JP4361003B2 - 車輪用軸受 - Google Patents
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Description
このような従来例は、回転軸に嵌合された歯付ローターを、ナックルに取付られた回転検出センサで感知検出する構造を持ち、使われている軸受は、その側部に独立して設けられたシール装置によって、水分あるいは異物の侵入から守られる。
また、特許文献2には、軸方向の寸法を小さくし、回転部材と固定部材との間の密閉度を良好にし、容易に取り付け可能にすることを目的として、回転部材と固定部材との間がシールされ、この回転部材に回転ディスクが取り付けられ、その回転ディスクに多極化されたコーダが取り付けられたコーダ内蔵密閉構造としたものが示されている。使用するコーダは、磁性粒子を添加したエラストマーからなるものが用いられ、このコーダの側面を固定部材の側面とほぼ同一平面としたシール手段とされている。
さらに磁性粉や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダは、例えば車輪回転検出のための回転検出装置を有したベアリングシールにおいて、回転検出装置の装着スペースを削減せしめ、かつ感知性能を飛躍的に向上させるために、そこに使用するスリンガーの軸方向で近接かつ相対した部位に感知センサを配置しなければならない。しかしこの場合、車両走行中に回転側のベアリングシール表面と固定側の感知センサ表面の間隙に、砂粒などの異物粒子が侵入し噛み込まれると、弾性部材やエラストマー製のコーダ表面は摩耗などによる激しい損傷が認められることがあった。
前記磁気エンコーダにおいて、前記潤滑剤としては、例えばステアリン酸亜鉛を用いることができる。
(1) .従来のエラストマーやプラストマーに比べて磁性粉比率を高くすることができ、そのため、単位体積あたりの磁力を大きくすることができる。これにより検出感度の向上、薄肉化が可能になる。
(2) .従来の焼結磁石である磁性粉のみを焼結したものに比べて、バインダとなる非磁性金属粉の存在のために割れ難い。
(3) .従来のエラストマー等に比べて表面が硬いため、耐摩耗性に優れ、また損傷し難い。
(4) .従来のエラストマー等に比べて、生産性に優れる。
このとき、非磁性金属粉をバインダとして磁性粉を混入した混合磁性粉からなる焼結体は、その非磁性金属粉と磁性粉の組成比を調整しながら粉体混合機で分散させた粉体同士のドライブレンドができるため、焼結体中の磁性粉の相対的な含有率(体積分率)を上げられる。このため、磁気センサに安定してセンシングされる磁力が容易に得られ、多極磁石を厚くする必要がない。
しかも、多極磁石とする焼結体の製造においても、粉体同士のドライブレンドによる混合粉の焼結成形法は、従来のエラストマーや弾性部材の場合の射出成形や圧縮成形に比べて加硫工程などがなく、また成形上の負荷が少ないため、生産工程を大幅に簡略化することができる。また、焼結加工での圧粉体の成形の場合、エラストマーや弾性部材の射出成形や圧縮成形に比べ、金型の摩耗などの問題は生じない。
また、この多極磁石とする焼結体の芯金への取付けは、簡便な加締加工や、圧入加工等の機械的固定法で行えることから、たとえ高低温環境下で過酷な条件にさらされても信頼性を保持することができる。
上記のように芯金に取付けられた焼結体に、円周方向に交互に磁極を着磁して多極磁石とする。
また、例えば、フェライト分だけでは磁力が足りない場合に、フェライト粉に希土類系磁性材料であるサマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉やネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉を必要量だけ混合し、磁力向上を図りつつ安価に製作することもできる。
上述した平均粒径範囲の磁性粉と非磁性金属粉を予め決められた配合比で粉体混合機を用いて混合し、この混合粉を常温下、金型内で加圧成形することにより圧粉体を得る。
磁性粉でない非磁性金属粉の体積含有率が1vol %よりも少ないと、金属バインダとして非磁性金属粉が少ないため、焼結後得られた多極磁石14は、硬いが脆い。このため、後述するように、多極磁石14とする焼結体を芯金11上に加締加工や圧入加工などで機械的に固定しようとしても、割れてしまう。また、金属バインダとして少なすぎるために、圧粉体が成形できない場合がある。
