JP2006153563A - 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】 安定したセンシングの得られる磁力を確保でき、耐食性に優れ、長期の使用,厳しい環境下の使用においても錆の発生の問題がなく、かつ生産性に優れ、低コスト化が図れる磁気エンコーダを提供する。
【解決手段】 円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石14と、この多極磁石14を支持する芯金11とを備えた磁気エンコーダ10とする。上記多極磁石14を、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体とする。この焼結体に用いる前記磁性粉を、焼結体に形成するよりも前に、磁性粉自身に耐食性の表面処理が施されたものとする。磁性粉の表面処理は、例えば燐酸処理またはメッキ処理とされる。
【選択図】 図1
【解決手段】 円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石14と、この多極磁石14を支持する芯金11とを備えた磁気エンコーダ10とする。上記多極磁石14を、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体とする。この焼結体に用いる前記磁性粉を、焼結体に形成するよりも前に、磁性粉自身に耐食性の表面処理が施されたものとする。磁性粉の表面処理は、例えば燐酸処理またはメッキ処理とされる。
【選択図】 図1
Description
この発明は、相対回転する軸受部の回転検出装置等に用いられる磁気エンコーダ、およびそれを備えた車輪用軸受に関し、例えば自動車のアンチロックブレーキシステムにおける前後の車輪回転数を検出する回転検出装置に装着されるベアリングシールの構成部品とされる磁気エンコーダに関する。
従来、自動車のスキッドを防止するためのアンチスキッド用回転検出装置として、次のような構造が多く用いられている。すなわち、前記回転検出装置は歯付ローターと感知センサからなっており、軸受を密封するシール装置よりそれぞれ離間させて配置し、一つの独立した回転検出装置を構成しているものが一般的である。このような従来例は、回転軸に嵌合された歯付ローターを、ナックルに取付られた回転検出センサで感知検出する構造を持ち、使われている軸受は、その側部に独立して設けられたシール装置によって、水分あるいは異物の侵入から守られる。
その他の例として特許文献1には、回転検出装置の装着スペースを削減せしめ感知性能を飛躍的に向上させることを目的として、車輪回転検出のための回転検出装置を有したベアリングシールにおいて、そこに使用するスリンガーの径方向に磁性粉の混入された弾性部材を周状に加硫成形接着し、そこに交互に磁極を配置した構造が示されている。
また、特許文献2には、軸方向の寸法を小さくし、回転部材と固定部材との間の密閉度を良好にし、容易に取付け可能にすることを目的として、回転部材と固定部材との間がシールされ、この回転部材に回転ディスクが取付けられ、その回転ディスクに多極化されたコーダが取付けられたコーダ内蔵密閉構造としたものが示されている。使用するコーダは、磁性粒子を添加したエラストマーからなるものが用いられ、このコーダの側面を固定部材とほぼ同一平面としたシール手段とされている。
磁性粉や磁性粒子を含有するプラスチック(プラストマー)製のコーダは、やはり従来の射出成形や圧縮成形等のように、製品形状に適応した金型を使用して腑形したり、つまり金型どおりの形に成形したり、T形のダイスを用いた押出し成形やカレンダー成形のようなシート成形でシートを成形し打ち抜き加工などにより製品形状にして、その後、金属基板上に接着剤などで接着固定し製作してもよい。またこの場合、インサート成形のようにあらかじめ金型内に金属基板を組込んでおき、その後、溶融樹脂を流し入れて接着工程を同時加工して製作してもよい。
しかし、上記の各磁気エンコーダは、いずれも多極磁石に磁性粉を含むものであり、一方、自動車用軸受等に使用される場合、路面の塩泥水に曝される厳しい環境下に置かれるため、長期使用の間の錆の発生が問題となる。特に、小型化のために磁性粉の含有量を多くした場合、錆が発生し易くなる。そこで、磁気エンコーダの多極磁石を防錆処理することを考えたが、適切な防錆材料の選定が難しい。
