゲル状物を電気炉などで加熱処理する方法、又は上記有機溶媒系溶液又は水系溶液と、塩基性水溶液などの塩基、あるいは酸性水溶液などの酸を混合し、上記有機溶媒系溶液又は水系溶液の一部を中和して不溶性酸化錫前駆体を析出させ、該析出物をろ過して取り出した後、乾燥、加熱処理する方法等により好適に製造することができる。
【0047】
ここで溶解性酸化錫前駆体とは、有機溶媒や水などの溶媒あるいは混合溶媒に金属錫や錫化合物、必要に応じて安全性ドーパントなどの化合物を溶解させたときの溶液中に含まれる錫系酸化物の前駆体のことであり、金属錫や錫化合物が有機溶媒や水と反応していることもある。また上記前駆体を含有する溶液を溶解性酸化錫前駆体溶液ともいう。
【0048】
上記の製造方法において、溶解性酸化錫前駆体溶液の調製に用いる金属錫の形状は特に限定されず、板状、棒状、シート状、粒状、粉末状、砂状、塊状のものなどが挙げられ、溶解のしやすさの点から粒状、粉末状、砂状のものが好ましい。また、溶解性酸化錫前駆体溶液の調製に用いる錫化合物としては、水系溶液または有機溶媒に溶解するものであれば特に限定されず使用することができる。好適に使用できる錫化合物を、具体的に例示すれば、塩化第一錫、塩化第二錫、硝酸第一錫、硝酸第二錫、硫酸第一錫、硫酸第二錫、酢酸第一錫、酢酸第二錫、錫酸ナトリウム、錫酸カリウム或いはこれら錫化合物の水和物などを用いることができる。これらの中でも塩化第一錫や塩化第二錫或いはこれらの水和物などの塩化物は安価で入手しやすく、水系溶液や有機溶媒系の溶液に溶解しやすいため好ましい。これら錫化合物は、単独で用いたり、数種類の錫化合物を組み合せて用いたり、あるいは金属錫と錫化合物を組み合せて用いてもよい。
【0049】
なお、金属錫または塩化第一錫、硝酸第一錫、硫酸第一錫、酢酸第一錫或いはこれらの水和物などの二価の錫イオンを含有する錫化合物を用いて溶解性酸化錫前駆体溶液を調製する場合には、該溶液をそのまま用いて加熱処理して得られる錫系酸化物中に金属錫や一酸化錫が多量に混入して茶褐色、灰色又は黒色に着色することがあるので、酸素、空気、過酸化水素などの酸化剤を加えて系中で錫イオンの全て又は一部を四価に酸化させて使用することが好ましい。
【0050】
溶解性酸化錫前駆体溶液の調製に使用する水系溶液には、金属錫や錫化合物の溶解性を高めるために、塩酸、硝酸や酢酸などを溶解して酸性の水系溶液としたり、水酸化ナトリウムやアンモニアなどを溶解して塩基性の水系溶液として用いるのが好適である。この中で水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの帯電量制御ドーパントを含む塩基性化合物を溶解した塩基性の水系溶液を用いることは、別途帯電量制御ドーパントの原料物質を添加しなくてもよいので好ましい。
【0051】
溶解性酸化錫前駆体溶液の調製に使用する有機溶媒は、金属錫又は錫化合物を溶解するものであれば、何ら限定されない。このような有機溶媒として、アルコール、アセトン、アセトニトリルなど、あるいはこれらの混合物が挙げられるが、通常アルコールを主にすることが好ましい。これらアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノールなどを挙げることができる。中でもメタノール、エタノールは、錫化合物の溶解度が高いため好ましく、特に、メタノールは安価で手に入りやすいという理由もあり、より好ましい。上記アルコールは通常単独で用いられるが、錫化合物の溶解性等を制御するために2種類以上のアルコールの混合物を用いたり、アルコールと水の混合物を用いることもできる。なお、本発明で有機溶媒系の溶液とは、有機溶媒のみの溶液又は主溶媒(50vol.%以上)がアルコール等の有機溶媒である溶液(水を含んでいても可)であり、一方、水系溶液とは水のみ又は水と有機溶媒の混合物(主溶媒は水とする)の溶液を意味する。
【0052】
溶解性酸化錫前駆体溶液中の溶解性酸化錫前駆体の濃度は溶解する範囲内であれば特に制限されるものではないが、濃度が低すぎると錫系酸化物の生産性が低下し、また高すぎると粘度が高くなって後述する加熱処理時の操作性が低下したり得られる粉末の性状が悪化したりするので、酸化錫前駆体溶液の濃度は、錫元素のモル数換算で溶液1リットル当たり0.01〜10モル、特に0.1〜5モルとするのが好適である。したがって、溶解性酸化錫前駆体溶液中を調製する際には、前駆体濃度が前記範囲になるように金属錫或いは錫化合物の使用量、又は水系溶液或いは有機溶媒系の溶液の使用量を調整するが、溶解時の溶解熱や可溶化させる際の酸化熱が発生する場合には、液温度を制御し易くするために多量の溶媒を用い、溶解後に濃縮すればよい。また、系によっては、逆に高濃度の溶液を調製しておき使用時に希釈して濃度調製を行うこともできる。
【0053】
