JP4535741B2 - 化学センサによる測定方法、ならびに化学センサ型測定装置 - Google Patents

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本発明は、化学センサによる測定方法、ならびに該測定方法に基づく、化学センサ型装置に関し、より具体的には、電流検出型化学センサによる測定方法ならびに該測定方法に基づく、電流検出型の化学センサ型装置に関する。特には、該電流検出型化学センサとして、酵素電極を利用する電流検出型化学センサによる測定方法に関する。
液体試料中に含有される特定の物質濃度を測定する方法として、電気化学的反応を利用して、該特定物質の酸化または還元に伴う電流を検出する手法、具体的には、電流検出型化学センサを利用する測定方法がある。その際、実際には、測定対象である特定物質に酵素を作用させ、かかる酵素反応によって定量的に生成される酵素反応産物について、電気化学的反応を利用して、該酵素反応産物の酸化または還元に伴う電流を検出することによって、測定対象である特定物質の濃度を間接的に測定する手法が利用されている。具体的には、作用極として、導電体電極上に、前記酵素反応に利用する酵素膜層を設ける酵素電極、例えば、白金やカーボンなどの導電体電極上に、酵素を固定化した固定化酵素膜層を形成した固定化酵素電極を利用し、参照極との間に、所定の電位を印加して、液体試料中に含有される特定物質から該酵素の作用で生成する反応産物を、該作用極と参照極との間に印加されている電位によって、電気化学的反応を利用して、反応産物量に応じた電流を発生させる。
この酵素電極を利用する化学センサは、液体試料中、通常、水溶液試料中に浸漬して使用され、酵素膜層中を該水溶液試料が浸漬・透過する際、酵素膜層の表面に、試料に混入している異物、不純物が吸着する現象、あるいは、酵素膜層下の酵素電極用導電体電極表面に、汚染や変質が起きる現象が生じることがある。酵素膜層の表面に、異物、不純物が吸着すると、測定対象である特定物質に対する酵素反応の効率を低下させる要因となり、特定物質濃度に対する測定される電流量の比率(センサ感度)が経時的に徐々に低下させる要因となる。一方、導電体電極表面に、汚染や変質が起こると、酵素反応の効率は維持されていても、酵素反応産物の測定を行う電気化学的反応の効率が影響を受けるため、結果的に特定物質濃度に対する測定される電流量の比率(センサ感度)を経時的に低下させる要因となる。
前述する酵素電極を利用する電流検出型化学センサを使用する際に生じる、例えば、作用極に用いる導電体電極表面の汚染や変質によって誘起されるセンサ感度低下を回復する手法として、幾つかの方法が提案されている。その一つは、酵素電極を利用する電流検出型化学センサを利用する際、測定時に通常、該作用極と対極との間に印加されている電位に対して、それと逆方向の電位を、一定の使用期間毎に、短時間、作用極と対極との間に印加することで、電極表面の汚染や変質を除去し、酵素電極の再活性化を果す方法が、特開昭57−060255号公報、特開昭60−155959号公報、特開平1−15649号公報などに提案されている。
但し、この逆方向の電位を、一定の使用期間毎に、短時間、作用極と対極との間に印加する手法では、印加される逆方向の電位の大きさによっては、該化学センサを保管している緩衝水溶液において、電気化学的に水素発生を生じさせ、酵素電極において、作用極に用いる導電体電極表面に発生する微細な水素気泡が付着する状態を引き起こす場合もある。あるいは、電極に過電流が流れる場合もあり、その際、作用極に用いる導電体電極表面に過電流による損傷が発生する場合もある。
反復測定に伴って生じる、上述する化学センサにおける感度低下を回復する手法として、短時間の逆方向電位を印加する方法における、種々の欠点を改善した方法も、特公平4−54175号公報に提案されている。該公報に開示される方法では、酵素電極を利用する電流検出型化学センサに対して、その測定後に、作用極(酵素電極)と対極との間に印加される電位について、三角波電位走査を行うことによって、酵素電極の再活性化を図り、センサ感度の経時的低下の改善を達成している。
例えば、化学センサを用いた測定系を、図8に示すように、流入口と流出口を有するセル101の中に、表面に酵素膜102を固定化したPt線からなる酵素電極を利用する、作用極103と、Pt線からなる対極104とで構成する際、セル101中に、酵素反応の基質を含有していない緩衝液を満たした状態で、測定時に作用極103と対極104との間に印加される電位は、対極104を接地し、作用極103には、基準となる飽和カロメル電極(SCE)に対して、+0.6Vとなる電位が印加される。この印加電位において、セル101中に、一定流量で試料液を流入すると、試料液中に存在している特定物質(酵素基質物質)から、酵素膜102における酵素反応に伴って、酵素反応産物が生成し、該酵素反応産物が電気化学的反応を起こし、応答電流が流れる。緩衝液を流入している際に観測されるベース電流と、該応答電流との差は、酵素反応産物量に比例し、また、酵素反応を受ける特定物質(酵素基質物質)量に比例するので、予め作製されている検量線に基づき、試料液中に存在する特定物質(酵素基質物質)濃度の定量がなされる。測定後、セル101中に、緩衝液を流通して、洗浄する結果、酵素電極系は元の状態に戻る。この操作を繰り返すことで、反復して、異なる試料液についての測定を実施する。
この反復測定を進める際、試料液中に含まれる、測定対象の特定物質(酵素基質物質)以外の比較的高分子量を有する成分、例えば、蛋白質や脂質などが、酵素膜層の表面に僅かずつながら付着したり、また、比較的低分子量の成分、例えば、低分子のアミンや有機酸などは、酵素膜層の内部に浸入、透過して、導電体電極表面に吸着したり、あるいは、導電体電極表面に酸化物被膜の形成が生じたりする。特公平4−54175号公報に提案されている方法では、例えば、作用極と対極とが共に、白金極を用いる場合、利用する緩衝液において、水分子の電気分解や、緩衝液中の成分、支持電解質の酸化還元反応が生じない印加電位範囲、例えば、−0.5V〜+1.3V(SCEを基準とする印加電位)の範囲で、測定時の印加電位+0.6Vから、0.1〜1V/sの走査速度で、上限電位まで印加電位を増加させ、次いで、下限電位まで印加電位を減少させ、その後、該下限電位と上限電位との間で、三角波電位走査を一定時間継続する。最終的に、三角波電位走査を反復した後、当初の測定時の印加電位+0.6Vに達した時点で、三角波電位走査を終了する。前記の三角波電位走査による酵素電極の再活性化処理を、所定の測定回毎に実施することで、経時的に低下するセンサ感度の回復がなされ、長期に亘って、極端なセンサ感度の低下の無い状態を維持できている。
図9に例示するように、上限電位と下限電位の間で三角波電位走査を実施すると、正負の電位に印加された状態を交互に繰り返す間に、かかる電位の反転により、測定時に、電極表面に静電的に吸着される成分の除去がなされる。また、作用極103に用いる白金表面に形成される酸化物被覆膜も、正負の電位に印加された状態を交互に繰り返す間に、段階的に除去される。
特開昭57−060255号公報 特開昭60−155959号公報 特開平1−15649号公報 特公平4−54175号公報
上述する酵素電極の再活性化処理する方法は、反復測定に起因して経時的に低下するセンサ感度の回復には、有効な手段ではある。他方、利用される酵素電極を利用する電流検出型化学センサ自体は、一旦、作製過程で酵素電極上に形成した酵素膜層は乾燥した状態とされた上、使用開始の際、化学センサ全体は、緩衝液に浸漬され、酵素膜層の湿潤処理、作用極表面と参照極表面との間に緩衝液が満たされた状態とされる。また、作用極と参照極との間に、測定時に印加すべき所定の電位を印加する。
本発明者は、前記の手順で使用開始時の化学センサのセッティング処理を行った場合、当初の応答電流は低く、かかる測定時の所定電位を印加して、1日〜数日間を経過する間に、応答電流の水準が徐々に上昇し、一定値の水準に達することを見出した。この使用開始直後に生じる、初期センサ感度の不安定性を解消し、所望のセンサ感度水準に簡便な操作で達成することが望ましく、従来認識されていない新たな課題である。さらには、かかる初期センサ感度の不安定性は、例えば、図1に示すように、絶縁性基板1上に、作用極2と参照極4を形成し、かかる両電極表面を被覆するように、液を含浸可能な接着層6を設け、かかる接着層6を介して、酵素膜層5を固定化する構成の酵素電極を利用する電流検出型化学センサにおいても、共通して見出されることが判明した。加えて、図5に示すように、接着層6と酵素膜層5との間に、酵素反応産物以外に作用極2表面で電気化学的反応を起こし、干渉成分となる低分子化合物の透過を抑制する機能を有する選択透過膜12を挿入し、さらに、酵素膜層5の表面に、かかる酵素反応にあずかる基質化合物の透過効率を制限する機能を有する制限透過膜11を設ける構成の酵素電極を利用する電流検出型化学センサにおいて、初期センサ感度の不安定性がより顕著に観測されることも判明した。
