JP4535310B2 - リアルタイム核酸増幅多数試験分析法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サンプルにおける分析対象の有無を分析する方法に関わる。特に、本発明は、サンプルを基質に接触させて、分析対象または基質の量を変化させ、かつ、分析対象または基質の量が変化している際に得られるデータを分析することによって、同分析対象の有無を自動的に検出し報告する方法に関わる。
【0002】
【発明の背景】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNAの増幅は分子生物学にとって基本的な技術である。PCRによる核酸分析には、サンプル調製、増幅および産物分析が必要である。これらの工程は通常連続的に実行されるけれども、増幅および分析は同時に行うことも可能である。増幅前にDNA染料または蛍光プローブをPCR混合物に加え、これらを用いて増幅中にPCR産物を分析することが可能である。サンプル分析が、同じ装置の同じ試験管内で増幅と同時に行われるわけである。この併用法は、サンプル取り扱いの手間を省き、時間を節約し、後続反応に対し不純物混入の危険を著明に低下させる。なぜなら、この方法では、その後の分析のために密封容器からサンプルを取り出す必要がないからである。増幅と産物分析とを併存させるというこの概念は「リアルタイム」PCRという名で知られるに至っている。例えば、米国特許第6,174,670号を参照されたい。なお、本文献を本出願に援用する。
【0003】
PCRの各サイクルにおいて蛍光をモニターする方法では最初臭化エチジウムを用いていた。Higuchi R., G. Dollinger, P. S. Walsh and R. Griffith, Simultaneous amplification and detection of specific DNA sequences(「特定DNA配列の、同時的増幅・検出法」) Bio/Technology, 10:413−417, 1992; Higuchi, R., C. Fockler, G. Dollinger and R. Watson, Kinetic PCR analysis: real time monitoring of DNAamplification reactions(「動的PCR分析法――DNA増幅反応のリアルタイムモニター」)Bio/Technology, 11:1026−1030, 1993。このシステムでは、蛍光がサイクル毎に1回、産物濃度の相対測定値として測定される。臭化エチジウムは二重鎖DNAを検出する。もし鋳型DNAが存在するならば、蛍光強度は温度サイクルと共に上昇する。さらに、蛍光増加が最初に検出されるサイクル数は、初回鋳型濃度の対数に反比例して増加する。他にも核酸濃度や配列に関してさらに別のデータをもたらすことの可能な蛍光システムが開発されている。
【0004】
PCRは分子生物学において貴重な道具ではあるが、リアルタイムPCR法の実地導入は概念的な展開よりも遅れてしまった。一般に、現在入手可能な装置は実際にPCR中にデータを分析するものではなく、単に後の分析のためにデータを得るだけである。PCR完了後に、得られたデータを分析するには多数の手動工程が必要であり、かつ、分析結果をもたらすには通常ヒトの判断が要求される。求められているのは、データの入手と分析を自動化し、それによって、分析結果を報告するのにユーザーの介入が必要でなくなる、そのようなシステムである。このようなシステムの場合、ポリメラーゼ連鎖反応増幅において温度サイクルが完了すると、システムソフトウェアが自動的に起動されて、結果が、例えば、ある病原体の有無が、直ちに画面に表示される。検出、定量および遺伝子型分析用のアルゴリズムが必要とされる。また、この分析アルゴリズムの起動は、温度サイクルの終了前に導入することもできる。データ処理は増幅時に行ってもよく、増幅プロトコルおよびデータ品質を最適化するために、温度サイクルを修正したり、増幅工程の後半段階における付加的データの入手したりするのに、この同時分析結果を用いることも可能である。
【0005】
【解決しようとする課題】
PCRデータ分析を自動化するに当たって大きな問題となるのは、ベースラインの蛍光の特定である。バックグラウンドの蛍光値は反応毎に異なる。さらに、サンプル中の核酸増幅とは無関係に蛍光が増大または減少するベースラインの振れは一般的な現象としてある。過去にも増幅データ分析を自動化しようという試みがあったが、その試みでは、所定の初期サイクル数、一回以上測定した値をもって、ベースラインの蛍光と設定していた。この方法は、バックグラウンドの蛍光の変動の分析を可能にはするが、ベースラインの振れを補償するものではない。ベースラインの振れに対する補償がなければ、自動化増幅データ分析法では、擬似ポジティブ、および、擬似ネガティブ両方のデータ結果が簡単に得られることになる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
こうして、本発明の一態様では、サンプル中におけるある核酸の有無を決定する方法が提供される。この方法は下記の諸工程を含む。すなわち、その核酸の存在を示し、かつ、同核酸の量に関連したシグナルを与えることが可能な蛍光体を与える工程、同蛍光体の存在下に複数の増幅サイクルを通じて同核酸を増幅する工程、各サイクルに存在する前記核酸量に関連する、サイクル毎の蛍光値を得るために、その複数の増幅サイクルの各サイクルにおいて前記蛍光体の蛍光強度を測定する工程、複数の試験の各々について、各蛍光値を用いて生成されるスコアを得る工程、および、そのスコアを用いて核酸がサンプル中に存在するか否かを確定する工程、である。例示の実施態様では、この試験は信頼間隔試験(Confidence Interval Test)およびシグナル対ノイズ比試験(Signal-to Noise Ratio Test)を含む。
【0007】
本発明の別の態様において、サンプル中の分析対象の有無を決定する方法であって、下記の諸工程を含む方法が提供される。すなわち、分析対象または基質の量を変化させるために、その分析対象を、所定時間、基質と接触させる工程、分析対象または基質の量または質と関連するシグナルを生成する工程、上記の所定期間、シグナル強度値が複数の時点において得られるようにシグナル強度を測定する工程、複数の試験のそれぞれから個別のスコアを獲得する、信頼間隔試験およびシグナル対ノイズ比試験を含む工程、及び、そのスコアを用いて、分析対象がサンプル中に存在するかどうかを確定する工程、の諸工程である。分析対象を例示する一例としては、核酸、細菌、抗原および酵素が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。シグナルを例示する一例としては蛍光、光吸収、光学的密度、比色インジケーター、酵素インジケーター、化学的発光および放射能インジケーターが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0008】
これ以外の本発明の特徴は、下記の、好ましい実施態様に関する詳細な説明を考察するならば当業者には明白であろう。ただし、この説明は、現在認識される本発明を実行するのに最良な方式を表す好ましい実施態様の説明であるにすぎない。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を記述し、特許請求するに際して、下記の定義に従って後述の用語を使用することにする。
本申請書で使用する場合、「核酸」および「DNA」および類似の用語は、核酸類似体、すなわち、フォスフォジエステル結合骨格以外のものを有する類縁体をも含む。例えば、その分野で既知であり、骨格中にフォスフォジエステル結合ではなく、ペプチド結合を有する、所謂「ペプチド核酸」は、本発明の技術的範囲内にあると考えられる。
【0010】
本申請書で使用する場合、「蛍光共鳴エネルギー転移ペア」、すなわち、“FRETペア”とは、供与蛍光搬送体と受容蛍光搬送体とを含む一対の蛍光搬送体を指し、供与蛍光搬送体は、受容蛍光搬送体に共鳴エネルギーを転移することが可能である。言い換えれば、供与蛍光搬送体の発光スペクトラムは、受容蛍光搬送体の吸収スペクトラムに重なる。好ましい蛍光共鳴エネルギー転移ペアにおいては、供与蛍光搬送体の吸収スペクトラムは、受容蛍光搬送体の吸収スペクトラムに実質的に重ならない。
【0011】
本申請書で使用する場合、「FRETオリゴヌクレオチドペア」とは、それぞれ蛍光共鳴エネルギー転移ペアの一方で標識されている一対のオリゴヌクレオチドペアを指し、標的の相補的核酸配列に対するハイブリダイゼーションによって、蛍光体同士が、蛍光共鳴エネルギー転移関係に入る。
【0012】