帯電量制御ドーパントは、溶解性酸化錫前駆体溶液の調製時に、帯電量制御ドーパントを含む溶解性の化合物、即ち塩化物やその水和物、臭化物やその水和物などのハロゲン化物(フッ素化合物を除く)、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アルコキシドなどの化合物、あるいは単体として添加することができる。但し、該化合物中に有害性ドーパントを実質的に含まないものとする。また単体や上記化合物を水系溶液や有機溶媒系の溶液に溶解する時期は、特に限定されず、水系溶液や有機溶媒系の溶液に金属錫や錫化合物を溶解する前後、いずれでも構わない。但し、後述する中和処理をして、溶解性酸化錫前駆体を加水分解や縮合させて不溶性酸化錫前駆体とする場合には、該不溶性酸化錫前駆体中に効率よく、帯電量制御ドーパントを添加することができるように、酸性水溶液や塩基性水溶液を添加する前に添加した方が好ましい。
【0054】
上記帯電量制御ドーパントを含有する化合物として好適なものを例示すると、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化スカンジウム、塩化イットリウム、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化ユーロピウムなどやその水和物などの塩化物、また硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム、硝酸マグネシウム6水和物、硝酸カルシウム、硝酸ランタン6水和物、硝酸セリウム6水和物などの硝酸塩、更に硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ルビジウム、硫酸セシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ランタン、硫酸ランタン9水和物などの硫酸塩、また更に炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどの炭酸塩、また更にはシュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸カルシウムなどのシュウ酸塩、また更にはリチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムi−プロポキシド、リチウムn−ブトキシドなどのリチウムアルコキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムi−プロポキシド、ナトリウムn−ブトキシドなどのナトリウムアルコキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムi−プロポキシド、カリウムn−ブトキシドなどのカリウムアルコキシド、マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジi−プロポキシド、マグネシウムジn−ブトキシドなどのマグネシウムアルコキシド、カルシウムジメトキシド、カルシウムジエトキシド、カルシウムジi−プロポキシド、カルシウムジn−ブトキシドなどのカルシウムアルコキシド、ストロンチウムジメトキシド、ストロンチウムジエトキシド、ストロンチウムジi−プロポキシド、ストロンチウムジn−ブトキシドなどのストロンチウムアルコキシド、ランタントリメトキシド、ランタントリエトキシド、ランタントリi−プロポキシドなどのランタンアルコキシド、セリウムトリエトキシドなどのセリウムアルコキシドなどのアルコキシドなどである。上記具体例以外にも他の帯電量制御ドーパントを含有する化合物でもよい。但し単体を用いるときは反応性が高い場合が多いので気をつける必要がある。また水酸化物を用いる場合は、水性溶媒に溶解すると塩基性であることが多いので、酸性溶液を形成する塩化錫などを原料物質として用いる場合は、pHなどを考慮して水性溶媒や有機溶媒系の溶液に溶解するのが好適である。
【0055】
また錫系酸化物中に安全性ドーパントを含有させる場合は、溶解性酸化錫前駆体溶液の調製時に、該安全性ドーパントを含む溶解性の化合物、即ち塩化物やその水和物、臭化物やその水和物などのハロゲン化物(フッ素化合物を除く)、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、アンモニウム塩、アルコキシドなどの化合物、あるいは単体として添加することができる。但し、該化合物中に有害性ドーパントを実質的に含まないものとする。また単体や上記化合物を水系溶液や有機溶媒系の溶液に溶解する時期は、特に限定されず、水系溶液や有機溶媒系の溶液に金属錫や錫化合物を溶解する前後、いずれでも構わない。但し中和処理する場合には、不溶性酸化錫前駆体中に効率よく、帯電量制御ドーパントを添加することができるように、中和処理前に水系溶液や有機溶媒系の溶液に添加した方が好ましい。
【0056】
