以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、以下では、最外層であるカバーの成形において本発明を適用した実施例が主として説明される。本発明は、中間層の成形においても適用されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法で得られたゴルフボール2が示された一部切り欠き断面図である。このゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4を覆う補強層5と、この補強層5を覆うカバー6とを備えている。コア4は、球状のセンター8と、このセンター8を覆う中間層10とからなる。カバー6の表面には、多数のディンプル12が形成されている。カバー6の表面のうちディンプル12以外の部分は、ランド14である。このゴルフボール2は、カバー6の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
センター8は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点からポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
センター8の架橋には、通常は共架橋剤が用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物には、共架橋剤と共に有機過酸化物が配合されるのが好ましい。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
ゴム組成物には、充填剤、硫黄化合物、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
センター8の直径は30.0mm以上、特には35.0mm以上である。センター8の直径は41.5mm以下、特には41.0mm以下である。センター8に、研磨、ブラッシング、フレーミング、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。センター8が2以上の層から構成されてもよい。センター8と中間層10との間に、熱可塑性樹脂組成物からなる他の層が設けられてもよい。
中間層10は、例えば熱可塑性樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、アイオノマー樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー及び熱可塑性ポリスチレンエラストマーが例示される。特に、アイオノマー樹脂が好ましい。アイオノマー樹脂は、高弾性である。後述されるように、このゴルフボール2のカバー6は極めて薄い。このゴルフボール2がドライバーで打撃されると、中間層10が大きく変形する。アイオノマー樹脂が用いられた中間層10は、ドライバーでのショットにおける飛行性能に寄与する。アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用される場合は、飛行性能の観点から、アイオノマー樹脂が基材ポリマーの主成分とされる。全基材ポリマーに占めるアイオノマー樹脂の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85%以上が特に好ましい。本発明で得られるゴルフボール2は、中間層10を有しなくても良い。中間層10は、複数層設けられてもよい。
好ましくは、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との共重合体におけるカルボン酸の一部が金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂が用いられる。好ましいα−オレフィンは、エチレン及びプロピレンである。好ましいα,β−不飽和カルボン酸は、アクリル酸及びメタクリル酸である。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7329」及び「ハイミランMK7320」;デュポン社の商品名「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9910」及び「サーリン9945」;並びにエクソン社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。
飛行性能の観点から、中間層10の厚みは0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.7mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、厚みは2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましい。なお、センター8の外側に中間層10を形成する際に本発明を適用する場合、中間層10の厚みは1.0mm以下とされる。
中間層10と、補強層5又はカバー6との密着の観点から、中間層10に表面処理が施され、その粗度が高められることが好ましい。表面処理の具体例としては、ブラッシング、研磨等が挙げられる。
補強層5は、中間層10とカバー6との間に介在している。後述されるように、このゴルフボール2のカバー6は極めて薄い。薄いカバー6がクラブフェースのエッジで打撃されると、シワが生じやすい。シワは、カバー6が中間層10に対してずれることで生じる。補強層5は、中間層10に対するカバー6のズレを防止する。補強層5の存在により、シワが抑制される。補強層5は、中間層10と堅固に密着し、カバー6とも堅固に密着する。この補強層5により、カバー6の破壊が抑制される。補強層5を備えたゴルフボール2は、耐久性に優れる。補強層5は、ゴルフクラブでゴルフボール2が打撃されたときのエネルギーロスを軽減し、ゴルフボール2の反発性能を高める。
