[第1の実施形態]
以下、本発明を図1〜図14に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1はエンジン(内燃機関)、例えばV型6気筒のレシプロ式エンジン(以下、単にV型エンジンという)を後方から見た斜視図、図2は同エンジンの吸・排気バルブの可変動弁装置の斜視図、図3は同動弁装置の平面図(図2中のA矢視方向)、図4は同動弁装置の各種カムを示す平面図、図5〜図8は同動弁装置の各部の断面図(図3中のB〜E矢視の断面)、図9は吸気側の可変動弁装置を示す斜視図、図10は同装置の分解図、図11は吸気側の可変動弁装置の一部品を示す斜視図、図12は排気側の可変動弁装置を示す斜視図、図13は同装置の分解図、図14は両装置がもたらすバルブ特性を示す線図をそれぞれ示している。なお、図1中Frは、V形エンジンの前方を示している。
図1中1は、V型エンジンのエンジン本体を示している。このエンジン本体1は、例えばV字形のシリンダブロック、具体的には下部に共通なクランクケース部2を有し、上部に例えば気筒3を3個づつ振り分けたV字形のデッキシリンダ部4をもつシリンダブロック5と、デッキシリンダ部4毎にその頭部に搭載されたシリンダヘッド6などといった部品を組み合わせて構成されている。なお、図1には、ヘッドカバー、オイルパンなど細かい部品は記載していない。そして、各デッキシリンダ部4、シリンダヘッド6などから、V字形に突き出る左右のバンク7a,7b(左右は前方方向を基準に定めている)を構成している。なお、各バンク7a,7bの気筒3にはピストン8が往復動可能に収めてあり(図2に図示)、クランクケース部2にはクランクシャフト(図示しない)が組み込んである。但し、バンク7a,7bは、クランクシャフトの軸線上に、各ピストン8から延びるコンロッド(図示しない)が並んで配置されるよう、前後方向で、オフセットさせてある。
気筒3と向き合う各シリンダヘッド6の下面には、図2に示されるように燃焼室11がそれぞれ形成されている。これら各燃焼室11には、同図に示されるようにバンク7a,7b間を挟んだ内側に位置して、2個(複数)の吸気ポート12a,12b、同吸気ポート12a,12bを開閉する2個の吸気バルブ13a,13bが設けられている。また同じく外側に位置して、2個(複数)の排気ポート14a,14b、同排気ポート14a,14bを開閉する2個の排気バルブ15a,15bが設けられていて、バンク内側から燃焼空気が吸入され、バンク外側から燃焼を終えたガスが排出される構造にしている。なお、吸気バルブ13a,13bおよび排気バルブ15a,15bには、いずれもバルブスプリング(図示しない)で閉方向に付勢される常閉構造が用いてある。
左右バンク7a,7bのシリンダヘッド6には、それぞれ吸・排気バルブのリフト動作を可変可能としたSOHC(Single Over Head Camshaft)式の動弁系17が設けられている。このうち左バンクの動弁系17aには、通常(低速)モードと高速モードと休筒モード(気筒を休止させるモード)とに切換可能(3モード切換え)な吸気用の可変動弁装置18(本願の可変動弁装置に相当)と、通常(低速)モードと休筒モード(気筒を休止させるモード)に切換可能(2モード切換え)な排気用の可変動弁装置19とを組み合わせた構造が用いられる。右側の動弁系17bには、通常(低速)モードと高速モードとに切換可能(2モード切換え)な吸気用の可変動弁装置20と、通常(低速)モードだけの排気用の動弁装置21とを組み合わせた構造が用いられている。
図2には、このうちの左バンク7aに搭載される動弁系17aの1気筒分の可変動弁装置18,19(吸気用と排気用の両方)が示されている(エンジン後方から見た図)。図9には、このうちの可変動弁装置18を内側から見たときの図、図10には同装置18を分解した図が示され、図12には可変動弁装置19を内側から見たときの図、図13には同装置19を分解した図が示されている。
同1気筒分の構造について説明すると、図2および図3中25は、燃焼室11の頭上中央にシリンダヘッド6の長手方向に沿って配設された回転可能なカムシャフト、26は同カムシャフト25を挟むバンク内側に該カムシャフト25とほぼ平行に配設(固定)された吸気用のロッカシャフト(本願のロッカシャフトに相当)、27はその反対側(バンク外側)にカムシャフト25とほぼ平行に配設(固定)された排気用のロッカシャフトを示している。なお、ロッカシャフト26、27はいずれもカムシャフト25の上側に配置してある。
