JP2004085533A - 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受 - Google Patents

磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受 Download PDF

Info

Publication number
JP2004085533A
JP2004085533A JP2003012709A JP2003012709A JP2004085533A JP 2004085533 A JP2004085533 A JP 2004085533A JP 2003012709 A JP2003012709 A JP 2003012709A JP 2003012709 A JP2003012709 A JP 2003012709A JP 2004085533 A JP2004085533 A JP 2004085533A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic
magnetic encoder
powder
magnet
seal plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003012709A
Other languages
English (en)
Inventor
Tatsuo Nakajima
中島 達雄
Akinari Ohira
大平 晃也
Arihito Matsui
松井 有人
Kazutoyo Murakami
村上 和豊
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NTN Corp, NTN Toyo Bearing Co Ltd filed Critical NTN Corp
Priority to JP2003012709A priority Critical patent/JP2004085533A/ja
Publication of JP2004085533A publication Critical patent/JP2004085533A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】温度変化の大きな過酷な環境下で使用されても、多極磁石の損傷が生じ難く、また芯金と多極磁石の確実な固定が維持される磁気エンコーダを提供する。
【解決手段】この磁気エンコーダ10は、円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石14と、芯金14とを備える。多極磁石14の線膨張係数は、0.5×10−5以上で9.0×10−5以下とする。この線膨張係数の範囲の材質として、多極磁石14は、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体を用いることができる。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、相対回転する軸受部の回転検出装置等に用いられる磁気エンコーダ、およびそれを備えた車輪用軸受に関し、例えば自動車のアンチロックブレーキシステムにおける前後の車輪回転数を検出する回転検出装置に装着されるベアリングシールの構成部品とされる磁気エンコーダに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車のスキッドを防止するためのアンチスキッド用回転検出装置として、次のような構造が多く用いられている。すなわち、前記回転検出装置は歯付ローターと感知センサからなっており、その際、軸受を密封するシール装置よりそれぞれ離間させて配置し、一つの独立した回転検出装置を構成しているものが一般的である。
このような従来例は、回転軸に嵌合された歯付ローターを、ナックルに取付られた回転検出センサで感知検出する構造を持ち、使われている軸受は、その側部に独立して設けられたシール装置によって、水分あるいは異物の侵入から守られる。
【0003】
その他の例として特許文献1には、回転検出装置の装着スペースを削減せしめ感知性能を飛躍的に向上させることを目的として、車輪回転検出のための回転検出装置を有したベアリングシールにおいて、そこに使用するスリンガーの径方向に磁性粉の混入された弾性部材を周状に加硫成形接着し、そこに交互に磁極を配設した構造が示されている。
また、特許文献2には、軸方向の寸法を小さくし、回転部材と固定部材との間の密閉度を良好にし、容易に取り付け可能にすることを目的として、回転部材と固定部材との間がシールされ、この回転部材に回転ディスクが取り付けられ、その回転ディスクに多極化されたコーダが取り付けられたコーダ内蔵密閉構造としたものが示されている。使用するコーダは、磁性粒子を添加したエラストマーからなるものが用いられ、このコーダの側面を固定部材の側面とほぼ同一平面としたシール手段とされている。
【0004】
磁性粉や磁性粒子を含有するプラスチック(プラストマー) 製のコーダは、やはり従来の射出成形や圧縮成形等のように、製品形状に適応した金型を使用して賦形したり、つまり金型どおりの形に成形したり、 T形のダイスを用いた押出し成形やカレンダー成形のようなシート成形でシートを成形し打ち抜き加工などにより製品形状にして、その後、金属基板上に接着剤などで接着固定し製作してもよい。またこの場合、インサート成形のようにあらかじめ金型内に金属基板を組込んでおき、その後、溶融樹脂を流し入れて接着工程を同時加工して製作してもよい。
【0005】
【特許文献1】
特許第2816783号公報
【特許文献2】
公開平6−281018
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般の磁性粒子を添加したエラストマーやプラストマーの多極磁石では、芯金の材質となる金属材料との線膨張係数の差が大きいため、高温や低温環境下で使用されたときの寸法変化量の差が大きくなる。そのため、多極磁石の損傷の恐れがあり、また多極磁石と芯金の固定の確保が難しくなる。
自動車の車輪用軸受に上記磁気エンコーダを使用する場合、車輪用軸受は路面の環境下に曝され、極低温の環境で使用されたり、長時間の運転で高温になったりし、上記磁気エンコーダは厳しい温度変化の環境下に置かれることになる。そのため、上記の多極磁石の損傷の恐れが大きく、また多極磁石と芯金の固定の確保がより難しくなる。
【0007】
また、磁性粒子を添加したエラストマーやプラストマーの多極磁石では、次のような課題もある。上記従来例のうち、特許文献1号や特許文献2に示されるベアリングシールにおいては、そこに使用するスリンガーの径方向に磁性粉の混入された弾性部材を周状に加硫成形接着したり、または多極化されたコーダが取り付けられたコーダ内蔵密閉構造としてそのコーダを磁性粒子が添加したエラストマーにしようとすると、磁性粉や磁性粒子を保持するためのバインダとなるエラストマーや弾性部材成分が必要になる。しかしエラストマーや弾性部材成分をバインダに用いる場合、コーダ形状に賦形前に必ず磁性粉や磁性粒子とエラストマーや弾性部材の混練による分散工程が必要になるが、この工程ではコーダ中のバインダ成分に対する磁性粉や磁性粒子の相対含有率(体積分率)が上げにくいため、磁気センサに安定してセンシングされる磁力を得ようとするにはコーダの厚み寸法を厚くする必要があった。