補強層5の基材ポリマーには、二液硬化型熱硬化性樹脂が好適に用いられる。二液硬化型熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂及びセルロース系樹脂が挙げられる。補強層5の機械特性(例えば破断強度)及び耐久性の観点から、二液硬化型エポキシ樹脂及び二液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
二液硬化型エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂がポリアミド系硬化剤で硬化されることで得られる。二液硬化型エポキシ樹脂に用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂が例示される。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリン等のエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールFとエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。ビスフェノールAD型エポキシ樹脂は、ビスフェノールADとエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。柔軟性、耐薬品性、耐熱性及び強靭性のバランスの観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
ポリアミド系硬化剤は、複数のアミノ基と、1個以上のアミド基を有する。このアミノ基が、エポキシ基と反応し得る。ポリアミド系硬化剤の具体例としては、ポリアミドアミン硬化剤及びその変性物が挙げられる。ポリアミドアミン硬化剤は、重合脂肪酸とポリアミンとの縮合反応によって得られる。典型的な重合脂肪酸は、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸を多く含む天然脂肪酸類が触媒存在下で加熱されて合成されることで得られる。不飽和脂肪酸の具体例としては、トール油、大豆油、亜麻仁油及び魚油が挙げられる。ダイマー分が90質量%以上であり、トリマー分が10質量%以下であり、且つ水素添加された重合脂肪酸が好ましい。好ましいポリアミンとしては、ポリエチレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン及びそれらの誘導体が例示される。
エポキシ樹脂とポリアミド系硬化剤との混合において、エポキシ樹脂のエポキシ等量とポリアミド系硬化剤のアミン活性水素等量との比は、1.0/1.4以上1.0/1.0以下が好ましい。
二液硬化型ウレタン樹脂は、主剤と硬化剤との反応によって得られる。ポリオール成分を含有する主剤とポリイソシアネート又はその誘導体を含有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ウレタン樹脂や、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤と活性水素を有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ウレタン樹脂が用いられうる。特に、ポリオール成分を含有する主剤とポリイソシアネート又はその誘導体を含有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
主剤のポリオール成分としてウレタンポリオールが用いられることが、好ましい。ウレタンポリオールは、ウレタン結合と、少なくとも2以上のヒドロキシル基を有する。好ましくは、ウレタンポリオールは、その末端にヒドロキシル基を有する。ウレタンポリオールは、ポリオール成分のヒドロキシル基がポリイソシアネートのイソシアネート基に対してモル比で過剰になるような割合で、ポリオールとポリイソシアネートとが反応させられることによって得られうる。
ウレタンポリオールの製造に使用されるポリオールは、複数のヒドロキシル基を有する。重量平均分子量が50以上2000以下、特には100以上1000以下のポリオールが好ましい。低分子量のポリオールとして、ジオール及びトリオールが挙げられる。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。トリオールの具体例としては、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールが挙げられる。高分子量のポリオールとして、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)のようなポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)のような縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートのようなポリカーボネートポリオール;並びにアクリルポリオールが挙げられる。2種以上のポリオールが併用されてもよい。
ウレタンポリオールの製造に使用されるポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネートの具体例としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)のような脂環式ポリイソシアネート;並びに脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。2以上のポリイソシアネートが併用されてもよい。耐候性の観点から、TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI及びH12MDIが好ましい。