このうちロッカシャフト27内には、休筒切換用の油路27aが軸方向に沿って形成されている。ロッカシャフト26内には、該油路27a端と連通接続される休筒切換用の油路26aと、高速切換用の油路26bとが軸方向に沿って形成されている。
カムシャフト25は、クランク出力によって回転駆動される部品である。このカムシャフト25の燃焼室11の頭上に配置されるシャフト部分には、例えば図2および図4に示されるようにエンジン後方側から順に高速用の吸気カム30、リフトレスカム(休止用カム)31、排気カム32、低速用の吸気カム33が形成されている。低速用の吸気カム33は、エンジンの低速運転に適した開閉タイミング、バルブリフト量に設定したカムプロフィルをもち、高速用の吸気カム30は、例えば低速用カム33と同じベース円で、エンジンの高速運転に適した開閉タイミング、バルブリフト量(低速用カム33より大)を設定したカムプロフィルをもち、リフトレスカム31は同一半径のカムプロフィル(ベース円だけ)をもつ。むろん、排気カム32は、燃焼ガスの排出に適した開閉タイミング、バルブリフト量のカムプロフィルをもつ。
吸気用の可変動弁装置18には、図2、図9および図10に示されるような分割式のロッカアーム構造が用いられている。これには、吸気バルブ13a,13bの駆動を行なうバルブ駆動ロッカ35(本願のバルブ駆動ロッカに相当)と、吸気カム30,33と追従する低・高速別のカム追従ロッカ60,70(いずれも本願のカム追従ロッカに相当)とに分けた構造が用いてある。
詳しくは、図2および図10に示されるようにバルブ駆動ロッカ35は、筒形のロッカシャフト支持用のボス36(本願のボスに相当)と、同ボス36の両端部からそれぞれ吸気バルブ13a,13b(ボス直径方向)へ向って延びた一対(2本:複数)の縦壁状のロッカアーム部37(本願のアーム部に相当)と、同ロッカアーム部37の先端部(延出端部)に組み付けられたアジャストスクリュ部38(当接部)と、同アーム部37の各根元部(基端部)に設けられたモード切換用の切換作動部40a,40bとを有して構成してある。
一対のロッカアーム部37は、ボス36の軸心方向に並行に配置されている。そして、いずれもボス36の外周部から先端に向うにしたがい徐々に高さ寸法が小さくなる縦壁で形成されている。このうち図2に示されるようにロッカシャフト支持用ボス36は、吸気カム30(高速用)が有る地点から吸気カム33(低速用)が有る地点までに相当するロッカシャフト26部分に渡り回動自在に嵌挿され、各ロッカアーム部37の先端部のアジャストスクリュ部38をそれぞれ吸気バルブ13a,13bの上部端(バルブステム端)に位置決めている。つまり、バルブ駆動ロッカ35は、ロッカシャフト26を支点に揺動すると、アジャストスクリュ部38の端部がバルブステム端と当接して吸気バルブ13a,13bを駆動する。
またボス36の外周面のうち、リフトレスカム31と対応する外周面部分からは、図3、図4、図8〜図10に示されるように示されるようにスリッパ41がリフトレスカム31の外周面に向かって突き出ている。このスリッパ41の突出し長さは、吸気バルブ13a,13bが閉弁のとき、スリッパ41の先端部がリフトレスカム31の外周面と当接する寸法に設定されている。このスリッパ41にて、バルブ駆動ロッカ35が伝達の仕事をしないとき、バルブ駆動ロッカ35の全体が、吸気バルブ13a,13bのバルブスプリングの反力を利用して、そのまま閉弁状態(吸気バルブ13a,13b)の姿勢で保持されるようにしてある。
ボス36の両端部に配置された切換作動部40a,40bには、いずれもピストン式が用いられている。このうち吸気カム33(低速用)側に配置される切換作動部40aを説明すると、図5、図9および図10中43は、例えば吸気カム33側のアーム部37の根元部(基端部)に形成された円筒形のシリンダである。このシリンダ43は、ロッカシャフト26の直径方向に沿って延びる縦形をなしている。このシリンダ43の前面(カムシャフト25側の面)の下部には窓部44が形成してある。またシリンダ43の底面からその直下のボス36の内面36a(軸受け面)までには、シリンダ43より小径な通孔45(図5のみ図示)が形成されている。シリンダ43内には、ピストン46(本願の受け部相当)が、該ピストン46をシリンダ43の底面へ付勢する圧縮スプリング47と一緒に収容されている(図5のみ図示)。