本発明は前記の新たな課題を解決するものであり、本発明の目的は、化学センサ、特には、酵素電極を利用する電流検出型化学センサによって、液体試料中に含有される特定物質の濃度を測定する際、作製後、乾燥状態とされている酵素電極を利用する電流検出型化学センサを、所定の緩衝液中に浸漬し、作用極と参照極との間に測定用電位を印加して、使用開始操作を行う段階において、かかる初期センサ感度の不安定性を簡便に、かつ短時間に解消して、安定したセンサ感度を示す状態を再現性よく達成できる使用開始操作工程を具える化学センサによる測定方法、ならびに該測定方法に基づき、前記使用開始操作工程に即した機構を備えた化学センサ型装置を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を進め、先ず、使用開始時の化学センサのセッティング処理として、利用される酵素電極を利用する電流検出型化学センサ自体は、使用前、酵素電極上に形成した酵素膜層は乾燥した状態となっており、使用開始の際、化学センサ全体を、待機時の保存液として利用される、緩衝液に浸漬し、酵素膜層の湿潤処理、作用極表面と参照極表面との間に緩衝液が満たされた状態とし、また、作用極と参照極との間に、測定時に印加すべき所定の電位を印加する手順を採用すると、当初は、応答電流は低いが、この所定電位を印加した待機状態に保持すると、1日〜数日間を経過する間に、応答電流の水準が徐々に上昇し、一定値の水準に達するという現象は、同じ構成の酵素電極を利用する電流検出型化学センサでは、程度の差はあるものの、常に見出されることを確認した。また、上述するように、図1に示す構成の酵素電極を利用する電流検出型化学センサと、図5に示す構成の酵素電極を利用する電流検出型化学センサとを比較した場合、初期のセンサ感度の低下量は、両者の化学センサの構成に伴い有意な差異を有するものの、所定電位を印加した待機状態に保持する間に、応答電流の水準が徐々に上昇し、一定値の水準に達する傾向は、互いに高い共通性を有することが確認された。すなわち、大気雰囲気下において、酵素電極を利用する電流検出型化学センサ全体を乾燥状態とし、使用開始まで保存する間に、かかる作用極の導電性材料表面に何らかの被覆膜層が形成され、かかる被覆膜層に起因して、センサ感度の低下が当初見出されるものの、測定に利用する所定電位を印加した状態で、緩衝液中に保持する間に、該導電性材料表面上に形成されていた被覆膜層の除去が進行する結果、センサ感度は本来の水準まで回復することが判明した。
本発明者は、かかる知見に基づき、更なる検討を進めた結果、前記導電性材料表面上に形成されていた被覆膜層の除去過程は、緩衝液中に保持しつつ、かかる測定に利用する所定電位(順方向の電位)に対して、さらに電位を高めた順方向の電位を印加すると、大幅に促進されることを見出した。加えて、さらに電位を高めた順方向電位を印加して、一定時間緩衝液中に保持した後、測定に利用する所定電位に復して、直ちに化学センサを測定に供すると、場合によっては、応答電流の水準は、目標とする一定値の水準よりも高くなることもあることが判明した。但し、測定に利用する所定電位に復して、さらに、一定時間緩衝液中に保持する期間を設けた後に、該化学センサを測定に供すると、目標とする一定値の水準が得られることも判明した。より具体的には、使用開始時の化学センサのセッティング処理として、乾燥状態で保管されていた酵素電極を利用する電流検出型化学センサを、緩衝液に浸漬し、酵素膜層の湿潤処理、少なくとも、作用極表面と参照極表面との間に緩衝液が満たされた状態とし、引き続き、作用極と参照極との間に、測定時に印加すべき所定の(順方向)電位と比較して、より大きな(順方向)電位を印加して、緩衝液中に保持すると、当初の導電性材料表面上に形成されていた被覆膜層の除去過程は、大幅に促進される結果、かかる初期に印加されるより大きな(順方向)電位の値に応じて、所定の時間以上処理すると、該被覆膜層の除去が果され、一方、該より大きな(順方向)電位に保持する時間が過剰となると、測定に利用する所定電位に復して、直後に該化学センサを測定に供すると、逆に、応答電流の水準は、目標とする一定値の水準よりも高くなる現象が見出されるが、測定に利用する所定電位に復して、さらに、一定時間緩衝液中に保持する期間を設けると、その後は、該化学センサを測定に供しても、目標とする一定値の水準が得られることを、本発明者は確認した。
さらに、本発明者は、前記使用開始時の化学センサのセッティング処理を終えた後、該酵素電極を利用する電流検出型化学センサを用いた測定を繰り返すと、やはり該化学センサ感度が次第に低下する現象が起こるが、この反復測定に付随して生じるセンサ感度低下に対しても、化学センサを緩衝液に浸漬したまま、測定に利用する所定電位(順方向の電位)に対して、さらに電位を高めた順方向の電位を印加して、一定時間保持し、再び測定に利用する所定電位(順方向の電位)とした上で、さらに一定時間保持する処理を行うと、該センサ感度の低下を回復することが可能であることをも見出した。
本発明者は以上に記載する一連の知見に基づき、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明にかかる第一の化学センサによる測定方法は、
少なくとも作用極と参照極とを具える化学センサを用いて、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方法であって、
前記化学センサに対して、待機中、保存液とする所定の組成の緩衝液中に浸漬し、作用極と参照極との間に所定の測定電位を印加して保持し、
測定時には、前記緩衝液に代えて、測定試料中に浸漬し、作用極と参照極との間に印加される前記測定電位を利用する、電気化学的反応によって発生する電流量変化に基づき、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方式による測定方法であり、
該化学センサを使用開始する際、
乾燥状態の該化学センサを前記緩衝液中に浸漬し、前記作用極表面と参照極表面とを該緩衝液に接触させた後、
作用極と参照極との間に、前記測定電位と同一方向の電位であって、該測定電位よりも大きな絶対値を示す第一の初期処理電位を印加して、該化学センサを所定の第一の初期処理時間の間、前記緩衝液中にて保持する第一の初期処理工程と、
該第一の初期処理工程の終了後、前記緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に印加する電位を前記測定電位と同一の第二の初期処理電位に変更して、前記化学センサを該待機状態で保持する第二の初期処理工程とを設け、
該第二の初期処理工程を終えた後、該化学センサを測定試料の測定に供する手順を具えることを特徴とする化学センサによる測定方法である。その際、該第一の初期処理工程の終了後、前記第二の初期処理工程において、所定の第二の初期処理時間の間、該化学センサを待機状態にて保持することが好ましい。
加えて、本発明にかかる第一の化学センサによる測定方法では、
前記化学センサには、作用極上に酵素を固定化してなる固定化酵素膜層を設け、
前記特定物質が該酵素の基質物質であり、
測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定は、該酵素を特定物質に作用させて、特定物質より該酵素反応産物を生成させ、定量的に生成する該酵素反応産物に対する、作用極と参照極との間に印加される前記測定電位を利用する、電気化学的反応によって発生する電流量変化に基づき、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方式による測定方法であり、
前記化学センサは、作用極と参照極に加えて、さらに対極を有し、
該参照極は、前記緩衝液と接触した際、両者間に所定の化学ポテンシャル差を有する材料で構成され、
該参照極を基準として、作用極と参照極との間に、所望の電位が印加する状態として、
前記測定電位、第一の初期処理電位、第二の初期処理電位の印加は、
前記緩衝液中における対極の電位を、参照極と等しい電位に設定した上で、
作用極の電位を、作用極と参照極との間の電位差が、それぞれ前記測定電位、第一の初期処理電位、第二の初期処理電位に相当する電位差を与えるように設定する形態とすることが好ましい。
その際、例えば、前記参照極として、銀/塩化銀電極を用い、作用極と対極とを白金電極とし、
測定に際して、作用極と参照極との間に印加される前記測定電位は、
前記緩衝液中において、該参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、400〜700mVの範囲に選択される作用極の電位で得られる印加電位であることが望ましい。
あるいは、前記第一の初期処理工程において、作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、該作用極上において水の電気分解反応の開始する印加電位を印加電位最上限値と、前記測定電位を印加電位最下限値と、それぞれ定義し、
該印加電位最上限値と印加電位最下限値との差異で定義される最上限・最下限電位差を用いて、
前記測定電位よりも、該最上限・最下限電位差の10%以上大きな印加電位であって、前記印加電位最上限値よりも、少なくとも200mV以上小さな印加電位の範囲に選択することも好ましい。
さらには、前記参照極として、銀/塩化銀電極を用い、作用極と対極とを白金電極とする際、
前記第一の初期処理工程において、作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、
前記測定電位よりも、少なくとも100mV以上大きな印加電位であって、900mVを超えない範囲に選択することも好ましい。
例えば、前記参照極として、銀/塩化銀電極を用い、作用極と対極とを白金電極とする際、
前記第一の初期処理工程において、作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、
少なくとも、750mV〜900mVの範囲に選択し、
前記第一の初期処理時間を4時間以下、少なくとも、1時間を下回らない範囲に選択することがより好ましい。また、前記第二の初期処理時間を、少なくとも、1時間を下回らない範囲に選択することが望ましい。加えて、前記第一の初期処理時間と第二の初期処理時間とを加えた合計を、6時間以下に選択することがより望ましい。
なお、本発明にかかる第一の化学センサによる測定方法では、
前記化学センサは、作用極と参照極に加えて、さらに対極を有する3極方式のセンサであり、
該作用極、対極、参照極は、絶縁性基板上に形成されており、
