JP4535713B2 - 抗ヒトサイトメガロウイルス剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒトサイトメガロウイルス等のウイルス疾患の感染防止、治療効果を持つ抗ウイルス剤に関するものである。
従来、ハイブリッド極性化合物(hybrid polar compound) は、細胞の分化誘導剤として知られており、その1種であるヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)については、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)等への治療効果が報告されている。(非特許文献1)
また、その他の学術的報告として、HMBAが、ミトコンドリアからのチトクロムCの放出やBcl2蛋白質レベルの低下により、多剤耐性を有する細胞株の細胞死を誘導すること(非特許文献1)や、ヘルペスウイルスの複製促進作用を有することが知られている(非特許文献2)。しかし、これらHMBA等のハイブリッド極性化合物に関する抗ウイルス効果に関する知見は報告されていない。
一方、ヒトサイトメガロウイルスは、ヘルペスウイルスの1種であり、日本人の90%程度、欧米人では50%程度に潜伏感染しているウイルスである。ヒトサイトメガロウイルスは、感染後、まず、前初期蛋白質(Immediate Early Proteins)を誘導する。このうちの主要前初期蛋白質(Major Immediate Early Proteins (MIE))が、IE1及びIE2である。ヒトサイトメガロウイルスは、その後、初期蛋白質(Early Proteins (E))の発現、ウイルス遺伝子の合成、後期蛋白質(Late Proteins(L))の発現を介して、宿主内で複製・増殖する。
サイトメガロウイルスは、通常ではヒトに疾病をもたらすおそれは低いが、例えば妊婦に感染すると胎盤を通じて胎児にも感染し、巨細胞封入体症の原因となり、場合によっては脳障害が起こることもあり、また、免疫抑制剤の投与を受けている患者などにおいては潜伏ウイルスが再活性化され、間質性肺炎や肝炎、脳炎、網膜炎、神経疾患、痴呆等の疾病を引き起こすことが知られている。
現在、こうしたヒトサイトメガロウイルスの治療薬(DNA合成阻害薬)としては、ガンシクロビル(gancicrovir)やホスホカーネット(phosphocarnet)等が使用されている。
Ruefli, A. A.ら 、Blood, 2000, vol.95, p2378-2385. Preston, C. M. ら、Virology, 1998, 249, p418-426.
しかしながら、既存の抗ヒトサイトメガロウイルス剤(ガンシクロビル等)には、細胞病毒や耐性ウイルスの出現等の問題があった。また、既存の抗サイトメガロウイルス剤は、ウイルス複製サイクル内のDNA合成段階を抑制するものであるので、より高くしかも迅速に抗ウイルス効果を得るため、DNA合成期より以前の複製ステップを阻害する化合物が求められている。
このため、現状では、上記問題点の解消された、高活性かつ複製初期段階に作用する優れた抗ヒトサイトメガロウイルス剤の作出を求められている。
本発明は、ヒトサイトメガロウイルス等のウイルス疾患の感染防止、治療効果を持つ抗ウイルス剤を得ることを目的とする。
請求項1に記載された発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス剤は、ハイブリッド極性化合物又はその塩を有効成分とし、
前記ハイブリッド極性化合物が、下記式(1)
(1)CH 3 -CO-NH-(CH 2 ) n -NH-CO-CH 3 〔nは、2〜8の整数を示す。〕
で表される化合物またはEメチレンビスアセトアミドであるものである。
請求項2に記載された発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス剤は、請求項1に記載の抗ヒトサイトメガロウイルス剤が、薬学的に許容される薬剤又は担体とを更に含むことを特徴とするものである。
請求項に記載された発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス剤は、請求項1又は2に記載のハイブリッド極性化合物が、その分子構造中にメチレン基を6以上有するものであることを特徴とするものである。
請求項に記載された発明に係る抗ヒトサイトメガロウイルス剤は、請求項1〜の何れか1項に記載のハイブリッド極性化合物が、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヘプタメチレンビスアセトアミド、オクタメチレンビスアセトアミド又はEメチレンビスアセトアミドから選ばれた1つ以上であることを特徴とするものである。