これにより、常時は、シリンダ43の窓部44は、ピストン46の下部外周面で塞がれ、ピストン46が上昇すると、ピストン46が窓部44から退かれて、同窓部44が開放されるようにしてある。通孔45内には、図5に示されるようにピン48が摺動可能に収められている。通孔45の下端開口は、図5に示されるように油路26aから分岐した分岐路49、詳しくは油路26aから半径方向へ分岐してロッカシャフト26の外周面に開口した分岐路49と連通していて、油路26aからピン48に油圧が加わると、ピン48の上昇動から、図5の二点鎖線で示されるように窓部44を塞いでいたピストン46を窓部44から退かせる方向に駆動、つまり窓部44が開放されるようにしてある。
吸気カム30(高速用)側に配置される切換作動部40bには、切換作動部40aと同様、図6、図9および図10に示されるようにアーム部37の根元部に円筒形のシリンダ51を形成した構造が用いてある。このシリンダ51は、ストローク量を稼ぐためにボス36の内面36aまで延びている。そのため、シリンダ51の直下のロッカシャフト26部分には、シリンダ51と直列に連通する通孔52が形成してある。なお、通孔52は、シリンダ51より小径である。また切換作動部40aとは異なり、図6に示されるようにシリンダ51の前面上部には、窓部50が形成され、シリンダ51内には、ピストン53(本願の受け部に相当)が、該ピストン53をシリンダ51の底面へ付勢する圧縮スプリング54と一緒に収容されている。またピストン53には、窓部50から下側のシリンダ部分に収まるだけの薄形が用いられていて、切換作動部40aとは逆に、常時は、シリンダ51の窓部50の開口は開放し、ピストン53が上昇すると、ピストン53の外周面で塞がれるようにしてある。通孔52内には、ピン55が摺動自在に収められている。通孔52の下端部は、図6に示されるように油路26bの一部と交差して連通していて、油路26bからピン55に油圧が加わると、ピン55の上昇動から、図6の二点鎖線で示されるようにピストン53が窓部50を塞ぐ方向に駆動、つまり窓部50が閉じられるようにしてある。
ボス36の各両端部の開口縁には、図10および図11に示されるようにそれぞれボス端から所定に切り欠いた一対の切欠き部57が形成されている。切欠き部57は、いずれもボス端をなす周壁のうち、例えばシリンダ43,51の直下部から、ボス36の前方(アーム部37とは反対側)を経て、アーム部37の根元部までに至る円周部分を連続して切り欠いてなる。
また一対のロッカアーム部37の先端部(延出部)間は、図9および図10に示されるようにバー部57で連結されている。詳しくは、バー部57は、図11に示されるようにロッカアーム部37の先端部となるアジャストスクリュ部38が有る端部37aに、ロッカシャフト26とほぼ平行(並行)に延びるリブ58x(バーに相当)を一体に形成して、両端部分間を連結してなる。このロッカアーム部37の端部37aから延びるバー部58により、ロッカアーム部37を補強(剛性付与)、特に基部よりも剛性が低い先端部側の剛性を高めている。またシリンダ43,51間は、ボス36の外周部から立ち上がるリブ部59(例えば縦壁状)で連結され、間接的にロッカアーム部37の基端部間をつないでいる(連結)。この連結部分(シリンダ43,51,リブ部59)およびバー部58により、一対のロッカアーム部37は、単なるアーム構造ではなく、変形や変位がしにくい枠形(ここでは、例えば角形構造)にしている。
高速側のカム追従ロッカ70は、図2、図3、図6、図9および図10に示されるようにボス36(バルブ駆動ロッカ)の吸気カム30(高速用)側の端部に隣接して配置される部品である。同カム追従ロッカ70は、ボス36端に隣接したロッカシャフト26部分に回動自在に嵌挿される筒形のロッカシャフト支持用のボス71と、同ボス71の両側から一端側となる吸気カム30(高速用)の直上へ直線状に突き出た一対のローラ支持片72(ローラヨーク)と、同ローラ支持片72の先端部間に支持された回転自在なローラ73(転接子)と、ボス71の周壁に形成された突き当て部79(本願の突き当て部に相当)とを有している。これにより、カム追従ロッカ70は、一端側にローラ73を有し、他端側に突き当て部79を有した構造になる。このうちのローラ73が、吸気カム30と転接している。これで、カム追従ロッカ70は、カムシャフト25が回転すると、ボス71を支点として、吸気カム30の変位に追従しながら揺動する。