本発明の一つの態様は、サンプルについてある核酸の有無を分析するための方法であって、サンプルを、その核酸の存在を検出することが可能な蛍光プローブの存在下で、好ましくはPCRで増幅することを特徴とする方法に向けられる。一つの実施態様では、ベースラインの領域が、様々な増幅サイクルにおける蛍光を比較することによって決定され、様々な増幅サイクルのそれぞれにおける蛍光が、そのベースラインの領域と比較され、その蛍光測定値が、ベースラインの領域の範囲外にあるかどうかが決定される。さらに別の実施態様では、増幅時に得られた蛍光データについて様々な試験が実施され、各試験はそれぞれ一つの数値スコアを生成する。次に、これらのスコアを用いて複合値を決定し、この値に基づいて判定が行われる。
【0013】
近年、PCRをモニターするために多種多様なプローブの入手が可能である。配列特異的ではないけれども、二重鎖DNA(dsDNA)特異的染料を用いると、どのような増幅においても、プローブ合成をすることなく、増幅のモニターが可能である。そのような染料としては臭化エチジウムやSYBR(商標)グリーンIが挙げられる。dsDNA染料の場合、融解曲線を分析することによって、または、非特異的産物が解離してしまうような高温で蛍光測定値を得ることによって、産物特異性は、増加しうる。Ririe, K.M., Rasumussen, R.P., and C.T. Wittwer, Product differentiation by analysis of DNAmelting curves during the polymerase chain reaction(「ポリメラーゼ連鎖反応時のDNA解離曲線分析による産物区分」), Anal. Biochem., 245:154−160, 1997; Morrison, T.B., J & J Weis and C.T., Wittwer, Quantification of low copy transcripts by continuous SYBR Green I monitoring during amplification(「増幅時におけるSYBRグリーンI連続モニターによる低コピー転写産物の定量」), BioTechniques 24:954−962, 1998。
【0014】
オリゴヌクレオチドプローブも、蛍光分子と共有結合することで標識されることができる。ヘアピン・プライマー(Sunrise(商標)プライマー)、ヘアピン・プローブ(Molecular Beacons(商標))、および、エキソヌクレアーゼ・プローブ(TaqMan(商標))等は、PCRの反応中にモニターされ得る二重標識オリゴヌクレオチドである。これらのプローブは、同じオリゴヌクレオチド上の消光分子による蛍光搬送体の蛍光消光(クェンチング)に依存する。蛍光は、ハイブリダイゼーションまたはエキソクレアーゼ加水分解が起こると増大する。
【0015】
例示のプローブは、それぞれ蛍光プローブで標識された二つのオリゴヌクレオチドを使用するように設計される。これらのオリゴヌクレオチドが、標的核酸にハイブリダイズすると、その二つの蛍光プローブは互いに接近して、共鳴エネルギー転移の発生を可能とする。Wittwar C.T., M.G. Hermann, A.A. Moss and R.P. Rasmussen, Continuous fluorescence monitoring of rapid cycle DNA amplification(「急速サイクルDNA増幅の蛍光による連続モニター」), BioTechniques 22:130−138, 1997。これらのハイブリダイゼーション・プローブでは、プローブ当たりただ1個の蛍光標識しか必要でないから、二重標識プローブに比べて設計や合成が容易である。蛍光共鳴エネルギー転移ペアとして使用が可能な蛍光搬送体ペアは当業者にはよく知られており、フルオレセン/ローダミン、フィコエリスリン/Cy7、フレオレセン/Cy5、フルオレセン/Cy5.5、フレオレセン/LCレッド640、および、フルオレセン/LCレッド705が挙げられるが、これらに限定されるものではない。供与体−クェンチャーFRETオリゴヌクレオチド・ペアを使用しても良く、その場合、二個の蛍光プローブが近接した時に、供与体蛍光搬送体の蛍光がクェンチャー蛍光搬送体によって消光する。供与体−クェンチャーFRETオリゴヌクレオチド・ペアを用いる場合には、蛍光値、つまり全ての最大値と最小値は、後述するように逆転することがわかる。
【0016】
もう一つのタイプのハイブリダイゼーション・プローブ、すなわち、「単一標識オリゴヌクレオチド・プローブ」は、各プローブが、単一のオリゴヌクレオチドと単一の蛍光染料とから構築されるオリゴヌクレオチド・プローブを用いる。このオリゴヌクレオチド・プローブは、プローブが標的配列にハイブリダイズすると、それが蛍光染料の蛍光発色に影響を及ぼすように構築される。単一標識オリゴヌクレトチド・プローブには各種プローブの設計を用いることができる。ある設計では、プローブが標的配列にハイブリダイズすることによって、蛍光染料がグアニン残基に近接して位置することとなり、それによって、蛍光発色が消光するという結果になる。また別の実施態様では、蛍光体は、オリゴヌクレオチド・プローブ構造の中の一つの塩基を置換し、ハイブリダイゼーション時、この「擬似ヌクレオチド」がG残基と相補して位置し、その結果蛍光消光を招く。さらに別の実施態様では、ハイブリダイゼーションによって、蛍光発光の増加がもたらされるようにプローブが構築される。そのような一つの実施態様では、蛍光体はG残基に付着し、ハイブリダイゼーション時に蛍光の増加をもたらす。単一標識オリゴヌクレオチドに関するさらに詳細な情報は、2001年8月10日登録の米国特許申請第09/927,842号において見ることができる。この文書を本申請書に援用する。供与体−クェンチャーFRETオリゴヌクレオチド・ペアの場合と同様、蛍光消光がハイブリダイゼーションを示す場合、蛍光値、つまり全ての最大値と最小値は、後述するように逆転する。
【0017】
SYBR(商標)グリーンI、エキソヌクレアーゼ・プローブ、および、ハイブリダイゼーション・プローブ設計を図1a−lに示す。各設計について、増幅前(図1a−c)と増幅後(図1d−f)の模式図が示され、同時に、ポジティブ・コントロールとネガティブ・コントロールのサイクル対蛍光増幅プロット(図1g−i)、および、連続モニターによる温度対蛍光プロット(図1j−l)が示されている。SYBRグリーンI蛍光は、より多くのdsDNAが形成されるほど増加する(図1a、d、g、j)。この染料は配列特異的ではないから、ネガティブ・コントロールにおいても、後期サイクルでプライマーダイマーが形成されるにつれて蛍光が増加する。図1b、e、h、kでは、二重標識フルオレセン/ローダミン・プローブが、ポリメラーゼ伸張時、5‘−エキソヌクレアーゼ活性によって切断され、それによって蛍光搬送体が遊離し、蛍光発光が増加する。生成されるシグナルはPCR中に蓄積されるので、蛍光は、産物量がプラトー(平坦値)に達した後にもなお増加し続ける。図1c、f、i、lは、FRETオリゴヌクレオチド・ペア使用例を示す。この例では、一方のプローブの3’末端がフルオレセンで標識されており、もう一方のプローブの5‘末端がCy5で標識されているような二つのプローブが互いに隣接してハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション・プローブの蛍光は、サイクル数多くなると減少する。これは、プローブ/産物間の競合による。
【0018】
PCRの標準装置では約2から3時間で30サイクルを完了する。好ましいシステムは、毛細管と熱風温度調節(hot air temperature control)を備えた急速熱サイクル装置である。例えば、米国特許第5,455,175号を参照されたい。この文書を本申請書に援用する。空気は熱容量が低く、また、毛細管は壁が薄くかつ表面積比が高いので、小容量のサンプルを急速に熱変化させ、反応させることが可能である。30サイクルに対する総増幅時間は15分に短縮され、しかも好成績をもたらす。
【0019】