また、多極磁石が上記のような磁性粉を含有させたエラストマーやプラストマーでは、次に説明するように種々の課題があるため、本出願人は、多極磁石を、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体としたものを提案した(特願2001−290300号)。このような多極磁石とした場合、その特性に応じた防錆処理が必要となる。
また、多極磁石が上記のような磁性粉を含有させたエラストマーやプラストマーでは、次に説明するように種々の課題があるため、本出願人は、多極磁石を、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体としたものを提案した(特願2001−290300号)。このような多極磁石とした場合、その特性に応じた防錆処理が必要となる。
さらに、本出願人は、多極磁石の表面に、クリヤー系の高防食性塗料の防食皮膜を形成したもの(特願2003−012710号)や、カチオン処理を施したもの(特願2003−279563号公報)を提案した。しかし、さらに優れた耐食性が望まれる場合がある。
この発明の目的は、安定したセンシングの得られる磁力を確保でき、耐食性に優れ、長期の使用,厳しい環境下の使用においても錆の発生の問題のない磁気エンコーダを提供することである。
この発明の他の目的は、部品点数を増やすことなく、コンパクトな構成で回転検出が行え、かつ回転検出のための磁気エンコーダの耐食性、生産性に優れ、低コスト化が図れる車輪用軸受を提供することである。
この発明の他の目的は、部品点数を増やすことなく、コンパクトな構成で回転検出が行え、かつ回転検出のための磁気エンコーダの耐食性、生産性に優れ、低コスト化が図れる車輪用軸受を提供することである。
この発明の磁気エンコーダは、円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石が磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、この焼結体に用いる前記磁性粉の粉体自身を、耐食性の表面処理が施されたものとしたこと特徴とする。
この磁性粉の表面処理は、焼結体に形成するよりも前に、磁性粉自身に施す。この表面処理は、前記混合粉とするよりも前の磁性粉単独の状態で施すことが好ましいが、混合粉の状態で施しても良い。
この磁性粉の表面処理は、焼結体に形成するよりも前に、磁性粉自身に施す。この表面処理は、前記混合粉とするよりも前の磁性粉単独の状態で施すことが好ましいが、混合粉の状態で施しても良い。
この構成によると、上記多極磁石が磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であるため、焼結体の強度を確保しながら、磁性粉の配合比率を高めて、安定したセンシングの得られる磁力を確保でき、コンパクト化が図れる。磁性粉の配合比率を高めた場合、そのままでは錆が発生し易くなる。しかし、この発明は、磁性粉自身に耐食性の表面処理を施すものとし、この表面処理で磁性粉自身の耐食性を向上させたため、磁性粉を用いた焼結体の耐食性も向上し、優れた耐食性が得られる。そのため、長期の使用や、塩泥水を浴びるような厳しい環境下の使用においても錆の発生の問題のない磁気エンコーダとなる。
前記磁性粉の表面処理としては、化成皮膜処理を施しても良く、またメッキ処理を施しても良い。化成皮膜処理としては、燐酸処理や黒染等が採用できるが、燐酸処理が好ましい。これら燐酸処理やメッキ処理によると、磁性粉の優れた耐食性が得られ、焼結体からなる多極磁石の耐食性をより一層向上させることができる。
前記メッキ処理としては、電気メッキ等が用いられる。採用可能な電気メッキの種類としては、鉛フリーはんだメッキ、錫銅メッキ(すなわちSu−Pb合金メッキ)、金メッキ(Au)、銀メッキ(Ag)、はんだメッキ(Sn−Pbメッキ)、銅メッキ、錫メッキ(Sn)、ニッケルメッキ(Ni)、クロムメッキ(Cr)、亜鉛メッキ(Zn)等が挙げられる。
前記メッキ処理としては、電気メッキ等が用いられる。採用可能な電気メッキの種類としては、鉛フリーはんだメッキ、錫銅メッキ(すなわちSu−Pb合金メッキ)、金メッキ(Au)、銀メッキ(Ag)、はんだメッキ(Sn−Pbメッキ)、銅メッキ、錫メッキ(Sn)、ニッケルメッキ(Ni)、クロムメッキ(Cr)、亜鉛メッキ(Zn)等が挙げられる。