磁性粉でない非磁性金属粉の体積含有率が90vol %より多いと、相対的に磁性成分が少ないため、焼結後、得られた多極磁石14の着磁強度を大きくできず、磁気エンコーダ10に所望される安定したセンシングの得られる磁力を確保することができない。
芯金11の材質となる金属材料の線膨張係数は、たとえばステンレス鋼(JIS規格のSUS430)の場合、1.0×10-5である。多極磁石14の線膨張係数が0.5×10-5より大きい場合、もしくは9×10-5より小さい場合、芯金11の材質となる金属材料との線膨張係数の差が大きいため、高低温環境下で使用されときの寸法変化量の差が大きくなり、多極磁石14と芯金11が干渉して多極磁石14が破損する場合がある。また、多極磁石14と芯金11の固定が確保できなくなる。
これらの圧粉体(グリーン体)は、5〜30vol %の空孔を持つことが望ましい。好ましくは12〜22vol %、さらに好ましくは14〜19vol %である。空孔率が5vol %より少ない場合、成形圧力を除圧する際に原料粉の弾性変形の回復により生じるスプリングバックにより、圧粉体(グリーン体)が破損する可能性がある。また、空孔が30vol %よりも多い場合、焼結体の機械的強度が弱くなるため、後述するように、芯金11上に加締加工や圧入加工などで機械的に固定しようとしても割れてしまう。また、粒子間の密着不足により、圧粉体(グリーン体)が成形できない場合がある。
得られたグリーン成形体は、図4のように炉内で加熱焼結することで、ディスク形状の焼結体とされる。この炉内での加熱焼結は、大気中、電気炉で行っても良く、また真空炉により、または不活性ガスを流入しながらプッシャー炉、もしくはイナート炉で行っても良い。
クリヤー系の高防食性塗料としては、変性エポキシ塗料、変性エポキシフェノール硬化タイプ塗料、エポキシメラミン系塗料、アクリル系塗料などが挙げられる。これらの中で、とくに変性エポキシフェノール硬化系およびエポキシメラミン系のクリヤー系塗料が好適である。
また、脂肪または洗浄した焼結体にクリヤーを真空含浸、デッピング(浸漬)、吹付け(スプレー)塗装、静電塗装等の方法によって塗布し、自然または強制的に風乾して焼結体に付着したクリヤー中の溶剤成分を除去し、所定の焼付条件(温度・時間)でクリヤー層を焼結体上に焼付けることで、図5のように、多極磁石14の表面に防錆被膜22を形成しても良い。この防錆被膜22は、磁気エンコーダ10全体の表面に形成しても良い。この磁気エンコーダ10を例えば車輪用軸受に取付ける場合、上記のように形成された防錆(食)被膜の膜厚は、車輪用軸受として要求される耐食性能を満足できる厚みであれば特に制限されないが、望ましくは0.5μm以上が良い。
車輪用軸受として使用されるとき、上記磁気センサ15と磁気エンコーダ10表面の間隙に砂粒などを噛み込むと、磁気エンコーダ10表面に傷を付けることがある。被膜の厚みが0.5μmより薄いと、その傷は基材である焼結体まで到達してしまい、そこからの錆の発生が防止できないことがある。
加締固定の場合、芯金11は、例えば図1(B)に示すように、嵌合側となる内径側の円筒部11aと、その一端から外径側へ延びる立板部11bと、外径縁の他筒部11cとでなる断面概ね逆Z字状の円環状とする。
円筒部11a、立板部11b、および他筒部11cは、鋼板等の金属板から一体にプレス成形されたものである。立板部11bは平坦に形成されており、その平坦な立板部11bの表面に重ねて多極磁石14の未着磁の焼結体を組み込み、外周縁の他筒部11cを加締めることで、芯金11の立板部11bに重なり状態に多極磁石14が固定される。上記他筒部11cは、その断面における先端側部分または略全体が、加締部となる。また、この加締部は、芯金11の円周方向の全周に渡って延び、したがって円環状となっている。多極磁石14の加締部である他筒部11cにより固定される部分は、多極磁石14の被検出面となる表面よりも凹む凹み部14aとなっていて、芯金11の加締部である他筒部11cが、多極磁石14の被検出面となる表面から突出しないようにされている。上記凹み部14aは、多極磁石14の被検出面となる表面よりも若干背面側に後退した段差部として形成されている。多極磁石14の外周縁における凹み部14aよりも裏面側の部分は、断面が円弧状の曲面とされ、この曲面部分に沿うように、他筒部11cの加締部分が形成される。加締固定は、図5に断面図で示すように、多極磁石14の外周部を全周にわたって加締固定してもよい。