強制的空気加熱の下に毛細管を使用すると、他の設計では不可能なスピードでサンプルの温度を正確にコントロールすることができる。例えば、毛細管におけるサンプル温度対時間プロットは、変性とアニーリング温度において鋭いスパイクを示すが、一方、円錐形のプラスック管を用いた場合には、全てのサンプルが平衡に達するまでに数秒を要する。Witter, C.T., G.B., Reed and K.M., Ririe, Rapid cycle DNA amplification(「急速サイクルDNA増幅」)、in K.Mullis, F. Ferre and R. Gibbs (Eds.), The polymerase chain reaction(「ポリメラーゼ連鎖反応」)、Springer−Verlag, Deerfield, FL. pp. 174−181, 1994; Wittwer, C.T., B.C., Marshall, G.B., Reed, andJ.L., Cherry, Rapid cycle allele−specific amplification: studies with the cystic fibrosis delta F508 locus(「対立遺伝子特異的急速サイクル増幅法――嚢胞性線維症デルタF508座位に関する研究」), Clin. Chem., 39:804−809, 1993。アニーリングおよび変性時間を最小にした急速温度サイクルによって、PCRの定量性は向上し、対立遺伝子特異的増幅の識別性は増加する。Weis, J.H., S.S., Tan, B.K., Martin and C.T., Wittwer, Detection of rare mRNA species via quantitative RT−PCR(「定量的RT−PCRによる稀なmRNA分子種の検出」)Trends in Genetics, 8:263−4, 1992; Tan, S.T., and J.H., Weis, Development of a sensitive reverse transcriptase PCR assay, RT−RPCR, utilizing rapid cycle times(「急速なサイクル時間を用いた、高感度逆転写酵素PCR定量法(RT−RPCR)の開発」)、PCR Meth. and Appl., 2:137−143, 1992。サイクル配列に急速サイクルを用いることによって配列アーチファクトが減少し、2ヌクレオチド反復増幅における「影付きバンド」が極小に抑えられる。Swerdlow H., K. Dew−Jagerand R.F., Gestland, Rapid cycle sequencing in an air thermal cycler(「空気加熱サイクラーによる急速サイクル配列特定法」)Bio Techniques 15:512−519, 1993; Odelberg, S.J., and R. White, A method for accurate amplification of polymorphic CA−repeat sequences(「多型性CA反復配列の厳密増幅法」)PCR Meth. Appl. 3:7−12, 1993。長時間のPCRでは、サンプルの、高い変性温度に対する暴露をできるだけ少なくすることによって収率が改善される。Gustafson, C.E., R.A., Alm andT.J., Trust, Effect of heat denaturation of target DNA on the PCR amplification(「標的DNA加熱変性のPCR増幅に対する作用」)Gene 23:241−244, 1993。Idaho Technologyの開発したRapidCycler(商標)は、急速熱サイクル装置の一例である。LightCycler(商標)(Roche Diagnostics、インディアナポリス、インディアナ州)は、蛍光測定器付きの急速変温サイクル装置である。この蛍光測定器には、励起用として発光ダイオードが、検出用としてフォトダイオードが用いられている。
【0020】
本発明の一つの態様は、リアルタイムPCRによる核酸の自動検出法を目的とする。このアルゴリズムは、どのような増幅システムにも適用可能であるが、一つの実施態様として、このアルゴリズムは、LightCycler(商標)プラットフォームに組み込まれる。その分析ルーチンは、「非手動的」増幅、分析および最終結果表示のための、合計15分未満に実現される急速熱サイクルの終了時に起動する。この分析ルーチンは、検出・定量には1秒以内、最も時間のかかる遺伝子型分析でも10秒以内終了する。LabView (National Instruments, オースチン、テキサス州)は、グラフィック用プログラム言語であるが、LightCycler装置コントロールにはこれが好ましい。LightCyclerは、PC準拠装置である。LightCyclerは、野外での使用のために可搬型として縮小することが可能である。
【0021】
リアルタイムPCRデータのもっとも基本的な分析内容は、おそらく標的核酸が存在するか否かの判断であろう。もしもその核酸が存在するのであれば、さらに定量化および遺伝子型分析が行われることもできる。多くの場合、必要なのはイエスかノーかの判断だけである。例えば、大腸菌0157:H7がハンバーガーのサンプル中に存在するのか否か、炭疽菌が疑わしい白い粉の中に存在するのか否か、あるいは、C型肝炎ウィルスが血液の中に存在するのか否かを確定したいと思うかもしれない。リアルタイムPCRは、終末点PCR定量法に比べて、あるかないかの検出を改善することができる。なぜなら、各サイクルにおいて蛍光強度が測定されるからである。
【0022】
リアルタイムPCRのポジティブ反応とネガティブ反応(図1hと1iを参照)で得られたサイクル対蛍光データを査閲するならば、その識別が単純であることは明らかである。ポジティブ・サンプルはサイクル数と共に増加するのに対して、ネガティブ・サンプルはベースラインに留まったままである。熟練した観察者であれば、ポジティブ・サンプルが、ベースラインに始まって、指数関数部分に続き、プラトーに終わる、S字型カーブを辿ることを予想する。この予想曲線は、人口増加の論理モデルと近似する。すなわち、このモデルでは、増加率は、人口サイズyと、Lを実現可能な最大人口とする時の、差L−yの両方に比例する。yが小さい場合、増加は指数関数的であるが、yがLに近づくに従って、増加率はゼロに近づく。論理的増加の例を図2に示す。
【0023】
直感的には単純であるが、ポジティブ・サンプルとネガティブ・サンプルとを正確に識別することは実際には容易ではない。もっとも簡単なやり方は、ポジティブ・サンプルとネガティブ・サンプルの識別子として、水平な蛍光閾値を設けることである。この方法は、ベースラインが安定しており(サンプル間で、また、同一サンプル内で)、かつ、「ポジティブ」と相関する既知の蛍光強度がある場合には極めてうまくいく。この方法は、明白なサンプル(例えば、図1hおよび1i参照)ではうまくいくが、より広範な条件下でもうまくいくような、さらに強力なアルゴリズムが望まれる。例えば、ベースラインは振れる可能性があるし、蛍光強度は、サンプルやプローブの技術が異なると、大きく変動する可能性があるからである。このように、本発明は下記を実現する方法を目的とする。すなわち、(1)ベースラインを自動的に特定し、(2)そのベースライン変動を用いて信頼域を確定し、かつ、(3)その信頼域と蛍光強度データとの相関にもとづいて各サンプルをポジティブまたはネガティブと判定することである。
【0024】
図3a−fは、様々なタイプの増幅曲線を示すが、これらは全てLightCycler(商標)反応で観察されたものである。図3aおよびbは、鋳型の無いネガティブ・サンプルから得られた曲線を示す。図3aとbの蛍光スケールは(図3c−fに比べて)拡大してある。これは、ベースラインドリフトを明白に示すためであり、また、蛍光強度とは独立であり得るアルゴリズムを提供するためである。サイクル実行中には必ず若干のベースラインの振れがある。この振れはサイクル実行の開始時に最大であって、後には無くなるのが普通だが、実際には下向き(図3a)にも、上向き(図3b)にもなりうる。ポジティブ反応における反応開始時の鋳型のコピー数が低くても(図3c)高くても(図3d)、ネガティブ反応におけるベースラインの振れを、ポジティブ反応とは識別しなければならない。本法は、エキソヌクレアーゼ(図3e)およびハイブリダイゼーション(図3f)プローブを含めた各種プローブ設計に対して有効でなければならない。
【0025】
バックグラウンドを自動的に同定するのは驚くほど困難である。従来の方法では、ベースラインは、増幅開始時のある一定範囲のサイクルにおける蛍光測定値の関数として決定される。しかしながら、ある一定範囲のサイクルを選択するだけでは十分ではない。なぜなら、下向きの振れ(図3a)と高コピー(図3d)増幅のいずれもが誤って判定される可能性があるからである。
【0026】
信頼帯域分析
本発明の一つの実施態様では、バックグラウンドは、広範囲の増幅サイクルにおける蛍光測定値を分析することによって特定される。好ましくは、バックグラウンドは、もっとも低い勾配を持つスライド・ウィンドー(図4)を選択することによって特定される。すなわち、局所的な隣接部(例えば、7点スライド・ウィンドー)の直線回帰によって各サイクルにおける勾配を計算する。最小の絶対値(ゼロとの差が最小)を有する勾配を持つウィンドーが、バックグラウンド領域を規定する。一旦バックグラウンド領域が特定されたならば、その回帰直線(平均二乗誤差の平方根)の周囲のバックグラウンドの点の変動に定数を乗じて信頼帯域を確定する。この信頼帯域はゼロに近い勾配を持つが、全てのサイクルに対して外挿される。もしも最終サイクルの蛍光が信頼帯域の範囲内にあれば、それはネガティブであり、もしも帯域の範囲外にあれば、それはポジティブである。図5はこの二つの場合を示す。
