JP2006330005A - 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石14と、この多極磁石14を支持する芯金11とを備えた磁気エンコーダとする。多極磁石14は、磁性粉を非磁性体に混合させたものであり、上記非磁性体に2種以上の材料を用いる。多極磁石14は、ゴム磁石、プラスチック磁石、または焼結磁石とする。
【選択図】 図1
Description
このような従来例は、回転軸に嵌合された歯付ローターを、ナックルに取付られた回転検出センサで感知検出する構造を持ち、使われている軸受は、その側部に独立して設けられたシール装置によって、水分あるいは異物の侵入から守られる。
また、特許文献2には、軸方向の寸法を小さくし、回転部材と固定部材との間の密閉度を良好にし、容易に取り付け可能にすることを目的として、回転部材と固定部材との間がシールされ、この回転部材に回転ディスクが取り付けられ、その回転ディスクに多極化されたコーダが取り付けられたコーダ内蔵密閉構造としたものが示されている。使用するコーダは、磁性粉を添加したエラストマーからなる。
しかし、母材がエラストマーやプラストマーの場合、希土類系磁性粉の配合量を多くすることができなかった。なぜなら、母材と希土類性磁性粉の混入工程において、次のような問題があったからである。フェライト系磁性粉を用いた場合でも、希土類系磁性粉の場合と同様な問題が生じる。
(1) .磁性粉の配合量が多い場合、加工機(混練機)の損傷が大きい。回転トルクが大きくなって装置に大きな負荷がかかったり、硬い磁性粉との接触でロールの摩耗が著しく損傷多くなる。
(2) .加工時の発熱により、磁性粉の酸化が生じるため、磁気特性が劣化する。
しかし、焼結体製の磁気エンコーダにおいても、磁性粉の配合量が多くなりすぎると、成形不能になる。
この発明の他の目的は、優れた検出感度を得ながら薄肉化が可能で、かつ適宜の材質を選定することで成形性が確保できる磁気エンコーダを提供することである。
この発明のさらに他の目的は、耐久性の向上、および生産性の向上にある。
この発明のさらに他の目的は、部品点数を増やすことなく、コンパクトな構成で回転検出が行え、かつ回転検出のための磁気エンコーダの耐久性に優れた車輪用軸受を提供することである。
(1) .従来のエラストマーやプラストマーに比べて磁性粉比率を高くすることができ、そのため、単位体積あたりの磁力を大きくすることができる。これにより検出感度の向上、薄肉化が可能になる。
(2) .従来の焼結磁石である磁性粉のみを焼結したものに比べて、バインダとなる非磁性金属粉の存在のために割れ難い。
(3) .従来のエラストマー等に比べて表面が硬いため、耐摩耗性に優れ、また損傷し難い。
(4) .従来のエラストマー等に比べて、生産性に優れる。
ステンレス粉は他の非磁性金属粉に比べて防錆性に優れ、これを用いた焼結体は、防錆性に優れたものとなる。
非磁性金属粉をスズ粉とした場合、その融点が232℃と金属材料としては低融点であり、工業材料としての入手性が良く、比較的安価である。低融点金属としては、鉛(Pb)、カドミニウム(Cd)等があるが、その自然環境に与える負荷から工業的な原料とするには問題を生じることがある。亜鉛等の使用では、その融点が432℃とスズ粉よりも高く、サマリウム系磁性粉との焼結では、磁性粉への磁気特性への影響や、焼結品の焼結工程前後での寸法変化率が大きいなどの問題を生じることがある。
2種以上の磁性粉を含むものとした場合は、任意に複数種の粉を混合することで所望の特性を得ることができる。例えば、フェライト粉だけでは磁力が足りない場合に、フェライト粉に希土類系磁性材料であるサマリウム系磁性粉やネオジウム系磁性粉を必要量だけ混合し、磁力向上を図りつつ安価に製作することができる。
特に、磁気エンコーダの多極磁石が磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、上記非磁性金属粉が、2種以上の粉体を混合した粉体、または2種以上の金属の合金粉末からなる場合は、安定したセンシングの得られる磁力を確保しながら、薄肉化が可能であるため、これを車輪用軸受に備えることで、コンパクトな構成で回転検出が行える車輪用軸受となる。