ウレタンポリオール生成のためのポリオールとポリイソシアネートとの反応では、既知の触媒が用いられうる。典型的な触媒は、ジブチル錫ジラウリレートである。
補強層5の強度の観点から、ウレタンポリオールに含まれるウレタン結合の比率は0.1mmol/g以上が好ましい。補強層5のカバー6への追従性の観点から、ウレタンポリオールに含まれるウレタン結合の比率は5mmol/g以下が好ましい。ウレタン結合の比率は、原料となるポリオールの分子量の調整及びポリオールとポリイソシアネートとの配合比率の調整により調整されうる。
主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、ウレタンポリオールの重量平均分子量は4000以上が好ましく、4500以上がより好ましい。補強層5の密着性の観点から、ウレタンポリオールの重量平均分子量は20000以下が好ましく、15000以下がより好ましく、10000以下が特に好ましい。
補強層5の密着性の観点から、ウレタンポリオールの水酸基価(mgKOH/g)は15以上が好ましく、73以上がより好ましい。主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、ウレタンポリオールの水酸基価は130以下が好ましく、120以下がより好ましい。
主剤が、ウレタンポリオールとともに、ウレタン結合を有さないポリオールを含有してもよい。ウレタンポリオールの原料である前述のポリオールが、主剤に用いられうる。ウレタンポリオールと相溶可能なポリオールが好ましい。主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、主剤におけるウレタンポリオールの比率は、固形分換算で、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。理想的には、この比率は100質量%である。
硬化剤は、ポリイソシアネート又はその誘導体を含有する。ウレタンポリオールの原料である前述のポリイソシアネートが、硬化剤に用いられうる。
補強層5が、着色剤(典型的には二酸化チタン)、リン酸系安定剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、二液硬化型熱硬化性樹脂の主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
ゴルフボール2の耐久性の観点から、補強層5の厚みTrのカバー6の厚みTcに対する比(Tr/Tc)は0.005以上が好ましく、0.010以上がより好ましく、0.020以上が特に好ましい。比(Tr/Tc)が過大であると、ドライバー、ロングアイアン及びミドルアイアンでのショットにおける反発係数が不十分となる。この観点から、比(Tr/Tc)は3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。
ゴルフボール2の耐久性の観点から、補強層5の厚みTrは0.003mm以上が好ましく、0.005mm以上がより好ましい。補強層5が容易に形成されるとの観点から、厚みは0.30mm以下、さらには0.10mm以下、さらには0.05mm以下、さらには0.02mm以下が好ましい。厚みは、ゴルフボール2の断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により中間層10の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。
ゴルフボール2の耐久性の観点から、補強層5の引張強さは150kgf/cm2以上が好ましく、200kgf/cm2以上がより好ましい。打球感の観点から、引張強さは500kgf/cm2以下が好ましい。引張強さは、「JIS K5400」の規定に準拠して測定される。測定に供される試料は、塗料組成物が試験板にスプレーガンで塗布されることで得られる。塗料組成物は、40℃の雰囲気化で24時間保持される。測定時の引張速度は、50mm/minである。
補強層5の鉛筆硬度は、4B以上が好ましい。この補強層5は、クラブフェースのエッジで打撃されたときのカバー6のズレを防止し、シワを抑制する。この観点から、鉛筆硬度は3B以上がより好ましく、B以上がより好ましい。鉛筆硬度が高すぎると、クラブフェースのエッジで打撃されたときに補強層5がカバー6に追従しにくい。追従が不十分な場合は、補強層5が切断され、シワが発生する。シワ抑制の観点から、鉛筆硬度は3H以下が好ましく、2H以下がより好ましい。鉛筆硬度は、「JIS K5400」の規格に準拠して測定される。
カバー6は、熱可塑性樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性ポリスチレンエラストマー及びアイオノマー樹脂が例示される。基材ポリマーとして熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられることが好ましい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、軟質である。熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるカバー6を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなるカバー6は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、カバー6の耐擦傷性能にも寄与する。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。ポリウレタン成分の硬化剤としては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。特に、脂環式ジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートは主鎖に二重結合を有さないので、カバー6の黄変が抑制される。しかも、脂環式ジイソシアネートは強度に優れるので、カバー6の傷つきが抑制される。2種以上のジイソシアネートが併用されてもよい。