上記安全性ドーパントを含有する化合物として好適なものを例示すると、塩化二オブ、オキシ塩化二オブ、塩化タンタル、塩化モリブデン、塩化タングステンなどやその水和物などの塩化物、モリブデン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、また二オブペンタメトキシド、二オブペンタエトキシド、二オブペンタi−プロポキシド、二オブペンタn−ブトキシドなどの二オブアルコキシド、タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタi−プロポキシド、タンタルペンタn−ブトキシドなどのタンタルアルコキシド、モリブデンペンタエトキシドなどのモリブデンアルコキシド、タングステンペンタエトキシド、タングステンペンタi−プロポキシドなどのタングステンアルコキシドなどである。上記具体例以外にも他の化合物でもよい。但し単体を用いるときは反応性が高い場合があるので気をつける必要がある。また上記化合物には、水性溶媒に溶解すると塩基性又は酸性になることがあるので、pHなどを考慮して水性溶媒や有機溶媒系の溶液に溶解するのが好適である。更には上記安全性ドーパントを含有する化合物の中には、水性溶媒や有機溶媒系の溶液に対して溶解度が低いものが有るが、このような場合は界面活性剤などの溶解助剤を添加してもよい。
【0057】
更に溶解性酸化錫前駆体溶液の調製時に、ケイ素、アルミニウムなどの錫系酸化物の機械的強度等を高めるため、あるいは錫系酸化物の粉末特性や表面特性など(例えば、粉末の流動性、ゼータ電位など)を制御するための元素を含む溶解性の化合物を添加してもよい。
【0058】
このようにして調製された帯電量制御ドーパントを含有していてもよい溶解性酸化錫前駆体溶液は、濃縮してゲル状物を得た後、該ゲル状物をそのまま加熱処理してもよいが、該溶液は通常、酸性又は塩基性の性質を有するため、該溶液とは逆の性質を有する塩基又は酸と混合して中和反応を行い、前記溶解性酸化錫前駆体の加水分解物或いはその縮合体からなる不溶性の酸化錫前駆体を析出させ(中和処理)、これをろ過し、得られた析出物を乾燥し、加熱処理してもよい。
【0059】
このとき使用する酸及び塩基は特に限定されず、酸としては、塩化水素、硝酸、酢酸などが、また、塩基としてはアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを使用することができる。これらの酸および塩基は、酸化錫前駆体溶液にそのまま加えたり、水や有機溶媒系の溶液に溶解させた後に加えることができる。また、中和処理の方法としては、酸または塩基を酸化錫前駆体溶液に加えても、酸化錫前駆体溶液を酸または塩基に加えてもよい。
【0060】
酸化錫前駆体溶液を中和処理して得られる不溶性酸化錫前駆体を含む溶液(中和液ともいう)は、ろ過後、そのまま乾燥、加熱処理に供してもよいが、加熱処理時に昇華しにくい反応生成物が中和反応によって生成する場合には、体積抵抗率と摩擦帯電量を所定の値に制御するため、該中和液に存在する、原料の錫化合物などに由来する塩素イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオンやこれらの反応生成物などを除去してから加熱処理してもよい。塩素イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、アンモニア、ナトリウムイオンやこれらの反応生成物などを除去する方法には特に制限されない。具体例を挙げると、中和液を一度ろ過し、ろ過されずに残ったケーキ状の析出物を水系溶液や有機溶媒系の溶液で洗浄した後に、再度ろ過するという洗浄工程を繰り返す方法などがある。
【0061】
上記方法で得られたゲル状物、あるいはろ過及び乾燥後の析出物は、通常、加熱処理される。加熱処理方法は特に限定されず、上記ゲル粉末や析出物をアルミナ製あるいは石英ガラス製などの高温での二酸化錫との反応性の低い容器などに入れて、市販の電気炉を用いて加熱処理したり、噴霧熱分解装置、スプレードライなどの加熱処理装置を用いてもよい。加熱処理温度及び時間、加熱処理雰囲気など加熱処理条件も特に限定されないが、加熱処理条件は体積抵抗率に大きな影響を与える場合がある。体積抵抗率を本発明の範囲内に制御するため、300℃以上が好ましく、また省エネルギーの観点から1500℃以下が好ましい。加熱処理時間は、やはり体積抵抗率の制御と省エネルギーの観点から0.1秒〜10時間以下が望ましい。加熱処理雰囲気は、金属錫の析出をなるべく防止するという観点から、酸素を含む雰囲気が望ましい。特に空気雰囲気で行うことが大規模な装置を用いなくて済むという観点から望ましい。
【0062】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。
【0063】
また、以下の実施例、比較例で得られた錫系酸化物(具体的には二酸化錫)粉末について、その結晶相の同定、有害性ドーパントの含有量の測定、体積抵抗率の測定、体積抵抗率の経時変化の測定、粒度分布の測定、色調の観察、及び摩擦帯電量の測定は以下の方法に従った。
【0064】
(1)結晶相の同定
理学電機(株)製X線回折装置RINT 1200を用いてθ−2θ法にて試料のX線回折分析を行い、結晶相を同定した。
【0065】
(2)有害性ドーパント含有量の測定