少なくとも、作用極の表面上に固定化された酵素膜層を設けてなる酵素電極を利用する電流検出型化学センサであることがより好ましい。
さらには、本発明にかかる第二の化学センサによる測定方法は、
少なくとも作用極と参照極とを具える化学センサを用いて、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方法であって、
前記化学センサに対して、待機中、保存液とする所定の組成の緩衝液中に浸漬し、作用極と参照極との間に所定の測定電位を印加して保持し、
測定時には、前記緩衝液に代えて、測定試料中に浸漬し、作用極と参照極との間に印加される前記測定電位を利用する、電気化学的反応によって発生する電流量変化に基づき、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方式による測定方法であり、
該化学センサを、所定の期間使用する毎に、
待機状態の該化学センサについて、前記緩衝液中に浸漬し、少なくとも、前記作用極表面と参照極表面とを該緩衝液に接触させた状態で、
作用極と参照極との間に、前記測定電位と同一方向の電位であって、該測定電位よりも大きな絶対値を示す第一のリフレッシュ処理電位を印加して、該化学センサを前記緩衝液中にて、所定の第一のリフレッシュ処理時間保持する第一のリフレッシュ処理工程と、
該第一のリフレッシュ処理工程の終了後、前記緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に印加する電位を前記測定電位と同一の第二のリフレッシュ処理電位に変更して、前記化学センサを第二のリフレッシュ処理時間、待機状態に保持とするリフレッシュ待機処理工程とを設け、
該リフレッシュ待機処理工程を終えた後、再び該化学センサを測定試料の測定に供する手順を具えることを特徴とする化学センサによる測定方法である。
一方、本発明は、上述する本発明にかかる化学センサによる測定方法の実施に適合する化学センサ型測定装置の発明をも提供し、
すなわち、本発明にかかる第一の化学センサ型測定装置は、
上述する本発明にかかる第一の化学センサによる測定方法に従った測定動作が可能な化学センサ型測定装置であって、
該測定装置は、
少なくとも作用極と参照極とを具える化学センサと、
少なくとも、前記作用極と参照極との間に電位を印加する手段と、該化学センサにより測定される信号を検出する手段とを具える信号検出回路に加えて、
該化学センサを使用開始する際に、
乾燥状態の該化学センサを前記緩衝液中に浸漬し、前記作用極表面と参照極表面とを該緩衝液に接触させた状態で、作用極と参照極との間に、前記測定電位と同一方向の電位であって、該測定電位よりも大きな絶対値を示す前記第一の初期処理電位を、前記第一の初期処理時間の間印加する機構と、
引き続き、該化学センサを前記緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に印加する電位を前記測定電位と同一の第二の初期処理電位に変更して、該第二の初期処理電位を前記第二の初期処理時間の間印加する機構と、
前記二段階の初期処理操作を終了した時点で、それ以降測定可能となった旨を報知する機構を具える報知装置とを具えることを特徴とする化学センサ型測定装置である。
さらには、本発明にかかる第二の化学センサ型測定装置は、
上述する本発明にかかる第二の化学センサによる測定方法に従った測定動作が可能な化学センサ型測定装置であって、
該測定装置は、
少なくとも作用極と参照極とを具える化学センサと、
少なくとも、前記作用極と参照極との間に電位を印加する手段と、該化学センサにより測定される信号を検出する手段とを具える信号検出回路に加えて、
該化学センサを、所定の期間使用する毎に、
待機状態の該化学センサについて、前記緩衝液中に浸漬し、前記作用極表面と参照極表面とを該緩衝液に接触させた状態で、作用極と参照極との間に、前記測定電位と同一方向の電位であって、該測定電位よりも大きな絶対値を示す前記第一のリフレッシュ処理電位を、前記第一のリフレッシュ処理時間の間印加する機構と、
引き続き、該化学センサを前記緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に印加する電位を前記測定電位と同一の第二のリフレッシュ処理電位に変更して、該第二のリフレッシュ処理電位を前記第二のリフレッシュ処理時間の間印加する機構と、
前記二段階のリフレッシュ処理操作を終了した時点で、それ以降再び測定可能となった旨を報知する機構を具える報知装置とを具えることを特徴とする化学センサ型測定装置である。
下に説明するように、本発明によれば長期間に渡り初期の特性を維持することが出来る。また、リフレッシュ動作をした直後を除けば特別な待機時間を必要としないので、通常は短い間隔で繰り返し測定を行うことができる。
加えて、本発明によれば、長期間乾燥状態にあった酵素電極の特性を速やかに作製直後の特性に戻すことができる。また、感度が常に一定に出来るため、較正をほとんどしなくても長期間に渡り精度の良い測定をすることが出来る。また、従来に比べ短い間隔で繰り返し測定することが可能になる。
次に、本発明について、図面を参照しつつ、より詳しく説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明にかかる第1の実施形態に用いる化学センサ構成の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す化学センサは、3極方式の化学センサに構成されており、絶縁性基板1上に、導体からなる作用極2および対極3、ならびに、参照極4が形成されている。これら3極方式の電極系の上には、酵素膜5が形成されており、所謂、酵素電極型の化学センサとされている。なお、この酵素電極では、酵素膜5を固定化する際、電極系と酵素膜5との間に、接着層6を設けている。絶縁性基板1は液透過性を示さず、電極系と液との接触は、液透過性を有する酵素膜5と接着層6とを介して達成される。
この種の化学センサは、その3極方式の各電極間に所定の電位を印加する状態で、測定される電流などの信号を検出するため、各電極に対するリード端子を具えるセンサ・カートリッジ内に組み込まれる形態とされる。作製後、所定の動作特性検査を行った後、乾燥され、酵素膜5や接着層6が不要な湿気(水分)を吸収することを回避するため、乾燥剤と一緒に気密性のパッケージ(袋体)内に封入した形態で、流通過程に乗せられる。
ユーザーが、前記パッケージ封入された酵素電極型化学センサを使用する場合は、先ず、パッケージを開封し、酵素電極型化学センサと測定回路との間で、対応する電極端子間の接続を行い。次に、電位印加をしない状態で、酵素電極型化学センサを保存液中に浸漬する。この保存液は、通常、一定組成の緩衝液が利用される。保存液とする緩衝液中に浸漬すると、乾燥状態とされていた酵素膜5と接着層6中に液が浸透し、湿潤状態へと変化する。その際、例えば、酵素膜5は液の浸透とともに、乾固した形態から、本来の膨潤した層へと回復する。また、微視的に見た場合、酵素膜5を構成する酵素蛋白質、その固定化を果すマトリックス物質などの各有機物質は、分子間の結合状態、各分子間の相対的配置、配列等は、緩衝液の浸潤程度に応じて、若干の変化を起こす。
次いで、作用極2および対極3、ならびに、参照極4の表面全体が、接着層6中に浸透、充満した緩衝液と接触した状態に達した時点で、電極系に所定の電位を印加する。導体、例えば、白金電極で形成されている作用極2と、銀/塩化銀からなる参照極4との間に電位が印加されると、電解液として機能する緩衝液を介して、作用極2と参照極4は、キャパシタを構成する結果、該キャパシタの充電に相当する過程が生じ、作用極表面に電荷が蓄積され、電気二重層が形成される。かかる誘導電流は、電位印加の直後にパルス的に流れ、その後、極く微弱な電流へと減少し、一定となるまでの過渡的時間は数分程度である。
その際、導体、例えば、白金電極で形成されている作用極2の表面に、誘電体物質からなる表面被覆層が存在していると、この化学センサにおける電気化学的反応の反応効率は、例えば、かかる表面被覆層を通過して、作用極2から、液と接する表面へと電荷の注入される効率にも依存するため、表面被覆層の厚さ、有無によって、影響を受ける。従って、仮に、乾燥状態で保管されている酵素電極型化学センサにおいて、作用極2の表面に形成されている表面被覆層の厚さ、微視的な組成が、かかる酵素電極型化学センサを待機状態で安定に保持する際に達成される、「定常状態」の表面被覆層の厚さ、微視的な組成と相違すると、使用開始直後においては、この化学センサにおける電気化学的反応の反応効率は、「定常状態」における反応効率より偏移しており、待機状態の電位印加を継続する間に、作用極の表面において、「定常状態」の表面被覆層の厚さ、微視的な組成へと徐々に変化させる反応が起こる。
本発明者が見出した、化学センサを使用開始する際、この初期段階で見出されるセンサ感度特性の不安定さは、前記の過渡的な現象を反映すると推断される。すなわち、乾燥状態で保管されていた酵素電極型化学センサにおける、作用極2と参照極4の表面の微視的状況を、「定常状態」における作用極2の表面の微視的状況へと変化させる、界面での電気化学的反応の詳細を解明するには到っていないが、少なくとも、作用極2と参照極5との間に待機状態にも印加されている測定電位と同じ方向の電位(順方向の電位)によって、その反応が進行することが確認される。加えて、かかる測定電位と同じ方向の電位(順方向の電位)であって、測定電位よりも大きな絶対値を有する電位を印加すると、かかる界面での電気化学的反応速度は急速な促進が達成される。