【0027】
このアルゴリズムは多くの場合に有効である。しかしながら、高コピー蛍光曲線型の場合(図3d)、最小勾配は早期サイクルに認められる場合もあり(正しくポジティブと判定される)、あるいは、後期サイクルに認められる場合もある(誤ってネガティブと判定される)。この例外的場合は、曲線型を分析することによって対処が可能である。順調な増幅では、期待される増幅曲線型はサイクル数によって下記のような順番で起こる。
1. 最小蛍光強度
2. 最大二次導関数(F‘’)
3. 最大一次導関数(F‘)
4. 最小二次導関数(F‘’)
5. 最大蛍光強度
【0028】
これは、PCR中に予想される特徴的なS字型を与える(図6A)。最大勾配(一次導関数)は、バックグラウンド特定のために既に実行したスライド・ウィンドーから得られる。二次導関数は、好ましくは一次導関数の3点スライド・ウィンドー回帰直線法によって計算される。曲線型が素直なものであるならば(すなわち、図6のグラフを見て、最低サイクル数から最高サイクル数まで読み取った場合、特徴が上記の順番に起こるものであれば)、バックグラウンドは、二次導関数最大値未満のサイクル数に中心を合わせたスライド・ウィンドーからのみ選択される。これによって、図3dの場合に起こり得る分析問題を解決することができる。その他の好ましい実施態様では、一次導関数最大値未満のサイクル数、または、二次導関数最小値未満のサイクル数を使用することが可能である。二次導関数最大値と二次導関数最小値の間のサイクル数は、どのようなものでも本法を用いた使用に好適なカットオフ・サイクルであり、本発明の技術的範囲内にある。
【0029】
さらに別の方法として、最大蛍光強度を示すサイクル(これは必ずしも最終サイクルではない)を、信頼帯域と比較するやり方がある。これは、図3fに見られるように、長期のサイクル反応によって蛍光が減少する可能性のあるハイブリダイゼーション・プローブには特に好適である。曲線型が素直な場合には、最大蛍光強度を持つサイクルのみを使用すべきである。なぜなら、それによって、図3aに示すような下向きの振れについて擬似ポジティブの判定をする誤りを回避することができるからである。
【0030】
自動検出のために最適化すべき変数としては、1)一次導関数推定のためのウィンドー・サイズ、2)二次導関数推定のためのウィンドー・サイズ、および、3)信頼帯域係数、がある。一次導関数ウィンドー・サイズの適切な値は7であるが、3、5、9および11も同様に有効である。二次導関数には、好ましいウィンドー・サイズは3であるが、5および7も有用な値であることが判明している。好ましい信頼帯域係数は20である。一次導関数ウィンドー・サイズが増加するにつれて、変動推定がより正確になるが、辺縁サイクル(開始と終止)が失われる。
【0031】
このアルゴリズムは、図7−11に示される蛍光強度対サイクルの試験結果プロットを参照することによってもっともよく理解されよう。入力データは、 閉じた白丸にて示されるように、各増幅サイクルについて1個の蛍光値から成る。この等距離配列をYiとする。ここにiはサイクル数であり、Nはサイクルの合計数である。検出基準は下記の通りである。
A=一次導関数を確定するのに使用される蛍光値の数。これには奇数を使うと好都合である。そうすると一次導関数は整数のサイクル数に対応するからである。前述したように、適当な値としては3,5,7,9および11が挙げられる。好ましくは、7が一次導関数ウィンドー・サイズとして使用される。
B=二次導関数を確定するのに使用される一次導関数値の数。この場合も奇数を使うのが好都合である。そうすると二次導関数が整数のサイクル数に対応するからである。適当な値としては3、5および7が挙げられるが、好適な値は3である。
C=信頼帯域係数。この係数は、それに変動測定値を乗ずることによって信頼帯域を確定するものである。好ましくは、平均二乗誤差の平方根である。
【0032】
第一工程は、一次および二次導関数を計算することである。これを実行するには多くのやり方があるが、好ましい方法は、一次導関数を、Aの諸点を通る回帰直線の勾配として決定し、その値を、サイクル数中央値に割り当てることである。どちらかの端におけるいくつかのサイクルには一次導関数は割り当てられないが、一次導関数は、(A+1)/2からN−(A−1)/2までのサイクルには割り当てられる。同様に、二次導関数は一次導関数の勾配として計算され、サイクル(A+1)/2+(B−1)/2からサイクル[N−(A−1)/2]−(B−1)/2まで割り当てられる。一次導関数と二次導関数の計算によって配列Y‘とY’‘が得られるが、端の値がいくつか失われる。図7では、一次導関数と二次導関数は、それぞれ、白抜き丸と黒塗り丸として表示される。
【0033】
次の工程は、蛍光曲線が素直な型をしているかどうかを確定することである。前述のように、素直な型とは、最小蛍光値を持つサイクル、最大二次導関数を持つサイクル、最大一次導関数を持つサイクル、最小二次導関数を持つサイクル、および、最大蛍光値を持つサイクルが、低いサイクルから高いサイクルに向かってこの順序に発生する時に見られるものである。
【0034】
次に、ベースラインを決定する。蛍光曲線が期待した型を持っていない場合には、一次導関数がもっともゼロに近いサイクルを用いる。蛍光曲線が素直な型を取っている場合には、最大二次導関数を持つサイクル前の全てのサイクルの内から選択された、その一次導関数がもっともゼロに近いサイクルを用いる(この場合も、最大二次導関数と最小二次導関数の間のいずれのサイクルであってもカットオフ・サイクルとして使用が可能である)。ベースラインは、この選ばれたサイクルの蛍光値を通り、その一次導関数の勾配を持つ線として引かれる。図7では、ベースラインのための一次導関数計算に用いられたA点が、一本の直線で結ばれた大きな黒点として表示されている。
【0035】
次の工程は、試験点サイクル、すなわち、結果がポジティブかネガティブかを決定するために、ベースラインと比較するのに使用するサイクルを確定することである。曲線が素直でない場合には、試験点は最終サイクルである。蛍光曲線が素直な場合には、試験点は、ベースラインからもっとも遠い蛍光値を与えるサイクルである。ネガティブ・サンプルの試験点蛍光値は、ベースラインと試験点サイクルとの交点と予測することが可能である。
【0036】
次に、予測されたネガティブ試験点について、信頼間隔を確定することが可能である。好ましくは、ベースラインを確定するのに用いられたA点ベースラインについて平均二乗誤差の平方根を求めることによって実行する。これにCを乗ずる。この積を予測されたネガティブ試験点に加えれば、信頼間隔における蛍光の上限が得られ、その積を予測されたネガティブ試験点から引けば、信頼間隔における蛍光の下限が得られる。これらの限界を、図7では二本の水平な実線として示す。
【0037】
最終工程は、サンプルがポジティブであるかネガティブであるかを宣言することである。試験点蛍光値が信頼間隔の範囲外であれば、そのサンプルはポジティブである。もしも試験点蛍光値が信頼間隔の範囲内であれば、そのサンプルはネガティブである。図7と8はポジティブ・サンプルであり、図9−11はネガティブ・サンプルである。
【0038】
多数試験分析
分析対象の有無確定を実行する自動分析法に対し、さらなるアプローチが可能である。それは、サンプルがポジティブかネガティブか不定かを、さらに高い精度と広い適用範囲を持って定義する集合スコアを得るために、1種以上の試験を行うアルゴリズムを用いることである。前記信頼帯域分析と同様の試験を行うが、ただし、その試験は、ポジティブかネガティブかの表示ではなく、一つの値を与えるという点で異なる。
【0039】
前記信頼間隔試験に加えて、さらに少なくとも1種の試験を、好ましくは4種の試験を、もっとも好ましくは6種の試験を行うならば、高精度が実現される。これらの試験はそれぞれスコアT、T、...Tを与える。各サンプルの複合総計スコアは次式から計算される。
【数1】
Figure 0004535310