錫系酸化物中のフッ素の含有量については、EPMAによって測定した。またその他の有害性ドーパント(アンチモン、ヒ素、ビスマス、セレン、テルル、バナジウム、クロム)の含有量は、テフロン製容器を内部に付属したステンレス容器を用いて錫系酸化物を酸あるいはアルカリ水溶液中で加圧分解し、得られた水溶液を用いてICP発光分光分析装置によって測定した。これらEPMAとICP発光分光分析装置によって検出が可能であった導電性向上ドーパントのみの合計量を算出した。
【0066】
(3)体積抵抗率の測定
体積抵抗率は、ダイスとポンチからなる治具を用いて粉体を圧粉成型して測定した。即ち、銅製の下ポンチ(φ15mm×高さ10mm)を付属した中空(穴直径φ15mm)の円筒形のダイス(絶縁体、φ50mm×高さ50mm)の中に試料を入れて、その上端に銅製の上ポンチ(φ15mm×高さ50mm)を入れて5.6×107Paの圧力(1トンの荷重)で試料を加圧成型し、ペレット状の試験片を作製した。次いで試験片を加圧した状態で、上ポンチと下ポンチ間の抵抗値をヒューレット・パッカード(HEWLETT PACKARD)社製3478Aマルチメーターを用いて4端子法で測定し、試験片の断面積と高さから体積抵抗率を算出した。
【0067】
(4)体積抵抗率の経時変化の測定
試料を空気中120℃で200時間放置した後に室温に冷却し、上記の方法で体積抵抗率を測定した。高温放置後の体積抵抗率を高温放置前の体積抵抗率で除した値を、体積抵抗率の経時変化の指標とした。
【0068】
(5)粒度分布の測定
試料をイオン交換水に分散して超音波をかけながら、マルバーン(MALVERN)社製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置マスターサイザーにより粒度分布を測定し、D90の粒径を求めた。
【0069】
(6)色調の観察
試料の色調を目視にて観察した。
【0070】
(7)摩擦帯電量
摩擦帯電量は、装置として東芝ケミカル社製ブローオフ帯電量測定装置TB−200型、またキャリアとしてパウダーテック社製キャリア用鉄粉TEFV−200/300を用いて測定した。試料を予めキャリアと混合し、該混合物を35℃、85%湿度下で調湿を行った後、日本画像学会標準トナー帯電量測定法(ブローオフ法)に準じて行った。
【0071】
実施例1
メタノール150mlに無水塩化第一錫(SnCl2)36.7g、塩化リチウム(LiCl)0.43gを添加した後、乾燥空気を液中に導入して攪拌を行い、溶解性酸化錫前駆体溶液を調製した。別途メタノール600mlとアンモニア水(28wt%品)の混合溶液を作製し、攪拌しながら上記前駆体溶液を徐々に添加した。添加とともに混合溶液中に析出物が生成し、白濁した。該析出物をろ過によって分離し、得られたケーキ状の析出物を真空乾燥機を用いて乾燥を行い、乾燥ゲル粉末を得た。市販の電気炉を用いて該乾燥ゲルを空気中にて800℃で焼成し、粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について前記の各評価を行なったところ、結晶相はSnO2であり、体積抵抗率は1.4×105(Ωcm)、体積抵抗率の経時変化は0.9であり、D90は8.4μmであり、色調は極薄茶色であり、摩擦帯電量は+15(μC/g)であった。評価結果を表1にまとめて示す。
【0072】
【表1】
Figure 0004540213
【0073】
実施例2
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化ナトリウム(NaCl)0.59gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について前記の各評価を行なったところ、結晶相はSnO2であり、体積抵抗率は5.1×104(Ωcm)、体積抵抗率の経時変化は1.0であり、D90は3.9μmであり、色調は極薄茶色であり、摩擦帯電量は+11(μC/g)であった。評価結果を表1に示す。
【0074】
実施例3
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化カリウム(KCl)0.76gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、1.1×105(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0075】
実施例4
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化セシウム(CsCl)1.71gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、7.1×104(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0076】
実施例5
