JP4530766B2 - 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受 - Google Patents
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このような従来例は、回転軸に嵌合された歯付ローターを、ナックルに取付られた回転検出センサで感知検出する構造を持ち、使われている軸受は、その側部に独立して設けられたシール装置によって、水分あるいは異物の侵入から守られる。
この磁性粉と非磁性金属粉を混合させた焼結体からなる磁気エンコーダは、従来のゴム磁石製のものに比べて、磁性粉の比率を高くすることができて、単位体積当たりの磁力を大きくでき、これにより検出感度の向上,薄肉化が可能になる。また、磁性粉のみを焼結したものに比べて、バインダとなる非磁性金属粉の存在のために割れ難い。表面の硬度について、ゴム磁石に比べて硬く、損傷し難いため、耐久性,信頼性が向上する。
特許文献2に開示される磁気エンコーダのように芯金で支持する多極磁石を焼結体としたものでは、感度向上、薄肉化が可能で、表面硬度が硬くて損傷し難いものとなる。バインダとなる非磁性金属粉の存在のために、比較的割れも生じ難い。しかし、割れ防止性について十分ではなく、磁気エンコーダを例えば車輪用軸受の内輪に圧入固定する際に、取り扱いを注意しないと多極磁石にひび状の損傷が発生する場合がある。多極磁石にひび状の損傷が生じると、錆の発生,ピッチ精度の低下につながり、センシング機能が低下する恐れが有る。
この構成の場合、多極磁石に、非磁性金属粉のバインダを混合させた焼結体を用いたため、ゴム磁石等に比べて薄肉化、高感度化、表面の傷付き難さが得られる。焼結体の不利な面である圧入時の割れについては、バインダの粒径を40μm以下とし、前記焼結体の密度を6.6g/cm3 以上としため、従来の焼結体製のものに比べて、限界締め代が大きくできて、圧入固定するときに多極磁石にひび状の損傷が発生することが回避されるので取り扱いが容易になる。このため、割れに伴う錆の発生が防止され、またひび状の損傷が発生しないことによりピッチ精度が維持され、高精度で信頼性高い回転検出が可能となる。
バインダの粒径は、このように小さな方が、磁性粉の粒子同士を結合させるバインダとしての機能に優れ、限界締め代をさらに大きくできる。そのため、圧入固定するときに多極磁石にひび状の損傷が発生することを、さらに確実に回避することができるので取り扱いが容易になる。
磁性粉:バインダ=55:45〜80:20とすることが好ましい。
バインダの配合比をこれよりも多くすると、磁性体が少なくなることから、磁力を十分に得ることが難しくなり、感度向上を図り難くなる。バインダの配合比をこれよりも少なくすると、磁性粉の粒子間を結合するバインダとしての機能が十分に得られず、圧入作業時の割れ防止が不十分となる。
磁性粉とバインダの配合比を上記の55:45〜80:20の範囲とすると、磁気エンコーダの多極磁石とこれに対向配置する磁気センサとの間のエアギャップを同一とした場合に、従来のゴム磁石製の例に比べて磁束密度が増加し、同一の磁束密度を得るためのエアギャップは、従来のゴム磁石製の例に比べて大きくなる。このため、この磁気エンコーダと組み合わせて使用される磁気センサの限界検出値を、従来のゴム磁石製の例に比べて増大させることができ、それだけ磁気センサのコストを低減できる。また、磁気エンコーダと磁気センサの間のエアギャップを大きくできることから、回転検出装置周辺の設計の自由度も増す。圧入時の多極磁石の割れも、従来の焼結磁石製の磁気エンコーダに比べて発生し難くなる。
磁性粉:バインダ=70:30、
程度である。
210e-1.5x <y<320e-1.5x
を満たすものであっても良い。
より好ましくは、次式
250e-1.5x <y<320e-1.5x
を満たす範囲である。
磁束密度yが上記210e-1.5x 〜320e-1.5x の範囲であると、従来の焼結体製のものに比べて、限界締め代が大きくできて、圧入等で固定するときに多極磁石に割れやひび状の損傷が発生することが回避され、かつゴム磁石等に比べて薄肉化、高感度化、表面の傷付き難さが得られる。磁束密度yが250e-1.5x であると、より一層の薄肉化、高感度化が得られる。
カチオン塗装による防食皮膜を設けた場合、塩泥水を被っても磁気エンコーダが腐食することが回避でき、腐食に起因する磁気特性の劣化を防止できる。カチオン塗装は、防錆機能を考慮すると、膜厚を15μm未満とすることは推奨されない。またカチオン塗装の防食皮膜が設けられていると、この焼結体に比べて皮膜が弾性変形を生じ易いことから、限界締め代が向上し、設計締め代に対する大きな安全率を見込むことができる。膜厚は、これらのため厚い方が好ましいが、カチオン塗装は電着塗装の一種であるため、35μmを超える膜厚とすることは難しい。したがって、より好ましい防食皮膜の塗膜厚さは30〜35μmである。
車輪用軸受は、路面における塵埃,石跳、塩泥水や、温度変化等の厳しい環境下に曝される。また、回転検出器を設ける余裕空間が少なく、その一方で、快適で安全な車両走行のために、精度の良い回転検出が求められる。このため、この発明の磁気エンコーダにおける焼結体の採用による薄肉化、高感度化、表面の傷付き難さを得ながら、焼結体の課題である圧入固定時のひびの発生が回避できて、錆の発生防止、ピッチ精度維持による高精度な回転検出が得られるという利点が効果的に発揮される。