但し、作用極2と参照極4との間に印加される電位を過度に大きくすると、用いている緩衝液において、溶媒の種類、緩衝液成分、支持電解質自体に応じて、酸化還元反応が電極表面で開始する。すなわち、これら用いている緩衝液に由来する、不要な電気化学的な反応が生じない範囲内(所謂、「電位窓領域」と称される範囲)に、印加電位を選択する必要がある。さらには、この「電位窓領域」の上限には達してないが、順方向の大きな電位を作用極2と参照極4との間に印加すると、作用極2と参照極4との間を流れる微小な電流が、「暗電流」となって、急激に増加し、酵素電極型化学センサ自体の動作不良、酵素膜層の欠損を引き起こす場合もある。
本発明にかかる第一の化学センサによる測定方法では、乾燥状態で保管されていた酵素電極型化学センサにおける、作用極2と参照極4の表面の微視的状況を、「定常状態」における作用極2と参照極4の表面の微視的状況へと速やかに変化させるため、保存液とする緩衝液中に浸漬した後、先ず、測定電位と同じ方向の電位(順方向の電位)であって、測定電位よりも大きな絶対値を有する電位(第一の初期処理電位)を印加して、かかる界面での電気化学的反応速度の急速な促進をおこなって、第一の初期処理時間の間、かかる第一の初期処理電位を印加する間に、測定電位を印加する待機状態では、1〜3日間を要する反応を、例えば、4時間以内に選択される該第一の初期処理時間で達成できる。その後、作用極2と参照極4との間に印加する電位を、測定電位と同一の第二の初期処理電位に変更して、該第二の初期処理電位を印加すると、第一の初期処理電位を印加した際に、作用極2と参照極4の両電極表面に蓄積され、電気二重層を形成している電荷量は、第二の初期処理電位(測定電位)の印加状態で蓄積されるべき電荷量まで減少される。この電極での放電過程自体は、充電過程と同程度の短時間で完了する。一方、両電極表面に蓄積される電荷による電気二重層に付随して、酵素膜5と接着層6とにも、その静電的電界によって誘起されている変化の回復もなされる必要がある。この酵素膜5と接着層6に生じている静電的変化の回復は、より緩やかに進行するため、酵素電極型化学センサ全体が、目標とする「定常状態」における待機時と同様の状態に移行を完了する上では、前記第二の初期処理電位(測定電位)を印加して保持する時間(第二の初期処理時間)を設けることが望ましい。
仮に、かかる第二の初期処理時間を短くしても、化学センサを使用開始する際、この初期段階で見出されるセンサ感度特性の不安定さの主要因は、上述する第一の初期処理工程において排除されており、直後に行った測定では、目標とする「定常状態」の安定した測定結果とは偏移する可能性はあるものの、その後、2回目の測定を実施するまで、待機状態に保持する間に、かかる第二の初期処理工程に相当する、第二の初期処理電位(測定電位)の印加状態における保持が達成される。
図1に示す3極方式の化学センサとする際、参照極4として、銀/塩化銀電極を利用し、作用極2と対極3を白金電極で形成する場合、上述する「電位窓領域」と称される範囲は、参照極4とする銀/塩化銀電極を基準として、作用極2の電位を、−0.6V〜1.2Vに設定する範囲にあたる。なお、用いる保存液は、150mMの塩化ナトリウムを含むTES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)、pH7の緩衝液など、中性状態の緩衝液が利用できる。
酵素電極型化学センサに適合する保存液は、利用されている酵素蛋白質の酵素活性を保持可能な緩衝液であり、通常、塩化ナトリウムや塩化カリウム、塩化カルシウムなどから選ばれる支持電解質と、所望のpHを維持する緩衝剤成分が含まれている。この緩衝剤成分として、使用する酵素の示適pHをも考慮し、維持pH値が選択される。多くの場合、一般的なリン酸緩衝液、あるいは、各種酵素反応に利用されるグッド緩衝液の一群である、アミノプロパンスルホン酸誘導体(MOPSなど)やアミノエタンスルホン酸誘導体(MESなど)、HEPES、PIPESなどが利用できる。
通常、保存液には、待機状態において、化学センサに流れるベース電流が小さくなる緩衝液を選択することで、化学センサの電極の劣化を抑制する。一方、本発明にかかる初期処理操作では、作用極と参照極間に印加される電位を増すことで、電極から緩衝液へと注入される電流量を格段に増すことで、かかる電極表面上に存在する表面被覆膜の除去過程を加速する機構である場合、この注入される電流量の増加比率がより高い緩衝液を利用すると、かかる表面被覆膜の除去過程のさらなる加速に効果を有する。作用極と参照極間に印加される電位を同一とする際、同じpH値を維持する緩衝液であっても、緩衝剤成分に依存して、電極から緩衝液へと注入される電流量に差異を有することがある。例えば、緩衝剤成分に利用する化学物質が、電極との間で電子の授受を生じ易い、また、電極表面に近接し易い分子形状、サイズを有するならば、この化学物質との電子授受を介する電極から緩衝液へと注入される電流量の増加が期待される。本発明者が検討したところ、具体的には、(2−ヒドロキシエチル)イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン緩衝液(Bi−Tr,Bis)において、ベース電流を増す効果があった。例えば、後述する実施例1に記載する酵素電極型化学センサにおいて、測定電位として、作用極に0.45Vの電位印加する際、保存液組成として、0.1M Bi−Tr,Bis、0.15M NaCl、pH 7を用いると、上述する150mMの塩化ナトリウムを含むTES緩衝液を用いる場合と比較し、待機状態のベース電流は、10nA程度多くの電流を発生する。
例えば、作用極2と対極3を白金電極で形成する場合、前記緩衝液中に添加される過酸化水素の電気化学的反応の開始する作用極2の電位は、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、350mV程度であり、図1に示す酵素電極型化学センサが、酵素タンパク質 グルコースオキシターゼにより、基質のグルコースより、酵素反応で生成する過酸化水素を測定する方式の場合、測定電位は、作用極2の電位を、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、400mV〜700mVの範囲に設定する。前記過酸化水素の電気化学的反応に伴う、応答電流発生は、700mV付近で最大の効率を示すものの、例えば、ビタミンC(アスコルビン酸)などの干渉成分の影響は、かかる700mV以上に作用極2の電位を選択すると急速に増す。その点を考慮すると、測定電位としては、前記の範囲が好適となる。
それに対して、第一の初期処理工程において、作用極2と参照極4との間に印加される第一の初期処理電位は、測定電位よりも有意に大きな値に選択することが望ましく、従って、参照極として、銀/塩化銀電極を用い、作用極と対極とを白金電極とする際、第一の初期処理電位は、前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、前記測定電位よりも、少なくとも100mV以上大きな印加電位、但し、900mVを超えない範囲に選択すると好ましい。例えば、作用極2の電位を、前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、少なくとも、750mV〜900mVの範囲に選択し、この第一の初期処理時間を4時間以下、少なくとも、1時間を下回らない範囲に選択する。
その後、印加電位を変更して、第二の初期処理電位(測定電位)を印加して保持する時間(第二の初期処理時間)は、第一の初期処理電位と第二の初期処理電位(測定電位)との電位変化量が増すとともに、徐々に長く設定することが望ましいものの、この電位変化に際して、電位印加方向の反転は無く、その電位変化量も大きくとも、500mV程度であり、第二の初期処理時間は、1時間以内で十分に安定状態を達成できる。
これらの手順は、酵素電極型化学センサを利用する測定装置本体のソフトに記憶させておき、一連の初期処理操作が完了し、測定電位に保持される待機状態となった段階で、測定可能となったことを報知装置に報知させる形態とすることができる。なお、この報知手段としては、LCDなどの表示装置を用いても良いし、音や振動などを用いても良い。酵素電極型化学センサを利用する測定装置にかかる機構を予め付加しておくことにより、ユーザーは、新しいセンサ・カートリッジを接続した後、第1回目の測定を行う際にも、再現性の良い測定を行うことが可能になる。
なお、以上の説明では、酵素電極型化学センサにおける手順を例示したが、同様な手法は、乳酸センサ、有機材料膜からなる選択透過膜を用いた過酸化水素センサなど他の化学センサについても適用できる。さらには、酸素センサのように、測定電位として、作用極の電位を負側に設定する場合にも、この測定電位と同じ印加方向において、絶対値の大きな電位を用いることにより同様に適用することができる。
(実施例1)
酵素電極型化学センサとして、図1に示す構成を示す、グルコースセンサを用いた。この酵素電極型化学センサの電極系は、Ptの作用極2、対極3、Ag/AgClの参照極4で構成される3極方式とした。酵素膜5は、グルコースオキシターゼを、アルブミンとグルタルアルデヒドのマトリックスに固定化して形成した。酵素膜5と電極の間には、接着層6としてシランカップリング剤を介在させた。この酵素電極型化学センサを、プラスティック製のカートリッジ7に液密に封入し用いた。カートリッジ7には、グルコースセンサの感応部だけが液と触れるように、窓8を設けた。今後、特に断らない限りカートリッジ7は、かかる酵素電極型化学センサを含むものと定義する。
本例では、上記3極方式のグルコースセンサ専用の測定回路として、設計されている本体9を用いた。本体9は、作用極2に、所定の定電位を供給するポテンショスタット回路および測定回路、報知装置10を備えている。図2に、この測定装置の模式外観図を示す。
測定は下記の手順で行った。先ず、乾燥剤とともに1年間乾燥保管されたカートリッジ7を取り出し、本体9に接続した。次に、感応部が液に触れるようにカートリッジを保存液に浸漬した。なお、用いた保存液は、150mMの塩化ナトリュウムを含むTES(エヌ・トリス(ハイドロキシメチル)・メチル・2−アミノエタンサルフォニックアシッド)、pH7の緩衝液である。