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。汎用性及び加工性の観点から、H12MDIが好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)が例示される。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が例示される。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの具体例としては、BASFジャパン社の商品名「エラストランXNY90A」、商品名「エラストランXNY97A」、商品名「エラストランXNY585」及び商品名「エラストランXKP016N」;並びに大日精化工業社の商品名「レザミンP4585LS」及び商品名「レザミンPS62490」が挙げられる。
カバー6において、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと他の樹脂とが併用される場合は、コントロール性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが基材ポリマーの主成分とされる。全基材ポリマーに占める熱可塑性ポリウレタンエラストマーの比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
カバー6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。比重調整の目的で、カバー6にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
カバー6の公称厚みTは、1.0mm以下である。前述のように、カバー6は低硬度である。低硬度なカバー6は、ゴルフボール2の反発係数の面では不利である。ドライバーでのショットでは、ゴルフボール2の中間層10及びセンター8も大きく変形する。カバー6の公称厚みTが1.0mm以下に設定されることにより、カバー6が低硬度であっても、ドライバーでのショットにおける反発係数にカバー6が大幅な悪影響を与えることがない。飛行性能及び成形容易の観点から、カバー6の公称厚みTは0.8mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましく、0.5mm以下が特に好ましい。カバー6の成形容易の観点から、公称厚みTは0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。
図2は、図1のゴルフボール2の製造に用いられる第一成形型18の一部が示された断面図である。第一成形型18は、ハーフシェル46を多数備えた予備成形体44(図3参照)の成形型である。第一成形型18は、上型20及び下型22からなる。上型20は、平坦部24と半球状凸部26とを備える。下型22は、平坦部28と半球状凹部30とを備える。半球状凸部26の半径は、半球状凹部30の半径よりも小さい。上型20と下型22とが合わされると、半球状凸部26と半球状凹部30との間にスペースが形成される。上型20と下型22とが合わされると、上型20の平坦部24と下型22の平坦部28との間にもスペースが形成される。好ましくは、第一成形型18には、フッ素樹脂コーティング粗面状無電解メッキ処理が施される。この処理では、まず第一成形型18の本体に無電解メッキが施される。典型的には、無電解ニッケルメッキが施される。次に、このメッキ層の表面が、化学処理で粗面化される。次に、このメッキ層にフッ素樹脂が塗布され、焼成される。焼成により、フッ素樹脂がメッキ層の微小凹部に入り込む。
半球状凹部30には、凹部31が設けられている。凹部31は半球状凹部30内に局所的に設けられている。凹部31は、予備成形体44の外面に突起部45を形成する。
図3は、図1のゴルフボール2の製造に用いられる第二成形型32の一部が示された断面図である。第二成形型32は、上型34及び下型36からなる。上型34及び下型36のそれぞれは多数のキャビティ面38を備えており、このキャビティ面38によって半球状のキャビティが形成されている。上型34と下型36とが合わされることにより、球状キャビティが形成される。キャビティ面38には多数のピンプル40が形成されている。
このゴルフボール2の製造では、まず基材ゴム、架橋剤及び各種添加剤が混練され、ゴム組成物が得られる。次に、このゴム組成物が、上型及び下型からなり球状キャビティを備えた成形型(図示されず)に投入される。次に、この成形型が締められる。次に、ゴム組成物は成形型を介して加熱される。加熱により、ゴムが架橋反応を起こす。架橋により、ゴム組成物が硬化する。成形型が開かれ、球体であるセンター8が取り出される。センター8は球体である。
