JP4533359B2 - 座屈拘束ブレース、及び座屈拘束ブレースを用いた耐力フレーム - Google Patents

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Description

本発明は、建築物の壁などの垂直構面、及び床などの水平構面の内側に架け渡されて、、水平力に対する建築物の変形を有効に防止できる座屈拘束ブレースと、この座屈拘束ブレースを用いた耐力フレームに関する。
従来の座屈拘束ブレースは、鋼板等を用いたブレース本体としてのブレース芯材を、鋼管等を用いた補剛材の内側に挿入し、これらブレース芯材と補剛材との隙間に、モルタル、合成樹脂等硬化性の材料を充填した構造が多く採用されている。
このように構成された座屈拘束ブレースでは、圧縮荷重を受ける際に発生するブレース芯材の座屈が、補剛材の曲げ剛性によって拘束されることから、比較的小さな断面のブレース芯材で、引張力及び圧縮力の両方に充分抵抗して、ブレースとして必要な補強効果を得ることができる。その結果、地震発生時など建築物に大きな水平力が発生すると、小断面のブレース芯材はこれらの外力に応じて柔軟に弾性伸縮できることから、エネルギー吸収効果の高い紡錘型の復元力特性を生じて、建築物の接合部、周辺の構造材の強度を高めることなく、優れた耐震性を発揮できる(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−220637号公報
しかしながら、ブレース芯材が座屈しようとする力を補剛材に確実に伝達するためには、モルタル等の硬化性材料を隙間なく充填することが要求される。更にはブレース芯材が自由に伸縮できるようにするため、ブレース芯材に絶縁材を被覆して、ブレース芯材と充填材とを縁切りする処置が必要となるなど、高いレベルの技術、及び品質管理が必要となる。その結果、工程が煩雑となって充填作業自体に手間がかかる。
しかもブレース芯材に、充填剤の重さが加わることから、部材の全体重量が大きく増加する。その結果、部材製造・物流の作業性が低下するとともにスペースの狭い施工現場での荷扱いが特にやり難く、更には上階への部材搬入の際、荷役機械の設置が必要となるため能率が低下し、他方作業者の負荷が大きく労働障害を発生する恐れもある。
本発明は、主補剛材の受板部と副補剛材のウェブとで前記ブレース芯材を挟着してブレース芯材の座屈を抑制することを基本とし、構造がシンプル化でき、軽量で機能的な座屈拘束ブレース、及びこの座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームの提供を課題としている。
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材と略同じ長さを有し、前記ブレース芯材に外挿する補剛材とを具え、前記補剛材は、ブレース芯材に向き合う受板部を有する主補剛材と、断面コ字状をなし、前記主補剛材の受板部を覆って主補剛材と固着する副補剛材とからなり、前記主補剛材の受板部は、幅方向の中央部分が分離して形成され、主補剛材の受板部と副補剛材のウェブとで前記ブレース芯材を挟着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする。
請求項2に係る発明では、主補剛材は、前記受板部を含む4つの平板部が前記中央部分を除いて連続した角筒状をなし、前記主補剛材、及び副補剛材は、金属を用いて形成されるとともに、受板部を挟んで向き合う一対の平板部に副補剛材の双方のフランジを溶着して、主補剛材と副補剛材とを固着することを特徴とする。
請求項3に係る発明では、前記ブレース芯材は、メッキ仕上げされていることを特徴とする。
本発明の耐力フレームは、請求項1〜の何れかに記載の座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームであって、矩形状の外周枠と、この外周枠の内側に張り出した取付プレートを有し、座屈拘束ブレースを外周枠の内側に配するとともに、ブレース芯材の両端部を、各々取付プレートに固着したことを特徴とする。
請求項1に係る発明においては、曲げ剛性を向上させて座屈防止を図る主補剛材と副補剛材とで前記ブレース芯材を挟着して構成することから、ブレース芯材の剛性を改善して座屈防止を図る為に直接的に必要なもの以外には、何ら部品を用いることがないため、軽量で機能的な座屈拘束ブレースが得られる。しかも主補剛材の受板部と副補剛材のウェブとで前記ブレース芯材を挟着していることから、ブレース芯材の圧縮力に対する剛性が効果的に補強されて座屈の発生を確実に抑制できる。さらに、主補剛材の受板部の幅方向の中央部分が分離していると、2つに分かれた受板部によって副補剛材との間で弾性を効かせてブレース芯材を挟着できるため、振動による接触音を抑制できるとともに、ブレース芯材を適度なバネ力で挟着できる。