すなわち、上記多極磁石が上記磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体である場合は、次の各利点が得られる。車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、磁気エンコーダとこれに対面させる磁気センサとの間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、この噛み込みに対して、次のように保護される。すなわち、磁性粉と非磁性金属粉とからなる焼結体の多極磁石の表面硬度は、従来の磁性粉や磁性粒子の含有するエラストマーやプラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための磁気エンコーダを有した車輪用軸受において、車両走行中に回転側の多極磁石の表面と固定側の磁気センサの表面との間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、多極磁石の摩耗損傷に大幅な低減効果がある。
この場合に、このシール装置は、上記外方部材または内方部材のうちの回転側部材に嵌合される断面L字状の第1のシール板と、この第1のシール板に対向し、上記外方部材または内方部材のうちの固定側部材に嵌合される断面L字状の第2のシール板とからなり、上記第1のシール板の立板部に摺接するサイドリップ、および円筒部に摺接するラジアルリップが上記第2のシール板に固着され、上記第1のシール板が上記磁気エンコーダにおける芯金となり、その立板部に上記多極磁石が設けられたものであっても良い。
この構成の車輪用軸受の場合、シール装置の構成要素を磁気エンコーダとしたため、部品点数を増やすことなく、より一層コンパクトな構成で車輪の回転を検出することができる。また、第2のシール板に固着されたサイドリップおよびラジアルリップが第1のシール板に摺接することに等により、優れたシール効果が得られる。
磁気エンコーダの多極磁石が磁性粉と非磁性金属粉とからなる焼結体である場合は、次の利点が得られる。すなわち、シール装置に磁気エンコーダを構成した場合、上記の路面環境下にさらされることによる磁気エンコーダと磁気センサ間の砂粒等の噛み込みが問題となるが、この噛み込みに対して、多極磁石の表面硬度が硬いことにより、摩耗損傷の低減効果が得られる。
特に、多極磁石が焼結体である場合は、耐摩耗性が優れたものとなり、しかもコーダ部分となる多極磁石の製造においても、成形上の負荷が少なくて生産工程を大幅に簡略化することができる。
この発明の車輪用軸受において、磁気エンコーダの多極磁石が焼結体である場合は、コンパクトな構成で安定した回転検出を行うことができる。
磁気エンコーダ10の多極磁石14は、磁性粉を非磁性体に混合させたものであって、上記非磁性体として2種以上の材料が用いられる。
また、例えば、フェライト分だけでは磁力が足りない場合に、フェライト粉に希土類系磁性材料であるサマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉やネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉を必要量だけ混合し、磁力向上を図りつつ安価に製作することもできる。
上述した平均粒径範囲の磁性粉と非磁性金属粉を予め決められた配合比で粉体混合機を用いて混合し、この混合粉を常温下、金型内で加圧成形することにより圧粉体を得る。
これらの圧粉体(グリーン体)は、5〜30vol %の空孔を持つことが望ましい。好ましくは12〜22vol %、さらに好ましくは14〜19vol %である。空孔率が5vol %より少ない場合、成形圧力を除圧する際に原料粉の弾性変形の回復により生じるスプリングバックにより、圧粉体(グリーン体)が破損する可能性がある。また、空孔が30vol %よりも多い場合、焼結体の機械的強度が弱くなるため、後述するように、芯金11上に加締加工や圧入加工などで機械的に固定しようとしても割れてしまう。また、粒子間の密着不足により、圧粉体(グリーン体)が成形できない場合がある。
得られたグリーン成形体は、図4のように炉内で加熱焼結することで、ディスク形状の焼結体とされる。この炉内での加熱焼結は、大気中、電気炉で行っても良く、また真空炉により、または不活性ガスを流入しながらプッシャー炉、もしくはイナート炉で行っても良い。
加締固定の場合、芯金11は、例えば図1(B)に示すように、嵌合側となる内径側の円筒部11aと、その一端から外径側へ延びる立板部11bとでなる断面L字状の円環状とする。この例では、立板部11bの外径縁から他筒部11cがさらに延びている。この他筒部11cを含めて表現すると、芯金11の断面形状は概ね逆Z字状となる。