このセンター8は、上型及び下型からなり球状キャビティを備えた成形型(図示されず)に投入される。このセンター8の周りに、溶融樹脂組成物が、射出成形法によって注入される。この樹脂組成物が固化し、中間層10が形成される。こうして、センター8及び中間層10からなるコア4が得られる。コア4は球体である。中間層10が、圧縮成形法によって成形されてもよい。中間層10を圧縮成型法で成形する場合、中間層10を成形するためのハーフシェルに、本発明に係る凸部(突起部など)が設けられる。
次に、主剤及び硬化剤が溶剤に溶解又は分散した液が、中間層10の表面に塗布される。作業性の観点から、スプレーガンによる塗布が好ましい。塗布後に溶剤が揮発し、主剤と硬化剤とが反応して、補強層5が形成される。好ましい溶剤としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール及び酢酸エチルが例示される。こうして、コア4及び補強層5からなる球体41(図3参照)が得られる。
一方、熱可塑性樹脂及び添加剤がブレンドされ、押出機から押し出されて、樹脂組成物が得られる。次に、この樹脂組成物が所定サイズに切断される。切断により、ペレット42(図2参照)が得られる。次に、このペレット42が、第一成形型18に投入される。図2に示されるように、ペレット42は下型22の半球状凹部30に載置される。次に、上型20に対して下型22が相対的に上昇し、型締めがなされる。型締めは通常、プレス機によってなされる。型締めにより、ペレット42は加圧され、かつ加熱される。加圧と加熱とにより樹脂組成物は流動し、上型20と下型22との間のスペースが樹脂組成物で充填される。次に、第一成形型18が冷却される。冷却により、樹脂組成物の温度も下降する。温度が十分に下がった段階で第一成形型18が開かれ、予備成形体が取り出される。前述のように、第一成形型18にはフッ素樹脂コーティング粗面状無電解メッキ処理が施されているので、予備成形体の脱型は容易になされうる。図3に示されるように、予備成形体44は多数のハーフシェル46を備えている。ハーフシェル46は、碗状である。ハーフシェル46は、前述した突起部45を有している。なお、ハーフシェルは、射出成型法(インジェクション)によって作製されてもよい。
次に、図3に示されるように、2枚の予備成形体44で球体41が挟まれる。球体41は、2枚のハーフシェル46により被覆される。球体41を被覆した状態において、突起部45は球体41側と反対の側(即ち外側)に突出する。次に、予備成形体44及び球体41が、開かれている第二成形型32に投入される。ハーフシェル46及び球体41は、通常は下型36のキャビティ面38に載置される。
次に、上型34に対して下型36が相対的に上昇し、下型36が上型34に接近する。この操作は通常、プレス機によってなされる。接近の速度は、3.0mm/sec以上200.0mm/sec以下である。この速度は、速い。速い速度により、短いサイクルタイムが達成される。この工程は、接近工程と称される。
上型34と下型36との距離が所定値に達した段階で、接近工程は終了する。その後は、0.01mm/sec以上1.0mm/sec以下の速度で、下型36が上型34に接近する。ハーフシェル46の熱可塑性樹脂組成物は、球状キャビティ内で加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより樹脂組成物が流動し、球体41の周りを覆う。余剰の樹脂組成物は、球状キャビティから流出する。この工程は、型締め工程と称される。
次に、プレス機の圧力が高められる。ハーフシェル46の樹脂組成物は、球状キャビティ内で、型締め工程の圧力よりも高い圧力で加圧される。この工程は、高圧工程と称される。高圧工程により、上側のハーフシェル46と下側のハーフシェル46とが堅固に結合する。高圧工程により、ピンプル40の形状が正確に反映されたディンプル12が形成される。
次に、第二成形型32が締められた状態で、この第二成形型32が冷却される。冷却により、ハーフシェル46の樹脂組成物が固化する。この樹脂組成物は、カバー6を構成する。この工程は、固化工程と称される。固化の後に第二成形型32が開かれ、ゴルフボール2が取り出される。
前述のように型締め工程では、0.01mm/sec以上1.0mm/sec以下の速度で下型36が上型34に接近する。この速度は、極めて遅い。第二成形型32はゆっくりと移動するので、ハーフシェル46の内側及びハーフシェル46とキャビティ面38との間に存在するエアが、球状キャビティの外へと排出されやすい。この製造方法では、ゴルフボール2へのエアの残留が抑制される。エアが残留していないゴルフボール2は、耐久性に優れる。
前述のように型締め工程では、ハーフシェル46の樹脂組成物が流動する。第二成形型32はゆっくりと移動するので、樹脂組成物の急激な流動は生じない。この製造方法では、樹脂組成物の流動に伴う補強層5の損傷が抑制される。このゴルフボール2は健全な補強層5を備えるので、耐久性に優れる。
中間層10は熱可塑性樹脂組成物からなるので、型締め工程において中間層10への熱伝導が大きいと、この中間層10が軟化する。もし中間層10が急激に流動すれば、補強層5は大きな損傷を受ける。第二成形型32はゆっくりと移動するので、中間層10の急激な流動は生じない。この製造方法では、中間層10の流動に伴う補強層5の損傷が抑制される。このゴルフボール2は健全な補強層5を備えるので、耐久性に優れる。
耐久性の観点から、型締め工程において下型36が上型34に接近する速度は0.8mm/sec以下がより好ましく、0.5mm/sec以下がさらに好ましく、0.2mm/sec以下が特に好ましい。
本実施形態のゴルフボール2のカバー6の公称厚みTは、0.1〜1.0mmである。ハーフシェル46の厚みは、カバー6の公称厚みTに対応した値に設定される。ハーフシェル46の厚みは、カバー6の体積と、突起部45の体積とを考慮して設定される。カバー6の体積は、ディンプル12の容積を考慮して設定される。具体的には、ハーフシェル46の厚み(後述するハーフシェル本体49の平均厚み。換言すれば、突起部45を除いた部分におけるハーフシェル46の平均厚み。)は、0.03mm〜1.0mmである。このハーフシェル46の厚みは、薄い。
