JP4896333B2 - 薬理活性抗ウイルスペプチドおよびそれらの使用法 - Google Patents

薬理活性抗ウイルスペプチドおよびそれらの使用法 Download PDF

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Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は、抗ウイルス特性を有するペプチドに関する。より具体的には、本発明は、広範囲のウイルスに対して活性を示すペプチド、前記ペプチドを含む医薬品組成物、および前記ペプチドを用いてウイルス感染を予防および/または治療する方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
近年、ウイルスに対して活性を有する多様なペプチド誘導体群が開示されている。これらのペプチドの例は、Beaulieuらに対して発行された米国特許第5,700,780号;Schlesingerらに対して発行された米国特許第5,104,854号;Freidingerらに対して発行された米国特許第4,814,432号;Dutiaら、Nature 321:439(1986);およびDohenら、Nature 321:441(1986)に開示されている。しかし、当業者に知られている多くの既知抗ウイルスペプチドは、極めて疎水性であり、故に、生物学的利用能があまり高くない。さらに、これらの既知の抗ウイルスペプチドの多くは、それらの特異的な作用メカニズムのため、数タイプのウイルスに対してしか活性を示さない。加えて、これらの合成ペプチドの多くは、初期ウイルス感染の予防に有効ではないか、または局所塗付した時、機能しない。
【0003】
今日までに抗ウイルス薬として開発された最も成功したヌクレオシドの一つは、アシクロビルである。アシクロビルは、単純性疱疹ウイルス・タイプI(HSV−1)、単純性疱疹ウイルス・タイプII(HSV−2)、および水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)に対してインヴィトロおよびインビボ阻害活性を有する合成プリンヌクレオシド類似体である。細胞培養において、アシクロビルの最も高い抗ウイルス活性は、HSV−1に対してであり、HSV−2、VZVの順で効力が落ちる。しかし、アシクロビルの使用は、禁忌されることがある。その上、一部の単純性疱疹ウイルスは、アシクロビルに対して耐性になってきた。
【0004】
近ごろ、局所殺ウイルス薬およびコンドーム潤滑剤に組み込んで、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の伝染防止を助けることができる抗ウイルス化合物に向けて、相当な研究がなされている。こうした製品に対する需要は高く、HIV感染を予防する適切な抗ウイルスおよび/または殺ウイルス化合物は、先進国および発展途上国の両方でおおいに役立つであろう。
【0005】
従って、広範囲のウイルスに対して高い活性を示す抗ウイルス薬が、依然として必要である。局所的に塗付することができ、ウイルス感染の予防に有効な抗ウイルス薬も依然として必要である。
【0006】
(図面の簡単な説明)
図1Aから1Cおよび図1Eは、コントロールペプチド(配列番号16および配列番号17)との比較で、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)、(配列番号3)および(配列番号4)によるHSV−1の用量依存性阻害を示す代表図である。図1Cは配列番号1および配列番号17の細胞障害効果を示す。
【0007】
図2は、本発明のビオチン化抗ウイルスペプチド(配列番号2)によるウイルス阻害を示す代表図である。
【0008】
図3は、アシクロビルとの比較として、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)によるHSV−1形成の用量依存性阻害を示す代表図である。
【0009】
図4Aおよび4Bは、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)が初期のウイルス感染およびウイルスの伝播を阻害することを説明する図である。
【0010】
図5は、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)の抗ウイルス活性がウイルス投入量に依存することを説明する図である。
【0011】
図6Aおよび6Bは、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)による細胞へのウイルス侵入の阻害を説明する図である。
【0012】
図7Aおよび7Bは、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)の侵入期および用量応答を説明する図である。
【0013】
図8Aおよび8Bは、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)の殺ウイルス活性を説明する図である。
【0014】
図9Aおよび9Bは、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)のインビボでの活性を説明する図である。
【0015】
(発明の詳細な説明)
以下の説明では、多数の用語を広範に使用する。本発明の理解を助けるために、本明細書における定義を設ける。
【0016】
抗ウイルスペプチド: 抗ウイルスペプチドは、少なくとも膜通過性ペプチドの一部分、あるいはその断片または誘導体を含み、有効量で投与した時、薬理学的に有効な抗ウイルス薬である。
【0017】
有効量: 抗ウイルスペプチドの所定量、すなわち、治療または予防効果のためにインビボでまたは局所的にウイルス生物に対して有効であるために十分なペプチドの量。
