JP4539063B2 - インクジェット用水系分散インクとインクジェット記録方法及びインクジェット捺染方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット用水系分散インクとそれを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット捺染方法に関するものである。
捺染の分野において、納期短縮、少量多品種生産への対応策として、近年インクジェット捺染方式が望まれている。
ポリエステル等の繊維の染色に対しては一般に分散染料が用いられるが、インクジェット用に分散染料を用いる場合、従来の捺染用の染料選択の基準である色調、堅牢性等の性能の他に、インクジェット記録方式では微細なノズルからの出射となるため、微細な粒子にするための分散適性、ノズル目詰まり防止、分散安定性等が問題となり、染料選択に対する制約が多くある。また、製造中または保存中にインク物性の変化及び固形分の析出がないこと等も大きな課題である。
特に分散染料を着色剤とするインクは、水性媒体中に着色剤微粒子が分散されている分散系であるため、インク中に含まれる粗大粒子は微小なごみ等の他に、分散している着色剤粒子が保存過程中に凝集してできる会合粒子があり、完全な溶液である染料インクと比較すると粗大粒子が生成しやすい。このため製造工程中に濾過や遠心分離を行うことによって、ノズルの目詰まりや固形分析出の原因となるインク中の粗大粒子を除去する方法が、特開昭64−48875号公報や特開平2−255875号公報に記載されている。
また、顔科を安定にインク組成物中に分散させる提案が種々なされている。例えば、特公昭55−35434号公報には顔科を分散する分散剤として親油性部分と親水性部分をもつ重合体の利用が提案されている。また、特公平4−5703号公報には顔料を分散する分散剤として、特定範囲の分子量を有する親油性部分と親水性部分を持つ重合体の使用が提案されている。
しかしながら、分散染料インクでは、製造時に粗大粒子を除去する方法では、充分な安定性が得られないこと、界面活性剤、分散剤等の種類を最適化しても完全に解決できるものではないことがわかってきた。
また、一方で、インク中に含まれる溶存気体が、その印刷物の解像度や鮮明さを損なったり、微細な気泡発生を引き起こす要因となり、それによる目詰まりがおこる場合がある。特開平10−298470号公報には、気体透過性のある中空糸膜内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を減圧することにより、インク中の溶存気体を透過、除去する方法が記載されている。しかしながら、これらも全てのインクに対して十分な効果を発揮するものではなく、分散染料インクにおいては脱気処理によっても完全に気泡を除去することは難しかった。
特許文献1には、濡れ剤として特定構造を有する界面活性剤を添加し、キャビテーションを抑える発明が開示されている。しかしながら、この技術を用いても界面活性剤に対して染料が溶解度を持つために、キャビテーションを抑えるほどに界面活性剤を添加すると、分散染料の結晶成長が起こることが明らかになった。
特開平11−263929号公報
上記の事実より、分散染料を用いた分散染料の溶解度を上げることなくキャビテーションを発生させない方策、即ち、溶解度を上げずに濡れ性を向上させる方法が好ましいことがわかる。
即ち、本発明の目的は、分散染料を用いたインクジェット用水系分散インクを造るには、インクの濡れ性の向上と、キャビテーション防止を共に達成でき、出射性と保存安定性に優れたインクジェット用水系分散インクと、それを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット捺染方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を行い、特に着色剤として分散染料を水系分散したインクジェットインクにおいて、極めて低いながらも溶解度を持つ分散染料の特徴に注目し、大幅な保存性改良をなし得る方策を見出した。
即ち、本発明の目的は、下記構成のいずれかを採ることにより達成される。

少なくとも分散染料分散剤と濡れ剤を含有するインクジェット用水系分散インクであって、前記インクは、前記濡れ剤を0.1〜100ppm含有しており、インク中における前記分散染料の溶解度が10 −3 以下であり、前記インクは、上記した1)〜3)のいずれか一つの組合せで前記分散染料と濡れ剤とを含有していることを特徴とするインクジェット用水系分散インク。

前記濡れ剤の含有量が1〜10ppmであることを特徴とする記載のインクジェット用水系分散インク。

前記濡れ剤の染料部分よりも極性が大きい前記置換基が、水酸基、アミノ基、ハロゲン基から選ばれることを特徴とする又は2記載のインクジェット用水系分散インク。

前記濡れ剤の分子量が、分散染料の80%以下であることを特徴とする〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用水系分散インク。

インク中における前記分散染料の溶解度が10−4以下であることを特徴とする〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用水系分散インク。

ノズル径が、30マイクロメートル以下であるインクジェットヘッドを用い、〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とするインクジェット記録方法。

ノズル径が、20マイクロメートル以下であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする6に記載のインクジェット記録方法。