厚みが薄く且つ突起部45が設けられていないハーフシェル46が用いられた場合、型締め工程において球体41とハーフシェル46との間のエアが抜けにくい。突起部45により、球体41とハーフシェル46との間のエアが抜けやすくなる。突起部45は、ゴルフボール2へのエアの残留(エア噛み込み)を抑制する。
図4は、ハーフシェル46の拡大断面図である。ハーフシェル46は、突起部45と、ハーフシェル本体49とからなる。凸部としての突起部45は、ハーフシェル46の外面に設けられている。突起部45は、ハーフシェル46の外面に設けられている。突起部45は、ハーフシェル46の径方向外側に向かって突出している。ハーフシェル46の内面47は、実質的に半球状である。ハーフシェル本体49の外面は、実質的に半球状である。ハーフシェル本体49は、緯度及び経度に関わらず厚みが一定である。ハーフシェル46の厚みは、突起部45部分で局所的に厚い。突起部45は、ハーフシェル本体49よりも厚い。
型締め工程の初期段階では、突起部45は溶けずに残っている。突起部45は、突起部45以外の部分よりも優先的にキャビティ面38と接しやすい。キャビティ面38と接した突起部45は、ハーフシェル46を球体41に押し付ける。突起部45は、ハーフシェル本体49の外面とキャビティ面38との接触を阻害する。キャビティ面38との接触を阻害されたハーフシェル本体49は、加熱されにくい。加熱が抑制された(低温の)ハーフシェル46は、比較的高い剛性を有する。加熱が抑制されたハーフシェル46は、型くずれしにくい。突起部45は、ハーフシェル46の温度上昇を抑えつつハーフシェル46を球体41に押し付ける。加熱が抑制されたハーフシェル46は、ハーフシェル46と球体41との間のエアを押し出しやすい。ハーフシェル46の高い剛性により、ハーフシェル46と球体41との間のエアが排出されやすくなる。突起部45は、ハーフシェル46の加熱が進行する前にハーフシェル46を球体41に押しつける役割を果たす。
突起部45が設けられていない場合、ハーフシェル46はキャビティ面38と接触しやすいため、ハーフシェル46の加熱が進行しやすい。加熱度が高い(高温の)ハーフシェル46は、剛性が低い。特に、ハーフシェル46の厚みが1.0mm以下である場合、ハーフシェル46は加熱されやすく、剛性低下しやすい。加熱され剛性が低下したハーフシェル46は、ハーフシェル46と球体41との間のエアを押し出しにくい。突起部45がなく且つ薄いハーフシェルは、エアを噛み込みやすい。
突起部45は、上記型締め工程において平準化される。型締め工程において加圧と加熱とが進行すると、突起部45は溶けて流動する。完成品のゴルフボール2において、突起部45(凸部)は存在しない。
ハーフシェル46の外面に設けられる凸部は、上記実施形態のような突起部に限定されず、例えば筋状又はリブ状の凸部でもよい。また、凸部としての突起部の形状は特に限定されない。突起部の形状として、円錐形状、円柱形状、略半球形状、などが挙げられる。ハーフシェル成形型(上記実施形態における第一成形型18)からの脱型のしやすさの観点から、複雑な形状は好ましくなく、例えば略半球形状が好ましい。凸部の形状は、当該凸部以外の部分よりもハーフシェル46の径方向外側に突出している限りどのような形状でもよい。
エア噛み込みを抑制する観点から、凸部(突起部など)の高さHt(図4参照)は0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上であり、、特に好ましくは0.3mm以上である。凸部が溶けきらずに残存することを防止する観点から、高さHtは5mm以下が好ましく、より好ましくは4mm以下であり、特に好ましくは3mm以下である。なお、高さHtは、ハーフシェルの球面(外面)からの最大高さである。高さHtは、ハーフシェルの径方向における高さである。
1個のハーフシェル当たり複数の凸部(突起部など)を設ける場合、複数の凸部の高さHtは、同一とされてもよく、異なっていても良い。複数の凸部の高さを実質的に同一とすると、ハーフシェル全体がより均等に球体(コアやセンターなど)に押し付けられ、エア噛み込みが一層抑制されうる点で好ましい。
エア噛み込みを抑制する観点から、凸部(突起部など)の数は、ハーフシェル1個当たり1個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。凸部の残存防止又はハーフシェルの加熱を阻害しすぎない観点から、凸部の数は、ハーフシェル1個当たり50個以下が好ましく、25個以下がより好ましい。
凸部(突起部など)は、緯度θ(図4参照)を20度以上90度以下とする位置に設けられるのが好ましい。緯度θが20度以上とされることにより、ハーフシェルの頂部側にエアが滞留することが抑制され、エアが抜けやすくなる。緯度θは25度以上がより好ましく、30度以上が特に好ましい。緯度θは、ハーフシェルの赤道で0度であり、ハーフシェルの頂点で90度である。
図5は、1個のハーフシェル50当たり3個の突起部52を備えた変形例の予備成形体54の平面図である。図5は、ハーフシェル50を外側から見た図である。ハーフシェル50は、3個の突起部52を有する。3つの突起部52は、緯度θが同一である。3つの突起部52は、経度が120度ずつ相違する。図5において、α1、α2及びα3は120度である。緯度が同一とされ且つ緯度が均等に相違した複数のハーフシェルを設けることにより、凸部(突起部など)によるハーフシェルの球体への押し付けが均等になされやすくなる。