【0018】
膜通過性ペプチド(膜通過性モチーフ): そのペプチドが脂質二重層を横断して、細胞または細胞内区画に侵入することができるようにするアミノ酸配列を有するペプチド。
【0019】
製薬上許容され得る担体: 中に含まれている薬理活性抗ウイルスペプチドと反応しないかまたはその有効性を低下させない非毒性賦形剤を一つ以上含む、哺乳動物に抗ウイルスペプチドを投与するために許容され得る繕いビヒクル。
【0020】
溶解性タグ: 荷電アミノ酸から成る短いペプチド配列であり、これをより長い不溶性ペプチド配列の末端残基に取り付けると、水性媒体への溶解度を向上させるであろう。
【0021】
本出願では、全体を通してアミノ酸に標準一文字略名を用いる。Lehningerら、「Principles of Biochemistry(生物化学の原理)」, Worth Publishers(New York, New York)p.113(1983)を参照のこと。本出願におけるすべてのアミノ酸配列は、各配列の末端における最も左のアミノ残基がアミノ末端残基であり、各配列の右端の残基がカルボキシル末端残基である、標準命名法を用いて示す。本明細書に記載するペプチドのアミノ酸は、ペプチド配列の前にlまたはdで示すように(表1を参照のこと)、左旋性アミノ酸または右旋性アミノ酸のいずれかであり得る。
【0022】
本発明は、膜通過性ペプチドに基づく新規抗ウイルスペプチドに関する。多様な膜通過性ペプチドが当業者においてよく知られている。膜通過性ペプチドは、局所的に塗付されるか、またはインビボで適用された時のような活性を含む広範囲の抗ウイルス活性を示すことを意外にも、思いがけなく発見した。膜通過性ペプチドから誘導される本発明の抗ウイルスペプチドの例を下の表1に記載するが、当該記述分野において既知の一切の膜通過性ペプチドを用いることができる。例えば、Poogaら、FASEB J.,12:67(1998)およびOehlkeら、FEBS Lett.,415:196(1997)を参照のこと。
【0023】
【表1】
Figure 0004896333
【0024】
本発明の抗ウイルスペプチドは、有効量で単独に用いることができる。大部分の膜通過性ペプチドが可溶性であるとはいえ、一部はそうではないが、不溶性膜通過性モチーフは、以下の方法によって抗ウイルスペプチドに用いることができる。抗ウイルスペプチドが製薬上許容され得る水溶性担体に不溶性である場合には、溶解性タグを抗ウイルスペプチドに付加させることができる。
【0025】
表1に示したように、配列番号1から4は、共有結合した溶解性タグを有している。本発明は、共有結合した溶解性タグを部分的に含むと共に、以下の配列:(X1−A−A−V−A−L−L−P−A−V−L−L−A−L−L−A−P−(X2)(配列番号14)または(X1)−P−A−V−L−L−A−L−L−A−(X2)(配列番号15)(式中のX1およびX2は、各X1および各X2が同じまたは異なる電荷のアミノ酸残基であることができる、一つ以上の荷電アミノ酸残基(例えば、K、R)から選択され;式中のnは、0または3から10の値を有し、mは、0または3から10の値を有し、この場合、一つの実施形態において、m=0またはn=0のいずれかである)を有するような新規抗ウイルスペプチドに関する。溶解性タグの一つの例は、R−R−K−K(配列番号16)である。好ましい実施形態において、溶解性タグのすべての荷電アミノ酸残基は、正電荷のアミノ酸残基である。本発明者は、不溶性膜通過性ペプチドが、溶解性タグに結合した時、広範囲のウイルスに対して強い抗ウイルス活性を示す抗ウイルスペプチドを生ずることを意外にも、思いがけなく発見した。
【0026】
多くの膜通過性ペプチドは、溶解性タグを必要とすることなく本発明の抗ウイルスペプチドとして機能することができる。表1を参照のこと。さらに、溶解性タグは、一部の膜通過性ペプチドの溶解性を向上させることができるが、これらの特定の膜通過性ポリペプチドは、溶解性タグを組み込まずとも抗ウイルスペプチドとして適切であり得る。
【0027】
本発明の抗ウイルスペプチドは、それらの末端アミノ酸残基に取り付けられた多様な反応性タグを有することができる。こうしたタグは、本発明の合成ペプチドの検出/取出しに有用である。こうしたタグには、ほんの一例としてビオチン、ならびに当業者によく知られている他の一切のタグを挙げることができる。配列番号2、5から12および実施例2は、こうした反応性タグの加入を示している。
【0028】
本発明の膜通過性ペプチドの誘導体および断片も、抗ウイルスペプチドとして有用であることが判った。本発明は、膜通過性モチーフの一つ以上のアミノ酸残基が欠失しているかまたは他のアミノ酸残基に置換された膜通過性モチーフを含む新規抗ウイルスペプチドに関する。こうした置換された、または断片の膜通過性モチーフは、抗ウイルス活性を保持していなければならない。その置換膜通過性モチーフまたは断片を含む本発明の抗ウイルスペプチドは、以下の実施例に記載する方法によって抗ウイルス活性について検査することができる。実施例2は、表1に記載した配列番号3によって示されるような置換膜通過性モチーフを含む抗ウイルスペプチドが、抗ウイルス活性を保持していることを示している。この誘導体は、両方のプロリンアミノ酸残基がペプチドのカルボキシ末端に位置しているという点のみが、配列番号1と異なる。本発明の抗ウイルスペプチドの可能性ある活性断片を表2に記載する。
【0029】
【表2】
Figure 0004896333
こうした誘導体および断片は、本発明の範囲内である。
【0030】