本発明では、HMBA(ヘキサメチレンビスアセトアミド)やDMSO(ジメチルスルホキシド)等のハイブリッド極性化合物やこれらの誘導体が、抗ヒトサイトメガロウイルス効果を有することを見出したため、これらを投与することにより、同ウイルス感染に基づく間質性肺炎、肝炎や脳炎、網膜炎等の感染症に対する予防治療効果が期待できる。
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を行った結果、分化誘導剤として知られている、ヘキサメチレンビスアセトアミド(CH 3 -CO-NH-(CH 2 ) 6 -NH-CO-CH 3 )、ヘプタメチレンビスアセトアミド(CH 3 -CO-NH-(CH 2 ) -NH-CO-CH 3 )、オクタメチレンビスアセトアミド(CH 3 -CO-NH-(CH 2 ) -NH-CO-CH 3 )、Eメチレンビスアセトアミド(ジエチルビス(ペンタメチレン-N,N-ジメチルカルボキサミド)マロネート)等のハイブリッド極性化合物が、優れた抗ウイルス活性を有することを見出した。また、ハイブリッド極性化合物の中でも、特にメチレン基数6以上のものの抗ウイルス活性が高く、細胞病毒等の問題を克服しつつヒトサイトメガロウイルスを排除できることを見出し本発明を完成した。すなわち、本発明は、ハイブリッド極性化合物を有効成分とする抗ヒトサイトメガロウイルス剤を提供するものである。
具体的には、本発明の抗ウイルス剤は、ハイブリッド極性化合物を有効成分とし、更に、薬学的に許容される薬剤又は担体とを更に含むものである。
薬学的に許容される薬剤又は担体とは、一般的に、薬剤又は担体の特性は、用いられる投与の特定の様式に依存する。例えば、液状組成物は通常、水、生理食塩水、緩衝塩類溶液、水性デキストロース、グリセロール、エタノール、のような薬学的および生理学的に許容される液体、その組合せ、または溶媒等を含む注射可能な液体を含む。薬剤又は担体は滅菌することができ、製剤は投与様式に適合する。
固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル剤)に関しては、従来の非毒性固体担体は、例えば製薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、およびステアリン酸マグネシウムを含みうる。生物学的に中性の担体の他に、投与すべき薬剤組成物は、湿潤剤、乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤等、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンのような非毒性補助物質の少量を含みうる。
更に、固形組成物や液状組成物には、保存剤、抗酸化剤、可溶化剤、乳化剤、増粘剤、可塑剤、吸着剤、香料、着色剤、分散剤、矯味矯臭剤、甘味剤、防腐剤なども製剤中の各有効成分を阻害しない範囲で使用できる。
ハイブリッド極性化合物とは、合成された極性化合物を指し、具体的には、DMSO(ジメチルスルホキシド)やヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA;CH3-CO-NH-(CH2)6-NH-CO-CH3)、ヘプタメチレンビスアセトアミド(CH3-CO-NH-(CH2)-NH-CO-CH3)、オクタメチレンビスアセトアミド(CH3-CO-NH-(CH2)-NH-CO-CH3)、Eメチレンビスアセトアミド(EMBA;ジエチルビス(ペンタメチレン-N,N-ジメチルカルボキサミド)マロネート)の化合物を挙げることができる。即ち、2つの極性基を共通に有することからハイブリッド極性化合物と呼ばれ、これは無極性のアルキル鎖(例えば、アルカンまたはアルケン)鎖によって分離していてもよく、水性および有機溶媒の双方に可溶性である。
また、本発明は、ハイブリッド極性化合物として、その構造中にメチレン基を6以上有するものである上記の抗ウイルス剤を提供する。メチレン基を6以上とは、不連続ではなく、炭素数6以上の直鎖状アルキレン基としての構造を分子中に持つことを指す。メチレン基を6以上有するものは、抗ウイルス活性が高い利点を有する。
具体的なメチレン基を6以上有するハイブリッド極性化合物としては、ハイブリッド極性化合物が、ヘキサメチレンビスアセトアミド(CH3-CO-NH-(CH2)6-NH-CO-CH3)、ヘプタメチレンビスアセトアミド(CH3-CO-NH-(CH2)-NH-CO-CH3)、オクタメチレンビスアセトアミド(CH3-CO-NH-(CH2)-NH-CO-CH3)又はEメチレンビスアセトアミド(ジエチルビス(ペンタメチレン-N,N-ジメチルカルボキサミド)マロネート )を挙げることができ、活性が高い。即ち、CH 3 -CO-NH-(CH 2 ) n -NH-CO-CH 3 〔nは、6〜8の整数を示す。〕およびEMBAが好ましい。