カバー6の硬度Hcは、54以下が好ましい。軟質なカバー6が採用されることにより、ショートアイアンでのショットにおける良好なコントロール性能が達成されうる。また、軟質なカバー6とした場合、ハーフシェル46も軟質となり、ハーフシェル46の剛性が低くなる。突起部45はハーフシェル46の剛性の低さを補い、ハーフシェル46によるエアの押し出し性を向上させる。コントロール性能の観点及び本発明の効果を顕在化させる観点から、硬度Hcは50以下、さらには47以下が好ましい。ドライバー、ロングアイアン及びミドルアイアンでのショットにおける飛行性能の観点から、硬度は20以上、さらには23以上、さらには25以上が好ましい。
ドライバーでのショットにおける飛距離性能の観点から、中間層10の硬度Hmは、55以上が好ましく、58以上がより好ましく、60以上が特に好ましい。硬度Hmが極端に大きいと、ゴルフボール2が打撃されたときに良好なフィーリングが得られにくい。この観点から、硬度Hmは72以下が好ましく、70以下がより好ましく、68以下が特に好ましい。
なお、カバー6の硬度Hc及び中間層10の硬度Hmは、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して測定される。測定には、スプリング式硬度計ショアD型が取り付けられた自動ゴム硬度計(高分子計器社の商品名「LA1」)が用いられる。測定には、熱プレスで成形された、カバー6と同一の材料からなる、厚みが約2mmであるシートが用いられる。測定に先立ち、シートは23℃の温度下に2週間保管される。測定時には、3枚のシートが重ね合わされる。
高圧工程における圧縮力は、17652N以上が好ましい。圧縮力が17652N以上に設定されることにより、ハーフシェル46の樹脂組成物の過剰の流出が抑制され、偏肉が抑制される。圧縮力が17652N以上に設定されることにより、中間層10の樹脂組成物の流出も抑制される。この観点から、圧縮力は20594N以上がより好ましく、26478N以上が特に好ましい。圧縮力が過大であると高価な設備が必要なので、圧縮力は40207N以下が好ましい。圧縮力とは、高圧工程においてプレス機によって第二成形型32に加えられる最大の力が、第二成形型32が有する球状キャビティの数で除された値である。プレス機によって第二成形型32に加わる力とは、プレス機のラムの圧力にこのラムの断面積が乗じられた値である。
高圧工程の時間は、30秒以上300秒以下が好ましい。時間が30秒以上に設定されることにより、上下のハーフシェル46が堅固に接合される。この観点から、時間は70秒以上がより好ましく、100秒以上が特に好ましい。時間が300秒以下に設定されることにより、中間層10の樹脂組成物の流出が抑制される。この観点から、時間は260秒以下がより好ましく、230秒以下が特に好ましい。偏肉抑制の観点から、型締め工程の終了後直ちにプレス機の圧力が高められることが好ましい。
上下のハーフシェル46の合計体積の、カバー6の体積に対する比率は、110%以上130%以下が好ましい。この比率が110%以上に設定されることにより、エアの残留が生じにくい。この観点から、比率は120%以上がより好ましい。この比率が130%以下に設定されることにより、樹脂組成物の過剰な流出による偏肉が防止される。この観点から、比率は125%以下がより好ましい。
中間層10は、凹陥部(図示されない)を備えていてもよい。凹陥部は、ディンプル12の直下に形成される。この凹陥部は、ディンプル12とともに、型締め工程及び高圧工程において、ピンプル40によって成形される。凹陥部が存在することにより、ディンプル12の直下におけるカバー6の厚みが確保される。このゴルフボール2では、繰り返し打撃されたときにディンプル12がクラックの起点となることが抑制される。このゴルフボール2は、耐久性に優れる。耐久性の観点から、凹陥部の深さ(仮想球面からの深さ)は0.05mm以上が好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。凹陥部の深さは、0.5mm以下が好ましい。
上記の実施形態では、球体41の外側にカバー6を形成させるためのハーフシェル46に本発明が適用された。本発明は、球体としてのセンター8の外側に中間層10を形成させるためのハーフシェルに適用されてもよい。上記実施形態では、中間層10が射出成形法により成形されたが、中間層10をハーフシェルにより圧縮成形する場合にも本発明が適用されうる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
100質量部のポリブタジエン(JSR社の商品名「BR730」)、30質量部のアクリル酸亜鉛、適量の酸化亜鉛、0.7質量部のビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドを密閉式混練機で混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で15分間加熱して、直径が40.9mmであるセンターを得た。
50質量部のナトリウム中和タイプ二元アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社製の「ハイミラン1605」)、50質量部の亜鉛中和タイプアイオノマー樹脂(デュポン社製の「サーリン9945」)、4質量部の二酸化チタン及び0.1質量部の着色剤(ウルトラマリンブルー)をブレンドし、二軸押出機で押し出して、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を射出成形法にてセンターの周りに被覆し、硬度Hm(ショアD)が63である中間層を得た。硬度Hmの測定方法は前述の通りである。