本発明のペプチドは、アミノ酸残基および/またはペプチド断片の伝統的な溶液結合法、および望まれる場合には、固相技術などのペプチド合成に一般に用いられる方法を取り入れた方法によって、調製することができる。こうした方法は、以下の実施例で説明する。当業者においてよく知られているペプチド合成についてのなんらかの方法、例えば、Schroeder and Lubke, in 「The Peptides(ペプチド)」,Vol.1,Academic Press,New York,New York,pp.2−128(1965);「The Peptides: Analysis,Synthesis,Biology(ペプチド: 分析、合成、生物学)」,(編集 E.Grossら),Academic Press,New York,New York,Vol.1−8,(1979−1987);Stewart and Young, in「Solid Phase Peptide Synthesis(固相ペプチド合成)」,2nd Ed.,Pierce Chem.Co.,Rockford,IL(1984);Wildら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10537(1992);およびRimskyら、J.Virol,72:986(1998)を用いることができる。
【0031】
以下の実施例に示すように、本発明の抗ウイルスペプチドは、広範な外皮膜および非外皮膜ウイルスに対して抗ウイルス活性を示す。こうした外皮膜ウイルスの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ベシクロウイルス(VSV)、単純性疱疹ウイルス(HSV−1およびHSV−2)、および他の疱疹ウイルス、例えば、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、EBV、ウマ疱疹ウイルス(EHV)、およびヒトサイトメガロウイルス(HCMV)が挙げられるが、それらに限定されない。非外皮膜ウイルスの例には、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)およびアデノウイルスが挙げられるが、それらに限定されない。
【0032】
本発明の抗ウイルスペプチドのウイルス複製に対する阻害効果を示すための方法は、以下の実施例で教示するようなよく知られている細胞培養技術である。こうした方法は、当業者によく知られている。Wildら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10537(1992)を参照のこと。
【0033】
抗ウイルス薬としての抗ウイルスペプチドの治療上の有効性は、実験動物において、例えば、実施例10に示すようなネズミモデルを用いることによって、示すことができる。
【0034】
さらに、本発明の薬理活性ペプチドの治療効果は、当業者によく知られている技術により、ヒトにおいて示すことができる。例えば、Kilbyら、Nature Medicine 4;1302(1998)を参照のこと。
【0035】
本発明の抗ウイルスペプチドは、温血動物、例えば、ヒト、ウマ、他の哺乳動物などに本ペプチドを局所投与することによって、抗ウイルス薬として用いられるだろう。本ペプチドは、一つ以上の製薬上許容され得る担体を含むビヒクル中で投与することができ、その割合は、ペプチドの化学的特性の中の溶解度、選択される投与経路および標準生物学的投与によって決定される。本ペプチドの処方に適するビヒクルまたは担体は、標準的な製薬テキストに記載されている。「Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミントンの製薬科学)」,18th Ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA(1990)を参照のこと。
【0036】
局所投与用の抗ウイルスペプチドは、有効量の抗ウイルスペプチド、典型的には0.1から10%、好ましくは5%の抗ウイルスペプチドを含有する製薬上許容され得るビヒクル中で処方することができる。こうした製剤は、溶液、クリームまたはローションの形態であり得る。本発明の抗ウイルスペプチドは、皮膚または口腔または生殖腔の一部のウイルス感染を治療するために用いることもできる。本抗ウイルスペプチドは、より多種多様なウイルスを治療するために、独自でまたは組合せて用いることができる。こうした局所塗付は、手袋、コンドームおよび当業者に知られている他のバリヤーなどの着用者を保護するためのバリヤー材に施すことができる。
【0037】
全身投与用の本発明の抗ウイルスペプチドは、静脈内、皮下または筋肉内注射によって、単独で、または製薬上許容され得るビヒクルもしくは担体と併用で投与することができる。注射による投与には、バッファーまたは保存薬、ならびに溶液を等張性にするために足る量の製薬上許容され得る塩もしくはグルコースなどの他の溶質を含有することもできる、無菌水性ビヒクル中の溶液で、抗ウイルスペプチドを用いることが好ましい。本発明の抗ウイルスペプチドは、当業者においてよく知られている治療上許容され得る塩の形態で得ることができる。
【0038】
本発明の抗ウイルスペプチドの投薬量は、投与の形態によって変化し、併用するために選択される特定の抗ウイルスペプチド(複数を含む)に依存するであろう。さらに、治療を受ける特定の宿主によって変化するであろう。一般に、本抗ウイルスペプチドは、一切の有害なまたは有毒性の副作用を生じることなく、選択したウイルス(複数を含む)に対して抗ウイルス薬として有効な結果を一般に生じるだろう濃度水準で、最も好ましくは投与される。
【0039】