駆動周波数が20kHz以上であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする6または7に記載のインクジェット記録方法。

駆動周波数が30kHz以上であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする6〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
10
インク吐出速度が6m/s以上であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする6〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
11
インク吐出速度が8m/s以上であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする6〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
12
ポリエステル繊維を含む布帛上に、〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用水系分散インクを用いて記録することを特徴とするインクジェット捺染方法。
分散染料を微粒子状に分散させたインクジェットインクに要求される性能は、分散の安定性が良く、粒子沈降が発生しないこと、ノズルやフィルター等を閉塞しないことなどである。
分散染料インクでは、染料の水や水溶性有機溶剤、界面活性剤、分散剤に対する溶解性が、分散粒子の保存性と出射安定性に極めて大きな影響を与えることがわかった。分散染料は、水に難溶であるが、幾分か溶解性を持っている。染料溶解度が低いインクにおいては、溶剤、分散剤と着色剤粒子との親和性が低いために濡れ性が悪く、完全に気泡を除去することが困難であることわかった。この様に、充分な脱気が出来ない場合、キャビテーションによる出射不良が発生する。
一方、染料溶解度が高いインクにおいては、インク保存中に、小粒子の染料が溶解して大粒子上に析出し、つまり結晶が成長し、粒子径がしだいに大きくなり、目詰まりや沈降を起こすことがわかった。
従って、キャビテーションを改良するために、従来用いていた方法のように、染料の溶解度を上げて親和性を持たせると、保存中に結晶成長するという問題が発生する。この様な問題を解決するためには、本発明のように濡れ剤を添加するのがよいことがわかった。
なお、本発明における濡れ剤とは、インクジェットインクに少量添加することにより、
分散染料を用いたインクの濡れ性向上と、キャビテーション防止を共に計ることが出来る添加物である。
その詳細構造は後段で説明するが、分散染料と化学構造が似ている、分散染料より分子量が小さく、従って分散染料粒子に吸着しやすい。極性基を有しているので、吸着した染料粒子と水との親和性を増し濡らしやすくする、といった特性を有する化合物である。
この濡れ剤は、分散染料粒子表面だけに吸着すれば良いために、多く添加する必要はなく、過多に添加すると析出したり、分散破壊を起こすといった弊害をもたらす。
本発明により、分散染料を用いたインクの濡れ性の向上と、キャビテーション防止を共に達成でき、出射性と保存安定性に優れたインクジェット用水系分散インクと、それを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット捺染方法を提供することができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
分散染料を微粒子状に分散させた、捺染用インクジェットインクに要求されることは、分散の安定性が良く、粒子沈降が発生しないこと、ノズルやフィルター等を閉塞しないことである。
分散染料を用いたインクジェット捺染インクにおいては、分散染料の媒体である水や水溶性有機溶剤、界面活性剤、分散剤に対する溶解性が、分散粒子の保存性と安定性に極めて大きな影響を与えることがわかった。
分散染料は、水に難溶ではあるが、幾分かは溶解性を持っている。特に、粒子径が小さくなると、溶解度が大きくなる。すなわち、粒子径分布が広いと、保存中に、小粒子が溶解して大粒子上に析出、つまり結晶が成長し、粒子径がしだいに大きくなり、目詰まりや沈降を起こす事がわかった。また、結晶成長速度は、染料の溶解度に左右される。即ち、溶解度が大きいと結晶成長速度が大きく、溶解度が小さいとその逆となる。
従って、溶解度がある程度大きく、また、粒子径分布のある分散染料インクにおいては、どうしても結晶成長が起こり、粗大粒子が生成してしまう。
また一方で、分散系のインクにおいては、完全に気泡を除去することが困難である。水性染料を使用した溶解系のインクでは、例えば、中空糸膜モジュールを使用して容易に脱気出来るものの、固体を水系にて分散し使用する分散系インクでは、前述の方法で固体表面に付着した気泡まで完全に取り去ることは難しい場合がある。その場合、充分な脱気が出来ずにキャビテーションによる出射不良が発生する。
本発明者は、種々検討の結果、染料溶解度が低いインク処方においては、溶剤、分散剤と着色剤粒子との親和性が低いために濡れ性が悪く、この場合は特に、完全に気泡を除去することが困難であることがわかった。
即ち、染料溶解度が高いと、結晶成長による目詰まりが発生し、染料溶解度が低いと充分な脱気が難しく、出射性に問題がある。従って、一定の染料溶解度を有するインク処方において、相反する2問題を同時に解決できる方策を見出す必要がある。
濡れ剤とは、分子量が該染料よりも小さく、濡れ剤を構成する原子数のうち9割以上の原子が形作る化学構造が染料と同じであり、染料と異なる部分の構造が該当する染料部分よりも極性が大きい置換基を有する化合物のことである。ここにおいて、極性が大きい置換基とは、いわゆる極性基(例えば、化学大辞典 東京化学同人社 p.589参照)としてより強い極性を有する基という意味である。