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物を調製した。主剤液と硬化剤液とを混合した塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、25℃雰囲気下で4時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚みTrは、0.005mmであった。この樹脂層のモジュラスは、410(kgf/cm2)であった。
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASFジャパン社の「エラストランXNY90A」)、4質量部の二酸化チタン及び0.05質量部の着色剤(ウルトラマリンブルー)をブレンドし、二軸押出機で押し出して、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を切断して、円柱状のペレットを得た。このペレットの直径は20mmであり、質量は約2gである。このペレットを第一成形型の半球状凹部ごとに1つずつ投入し、圧縮成形法で多数のハーフシェルを備えた予備成形体を得た。
ハーフシェルは、突起部とハーフシェル本体とからなり、ハーフシェル本体の厚みは位置(緯度又は経度)に係わらず略一定とした。このハーフシェル本体の平均厚みが、下記の表1において「ハーフシェル厚み」として示される。
ハーフシェルの外面には、略半球状の突起部を設けた。突起部は、一つのハーフシェル当たり25個設けた。各突起部の(緯度,経度)はそれぞれ、(90,0)、(60,0)、(60,30)、(60,60)、(60,90)、(60,120)、(60,150)、(60,180)、(60,210)、(60,240)、(60,270)、(60,300)、(60,330)、(45,15)、(45,45)、(45,75)、(45,105)、(45,135)、(45,165)、(45,195)、(45,225)、(45,255)、(45,285)、(45,315)及び(45,345)である。全ての突起部について、突起部の高さHtは0.3mmとした。突起部の仕様は、下記の表2で示される。実施例1の突起部仕様は、仕様Aである(表2参照)。
センター、中間層及び補強層からなる球体を2枚の予備成形体で挟み込み、第二成形型に投入して、圧縮成形法にてカバーを成形した。このカバーのカバー硬度Hc(ショアD)は36であった。カバー硬度Hcの測定方法は前述の通りである。このカバーの表面に塗装を施して、ゴルフボールを得た。カバーの公称厚みTcは0.1mmである。このゴルフボールの直径は、42.75mmであり、ゴルフボールの重量は42.8gである。
[実施例2]
突起部仕様を下記の表2で示される仕様Bとした他は実施例1と同様にして、ゴルフボールを得た。
[実施例3]
センター外径、中間層厚み、ハーフシェル厚み及びカバーの公称厚みTcを下記の表1に示される通りとし、突起部仕様を下記の表2で示される仕様Cとした他は実施例1と同様にして、ゴルフボールを得た。
[実施例4及び実施例5]
センター外径、中間層厚み、ハーフシェル厚み及びカバーの公称厚みTcを下記の表1に示される通りとし、突起部仕様を下記の表2で示される仕様Dとした他は実施例1と同様にして、ゴルフボールを得た。
[比較例1]
突起部を無くした他は実施例1と同様にして、ゴルフボールを得た。
[比較例2]
センター外径、中間層厚み、ハーフシェル厚み及びカバーの公称厚みTcを下記の表1に示される通りとし、突起部を無くした他は実施例1と同様にして、ゴルフボールを得た。
[比較例3]
センター外径、中間層厚み、ハーフシェル厚み及びカバーの公称厚みTcを下記の表1に示される通りとし、突起部仕様を下記の表2で示される仕様Eとした他は実施例1と同様にして、ゴルフボールを得た。
[カバーの公称厚みTcの測定]
上側ポールと下側ポールとを通過する任意の平面でゴルフボールを切断し、断面を拡大した像を得た。この像において、上側ポールの厚みT1、下側ポールの厚みT2、一方のシームの厚みT3及び他方のシームの厚みT4を、ノギスで測定した。ディンプルを避けて、ランドの直下で厚みT1、T2、T3及びT4を測定した。そして、厚みT1、厚みT2、厚みT3及び厚みT4を平均してカバーの公称厚みTcの値とした。24個のゴルフボールが測定されたデータの平均値が、下記の表1に示されている。
[エア噛み込み発生率の算出]
1000個のゴルフボールの外観を、目視で観察した。カバーの内部に空気が残留している箇所が存在するゴルフボールの数と、ベアーが発生している箇所が存在するゴルフボールの数とをカウントし、不良の発生率を算出した。この結果が、下記の表1に示されている。
[凸発生不良率の算出]
1000個のゴルフボールの外観を、目視で観察した。カバーの内部に突起部が溶けきらずに残留している箇所が存在するゴルフボールの数をカウントし、不良の発生率を算出した。この結果が、下記の表1に示されている。
[耐久性の評価]
ゴルフボールを45m/secの速度で、繰り返し金属板に衝突させ、ゴルフボールが破壊されるまでの回数をカウントした。10個のゴルフボールについて測定した平均値が、下記の表1に示されている。表1における「200超」は、200回カウントされた時点でゴルフボールが破壊に至らなかったことを意味する。
表1及び表2から明らかなように、実施例の製造方法で得られたゴルフボールでは、エア噛み込みや凸不良などの外観不良が抑えられ、しかも耐久性に優れる。これに対し、比較例1から3の製造方法で得られたゴルフボールでは、外観不良が発生し、しかも耐久性に劣る。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。