JP4534312B2 - シートバック用シートカバー構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として車両のフロントシートにおけるシートバック用シートカバー構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シートバックのシートカバーは例えば図6〜図9で示すような構造となっている。図6はフロントシートのシートバックを表した斜視図、図7は図6のC−C矢視方向の拡大断面図、図8は同じく図6のD−D矢視方向の拡大断面図である。一般にフロントシートにおけるシートバック50のシートカバー52はその下部が開放した袋状をしており、パッド53が組み付けられたシートバックフレーム51に対し、その上方から被せつけられる。
【0003】
図9は前記シートカバー52を裏返した状態で表した部分平面図である。この図面からも明らかなようにシートバック50の背裏54には、この背裏54の上側および両側に倣った門形の樹脂製プレート56がシートカバー52の内側において縫い付けられている。このプレート56の上部56aに対し、前記背裏54の幅方向に沿って縫い付けられた吊り部材58にはエッジワイヤ60を挿通させている(図7,9)。同じくプレート56の両側部56bに対し、前記背裏54の縦方向に沿って縫い付けられた吊り部材62にはファースンゴム64をそれぞれ挿通させている(図8,9)。ただしこれらの図面では片側のみが示されている。
【0004】
前記エッジワイヤ60は、背裏54の幅方向の複数個所においてホグリング61により前記シートバックフレーム51側に結合される。また前記の両ファースンゴム64の上端部は、前記エッジワイヤ60の両端部に結合されている(図9)。そして両ファースンゴム64には下方向への引っ張り力が付与されるとともに、これらのファースンゴム64は上下方向のほぼ中間部64a(図9)においてシートバックフレーム51側にホグリング(図示外)で結合される。これによりシートバック50の背裏54におけるシートカバー52が内側に引き込まれ、かつ上下方向に引き張られた状態に仕上げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前記背裏54の中央個所においては充分な面剛性が得られず、またこの中央個所において前記シートカバー52を内側に引き込むように機能しているのは、この背裏54の両サイドに位置する前記ファースンゴム64の中間部64aとシートバックフレーム51側との結合だけである。これでは前記背裏54のシートカバー52を内側へ確実に引き込むことができず、外観が悪くなる。
なお前記ファースンゴム64の中間部64aが内側へ引き込まれることから、前記背裏54における縦方向の意匠ラインL(図6)がまっすぐに通らず、シートカバー52に“よたり”が生じやすい。
【0006】
本発明は前記課題を解決しようとするもので、その一つの目的は、フロントシートにおけるシートバックの背裏に要求される面剛性を確保し、かつ背裏のシートカバーを内側へ充分に引き込んでその外観をよくすることである。
また本発明の他の一つの目的は、シートバック背裏の両サイドにおける縦方向の意匠ラインをまっすぐに通して外観をよくすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するためのもので、請求項1記載の発明は、シートバックの背裏において、その上側および両側に倣った門形のプレートがシートカバーの内側に縫い付けられているとともに、このプレートの上部および両側部に対し、それぞれ所定の方向へ引っ張り力を付与して前記シートカバーに張りを与えているシートバック用シートカバー構造であって、前記プレートに、前記背裏の上下方向の中間付近において前記プレートの両側部に掛け渡された差し渡し部があり、この差し渡し部は、前記背裏に対して前記シートバックの内部方向への引っ張り力を付与する引っ張り手段を備えている。
また請求項2記載のように、前記引っ張り手段が、前記差し渡し部に対して前記背裏の幅方向に沿って固着された吊り部材と、この吊り部材に装着された吊り込み棒とからなり、この吊り込み棒に前記の引っ張り力が付与されている。
さらに請求項3記載のように、前記吊り込み棒が係止部材によってシートバックフレームに結合され、それによって吊り込み棒に前記シートバックの内部方向への引っ張り力が付与された構成にしてもよい。
【0008】