本発明の抗ウイルス剤は、ヒトサイトメガロウイルスのIE1蛋白質およびIE2蛋白質の産生を抑止するものであるので、特にこれらの蛋白質と同一または類似の蛋白質を有するウイルスに対して用いることが好ましい。本発明の抗ウイルス剤の効果を期待し得るウイルスとしては、ヒトサイトメガロウイルスの他、例えば、EBウイルスや水痘帯状疱疹ウイルスが挙げられる。
本発明での抗ウイルス剤としては、注射可能な液体製剤の形態としては、血中濃度が0.1〜5mMとなるよう投与することが好ましく、間質性肺炎や肝炎、脳炎、網膜炎、神経疾患、痴呆等の用途に用いる。有効成分のハイブリッド極性化合物としては、たとえば、HMBAは既に市販されているものを用いることができる(アルドリッチ社製)。
実施例1.TPC−1細胞増殖への影響
20万個のヒト甲状腺ガン由来のTPC−1細胞をプレートに接種し、翌日(0日)に0−20mMのヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA;アルドリッチ社製)を含む、5%牛胎児血清含有ダルベコ変法イーグル培地(日水製薬製;以下「5%牛胎児血清」を省略して「ダルベコ変法イーグル培地」という」)で30日間培養し、TPC−1細胞増殖に及ぼすHMBA処理効果を検証した。培養は、5%CO2 インキュベーター(37℃)内で行い、培養中、5日毎に培地交換(アスピレーターで培地を吸引除去後交換)した。
図1はTPC−1細胞増殖に及ぼすHMBA処理効果の結果を示す線図であり、図において、横軸はHMBA処理時間(日数)、縦軸は各時点で測定した全細胞数である。図に示す通り、HMBAを20mMの濃度で添加されたものは処理後15日目で細胞死を起こし、5〜10mMの濃度で添加されたものは細胞増殖を抑制したが、細胞死を起こさなかった。
実施例2.ウイルス感染と維持の阻害
約100万個のヒト甲状腺ガン由来のTPC−1細胞にヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を1時間吸着感染後、HMBAの不含培地(●)と、5mM HMBAの含有培地(○)で、20日間、5日毎に培地交換して維持し、5,10,15,20日目の全産生ウイルス量とウイルス蛋白質とを計測した。なお、全ウイルス量は、細胞を含む培養液を−85℃フリーザー内で凍結した後融解し、これを更に1分間超音波処理して細胞抽出液を作製し、この抽出液を適宜希釈後、HEL(ヒト胎児肺由来)細胞に接種し、プラーク法により計測した(以下の実施例も同様)。図2はTPC−1細胞のウイルス感染後の動向を示す線図であり、図において、横軸は感染後時間(日数)、縦軸はウイルス力価(PFU/ml)である。図2に示す通り、HMBAはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の感染が持続することを阻害することが判った。
図3はヒトサイトメガロウイルスの感染後5,10,15,20日の細胞内に合成されたウイルス蛋白質をウエスタンブロット法で検出した電気泳動ゲルの模式図である。図において、レーン5,10,15,20は感染後の日数を示し、MockはHMBA不含培地、HMBAは5mM HMBAの含有培地を示す。検出した蛋白質は、MIE (IE1とIE2), Early(E)、Late(L)及びアクチンである。図3に示す通り、HMBAが添加された培地では10日目からウイルスMIE、E及びL蛋白質の全てが検出されず、ウイルス蛋白質合成を阻害することが判った。
一方、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)が持続した感染が確認されたTPC−1(以下、TPC−1piと記す)細胞を、HMBA不含培地(●と■)又は5mM HMBA含有培地(○と□)で30日間、5日毎に培地交換して維持した。図示した各時点での全産生ウイルス量(実線)および培地中に放出されたウイルス(点線)を測定した。なお培地中に放出されたウイルス量は、培養液を2,000rpmで5分間遠心分離し、細胞破砕物等の浮遊物を除去した後、上記と同様にプラーク法を用いて計測した。
図4はTPC−1pi細胞のウイルス感染の動向を示す線図であり、図において、横軸は感染後時間(日数)、縦軸はウイルス力価(PFU/ml)である。図4に示す通り、HMBA処理により、培地中のウイルスは処理10日迄に、全ウイルス量も25日迄に検出レベル以下に低下した。これにより、HMBAはHCMV持続感染を治癒させることが判った。
実施例3.ガンシクロビルとのウイルス増殖抑制効果の比較