請求項2に係る発明のように、受板部を挟んで向き合う一対の平板部に副補剛材の双方のフランジを溶着し、固着される主補剛材の受板部と副補剛材のウェブとでブレース芯材を挟着すると、ブレース芯材を長手方向にズレ可能にしかも座屈を有効に抑制しつつ補強することができる。さらには溶接された主補剛材、及び副補剛材は堅牢に一体化されることから、圧縮力がかかる際のブレース芯材の座屈変形を確実に抑制できる。
請求項に係る発明のように、メッキ仕上げしたブレース芯材を用いると、ブレース芯材の伸縮時に、主補剛材、副補剛材との間に滑らかなズレを生じることから、ブレース芯材による地震エネルギー吸収効果を低減させることなく発揮できる。
請求項4に記載の本発明の耐力フレームは、矩形状の外周枠の内側に張り出して設けた取付プレートに、座屈拘束ブレースのブレース芯材の両端部を固着していることから、外周枠に負荷する地震時の水平力が、ブレース芯材によって確実に支持できるとともに、ブレース芯材の伸縮により、地震エネルギーを熱エネルギーに変換して有効に減衰できる。従って、耐力フレームを取り付けた建築架構体は、その耐力フレームにより水平耐力を向上しつつ、優れた制震機能を発揮できる。
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、座屈拘束ブレース1は、長手方向に作用する引張、圧縮両方向の軸力を支持するブレース芯材2と、このブレース芯材2を略同じ長さを有し、ブレース芯材2に外挿する補剛材3とを具え、更にこの補剛材3は、主補剛材5と副補剛材6とを含み構成される。
前記ブレース芯材2は、長尺板状をなし、幅寸法が例えば、20〜100mm程度、本形態では44mmとし、厚さ寸法が例えば、3〜15mm程度、本形態では6mmに形成されている。長さ寸法はブレース芯材2を取付ける構造体のサイズに応じて適宜設定されるが、本形態では1300mmのものが例示される。
ブレース芯材2は、通常炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼などの鉄鋼材料が好適に用いられる。さらに本形態のブレース芯材2には、メッキ仕上げが施されている。メッキ仕上げは、0.1〜5μ程度の金属被膜を設けたもので、金属として亜鉛、錫、鉛など防食メッキの他、硬質クロムメッキが好適に採用される。メッキ手段としては、電気メッキ、化学変化による化学メッキ、溶融メッキ、蒸着メッキなどから基材、目的によって選ぶことができる。このようにブレース芯材2をメッキ仕上げすると、ブレース芯材2が伸縮する際、接触する相手方の主補剛材5、副補剛材6との間でスムースな滑りを生じることから、ブレース芯材2がフリーに伸縮できて地震エネルギーの吸収効果を充分発揮できる点で好ましい。
前記主補剛材5は図2に示すように、ブレース芯材2に向き合う平板状の受板部4を有し、本形態では、この受板部4を含んだ4つの平板部8が各々直角に折れ曲がって連続した角筒状をなすものが例示される。しかも本形態の主補剛材5は、前記受板部4が幅方向の中央部分で分離するとともに、一定幅で欠如したものが例示される。このように、受板部4としては、途切れなく連続した平板以外に、同一平面上に並びつつ複数の板片に分割されたものも含まれる。
主補剛材5としてはこれ以外にも、断面形状が長矩形、三角形、正多角形などの角筒体、或いは円筒体など筒状体のほか、断面T字状、L字状、コ字状など各種の断面形状の長尺材を用いることができる。また本形態の主補剛材5には金属が用いられ、ブレース芯材2と同様、炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼を含む鉄鋼材料が好適に用いられる。
前記副補剛材6は、前記主補剛材5の受板部4に向き合うウェブ7、及びこのウェブ7の両側から直角に折れ曲がる一対のフランジ9、9とで断面コ字状に形成される。また本形態の副補剛材6は、主補剛材5と同様に炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼などの金属が用いられる。