前記の構成によれば、前記門形のプレートにおける前記差し渡し部によって前記背裏に要求される面剛性が確保されるとともに、この差し渡し部において前記背裏のシートカバーをシートバックの内部方向に引き込んでいるので、シートカバーが充分に引き張られて背裏の外観がよくなる。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のシートバック用シートカバー構造であって、前記門形のプレートの上部に対してシートバックにおける背裏の幅方向に沿って上部吊り部材が縫い付けられ、同じくプレートの両側部に対して前記背裏の縦方向に沿って側部吊り部材が縫い付けられている。そして前記の上部吊り部材には吊り込み棒を挿通させ、この吊り込み棒が係止部材によってシートバックフレームに結合されている。一方、前記の側部吊り部材には引っ張り紐をそれぞれ挿通させ、これらの引っ張り紐の上端部が前記の上部吊り部材に挿通させている吊り込み棒の端部にそれぞれ結合されているとともに、個々の引っ張り紐に下方向への引っ張り力が付与されている。
この構成では、前記門形のプレートの上部および両側部に対してそれぞれの方向へ引っ張り力を付与する手段が具体的であるとともに、前記の側部吊り部材に挿通させている引っ張り紐は、前記背裏の両サイドにおいて縦方向への引っ張りだけを果たしている。したがって背裏の両サイドにおける縦方向の意匠ラインがまっすぐに通って外観がさらによくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5によって説明する。
図1はフロントシートのシートバックを表した斜視図、図2は図1のA−A矢視方向の拡大断面図、図3はシートバックフレームを表した斜視図である。これらの図面から明らかなように、シートバック10は大別して金属製のシートバックフレーム12、発泡ウレタンなどで成形されたパッド14、布や皮革などで形成されたシートカバー16によって構成されている。
【0011】
前記シートバックフレーム12は、その上下において両サイドフレーム12aの間にパイプ状のアッパフレーム12bおよびロアフレーム12cが掛け渡された格好で全体の骨組みが構成されている。また、両サイドフレーム12aの間には複数本のSバネ12dと、アッパワイヤ12eおよびロアワイヤ12fとがある。そしてこのシートバックフレーム12の外側には前記パッド14が図2で示すように組み付けられる。
【0012】
前記シートカバー16はその下部が開放した袋状に縫製されており、前記のようにパッド14が組み付けられたシートバックフレーム12に対し、その上方から被せつけられる。なおフロントシートのシートバック10は、その背裏18の外観も重要であることから、この背裏18を構成するシートカバー16に適正な張りを与えて仕上げるための種々の工夫がされている。
【0013】
図4は前記シートカバー16を裏返した状態で表した部分平面図である。つまり、この図面では前記背裏18におけるシートカバー16の構成をシートバック10の内部側からみた状態が示されている。この図4および前記の図2から明らかなようにシートカバー16の内側には、合成樹脂製のプレート20がシートカバー16に縫い付けることで配置されている。このプレート20は背裏18の上側および両側に倣った平面形状をしており、この背裏18の幅方向に沿った上部20aと、その両端部から背裏18の縦方向に沿った両側部20bとによって門形を呈している。またこのプレート20は、背裏18の上下方向の中間付近において前記の両側部20bに掛け渡された差し渡し部20cを備えている。
【0014】
前記プレート20の上部20aには、布などを二つ折りにして重ねた上部吊り部材22とシートカバー16とが共に縫い付けられている。この上部吊り部材22は背裏18の上側において幅方向に長い筒状として位置し、その中にエッジワイヤ24(吊り込み棒)を挿通させている。このエッジワイヤ24は、幅方向の複数個所においてホグリング26(係止部材)により前記シートバックフレーム12のアッパワイヤ12eに結合されている(図2)。これによってエッジワイヤ24に内部方向への引っ張り力が付与され、シートカバー16が背裏18の上部においてシートバック10の内部方向に引き込まれている。
【0015】
図5は図1のB−B矢視方向の拡大断面図である。この図面からも明らかなように前記プレート20の両側部20bには、上部吊り部材22と同じように布などを二つ折りにして重ねた側部吊り部材28がシートカバー16と共にそれぞれ縫い付けられている。この側部吊り部材28は背裏18の両側において縦方向に長い筒状として位置し、その中にファースンゴム29(引っ張り紐)をそれぞれ挿通させている。これらのファースンゴム29の上端部は前記エッジワイヤ24の端部に結合され(図4)、かつ個々のファースンゴム29には下方向への引っ張り力が付与されている。
【0016】