以下に説明する実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。別様に定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術および科学用語は、本発明の当業者が一般に説明するものと同じ意味を有する。本明細書中に記載するものと類似のまたは同等のあらゆる方法および材料が発明の実施に用いることができるが、好ましい方法および材料を記載した。別様に言及しない限り、本明細書中で用いるまたは考察する技術は、当業者によく知られている標準的な方法である。これらの材料、方法および実施例は、説明のためのものであって、制限するためのものではない。本明細書に引用するすべての参考文献は、参照により取り入れる。
【0040】
実施例1−プロトコルおよび材料
細胞培養およびウイルス: (Grauら、Invest.Ophrhal.and Vis.Sci.30:2474(1989))に記載されているような、Vero細胞を成長させ、HSV−1 KOSの高力価株を調製するための手順を用いた。Vero細胞は、5%の仔ウシ血清および5%のウシ胎仔血清(標準培地)を補充したカーボネート緩衝DMEM中で保持した。一部の研究については、細胞を、25mMのHepesで緩衝した血清を含まないDMEM(pH7.4)に切り換え、実験的処理の前に30分間その培地に適応させた。Vero細胞は、ミクロタイタープレートのウエル(0.28cm)に、1日後に使用するために3.5×10細胞/ウエル(8×10細胞/ウエル)、または3日後に使用するために1×10細胞/ウエル(2×10細胞/ウエル)のいずれかで接種された。
【0041】
プラーク減少アッセイ: ミクロタイタープレート内の集密Vero細胞は、40μLの培地に、37℃で1時間、感染させた。指示した場合を除き、40μLの培地中でのペプチド処理は、感染の1時間前から1時間後まで続いた。吸着時間終了時点で、培養物に100μLの標準培地を再供給した。2日後、プラーク形成の点数付けを行い、1ウエルにつき点数付けされたプラーク数を、ペプチド不在の状態で数えた数に対して正規化した。接眼マイクロメータを用いて、最も大きいプラークの直径(L)およびそれに対して90°角での直径(S)を測定することによって、プラークサイズ(π/2×L×S)を決定した。プラークが、10未満の円型細胞を含んでいたか、ウエルの側面に接触していた場合を除いて、最初の40の点数付けプラークの各々のサイズを測定した。
【0042】
収量低下アッセイ: 感染3日後、ミクロタイタープレート内のVero細胞培養物を3回凍結(−80℃)融解(37℃)した。ピペット操作を繰り返すことによって細胞を懸濁させ、ミクロタイタープレートをベックマンTJ−6型卓上遠心分離器内で10分間、700xgで回転させた。ウイルスを含有する上清を標準培地中で、連続的に希釈し、Vero細胞について力価測定した。Grauら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.30:2474(1989)によって教示されているように、クリスタルバイオレットを用いて単層を染色した後、プラークを数えた。
【0043】
付着アッセイ: HSV−1 KOSを[32P]−オルトホスフェートで標識して、比放射能 0.01cpm/pfuにした。簡単に言うと、Vero細胞を5.0の感染多重度で感染させ、感染の6時間後に、[32P]−オルトホスフェート(0.5mCi/mL)を添加した。感染の18時間後、細胞および培地を別々に回収した。細胞を3回の凍結融解サイクルに付し、細胞破壊片を2000xgで10分間、遠心分離することによってペレット化した。Visalliら、Virus Res.29:167(1993)によって教示されているように、凍結融解上清は、培地と混合し、ウイルスは、26%のスクロース密度勾配クッションによる遠心分離によってペレット化した。使用にあたって、ウイルスペレットをPBSに再懸濁させた。ミクロタイタープレート内の集密Vero細胞を血清を含まないDMEMに移し、氷を用いて冷却して、4℃で保持した。30分後、ペプチドを添加し、60分後、細胞を2時間、32P−ウイルス(2×10cpm/ウエル)と共にインキュベートした。標識付けした後、細胞を氷冷培地ですすいだ。その後、結合した32Pは、PBS中、1%のDSDおよび1%のTriton X−100を用いて定量的に抽出し、ベックマンLS5801液体シンチレーション・カウンターで数えた。
【0044】
lacZウイルス(hrR3)侵入アッセイ: 96ウエルのミクロタイタープレート内の集密Vero細胞培養物をHepesで緩衝した、血清を含まないDMEMに移し、30分間、氷を用いて4℃に冷却し、40μLの培地中、4℃で1時間、hrR3で感染させた。氷冷培地ですすぐことによって、未付着ウイルスを除去した。EBと呼ばれる抗ウイルスペプチド配列番号1、もしくはスクランブルドバージョンの膜通過性ペプチドR−R−K−K−L−A−A−L−P−L−V−L−A−A−P−L−A−V−L−Aに付着したRRKKテトラペプチド(配列番号16)を含むコントロールペプチド((配列番号17)(EBXと呼ばれる)での処理、またはペプチドを含まない培地での擬似処理を、前述したように血清を含まないDMEM中で行った。ウイルスの侵入を、培養物を37℃に変えることによって開始させた。一切の残存細胞外ウイルスを不活性化するために、培養物をPBSですすぎ、低pHのクエン酸バッファー(Highlanderら、J.Virol.61:3356(1987)によりクエン酸 40mM、KCl 10mM、NaCl 135mM、pH3.0)に23℃で、1分間さらした。クエン酸塩をPBSですすぎ落とし、培養物が23℃で30分間、5xのPBS中、0.5%のグルタルアルデヒドで固定されるまで培養物を血清補充DMEM中で保持して、2μMのMgCl、1.3mMのKFe(CN)および1.3mMのKFe(CN)を含有する1xのPBS中のX−gal(Fisher Biotech;BP1615−1)を用いて23℃で1時間または一晩、β−ガラクトシダーゼ活性について染色し、青いlacZ細胞の存在を点数付けした。