具体的には、ハロゲン基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基等は、代表的な極性基といえる。中でも、本発明の濡れ剤としては、ハロゲン基、水酸基またはアミノ基を有するものが好ましい。
本発明においては、この濡れ剤を染料に対し質量換算で0.1〜100ppm含有させるところに特徴がある。100ppmを超える量を添加すると、濡れ剤自体が析出したりすることがある。また、0.1ppmより少なくては本発明の効果が発現されない。特に好ましくは、1〜10ppmの範囲である。
インク中における染料溶解度が10-5以上10-3以下の範囲にあるときに、インクジェット捺染インクが結晶成長による目詰まりもなく、また、粒子表面への気泡の付着量も少なく、脱気の効果が大きいことをみいだしたものである。染料溶解度はさらに好ましくは10-5以上10-4以下の範囲である。
本発明において、インク中の染料溶解度の測定は、以下の方法にて行う。
染料を添加しないこと以外はインクと全く同じ組成で、溶解度測定液を作製し、この溶解度測定液に染料粉体を0.1%添加し、5時間撹拌を行う(25℃)。撹拌終了後、遠心分離器により未溶解の染料をすべて沈降させ、上澄の溶解部分を分取する。この染料が溶解した上澄部分に存在する染料の濃度をHPLCにて定量する。溶解度は通常用いられる様に、溶液100gあたりの溶質量(g)とした。
尚、HPLCは、特に選ばないが、例えば、Inert Sil ODS−2(逆相シリカ)をカラムとして用い、溶離液として0.1M酢酸アンモニウムBuffer(pH 5)、メタノール等を適宜組成を変えて、UV検出器(例えば検出波長 260nm)により測定できる。
特に、プリンター等に利用されるインクにおいては、インク中に含まれる溶存気体が、その印刷物の解像度や鮮明さを損なったり、微細な気泡発生を引き起こす要因となる。
インク中から溶存気体を脱気する方法としては、煮沸や減圧等の物理的方法により脱気する方法と、吸収剤をインク中に混入させる化学的方法等がある。いかなる手段によっても脱気を行うことは可能であるが、本発明においては、気体透過性のある中空糸膜内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を減圧することにより、インク中の溶存気体を透過、除去する方法が、インクの物性に悪影響を与えずに効率よくインク中の溶存気体を除去することができ好ましい。特に前記範囲に分散染料の平均粒径をもつときには、脱気の効率がよい。
また、超音波発生装置(例えば、SMT社 UH−600S、20kHz、600W)等を用いて、超音波処理をインクに行って脱気する方法等も好ましい。また、前記の中空糸膜を用いた減圧脱気時に、インク流路に、例えば超音波発生装置をとりつけ、超音波処理を行う方法を組み合わせる方法も好ましい。この方法によれば、脱気時のインク流速を変える事で、インクの脱気の度合いを調整でき、所望の溶存空気量に調整できる。
本発明においては、上記脱気操作を行うことによって、溶存空気濃度が、30ppm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、溶存空気濃度は、20ppm以下であり、最も好ましいのは10ppm〜0ppmである。実質的には完全に脱気することは不可能なので最低値は2ppm程度である。
溶存空気濃度は、溶存酸素濃度を測定し、空気中の酸素の割合を基にして求めることができる。
溶存酸素濃度は、オストワルド法(実験化学講座1基本操作[I]、241頁、1975年、丸善)や、マススペクトル法で測定することができるし、ガルバニ電池型やポーラログラフ型などの簡便な酸素濃度計や比色分析法で測定することができる。
また、溶存酸素濃度は市販の溶存酸素濃度計例えば、東亜電波工業社製DO−30A型等を用いて測定できる。溶存空気濃度は、溶存酸素濃度を測定し、空気中の酸素の割合を基にして求めた。
高精細な画像を得るためにノズル径が10〜50μmのインクジェットヘッドを用いて記録することが好ましい。粒状性より50μm以下が好ましく、液滴体積が小さくなりすぎて気流の影響を受けるため10μm以上が好ましい。
本発明に係わるのインクは、安定性に優れ、粗大分散染料粒子が少なく、ノズル径の小さい、即ち小液滴のインクジェット記録法に適するインクである。本発明に係わるインクジェット捺染インクは、前記10〜50μmのうち、ノズル径が、30マイクロメートル以下、さらに好ましくは、20マイクロメートル以下であるインクジェットヘッドを用いて、出射する際に、インクジェットヘッドの目詰まりや、出射不良がなく特に好ましい。
又、本発明に係わるインクジェット捺染インクは、駆動周波数が20kHz以上、更には駆動周波数が30kHz以上であるインクジェットヘッドと組み合わせ使用することができる。
また、インク吐出速度においても、6m/s以上、さらに好ましくは、インク吐出速度が8m/s以上であるインクジェットヘッドと組み合わせ使用し、安定に用いることができる。
このように、従来、分散染料インクを用いて、安定に駆動ができなかったヘッド構造、ヘッド駆動条件等を用いても、本発明に係わるインクジェット捺染インクは十分な出射性を得ることができた。
本発明に係わる捺染方法は、ポリエステル繊維を含む布帛上に、本発明に係わるインクジェット捺染インクを用いてインクジェット法により記録するものである。