【0008】
また、 磁性粉や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダの成形は、 射出成形や圧縮成形等のように製品形状に適応した金型を使用して賦形し、また加硫工程が必要な場合は金型内に必要とされる加硫時間だけ、加圧しながら保持しなければならず、生産上多くの工程を必要とした。
さらに磁性粉や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダは、例えば車輪回転検出のための回転検出装置を有したベアリングシールにおいて、回転検出装置の装着スペースを削減せしめ、かつ感知性能を飛躍的に向上させるために、そこに使用するスリンガーの軸方向で近接かつ相対した部位に感知センサを配置しなければならない。しかしこの場合、車両走行中に回転側のベアリングシール表面と固定側の感知センサ表面の間隙に、砂粒などの異物粒子が侵入し噛み込まれると、弾性部材やエラストマー製のコーダ表面は摩耗などによる激しい損傷が認められることがあった。
【0009】
磁性粉や磁性粒子の含有するプラスチック(プラストマー)製のコーダの場合、上述した従来の射出成形や圧縮成形やT形ダイスを用いた押出し成形やカレンダー成形のようなシート成形、およびインサート成形で製造しようとすると、やはり磁性粉や磁性粒子を保持するためのバインダとなる合成樹脂成分が必要になる。しかし合成樹脂成分をバインダに用いる場合も、従来はエラストマーなどと同様に、コーダ形状に賦形前に必ず磁性粉や磁性粒子とプラストマーや弾性部材の混練による分散工程が必要になる。 やはりこの工程では、コーダ中のバインダ成分に対する磁性粉や磁性粒子の相対含有率(体積分率)が上げにくいため、磁気センサに安定してセンシングされる磁力を得ようとするにはコーダの厚み寸法を厚くする必要があった。また、このように磁性粉や磁性粒子とプラストマーや弾性部材を従来の製造法で混練して製作した成形前材料を、金型内に射出( インジェクション)したり圧縮(コンプレッション)してコーダに賦形する時、またインサート成形などで賦形する時に、材料中に含有される磁性粒子成分は金属の酸化物であるため硬くて量産製造的には金型や成形機の摩耗が問題となり、また磁性粒子成分の含有が高い成形前材料は溶融粘度が高くなり、成形圧力や金型型締力などを上げるなど、成形上の負荷が大きくなるなどの問題があった。
【0010】
T形ダイスを用いた押出し成形やカレンダー成形のようなシート成形の場合でも、材料中に含有される磁性粒子成分は金属酸化物で硬いため、量産製造的にはT形ダイスやカレンダー成形機のロールの摩耗が問題となった。
【0011】
この発明の目的は、温度変化の大きな過酷な環境下で使用されても、多極磁石の損傷が生じ難く、また芯金と多極磁石の確実な固定が維持される磁気エンコーダを提供することである。
この発明の他の目的は、薄肉化が可能で、かつ耐摩耗性に優れ、生産性にも優れる磁気エンコーダを提供することである。
この発明の他の目的は、コンパクトな構成で回転検出が行え、かつ温度変化による磁気エンコーダの多極磁石の損傷や芯金に対する剥がれ等の問題のない車輪用軸受を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明の磁気エンコーダは、円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石の線膨張係数の範囲を次の所定の範囲としたことを特徴とする。上記所定の範囲は、0.5×10−5以上で9.0×10−5以下の範囲とする。より望ましくは0.8×10−5以上で7×10−5以下、さらに望ましくは0.9×10−5以上で5×10−5以下である。多極磁石は、例えば円環状等の環状とされ、または円盤状とされる。上記芯金も円環状等の環状とされ、または円盤状とされる。
芯金の材質となる金属材料の線膨張係数は、炭素鋼では1.1×10−5、ステンレス鋼(JIS規格のSUS430の場合)では1.04×10−5である。したがって、多極磁石の線膨張係数が上記所定範囲の下限値である0.5×10−5未満であると、芯金の1/2以下の線膨張係数となる。また、多極磁石の線膨張係数が上記所定範囲の上限値である9.0×10−5を超えると、芯金の線膨張係数の略9〜10倍以上になる。このように、多極磁石の線膨張係数が上記の所定範囲外であると、芯金の材質となる金属材料との線膨張係数の差が大きくて、高温や低温環境下で使用されたときの寸法変化量の差が大きくなり過ぎる。そのため、多極磁石の損傷の恐れがあり、また多極磁石と芯金の固定の確保が難しくなる。多極磁石の線膨張係数が上記の所定範囲内であると、このような温度変化に対する多極磁石の損傷が生じ難く、また芯金と多極磁石の確実な固定が維持される。線膨張係数が上記所定範囲内となる多極磁石は、一般の磁性粉を含むエラストマーやプラストマー、すなわちゴム磁石やプラスチック磁石では得ることが難しいが、本発明者は、次のような焼結体とすることで、上記所定範囲の線膨張係数が得られることを見いだした。
【0013】
この発明において、上記多極磁石は、線膨張係数が上記所定範囲の材質のものであれば、特に材質を問わないが、上記多極磁石を、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体としても良い。上記混合粉は2種以上の磁性粉を含むものであっても良く、また2種以上の非磁性金属粉を含むものであっても良い。このような焼結体製とすると、線膨張係数が上記所定範囲の0.5×10−5以上で9.0×10−5以下のものを得ることができる。
この焼結体製とすると、次の各利点も得られる。
▲1▼.従来のエラストマーやプラストマーに比べて磁性粉比率を高くすることができ、そのため、単位体積あたりの磁力を大きくすることができる。これにより検出感度の向上、薄肉化が可能になる。
▲2▼.従来の焼結磁石である磁性粉のみを焼結したものに比べて、バインダとなる非磁性金属粉の存在のために割れ難い。
▲3▼.従来のエラストマー等に比べて表面が硬いため、耐摩耗性に優れ、また損傷し難い。
▲4▼.従来のエラストマー等に比べて、生産性に優れる。
【0014】
これらの利点が得られる具体的理由の例を説明する。上記磁性粉と非磁性金属粉とは、予め決められた配合比で粉体混合機を用いて混合し、この混合粉を常温下、金型内で加圧成形して圧粉体を得る。
このとき、非磁性金属粉をバインダとして磁性粉を混入した混合磁性粉からなる焼結体は、その非磁性金属粉と磁性粉の組成比を調整しながら粉体混合機で分散させた粉体同士のドライブレンドができるため、焼結体中の磁性粉の相対的な含有率(体積分率)を上げられる。このため、磁気センサに安定してセンシングされる磁力が容易に得られ、多極磁石を厚くする必要がない。
しかも、多極磁石とする焼結体の製造においても、粉体同士のドライブレンドによる混合粉の焼結成形法は、従来のエラストマーや弾性部材の場合の射出成形や圧縮成形に比べて加硫工程などがなく、また成形上の負荷が少ないため、生産工程を大幅に簡略化することができる。また、焼結加工での圧粉体の成形の場合、エラストマーや弾性部材の射出成形や圧縮成形に比べ、金型の摩耗などの問題は生じない。