またボス36(バルブ駆動ロッカ)と隣接するボス71の端部には、図6および図10に示されるようにボス端から所定に切り欠いた切欠き部76が形成されている。切欠き部76は、ボス36(バルブ駆動ロッカ)のときとは反対側の周壁部分を切り欠いてなる。例えばボス71の上側から、ボス71の前方部分(ローラ73とは反対側)までの円周部分を連続して切り欠いた構造が用いられる。このボス71端の切欠き部76およびボス36端の切欠き部57と、ボス36の開口端で残っている縁部36bおよびボス71の開口端で残っている縁部71bとが互いに補うように嵌まり合っている。なお、切欠き部71,57は、後述するカム追従ロッカ70の所要の動きを許容する領域までに定めてある。この凹凸の嵌まり合いによって、ボス36端の縁部36bとボス71端の縁部71bとが、ロッカシャフト26の外周面で、ロッカシャフト26の軸方向に対してラップする。突き当て部79は、このうちの縁部71bに配置され、また窓部50、シリンダ51、ピストン53および圧縮スプリング54は、縁部36bに配置されている。突き当て部79とピストン53とは、縁部36bと縁部71とがラップされたとき、向き合う関係となるように位置決められていて、このラップがもたらす縁部71b、36bのロッカシャフト26の周方向の横並びを利用して、図9および図10に示されるようにボス71の突き当て部79とボス36に有る窓部50とを正対させている。
ローラ支持片72のうちボス36寄り(内側)に配置された支持片は、この突き当て部79とほぼ正対する地点に配置させてあり、片側のローラ支持片72、突き当て部79の双方を、窓部50に対して一直線上に並ばせている。また図9および図10に示されるようにボス71の外周面には、この突き当て部79から内側(ボス36寄り)のローラ支持片72に渡りウイング部74が設けられている。このウイング部74は、該突き当て部79からローラ支持片72までを直線状に連続してつなぐリブ78で形成されている。
突き当て部79は、このリブ78の先端部の水平壁を窓部50の内外に出入り可能な形状に形成してなり、これで通常時は、突き当て部79が、窓部50を通してシリンダ51内外へ出入りし、ピストン53で窓部50が塞がれたときは、突き当て部79が、窓部50から露出するピストン53と突き当たるようにしている。つまり、突き当て部79が、空振りか、ピストン53と突き当たるかで、カム追従ロッカ70からの高速用吸気カム30の変位がバルブ駆動ロッカ35に入力されるか、入力が停止されるかの切換えが行なえる切換機構79a(本願の切換部に相当)を構成している。
なお、外側のローラ支持片72の先端側には、ローラ73を吸気カム30に押し付けるプッシャ70aからの荷重(図6に二点鎖線で一部図示)を受けるための受け座75が形成してある。
低速側のカム追従ロッカ60は、図2、図3、図9および図10に示されるようにボス36の吸気カム33(低速用)側の端部に隣接して配置される部品である。同カム追従ロッカ60は、先に説明した高速側のカム追従ロッカ70とは、勝手反対となるだけで、構造的には同じである。このため、カム追従ロッカ60の各部の説明は、先のカム追従ロッカ70の各部の符号71〜79の代わりに、同一部位に、2桁目の番号を変えた符号61〜69を付して、その省略する。
むろん、突き当て部69は、窓部44の内外を出入り可能な形状に形成されている。これにより、カム追従ロッカ60についても、図5に示されるように通常時は、突き当て部69が、窓部44を塞いでいるピストン46と突き当たり、ピストン46で窓部44が開放されたときは、突き当て部69が、窓部44を通してシリンダ43内外を出入りする。つまり、突き当て部69が、ピストン46と突き当たるか、空振りするかによって、カム追従ロッカ60からの低速用吸気カム33の変位がバルブ駆動ロッカ35に入力されるか、入力が停止されるかの切り換えが行なえる切換機構69a(本願の切換部に相当)を構成している。
他方、排気用の可変動弁装置19には、図2、図7、図12および図13に示されるような排気カム32に追従するカム追従ロッカ80と、排気バルブ15a,15bの駆動を行なうバルブ駆動ロッカ90とに分けた分割式のロッカアーム構造が用いられている。