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化マグネシウム(MgCl2)0.38gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、1.3×106(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0077】
実施例6
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化マグネシウム(MgCl2)0.97gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、2.3×106(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0078】
実施例7
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化マグネシウム(MgCl2)1.60gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、1.9×106(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0079】
実施例8
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化カルシウム(CaCl2)1.13gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、4.5×104(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。なお、結晶相において第2相として観測されたCaSnO3相は極微量であった。
【0080】
実施例9
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化ストロンチウム(SrCl2)1.61gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、1.6×105(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。なお、結晶相において第2相として観測されたSrCl26H2O相は極微量であった。
【0081】
実施例10
実施例1において、塩化リチウムの代わりに硝酸イットリウム6水和物〔Y(NO33・6H2O〕3.90gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、3.1×106(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0082】
実施例11
実施例1において、塩化リチウムの代わりに硝酸ランタン6水和物〔La(NO33・6H2O〕4.40gを用いた他は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、4.5×106(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0083】
実施例12
実施例1において、塩化リチウムの量を0.17gとし、更に塩化二オブ(NbCl5)1.07gを添加したこと以外は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、1.2×105(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0084】
実施例13
実施例1において、塩化リチウムを塩化マグネシウムに代え、その量を0.97gとし、更に塩化モリブデン(MoCl5)1.08gを添加したこと以外は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、2.0×106(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0085】
実施例14
実施例1において、塩化リチウムを塩化カルシウムに代え、その量を1.13gとし、更に塩化タンタル(TaCl5)1.41gを添加したこと以外は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、9.3×103(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。なお、結晶相において第2相として観測されたCa(OH)2相は極微量であった。
【0086】
実施例15
実施例1において、塩化リチウムを塩化マグネシウムに代え、その量を0.97gとし、更に塩化タンタル(TaCl5)1.41g及びテトラエトキシシラン〔Si(OC254〕0.82gを添加したこと以外は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。該錫系酸化物について体積抵抗率を測定したところ、2.0×107(Ωcm)であった。また、他の評価結果は表1に示す通りであった。
【0087】
比較例1