また、この多極磁石とする焼結体の芯金への取付けは、簡便な加締加工や、圧入加工等の機械的固定法で行えることから、たとえ高低温環境下で過酷な条件にさらされても信頼性を保持することができる。
【0015】
上記芯金の材質は、例えば鋼板製とする。特に、ステンス鋼板製が、錆の発生のない点で好ましい。芯金をこのような鋼板製とした場合に、上記所定範囲である、0.5×10−5以上で9.0×10−5の範囲に多極磁石の線膨張係数を定めることが効果的となる。
【0016】
多極磁石の芯金への取付は、接着剤による接着であっても良く、また上記芯金の加締によって固定しても良い。特に、多極磁石が焼結体である場合は、芯金の加締による固定が、取付作業性および固定の信頼性の両方において優れたものとなる。
【0017】
上記多極磁石を上記のように磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体とする場合、この混合粉に使用する磁性粉および非磁性金属粉は、いずれも平均粒径が10μm以上150μm以下であることが良い。
これらの粉体のいずれか一方または両方の平均粒径が10μmより小さいと、圧粉体を得るときに、金型内に混合粉が流れ込み難く、所定形状の圧粉体を形成できない。これら粉体のいずれか一方または両方の平均粒径が150μmより大きいと、圧粉体強度が出ない。
【0018】
また、上記混合粉中の配合において、非磁性金属粉の体積含有率は、1vol %以上で90vol %以下であることが良い。
磁性粉でない非磁性金属粉の体積含有率が1vol %よりも少ないと、金属バインダとして非磁性金属粉が少ないため、焼結後得られた多極磁石は硬いが脆いものとなる。圧粉体が成形できない場合もある。磁性粉でない非磁性金属粉の体積含有率が90vol %より多いと、相対的に磁性成分が少ないため、所望される安定したセンシングの得られる磁力を確保することが難しい。
【0019】
上記混合粉の焼結前の圧粉体は、5vol %以上30vol %以下の空孔を持つものとすることが良い。空孔率が5vol %より少ない場合、成形圧力を除圧する際に原料粉の弾性変形の回復により生じるスプリングバックにより、圧粉体(グリーン体)が破損する可能性がある。また、空孔が30vol %よりも多い場合、焼結体の機械的強度が弱くなるため、芯金上に加締加工や圧入加工などで機械的に固定することが難しく、また粒子間の密着不足により、圧粉体が成形できない場合がある。
【0020】
上記多極磁石となる焼結体の板厚は、0.3mm以上でかつ5mm以下が良い。磁性粉および非磁性金属粉は高価であることから、板厚は薄い方が好ましいが、板厚が0.3mmよりも薄い場合、圧粉成形が困難である。また、厚すぎるとグリーン成形体の密度むらが発生しやすくなり、焼成後の変形が生じやすくなる。これらの点から、板厚は0.3mm〜5mmが好ましい。
【0021】
この発明の車輪用軸受は、この発明における上記いずれかの構成の磁気エンコーダを備えたものである。
車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、車両の使用される極低温の環境下となったり、長時間の連続運転等で高温になったりする。このような厳しい温度環境下において、磁気エンコーダがこの発明のものであると、多極磁石の線膨張係数が上記所定の範囲内であるため、多極磁石の損傷が生じ難く、また芯金と多極磁石の確実な固定が維持される。
このうち、多極磁石を上記焼結体としたものは、次の利点も得られる。磁気エンコーダとこれに対面させる磁気センサとの間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、この噛み込みに対して、次のように保護される。すなわち、磁性粉と非磁性金属粉とからなる焼結体の多極磁石の表面硬度は、従来の磁性粉や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための磁気エンコーダを有した車輪用軸受において、車両走行中に回転側の多極磁石の表面と固定側の磁気センサの表面との間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、多極磁石の摩耗損傷に大幅な低減効果がある。
【0022】
この発明の車輪用軸受は、軸受空間をシールするシール装置の構成要素を磁気エンコーダとしても良い。例えば、この車輪用軸受は、複列の転走面を内周面に形成した外方部材と、この外方部材の転走面と対向する転走面を形成した内方部材と、これら両転走面間に介在された複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受であって、上記外方部材と内方部材との環状空間を密封するシール装置を設けても良い。
この場合に、上記シール装置は、上記外方部材または内方部材のうちの回転側部材に嵌合される第1のシール板と、この第1のシール板に対向し、上記外方部材または内方部材のうちの固定側部材に嵌合される断面L字状の第2のシール板とからなり、上記第1のシール板の立板部に摺接するサイドリップ、および円筒部に摺接するラジアルリップが上記第2のシール板に固着され、上記第1のシール板が上記磁気エンコーダにおける芯金となり、その立板部に少なくとも一部を重ねて上記多極磁石が設けられたものであっても良い。
【0023】
上記第1のシール板は、例えば断面概ね逆Z字状とされて、上記回転側部材に嵌合される嵌合側の円筒部と、立板部と、他筒部とでなるものであっても良い。また、第1のシール板は断面L字状のものとしても良い。
【0024】
これらの構成の車輪用軸受の場合、シール装置の構成要素を磁気エンコーダとしたため、部品点数を増やすことなく、より一層コンパクトな構成で車輪の回転を検出することができる。また、このようにシール装置に磁気エンコーダを構成した場合、上記の路面環境下にさらされることによる過酷な温度環境下、および磁気エンコーダと磁気センサ間の砂粒等の噛み込みが問題となるが、上記温度環境に対して、上記と同様に、多極磁石の線膨張係数が上記所定の範囲であることで支障のないものとなる。また、上記噛み込みに対して、多極磁石が焼結体である場合は、上記と同様に多極磁石の表面硬度が硬いことにより、摩耗損傷の低減効果が得られる。また、この構成の場合、第2のシール板に固着されたサイドリップおよびラジアルリップが第1のシール板に摺接することに等により、優れたシール効果が得られる。
【0025】
第1のシール板を上記の断面概ね逆Z字状とした場合に、次の各構成としても良い。
・例えば、第1のシール板の立板部が、内周側部分と外周側部分とで互いに軸方向にずれた段付き形状を成すものであっても良い。
・また、第1のシール板の上記他筒部により、上記多極磁石を加締固定しても良い。
・第1のシール板の上記他筒部における円周方向複数箇所を突出状態に塑性変形させた塑性変形部により、多極磁石を第1のシール板に固定しても良い。この塑性変形部は、例えばステーキング等によって形成する。