上記磁性粉は、サマリウム系磁性粉であっても良く、またネオジウム系磁性粉であっても良い。これらサマリウム系磁性粉やネオジウム系磁性粉を用いると、強い磁力を得ることができる。サマリウム系磁性粉としては、サマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉が、またネオジウム系磁性粉としてはネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉が用いられる。上記磁性粉は、この他に、マンガンアルミ(MnAl)ガスアトマイズ粉であっても良い。
上記非磁性金属粉は、スズ粉であっても良い。磁性粉がフェライト粉やサマリウム系磁性粉やネオジウム系磁性粉である場合に、非磁性金属粉にスズ粉を用いても良い。
上記混合粉は2種以上の磁性粉を含むものであっても良く、また2種以上の非磁性金属粉を含むものであっても良い。また、上記混合粉は、2種以上の磁性粉を含み、かつ2種以上の非磁性金属粉を含むものであっても良い。2種以上の以上の磁性粉または2種以上の金属粉を含むものとした場合は、任意に複数種の粉を混合することで所望の特性を得ることができる。例えばフェライト粉だけでは磁力が足りない場合に、フェライト粉に希土類系磁性材料であるサマリウム系磁性粉やネオジウム系磁性粉を必要量だけ混合し、磁力向上を図りつつ安価に製作することができる。
この発明の車輪用軸受は、内周に複列の転走面を有する外方部材と、この転走面に対向する複列の転走面を外周に有する内方部材と、対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、
前記外方部材および内方部材のうちの回転側の部材におけるインボード側端に磁気エンコーダを嵌合させ、この磁気エンコーダを、この発明における上記いずれかの構成の磁気エンコーダとしたものである。
車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、磁気エンコーダが塩泥水を被ることがある。しかし、磁気エンコーダを構成する多極磁石の焼結体に用いられる磁性粉を、この磁性粉自身に耐食性の表面処理が施されたものとしたため、焼結体の耐食性に優れ、塩泥水により磁気エンコーダに錆が発生することの防止効果が高い。
また、磁気エンコーダとこれに対面させる磁気センサとの間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、この噛み込みに対して、次のように保護される。すなわち、磁性粉と非磁性金属粉とからなる焼結体の多極磁石の表面高度は、従来の磁性粉や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための磁気エンコーダを有した車輪用軸受において、車両走行中に回転側の多極磁石の表面と固定側の磁気センサの表面との間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、多極磁石の摩耗損傷に大幅な低減効果がある。
前記外方部材および内方部材のうちの回転側の部材におけるインボード側端に磁気エンコーダを嵌合させ、この磁気エンコーダを、この発明における上記いずれかの構成の磁気エンコーダとしたものである。
車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、磁気エンコーダが塩泥水を被ることがある。しかし、磁気エンコーダを構成する多極磁石の焼結体に用いられる磁性粉を、この磁性粉自身に耐食性の表面処理が施されたものとしたため、焼結体の耐食性に優れ、塩泥水により磁気エンコーダに錆が発生することの防止効果が高い。
また、磁気エンコーダとこれに対面させる磁気センサとの間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、この噛み込みに対して、次のように保護される。すなわち、磁性粉と非磁性金属粉とからなる焼結体の多極磁石の表面高度は、従来の磁性粉や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための磁気エンコーダを有した車輪用軸受において、車両走行中に回転側の多極磁石の表面と固定側の磁気センサの表面との間隙に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、多極磁石の摩耗損傷に大幅な低減効果がある。
この発明の車輪用軸受は、前記磁気エンコーダの芯金に摺接する複数のリップを有するシール部材を、前記外方部材および内方部材のうちの固定側の部材に嵌合させたものであっても良い。