このうちカム追従ロッカ80には、排気カム32と対応したロッカシャフト27部分に回動自在に嵌挿される筒形のロッカシャフト支持用のボス81と、同ボス81の両端部から排気カム32の直上へ直線状に突き出たU形のローラ支持片82と、同ローラ支持片82の先端部間に支持された回転自在なローラ83と、ボス81に形成されたウイング部84とを有した構造が用いられている。ローラ83は、排気カム32に転接していて、カム追従ロッカ80は、カムシャフト25が回転すると、ボス81を支点に回動、すなわち排気カム25の変位に追従しながら揺動するようにしてある。なお、カム追従ロッカ80は、ローラ支持片82に形成した受け座85から入力されるプッシャ80a(図7に二点鎖線で一部だけ図示)の付勢力によって、排気カム32へ押し付けられる。
ウイング部84は、ボス81の外面の幅方向中央に突設したリブ86から形成される。同リブ86は、ローラ支持片82の後端部から、ボス81の周方向に沿いに、ボス81の上部まで延びている。リブ81の先端部には、前方へ張り出す形状の突き当て部89が形成されている。
バルブ駆動ロッカ90には、図12および図13に示されるように門形の構造が用いられている。同ロッカ90には、ボス81(カム追従ロッカ80)の両側に配置される一対のロッカアーム部91と、モード切換用の切換作動部98とを組み合わせた構造が用いられている。
このうち一対のロッカアーム部91は、いずれも一端部にボス81(カム追従ロッカ80)を挟んだ両側のロッカシャフト27部分に回動自在に嵌挿された一対の筒形のロッカシャフト支持用のボス92を有し、他端部に同ボス92からそれぞれ排気バルブ15a,15bに向って直線状に延びるアーム部93を有した構造が用いられている。そして、各アーム部93の先端部をなす、アジャストスクリュ部94が、それぞれ排気バルブ15a,15bの上部端(バルブステム端)に配置させてある。アーム部93,93間は、例えばプレート状の連結アーム95によって連結されている。これで、バルブ駆動ロッカ90は、ロッカシャフト27を支点として揺動すると、複数の排気バルブ15a,15bが駆動される。
リフトレスカム31の直上に配置されるボス92の外周面からは、図4、図8、図12および図13に示されるようにリフトレスカム31の外周面に向かってスリッパ96が突き出ている。このスリッパ96の突出し長さは、排気バルブ15a,15bが閉弁のとき、スリッパ96の先端部がリフトレスカム31の外周面と当接する寸法に設定されている。このスリッパ96にて、バルブ駆動ロッカ90が仕事をしないとき、バルブ駆動ロッカ90の全体が、排気バルブ15a,15bのバルブスプリングの反力を利用して、そのまま閉弁状態(排気バルブ15a,15b)の姿勢で保持されるようにしてある。
切換作動部98は、図12および図13に示されるように連結アーム95に設けてある。この切換作動部98には図7に示されるようなピストン式が用いられている。
同切換作動部98を説明すると、図7中99は縦形のシリンダである。同シリンダ99は、連結アーム95の中央から、上側へ突き出るように形成されている。このシリンダ99は、ロッカシャフト27から離れる方向に後傾している。このシリンダ99のうち、前面(カムシャフト25側の面)の下部には、窓部100が形成されている。またシリンダ100の底面からその直下のアーム部分の内部までには、シリンダ100より小径な通孔101が形成されている。
シリンダ99内には、ピストン102が、該ピストン102をシリンダ99の底面へ付勢する圧縮スプリング103と一緒に収容されている。つまり、常時は、シリンダ99の窓部100は、ピストン102の外周面で塞がれ、ピストン102が上昇すると、ピストン102が窓部100から退かれて、同窓部100が開放されるようにしてある。通孔101内には、ピン104が摺動可能に収められている。通孔104の下端開口は、図3および図7に示されるように連結アーム部95の内部に形成した中継路105に連通している。この中継路105は、アーム部93の内部に形成された中継路106を通じて、ボス92の内面に開口している。さらに中継路106は、油路27aから分岐した分岐路107(図7のみ図示)、詳しくは油路27aから半径方向へ分岐してロッカシャフト26の外周面に開口した分岐路107と連通していて、油路27aからピン104に油圧が加わると、ピン104の上昇動から、図7の二点鎖線で示されるように窓部100を塞いでいたピストン102を窓部100から退かせる方向に駆動、つまり窓部100が開放されるようにしてある。