・第1のシール板の上記他筒部における円周方向複数箇所に舌片状の爪部を設け、この舌片状爪部の塑性変形により、上記多極磁石を第1のシール板に固定しても良い。
【0026】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。図1に示すように、この磁気エンコーダ10は、金属製の環状の芯金11と、この芯金11の表面に周方向に沿って設けられた多極磁石14とを備える。多極磁石14は周方向に多極に磁化され、交互に磁極N,Sが形成された部材であり、多極に磁化された磁気ディスクからなる。磁極N,Sは、ピッチ円直径PCD(図2)において、所定のピッチpとなるように形成されている。この磁気エンコーダ10は、回転部材(図示せず)に取付けられ、図3に示すように多極磁石14に磁気センサ15を対面させて回転検出に使用されるものであり、磁気エンコーダ10と磁気センサ15とで回転検出装置20が構成される。同図は、磁気エンコーダ10を軸受(図示せず)のシール装置5の構成要素とした応用例を示し、磁気エンコーダ10は、軸受の回転側の軌道輪に取付けられる。シール装置5は、磁気エンコーダ10と、固定側のシール部材9とで構成される。シール装置5の具体構成については後に説明する。
【0027】
芯金11の材質となる金属は、磁性体、特に強磁性体となる金属が好ましく、例えば磁性体でかつ防錆性を有する鋼板が用いられる。このような鋼板として、フェライト系のステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)や、防錆処理された圧延鋼板等を用いることができる。
【0028】
多極磁石14は、線膨張係数が、0.5×10−5以上で9.0×10−5以下のものとされている。このような材質の多極磁石として、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体を用いている。多極磁石14の線膨張係数は、より望ましくは0.8×10−5以上で7×10−5以下、最も望ましくは0.9×10−5以上で5×10−5以下である。
芯金11の材質となる金属材料の線膨張係数は、たとえばステンレス鋼(JIS規格のSUS430)の場合、1.04×10−5であり、炭素鋼では1.1×10−5である。多極磁石14の線膨張係数が0.5×10−5より大きい場合、もしくは9×10−5より小さい場合は、芯金11の材質となる金属材料との線膨張係数の差が大きいため、高低温環境下で使用されときの寸法変化量の差が大きくなり、多極磁石14と芯金11が干渉して多極磁石14が破損する場合がある。また、多極磁石14と芯金11の固定が確保できなくなる。多極磁石14の線膨張係数が、0.5×10−5以上で9.0×10−5以下の範囲であると、上記のような問題が回避され、温度変化の大きな過酷な環境下で使用されても、多極磁石の損傷が生じ難く、また芯金と多極磁石の確実な固定が維持される。
【0029】
線膨張係数は、ゴム磁石では、おおよそ12×10−5程度となり、炭素鋼の約10倍となるが、上記焼結体とした場合は、1.62〜2.2×10−5程度となり、炭素鋼の2倍弱となる。したがって、上記の最も好ましい範囲である0.9×10−5以上で5×10−5以下という範囲にも入るものとできる。
【0030】
多極磁石14を焼結体とする場合の材質例等を説明する。多極磁石14に混入する磁性粉としては、バリウム系およびストロンチウム系などの等方性または異方性フェライト粉であっても良い。これらのフェライト粉は顆粒状粉体であっても、湿式異方性フェライトコアからなる粉砕粉であっても良い。この湿式異方性フェライトコアからなる粉砕粉を磁性粉とした場合、非磁性金属粉との混合粉を磁場中で成形された異方性のグリーン体とする必要がある。
【0031】
また、磁性粉は希土類系磁性材料であっても良い。例えば希土類系磁性材料であるサマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉やネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉のそれぞれ単独磁性粉であっても良い。また、磁性粉はマンガンアルミ(MnAl)ガスアトマイズ粉であっても良い。
【0032】
また、上記磁性粉は、サマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉、ネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉、およびマンガンアルミ(MnAl)ガスアトマイズ粉のいずれか2種以上を混合させたものであっても良い。例えば、上記磁性粉はサマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉とネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉とを混合させたもの、マンガンアルミガスアトマイズ粉とサマリウム鉄系磁性粉とを混合させたもの、およびサマリウム鉄系磁性粉とネオジウム鉄系磁性粉とマンガンアルミガスアトマイズ粉とを混合させたもの、のいずれかであっても良い。
また、例えば、フェライト分だけでは磁力が足りない場合に、フェライト粉に希土類系磁性材料であるサマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉やネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉を必要量だけ混合し、磁力向上を図りつつ安価に製作することもできる。
【0033】
また、多極磁石14を形成する非磁性金属粉には、スズ、銅、アルミ、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガンなどの粉体、または非磁性のステンレス系金属粉のいずれか単独(1種)の粉体、もしくは2種以上からなる混合した粉体、もしくは2種以上からなる合金粉末を使用することができる。
【0034】
磁性粉および非磁性金属粉はいずれも平均粒径で10μm以上150μm以下が良く、好ましくは20μm以上130μm以下が好適である。これら粉体のいずれか一方または両方の平均粒径が10μmより小さいと、混合粉にして常温下、金型内で加圧成形して圧粉体を得ようとしても、金型内にうまく混合粉が流れ込まないことがあり、所定形状の圧粉体を形成できない。また、これら粉体のいずれか一方または両方の平均粒径が150μmより大きいと、混合粉にして常温下、金型内で加圧成形して圧粉体を得ようとしても、圧粉体強度が出ないために、金型から脱型できず成形できない。
上述した平均粒径範囲の磁性粉と非磁性金属粉を予め決められた配合比で粉体混合機を用いて混合し、この混合粉を常温下、金型内で加圧成形することにより圧粉体を得る。
【0035】
多極磁石14を形成する混合粉中の配合において、磁性粉でない非磁性金属粉の体積配合率は、1vol %以上で90vol %以下が良いが、望ましくは5vol %以上85vol %以下、さらに望ましくは10vol %以上80vol %以下が良い。磁性粉でない非磁性金属粉の体積含有率が1vol %よりも少ないと、金属バインダとして非磁性金属粉が少ないため、焼結後得られた多極磁石14は、硬いが脆い。このため、後述するように、多極磁石14とする焼結体を芯金11上に加締加工や圧入加工などで機械的に固定しようとしても、割れてしまう。また、金属バインダとして少なすぎるために、圧粉体が成形できない場合がある。