この緩衝液に浸漬した化学センサに対して、基準とする参照極4に対して、作用極2に800mVの電位を印加し、1時間保持した。次に、作用極2に印加する電位を、測定電位である700mVに変更し、さらに1時間保持した後、測定を開始した。図3に、この使用開始操作時の作用極2に印加電位チャートを示す。前記使用開始処理を施した化学センサを用いて、濃度50mg/dlのグルコース溶液を測定したところ、応答電流値として610nAが得られた。なお、この酵素電極型化学センサは、乾燥保管する前に行った特性試験では、濃度50mg/dlのグルコース溶液に対して測定された応答電流値は600nAであった。次に、翌日、24時間待機状態に保持後、同じ測定を繰り返した。この1日経過後、測定された応答電流値は600nAであった。さらに、その後3日間、毎日同じ測定を繰り返し、経日的変化の有無を評価したところ、測定された応答電流値は590〜610nAで推移した。
比較のため、同じ製造ロットの、乾燥保管されていたグルコースセンサに関しては、緩衝液に浸漬した後、基準とする参照極4に対して、作用極2に測定電位と同じ700mVの電位を印加して、2時間保持する処理を施した。この処理を施した化学センサを用いて、濃度50mg/dlのグルコース溶液を測定したところ、応答電流値として510nAが得られた。なお、この酵素電極型化学センサも、乾燥保管する前に行った特性試験では、濃度50mg/dlのグルコース溶液に対して測定された応答電流値は600nAであった。次に、翌日、24時間待機状態に保持後、同じ測定を繰り返した。この1日経過後、測定された応答電流値は580nAであった。さらに、その後3日間、毎日同じ測定を繰り返し、経日的変化の有無を評価したところ、測定された応答電流値は590〜610nAで推移した。すなわち、乾燥保管後、緩衝液に浸漬した後、基準とする参照極4に対して、作用極2に測定電位と同じ700mVの電位を印加して、2時間保持する処理では、センサ感度が、本来の水準よりも有意に低く、都合24時間、この待機状態に保持しても、センサ感度は、本来の水準にまでは回復していないことが判明した。なお、計48時間、待機状態に保持した段階では、センサ感度は、本来の水準にまでは回復している。
一方、同じ製造ロットの、乾燥保管されていたグルコースセンサに関しては、緩衝液に浸漬した後、基準とする参照極4に対して、作用極2に800mVの電位を印加して、2時間保持する処理を施した。この処理を施した化学センサについて、作用極2に印加する電位を測定電位である700mVに変更し、作用極2と参照極4と間を流れるベース電流が一定になる3分間後に、濃度50mg/dlのグルコース溶液を測定したところ、応答電流値として720nAが得られた。なお、この酵素電極型化学センサも、乾燥保管する前に行った特性試験では、濃度50mg/dlのグルコース溶液に対して測定された応答電流値は600nAであった。次に、翌日、24時間待機状態に保持後、同じ測定を繰り返した。この1日経過後、測定された応答電流値は600nAであった。さらに、その後3日間、毎日同じ測定を繰り返し、経日的変化の有無を評価したところ、測定された応答電流値は590〜610nAで推移した。すなわち、乾燥保管後、緩衝液に浸漬した後、基準とする参照極4に対して、作用極2に800mVの電位を印加して、2時間保持する処理の直後は、センサ感度は、本来の水準よりも有意に高いが、その後、作用極2に印加する電位を測定電位である700mVにして、待機状態に保持すると、遅くとも、1日経過した時点では、センサ感度は、本来の水準で安定化が図られていることが判明した。
図4に、上記の3種の使用開始時の処理を施した、グルコースセンサのセンサ感度(応答電流値)の経日的変化を評価した結果を対比して示す。これらの結果を総合すると、乾燥状態で保管する間に、この酵素電極型化学センサの作用極、対極表面の微視的な状況は、測定電位を印加して、24時間以上保存液中に浸漬して、安定化が図られた状態とは異なった状態に偏移するものの、測定電位よりも有意に高い電位を印加して、保存液中に浸漬、保持する処理を施すことで、電極表面の状態は、本来の安定化した状態へと復することが可能であることが判明した。なお、この高い電位を印加した状態から、通常の測定電位に変更した際、電極表面上に蓄積される電荷に起因する電気二重層の変化は、速やかに行われ、作用極と参照極と間を流れるベース電流が一定になるものの、酵素電極型化学センサ全体として、静電的に偏移した状態の安定化を達成するには、さらに時間を要することが判る。なお、このさらなる安定化には、印加電位の変更量にも依るものの、長くとも、1時間以内の保持で十分であると判断される。
すなわち、作製後、乾燥状態で保管されている酵素電極型化学センサについて、使用開始する際、本発明にかかる第一の測定方法に従う、使用開始処理操作を行うことで、その酵素電極型化学センサ本来のセンサ感度への安定化を短時間で達成できることが確認された。この使用開始処理操作を終えた後、センサ感度の安定化がなされ、一定期間、感度較正を行わなくとも、精度、再現性のよい測定を実施することが可能となる。
また、以上の結果を踏まえて、かかる酵素電極型化学センサ用の測定装置本体9に関して、上述する使用開始処理操作に対応する印加電位設定、保持時間の条件を、ソフト的に機能追加した。対応して、ハード的にも、上述する一連の使用開始処理操作が完了し、安定した測定が可能となった旨を表示する機構をも付加した。
例えば、上述する使用開始処理操作機能を付加した測定装置本体9では、
乾燥状態のセンサを測定器本体9に接続してから、
(i)センサが保存液に浸漬される位置に設置(リードスイッチ等で検知)
(ii)電位を印加せずに5分間保持
→有機膜全体が十分に保存液で濡れていない状態で電位を印加すると膜破壊を起こすため。
(iii)750mVで3時間保持
(iv)450mVで1時間保持
(v)450mVはそのままだが、測定器本体部のインジケータが「測定可」となる。
のような、ソフト的な電位印加タイミング制御、ならびに、それに利用するリードスイッチ等で検知機構、測定器本体部のインジケータ部の追加など、ハード的な変更がなされる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明にかかる第2の実施形態に用いる化学センサ構成の一例を模式的に示す断面図である。図5に示す化学センサは、3極方式の化学センサに構成されており、絶縁性基板1上に、導体からなる作用極2および対極3、ならびに、参照極4が形成されている。これら3極方式の電極系の上には、酵素膜5が形成されており、所謂、酵素電極型の化学センサとされている。なお、この酵素電極では、酵素膜5の表面側に制限透過膜11を、また、酵素膜5の電極側には選択透過膜12を設けてあり、これらの膜を固定化する際、電極系と選択透過膜12との間に、接着層6を設けている。絶縁性基板1は液透過性を示さず、電極系と液との接触は、液透過性を有する、制限透過膜11、酵素膜5、選択透過膜12、ならびに接着層6とを介して達成される。この最表面に制限透過膜を具える、酵素電極を利用する酵素電極型化学センサの具体例は、例えば、特許掲載公報第2943700号に開示されている。
選択透過膜12は、化学センサの電極表面における電気化学的反応にあずかる、最終的な測定対象物質以外の物質の透過を阻止する機能を有しており、その機能は、編み目構造により大きな分子量を有する分子の透過を阻止したり、さらには、静電的な反発力によりイオンの侵入を阻止したりする膜構造によって発現される。
一方、制限透過膜11は、酵素電極における測定対象物質の透過率を制限するものであり、すなわち、酵素膜5における酵素反応の基質物質の透過率を低くすることにより、仮に、測定試料中の基質物質濃度が高い場合でも、単位時間当たりに酵素膜5に達する基質物質量は、かかる酵素膜5中に含有される酵素で定量的に反応産物へと変換可能としている。一般に、酵素膜5に達する基質物質量が過剰になると、単位時間当たりに、酵素膜5中に含有されている、限られた量の酵素により変換される反応産物量には、一定の上限があり、基質物質量と反応産物量との間で定量性が失われ、結果的に、センサ出力飽和と称される状態となる。図5に示す制限透過膜11を設ける構成を採用することで、センサ出力飽和に達する測定試料中の基質物質濃度を格段に高くでき、すなわち、定量性の高い測定が可能な測定試料中の基質物質の濃度範囲、所謂ダイナミックレンジを拡大する機能を有する。さらには、制限透過膜11は、測定試料中の基質物質のみでなく、実際の測定試料中に含まれる種々の夾雑物に対しても、その透過率を制限する機能を示すので、酵素膜5の機能低下の要因となる種々の夾雑物に対する、化学的、物理的な保護膜としての役目をも果している。
例えば、グルコースセンサなど、酵素電極型化学センサが測定対象とする測定試料溶液は、血液や尿、排水など、測定対象物質以外の種々の夾雑物質を含むことが多い。このような測定試料の場合、図3に示すような、酵素膜と電極だけの構造では、これらの夾雑物質に因る影響、妨害や干渉を受けやすく、センサ特性の著しい変化を起こすことも少なくない。前記した選択透過膜12や制限透過膜11を設けることにより、酵素電極型化学センサは、このような厳しい環境においても、安定した特性を維持し、高い定量性を発揮できるようになる。
しかしながら、この選択透過膜12や制限透過膜11を設ける構造では、溶媒の水、過酸化水素分子や水酸化物イオン(OH-)などの低分子種に関しては、所望の透過特性を確保されているものの、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)や、基質のグルコース程度の分子サイズを有する可溶性物質やイオン種ですら、その透過特性が大幅に制限されている。そのため、図3に示すような、酵素膜と電極だけの構造と比較して、図5に示す選択透過膜12や制限透過膜11を設ける構造では、例えば、作用極2や対極3の表面に存在する表面被膜層が、可溶性物質に変換されても、この作用極2や対極3の表面近傍から、選択透過膜12や制限透過膜11を経由して、センサ外へと排出されるに要する時間は長くなる傾向がある。