【0045】
殺ウイルスアッセイ: HrR3(1.2×10pfu/mL)を70μLの血清を含まないDMEM(pH7.4)中、37℃で、1時間、多様な濃度のEBまたはEBXとともにインキュベートした。血清補充DMEMを用いて処理ウイルスを200倍に希釈し、約1時間後に、1日前にVero細胞(3.5x10細胞/ウエル)を播いたミクロタイターウエルに関する感染性について検定した。40または100マイクロリットル量の希釈ウイルスを1または2時間、37℃で吸着させ、lacZ細胞を8時間後に点数付けした。一部の実験では、残存する感染性ウイルスを検定する前に、先ず、一定量の希釈ウイルスを一晩、4℃で、Hepesで緩衝して血清を補充した60倍過剰量のDMEMに透析する(Spectra/Por;MWCO 12−14,000)か、または注射器によって0.22μmの膜(Millex−GV;Millipore)に通した。
【0046】
トリパンブルー排除アッセイ: 血清を含まないまたは血清を補充したDMEM中の未感染Vero細胞を37℃で1時間、抗ウイルスペプチド配列番号1またはコントロールペプチドEBX(配列番号17)で処理し、PBSですすいで、23℃で5分間、PBS中0.4%のトリパンブルーで染色し、再びPBSですすいで、空気乾燥させた。
【0047】
電子顕微鏡検査法: Visalliら、Virus Res.29:167(1993)による精製HSV−1 KOSウイルス粒子(2.5x10pfu/mL)を5から60分間、4または23℃で、25mMのHepesで緩衝した40μLの血清を含まないDMEM(pH7.4)中の25μMの抗ウイルスペプチド配列番号1またはコントロールペプチドEBX(配列番号17)で処理した。一定量(10μL)をピオロホルムポリ−L−リシン被覆グリッドに5分間、23℃で吸着させた。グリッドをPBSですすぎ、pH6に調整した水中の2%のリンタングステン酸(PTA)で染色して、空気乾燥させた。あるいは、ウイルスをグリッドに予め吸着させ、その後、ペプチドで処理した。5μLのPBS中、合計4x109pfu/mLの精製HSV−1 KOSを23℃で5分間、被覆グリッドに塗付し、25mMのHepesで緩衝した血清を含まないDMEMバッファー(pH7.4)でそのグリッドを一回すすいで、37℃で30分間、同じ培地中5mMのEBまたはEBX 15μLで処理した。抗ウイルスペプチド配列番号1およびEBXの高濃縮溶液のpHは、使用前に、NaOHで7.4に再調整した。ペプチド含有溶液の蒸発を防止するために、各グリッドをHiraokaフレキシブル染色プレート内に保持し、0.5mLのポリプロピレン微量遠心分離管から製造された小型ベルジャーをかぶせた。このベルジャーは、その半分が、グリッドの被覆表面に面することを満たすように、十分に小さく15μLほどの大きさであった。その後、全アセンブリを湿潤チャンバ内で、30分間、37℃でインキュベートした。処理後、グリッドは、PTAで染色する前に、DMEMで2回、PBSで1回すすぎ、乾燥させた。グリッドは、JEOL JEM−1200EX電子顕微鏡において、15,000および40,000倍の倍率で検査した。
【0048】
ペプチド合成: ペプチドの合成および分析は、ウィスコンシン大学マジソン校のバイオテクノロジー・センターで行った。合成は、Meienhoferら、Int.J.Peptide Protein Res.13:35(1979)およびFieldsら、Peptide Res.4:95(1991)による改良を伴う、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:7129(1963)によって最初に説明された原理に従って、自動合成装置(Applied Biosystems Model 432A「Synergy」)を用いて、25ピコモルスケールで行った。分解したペプチドを冷t−ブチルメチルエーテルで沈降させ、水に溶解して、HPLC分析(純度)およびエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(分子質量、表1参照)によって検査した。溶液中のペプチド濃度は、Segel,Biochemical Calculations,2nded.John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY(1976)によって教示されたように、215および225nmでの吸光度の読み取りによって決定した。
【0049】
実施例2−抗ウイルスペプチドの抗ウイルス活性
抗ウイルスペプチドEB(配列番号1)は、HSV−1 KOSでのVero細胞培養物の感染中に存在する時、有効な抗ウイルス薬であり、図1A(●)、図1B(●)および図1D(○)に示すようにプラーク形成を阻害し、濃度に依存して最高8桁までウイルスの収量を低下させた(図1E参照)。コントロールペプチドの図1A(○)および図1B(○)EBXと比較して、抗ウイルスペプチドEBは、はるかに有効な抗ウイルス薬であり、血清の存在(図1A)または不在(図1B)に依存して10または100倍低い濃度で感染を阻害した。
【0050】
血清不在の状態でのトリパン排除によって測定した時、抗ウイルスペプチドEBの細胞障害効果は、抗ウイルス濃度(図1B、(●);IC50=0.7μM)より100倍高い(図1C、(●);IC50=68μM)濃度でしか見られなかった。血清が存在する状態では、細胞障害効果は、最初、EB 200μM(図1C、(△))で見られた。細胞障害効果は、コントロールペプチドEBX(配列番号17)には随伴しなかった(図1C、(○))。
【0051】
荷電アミノ末端R−R−K−Kテトラマーは、疎水性の別の状況では抗ウイルス性のペプチドEBの溶解性の向上に有用であることがわかったが、それ自体は重要な抗ウイルス活性を一切有さない。血清が存在する状態では、抗ウイルス活性は、200μMの高き濃度でも、遊離R−R−K−Kテトラマー(配列番号16)には随伴しなかった(図1A、(▲))。