磁性粉でない非磁性金属粉の体積含有率が90vol %より多いと、相対的に磁性成分が少ないため、焼結後、得られた多極磁石14の着磁強度を大きくできず、磁気エンコーダ10に所望される安定したセンシングの得られる磁力を確保することができない。
【0036】
圧粉体作成にあたり、磁性粉と非磁性金属粉の配合時に、例えば、ステアリン酸亜鉛などのような潤滑剤を添加して圧粉体成形性を改善することもできる。
これらの圧粉体(グリーン体)は、5〜30vol %の空孔を持つことが望ましい。好ましくは12〜22vol %、さらに好ましくは14〜19vol %である。空孔率が5vol %より少ない場合、成形圧力を除圧する際に原料粉の弾性変形の回復により生じるスプリングバックにより、圧粉体(グリーン体)が破損する可能性がある。また、空孔が30vol %よりも多い場合、焼結体の機械的強度が弱くなるため、後述するように、芯金11上に加締加工や圧入加工などで機械的に固定しようとしても割れてしまう。また、粒子間の密着不足により、圧粉体(グリーン体)が成形できない場合がある。
【0037】
磁性粉および非磁性金属粉は高価であることから、板厚は薄い方が好ましい。圧縮成形性およびハンドリングから、好ましい板厚は0.3mm〜5mm、さらに好ましくは0.6mm〜3mmである。板厚が0.3mmよりも薄い場合、金型内への充填が困難であり、グリーン成形体が得難い。また、得られたグリーン成形体もハンドリング時に破損してしまう可能性があるので好ましくない。一方、グリーン成形体の板厚が10mmよりも厚い場合、成形性やハンドリングは向上するが、コスト面では不利となる。また、厚すぎるとグリーン成形体の密度むらが発生しやすくなり、焼成後の変形が生じやすくなるという問題がある。これらの点から、板厚は0.3mm〜5mmが好ましい。
得られたグリーン成形体は、図4のように炉内で加熱焼結することで、ディスク形状の焼結体とされる。この炉内での加熱焼結は、大気中、電気炉で行っても良く、また真空炉により、または不活性ガスを流入しながらプッシャー炉、もしくはイナート炉で行っても良い。
【0038】
磁気エンコーダ10を形成する焼結体は、防錆処理のために、例えば図5のように防錆被膜22を施しても良い。この防錆被膜22は換言すれば防食被膜である。この防錆被膜22には、クリヤー系の高防食性塗料を用いることができる。この塗料は芯金11と焼結体間の接着剤としての効果も期待でき、また焼結多孔質体表層の空孔内部に浸入し、クリヤー塗膜成分のアンカー効果により表面で好適に保持され、長期間の使用においても防錆被膜層として良好な密着性を維持することができる。
【0039】
芯金11の形状は、種々の円環状の形状とできるが、多極磁石14を固定できる形状が好ましい。特に、加締固定や嵌合固定等の機械的な固定が行える形状が好ましい。
加締固定の場合、芯金11は、例えば図1(B)に示すように、嵌合側となる内径側の円筒部11aと、その一端から外径側へ延びる立板部11bと、外径縁の他筒部11cとでなる断面概ね逆Z字状の円環状とする。
円筒部11a、立板部11b、および他筒部11cは、鋼板等の金属板から一体にプレス成形されたものである。立板部11bは平坦に形成されており、その平坦な立板部11bの表面に重ねて多極磁石14の未着磁の焼結体を組み込み、外周縁の他筒部11cを加締めることで、芯金11の立板部11bに重なり状態に多極磁石14が固定される。上記他筒部11cは、その断面における先端側部分または略全体が、加締部となる。また、この加締部は、芯金11の円周方向の全周に渡って延び、したがって円環状となっている。多極磁石14の加締部である他筒部11cにより固定される部分は、多極磁石14の被検出面となる表面よりも凹む凹み部14aとなっていて、芯金11の加締部である他筒部11cが、多極磁石14の被検出面となる表面から突出しないようにされている。上記凹み部14aは、多極磁石14の被検出面となる表面よりも若干背面側に後退した段差部として形成されている。多極磁石14の外周縁における凹み部14aよりも裏面側の部分は、断面が円弧状の曲面とされ、この曲面部分に沿うように、他筒部11cの加締部分が形成される。加締固定は、図1(A)に断面図で示すように、多極磁石14の外周部を全周にわたって加締固定してもよい。
【0040】
多極磁石14は、芯金11に圧入により固定しても良い。その場合、例えば図6に示すように、芯金11を、内径側の円筒部11aと、その一端から外径側へ延びる立板部11b”とでなる断面L字状の円環状とする。円筒部11aと立板部11b”とは、鋼板等の金属板から一体にプレス成形されたものである。立板部11b”は平坦に形成されており、その平坦な立板部11b”まで、多極磁石14となるディスク状の焼結体を円筒部11aの外周に圧入して固定する。立板部11b”の高さは、多極磁石14の内周部付近が当たる高さとされる。
【0041】
また、上記各例では芯金11を鋼板プレス成形品製としたが、図7に示すように、芯金11は、鋼材等の削り出し品からなるものとしても良い。同図の例の芯金11は立板部11bの溝部11baを切削加工溝としている。
【0042】
上記のように金属環状部材である芯金11に周方向に沿って設けられた混合磁性粉焼結磁石ディスクは、周方向に多極に着磁することにより多極磁石14となり、この多極磁石14と芯金11とで磁気エンコーダ10が構成される。この場合に、非磁性金属粉をバインダとして磁性粉を混入した混合磁性粉焼結磁石ディスク(焼結体)は、その非磁性金属粉と磁性粉の組成比を調整しながら粉体混合機で分散させることで粉体同士のドライブレンドとすることができる。そのため焼結体中の磁性粉の相対的な含有率(体積分率)を上げられる。したがって、磁気センサ15(図3)に安定してセンシングされる磁力が容易に得られ、多極磁石14を厚くする必要がない。
【0043】
この構成の磁気エンコーダ10は、図3と共に前述したように、多極磁石14に磁気センサ15を対面させて回転検出に使用される。磁気エンコーダ10を回転させると、多極磁石14の多極に磁化された各磁極N,Sの通過が磁気センサ15で検出され、パルスのかたちで回転が検出される。磁極N,Sのピッチp(図2)は細かく設定でき、例えばピッチpが1.5mm、ピッチ相互差±3%という精度を得ることもでき、これにより精度の高い回転検出が行える。ピッチ相互差は、磁気エンコーダ10から所定距離だけ離れた位置で検出される各磁極間の距離の差を目標ピッチに対する割合で示した値である。磁気エンコーダ10が図3のように軸受のシール装置5に応用されたものである場合、磁気エンコーダ10の取付けられた軸受の回転が検出されることになる。
多極磁石14は、磁性粉の混入した焼結体(混合磁性粉焼結ディスク)からなるため、次に示すように、安定したセンシングの得られる磁力を確保しながら薄肉化できて、磁気エンコーダ10のコンパクト化が図れるうえ、耐摩耗性に優れ、また生産性にも優れたものとなる。
【0044】