ヒトサイトメガロウイルスの治療薬として市販されているガンシクロビル(gancicrovir)と、HMBAとのウイルス増殖抑制効果を比較した。具体的には、TPC−1pi細胞をガンシクロビル(2.5−20μg/ml)及び5mM HMBAで10日間処理(5日目に培地交換)した後、全産生ウイルス量を測定して比較した。
図5はHMBAとガンシクロビルとのウイルス増殖抑制効果を比較したグラフであり、図において、横軸は添加前、各濃度のガンシクロビル、HMBAであり、縦軸はウイルス力価(PFU/ml)である。図5に示す通り、ガンシクロビルはヒトサイトメガロウイルス増殖を10−2〜10−4迄抑制したが、HMBAの抑制効果はそれよりさらに強力で、約10−6迄の低下が認められた。これにより、HMBAはガンシクロビルに比べ、より強くヒトサイトメガロウイルス増殖を阻害することが判った。
実施例4.抗原及びウイルス関連蛋白質合成の抑制効果の検討
TPC−1pi細胞をHMBA不含培地(mock;パネルA,B,EとF)と、5mM HMBA含有培地(HMBA;パネルC,D,GとH)とで、30日迄、5日毎に培地交換して維持した。処理10日と30日後に、MIE抗原(MIEA)と後期抗原(LA)を蛍光抗体染色し、両抗原陽性細胞数を比較した。図6は各々の蛍光抗体染色の結果を示す図面代用写真である。
図6に示す通り、処理10日後には両抗原陽性細胞数に著しい減少が認められ(パネルCとG)、30日後には検出レベル以下となった(パネルDとH)。これにより、TPC−1pi細胞におけるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のMIE抗原(MIEA)と後期抗原(LA)の陽性細胞数がHMBA処理により著明に減少することが判った。
一方、TPC−1pi細胞をHMBA不含培地(mock)と、5mM HMBA含有培地(HMBA)で20日間、5日毎に培地交換して維持し、0,1,2,3,4,5,10,15,20日後の各培地のIE1蛋白質発現レベルとIE2蛋白質発現レベルとを、ウエスタンブロット法で検討した。
図7はウエスタンブロット法で検出した電気泳動ゲルの模式図である。図7に示す通り、未処理細胞には常時IE1蛋白質発現とIE2蛋白質発現とが確認されたが、HMBA処理直後よりIE2蛋白質発現レベルが著しく低下し(上図)、10日後検出レベル以下となった。一方、IE1蛋白質は20日後に検出されなくなった(下図)。これにより、HMBAはウイルスIE2蛋白質合成を優先的に阻害することが判った。
更に、TPC−1細胞にHCMVを感染後5日間、HMBA不含培地(●)または5mM HMBA含有培地(○)で維持し、1−5日後にMIE抗原,初期抗原(Early抗原[E])および後期抗原(Late抗原[L])のウイルス蛋白質合成と、全産生ウイルス量を測定した。図8はウエスタンブロット法で検出した電気泳動ゲルの模式図である。図9はTPC−1細胞のウイルス感染後の動向を示す線図であり、図において、横軸は感染後時間(日数)、縦軸はウイルス力価(PFU/ml)である。
その結果、図9に示す通り、HMBA処理細胞では、HCMV増殖が1/500〜1/1,000抑制され、図8に示す通り、その原因は感染後最初に合成されるMIE蛋白質のうちIE2蛋白質合成が選択的に阻害され、その結果EおよびL蛋白質合成が抑制されることによることが明らかとなった。これにより、HMBAによるHCMV増殖阻害は、IE2蛋白質合成阻害に起因することが判った。
実施例5.TPC−1とHEL細胞とにおけるウイルス増殖への影響
実施例4の図9に示した通り、TPC−1細胞へのHCMV感染を検討したが、他の細胞についても検証した。具体的には、ヒト胎児由来胚細胞のHEL細胞についても、ウイルス増殖への影響を検証した。
HEL細胞と1グループのTPC−1細胞に、HCMVをMOI(感染の度合)=0.01と5でそれぞれ感染させ、もう一方のグループのTPC−1細胞には、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)をMOI=0.01で感染させた。1時間の吸着後、細胞をハンクスの平衡塩類溶液(HBSS)で洗浄し、表1に示した濃度のHMBAを含むダルベコ変法イーグル培地を加えた。結果を次の表1に示す。なお、表1に示すHCMVおよびHSV−2産生量は、それぞれ感染120時間後と72時間後に測定されたものである。
表1に示す通り、HEL細胞においても、TPC−1細胞ほどではないが、HMBAの添加量に応じてヒトサイトメガロウイルスの増殖阻害作用が確認された。また、単純ヘルペスウイルス2型の増殖阻害作用は確認されなかった。
実施例6.HMBA作用標的の解析