円筒部11a、立板部11b、および他筒部11cは、鋼板等の金属板から一体にプレス成形されたものである。立板部11bは平坦に形成されており、その平坦な立板部11bの表面に重ねて多極磁石14の未着磁の焼結体を組み込み、外周縁の他筒部11cを加締めることで、芯金11の立板部11bに重なり状態に多極磁石14が固定される。上記他筒部11cは、その断面における先端側部分または略全体が、加締部となる。また、この加締部は、芯金11の円周方向の全周に渡って延び、したがって円環状となっている。多極磁石14の加締部である他筒部11cにより固定される部分は、多極磁石14の被検出面となる表面よりも凹む凹み部14aとなっていて、芯金11の加締部である他筒部11cが、多極磁石14の被検出面となる表面から突出しないようにされている。上記凹み部14aは、多極磁石14の被検出面となる表面よりも若干背面側に後退した段差部として形成されている。多極磁石14の外周縁における凹み部14aよりも裏面側の部分は、断面が円弧状の曲面とされ、この曲面部分に沿うように、他筒部11cの加締部分が形成される。加締固定は、上記のように多極磁石14の外周部を全周にわたって行う他に、円周方向の複数箇所で行う部分加締としてもよい。
上記のように金属環状部材である芯金11に周方向に沿って設けられた混合磁性粉焼結磁石ディスクは、周方向に多極に着磁することにより多極磁石14となり、この多極磁石14と芯金11とで磁気エンコーダ10が構成される。
多極磁石14は焼結体であるため、90vol %という高い配合量のものとすることもできる。すなわち、非磁性金属粉をバインダとして磁性粉を混入した混合磁性粉焼結磁石ディスク(焼結体)は、その非磁性金属粉と磁性粉の組成比を調整しながら粉体混合機で分散させることで粉体同士のドライブレンドとすることができる。そのため焼結体中の磁性粉の相対的な含有率(体積分率)を上げられる。このように磁性粉の配合量を高くすることで、磁気センサ15(図3)に安定してセンシングされる磁力が容易に得られ、多極磁石14を厚くする必要がない。
多極磁石14を焼結体とする場合、磁性粉の配合量を90vol %までは高めることができるが、90%を超えると、成形が非常に困難であるか、または不可能になる。
すなわち、焼結体からなる多極磁石14の表面硬度は、従来の磁性粉や磁性粒子の含有するエラストマー製やプラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための回転検出装置20に応用した場合に、車両走行中に回転側の多極磁石14の表面と固定側の磁気センサ15の表面の間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、多極磁石14の摩耗損傷が生じ難く、従来の弾性体製としたものに比べて、摩耗の大幅な低減効果がある。
表1より、配合例(2)〜(7) の全ての配合割合(磁性粉の配合量30〜80の範囲)で、残留磁束密度、成形加工性、およびハンドリング性が良好であった。残留磁束密度は、磁気エンコーダとしての作動範囲として必要な200mT以上あれば、良好であると判断した。
配合例(8) は、磁性粉の配合量を10vol %と少なくした例であり、成形性およびハンドリング性は良好であるが、残留磁束密度が170mTであり、磁気エンコーダとしての作動範囲(200mT)に若干満たなかった。配合例(1) は、磁性粉の配合量を95vol %と多くした例であり、成形が不可であった。
これらの結果から、多極磁石が焼結体である場合、磁性粉の好ましい配合量の下限は、上記の残留磁束密度の不足となる値である10vol %と、残留磁束密度良の値である30vol %の中間と見て20vol %であり、好ましい配合量の上限は上記の成形不可の値である95vol %と成形性良の値である80vol %の中間と見て90vol %であると思料される。
配合例(9)〜(12)の場合、磁性粉の配合量が多いため、装置の回転トルクが大きくなり、成形性が悪かった。配合例(14)の場合、残留磁束密度は作動範囲の下限値(200mT)であるが、成形性およびハンドリング性が若干悪い。
この結果から、ゴム磁石とする場合は、好ましい磁性粉の配合量は30vol %未満であると思料される。