さらに、多極磁石14の表面硬度は、従来の磁性粉や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための回転検出装置20に応用した場合に、車両走行中に回転側の多極磁石14の表面と固定側の磁気センサ15の表面の間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、多極磁石14の摩耗損傷が生じ難く、従来の弾性体製としたものに比べて、摩耗の大幅な低減効果がある。
なお、金属環状部材である芯金11に周方向に沿って設けられた多極磁石14となる混合磁性粉焼結磁石ディスク表面の平坦度は、200μm以下が良いが、望ましくは100μm以下が良い。ディスク表面の平坦度が200μmより上である場合、磁気センサ15とディスク面の間隙(エアギャップ)が、磁気エンコーダ10の回転中に変化することで、センシング精度を悪化させてしまう。
同様の理由で、磁気エンコーダ10の回転中における、混合磁性粉焼結磁石ディスク表面の面振れも、200μm以下が良く、望ましくは100μm以下が良い。
【0045】
つぎに、この磁気エンコーダ10を備えた車輪用軸受の一例、およびそのシール装置5の例を、図8,図9と共に説明する。図8に示すように、この車輪用軸受は、内方部材1および外方部材2と、これら内外の部材1,2間に収容される複数の転動体3と、内外の部材1,2間の端部環状空間を密封するシール装置5,13とを備える。一端のシール装置5は、磁気エンコーダ10付きのものである。内方部材1および外方部材2は、転動体3の軌道面1a,2aを有しており、各軌道面1a,2aは溝状に形成されている。内方部材1および外方部材2は、各々転動体3を介して互いに回転自在となった内周側の部材および外周側の部材のことであり、軸受内輪および軸受外輪の単独であっても、これら軸受内輪や軸受外輪と別の部品とが組合わさった組立部材であっても良い。また、内方部材1は、軸であっても良い。転動体3は、ボールまたはころからなり、この例ではボールが用いられている。
【0046】
この車輪用軸受は、複列の転がり軸受、詳しくは複列のアンギュラ玉軸受とされていて、その軸受内輪は、各転動体列の軌道面1a,1aがそれぞれ形成された一対の分割型の内輪18,19からなる。これら内輪18,19は、ハブ輪6の軸部の外周に嵌合し、ハブ輪6と共に上記内方部材1を構成する。なお、内方部材1は、上記のようにハブ輪6および一対の分割型の内輪18,19からなる3部品の組立部品とする代わりに、ハブ輪6および片方の内輪18が一体化された軌道面付きのハブ輪と、もう片方の内輪19とで構成される2部品からなるものとしても良い。
【0047】
ハブ輪6には、等速自在継手7の一端(例えば外輪)が連結され、ハブ輪6のフランジ部6aに車輪(図示せず)がボルト8で取付けられる。等速自在継手7は、その他端(例えば内輪)が駆動軸に連結される。
外方部材2は、軸受外輪からなり、懸架装置におけるナックル等からなるハウジング(図示せず)に取付けられる。転動体3は各列毎に保持器4で保持されている。
【0048】
図9は、磁気エンコーダ付きのシール装置5を拡大して示す。このシール装置5は、図3に示したものと同じであり、その一部を前述したが、図9において、詳細を説明する。このシール装置5は、磁気エンコーダ10またはその芯金11がスリンガとなり、内方部材1および外方部材2のうちの回転側の部材に取付けられる。この例では、回転側の部材は内方部材1であるため、磁気エンコーダ10は内方部材1に取付けられる。
【0049】
このシール装置5は、内方部材1と外方部材2に各々取付けられた第1および第2の金属板製の環状のシール板(11),12を有する。第1のシール板(11)は、上記磁気エンコーダ10における芯金11のことであり、以下、芯金11として説明する。磁気エンコーダ10は、図1ないし図3と共に前述した第1の実施形態にかかるものであり、その重複する説明を省略する。この磁気エンコーダ10における多極磁石14に対面して、同図のように磁気センサ15を配置することにより、車輪回転速度の検出用の回転検出装置20が構成される。
【0050】
第2のシール板12は、上記シール部材9(図3)を構成する部材であり、第1のシール板である芯金11の立板部11bに摺接するサイドリップ16aと円筒部11aに摺接するラジアルリップ16b,16cとを一体に有する。これらリップ16a〜16cは、第2のシール板12に加硫接着された弾性部材16の一部として設けられている。これらリップ16a〜16cの枚数は任意で良いが、図9の例では、1枚のサイドリップ16aと、軸方向の内外に位置する2枚のラジアルリップ16c,16bとを設けている。第2のシール板12は、固定側部材である外方部材2との嵌合部に弾性部材16を抱持したものとしてある。すなわち、弾性部材16は、円筒部12aの内径面から先端部外径までを覆う先端覆い部16dを有するものとし、この先端覆い部16dが、第2のシール板12と外方部材2との嵌合部に介在する。
第2のシール板12の円筒部12aと第1のシール板である芯金11の他筒部11cとは僅かな径方向隙間をもって対峙させ、その隙間でラビリンスシール17を構成している。
【0051】
この構成の車輪用軸受によると、車輪と共に回転する内方部材1の回転が、この内方部材1に取付けられた磁気エンコーダ10を介して、磁気センサ15で検出され、車輪回転速度が検出される。
磁気エンコーダ10は、シール装置5の構成要素としたため、部品点数を増やすことなく、車輪の回転を検出することができる。車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、過酷な温度環境下となるが、その場合でも、上記のように磁気エンコーダ10における多極磁石14の線膨張係数の範囲を限定範囲のものとしたため、温度変化による多極磁石14の損傷やその芯金11に対する固定不良を防止することができる。また、車輪用軸受は、路面の環境下にさらされた状態となることから、磁気エンコーダ10とこれに対面させる磁気センサ15との間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、上記のように磁気エンコーダ10の多極磁石14は焼結体からなるものであって硬質であるため、多極磁石14の表面の摩耗損傷は従来の弾性体製のものに比べて大幅に低減される。また車輪用軸受5における軸受端部の空間は、周辺に等速ジョイント7や軸受支持部材(図示せず)があって限られた狭い空間となるが、磁気エンコーダ10の多極磁石14が上記のように薄肉化できるため、回転検出装置20の配置が容易になる。
内外の部材1,2間のシールについては、第2のシール板12に設けられた各シールリップ16a〜16cの摺接と、第2のシール板12の円筒部12aに第1のシール板である芯金11の他筒部11cが僅かな径方向隙間で対峙することで構成されるラビリンスシール17とで得られる。
【0052】
なお、磁気エンコーダ10を軸受のシール装置5の構成要素とする場合等において、多極磁石14を、上記各実施形態とは逆に軸受に対して内向きに設けても良い。すなわち、多極磁石14を芯金11の軸受内側の面に設けても良い。その場合、芯金11は非磁性体製のものとすることが好ましい。