ここに数P、P、...Pは、各試験に対してあらかじめ決定された補正係数であり、Threshold(閾値)は、ポジティブ判定とネガティブ判定との間を区別するのに都合のよい区別値を与える、あらかじめ決定されたスコア閾値である。確実に「ポジティブ」の判定と確実に「ネガティブ」の判定、また、「中間」や「不定」の判定のために、範囲が選択される。これらの範囲を特定するのに直接Scoreが用いられる場合、ネガティブ・サンプルは0と1の間の値を持つことになろうし、ポジティブ・サンプルは1よりも大きな数値を持つことになり、この二つの領域の内のどれほどを「中間」領域のために割く必要があるかの決定が求められる。上記範囲を選択するのにさらに便利なやり方は、Scoreの対数を用いることであって、この場合判定値はlog(Score)と等しい。
判定値=ΣPlogT − log(閾値)
【0040】
Scoreの対数を取ることにすると、ネガティブ・サンプルはマイナス値を取ることとなり、ポジティブ・サンプルはプラス値を取ることになる。さらに対数は、閾値の意味をより分かりやすくする。なぜなら、対数を取ることは単に数値をよりマイナス側に、または、よりプラス側に変位させるだけに過ぎないからである。例えば、中間区域を−1と1の間に選ぶことも可能であるから、明白なプラス値やマイナス値は、この区域の範囲外に出ることになる。繰り返すが、Scoreの対数は本発明にとって必須のことではなく、単に、工程を記述するのに好都合な一つのやり方としてここに提示されるのに過ぎない。
【0041】
以下に述べるのは、Scoreと判定値の併合を示すために用いられる個々の試験である。蛍光シグナルから個々のスコアTを生成する個別の試験に適用される数学的定義は、例示のためとのみ解釈すべきであって、また別の数学定義も使用が可能であることを理解しなければならない。また別の数学的定義によれば異なるTが得られ、その場合には、本申請書に記述される教示を適当に用いて、補正係数PとThresholdと両方の割り当てを改めて行わなければならない。
【0042】
試験1:シグナル対ノイズ比試験
この試験では、シグナルと判断されるものと、ノイズと判断されるものとの比を測定する。これを実行する一つのやり方は、蛍光強度の総計変化と、各増幅サイクルに見られる絶対蛍光変化の合計との比を取ることである。全体蛍光強度がサイクル数と共に増加する場合、本試験の定義は
【数2】
Figure 0004535310
となる、ただしここにFは、サイクルjにおいて装置から得られた蛍光測定値である。下付き文字は増幅サイクルを表し、1からサイクル総数までの数を取る。短いウィンドーのサイクル数(2m)で(例えば2m=6)試問を行う。また、kは、範囲変数、すなわち、ウィンドーの中点である。いずれのウィンドーであっても最初のサイクル数はk−mであり、最後のサイクル数はk+mである。全体蛍光強度がサイクル数と共に減少する場合、この試験の定義は適用されない。本試験の値は1以上である。Tは、2mの範囲内において、蛍光強度が各連続サイクルで増加する場合1である。もしもノイズがあり、蛍光強度が1個以上のサイクルで減少するならば、Tは1よりも大きくなる。この試験の主な目的は、ネガティブ・サンプルの定性的評価を行うことであるが、ただし、この試験だけを用いるならば、ベースラインが上昇するような蛍光強度曲線によって誤魔化される可能性がある。シグナル対ノイズを評価するには他にも方法があり、上記の方法はそんな方法のうちの一例であることを理解しなければならない。シグナル対ノイズ試験を、後述する信頼間隔試験と併用することにより、自動分析において高度の正確が得られる可能性がある。
【0043】
試験2:信頼間隔試験
本試験は、本質的に、前述の信頼帯域分析に相当する。その分析では、蛍光曲線のベースライン部分を信頼間隔ないし信頼帯域として動的に定め、アルゴリズムは、ある選択された増幅サイクルにおける蛍光値がその信頼帯域の中にあるのか、外にあるのかを確定するものであった。それとの相違は、前記信頼帯域分析ではポジティブかネガティブの表示が与えられるのに対して、この信頼間隔試験では数値が与えられる。この信頼間隔試験およびシグナル対ノイズ試験は、この例では、共同的に使用されて複合スコアを生成する。この試験にスコアを導入する一つの数学的方法としては、先ず、直線回帰を用いて曲線に直線を適合させることであり、さらに、二乗した誤差の合計をその直線から計算する、そして、その誤差を、NoiseLevel(ノイズレベル)と呼ばれる、あらかじめ定められた値に標準化(normalize)する。
【0044】
直線適合をL(j)=Aj+Bと定義するならば、ただしjはサイクル数であるが、本試験は下式のように定義される、
= Σ(Fj − L(j))/ノイズレベル
ノイズレベルは、反応の進行時に蛍光をモニターするのに用いられる装置に依存する。LightCycler(商標)装置の場合、ノイズレベル = 0.05である。Tの値はポジティブ・サンプルでは大きく、ノイズが優勢なサンプルでは1に近い。従って、本試験によりポジティブ・サンプルは特定されるが、低振幅のポジティブシグナルが見落とされる可能性がある。他の全ての試験同様、信頼間隔試験を数学的に記述するには他にもやり方があるのであって、そのようなやり方も本発明において有効であることを理解しなければならない。
【0045】
試験3:チェンネル統一性試験
本試験は、複数の検出チャンネルにわたるデータが、ポジティブな増幅反応について期待されるパターンと矛盾していないかどうかを測定するものである。本試験の性格な形は、検出チャンネルの設計や、核酸量を反映する蛍光シグナルを与えるのに用いられる特異的検出化学反応に依存する。蛍光は通常、レポーター染料を認識するのにもっとも好適な一次検出チャンネルによってモニターされるが、大抵のマルチチャンネル検出装置では、同じシグナルを他のチャンネルでもモニターすることが可能であり、かつ、問題の無いポジティブな増幅反応において二次チャンネルが受け取ることが期待される入力特性を定めることが可能である。例えば、もしも一つの二次チャンネルがレポーター染料の発光を受け取ることが可能であるならば、このチャンネルにおける最大二次導関数は、一次チャンネルのものと同じであると期待する。また、二次チャンネルの蛍光強度は、一次チャンネルのものよりも特異的に低いとも期待する。ある混入物による蛍光が全てのチャンネルに干渉する状況では、チャンネル間で期待される蛍光強度の差が観察されないかもしれない。1個以上の二次チャンネルにおける蛍光を観察することによって、そうでなければ一次チャンネルにおいてポジティブと判定された筈の反応が異常と表示されることがある。また別の例では、もしも一つの二次チャンネルが、レポーター染料ではなく、ドナー染料の発光を受けとるのが可能であるならば、増幅時発色シグナルの減少が観察され、従ってこの場合、二次チャンネルの、二次導関数最大値ではなく、最小値が、一次チャンネルの二次導関数最大値と等しくなることになる。ポジティブ・サンプルに対する期待されるパターンが何であれ、多数チャンネルからのデータが、期待されるパターンの許容範囲内に入っている場合には、T=4/3であり、そうでなければT=3/4となる。
【0046】
試験4:効率試験
本試験は、蛍光曲線によって測定されたPCR反応の効率を測定するものである。本試験では、PCRは飽和によってモデル化されると仮定する。もっとも簡単で、好適な蛍光飽和モデルは、
Fn+1 = Fn + A Fn (max(F) − Fn).
である。この時、この変換式
log F − log (max(F)-F) = A j + B
はサイクル数に関して直線的である。このモデルでは、効率は1+Aに等しい。試験そのものは以下のように定義される:
T4 = 1 + maxm(0,A)
ここにAは、曲線を、下式によって定義される、3つの部分関数に適合させることによって確定される。
j<j1ならば、log Fj − log (max(F)-Fj) = c1
j1<j<j2ならば、log Fj − log (max(F)-Fj) = A j + B
j2<jならば、log Fj − log (max(F)-Fj) = c2
ここで、j2−j1は少なくとも7サイクルでなければならない。未知数A,B,cおよびcは、蛍光曲線上における誤差の二乗の合計を最小化するように選ばれる。
【0047】
の値は、効率の低いネガティブ・サンプルよりも、効率の高いポジティブ・サンプルの方が大きい。従って、本試験によってポジティブ・サンプルをネガティブ・サンプルから識別できた。高度に正確な自動化表示を行うには、本試験を、チャンネル統一性試験、シグナル対ノイズ比試験および信頼間隔試験の諸試験と合わせて行うと効果的である。
【0048】
試験5:機能順序配列
信頼帯域分析のところで前述したように、素直な増幅曲線は、特徴的なS字状曲線、すなわち、シグモイド曲線を取る。本試験は、蛍光曲線が、増幅サンプルについて期待されるシグモイド型を取るかどうかを測定するものである。本試験は、蛍光曲線が、シグモイド曲線に特徴的な順序関係を満足しているかどうか、すなわち、
minj(Fj) < maxj(Fj-1 - 2Fj + Fj+1)
< maxj(Fj+1 - Fj-1) < maxj(Fj).