本発明の捺染方法において使用する布帛を構成する素材としては、分散染料で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限はないが、中でも、ポリエステル、アセテート、トリアセテート等の繊維を含有するものが好ましい。その中でも、少なくともポリエステル繊維が含有されている布帛が特に好ましい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。又、本発明で使用し得る布帛としては、分散染料で染色可能な繊維が100%であることが好適であるが、レーヨン、綿、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛及び絹等との混紡織布又は混紡不織布等も捺染用布帛として使用することができる。又、上記の様な布帛を構成する糸の太さとしては、10〜100dの範囲が好ましい。
本発明に係わる捺染方法は、ポリエステル繊維を含む布帛上に、本発明に係わるインクジェット捺染インクを用いてインクジェット法により記録するものである。
本発明の捺染方法において使用する布帛を構成する素材としては、分散染料で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限はないが、中でも、ポリエステル、アセテート、トリアセテート等の繊維を含有するものが好ましい。その中でも、少なくともポリエステル繊維が含有されている布帛が特に好ましい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。又、本発明で使用し得る布帛としては、分散染料で染色可能な繊維が100%であることが好適であるが、レーヨン、綿、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛及び絹等との混紡織布又は混紡不織布等も捺染用布帛として使用することができる。又、上記の様な布帛を構成する糸の太さとしては、10〜100dの範囲が好ましい。
本発明に係わるインクジェット捺染方法の場合、均一な染色物を得るために、水溶性高分子類を布帛に前処理する前に、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留分(のり剤等)、よごれなどを洗浄しておくことが望ましい。洗浄に用いられる洗浄剤としては水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムといったアルカリ、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤といった界面活性剤、酵素等が用いられる。
本発明に係わる捺染方法においては、にじみ防止効果のため、前処理剤をパッド法、コーティング法、スプレー法などで付与せしめるのが好ましい(前処理工程)。その後、分散染料で染色することが可能な繊維が含有されている布帛上に、先に述べた構成のインクを用いてインクジェット記録方式で画像を形成した後(インク付与工程)、インクが付与されている布帛を熱処理し(発色工程)、更に熱処理された布帛を洗浄すること(洗浄工程)によって布帛への捺染が完了し、捺染物が得られる。
前処理としては、水溶性高分子類を布帛に前処理するなどの公知の方法から繊維素材やインクに適した方法を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、水溶性高分子、界面活性剤及び撥水剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの物質が0.2〜50質量%付与された布帛に対して使用すれば、高度なにじみ防止が可能であり、高精細な画像を布帛にプリントすることができ好ましい。
前処理に使用される具体的な水溶性高分子の例をあげる。天然水溶性高分子としては、トウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴムなどの多糖類、ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質、合成水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系ポリマなどを用いることができる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的には、アニオン系の界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、ナフタレン誘導体のスルホン酸塩等;カチオン系の界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等;両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体等;ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等;が挙げられる。又、撥水剤としては、例えば、シリコン、フッ素系及びワックス系のものが挙げられる。これらの、あらかじめ布帛に付与される水溶性高分子や界面活性剤は、インクジェットプリントをし、高温で発色させる際に、タール化などによるよごれの原因とならないために、高温環境に対して安定であることが好ましい。また、これらの、あらかじめ布帛に付与される水溶性高分子や界面活性剤は、インクジェットプリントをし、高温で発色させた後の洗浄処理で、布帛から取り除きやすいものが好ましい。
布帛に印字を行うインクジェット捺染方法は、インク出射後印字された布帛を巻き取り、加熱により発色し、布帛を洗浄、乾燥させることが望ましい。インクジェット捺染において、インクを布帛に印字しただ放置しておくだけではうまく染着しない。また長尺の布帛に長時間印字し続ける場合などは、布帛が延々と出てくるため床などに、印字した布帛が重なっていき場所をとるしそれは不安全でありまた予期せず汚れてしまう場合がある。そのために印字後、巻き取る操作が必要となる。この操作時に布帛と布帛の間に紙や布、ビニール等の印字に関わらない媒体を挟んでもかまわない。ただし途中で切断する場合や短い布帛に対しては必ずしも巻き取る必要はない。