この発明の車輪用軸受は、この発明の磁気エンコーダを備えたため、高精度の車輪回転検出が安定して行える。
このバインダ最大配合の実施例では、磁性粉:バインダ=55:45である。これに対して、実施例2では、磁性粉:バインダ=70:30、である。
実施例3では、磁性粉:バインダ=80:20である。
同図から、同一エアギャップにおいて、実施例2の配合比の磁気エンコーダ10では、バインダ最大配合例(実施例1)に比べて磁束密度が約25%増加し、実施例3の配合比の磁気エンコーダ10では、ゴム磁石同等例(バインダ最大配合例)に比べて磁束密度が約35%増加していることが分かる。また、この磁束密度の増加分は、磁性粉の配合量の増加分とほぼ同等であることが分かる。また、同一の磁束密度を得るためのエアギャップは、バインダ最大配合例に比べて実施例2の方が大きくなり、さらに実施例2よりも実施例3の方が大きくなることがわかる。
ゴムエンコーダ :y=210e-1.5x
焼結体エンコーダ(実施例1…ゴムエンコーダ同等品) :y=250e-1.5x
焼結体エンコーダ(実施例2…磁気特性向上品A) :y=320e-1.5x
焼結体エンコーダ(実施例3…磁気特性向上品B) :y=350e-1.5x
エアギャップxと磁束密度yが関係が、210e-1.5x <y<320e-1.5x の範囲(ゴムエンコーダと実施例2の範囲に相当)であると、従来の焼結体製のものに比べて、限界締め代が大きくできて、圧入等で固定するときに多極磁石に割れやひび状の損傷が発生することが回避され、かつゴム磁石等に比べて薄肉化、高感度化、表面の傷付き難さが得られる。250e-1.5x <y<320e-1.5x の範囲(実施例1と実施例2の範囲)であると、より一層の薄肉化、高感度化が得られる。
方部材1および外方部材2は、転動体3の転走面1a,2aを有しており、各転走面1a,2aは溝状に形成されている。内方部材1および外方部材2は、各々転動体3を介して互いに回転自在となった内周側の部材および外周側の部材のことであり、軸受内輪および軸受外輪の単独であっても、これら軸受内輪や軸受外輪と別の部品とが組み合わさった組立部材であっても良い。また、内方部材1は、軸であっても良い。転動体3は、ボールまたは円錐ころからなり、この例ではボールが用いられている。
また、外方部材が回転側部材となる車輪用軸受では、外方部材に磁気エンコーダを取付ける。
2…外方部材
1a,2a…転走面
3…転動体
5,13…シール装置
10…磁気エンコーダ
11…芯金(第1のシール板)
11b…立板部
12…第2のシール板
14…多極磁石
22…防食皮膜
Claims (9)
- 円周方向に交互に磁極を形成したリング状の多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた磁気エンコーダにおいて、
上記多極磁石が、磁性粉と非磁性金属粉からなるバインダとの混合粉を加圧成形してその圧粉体を焼結させた焼結体であって、前記バインダの粒径が40μm以下であり、前記焼結体の密度が6.6g/cm3 以上であることを特徴とする磁気エンコーダ。 - 請求項1において、前記バインダの粒径が20μm以下である磁気エンコーダ。
- 請求項1または請求項2において、磁性粉とバインダとの配合比を、
磁性粉:バインダ=55:45〜80:20とした磁気エンコーダ。 - 請求項3において、磁性粉とバインダとの配合比を、ほぼ次の比、
磁性粉:バインダ=70:30、
とした磁気エンコーダ。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、上記多極磁石の表面に対するエアギャップx(mm)がx≧0.5の場合に、上記エアギャップxと上記多極磁石の磁束密度y(mT)の関係が、次式
210e-1.5x <y<320e-1.5x
を満たす磁気エンコーダ。 - 請求項5において、上記エアギャップx(mm)がx≧0.5の場合に、上記エアギャップと多極磁石の磁束密度y(mT)の関係が、次式
250e-1.5x <y<320e-1.5x
を満たす磁気エンコーダ。 - 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、磁気エンコーダの表面の全体にカチオン塗装による防食皮膜を設け、この防食皮膜の塗膜厚さを15〜35μmとした磁気エンコーダ。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の磁気エンコーダを備えた車輪用軸受。
- 請求項8において、上記車輪用軸受が、複列の転走面を内周面に形成した外方部材と、この外方部材の転走面と対向する転走面を形成した内方部材と、これら両転走面間に介在させた複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受であって、
上記外方部材と内方部材との間の環状空間を密閉するシール装置を設け、このシール装置は、上記外方部材または内方部材のうちの回転側部材に嵌合された断面L字状の第1のシール板と、この第1のシール板に対向し、上記外方部材または内方部材のうちの固定側部材に嵌合した断面L字状の第2のシール板とからなり、上記第1のシール板に摺接する複数のリップを有する弾性部材が前記第2のシール板に取付けられ、上記第1のシール板が上記磁気エンコーダにおける芯金となり、その立板部に重ねて上記多極磁石が設けられる車輪用軸受。
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