を満足しているかどうかを確定する。記号<は、サイクル変数jに関して、その特徴の順番を表すのに用いられる。この順序関係に関する式は、シグモイド曲線の一次および二次導関数の、標準的な二次近似である。しかしながら、前述の信頼帯域分析とは違って、最小二次導関数の近似は省略してある。なぜなら最小二次導関数を含めると、ポジティブ・サンプルでこの順序を満足しないものがあるからである。この関係が満足されるならば、T=4/3であり、満足されなければT=3/4となる。従って、本試験は、ポジティブ・サンプルとネガティブ・サンプルを区別するのに有用である。しかしながら、本試験はある種のネガティブ・サンプルに誤魔化される可能性がある。従って、上記各試験の場合と同様、本試験は、他の試験と併用することが好ましい。
【0049】
試験6:最大値基準値比較試験
本試験は、蛍光曲線のベースラインに対する、同曲線の変化の相対値を測定するものである。本試験では、曲線に基準直線を適合させ、次に、前者から後者を差し引く。次に、曲線のバックグラウンドのサイクルを特定し、その領域における最大蛍光強度を計算する。この計算から、本試験は、
T6 = maxj(Fj) / maxbackground(| Fj |)
となる。ただしここに使用される蛍光値は、差し引かれた曲線に対するバックグラウンド(background)を含む。Tの値はポジティブ・サンプルでは大きく、ノイズの優勢なサンプルでは1に近い。従って、本試験ではポジティブシグナルは特定されるが、ベースラインは正確に確定することが難しく、そのためにポジティブ・サンプルのあるものが見落とされる可能性がある。
【0050】
試験7:後期上昇試験
本試験は、最後の3から5サイクルにおける蛍光曲線の変化を測定するものである。本試験では、直線回帰を用いて、曲線の最後の3から5までのサイクルに直線を適合させる。適合直線をL(j)=A(m)j+Bと定義し、Jをサイクル数、mをL(j)を定めるのに使用される点の数とすると、本試験は下式のように定義される、すなわち、
T7 = 1 + maxm (0,A(m))
【0051】
の値は、最後の数サイクルにおいてプラスの勾配を持つサンプルでは1よりも大きく、その他の場合は1に等しい。従って、本試験は、後期に上昇するポジティブシグナルを特定するのに有用である。もしもサンプルが、後期に上昇するポジティブシグナルを持つことが確かな場合には、アルゴリズムが、自動的に余分の増幅サイクルを加え、さらに付加的に、増幅時の連続モニターによって、あるいは、増幅後に解離分析工程を加えることによって、サンプルの同定を可能にするために、解離温度の入手を可能にすることも考えられる。 増幅物質の自動的特定の正確性を向上させるためには、7種の試験全てを用いるのが好ましい。
【0052】
補正係数と閾値を定める
最後の式に用いられる補正係数Pおよび閾値は、数値最適化法を用いて求める。この工程は下記のように一般化することが可能である。先ず、判定値(log(スコア))のような数学的操作やスコアを用いて、「ポジティブ」、「ネガティブ」および「不定」の各判定に対する望ましい範囲を設定する。判定値の場合、一つの実施例では、不定の範囲に(−1、1)が、ポジティブには>1が、ネガティブには<−1が設定される。しかしながら、この範囲は、様々のやり方で設定が可能であることを理解しなければならない。一旦範囲が設定されたならば、できるだけたくさんの正しい判定を生み、誤った判定を少なくするように、パラメータPと閾値を最適化する。この最適化は、大きな一組の(例えば、約4000個の)増幅プロットを用いて実行するのが好ましく、それらのプロットの内、約3分の1は信頼帯域分析のみでは分類が特に難しかったために選択され、さらに別の6分の1は分類の容易な反応であり、さらに別の3分の1は、ガウス型乱数発生器(典型的蛍光ノイズレベルに基づいて、平均=0、変動=0.05)によって生成されるプロットから得たものであり、残りは、下記の関数から構築される飽和曲線によって生成される。その関数とはすなわち、
F = Cemt / (1+ Cemt).
ここで、パラメータmとCは、乱数発生器によって生成される。
【0053】
最適化される対象関数は、下記の3項の重み付け合計である。第一項は、サンプルの既知の分類と一致しない判定の予測数であり、第二項は、判定不能すなわち「不定」分類における正しい判定の数であり、第三項は、表示不能分類から外れた誤った判定の数である。この関数は、できるだけ多数の正しい判定を生じ、表示不能区分における正しい判定の数を減らし、かつ、表示不能区分から外れた誤った判定の数を減らすように設計される。擬似ネガティブまたは擬似ポジティブに対する相対的許容度は、この三項の重み付けによって確定される。
【0054】
2種試験分析の実施例
二種試験では、シグナル対ノイズ比試験(T)と信頼間隔試験(T)を用いるのが好ましい。パラメータPと閾値の最適化が、本実施例では、例示として判定値を用いて行われる。二種の試験による判定値は下式によって与えられる。すなわち、
判定値 = PlogT+PlogT−log(閾値)
シグナル対ノイズ比試験の期待値(T)は、ポジティブ・サンプルでは1であり、ネガティブ・サンプルでは1より大である。信頼間隔試験の期待値(T)は、ネガティブ・サンプルでは1であり、ポジティブ・サンプルでは1より大である。logTはネガティブ・サンプルでは正数であり、Pは、判定値がネガティブ・サンプルでは負数となるのであるから、負になる筈である。同様にして、Pは正でなければならない。閾値は、本実施例では1に近いことが予想される。なぜなら、TとTにおいて、1がポジティブ・サンプルとネガティブ・サンプルを区分する境界だからである。
【0055】
最適化を実行するために、パラメータについて推測を行う。次に、各サンプルについて判定値を計算し、判定値使用によって求めた表示が適正か不正かを確定する。次に、誤った判定の数を数える。これが合計の第一項となる。間隔(−1、1)の中の正しい判定の数、および、間隔(−1、1)の範囲外の誤った判定の数を数え、これら合計数をそれぞれ10で割って、第二・第三項を生成するが、これらの項は、例えば、重み付けが少なくされている。これら三項を加え、その合計が、対象関数の値として割り当てられる。次に、補正係数パラメータ空間における近接値を用いて対象関数をさらに小さくする。その工程は、対象関数の値がそれ以上小さくなれないくらいまで繰り返される。この工程を用いると、本実施例では、Pは−6から−4、Pは0.5から1.0、閾値は1.5から2.0の範囲を取る。同じ工程を用いることによって、2種以上の試験を併用する分析法に対してもPと閾値を定めることが可能である。表1は、本実施例におけるこれらの値を示す。
【表1】
Figure 0004535310
【0056】
7種試験分析による自動化表示の正確度
7種全ての試験を併用する7種試験分析を、2005個の反応に対して行った。この反応の内、1273個は、信頼間隔試験のみに基づいて不定と分類され、732個が判定容易と判断されたものである。これらの反応に関する前述の分類に基づけば、1988個(99.2%)が、この7種試験分析によって適正に判定された。誤って判定された17個(0.8%)の内、13個(誤った判定の76%)は間隔(−1、1)の中に入った。従って、併用試験では、信頼間隔試験だけの場合よりもさらに強力にポジティブとネガティブとが区別されたことになる。この結果は、得点の双峰性分布に示されている(図12)。
本実施例のためには、MathWorks社の市販するプログラム言語Mathlab(商標)が使用された。しかしながら、適当なものであれば、いかなるプログラム言語であっても使用が可能である。
【0057】
解離温度分析
また別の実施態様において、前記方法によって生じた「ポジティブ」判定を、増幅産物の解離温度値(Tm;「融解温度値」とも言う)の自動的フィードバック法によってチェックした。この追加確認は、プローブのハイブリダイズ状態と非ハイブリダイズ状態とが、dsDNA特異的染料やハイブリダイゼーション・プローブの場合と同様、蛍光シグナルの変化によって識別可能である限り、実現が可能である。増幅産物のTmは下記のようにして確定が可能である。あらかじめ定められた、および/または、動的に選択された増幅サイクルにおいて、蛍光を、伸張と変性の間で(または、二段階増幅工程の場合にはアニーリングと変性の間で)、連続的にモニターする。このモニターにより増幅産物の解離特性が得られる。別法として、増幅サイクルの終わりに別に解離工程を加えることによってTmを確定することも可能である。すなわち、この間連続的に蛍光をモニターして解離特性を認知する。この解離特性導関数の最小値(または最大値、これは、プローブ設計が解離ピーク/谷のどちらを生成するかによる)によってTmが確定される。次に、このTm値を、標的分析対象の既知のTmと比較し、もしもこの二つの値が一致するならば、証明済みのポジティブ判定が行われる。もしも不一致であれば、「ポジティブ」判定は立証されない。この方法は、標的遺伝子以外の遺伝子が増幅された場合、または、プライマーダイマーが生成された場合を特定するのに使用可能である。