【0053】
さらに、磁気エンコーダ10は、上記各実施形態のように多極磁石14を軸方向に向けたものに限らず、例えば図10に示すように、径方向に向けて設けても良い。同図の例は、シール装置5のスリンガとなるシール板である芯金11Aに、その立板部11bから軸方向の外側へ延びる第2の円筒部11dを設け、第2の円筒部11dの外周に多極磁石14を固定している。すなわち、第2の円筒部11dの先端には外径側へ延びる加締板部11eを一体に設け、この加締板部11eを加締ることで、多極磁石14に第2の円筒部11dの外周面に固定している。立板部11bは円筒部11aから外径側に延びている。すなわち、この例の芯金11Aは、円筒部11a、立板部11b、および第2の円筒部11dが順次続く断面概ね逆Z字状の部分に、その第2の円筒部11dの先端から加締板部11eが外径側へ一体に延びた形状のものとされている。磁気センサ15は、多極磁石14に対して径方向に対面配置する。
【0054】
なお、上記各実施形態の磁気エンコーダ10は、いずれも軸受のシール装置5の構成部品とした場合につき説明したが、これら各実施形態の磁気エンコーダ10は、シール装置5の構成部品とするものに限らず、単独で回転検出に利用することができる。例えば、図1の実施形態における磁気エンコーダ10を、シール装置5とは別に軸受に設けても良い。
また、図11に示すように、磁気エンコーダ10Aは、多極磁石14が径方向に向くように、円筒状の芯金11Cの外径面に多極磁石14を設けた構成のものとしても良い。その場合に、磁気エンコーダ10を、車輪用軸受における外方部材2Aの外径面に嵌合させて設けても良い。同図の車輪用軸受は、内方部材1Aおよび外方部材2Aのうちの外方部材2Aを回転側の部材とし、外方部材2Aに車輪取付フランジ26を設けたものである。シール装置5Aは、磁気エンコーダ10Aとは別に軸受に設けられる。外方部材2Aは一対の分割内輪18A,19Aからなる。
【0055】
【発明の効果】
この発明の磁気エンコーダは、円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石の線膨張係数を、0.5×10−5以上で9.0×10−5以下としたため、温度変化の大きな過酷な環境下で使用されても、多極磁石の損傷が生じ難く、また芯金と多極磁石の確実な固定が維持される。
上記多極磁石を、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体とした場合は、上記線膨張係数の範囲のものが容易に製造でき、また薄肉化が可能で、かつ耐摩耗性に優れ、生産性にも優れたものとなる。
この発明の車輪用軸受は、この発明の磁気エンコーダを備えたものであるため、コンパクトな構成で回転検出が行え、しかも温度変化による磁気エンコーダの多極磁石の損傷や芯金に対する剥がれ等の問題のないものとできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかる磁気エンコーダの部分斜視図、(B)は同磁気エンコーダの組立過程を示す部分斜視図である。
【図2】同磁気エンコーダを正面から示す磁極の説明図である。
【図3】同磁気エンコーダを備えたシール装置と磁気センサとを示す部分破断正面図である。
【図4】グリーン体を焼結体とする工程図である。
【図5】この発明の他に実施形態にかかる磁気エンコーダの部分斜視図である。
【図6】この発明のさらに他に実施形態にかかる磁気エンコーダの部分斜視図である。
【図7】この発明のさらに他の実施形態にかかる磁気エンコーダの部分斜視図である。
【図8】第1の実施形態にかかる磁気エンコーダを備えた車輪用軸受の全体の断面図である。
【図9】同車輪用軸受の部分断面図である。
【図10】この発明のさらに他の実施形態にかかる車輪用軸受の磁気エンコーダ部分の断面図である。
【図11】この発明のさらに他の実施形態にかかる車輪用軸受の断面図である。
【符号の説明】
1…内方部材
2…外方部材
1A…内方部材
2A…外方部材
3…転動体
5…シール装置
10…磁気エンコーダ
11,11A,11B…芯金(第1のシール板)
11a…円筒部
11b…立板部
11c…他筒部
12…第2のシール板
14…多極磁石
15…磁気センサ
16a…サイドリップ
16b,16c…ラジアルリップ
20…回転検出装置

Claims (10)

  1. 円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石の線膨張係数が、0.5×10−5以上で9.0×10−5以下であることを特徴とする磁気エンコーダ。
  2. 請求項1において、上記多極磁石が、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体である磁気エンコーダ。
  3. 請求項1または請求項2において、上記芯金が鋼板製である磁気エンコーダ。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずかにおいて、上記多極磁石を上記芯金の加締によって上記芯金に固定した磁気エンコーダ。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずかにおいて、上記混合粉に使用する磁性粉および非磁性金属粉は、いずれも平均粒径が10μm以上で150μm以下である磁気エンコーダ。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずかにおいて、上記混合粉中の配合における、非磁性金属粉の体積含有率が、1vol %以上で90vol %以下である磁気エンコーダ。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずかにおいて、上記混合粉の焼結前の圧粉体が、5vol %以上で30vol %以下の空孔を持つものとした磁気エンコーダ。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の磁気エンコーダを備えた車輪用軸受。
  9. 請求項8において、上記車輪用軸受が、複列の転走面を内周面に形成した外方部材と、この外方部材の転走面と対向する転走面を形成した内方部材と、これら両転走面間に介在された複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受であって、
    上記外方部材と内方部材との環状空間を密封するシール装置を設け、このシール装置は、上記外方部材または内方部材のうちの回転側部材に嵌合される第1のシール板と、この第1のシール板に対向し、上記外方部材または内方部材のうちの固定側部材に嵌合される断面L字状の第2のシール板とからなり、上記第1のシール板は、上記回転側部材に嵌合される嵌合側の円筒部と、立板部と、他筒部とでなる断面概ね逆Z字状とされ、上記第1のシール板の立板部に摺接するサイドリップ、および円筒部に摺接するラジアルリップが上記第2のシール板に固着され、上記第1のシール板が上記磁気エンコーダにおける芯金となり、その立板部に重ねて上記多極磁石が設けられる車輪用軸受。