この図5に示す構造の酵素電極型化学センサの場合にも、本発明にかかる第一の測定方法に従って、乾燥状態で保管されているセンサを使用開始する際、第一の初期処理工程において、保存液に用いる緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、測定電位よりも有意に大きな値に選択する印加電位、例えば、少なくとも100mV以上大きな印加電位、但し、900mVを超えない範囲に選択される第一の初期処理電位を、白金電極からなる作用極2と参照極4との間に印加して、保持することで、作用極2や対極3の表面に存在する表面被膜層を速やかに除去することが可能である。なお、この第一の初期処理工程における、作用極2と参照極4との間に印加される第一の初期処理電位の好適な範囲は、用いる保存液と、作用極2と参照極4の導電体材料が同じであれば、図3に示すような、酵素膜と電極だけの構造と、図5に示す選択透過膜12や制限透過膜11を設ける構造との間で、本質的には同じものとなる。さらには、作用極2や対極3の表面に存在する表面被膜層が、可溶性物質に変換され、さらに、選択透過膜12や制限透過膜11を経由して、センサ外へと排出されるまでに要する時間は、図3に示すような、酵素膜と電極だけの構造と比較すると長くなるものの、この第一の初期処理時間は4時間を超えない範囲にすることが可能である。
一方、その後、印加電位を変更して、第二の初期処理電位(測定電位)を印加して保持する時間(第二の初期処理時間)に関しては、図5に示す構造の酵素電極型化学センサの場合でも、第一の初期処理電位と第二の初期処理電位(測定電位)との電位変化量が増すとともに、徐々に長く設定することが望ましいものの、この電位変化に際して、電位印加方向の反転は無く、その電位変化量も大きくとも、500mV程度であり、第二の初期処理時間は、1時間以内で十分に安定状態を達成できる。
なお、図5に示す選択透過膜12や制限透過膜11を設ける構造であっても、乾燥状態で保管されているセンサを使用開始する際、保存液に用いる緩衝液中において、作用極2と参照極4との間に測定電位と同じ電位を印加して、長時間保持すると、徐々に本来のセンサ感度まで回復するものの、その回復過程に要する時間は、1日以上となり、場合によっては、2〜3日を経た時点で、漸く本来のセンサ感度に安定化される。それと比較すると、図5に示す選択透過膜12や制限透過膜11を設ける構造では、図3に示す酵素膜と電極だけの構造と比較すると、長い時間を必要とするものの、本発明にかかる第一の測定方法に従って、初期処理操作を施すことで、本来のセンサ感度へと安定化が達成される期間を、なんら初期処理操作を施さない場合と比較すると、長くとも6時間以下と、格段に短縮することが可能である。
(実施例2)
本実施例2では、酵素電極型化学センサとして、図5に示す構成を示す、グルコースセンサを用いた。この酵素電極型化学センサの電極系は、Ptの作用極2、対極3、Ag/AgClの参照極4で構成される3極方式とした。酵素膜5は、グルコースオキシターゼを、アルブミンとグルタルアルデヒドのマトリックスに固定化した固定化酵素膜であり、電極上に、接着層6としてシランカップリング剤を介在させて、イオン交換樹脂からなる選択透過膜12を、引き続き、酵素膜5を設け、最表面を、フッ素系樹脂からなる制限透過膜11で被覆する形態とされている。この酵素電極型化学センサを、プラスティック製のカートリッジ7に液密に封入し用いた。カートリッジ7には、グルコースセンサの感応部だけが液と触れるように、窓8を設けた。
この制限透過膜11を設けるセンサでは、測定可能なグルコースの濃度範囲が広がるため、種々のグルコース濃度を示す試料溶液に対して、予め希釈操作を施し、グルコース濃度の調整を行わなくとも、高い定量性の測定が可能となる。また、選択透過膜12の作用により、基質グルコースから生成する酵素反応産物である過酸化水素は、この選択透過膜12を透過するものの、それ以外の妨害物質、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)などの干渉物質による影響を受けにくくなっている。
実施例1と同様に、本発明にかかる初期処理操作の手法を適用する際、その条件の最適化を図った。その条件検討の結果、測定電位として、基準とする参照極4に対して、作用極2に450mVの電位を印加する場合、第一の初期処理電位として、基準とする参照極4に対して、作用極2に750mVの電位を印加し、この第一の初期処理時間として、4時間保持し、次に、作用極2に印加する電位を450mVに変更し、第二の初期処理時間として、1時間保持した後、測定を開始すると、高い再現性で本来のセンサ感度への安定化が達成されることが判った。濃度500mg/dlのグルコース溶液を測定したところ、応答電流値として100nAが得られた。なお、この酵素電極型化学センサは、乾燥保管する前に行った特性試験では、濃度500mg/dlのグルコース溶液に対して測定された応答電流値は100nAであった。さらに、その後4日間、毎日同じ測定を繰り返し、経日的変化の有無を評価したところ、測定された応答電流値は100nA±5nAの範囲で推移した。
比較のため、同じ製造ロットの、乾燥保管されていたグルコースセンサに関しては、緩衝液に浸漬した後、基準とする参照極4に対して、作用極2に測定電位と同じ450mVの電位を印加して、濃度500mg/dlのグルコース溶液を測定したところ、初期における応答電流値は、40nA未満であった。なお、この酵素電極型化学センサも、乾燥保管する前に行った特性試験では、濃度500mg/dlのグルコース溶液に対して測定された応答電流値は100nAであった。さらに、その後4日間、毎日同じ測定を繰り返し、経日的変化の有無を評価した。1日経過した時点では、測定された応答電流値は80nAに回復しているものの、3日間を経過した時点で、最終的に、センサ感度が本来の値に安定化したことが確認された。
図6に、上記の2種の使用開始時の処理を施した、グルコースセンサのセンサ感度(応答電流値)の経日的変化を評価した結果を対比して示す。この対比によった、本発明にかかる第一の測定方法に従った、使用開始時の初期処理手法は、図5に示す選択透過膜12や制限透過膜11を設ける構造の酵素電極型化学センサにおいて、より利点が大きいと判断される。
(第3の実施形態)
図5に示す選択透過膜12と制限透過膜11を設ける構成の酵素電極型化学センサについても、上述する第2の実施形態に記載する初期処理操作を施すことで、使用開始から安定したセンサ感度が得られるものの、その後、長期間使用すると、徐々にセンサ感度が低下してくることが分かった。
長期間使用する間に見られるセンサ感度の低下は、測定を繰り返すことに伴い、例えば、化学センサ表面に妨害物質が吸着する、あるいは、電極表面への妨害物質の吸着等がその一因と考えられるが、本発明者は、測定をしないで、保存液中に、測定電位を印加して放置する(待機状態に保持する)場合でも、同様のセンサ感度の経時的な低下が生じることを見出した。すなわち、実際の測定試料中に存在する各種の妨害物質が存在していない場合でも、緩衝液中で、測定電位を印加して放置する(待機状態に保持する)間に、何らかのセンサ感度の低下を引き起こす、電極表面への表面被覆層などの形成が緩やかに進行することが判明した。
化学センサ表面に妨害物質が吸着する、あるいは、電極表面への妨害物質の吸着等に起因するセンサ感度の低下に対しては、先に述べた各種の酵素電極の再活性化処理が利用可能であるが、これら外因性の妨害物質でなく、保存液に利用する緩衝液中で生じる、内因性の表面被覆層形成に対しては、本発明にかかる第二の測定方法に従った、フレッシュ処理操作が有効である。
具体的には、化学センサを、所定の期間使用する毎に、待機状態の化学センサについて、緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に、測定電位と同一方向の電位であって、測定電位よりも大きな絶対値を示す第一のリフレッシュ処理電位を印加して、所定の第一のリフレッシュ処理時間保持する第一のリフレッシュ処理工程を施し、この第一のリフレッシュ処理工程の終了後、作用極と参照極との間に印加する電位を測定電位と同一の第二のリフレッシュ処理電位に変更して、第二のリフレッシュ処理時間、待機状態に保持とするリフレッシュ待機処理工程とを設けることで、前記内因性のセンサ感度低下の回復がなされる。
このリフレッシュ処理において利用する、第一のリフレッシュ処理電位は、上述する使用開始時の初期処理で利用される、第一の初期処理電位と同様の範囲に選択することが望ましい。すなわち、好適な範囲は、両者で一致したものとなる。一方、第一のリフレッシュ処理時間は、一般に、第一の初期処理時間と比較すると、相当に短い時間とすることができる。具体的には、第一のリフレッシュ処理時間は、1時間程度に選択できる。一方、第二のリフレッシュ処理時間は、印加電位の変更に伴う、静電的変化を解消するに要する時間であり、本質的に、第二の初期処理時間と同様の範囲に選択するとよい。なお、第一のリフレッシュ処理時間は、第一の初期処理時間と比較すると、相当に短い時間であるので、第二のリフレッシュ処理時間は、第二の初期処理時間よりも若干短い時間、例えば、30分間程度としても、問題ないものとなる。