【0058】
その他の用法
前記実施例は全て核酸の存在を確定するための方法に関するものであるが、本発明はさらに、この多種試験分析法を、あるサンプルにおいて、核酸のみに限らず、また、核酸増幅工程の使用に限定されることなく、生物学的または化学的分析対象の有無について分析するために使用することも考えている。
【0059】
化学的または生物学的過程において得られたデータであればいかなるものであっても、そのデータが下記の条件を満足するものである限り、本申請書に教示されるように、分析に用いられることができる。その条件とは、データは時間と共に進行する反応から定期的に得られるもので、その反応が、(1)検出される分析対象物の量(2)分析対象物によって直接または間接に変換される基質の量(3)分析対象物の存在(または不在)によって直接または間接に引き起こされる他の物理的または光学的変化の程度、もいずれかにおいて、増加(または減少)をもたらし、従って、それらの量的または物理的変化に関連するシグナルの増加(または減少)をもたらすという条件である。このような分析対象としては、核酸の他にも、懸濁液中の細菌類、蛋白質、ペプチド、酵素、または、体液や反応混合液中の抗体、毒素、環境流体や反応混合液中の微生物を含むその他の物質等が挙げられる。化学または生物学な検出過程は、核酸増幅や細菌繁殖の場合と同様分析対象物の増幅という形を取ってもよいし、または、酵素検出系や、相転移(ゲル化または沈殿)等の場合のようにシグナル増幅の形を取ってもよい。シグナルが減少する実施態様においても、そのデータの逆数をプロットすることによって、本発明の多種試験分析法に適用が可能となることを理解しなければならない。
【0060】
好ましくは、化学的または生物学的過程の追跡データは、シグナルが低すぎて検出装置では検出不能な初期遅延相があって、その次に直線的または対数直線的シグナル増加(または減少)相があり、次に、下記の内の少なくとも一つの原因によるプラトー相を有する。その原因とは、(1)シグナルが検出装置の飽和点を越える、(2)シグナルを増加(または減少)させるのに必要な1種以上の栄養素または基質の余裕が無くなってくる、(3)反応産物がネガティブフィードバックを与え、反応を緩和させる、または、(4)時間経過による系の変性、のである。
【0061】
さらに、前記例示の実施態様では蛍光が用いられたのであるが、他の検出系であっても、得られるシグナルが、測定される分析対象物の量、分析対象物によって直接または間接に変換される基質の量、または、基質に対する光学的またはその他の物理的変化の量のような測定可能な変化に関連するものである限り、使用が可能である。他の検出法としては、例えば、光吸収、光学的密度、酵素的、比色性、化学発光、および、放射性による検出システムが挙げられる。
【0062】
例示の実施例として、ある特定の細菌を宿しているという疑いのあるサンプルを懸濁培養液で培養し、選択的細菌継代の有無を光学的密度を通じてモニターするやり方がある。細菌数が倍増すれば、図2に示すような核酸増幅の場合と同様の対数曲線データが得られる。ただし、細菌継代の場合には、時間スケールが通常は遥かに長くなる。細菌成長の自動化検出へ向けての試行は核酸増幅の場合と同様であって、基本的には真のシグナルをバックグラウンドと区別することにある。従って、前記多種試験分析法は、細菌検出を自動化するために直ちに適用することが可能である。同様に、例えば、エンザイムイムノアッセイ(ELISA)では、表面に捕捉された分析対象物は、基質を変換して発色または蛍光シグナルを発生させる反応を触媒する酵素に結合するレポーターによって検出される。このタイプの工程から生ずる比色シグナルまたは蛍光シグナルは、初期遅延を持ち、かつ、時間と共に直線的に増加する。この反応を十分長く進行させるならば、基質が消費されるか、または、シグナルが検出の直線範囲を越えることになる。この場合においても、酵素表示系による分析対象検出の自動化のために、前記多種試験分析法を直ちに適用することが可能である。さらに別の実施例としては、基質変換をモニターする比色表示計によってサンプル中の酵素を自動的に検出するやり方がある。ELISA例と同様、シグナルは、酵素の量では無く、変換された基質量と関連するのではあるが、それでも酵素の有無を確定するのに、ここで教示された原理が適用可能であることは理解されよう。
【0063】
好ましい実施態様を参照しながら本発明を詳細に説明してきたわけであるが、上記請求項に記載・定義される本発明の技術的範囲や精神の中に、バリエーションや変更は存在する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1a−lは、3種類の蛍光モニタースキームの比較を示す。3種類のスキームはPCRにおけるdsDNA染料(図1a、d、g、j)、エキソヌクレアーゼ・プローブ(図1b、e、h、k)、および、ハイブリダイゼーション・プローブ(図1c、f、i、l)であり、ここに、増幅前(図1a−c)、増幅後(図1d−f)の各スキームが描かれ、また、蛍光値がPCRの各サイクルについて一つ(図1g−i)、および、PCR中に連続的に(図1j−l)示される。
【図2】図2は理論的成長を示すグラフである。
【図3】図3a−fは、様々のサイクル対蛍光強度曲線型の比較を示す。
【図4】図4は、各サイクルにおいて蛍光強度対サイクル数グラフの勾配を確定するためのスライド・ウィンドー分析を示す。
【図5】図5は、ネガティブ・サンプル(A)とポジティブ・サンプル(B)における典型的な蛍光強度対増幅サイクルグラフを示す。
【図6】図6も典型的増幅グラフを示すものであり、(A)は蛍光強度対増幅サイクル、(B)は蛍光強度対増幅サイクルの一次導関数であり、(C)は蛍光強度対増幅サイクルの二次導関数である。
【図7】図7は各種サンプルの結果を示す。ここに白抜き丸は各サイクルにおける蛍光強度測定値を表し、黒抜き丸は一次導関数を表し、黒塗り丸は二次導関数を表し、線分で結ばれる大きな黒丸は、ベースライン計算に用いられる点を表し、水平線は、ベースライン区域を示す。図7はポジティブ結果を表す。
【図8】図8は各種サンプルの結果を示す。ここに白抜き丸は各サイクルにおける蛍光強度測定値を表し、黒抜き丸は一次導関数を表し、黒塗り丸は二次導関数を表し、線分で結ばれる大きな黒丸は、ベースライン計算に用いられる点を表し、水平線は、ベースライン区域を示す。図8はポジティブ結果を表す。
【図9】図9は各種サンプルの結果を示す。ここに白抜き丸は各サイクルにおける蛍光強度測定値を表し、黒抜き丸は一次導関数を表し、黒塗り丸は二次導関数を表し、線分で結ばれる大きな黒丸は、ベースライン計算に用いられる点を表し、水平線は、ベースライン区域を示す。図9はネガティブ結果を表す。
【図10】図10は各種サンプルの結果を示す。ここに白抜き丸は各サイクルにおける蛍光強度測定値を表し、黒抜き丸は一次導関数を表し、黒塗り丸は二次導関数を表し、線分で結ばれる大きな黒丸は、ベースライン計算に用いられる点を表し、水平線は、ベースライン区域を示す。図10はネガティブ結果を表す。
【図11】図11は各種サンプルの結果を示す。ここに白抜き丸は各サイクルにおける蛍光強度測定値を表し、黒抜き丸は一次導関数を表し、黒塗り丸は二次導関数を表し、線分で結ばれる大きな黒丸は、ベースライン計算に用いられる点を表し、水平線は、ベースライン区域を示す。図11はネガティブ結果を表す。
【図12】図12は7種試験分析法の結果を示しており、CallValue(判定値)またはlog(スコア)をサンプル数に対してプロットしたものである。不定表示を表す(−1、1)間隔は点線で表す。

Claims (33)

  1. サンプル中の核酸の有無を決定する方法であって、
    前記核酸の存在を示し、核酸量に関連するシグナルを与えることが可能な蛍光体を供給する工程と、
    前記核酸を前記蛍光体の存在下に複数の増幅サイクルを通じて増幅する工程と、
    前記複数の増幅サイクルの各サイクルにおいて蛍光体の蛍光強度を測定し、各サイクルにおいて存在する核酸量に関連する、各サイクルの蛍光値を生成する工程と、
    前記複数の増幅サイクル最中に得られた前記蛍光値において行った複数の試験のそれぞれから個別スコアを獲得する工程であって、前記複数の試験は信頼間隔試験およびシグナル対ノイズ比試験を含む工程と、
    前記サンプルにおける前記核酸の存在が陽性、陰性、あるいは検出不可能のいずれであるかを確定するために前記個別スコアを使用する工程と、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記複数の試験がさらにチャンネル統一性試験および効率試験を含むことを特徴とする請求項1の方法。
  3. 前記複数の試験がさらに機能順序試験、最大値対基準値比較試験、および、後期上昇試験を含むことを特徴とする請求項2の方法。