この窓部100の直前に、カム追従ロッカ80の突き当て部89が位置決められる。突き当て部89は、図7に示されるように窓部100の内外に出入り可能な形状に形成されている。これで、通常時は、突き当て部89が、窓部100を塞いでいるピストン102と突き当たり、窓部100が開放されたときは、突き当て部89が、窓部100を通してシリンダ99内外を出入りするようにしてある。つまり、突き当て部89が、ピストン102と突き当たるか、空振りするかによって、カム追従ロッカ80からの排気カム32の変位がバルブ駆動ロッカ90に入力されるか、入力が停止されるかの切り換えが行なえるようにしている。
他方、排気側のロッカシャフト26の油路27aは、図2に示されるように休筒切換用のオイルコントロールバルブ120(以下、OCV120という)を介して、油圧供給部(オイルポンプなどで形成される:図示しない)に接続されている。また吸気側のロッカシャフト26の油路26bは、高速切換用のオイルコントロールバルブ121(以下、OCV121という)を介して、油圧供給部(オイルポンプなどで形成される:図示しない)に接続されている。この二系統の油圧供給系のOCV120,121は、いずれも制御部122(例えばマイクロコンピュータで構成されるもの)に接続されている。制御部122には、例えば予め自動車の運転状態に応じて設定されたマップにしたがって、低速モードのときは、OCV120,121の両方を「閉」、高速モードのときは、OCV121だけ「開」、休筒モードのときはOCV120だけ「開」にする機能が設定されている。
こうした構造が、左バンク7aの各気筒3に採用されている。つまり、左バンク7aの吸気系においては、高速用吸気カム30による弁駆動、低速用カム33による弁駆動、非弁駆動の3段切換えが行なえ、排気系においては排気カム32による弁駆動、非弁駆動の2段切換えが行なえるようにしている。
一方、右バンク7bの動弁系17bの各吸気用可変動弁装置20には、左バンク7aの吸気用の可変動弁装置18から、非弁駆動となる機構や部分を除いた構造が用いられている。同構造には、図示はされていないが、低速側の切換構造(主に切換作動部40a、カム追従ロッカ60)を省き、バルブ駆動ロッカ35が、常時、直接的に低速用吸気カム33で駆動される構造が用いてある。これで、高速側の切換構造だけを残して、低速モードと高速モードとの2段切換えが行なえる構造にしてある。また排気側には、左バンク7aの排気用の可変動弁装置19から、非弁駆動となる機構や部分を除いた構造、すなわちバルブ駆動ロッカ90だけが、常時、直接的に排気カム32で駆動される構造が用いてある。さらに右バンク7bでは、休筒モードの切換えをなす油路26a,27aを省いて、油路26bだけを残す構造が用いてある。つまり、右バンク7bは、吸気系において高速用吸気カム30による弁駆動、低速用カム33による弁駆動の2段切換えが行なえ、排気系において排気カム32による弁駆動だけが行なえる構造にしてある。
こうした左・右バンク7a,7bの動弁系17a,17bにより、一部の気筒(左バンク7aの3気筒)を休止させた運転が行なえるようにしている。
すなわち、図5〜図8を参照して動弁系17の作用を説明すると、今、自動車の走行状態により、制御部122に低速モードを実行する指令がなされたとする。
すると、制御部122により、OCV120,121はいずれも閉作動される。つまり、油路26a,26b、27aは、いずれも油圧供給系からの油圧が作用しない状態となる。これにより、図5の実線に示されるように左バンク7aの切換作動部40a(吸気)の窓部44は、ピストン46で遮られる状態となる(圧縮スプリング47の弾性力による)。また図6の実線に示されるように切換作動部40b(吸気)の窓部50は、開放された状態となる(圧縮スプリング54の弾性力による)。さらに図7に示されるように左バンク7aの切換作動部98(排気)の窓部100は、ピストン102(圧縮スプリング103の弾性力による)で遮られた状態となる。
すると、左バンク7aの吸気側では、カム追従ロッカ70(高速)は、空振りを伴いながら揺動駆動される。と同時にカム追従ロッカ60(低速)は、ピストン46と突き当たりながら揺動駆動される。また左バンク7aの排気側においては、カム追従ロッカ80が、ピストン102と突き当たりながら揺動駆動される。
これにより、吸気側では、カム追従ロッカ60から伝わる吸気カム33(低速用)の変位が、バルブ駆動ロッカ35から、一対のロッカアーム部37を経て、一対の吸気バルブ13a,13bのステム端へ伝わり、該吸気バルブ13a,13bを駆動する。また排気側では、カム追従ロッカ80から伝わる排気カム32の変位が、バルブ駆動ロッカ90の連結アーム95から、一対のアーム部93を経て、一対の排気バルブ15a,15bのステム端へ伝わり、該排気バルブ15a,15bを駆動する。