【0052】
別の実験において、遊離R−R−K−Kテトラマー(配列番号16)は、血清を含まない条件のもと、1.3mMのIC50値で、Vero細胞のhrR3感染を阻害することを発見した(データは、示していない)。高濃度(100倍までモル過剰)であるが、非抗ウイルス濃度の遊離R−R−K−Kペプチド(配列番号16)は、抗ウイルスペプチドEBの活性と競合することはできず、抗ウイルスペプチドEBによるhrR3感染の阻害を再現することはできないことも発見した(データは、示していない)。
【0053】
膜通過性タンパク質配列の誘導体が抗ウイルス活性を示すかどうかを調査するために、中央のプロリン残基をカルボキシ末端に移動させた、EBPPと呼ばれる修飾抗ウイルスペプチド(配列番号3)を試験した。このEBPPペプチド(表1)は、プラーク(図1D)および収量低下アッセイ(データは、示していない)の両方で、元のEBペプチドの2倍、活性であった。
【0054】
ビオチンを有するようにEBペプチドを修飾し(配列番号2)、上に記載したように、活性について検査した。図2に示すように、ビオチン化EBは、本質的にEBと同じほど有効であった。従って、ペプチドのビオチン化は、活性に対してごくわずかな効果しか生じなかった。
【0055】
本発明の多数の他の抗ウイルスペプチドおよびコントロールの抗ウイルス活性を上に記載したように測定した。その結果を以下の表3に示す。図1Eに示すように、「LALA」と呼ばれる抗ウイルスペプチド配列番号4は、EBと類似した抗ウイルス活性を示す。
【0056】
【表3】
Figure 0004896333
【0057】
実施例3−抗ウイルスペプチド対アシクロビルの抗ウイルス活性の比較
実施例1で調製したVero細胞をHSV−1で感染させ、実施例1に記載したようにウイルス生産について検定した。本発明の抗ウイルスペプチドEB(配列番号1)の抗ウイルス活性を、現行のHSV抗ウイルス性ヌクレオシド標準物質アシクロビルの抗ウイルス活性と比較した。HSVで感染させる1時間前に、二つのペプチドをVero細胞に添加した。図3が示すように、アシクロビルは、低投薬量で最高の活性を示すが、高濃度、すなわち有効成分の10μMを越える濃度では、EBが、最も大きな抗ウイルス活性を示した。
【0058】
実施例4−早期効果および細胞間伝播に対する効果
本発明の抗ウイルスペプチドは、ウイルスのライフサイクルの早期に作用することが測定された。図4Aに示すように、EBは、感染1時間後に始まって継続的に存在する時に比べ、感染中および感染1時間前および1時間後に存在する時、実質的に有効であった(各々、IC50=5.5μM、(○) 対 IC50=24、(●))。さらに、吸着前および吸着中に存在する時、EBは、プラークサイズに対して効果を生じなかった。EBペプチドが、感染後継続的に存在した時、プラークの拡大は、用量に依存する形で阻害された(図4A,(△);IC50=12μM)。個々のプラークを確実に測定できるようにするために、細胞培養物を非常に低い多重度(moi<0.01)で感染させ、プラークサイズを非常に早期に(感染1日後)顕微鏡で測定した。図4Bに示すように、未処理のコントロールウエルでは、プラークサイズが広く分布し(黒棒;平均:66,000±6200μm)、これに対して、感染1時間後、EBの増加濃度が追加されたことによって、分布は、より小さいサイズのクラスに向かって累進的にシフトした(例えば、25μMのEBは、平均プラークサイズを70%有意に低下させて、6900±2600μmにした;t=6.88;影つき棒)。対照的に、たとえプラークの数が感染後の処理に比べて猛烈に減少したが、感染後1時間未満のEBの存在は、プラークサイズに対して効果を生じなかった。従って、6および12μMのEB(68,000±11,000μm)で一時的な処理を施した後の混合平均プラークサイズは、コントロールと区別がつかなかった。EBは、ウイルス感染の初期段階で作用し、感染後に添加した時プラークサイズを低下させるように見えた。
【0059】
実施例5−抗ウイルスペプチドによるウイルスの凝集
本発明の抗ウイルスペプチドがウイルスを凝集させることを電子顕微鏡により示した。有効に視覚化するために必要なため、高濃度の精製ウイルス粒子を25μMのEBとともにインキュベートし、被覆グリッドに吸着させて、PTAで染色した。結果は、ほぼすべての粒子が比較的数少ない大きな凝集体中に見られることを示した。対照的に、未処理ウイルス、すなわち25μMのEBXで処理したウイルス粒子は、ほぼすべて、個々に、均質に、グリッド表面に分散しているのがわかった。凝集体の中のPTA染色された個々のウイルス粒子は、視覚的にコントロール粒子と区別がつかなかった。このことは、EBがウイルス粒子において全体的な構造的異常を誘導しなかったことを示す。EB誘導凝集体は、室温ならびに4℃で急速に(<5分)形成された。
【0060】
実施例6−ウイルス投入量に関して抗ウイルスペプチドの抗ウイルス活性
多様な濃度のEBが存在する状態で、19、210および5700pfu/ウエルの投入量のhrR3で培養物を感染させ、8時間後にlacZ細胞を点数付けした。得られたIC50値は、図5に示すように、各々、0.66、1.2および11μMであった。
【0061】
重要なことは、図5中の挿入図に示すように、210pfu/ウエルの中間投入量より上では、この投入量より下の場合より、ウイルス力価の増大にともないIC50が大きく増大した。もしEBが単に、高いウイルス投入量でより効率的に(すなわち低いIC50で)作用するはずの凝集剤として作用するのならば、IC50とウイルス力価の間に逆の相関が予想されよう。従って、これらの実験では、ウイルスの凝集は、EBの抗ウイルス活性に対していかなる重大な貢献もなしていない。さらに、EBの抗ウイルス活性がウイルスの濃度に強く依存しているという事実は、本発明の抗ウイルスペプチドがウイルスの成分と相互作用しているということを示唆している。