  4. 前記個別スコアは、それぞれ、あらかじめ指定された補正係数によって補正され、
    前記個別スコアを用いる工程は複合スコアを生成することを含み、ここに複合スコアは、補正された個別スコアそれぞれの積を、あらかじめ指定された閾値で割った値を含むことを特徴とする請求項3の方法。
  5. 前記複合スコアは、下式によって生成されることを特徴とする請求項4の方法。
    Figure 0004535310
    (式中、
    、T、Tは前記試験で得られた個別のスコアを表し、
    、P、Pは各試験のための前記あらかじめ指定された補正係数を表し、
    「閾値」はポジティブ判定とネガティブ判定を振り分ける区別点を提供する、あらかじめ指定された閾値を表す。)
  6. 前記個別スコアを用いる工程は判定値を生成し、ここに判定値は個別スコアの積の対数を含むことを特徴とする請求項4の方法。
  7. 前記判定値は、下式に従って生成されることを特徴とする請求項6の方法
    判定値=ΣPlogT − log(閾値)
    (式中、
    は、各試験について選択される補正係数であり、
    は各試験の個別スコアであり、
    閾値は、ポジティブ判定とネガティブ判定を振り分ける好適な区別点を与えるように選ばれた値である。)
  8. 判定値>1ならばサンプルはポジティブと判定され、判定値<−1ならばサンプルはネガティブと判定されることを特徴とする、請求項7の方法。
  9. サンプルが後期上昇ポジティブシグナルをもつかどうかを決定する工程と、
    追加の増幅サイクルを実行する工程とを
    さらに含むことを特徴とする、請求項3の方法。
  10. 前記複数の試験が、チャンネル統一性試験、効率試験、機能順序試験、最大値対基準値比較試験、および、後期上昇試験から成るグループから選ばれる、少なくとも一つの試験をさらに含むことを特徴とする請求項1の方法。
  11. 核酸の存在が、解離温度分析によってさらに立証されることを特徴とする、請求項1の方法。
  12. 前記個別スコアを用いる工程は一つの判定値を生成することを含み、ここに前記判定値は各個別スコアの対数の合計を含むことを特徴とする、請求項1の方法。
  13. 前記判定値は下式によって生成されることを特徴とする請求項12の方法。
    判定値=PlogT + PlogT − log(閾値)
    (式中、
    はシグナル対ノイズ比試験の個別スコアであり、
    は信頼間隔試験の個別スコアであり、
    はシグナル対ノイズ比試験の補正係数であり、
    は信頼間隔試験の補正係数であり、
    閾値はポジティブ判定とネガティブ判定を振り分ける区別点を与えるように選ばれた値である。)
  14. 閾値の値は、判定値>0の時に正しいポジティブ判定の最大数を最大化するように選ばれ、判定値<0の時に正しいネガティブ判定の最大数を最大化するように選ばれることを特徴とする請求項13の方法。
  15. は下式によって計算され
    Figure 0004535310
    かつ、Tは下式によって計算される
    = Σ(Fj − L(j))/ノイズレベル
    (式中、
    Fは増幅サイクルにおける蛍光値を表し、
    jは前記増幅サイクルを表し、かつ、1からサイクル総数までの数をとり、
    kは範囲変数、すなわち、ウィンドーの中間点を表し、
    k−mは前記ウィンドーの最初のサイクル数を表し、
    k+mは前記ウィンドーの最後のサイクル数を表し、
    Lは、サイクルjにおける、直線回帰を用いた蛍光カーブに対する近似線の直線適合であり、
    「ノイズレベル」は、あらかじめ定められた値であって、二乗した誤差の合計は前記直線から計算され、該誤差は「ノイズレベル」に対して標準化される)
    ことを特徴とする請求項13の方法。
  16. は−6.0と−4.0の間にあり、
    は0.5と1.0の間にあり、かつ、
    閾値は1.5と2.0の間にあることを特徴とする請求項15の方法。
  17. サンプル中の核酸の有無を決定する方法であって、
    前記核酸の存在を示し、かつ、核酸量に関連するシグナルを与えることが可能な蛍光体を供給する工程と、
    前記核酸を前記蛍光体の存在下に複数の増幅サイクルを通じて増幅する工程と、
    前記複数の増幅サイクルの各サイクルにおいて前記蛍光体の蛍光強度を測定し、各サイクルにおいて存在する核酸量に関連する、各サイクルの蛍光値を生成する工程と、
    信頼間隔試験が前記蛍光を用いて生じさせる個別スコアを獲得し、さらに、シグナル対ノイズ比試験、チャネル統一性試験、効率試験、機能順序試験、最大値対基準値比較試験、後期上昇試験からなる群から選ばれる1種以上の試験の各々が前記蛍光値を用いて生じさせる個別スコアを各一つずつ獲得する工程と、
    前記サンプルにおける前記核酸の存在が陽性、陰性、あるいは検出不可能のいずれであるかを確定するため複合スコアを生成するために前記個別スコアを使用する工程と、
    を含むことを特徴とする方法。
  18. サンプル中の核酸の有無を決定する装置であって、
    前記核酸を増幅するために温度サイクルを反復するための器具と、
    前記核酸の増幅時に、前記核酸の量に関連するシグナルを与えることが可能な蛍光体から得られる蛍光を検出するための蛍光測定器と、
    分析ルーチンを実行するプロセッサーと、
    を含み、
    前記プロセッサーは、蛍光測定器によって測定された蛍光値を用いて個別スコアを生じさせる信頼間隔試験から個別スコアを獲得し、さらに、蛍光測定器によって測定された蛍光値を用いて個別スコアを生じさせるシグナル対ノイズ比試験、チャネル統一性試験、効率試験、機能順序試験、最大値対基準値比較試験、後期上昇試験からなる群から選ばれる1種以上の試験のそれぞれから一つずつ個別スコアを得て、前記サンプルにおける前記核酸の存在が陽性、陰性、あるいは検出不可能のいずれであるか確定するため複合スコアを生成するために前記個別スコアを使用するようにプログラムされていることを特徴とする装置。
  19. 前記複数の試験が信頼間隔試験およびシグナル対ノイズ比試験を含むことを特徴とする請求項18の装置。
  20. 前記複数の試験がさらにチャンネル統一性試験および効率試験を含むことを特徴とする請求項19の装置。
  21. 前記複数の試験がさらに機能順序試験、最大値対基準値比較試験、および後期上昇試験を含むことを特徴とする請求項20の装置。
  22. 前記器具は、急速温度サイクルを反復するように構成されることを特徴とする請求項18の装置。
  23. 前記器具は毛細管と熱風制御を用いることを特徴とする請求項22の装置。
  24. 野外使用が可能な携帯容器に入れられて供給される請求項18の装置。
  25. サンプル中の分析対象物の有無を決定する方法であって、
    前記分析対象を基質と所定期間接触させて、分析対象の量、基質の量、および、基質に対する光学的または物理的変化量から成るグループから選ばれる、測定可能な変化をもたらす工程と、
    前記測定可能な変化と関連するシグナルを生じさせる工程と、
    前記シグナルの強度値が複数の時点において獲得されるように前記所定期間にシグナル強度を測定する工程と、
    複数のシグナルの強度値において行った信頼間隔試験およびシグナル対ノイズ比試験を含む複数の試験のそれぞれから個別スコアを獲得する工程と、
    前記サンプルにおける前記核酸の存在が陽性、陰性、あるいは検出不可能のいずれであるかを確定するために前記個別スコアを使用する工程と、
    を含む方法。
  26. 前記分析対象物が核酸であり、前記基質がPCRプライマー、dNTPおよびポリメラーゼを含むことを特徴とする請求項25の方法。
  27. 前記シグナルが蛍光シグナルを含み、前記測定可能な変化が前記核酸の量であることを特徴とする請求項26の方法。
  28. 前記分析対象物は細菌であり、前記基質は栄養素を含むことを特徴とする請求項25の方法。
  29. 前記シグナルは光学的密度であり、前記測定可能な変化は細菌量であることを特徴とする請求項28の方法。
  30. 前記基質は、酵素に対する基質であることを特徴とする請求項25の方法。
  31. 前記分析対象物は抗原であり、前記シグナルは抗体に結合している酵素によって生成し、前記測定可能な変化は、酵素によって変換する基質の量であることを特徴とする請求項30の方法。
  32. 前記分析対象物は抗体であり、前記シグナルは抗原または第二の抗体に結合している酵素によって生じ、前記測定可能な変化は、酵素によって変換される基質の量であることを特徴とする、請求項30の方法。
  33. 前記シグナルは比色計によって生成され、前記測定可能な変化は前記基質の量であることを特徴とする、請求項30の方法。
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