この構成の場合、上記シール部材と磁気エンコーダとでシール装置が構成され、上記磁気エンコーダがシール装置の構成要素となる。そのため、部品点数を増やすことなく、よりコンパクトな構成で車輪の回転を検出することができる。また、このようにシール装置に磁気エンコーダを構成した場合、上記の路面環境下にさらされることによる磁気エンコーダと磁気センサ間の砂粒等の噛み込みが問題となるが、この噛み込みに対して、上記と同様に多極磁石の表面高度が硬いことにより、摩耗損傷の低減効果が得られる。
この構成の場合、上記シール部材と磁気エンコーダとでシール装置が構成され、上記磁気エンコーダがシール装置の構成要素となる。そのため、部品点数を増やすことなく、よりコンパクトな構成で車輪の回転を検出することができる。また、このようにシール装置に磁気エンコーダを構成した場合、上記の路面環境下にさらされることによる磁気エンコーダと磁気センサ間の砂粒等の噛み込みが問題となるが、この噛み込みに対して、上記と同様に多極磁石の表面高度が硬いことにより、摩耗損傷の低減効果が得られる。
この発明の磁気エンコーダは、円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石が磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、この焼結体に用いる前記磁性粉の粉体自身を、耐食性の表面処理が施されたものとしたため、安定したセンシングの得られる磁力を確保でき、耐食性に優れ、長期の使用,厳しい環境下の使用においても錆の発生の問題のないものとなる。
この発明の車輪用軸受は、この発明の磁気エンコーダを備えたものであるため、コンパクトな構成で回転検出が行え、かつ回転検出のための磁気エンコーダの耐久性、耐食性、および生産性に優れたものとなり、低コスト化が図れる。特に、シール装置の構成要素を磁気エンコーダとした場合は、部品点数を増やすことなく、車輪の回転を検出することができる。
この発明の車輪用軸受は、この発明の磁気エンコーダを備えたものであるため、コンパクトな構成で回転検出が行え、かつ回転検出のための磁気エンコーダの耐久性、耐食性、および生産性に優れたものとなり、低コスト化が図れる。特に、シール装置の構成要素を磁気エンコーダとした場合は、部品点数を増やすことなく、車輪の回転を検出することができる。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。図1に示すように、この磁気エンコーダ10は、金属製の環状の芯金11と、この芯金11の表面に周方向に沿って設けられた多極磁石14とを備える。多極磁石14は周方向に多極に磁化され、交互に磁極N,Sが形成された部材であり、多極に磁化された磁気ディスクからなる。磁極N,Sは、ピッチ円直径PCD(図2)において、所定のピッチpとなるように形成されている。多極磁石14は、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉の圧粉体を焼結させた焼結体である。この焼結体に用いる前記磁性粉は、後に説明するように、磁性粉自身に耐食性の表面処理が施されたものとする。
この磁気エンコーダ10は、回転部材(図示せず)に取付けられ、図3に示すように多極磁石14に磁気センサ15を対面させて回転検出に使用されるものであり、磁気エンコーダ10と磁気センサ15とで回転検出装置20が構成される。同図は、磁気エンコーダ10を軸受(図示せず)のシール装置18の構成要素とした応用例を示し、磁気エンコーダ10は、軸受の回転側の軌道輪に取付けられる。シール装置18は、磁気エンコーダ10と、固定側のシール部材9とで構成される。シール装置18の具体構成については後に説明する。
多極磁石14に混入する磁性粉としては、バリウム系およびストロンチウム系などの等方性または異方性フェライト粉であっても良い。これらのフェライト粉は顆粒状粉体であっても、湿式異方性フェライトコアからなる粉砕粉であっても良い。この湿式異方性フェライトコアからなる粉砕粉を磁性粉とした場合、非磁性金属粉との混合粉を磁場中で成形された異方性のグリーン体とする必要がある。
上記磁性粉は、希土類系磁性材料であっても良い。例えば希土類系磁性材料であるサマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉やネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉のそれぞれ単独磁性粉であっても良い。また、磁性粉はマンガンアルミ(MnAl)ガスアトマイズ粉であっても良い。