発色工程は、プリント後布帛表面に付着したのみで、十分布帛に吸着・固着されていないインク中の染料を布帛に吸着・固着させることによりそのインク本来の色相を発現させる工程である。その方法としては、蒸気によるスチーミング、乾熱によるベーキング、サーモゾル、過熱蒸気によるHTスチーマー、加圧蒸気によるHPスチーマーなどが利用される。それらはプリントする素材、インクなどにより適宜選択される。また、印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても用途に合わせて乾燥・発色処理すればよく、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
分散染料を用いた染色の際は、高温で発色させる方法だけではなく、キャリヤーを用いてもよい。キャリヤーとして用いられる化合物は、染色促進が大きい、使用法が簡便、安定、人体や環境に対して負荷が少ない、繊維からの除去が簡単、染色堅牢度に影響しないといった特徴を持つものが好ましい。キャリヤーの例としてはo−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、メチルナフタリン、安息香酸アルキル、サリチル酸アルキル、クロロベンゼン、ジフェニルといったフェノール類、エーテル類、有機酸類、炭化水素類などを挙げることができる。これらは、ポリエステルのように100℃前後の温度での染色が難しい難染性繊維の膨潤と可塑化を促進し、分散染料を繊維内に入りやすくする。キャリヤーは、インクジェットプリントに使用する布帛の繊維にあらかじめ吸着させておいてもよいし、インクジェットインク中に含まれていてもよい。
加熱処理後は洗浄工程が必要である。なぜなら染着に関与しなかった染料が残留することで、色の安定性が悪くなり堅牢度が低下するからである。また、布帛に施した前処理物を除去することも必要である。そのままにしておくと堅牢性の低下ばかりでなく布帛が変色する。そのため除去対象物や目的に応じた洗浄が必須である。その方法は、プリントする素材、インクにより選択され、例えばポリエステルの場合一般的には、苛性ソーダ、界面活性剤、ハイドロサルファイトの混合液により処理するものである。その方法は、通常オープンソーパーなどの連続型や液流染色機などによるバッチ型で実施されるもので、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
洗浄後は乾燥が必要である。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
本発明における分散染料とは、スルホン酸、カルボキシ基などのイオン性の水溶性基をもたない非イオン性染料である。分散剤によって水に分散して合成繊維の染色に用いる。分散染料は、顔料と異なり、アセトンやジメチルホルムアミドなどの有機溶媒に可溶である。また、合成繊維への着色時には繊維中に分子状で拡散する。
はじめアセテート繊維用として開発されたが、今日ではポリエステル繊維用染料としての需要が多い。ポリエステル用染料はアセテート用染料より疎水性度、耐熱性の高いものが選ばれている。分散染料の母体はモノアゾ系、アミノアントラキノン系、ジフェニルアミン系の比較的小さな分子のものが用いられる。
本発明において好ましい分散染料としては、
C.I.Disperse Yellow 3,4,5,7,9,13,23,24,30,33,34,42,44,49,50,51,54,56,58,60,63,64,66,68,71,74,76,79,82,83,85,86,88,90,91,93,98,99,100,104,108,114,116,118,119,122,124,126,135,140,141,149,160,162,163,164,165,179,180,182,183,184,186,192,198,199,202,204,210,211,215,216,218,224,227,231,232、
C.I.Disperse Orange 1,3,5,7,11,13,17,20,21,25,29,30,31,32,33,37,38,42,43,44,45,46,47,48,49,50,53,54,55,56,57,58,59,61,66,71,73,76,78,80,89,90,91,93,96,97,119,127,130,139,142、
C.I.Disperse Red 1,4,5,7,11,12,13,15,17,27,43,44,50,52,53,54,55,56,58,59,60,65,72,73,74,75,76,78,81,82,86,88,90,91,92,93,96,103,105,106,107,108,110,111,113,117,118,121,122,126,127,128,131,132,134,135,137,143,145,146,151,152,153,154,157,159,164,167,169,177,179,181,183,184,185,188,189,190,191,192,200,201,202,203,205,206,207,210,221,224,225,227,229,239,240,257,258,277,278,279,281,288,298,302,303,310,311,312,320,324,328、
C.I.Disperse Violet 1,4,8,23,26,27,28,31,33,35,36,38,40,43,46,48,50,51,52,56,57,59,61,63,69,77、
C.I.Disperse Green 9、
C.I.Disperse Brown 1,2,4,9,13,19、