右バンク7bの可変動弁装置20においては、左バンク7aと同様、カム追従ロッカ(高速)は空振りを伴うので、バルブ駆動ロッカに伝わる低速用の吸気カムの変位だけが、一対の吸気バルブへ伝わり、該吸気バルブを駆動する。また排気側の動弁装置21においては、バルブ駆動ロッカを介して、直接的に、排気カムの変位が、一対のアーム部を経て、一対の排気バルブへ伝わり、該排気バルブを駆動する。
これにより、V形エンジンは、図14の線図中の低速カムおよび排気カムの組み合わせがもたらす低速モードで運転される。つまり、通常の走行で要求されるエンジン性能が出力される。
また自動車の走行状態により、制御部122において高速モードを実行する指令がなされると、制御部122により、高速切換用のOCV121だけが開作動する制御が行なわれる。これにより、油路26bだけに油圧が作用する。
すると、左バンク7aの切換作動部40b(吸気側)のピン55に油圧が加わる。これにより、図6中の二点鎖線に示されるように窓部50は、ピン55で上方へ駆動されるピストン53によって遮られる。なお、左バンク7aの排気側は、切換作動部98の窓部100がピストン102で遮られた状態が続く。
これにより、吸気側のカム追従ロッカ70は、図6中の二点鎖線に示されるようにピストン53と突き当たりながら揺動駆動される。
ここで、切換作動部40aの窓部44は、ピストン46で遮られた状態であるが、高速用の吸気カム30の外形形状は、低速用の吸気カム33よりも大きく設定してあるから、カム追従ロッカ70から伝わる吸気カム30(高速用)のカム変位だけが、バルブ駆動ロッカ35から一対のロッカアーム部37を経て、一対の吸気バルブ13a,13bへ伝わる。つまり、吸気バルブ13a,13bは、高速の吸気カム30で駆動されていく。なお、排気バルブ15a,15bは、先の排気カム32の変位が、カム追従ロッカ80からバルブ駆動ロッカ90の連結アーム95へ伝わる経路により、駆動され続ける
また右バンク7bの可変動弁装置20では、左バンク7aと同様、カム追従ロッカから伝わる吸気カム(高速用)の変位が、バルブ駆動ロッカから一対のロッカアーム部を経て、一対の吸気バルブへ伝わることによって、該吸気バルブの駆動が行なわれる。なお、右バンク7bの動弁装置21は、バルブ駆動ロッカによって、直接的に、一対の排気バルブを駆動し続ける。
これにより、V形エンジンは、図14の線図中の高速カムおよび排気カムの組み合わせがもたらす高速モードで運転される。つまり、高いエンジン性能が出力される運転に切り換わる。
また自動車の走行状態により、制御部122において休筒モードを実行する指令がなされると、制御部122により、休筒用のOCV120だけが開作動する制御が行なわれる。これにより、油路26a、27aに油圧が作用する。
すると、左バンク7aの吸気側は、ピン48に油圧が加わり、該ピン48が上方へ駆動される。これにより、切換作動部40aのピストン46は、上方へ駆動され、図5中の二点鎖線に示されるように窓部44を開放させる。また切換作動部40bには、油圧が作用していないので、窓部50は、図6に示されるように開放された状態が続く。排気側でも、切換作動部98のピストン104は、ピン104の押し上げによって上方へ駆動される。これにより、切換作動部98の窓部100は開放される。
これにより、左バンク7aの各カム追従ロッカ60(吸気:低速)、カム追従ロッカ70(吸気:高速)、カム追従ロッカ80(排気)は、いずれも、空振りを伴いながら揺動駆動され、バルブ駆動ロッカ35,90(吸気、排気)には、バルブを駆動する駆動力が伝達されなくなる。これに伴い、図8に示されるように各バルブ駆動ロッカ35,90のスリッパ41,96が、リフトレスカム31の円形なカム面(外周面)と摺接し続け、吸気バルブ13a,13bと排気バルブ15a,15bの両者を閉弁状態に保つ。なお、カム追従ロッカ60,70,80は、プッシャ60a,70a,80aによって、カム面に押し付けられ続ける。
こうしたカム追従ロッカ60,70,80とバルブ駆動ロッカ35,90との間の切り離しにより、左バンク7aにおける吸気バルブ13a,13b、排気バルブ15a,15bのリフト(開閉)は停止される。