さらに、図9に示すように、上記各例と同様に断面概ね逆Z字状とされた芯金11において、その他筒部11cの端縁における円周方向複数箇所に舌片状の爪部11cbを設け、この舌片状爪部11cbを矢印のように内径側へ塑性変形させることにより、つまり加締ることにより、多極磁石14を芯金11に固定しても良い。多極磁石14は、図1などの例と同様に立板部11bにおける他筒部11cの突出側の面に配置される。この例においても、図8の例と同様に、立板部11bを段付き形状としている。立板部11bを段付きとした場合、多極磁石14の立板部11b側の側面形状は、図9(B)に示すように、立板部11bの段付き形状に沿った側面形状としてもよい。
多極磁石14は、磁性粉の混入した焼結体(混合磁性粉焼結ディスク)からなるため、次に示すように、安定したセンシングの得られる磁力を確保しながら薄肉化できて、磁気エンコーダ10のコンパクト化が図れるうえ、耐摩耗性に優れ、また生産性にも優れたものとなる。
なお、金属環状部材である芯金11に周方向に沿って設けられた多極磁石14となる混合磁性粉焼結磁石ディスク表面の平坦度は、200μm以下が良いが、望ましくは100μm以下が良い。ディスク表面の平坦度が200μmより上である場合、磁気センサ15とディスク面の間隙(エアギャップ)が、磁気エンコーダ10の回転中に変化することで、センシング精度を悪化させてしまう。
同様の理由で、磁気エンコーダ10の回転中における、混合磁性粉焼結磁石ディスク表面の面振れも、200μm以下が良く、望ましくは100μm以下が良い。
外方部材2は、軸受外輪からなり、懸架装置におけるナックル等からなるハウジング(図示せず)に取付けられる。転動体3は各列毎に保持器4で保持されている。
第2のシール板12の円筒部12aと第1のシール板である芯金11の他筒部11cとは僅かな径方向隙間をもって対峙させ、その隙間でラビリンスシール17を構成している。
磁気エンコーダ10は、シール装置5の構成要素としたため、部品点数を増やすことなく、車輪の回転を検出することができる。車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、磁気エンコーダ10とこれに対面させる磁気センサ15との間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、上記のように磁気エンコーダ10の多極磁石14は焼結体からなるものであって硬質であるため、多極磁石14の表面の摩耗損傷は従来の弾性体製のものに比べて大幅に低減される。また車輪用軸受5における軸受端部の空間は、周辺に等速ジョイント7や軸受支持部材(図示せず)があって限られた狭い空間となるが、磁気エンコーダ10の多極磁石14が上記のように薄肉化できるため、回転検出装置20の配置が容易になる。
内外の部材1,2間のシールについては、第2のシール板12に設けられた各シールリップ16a〜16cの摺接と、第2のシール板12の円筒部12aに第1のシール板である芯金11の他筒部11cが僅かな径方向隙間で対峙することで構成されるラビリンスシール17とで得られる。
また、磁気エンコーダ10を軸受のシール装置5の構成要素とする場合等において、多極磁石14を、上記各実施形態とは逆に軸受に対して内向きに設けても良い。すなわち、多極磁石14を芯金11の軸受内側の面に設けても良い。その場合、芯金11は非磁性体製のものとすることが好ましい。
また、この実施形態では、内方部材1の一端部外径面に、芯金11Bの円筒部11aを嵌合させる小径部1bが段差を持って形成され、この小径部1bに円筒部11aが嵌合させてある。これにより、内方部材1における小径部1bの段差面に円筒部11aの一端が当接して、磁気エンコーダ10が軸方向に位置決めされる。芯金11Bの第2の円筒部11dには、多極磁石14の配置を妨げない範囲で除肉部11daが形成され、磁気エンコーダ10の軽量化が図られている。除肉部11daは、円周方向の複数箇所に設けた開口からなる。多極磁石14の爪部11fで抑えられる面が傾斜面の凹み部14bとされていることは、図6の例と同様である。この実施形態におけるその他の構成は、図12,図13に示した実施形態と同じである。