【0062】
実施例7−ウイルス侵入の阻害
前吸着されたhrR3ウイルスを用いた追加研究は、本発明の抗ウイルスペプチドの抗ウイルス作用(複数を含む)がウイルスの吸着にも、ウイルスの凝集にも関係しないが、ウイルス侵入の阻害には関係することを示した。これらの研究において、hrR3ウイルスは、血清を含まないDMEMに氷冷した25μMのEBまたはEBXを添加する前に、4℃で1時間、予め細胞に吸着させた。4℃でさらに1時間後、培養物を37℃にシフトさせて、ウイルスの侵入を開始させた。温度シフト後、15分間隔で、低pHのクエン酸バッファーを用いて培養物を洗浄することによって、細胞外に残存する一切のウイルスを不活性化した。次に、培養物をすすぎ、固定するまで、ペプチドを含まない血清を補充したDMEMに戻した。温度シフトの8時間後にβ−ガラクトシダーゼについて染色した。
【0063】
図6Aに示すように、擬似処理コントロール培養物(○)におけるウイルス侵入は、37℃に変えた15から30分後に開始し、約60分後に6.5mmあたり約340lacZ細胞(すなわち、1450 lacZ細胞/ウエル)のレベルで完了した。EBペプチドで処理した細胞株では、lacZ細胞の数を90%より多く減少させた(●)。EBXペプチドは、lacZ細胞(▲)の数を有意には減少させなかった。EBおよびEBXをウイルス吸着前に添加した時、本質的に同じ結果が得られた(データは、示していない)。ペプチドを各クエン酸処理直後に添加した時、EBは、もはやlacZ細胞の成長に対して一切効果を生じなかった(図6B、(●);図6A、(○)参照)。EBXも、クエン酸処理直後に添加した時、lacZ細胞の成長を有意には阻害しなかった(図6B、(▲))。このように、EBは、早期ICP6プロモータからのlacZ遺伝子の発現に対しては効果を生じなかったが、選択的にウイルスの侵入を阻害した。
【0064】
この結論は、前吸着ウイルスでの感染のEB感受性期が、hrR3感染細胞におけるlacZ遺伝子の発現より明確に先行する(図7A)という発見によって強められる。さらに、hrR3を4℃で1時間、細胞に前吸着させて、未付着ウイルスをすすぎ落とし、細胞をさらに1時間、4℃で保持した。次に、培養物を37℃に切り替える前に、30分間、23℃に変えた。より漸進的な37℃への変化によって、細胞相が後続の頻繁な培地交換を通して無傷でいることができる。ウイルス吸着直後、連続的な1時間間隔で、50μMのEBを用いて、1時間、細胞を処理した。感染後1時間から4時間の間、ウイルス侵入は、70から80%阻害された。その後、感染は、もはや有意には阻害されなかった(図7B、●))。擬似処理後、並行培養物を直ちに固定させ、X−galを用いて染色した。これらの培養物において、青い(lacZ)細胞は、最初、感染の7時間後に現れ、それらの数は、次の3時間、ほぼ直線的に増加した(図7A、(○))。感染後7時間までに、EBは、阻害性ではなくなった。従って、EBは、早期短期感受性期間中しかウイルス侵入を阻害せず、一旦、ウイルスが細胞に侵入してしまうと、lacZ遺伝子の発現およびβ−ガラクトシダーゼ活性の発生に対して効果を生じなかった。図7Bに示すように、EBは、IC50=15μM(●)で、用量に依存する形で前吸着ウイルスの侵入を阻害したのに対して、EBXは、殆ど有効ではなかった(IC50 100μM;(○))。
【0065】
実施例8 − 抗ウイルスペプチドの殺ウイルス効果
ウイルス粒子に対する本発明の抗ウイルスペプチドの結合は、非可逆的なウイルスの不活性化を導くことがわかった。殺ウイルスアッセイは、hrR3を用いて行った。最初の実験(図8A)では、EBは、IC50=44μM(●)で、濃度に依存する形でウイルス粒子の感染を阻害したのに対して、EBXは、阻害効果を有さなかった(○)。阻害を達成するためにわずかに高い濃度のEBを必要とする第二の実験では(図10B、(●);IC50=69μM)、処理ウイルス粒子が非可逆的に不活性化されることもわかった。すなわち、EBで処理し、その後、希釈したウイルス粒子の一定量は、一切の可逆的に結合したEBを捕捉してしまうことが可能な血清含有培地に一晩透析している間、再び活性化することができなかった(図1、(●);A対Bを参照)。その代わり、透析後に回収したウイルス粒子(あらゆるEB濃度で31%)は、非透析コントロールと全く同じように不活性のままであった(図8、(△)対(●))。
【0066】
ウイルスの不活性化に対するウイルス凝集の可能な寄与率を評価するために、EBで処理し、その後、希釈したウイルス粒子のさらなる一定量を、残存する感染力について検定する前に、0.22μmの膜を通して濾過した。EBが不在または低濃度(≦3μM)の状態では、80から85%のウイルス粒子が膜上に捕捉された。しかし、膜への付着を向上させ、および/またはウイルスを凝集させるより高濃度のEBに一度だけでもさらされると、残存ウイルス粒子は保持された(図8B、(▲))。ウイルス粒子の付着特性におけるこうした変化は、ウイルスの不活性化に求められるEB濃度よりかなり下で誘発された(図8B、(▲)対(●)、(△))。
【0067】
グリッドに前吸着させ(凝集を回避するため)、5mMのペプチドにさらしたPTA染色ウイルス粒子の電子顕微鏡検査法によって、最も厳密なEB処理の効果を検査した。EB処理ウイルス粒子は、EB処理粒子中のウイルスエンVeroプの輪郭がさほど多形性でなかったことを除き、本質的には擬似処理ウイルス粒子と同じように見え、このことは、EBが、ウイルス粒子を安定させたことを示唆する。5mMで、EBXは、EBと同じ効果を有した。