C.I.Disperse Blue 3,7,9,14,16,19,20,26,27,35,43,44,54,55,56,58,60,62,64,71,72,73,75,79,81,82,83,87,91,93,94,95,96,102,106,108,112,113,115,118,120,122,125,128,130,139,141,142,143,146,148,149,153,154,158,165,167,171,173,174,176,181,183,185,186,187,189,197,198,200,201,205,207,211,214,224,225,257,259,267,268,270,284,285,287,288,291,293,295,297,301,315,330,333、
C.I.Disperse Black 1,3,10,24等が挙げられる。
本発明においては、前記の通り、インクジェット捺染インクにおいて、インク中における染料溶解度、即ち、該インク分散系を構成する媒体への染料溶解度を10-3g/100g以下、10-5g/100g以上の範囲とするように、前記分散染料が、又、インクを構成するその他の成分が選択される。
分散染料を用いた捺染において高温処理で発色させる場合は、機械や布地の白場に染料が昇華することで汚染の原因とならないために、昇華堅牢度のよい分散染料を選定することが好ましい。
分散染料の含有量としては0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜13質量%がより好ましい。
分散染料は市販品のまま使用してもよいが、精製処理を行うことが好ましい。精製方法としては公知の再結晶方法、洗浄等を用いることができる。精製方法及び精製処理に用いる有機溶媒は染料の種類に応じて、適宜選択することが好ましい。
本発明の水溶性有機溶媒としては、例えば、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等)、一価アルコール類(例えばメタノール、エタノール、ブタノール等)、多価アルコールのアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、2,2’−チオジエタノール、アミド類(例えばN,N−ジメチルホルムアミド等)、複素環類(2−ピロリドン等)、アセトニトリル等が挙げられる。
水溶性有機溶媒量としては全インク質量に対して10〜60質量%が好ましい。
インクの粘度や染料を安定に保つため発色をよくするために、インク中に無機塩を添加してもかまわない。無機塩としてはたとえば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫化マグネシウム等が挙げられる。本発明を実施する場合、これらに限定されるものではない。
界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることが出来る。陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(たとえばエマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(たとえばニューポールPE−62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
これらの界面活性剤を使用する場合、単独又は2種類以上を混合して用いることが出来、インク全量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することにより、インクの表面張力を任意に調整することができ好ましい。
インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加してもかまわない。防腐剤・防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(たとえばPreventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(たとえばPROXEL GXL)などが挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明で使用するインクは、水不溶性の染料の場合は染料、分散剤、湿潤剤、媒体および任意の添加剤を混合し分散機を用いることによって分散することができる。分散機としては従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。
分散染料の粒径としては平均粒径として300nm以下であり、50nm以上、300nm以下の範囲に調整されるのが好ましい。平均粒径、最大粒径が大きいと、微細なノズルより出射するインクジェット捺染方法において、目詰まりも発生しやすくなり、安定出射できなくなる。平均粒子径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機により求めることができる。具体的粒径測定装置としては、例えばマルバーン社製ゼーターサイザー1000等を挙げることができる。
本発明に好ましく用いられる分散剤は、例えば、クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(たとえばデモールC)、クレゾールスルホン酸ナトリウムと2−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフタリンスルホン酸ナトリウム(たとえばデモールN)とβ−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩(たとえばバニレックスRN)、パラフィンスルホン酸ナトリウム(たとえばエフコール214)、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合物(たとえばフローレンG−700)等が挙げられる。