この本発明にかかる第二の測定方法に従った、フレッシュ処理操作は、前記内因性のセンサ感度低下の回復を目的とするものであり、測定試料に由来する外因性の妨害物質等に由来するセンサ感度低下の回復を目的とする、従来の酵素電極の再活性化処理技術のように、測定毎にこの処理を行うよりも、測定頻度に依存するものの、定期的にリフレッシュ動作を組み込むことが有効である。この定期的にリフレッシュ操作を施すことにより、内因性のセンサ感度低下の回復を図り、初期のセンサ感度を長期間維持することができる。
(実施例3)
実施例2と同じ構造のグルコースセンサ10本を用いて、2ヶ月に渡り、公称グルコース濃度280mg/dlのコントロール尿(Baio Rad社製アブノーマル)を、定期的に測定した。10本のセンサを、5本ずつの群に分け、一方の群は、1週間に一度、リフレッシュ処理として、基準とする参照極4に対して、作用極2に測定電位より高い750mVの電位を印加して、30分間保持した後、作用極2に印加する電位を、測定電位と同じ450mVに変更し、30分以上経過した時点で、測定を行った。一方、他方の群は、かかるリフレッシュ処理は施さず、待機状態の際にも、作用極2に測定電位と同じ450mVの定電位を連続印加した。
これら二つの群について、上記のコントロール尿を定期的に測定した測定結果の経時的変化を比較した。図7に、その対比結果の一例を示す。両群ともに、各センサにおいて、若干のバラツキは見られるものの、その経時的変化の傾向は、各群内では一致している。すなわち、前記の定期的にリフレッシュ処理を実施する群では、この期間内では、ほぼ同じ測定値が得られ、センサ感度の維持が図られている。一方、リフレッシュ処理を実施していない群では、測定値は経時的に低下し、2ヶ月後には、初期の測定値の2/3になってしまっている。
なお、コントロール尿を定期的に測定することに付随する、外因性の妨害物質等に由来するセンサ感度低下に加えて、保存液に利用する緩衝液中で待機状態に維持するのみで生じる、内因性のセンサ感度低下が存在することも、別途確認した。この内因性のセンサ感度低下を起こした場合にも、前記の条件でリフレッシュ処理を実施すると、センサ感度は元の水準に回復した。
以上の結果から、本発明にかかる第二の測定方法に従った、フレッシュ処理操作は、内因性のセンサ感度低下に有効であるのみならず、コントロール尿を定期的に測定することに付随する、外因性の妨害物質等に由来するセンサ感度低下が存在する際にも、酵素電極の再活性化に有効であることが分かった。加えて、長期に渡り、センサ感度を維持するには、測定の有無に関わらず、定期的にリフレッシュ処理を行うことが最適でなると判断される。
以上の観点から、酵素電極型化学センサ用の測定装置本体9について、測定回数が所定の回数を超えるか、所定の時間が経過した時点で、自動的に上述するリフレッシュ処理操作に対応する印加電位設定、保持時間の条件を、ソフト的に機能追加した。対応して、ハード的にも、上述する一連のリフレッシュ処理操作が完了し、安定した測定が可能となった旨を表示する機構をも付加した。
本発明を、酵素電極を利用する化学センサに適用した際、長期間に渡り初期の特性を維持することが出来る。また、本発明にかかる化学センサにおいては、リフレッシュ動作をした直後を除けば特別な待機時間を必要としないので、通常は短い間隔で繰り返し測定を行うことができる。
加えて、本発明を、酵素電極を利用する化学センサに適用することで、長期間乾燥状態にあった酵素電極の特性を速やかに作製直後の特性に戻すことができる。また、感度が常に一定に出来るため、較正をほとんどしなくても長期間に渡り精度の良い測定をすることが出来る。また、従来に比べ短い間隔で繰り返し測定することが可能になる。
本発明にかかる第1の実施形態に用いる、酵素電極を利用する化学センサ構成の一例を模式的に示す断面図である。 本発明にかかる第1〜3の実施形態において、利用可能な化学センサ型測定装置本体と、化学センサ部カートリッジの全体構成を模式的に示す図である。 本発明にかかる第1の実施形態における、初期処理操作における化学センサの作用極と対極との間の印加電位設定の一例を示す電位チャートである。 実施例1における、化学センサ使用開始時の初期処理操作条件に起因する、化学センサによる測定結果(応答電流)の経日的変化の相違を対比するグラフである。 本発明にかかる第2の実施形態に用いる、酵素電極を利用する化学センサ構成の一例を模式的に示す断面図である。 実施例2における、化学センサ使用開始時の初期処理操作条件に起因する、化学センサによる測定結果(応答電流)の経日的変化の相違を対比するグラフである。 実施例3における、化学センサ使用開始後、本発明による定期的なリフレッシュ処理操作の有無に起因する、化学センサによる測定結果(応答電流)の経日的変化の相違を対比するグラフである。 酵素膜層を具える作用極と、対極とを分離して配置する、従来のセル型化学センサの構成例を示す断面図である。 三角波電位走査方式の酵素電極活性化方法で利用される化学センサの作用極と対極との間の印加電位走査の一例を示す電位チャートである。
符号の説明
1 絶縁性基板
2 作用極
3 対極
4 参照極
5 酵素膜
6 接着層
7 カートリッジ
8 窓
9 本体
10 報知装置
11 制限透過膜
12 選択透過膜
101 セル
102 酵素膜
103 作用極
104 対極

Claims (19)

  1. 少なくとも作用極と参照極とを具える化学センサを用いて、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方法であって、
    前記化学センサに対して、待機中、保存液とする所定の組成の緩衝液中に浸漬し、作用極と参照極との間に所定の測定電位を印加して保持し、
    測定時には、前記緩衝液に代えて、測定試料中に浸漬し、作用極と参照極との間に印加される前記測定電位を利用する、電気化学的反応によって発生する電流量変化に基づき、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方式による測定方法であり、
    該化学センサを使用開始する際、
    乾燥状態の該化学センサを前記緩衝液中に浸漬し、前記作用極表面と参照極表面とを該緩衝液に接触させた後、
    作用極と参照極との間に、前記測定電位と同一方向の電位であって、該測定電位よりも大きな絶対値を示す第一の初期処理電位を印加して、該化学センサを所定の第一の初期処理時間の間、前記緩衝液中にて保持する第一の初期処理工程と、
    該第一の初期処理工程の終了後、前記緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に印加する電位を前記測定電位と同一の第二の初期処理電位に変更して、前記化学センサを該待機状態で保持する第二の初期処理工程とを設け、
    該第二の初期処理工程を終えた後、該化学センサを測定試料の測定に供する手順を具えることを特徴とする化学センサによる測定方法。
  2. 該第一の初期処理工程の終了後、前記第二の初期処理工程において、所定の第二の初期処理時間の間、該化学センサを待機状態にて保持することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記化学センサは、作用極と参照極に加えて、さらに対極を有し、
    該参照極は、前記緩衝液と接触した際、作用極との間に所定の化学ポテンシャル差を有する材料で構成され、
    該参照極を基準として、作用極の電位を設定することで、作用極と参照極との間に、所望の電位が印加する状態として、
    前記測定電位、第一の初期処理電位、第二の初期処理電位の印加は、
    前記緩衝液中における参照極の電位と作用極の電位との間の電位差が、それぞれ前記測定電位、第一の初期処理電位、第二の初期処理電位に相当する電位差を与えるように設定することを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記参照極として、銀/塩化銀電極を用い、作用極と対極とを白金電極とし、
    測定に際して、作用極と参照極との間に印加される前記測定電位は、
    前記緩衝液中において、該参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、400〜700mVの範囲に選択される作用極の電位で得られる印加電位であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記第一の初期処理工程において、作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
    前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、該作用極と対極とにおいて水の電気分解反応の開始する印加電位を印加電位最上限値と、前記測定電位を印加電位最下限値と、それぞれ定義し、
    該印加電位最上限値と印加電位最下限値との差異で定義される最上限・最下限電位差を用いて、
    前記測定電位よりも、該最上限・最下限電位差の10%以上大きな印加電位であって、前記印加電位最上限値よりも、少なくとも200mV以上小さな印加電位の範囲に選択することを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
  6. 前記第一の初期処理工程において、作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
    前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、
    前記測定電位よりも、少なくとも100mV以上大きな印加電位であって、900mVを超えない範囲に選択することを特徴とする請求項4に記載の方法。
  7. 前記第一の初期処理工程において、作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