【0068】
実施例9−抗ウイルスペプチドのインビボ活性
本発明の抗ウイルスペプチドは、局所的に塗付した時、インビボ活性を示す。HSV−1株KOSを、室温で、PBS中、25μMの濃度のEBペプチドまたはEBXペプチド、いずれかとともに、1時間インキュベートした。次に、本発明者が以前に記載したように(Brandtら、J.Virol.Meth.36,209(1992))、各々10匹のマウスのグループの角膜を犠牲にして、5.0x10のプラーク形成ユニットを用いて感染させた。
【0069】
簡単には、マウスをハロセンで麻酔し、横に3回、縦に3回、角膜にひっかき傷をつけ、ウイルスを含有する液滴5μLを角膜の上に乗せた。その後、マウスをおりに戻し、回復させた。KOSで感染させたが、ペプチドにはさらしていないコントロールグループも含めた。マウスは、感染後にはペプチドで処理しなかった。
【0070】
感染後、多様な時間に、本発明者が以前に記載したように(同じ参考文献)、角膜疾患の重度を測定した。簡単に言えば、血管新生は、次のように点数付けした: 0は、血管新生なし;1+は、血管新生を伴う角膜が25%未満;2+は、血管新生を伴う角膜が25から50%;および3+は、血管新生を伴う角膜が50%より多い。角膜炎は、次のように点数付けした:0は、角膜混濁なし;1+は、混濁、一部の虹彩細部が可視;2+は、混濁、虹彩細部が不明瞭;3+は、角膜が全体的に不透明;4+は、角膜が穿孔され、混濁している。データは、3つのグループ各々についての各日の平均疾患スコアとして報告する。結果を図9に示す。
【0071】
以下の参考文献をさらに参照して取り入れる:
【0072】
【表4】
Figure 0004896333
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【図面の簡単な説明】
【図1A】 本発明の抗ウイルスペプチドのウイルスプラーク形成への、血清の存在下での用量依存的阻害を示す代表図である。
【図1B】 本発明の抗ウイルスペプチドによるウイルスプラーク形成への、血清の不存在下での用量依存的阻害を示す代表図である。
【図1C】 本発明の抗ウイルスペプチドによるウイルスの細胞障害効果に対する影響を調べた実験結果を示す図である。
【図1D】 本発明の抗ウイルスペプチドによるウイルスプラーク形成への用量依存的阻害を示す代表図である。
【図1E】 本発明の抗ウイルスペプチドによるウイルス阻害を示す代表図である。
【図2】 本発明のビオチン化抗ウイルスペプチド(配列番号2)によるウイルス阻害を示す代表図である。
【図3】 アシクロビルとの比較として、本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)によるHSV−1形成の用量依存性阻害を示す代表図である。
【図4A】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)が初期のウイルス感染およびウイルスの伝播を阻害することを説明する図である。
【図4B】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)が初期のウイルス感染およびウイルスの伝播を阻害することを説明する図である。
【図5】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)の抗ウイルス活性がウイルス投入量に依存することを説明する図である。
【図6A】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)による細胞へのウイルス侵入の阻害を説明する図である。
【図6B】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)による細胞へのウイルス侵入の阻害を説明する図である。
【図7A】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)の侵入期および用量応答を説明する図である。
【図7B】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)の侵入期および用量応答を説明する図である。
【図8A】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)の殺ウイルス活性を説明する図である。
【図8B】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)の殺ウイルス活性を説明する図である。
【図9A】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)のインビボでの活性を説明する図である。
【図9B】 本発明の抗ウイルスペプチド(配列番号1)のインビボでの活性を説明する図である。

Claims (5)

  1. 配列番号:1〜4からなる群から選択されるペプチ
  2. 請求項1に記載のペプチドおよび製薬上許容され得る担体を含む組成物であって、哺乳動物宿主におけるウイルス感染の治療または予防に有効である、前記組成物。
  3. 前記組成物が、ヒト免疫不全ウイルス、単純性疱疹ウイルスおよびサイトメガロウイルスから成る群から選択される一つ以上のウイルスからの感染の治療または予防において有効である、請求項に記載の医薬組成物。
  4. ウイルス感染を治療または予防するための、請求項1に記載のペプチド。
  5. ウイルス感染を治療および予防するための医薬の製造におけるペプチドの使用であって、前記ペプチドは配列番号:1〜4からなる群から選択され、さらに前記ペプチドがウイルス生体に対抗するのに十分な有効量で存在する、前記使用。
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