1グループのTPC−1細胞を0−30mM HMBAでHCMV感染前24時間37℃(5% CO インキュベーター内)で前処理した。細胞をHBSSで洗浄後、HCMVをMOI=5で感染し、25時間後にウエスタンブロッテイング法により合成されたMIE蛋白質を解析した(図10(A)レーン1−6)。もう一方のグループのTPC−1細胞は、HMBA前処理することなくHCMVをMOI=5で感染させた。1時間吸着後、細胞を0−30mM HMBAを含む培溶液で維持し、25時間後にMIE蛋白質合成の有無を検討した(図10(A)レーン7−12)。その結果、10−30mM HMBA前処理細胞には、IE1とIE2蛋白質合成が認められた(図10(A)レーン4−6)のに対し、後処理された細胞にはIE1とIE2両蛋白質の合成は認められなかった(図10(A)レーン7−12)。
また、30mMのHMBAで0−5日間感染前処理したもの(図10(B)レーン1−6)および後処理したもの(図10(B)レーン7−12)についてもウエスタンブロッティングを行った(他の条件は上記と同様)。その結果、1−5日間前処理した細胞には、いずれもIE1とIE2蛋白質の発現が認められた(図10(B)レーン2−6)のに対し、後処理した細胞には、両蛋白質の発現は認められなかった。これらの結果から、HMBA処理によりMIE蛋白質合成に必要な細胞機能が損なわれることによりIE1とIE2蛋白質が合成されなくなるのではないこと、およびHMBAによるHCMV増殖阻害効果の標的は、ウイルス側にあることが判明した。これにより、HMBAによるHCMV増殖阻害は、宿主細胞機能ではなく、ウイルス機能を介して発揮されることが判った。
実施例7.製剤
次の処方A,Bに示す通り、HMBAを用いた製剤を2例作成した。これら注射可能な液体製剤の形態としては、血中濃度が0.1〜5mMとなるよう投与することが好ましく、間質性肺炎や肝炎、脳炎、網膜炎、神経疾患、痴呆等の用途に用いることができる。
A.
HMBA 100mg
マンニトール 1000mg
亜硫酸水素ナトリウム 5mg
注射用蒸留水 全量10ml
B.
HMBA 100mg
塩化ナトリウム 1720mg
塩化カリウム 60mg
塩化カルシウム 6mg
注射用水 全量10ml
以上のように、本発明の抗ウイルス剤は、ウイルス複製サイクルの最当初段階で発現するIE(特にIE2)蛋白質の合成を抑制するので、強いウイルス増殖抑制効果と共に細胞病毒等前記問題点の少ない優れた効果を期待できる。
また、HMBA(ヘキサメチレンビスアセトアミド)等のハイブリッド極性化合物(hybrid polar compounds)が、抗ヒトサイトメガロウイルス効果を有することを見出した。これを投与することにより、同ウイルス感染に基づく間質性肺炎、肝炎や脳炎、網膜炎等の感染症に対する予防治療効果が期待できる。
TPC−1細胞増殖に及ぼすHMBA処理効果の結果を示す線図である。 TPC−1細胞のウイルス感染後の動向を示す線図である。 ヒトサイトメガロウイルスの感染後5,10,15,20日の細胞内合成ウイルス蛋白質をウエスタンブロット法で検出した電気泳動ゲルの模式図である。 TPC−1pi細胞のウイルス感染の動向を示す線図である。 HMBAとガンシクロビルとのウイルス増殖抑制効果を比較したグラフである。 各々の蛍光抗体染色の結果を示す図面代用写真である。 ウエスタンブロット法で検出したウイルス蛋白質の電気泳動ゲルの模式図である。 ウエスタンブロット法で検出したウイルス蛋白質の電気泳動ゲルの模式図である。 TPC−1細胞のウイルス感染後の動向を示す線図である。 感染細胞内に合成されたウイルス蛋白質をウエスタンブロット法で検出した電気泳動ゲルの模式図である。

Claims (4)

  1. ハイブリッド極性化合物(hybrid polar compound) 又はその塩を有効成分とし、
    前記ハイブリッド極性化合物が、下記式(1)
    (1)CH 3 -CO-NH-(CH 2 ) n -NH-CO-CH 3 〔nは、2〜8の整数を示す。〕
    で表される化合物またはEメチレンビスアセトアミドであることを特徴とする抗ヒトサイトメガロウイルス剤
  2. 前記抗ウイルス剤が、薬学的に許容される薬剤又は担体とを更に含むことを特徴とする請求項に記載の抗ヒトサイトメガロウイルス剤
  3. 前記ハイブリッド極性化合物が、その分子構造中にメチレン基を6以上有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗ヒトサイトメガロウイルス剤
  4. 前記ハイブリッド極性化合物が、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヘプタメチレンビスアセトアミド、オクタメチレンビスアセトアミド又はEメチレンビスアセトアミドから選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の抗ヒトサイトメガロウイルス剤
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