  10. 請求項9において、上記車輪用軸受が、複列の転走面を内周面に形成した外方部材と、この外方部材の転走面と対向する転走面を形成した内方部材と、これら両転走面間に介在された複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受であって、
    上記外方部材と内方部材との環状空間を密封するシール装置を設け、このシール装置は、上記外方部材または内方部材のうちの回転側部材に嵌合される断面L字状の第1のシール板と、この第1のシール板に対向し、上記外方部材または内方部材のうちの固定側部材に嵌合される断面L字状の第2のシール板とからなり、上記第1のシール板の立板部に摺接するサイドリップ、および円筒部に摺接するラジアルリップが上記第2のシール板に固着され、上記第1のシール板が上記磁気エンコーダにおける芯金となり、その立板部に少なくとも一部を重ねて上記多極磁石が設けられる車輪用軸受。
JP2003012709A 2002-07-02 2003-01-21 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受 Pending JP2004085533A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003012709A JP2004085533A (ja) 2002-07-02 2003-01-21 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002192908 2002-07-02
JP2003012709A JP2004085533A (ja) 2002-07-02 2003-01-21 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004085533A true JP2004085533A (ja) 2004-03-18

Family

ID=32071902

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003012709A Pending JP2004085533A (ja) 2002-07-02 2003-01-21 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004085533A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007187648A (ja) * 2005-12-16 2007-07-26 Jtekt Corp 着磁パルサリング
JP2019509434A (ja) * 2015-09-03 2019-04-04 ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイションPenn Engineering & Manufacturing Corp. 同一高さで実装する部品保持ファスナー

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007187648A (ja) * 2005-12-16 2007-07-26 Jtekt Corp 着磁パルサリング
JP2019509434A (ja) * 2015-09-03 2019-04-04 ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイションPenn Engineering & Manufacturing Corp. 同一高さで実装する部品保持ファスナー

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1296144B1 (en) Magnetic encoder and wheel bearing assembly using the same
US20080226211A1 (en) Magnetic encoder and wheel support bearing assembly using the same
JP4372438B2 (ja) 車輪用軸受
JP2004037441A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP2004084925A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP3967353B2 (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた軸受
JP2004085534A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP2004085533A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP4312149B2 (ja) 磁気エンコーダ付き軸受および車輪用軸受
JP4361003B2 (ja) 車輪用軸受
JP2004084926A (ja) 車輪用軸受
JP2004085535A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP4498330B2 (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP4319135B2 (ja) 車輪用軸受
JP4408798B2 (ja) 磁気エンコーダ付き軸受および車輪用軸受
JP4037406B2 (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた軸受
JP3881359B2 (ja) 軸受のシール装置
JP2004085536A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP2005099042A (ja) 磁気エンコーダ付き軸受および車輪用軸受
JP2005099041A (ja) 磁気エンコーダ付き軸受および車輪用軸受
JP2005043294A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP2006330005A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受
JP2005049359A (ja) 磁気エンコーダ付き軸受
JP2008083066A (ja) 車輪用軸受
JP2008107187A (ja) 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受、磁気エンコーダ用磁石体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051201

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080416

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080507

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080916