関東化学製の二酸化錫試薬(SnO2)を実施例1と同様の電気炉を用いて800℃で焼成し、二酸化錫粉末を得た。該二酸化錫について前記の各評価を行なったところ、結晶相はSnO2であり、体積抵抗率は4.0×107(Ωcm)、体積抵抗率の経時変化は1.0であり、D90は35μmであり、色調は薄黄色であり、摩擦帯電量は−1.0(μC/g)であった。評価結果を表2にまとめて示す。
【0088】
【表2】
Figure 0004540213
【0089】
比較例2
実施例1において、塩化リチウムを加えない点以外は全て実施例1と同様にして粉末状の二酸化錫を得た。評価結果を表2に示す。
【0090】
比較例3
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化二オブ(NbCl5)2.75gを用いた以外は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。評価結果を表2に示す。
【0091】
比較例4
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化タンタル(TaCl5)3.64gを用いた以外は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。評価結果を表2に示す。
【0092】
比較例5
実施例1において、塩化リチウムの代わりに塩化モリブデン(MoCl5)2.78gを用いた以外は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。評価結果を表2に示す。
【0093】
比較例6
実施例1において、塩化リチウムの代わりにリン酸(H3PO4)1.00gを用いた以外は全て実施例1と同様にして粉末状の錫系酸化物を得た。評価結果を表2に示す。
【0094】
比較例7
関東化学製の二酸化錫試薬(SnO2)29.1gと酸化マグネシウム(MgO)試薬を0.16gを乳鉢で混合し、二酸化錫及び酸化マグネシウム混合粉末を得た。評価結果を表2に示す。
【0095】
表1に示したデータから明らかなように、実施例1〜15に示す本発明の錫系酸化物は、二酸化錫の結晶相が生成しており、有害性ドーパントが100ppm以下であり、体積抵抗率は102〜109Ωcmの範囲内にあり、体積抵抗率の経時変化は非常に小さいことがわかる。また色調は何れも薄色系を呈しており、D90の粒径は0.1〜30μmの範囲内にあり、各種プラスチックやトナーに添加する導電性フィラーとして好適な色調と大きさを有する。更に、摩擦帯電量は何れもプラスの値を有しており、何れも本発明の錫系酸化物であることが分かる。
【0096】
これに対し、比較例1〜比較例6では、帯電量制御ドーパントを含有していないため、摩擦帯電量が何れもマイナスの値を有しており、本発明の錫系酸化物には該当しないことがわかる。また比較例7では、二酸化錫粉末とアルカリ土類金属元素の酸化物粉末を単純に混合しても、摩擦帯電量はマイナスの値を有しており、本発明の錫系酸化物には該当しないことがわかる。
【0097】
【発明の効果】
本発明の錫系酸化物は、アンチモンやフッ素などの有害な導電性向上用ドーパントを含んでいないので、安全性が高く、102〜109Ωcmの範囲内で体積抵抗率を制御することができ、体積抵抗率の経時変化や着色といった問題が無く、且つ摩擦帯電量がゼロからプラスの範囲内にある新規な錫系酸化物である。したがって本発明の錫系酸化物は、導電性フィラーとして様々な用途に使用可能である。

Claims (3)

  1. 酸素欠陥を有していてもよい二酸化錫結晶を含み、実質的にアンチモン、フッ素、ヒ素、ビスマス、セレン、テルル、バナジウム、及びクロムを含まず、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む錫系酸化物であって、該錫系酸化物の粉末を5.6×10Paのプレス圧で圧粉法により測定したときの体積抵抗率が10〜10Ωcmであり、且つ鉄粉を摩擦相手物質として測定された摩擦帯電量がゼロ又はプラスの値を有することを特徴とする錫系酸化物。
  2. 請求項1に記載の錫系酸化物からなる粉末状の錫系酸化物であって、粒度分布におけるD90の粒径が0.1〜30μmであることを特徴とする錫系酸化物。
  3. 溶解性酸化錫前駆体、並びにアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び希土類元素の中から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む有機溶媒系溶液又は水系溶液と、塩基又は酸とを混合し、前記有機溶媒系溶液又は水系溶液の一部又は全部を中和して不溶性の酸化錫前駆体を析出させ、析出した不溶性酸化錫前駆体を加熱処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の錫系酸化物の製造方法。
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