このとき、右バンク7bの吸気用の各可変動弁装置20、排気用の動弁装置21は、先の低速モードのときと同様、低速用の吸気カムの変位が吸気バルブへ伝わり続け、排気カムの変位が排気バルブへ伝わり続けているから、一部の気筒(左バンク7aの気筒)を休止させた休筒モードに切り換わる。
こうしたエンジンの運転中、稼動するバルブ駆動ロッカ35では、荷重が加わる仕事、具体的にはロッカアーム部37の一方の端部37a(基端部)からカム追従ロッカ60,70からカム変位を受け、同荷重を他方の端部(先端部)から吸気バルブ13a,13bへ伝えるという動きにより、たわむ方向に応力が発生する。特にロッカアーム部37は、先端部にいくほど剛性が低くなる傾向にあるから、先端部37aに向うにしたがい応力が発生しやすい。
このとき、一対のロッカアーム部37は、先端部間(延出端部間)をバー部58で連結するという補強により、当該応力に耐える剛性が付与されている。
それ故、一対のロッカアーム部37は、変形や変位しにくい構造となり、吸気バルブ13a,13bを駆動する際、当該ロッカアーム部37が、変形、変位するなど無用な挙動が発生するのを抑えることができる。特にバルブ駆動ロッカ35の両端側で、カム変位の伝達の切換えを行なう複数系統の構造だと、一対のロッカアーム部37間の中心からオフセットした位置にカム変位の出力部があるので一対のロッカアーム部37に入力される荷重がばらつきやすいので、ロッカアーム部37がたわむ挙動が発生しやすいが、バー部58でロッカアーム部37の先端部37a,37a間を連結する構造により、たわみの発生が抑えられるので、バルブ駆動ロッカ35から出力されるカム変位が損なわれたり、バルブ駆動ロッカ35の剛性が損なわれたりするのを抑制できる。
しかも、一対のロッカアーム37部の基端部間が連結される構造だと(シリンダ43,51,リブ部59による)、当該一対のロッカアーム部37は、変形や変位がしにくい枠形、ここではほぼ角筒形の構造になるので、一層、高い剛性の付与が期待できる。そのうえ、バー部58は、ロッカアーム部37と一体にしたことで、鋳造などにより、バルブ駆動ロッカ35と一緒に成形することができ、バー部58の成形が容易となるうえ、部品点数の増加が抑えられる。
[第2の実施形態]
図15は、本発明の第2の実施形態を示す。本実施形態は、ロッカアーム部37とは別体な構造のバー構造を用いて、ロッカアーム部37の先端部37a,37a間を連結したものである。
例えばバー部58として、ロッカアーム部37の先端部間に配置されるバー部材58aと、同バー部材58aの両端部にそれぞれ形成された座面部58bとを組み合わせたバー58cを用い、同バー58cの各座面部58bを、ロッカアーム部37の各先端部37aに組み付くアジャストスクリュ部38を形成するナット38aと短シャフト38bとで共締めさせたものである。
こうした別体なバー58cを用いて、一対のロッカアーム部37の先端部間に連結させても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、別体なバー58cだと、種類を揃えておけば、多くの種類のバルブ駆動ロッカ35に容易に対応できる利点がある。むろん、他の方法や手段で、ロッカアーム部37に連結させるようにしても構わない。
但し、図15において、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付してその説明を省略する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば上述の実施形態では、カム追従ロッカに突き当て部を設け、バルブ駆動ロッカにピストンを設けたが、これとは反対に、カム追従ロッカにピストンを設け、バルブ駆動ロッカにピストンを設ける構造でも構わない。また上述した実施形態では、本発明をV形エンジンに適用した例を挙げたが、これに限らず、他の直列形といったシリンダの並び方の異なるエンジンやロッカシャフトを吸気用と排気用とに分けたDOHC式のエンジンに適用してもよい。
1…エンジン本体(内燃機関)、13a,13b…吸気バルブ、18…吸気用の可変動弁装置(可変動弁装置)、26…ロッカシャフト、30,33…吸気カム(カム)、35…バルブ駆動ロッカ、36…バルブ駆動ロッカのボス、37…ロッカアーム部(アーム部)、46、53…ピストン(受け部)、58…バー部、60,70…カム追従ロッカ、69,79…突き当て部、69a,79a…切換機構(切換部)。