分散剤の使用量は、分散染料に対して、20〜200質量%が好ましい。分散剤が少ないと微粒子化や分散安定性が劣り、分散剤が多いと、微粒子化や分散安定性が劣り、粘度が高くなり好ましくない。これらの分散剤は単独で使用してもよいが、併用しても良い。
本発明の分散に好ましい湿潤剤とは、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、2−エチルへキシルスルホ琥珀酸ソーダ、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、フェノールの酸化エチレン付加物、アセチレンジオールの酸化エチレン付加物等である。
使用する分散染料の構造により、分散中に、発泡したり、ゲル化したり、流動性が悪くなる事が有るので、分散剤や湿潤剤は、湿潤能力や微粒子化能力や分散安定性の他、分散時の発泡、分散液のゲル化、分散液の流動性等を考慮して選定する必要がある。また、分散剤や湿潤剤は、布帛への染色性、染着率、均染性、移染性、色の冴え、堅牢度などに及ぼす影響や、高温で発色させる際には分散剤や湿潤剤のタール化により染色が不均一になること等も考慮して選定されることが好ましい。上記の要求を全て満たす分散剤は無いので、分散する染料に合わせて、最適な分散剤を選定して、必要に応じて、消泡剤等を添加する必要がある。
高温蒸熱法で染色する際に用いる捺染用インクジェットインクまたは捺染プリントに使用する布帛には染着助剤が含まれていることが好ましい。染着助剤は捺染布を蒸熱する際に、布状に凝縮した水と共融混合物を作り、再蒸発する水分の量を抑え、昇温時間を短縮する作用がある。さらに、この共融混合物は、繊維上の染料を溶解し染料の繊維への拡散速度を助長する作用がある。染着助剤としては尿素が挙げられる。
次に、本発明の具体的態様を実施例という形で示して説明するが、無論、本発明の態様はこれに限られるものではない。
なお、文中の「部」とは「質量部」を表す。
〔実施例1〕
〈インク中の染料溶解度の測定〉
染料を添加しないこと以外はインクと全く同じ組成で、溶解度測定液を作製する。この溶解度測定液に染料粉体を0.1質量%添加し、5時間撹拌を行う。撹拌終了後、遠心分離器により未溶解の染料をすべて沈降させ、上澄の溶解部分を分取する。この染料が溶解した上澄部分に存在する染料の濃度をHPLCにて定量した。溶解度は通常用いられる様に、溶液100gあたりの溶質量(g)とした。
HPLC測定条件装置
デガッサ:GL Science社製 Degassing unit Model
546B
ポンプ:日立製作所社製 Intelligent Pump L−6200
カラムガスオーブン:ガスクロ工業社製
検出器:日立製作所社製 UV−vis Detector L−4200
インテグレーター:日立製作所社製 GPC Integrater D−2520
サンプラー:日立製作所社製 Intelligent Auto Sampler
AS−4000
測定条件
カラム:Inert Sil ODS−2(逆相シリカ) 4.6mm ID×205mml
オーブン:40℃
流量:0.8ml/min
inj量:20μl
溶離液の組成:20分まで溶離液A:溶離液B=30:70
以後、溶離液A:溶離液B=0:100。
溶離液A 0.1M酢酸アンモニウムBuffer pH 5
溶離液B メタノール
検出波長:260nm
〈分散液−1〉
下記混合液をサンドグラインダーを用いて分散した。分散は平均粒径が200nmに到達したところで停止した。
分散染料(表1記載) 25部
グリセリン 25部
イオン交換水 25部
リグニンスルホン酸ナトリウム 25部
(バニレックスRN 日本製紙社製)
濡れ剤 表1に記載した種類と量
インクとしてからの粒径は、マルバーン社製ゼーターサイザー1000を用いて平均粒子径として測定した。
〈インク−1〉
さらに下記成分を混合、3μmメンブランフェイルターでろ過、脱気処理を行い、インク−1とした。
分散液−1 50部
エチレングリコール 40部
グリセリン 15部
プロキセルGXL(S)(アビシア社製) 0.01部
フローレンG−700(共栄社化学社製) 9部
イオン交換水 残部
なお、フローレンG−700は、あらかじめ、必要量の水酸化ナトリウムを用いて、中和した。
インク−1と同様にして、表1記載の染料と濡れ剤を用い、表1記載のインク−2〜17を作製した。各インクの作製にあたっては、エチレングリコール、フローレンG−700の添加量が増すと、染料溶解度が増すという性質を利用して、エチレングリコールの量を0〜40質量%、フローレンG−700の量を0〜15質量%、グリセリンの量を5〜15質量%の範囲で調節し、表1記載の溶解度になるように、各インクを調製した。
また、それぞれのインク処方における染料溶解度についても前記方法により測定した。
Figure 0004539063
Figure 0004539063
また、調製したインクは、以下の方法で脱気後、真空充填した。
気体透過性のある中空糸膜(三菱レーヨン社製)内にインクを通液し、中空糸膜の外表面側を水流アスピレータで減圧することにより、インク中の溶存気体を除去した。また、脱気時のインク流速を変えることで、溶存酸素濃度が2ppmとなるようにした。
溶存酸素濃度は市販の溶存酸素濃度計(東亜電波工業社製DO−30A型)を用いて、25℃、1気圧にて測定した。
[出射性評価1]
ノズル直径40μm、駆動周波数10kHz、ノズル数64のピエゾ型ヘッドを用いて、出射を行い出射性を評価した。駆動電圧は吐出速度が6m/sとなるように調整した。
・安定出射
25℃、相対湿度50%の環境下において各インク500mlを吐出し続け、インクがなくなるまでに発生した曲がり、欠射について下記評価基準で評価。