    前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、
    少なくとも、750mV〜900mVの範囲に選択し、
    前記第一の初期処理時間を4時間以下、少なくとも、1時間を下回らない範囲に選択することを特徴とする請求項4に記載の方法。
  8. 前記第二の初期処理時間を、少なくとも、1時間を下回らない範囲に選択することを特徴とする請求項4に記載の方法。
  9. 前記第一の初期処理時間と第二の初期処理時間とを加えた合計を、6時間以下に選択することを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記作用極、対極、参照極は、絶縁性基板上に形成されており、
    少なくとも、作用極の表面上に固定化された酵素膜層を設けてなる酵素電極を利用する電流検出型化学センサであることを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 少なくとも作用極と参照極とを具える化学センサを用いて、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方法であって、
    前記化学センサに対して、待機中、保存液とする所定の組成の緩衝液中に浸漬し、作用極と参照極との間に所定の測定電位を印加して保持し、
    測定時には、前記緩衝液に代えて、測定試料中に浸漬し、作用極と参照極との間に印加される前記測定電位を利用する、電気化学的反応によって発生する電流量変化に基づき、測定試料中に含有される特定物質の濃度を測定する方式による測定方法であり、
    該化学センサを、所定の期間使用する毎に、
    待機状態の該化学センサについて、前記緩衝液中に浸漬し、前記作用極表面と対極表面とを該緩衝液に接触させた状態で、
    作用極と参照極との間に、前記測定電位と同一方向の電位であって、該測定電位よりも大きな絶対値を示す第一のリフレッシュ処理電位を印加して、該化学センサを前記緩衝液中にて、所定の第一のリフレッシュ処理時間保持する第一のリフレッシュ処理工程と、
    該第一のリフレッシュ処理工程の終了後、前記緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に印加する電位を前記測定電位と同一の第二のリフレッシュ処理電位に変更して、前記化学センサを第二のリフレッシュ処理時間、待機状態に保持するリフレッシュ待機処理工程とを設け、
    該リフレッシュ待機処理工程を終えた後、再び該化学センサを測定試料の測定に供する手順を具えることを特徴とする化学センサによる測定方法。
  12. 少なくとも作用極と参照極とを具える化学センサと、
    前記作用極と参照極との間に電位を印加する手段と、該化学センサにより測定される信号を検出する手段とを具える信号検出回路を有し、
    該化学センサを用いた測定時には、対象の測定試料中に該化学センサを浸漬し、前記作用極と参照極との間に前記信号検出回路より測定電位を印加し、電気化学的反応によって発生する電流量変化に基づき、該測定試料中に含有される、測定対象である特定物質の濃度を測定する化学センサ型測定装置であって、
    該化学センサを使用開始する際に、
    乾燥状態の該化学センサを緩衝液中に浸漬し、前記作用極表面と参照極表面とを該緩衝液に接触させた状態で、作用極と参照極との間に、前記測定電位と同一方向の電位であって、該測定電位よりも大きな絶対値を示す第一の初期処理電位を、第一の初期処理時間の間印加する手段と、
    引き続き、該化学センサを前記緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に印加する電位を前記測定電位と同一の第二の初期処理電位に変更して、該第二の初期処理電位を第二の初期処理時間の間印加する手段と、
    前記二段階の初期処理操作を終了した時点で、それ以降測定可能となった旨を報知する機構を具える報知装置とを有する
    ことを特徴とする化学センサ型測定装置。
  13. 該参照極は、前記緩衝液と接触した際、作用極との間に所定の化学ポテンシャル差を有する材料で構成され、
    前記作用極と参照極との間に電位を印加する手段は、
    該参照極を基準として、作用極の電位を設定することで、作用極と参照極との間に、所望の電位を印加する手段であり、
    前記測定電位、第一の初期処理電位、第二の初期処理電位を印加する手段は、
    前記緩衝液中における参照極の電位と作用極の電位との間の電位差が、それぞれ前記測定電位、第一の初期処理電位、第二の初期処理電位に相当する電位差となるように設定する
    ことを特徴とする請求項12に記載の化学センサ型測定装置。
  14. 前記参照極として、銀/塩化銀電極を用い、作用極を白金電極とし、
    測定に際して、作用極と参照極との間に印加される前記測定電位は、
    前記緩衝液中において、該参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、400〜700mVの範囲に選択される作用極の電位で得られる印加電位である
    ことを特徴とする請求項13に記載の化学センサ型測定装置。
  15. 前記化学センサは、さらに対極を具えており、
    前記参照極として、銀/塩化銀電極を用い、作用極と対極とを白金電極とし、
    前記第一の初期処理電位を印加する手段によって、
    前記作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
    前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、該作用極と対極とにおいて水の電気分解反応の開始する印加電位を印加電位最上限値と、前記測定電位を印加電位最下限値と、それぞれ定義し、
    該印加電位最上限値と印加電位最下限値との差異で定義される最上限・最下限電位差を用いて、
    前記測定電位よりも、該最上限・最下限電位差の10%以上大きな印加電位であって、前記印加電位最上限値よりも、少なくとも200mV以上小さな印加電位の範囲に選択されている
    ことを特徴とする請求項13に記載の化学センサ型測定装置。
  16. 前記化学センサは、さらに対極を具えており、
    前記参照極として、銀/塩化銀電極を用い、作用極と対極とを白金電極とし、
    前記第一の初期処理電位の印加する手段において、
    前記作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
    前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、
    前記測定電位よりも、少なくとも100mV以上大きな印加電位であって、900mVを超えない範囲に選択されている
    ことを特徴とする請求項13に記載の化学センサ型測定装置。
  17. 少なくとも作用極と参照極とを具える化学センサと、
    前記作用極と参照極との間に電位を印加する手段と、該化学センサにより測定される信号を検出する手段とを具える信号検出回路を有し、
    該化学センサを用いた測定時には、対象の測定試料中に該化学センサを浸漬し、前記作用極と参照極との間に前記信号検出回路より測定電位を印加し、電気化学的反応によって発生する電流量変化に基づき、該測定試料中に含有される、測定対象である特定物質の濃度を測定する化学センサ型測定装置であって、
    該化学センサを、所定の期間使用する毎に、
    待機状態の該化学センサについて、緩衝液中に浸漬し、前記作用極表面と参照極表面とを該緩衝液に接触させた状態で、作用極と参照極との間に、前記測定電位と同一方向の電位であって、該測定電位よりも大きな絶対値を示す第一のリフレッシュ処理電位を、第一のリフレッシュ処理時間の間印加する手段と、
    引き続き、該化学センサを前記緩衝液中に浸漬したまま、作用極と参照極との間に印加する電位を前記測定電位と同一の第二のリフレッシュ処理電位に変更して、該第二のリフレッシュ処理電位を第二のリフレッシュ処理時間の間印加する手段と、
    前記二段階のリフレッシュ処理操作を終了した時点で、それ以降再び測定可能となった旨を報知する機構を具える報知装置とを有する
    ことを特徴とする化学センサ型測定装置。
  18. 前記化学センサは、さらに対極を具えており、
    前記第一の初期処理電位を印加する手段によって、
    前記作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
    前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、該作用極と対極とにおいて水の電気分解反応の開始する印加電位を印加電位最上限値と、前記測定電位を印加電位最下限値と、それぞれ定義し、
    該印加電位最上限値と印加電位最下限値との差異で定義される最上限・最下限電位差を用いて、
    前記測定電位よりも、該最上限・最下限電位差の10%以上大きな印加電位であって、前記印加電位最上限値よりも、少なくとも200mV以上小さな印加電位の範囲に選択されている
    ことを特徴とする請求項14に記載の化学センサ型測定装置。
  19. 前記第一の初期処理電位の印加する手段において、
    前記作用極と参照極との間に印加される前記第一の初期処理電位は、
    前記緩衝液中において、参照極とする銀/塩化銀電極を基準として、
    前記測定電位よりも、少なくとも100mV以上大きな印加電位であって、900mVを超えない範囲に選択されている
    ことを特徴とする請求項14に記載の化学センサ型測定装置。
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