外方部材2は、軸受外輪からなり、懸架装置におけるナックル等からなるハウジング(図示せず)に取付けられる。転動体3は各列毎に保持器4で保持されている。
第2のシール板12の円筒部12aと第1のシール板である芯金11の他筒部11cとは僅かな径方向隙間をもって対峙させ、その隙間でラビリンスシール17を構成している。
磁気エンコーダ10は、シール装置5の構成要素としたため、部品点数を増やすことなく、車輪の回転を検出することができる。車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、磁気エンコーダ10とこれに対面させる磁気センサ15との間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、上記のように磁気エンコーダ10の多極磁石14は焼結体からなるものであって硬質であるため、多極磁石14の表面の摩耗損傷は従来の弾性体製のものに比べて大幅に低減される。また車輪用軸受5における軸受端部の空間は、周辺に等速ジョイント7や軸受支持部材(図示せず)があって限られた狭い空間となるが、磁気エンコーダ10の多極磁石14が上記のように薄肉化できるため、回転検出装置20の配置が容易になる。
内外の部材1,2間のシールについては、第2のシール板12に設けられた各シールリップ16a〜16cの摺接と、第2のシール板12の円筒部12aに第1のシール板である芯金11の他筒部11cが僅かな径方向隙間で対峙することで構成されるラビリンスシール17とで得られる。
また、磁気エンコーダ10を軸受のシール装置5の構成要素とする場合等において、多極磁石14を、上記各実施形態とは逆に軸受に対して内向きに設けても良い。すなわち、多極磁石14を芯金11の軸受内側の面に設けても良い。その場合、芯金11は非磁性体製のものとすることが好ましい。
また、上記各実施形態の磁気エンコーダ10は、いずれも軸受のシール装置5の構成部品とした場合につき説明したが、これら各実施形態の磁気エンコーダ10は、シール装置5の構成部品とするものに限らず、単独で回転検出に利用することができる。例えば、図1の実施形態における磁気エンコーダ10を、シール装置5とは別に軸受に設けても良い。
また、図11に示すように、磁気エンコーダ10Aは、多極磁石14が径方向に向くように、円筒状の芯金11Cの外径面に多極磁石14を設けた構成のものとしても良い。その場合に、磁気エンコーダ10を、車輪用軸受における外方部材2Aの外径面に嵌合させて設けても良い。同図の車輪用軸受は、内方部材1Aおよび外方部材2Aのうちの外方部材2Aを回転側の部材とし、外方部材2Aに車輪取付フランジ26を設けたものである。シール装置5Aは、磁気エンコーダ10Aとは別に軸受に設けられる。内方部材1Aは一対の分割内輪18A,19Aからなる。
2,2A…外方部材
3…転動体
5…シール装置
10…磁気エンコーダ
11,11A,11B…芯金(第1のシール板)
11a…円筒部
11b…立板部
12…第2のシール板
14…多極磁石
15…磁気センサ
16a…サイドリップ
16b,16c…ラジアルリップ
20…回転検出装置
Claims (5)
- 円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石が磁性粉を非磁性体に混合させたものであり、上記非磁性体に2種以上の材料を用いた磁気エンコーダ。
- 請求項1において、上記多極磁石が磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、上記非磁性金属粉が、2種以上の粉体を混合した粉体、または2種以上の金属の合金粉末からなる磁気エンコーダ。
- 請求項1において、上記多極磁石が磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、前記非磁性金属粉が、スズ、銅、アルミ、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガン、または非磁性のステンレス系金属粉のうちの2種以上を混合した粉体、または2種以上からなる合金粉末である磁気エンコーダ。
- 請求項1において、前記多極磁石がゴム磁石である磁気エンコーダ。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気エンコーダを備えた車輪用軸受。
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