◎: 全ノズル出射
○: 1〜3ノズルで曲がり、欠射が見られる。
△: 4〜7のノズルで曲がり、欠射が見られる。
×: 8以上のノズルで曲がり、欠射が見られる。
[出射性評価2]
ノズル直径30μm、駆動周波数20kHz、ノズル数64のピエゾ型ヘッドを用い、液滴速度が8m/sになるように駆動電圧を調整した以外は、出射性評価1と同様に評価した。
[出射性評価3]
ノズル直径20μm、駆動周波数30kHz、ノズル数64のピエゾ型ヘッドを用い、液滴速度が8m/sになるように駆動電圧を調整した以外は、出射性評価1と同様に評価した。
[結晶成長度合い(加熱保存性)の観察]
作製したインク2Lを45℃にて4週間保存後、金属メッシュフィルター(#3500メッシュ、10nm径)を通過させ、フィルター表面を電子顕微鏡(TEM)で観察した。
◎ :結晶成長物全く無し
○ :結晶成長物ほとんどなし
△ :結晶成長物少しあり
× :結晶成長物あり
[フィルターろ過試験]
作製したインク2Lを40℃にて4週間保存後、金属メッシュフィルター(#3500メッシュ、10nm径)を通過させ、目詰まりの有無を調べた。
◎ :2L目終わりまで詰まりなし
○ :2L目詰まりなし多少有り
△ :1〜2Lの間で目詰まり発生
× :1L以下で目詰まり発生
以下に評価結果を示す。
Figure 0004539063
表1より明らかな如く、本発明内のインクNo.2〜4、7〜9、11〜13は、いづれの特性も良いことがわかる。しかし、本発明外のインクNo.1、5、6、10、14〜16のものは、少なくともいずれかの特性に問題があることが明らかである。
〔実施例2〕
実施例1で作製したインクを用いて、ポリエステル繊維を含む布上に、ノズル直径20μm、駆動周波数30kHz、ノズル数64のピエゾ型ヘッドを用いて、液適速度8m/sになるように駆動電圧を調整し、インクジェット捺染を行ったところ、本発明のインクジェット捺染インクを用いたものは、プリント画像濃度が高く、かつ滲み耐性も優れていた。更に、長期に亘るインクジェット捺染中にも出射性に問題を生じなかった。

Claims (12)

  1. 少なくとも分散染料分散剤と濡れ剤を含有するインクジェット用水系分散インクであって、前記インクは、前記濡れ剤を0.1〜100ppm含有しており、インク中における前記分散染料の溶解度が10 −3 以下であり、前記インクは、以下の1)〜3)のいずれか一つの組合せで前記分散染料と濡れ剤とを含有していることを特徴とするインクジェット用水系分散インク。
    1)次の分散染料1と濡れ剤1の組合せ
    Figure 0004539063
    2)次の分散染料2と濡れ剤2の組合せ
    Figure 0004539063
    3)次の分散染料3と濡れ剤3の組合せ
    分散染料3
    アミノアントラキノン母体を有する分散染料
    濡れ剤3
    構成原子数のうち9割以上の原子が形作る、染料と同じ構造としてアミノアントラキノン母体を有する化合物であって、該化合物の分子量が該分散染料3よりも小さく、分散染料3と異なる部分の構造が、該当する染料部分よりも極性が大きい、ハロゲン基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基の少なくとも1つの置換基を有する化合物。
  2. 前記濡れ剤の含有量が1〜10ppmであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット用水系分散インク。
  3. 前記濡れ剤の染料部分よりも極性が大きい前記置換基が、水酸基、アミノ基、ハロゲン基から選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット用水系分散インク。
  4. 前記濡れ剤の分子量が、分散染料の80%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用水系分散インク。
  5. インク中における前記分散染料の溶解度が10−4以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用水系分散インク。
  6. ノズル径が、30マイクロメートル以下であるインクジェットヘッドを用い、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とするインクジェット記録方法。
  7. ノズル径が、20マイクロメートル以下であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
  8. 駆動周波数が20kHz以上であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェット記録方法。
  9. 駆動周波数が30kHz以上であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. インク吐出速度が6m/s以上であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. インク吐出速度が8m/s以上であるインクジェットヘッドを用い、前記インクジェット用水系分散インクを出射することを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  12. ポリエステル繊維を含む布帛上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用水系分散インクを用いて記録することを特徴とするインクジェット捺染方法。
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