フランジ9を主補剛材5側に向けた副補剛材6は、主補剛材5の受板部4との間にブレース芯材2を挟むとともに、受板部4を覆いながら主補剛材5に外嵌している。そして本形態では、副補剛材6のフランジ9先端と主補剛材5の受板部4を挟んで向き合う一対の平板部8、8とが、隅肉溶接によって固着されている。このときブレース芯材2は、受板部4と副補剛材6のウェブ7の間で、隙間なく挟着されている。従って、受板部4と副補剛材6の間のブレース芯材2は、長手方向にズレ可能に支持され、しかも圧縮力が作用した際に生じ易い面外方向への座屈変形が、受板部4及び副補剛材6に挟まれることにより安定して支持されることから、座屈発生を確実に防止できる。このようにして補強されるブレース芯材2自体は、比較的小断面のものを使用できることから、地震荷重による引張力、圧縮力を受けて柔軟に伸縮できるため、地震エネルギーが熱エネルギーに変換され、その結果制震効果が大きく発揮される。また溶着された主補剛材5、及び副補剛材6が一体化されて堅牢な構造体を形成し、前記ブレース芯材2の座屈変形を確実に抑制することから、耐震性能において高い信頼性が得られる。
しかも本形態の受板部4は、前記の如く幅方向の中央部分を分離して構成している。そのため、2つに分かれた受板部4と副補剛材6との間で挟着するブレース芯材2は、金属材料が持つネバリのある弾性力を充分発揮して支持されることから、地震エネルギーを一層効果的に吸収できるとともに、地震、交通振動などによる接触音を抑制できる点で好ましい。
また座屈拘束ブレース1は、ブレース芯材2の座屈強度を補強するため、硬化性の充填剤などを一切使用することなく、主補剛材5と副補剛材6とで前記ブレース芯材2を直接挟着することによって座屈補強している。従ってブレース芯材2の挟着部材以外には、何ら部品を用いることがないため、軽量で機能的な座屈拘束ブレースが得られる。
図7(A)(B)は、各々座屈拘束ブレースの他の実施形態を例示している。以下異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要構成に同じ符号を付すだけとする。図7(A)に示す座屈拘束ブレース1は、主補剛材5が副補剛材6のフランジ9、9間に内嵌しうる大きさの溝形状をなす。そして副補剛材6のフランジ9間に主補剛材5を嵌合することにより副補剛材6のウェブ7と主補剛材のウェブ23からなる受板部4とでブレース芯材2を挟着し、その状態において、主補剛材5のフランジ24の外面に副補剛材6のフランジ9の先端部を溶着することにより主補剛材5及び副補剛材6を固着している。
図7(B)に示す座屈拘束ブレース1の主補剛材5は、受板部4を構成する長板状の主板25と、この主板25の幅方向中央部に垂直に接する脚板26とを一体化した断面T字状の長尺材によって構成される。前記主板25の幅は、副補剛材6のフランジ9の間隙と略同寸に形成される。そして副補剛材6のフランジ9間に主補剛材5の主板25を嵌合することにより副補剛材6のウェブ7と主補剛材の主板25からなる受板部4とでブレース芯材2を挟着し、その状態において、主補剛材5の主板25の両端部を副補剛材6のフランジ24の内面に溶着して主補剛材5及び副補剛材6を固着している。
本発明の耐力フレームは、前記の如く形成された座屈拘束ブレース1を構成部材として含むものであり、建築架構体に取付けることにより、水平耐力を負担して耐震強度を向上する。また耐力フレームは図3に示すように矩形状の外周枠10と、この外周枠10の内側に張り出して設けられた取付プレート11とを含み構成される。
前記外周枠10は上、下に水平に配される上枠10U、下枠10D及び、この上枠10U、下枠10Dの左右両端部間を繋ぐ垂直な竪枠10V、10Vとからなり、各枠材端部相互が固着され、縦長の矩形状をなす。各々の枠材は断面正方形の角筒状をなし、本形態では50mm角の鋼管を用いている。
図4に示すように、竪枠10Vの上端部と上枠10Uの側端部は、双方の枠材端部に形成したスリットに上のプレート27を嵌合するとともに溶接して固着している。同様に図6に示すように、竪枠10Vの下端部と下枠10Dの側端部とを、下のプレート28を介して固着している。更に前記上のプレート27の上側端部には、水平な上取付板29を固着している。また竪枠10V下部に設けた下開口のコ字材21及び下のプレート28下部に、水平な下取付板22を固着している。尚上取付板29にはネジ孔30が穿設され、梁(図示せず)に挿通された取付ボルト31をこのネジ孔30に螺着して、耐力フレームの上部を固着できる。他方下取付板22には挿通孔32が穿設され、この挿通孔32に挿通する取付ボルト(図示せず)を用いて耐力フレーム下部を土台、梁などに固着できる。