前記プレート20の差し渡し部20cには、同じく布などを二つ折りにして重ねた吊り部材30がシートカバー16と共に縫い付けられている。この吊り部材30は背裏18の上下方向の中間付近において幅方向に長い筒状として位置し、その中にエッジワイヤ32(吊り込み棒)を挿通させている。このエッジワイヤ32は、幅方向の複数個所においてホグリング34(係止部材)により前記シートバックフレーム12のロアワイヤ12fに結合されている(図2)。これによってエッジワイヤ32に内部方向への引っ張り力が付与され、シートカバー16が背裏18のほぼ中間部においてシートバック10の内部方向に引き込まれている。つまり前記吊り部材30およびエッジワイヤ32(吊り込み棒)が主体となって前記差し渡し部20cにおける「引っ張り手段」が構成されている。
【0017】
なお本実施の形態では、前記「引っ張り手段」を構成する前記吊り部材30が差し渡し部20cに縫い付けられ、かつこの吊り部材30の中に前記エッジワイヤ32を挿通させている。しかし、この「引っ張り手段」は前記の構成に限るものではなく、例えば前記吊り部材30は差し渡し部20cに対して接着や係合により固着してもよく、またこの吊り部材30と前記エッジワイヤ32(吊り込み棒)とを一体構造にすることもできる。さらには「引っ張り手段」そのものを、前記吊り部材30およびエッジワイヤ32に代えて樹脂材などによって前記差し渡し部20cと一体成形することも可能である。
【0018】
前記のように構成されたシートバック10においては、前記プレート20の差し渡し部20cにより前記背裏18の面剛性が確保される。しかもこの差し渡し部20cの吊り部材30に挿通させた前記エッジワイヤ32に内部方向への引っ張り力が付与されているので、背裏18の上下方向の中間付近においてもシートカバー16がシートバック10の内部側へ引き込まれて適正に張られる。一方、前記の両ファースンゴム29は背裏18の両側においてシートカバー16に縦方向の張りを与える役割のみを果たしている。したがってこの背裏18の両サイドにおける縦方向の意匠ラインL(図1)がまっすぐに通り、シートカバー16に“よたり”などが生じるのを防止でき、背裏18の外観がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フロントシートのシートバックを表した斜視図。
【図2】図1のA−A矢視方向の拡大断面図。
【図3】シートバックフレームを表した斜視図。
【図4】シートカバーを裏返した状態で表した部分平面図。
【図5】図1のB−B矢視方向の拡大断面図。
【図6】従来のシートバックを表した斜視図。
【図7】図6のC−C矢視方向の断面図。
【図8】図6のD−D矢視方向の断面図。
【図9】従来のシートバックのシートカバーを裏返した状態で表した部分平面図。
【符号の説明】
10 シートバック
16 シートカバー
18 背裏
20 プレート
20a 上部
20b 側部
20c 差し渡し部
30 吊り部材
32 エッジワイヤ(吊り込み棒)
Claims (4)
- シートバックの背裏において、その上側および両側に倣った門形のプレートがシートカバーの内側に縫い付けられているとともに、このプレートの上部および両側部に対し、それぞれ所定の方向へ引っ張り力を付与して前記シートカバーに張りを与えているシートバック用シートカバー構造であって、
前記プレートに、前記背裏の上下方向の中間付近において前記プレートの両側部に掛け渡された差し渡し部があり、この差し渡し部は、前記背裏に対して前記シートバックの内部方向への引っ張り力を付与する引っ張り手段を備えているシートバック用シートカバー構造。 - 請求項1記載のシートバック用シートカバー構造であって、
前記引っ張り手段が、前記差し渡し部に対して前記背裏の幅方向に沿って固着された吊り部材と、この吊り部材に装着された吊り込み棒とからなり、この吊り込み棒に対して前記の引っ張り力が付与されているシートバック用シートカバー構造。 - 請求項2記載のシートバック用シートカバー構造であって、
前記吊り込み棒が係止部材によってシートバックフレームに結合され、それによって吊り込み棒に前記シートバックの内部方向への引っ張り力が付与されているシートバック用シートカバー構造。 - 請求項1記載のシートバック用シートカバー構造であって、
前記門形のプレートの上部に対してシートバックにおける背裏の幅方向に沿って上部吊り部材が縫い付けられ、同じくプレートの両側部に対して前記背裏の縦方向に沿って側部吊り部材が縫い付けられ、前記の上部吊り部材には吊り込み棒を挿通させ、この吊り込み棒が係止部材によってシートバックフレームに結合されている一方、前記の側部吊り部材には引っ張り紐をそれぞれ挿通させ、これらの引っ張り紐の上端部が前記の上部吊り部材に挿通させている吊り込み棒の端部にそれぞれ結合されているとともに、個々の引っ張り紐に下方向への引っ張り力が付与されているシートバック用シートカバー構造。
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