また、図18に示すように、磁気エンコーダ10Aは、多極磁石14が径方向に向くように、円筒状の芯金11Cの外径面に多極磁石14を設けた構成のものとしても良い。その場合に、磁気エンコーダ10を、車輪用軸受における外方部材2Aの外径面に嵌合させて設けても良い。同図の車輪用軸受は、内方部材1Aおよび外方部材2Aのうちの外方部材2Aを回転側の部材とし、外方部材2Aに車輪取付フランジ26を設けたものである。シール装置5Aは、磁気エンコーダ10Aとは別に軸受に設けられる。外方部材2Aは一対の分割内輪18A,19Aからなる。
(1) .芯金は、回転側部材(例えば転がり軸受の回転輪)へ圧入する圧入部と、多極磁石を取付ける部分とが、相互に離間している。(例えば図1の実施形態)
(2) .上記(1) において、多極磁石の芯金への固定を、芯金を加締めた加締部によって行う。この場合に、多極磁石は芯金の一部に重ね、断面における多極磁石の一端を、芯金の加締により行う。(例えば図1,図18の各実施形態)
(3) .上記(2) において、芯金の加締部が円周方向の複数箇所に別れている。(例えば図16の実施形態)
(4) .上記(2) において、多極磁石の芯金の加締部で固定される部分が、多極磁石の被検出面となる表面よりも凹む凹み部となっていて、芯金の加締部が上記多極磁石の被検出面となる表面から突出しないものとする。上記凹み部は、例えば、上記被検出面となる表面に対して傾斜した傾斜面または段差面からなる。(例えば図1、図16の各実施形態)
(5) .上記(2) において、芯金の多極磁石と接する面に、除肉部分を有する。(例えば図17の実施形態)
(6) .上記(2) において、芯金の加締部が円周方向に延びる円弧状または円環状の部分である。(例えば図1、図15の各実施形態)
(7).上記(2) において、多極磁石の上記加締部で固定される部分と反対側の端部を当接される当接部が芯金に設けられている。この当接部は、芯金を回転側部材(例えば転がり軸受の回転輪)に対して軸方向に位置決めする位置決め手段を兼ねている。(例えば図15の実施形態。その立板部11bbと円筒部11aとを併せた部分が、上記当接部となる。)
(8).上記(2) において、加締部で押えられる芯金表面部分と上記加締部との間に緩衝材が挿入されている。(例えば図17の実施形態)
この磁気エンコーダは、上記(1) 〜(8) などの新規の特徴を有する種々の多極磁石取付構成を可能とすることができ、そのため、応用範囲が広く、かつ高い信頼性を付与でき、非常に優れていると言える。
2…外方部材
1A…内方部材
2A…外方部材
3…転動体
5…シール装置
10…磁気エンコーダ
11,11A,11B…芯金(第1のシール板)
11a…円筒部
11b…立板部
11c…他筒部
12…第2のシール板
14…多極磁石
15…磁気センサ
16a…サイドリップ
16b,16c…ラジアルリップ
20…回転検出装置
Claims (4)
- 内方部材および外方部材と、これら内外の部材に設けられた複列の軌道面間に収容された複数の転動体とを備え、前記内方部材が一端に車輪取付用のフランジを有し、このフランジの反対側の端部で、前記内方部材の外周に円環状の磁気エンコーダを取付けた車輪用軸受であって、
前記磁気エンコーダは、円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石で構成され、上記多極磁石が、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉に潤滑剤を添加したものを圧粉体とし、焼結させた焼結体であり、この焼結体に防錆被膜を施し、前記非磁性金属粉はスズの粉体であり、この非磁性金属粉の前記混合粉中の体積配合率は10 vol%以上80 vol%以下であり、前記磁性粉および非磁性金属粉はいずれも平均粒径が10μm以上150μm以下であることを特徴とする車輪用軸受。 - 請求項1において、前記磁気エンコーダの前記潤滑剤がステアリン酸亜鉛である車輪用軸受。
- 請求項1または請求項2において、前記磁気エンコーダは、前記内方部材に取付けられる環状の芯金の表面に前記多極磁石を設け、前記多極磁石を磁気ディスクとしたものである車輪用軸受。
- 請求項3において、前記内方部材と外方部材間の端部環状空間を密封するシール装置を備え、前記磁気エンコーダは、前記シール装置の構成部品とした車輪用軸受。
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