更に図3、5に示すように、一方の竪枠10Vの略中間高さ位置に、内側に向いた縦長の中間のプレート34が溶着される。
耐力フレームに使用される座屈拘束ブレースは図1に示すように、副補剛材6の両端部からブレース芯材2の両端部が各々20〜100mm程度食み出す程度に長く形成されている。また副補剛材6のウェブ7両端部には、U字状に切欠した回避部36が形成され、主補剛材5の両端部は、副補剛材6側が長くのびたテーパ状に形成される。
本形態では、外周枠10の内側に、くの字状に一対の座屈拘束ブレースが配置され、前記上のプレート27と中間のプレート34との間、及び中間のプレート34と下のプレート28との間に各々が架け渡される。そして上、下のプレート27、28及び中間のプレート34に斜め方向に線状に形成された切込みに、ブレース芯材2の端部を嵌合するとともに溶接してブレース芯材2の両端を固着している。従って建築架構体に取付けられることにより外周枠10に掛かる地震時の水平力を、ブレース芯材2によって確実に支持することができる。更にはブレース芯材2が主補剛材5及び副補剛材6に支持されることから座屈を生じることなく伸縮するため、地震エネルギーが熱エネルギーに変換されて効果的に減衰する。このように、耐力フレームを取り付けた建築架構体は、耐力フレームによって水平耐力を向上しつつも、同時に優れた制震機能を発揮することができる。
なお本形態では、前記上、下のプレート27、28の外周枠10の内側の領域、及び中間のプレート34が、ブレース芯材2の端部を固着する取付プレート11を構成している。更に前記副補剛材6の回避部36によって、座屈拘束ブレースと取付プレート11との干渉を回避し、前記副補剛材6の端部をテーパ状に形成することにより、竪枠10Vとの干渉を防止している。
図8、9に示す耐力フレームに取付けた座屈拘束ブレースは、ブレース芯材2の両面側に沿って配された一対の溝形材37、37を、この溝形材37、37を両側から挟んで向き合う長尺板38、38に溶着することにより溝形材37及び長尺板38を一体化し、その結果溝形材37、37の間で、ブレース芯材2をズレ可能な状態に挟着している。
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
本発明の座屈拘束ブレースの一実施の形態を例示する斜視図である。 その断面図である。 本発明の耐力フレームの一実施の形態を例示する斜視図である。 その要部拡大斜視図である。 異なる要部の拡大斜視図である。 更に異なる要部の拡大斜視図である。 (A)(B)は各々異なる座屈拘束ブレースの実施形態を例示する断面図である。 他の耐力フレームの斜視図である。 その要部拡大斜視図である。
符号の説明
1 座屈拘束ブレース
2 ブレース芯材
3 補剛材
4 受板部
5 主補剛材
6 副補剛材
7 ウェブ
8 平板部
9 フランジ
10 外周枠
11 取付プレート

Claims (4)

  1. 軸力を負担する長尺板状のブレース芯材と、このブレース芯材と略同じ長さを有し、前記ブレース芯材に外挿する補剛材とを具え、
    前記補剛材は、ブレース芯材に向き合う受板部を有する主補剛材と、断面コ字状をなし、前記主補剛材の受板部を覆って主補剛材と固着する副補剛材とからなり、
    前記主補剛材の受板部は、幅方向の中央部分が分離して形成され、
    主補剛材の受板部と副補剛材のウェブとで前記ブレース芯材を挟着してブレース芯材の座屈を抑制することを特徴とする座屈拘束ブレース。
  2. 主補剛材は、前記受板部を含む4つの平板部が前記中央部分を除いて連続した角筒状をなし、
    前記主補剛材、及び副補剛材は、金属を用いて形成されるとともに、受板部を挟んで向き合う一対の平板部に副補剛材の双方のフランジを溶着して、主補剛材と副補剛材とを固着することを特徴とする請求項1記載の座屈拘束ブレース。
  3. 前記ブレース芯材は、メッキ仕上げされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の座屈拘束ブレース。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の座屈拘束ブレースを構成部材として用いた耐力フレームであって、
    矩形状の外周枠と、この外周枠の内側に張り出した取付プレートを有し、
    座屈拘束ブレースを外周枠の内側に配するとともに、ブレース芯材の両端部を、各々取付プレートに固着したことを特徴とする耐力フレーム。
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