また、上記磁性粉は、サマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉、ネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉、およびマンガンアルミ(MnAl)ガスアトマイズ粉のいずれか2種以上を混合させたものであっても良い。例えば、上記磁性粉はサマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉とネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉とを混合させたもの、マンガンアルミガスアトマイズ粉とサマリウム鉄系磁性粉とを混合させたもの、およびサマリウム鉄系磁性粉とネオジウム鉄系磁性粉とマンガンアルミガスアトマイズ粉とを混合させたもの、のいずれかであっても良い。例えば、フェライト粉だけでは磁力が足りない場合に、フェライト粉に希土類系磁性材料であるサマリウム鉄(SmFeN)系磁性粉や、ネオジウム鉄(NdFeB)系磁性粉を必要量だけ混合し、磁力向上を図りつつ安価に製作することもできる。
多極磁石14を形成する非磁性金属粉には、スズ、銅、アルミ、ニッケル、亜鉛、タングステン、マンガンなどの粉体、または非磁性のステンレス系金属粉のいずれか単独(1種)の粉体、もしくは2種以上からなる混合した粉体、もしくは2種以上からなる合金粉末を使用することができる。
多極磁石14となる焼結体に用いる磁性粉は、図1(C)に拡大して示すように、磁性粉100自身に耐食性の表面処理により防食皮膜101が形成されたものとする。
この磁性粉100の表面処理としては、化成皮膜処理を施しても良く、またメッキ処理を施しても良い。一般的な金属粉体のメッキ等による表面処理技術は、既に実用化されている。磁性粉100の化成皮膜処理としては、燐酸処理や黒染等が採用できるが、燐酸処理が好ましい。これら燐酸処理やメッキ処理によると、磁性粉の優れた耐食性が得られ、焼結体からなる多極磁石14の耐食性をより一層向上させることができる。
この磁性粉100の表面処理としては、化成皮膜処理を施しても良く、またメッキ処理を施しても良い。一般的な金属粉体のメッキ等による表面処理技術は、既に実用化されている。磁性粉100の化成皮膜処理としては、燐酸処理や黒染等が採用できるが、燐酸処理が好ましい。これら燐酸処理やメッキ処理によると、磁性粉の優れた耐食性が得られ、焼結体からなる多極磁石14の耐食性をより一層向上させることができる。
磁性粉100のメッキ処理としては、電気メッキ等が用いられる。採用可能な電気メッキの種類としては、鉛フリーはんだメッキ、錫銅メッキ(すなわちSu−Pb合金メッキ)、金メッキ(Au)、銀メッキ(Ag)、はんだメッキ(Sn−Pbメッキ)、銅メッキ、錫メッキ(Sn)、ニッケルメッキ(Ni)、クロムメッキ(Cr)、亜鉛メッキ(Zn)等が挙げられる。
芯金11の材質となる金属は、磁性体、特に強磁性体となる金属が好ましく、例えば磁性体でかつ防錆性を有する鋼板が用いられる。このような鋼板として、フェライト系のステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)や、防錆処理された圧延鋼板等を用いることができる。
芯金11の形状は、種々の円環状の形状とできるが、多極磁石14を固定できる形状が好ましい。特に、加締固定や嵌合固定等の機械的な固定が行える形状が好ましい。加締固定の場合、芯金11は、例えば図1(B)に示すように、嵌合側となる内径側の円筒部11aと、その一端から外径側へ延びる立板部11bと、外径縁の他円筒部11cとでなる断面概ね逆Z字状の円環状とする。なお、芯金11は断面L字状のものとしても良く、その場合は図1(B)の芯金11において、他円筒部11cが省略された形状のものとされる。芯金11を断面L字状とした場合は、例えば爪部等を立板部11b等に設けて加締固定する。
図1(B)の芯金11において、円筒部11a、立板部11b、および他円筒部11cは、鋼板等の金属板から一体にプレス成形されたものである。立板部11bは平坦に形成されており、その平坦な立板部11bの表面に重ねて多極磁石14の未着磁の焼結体を組み込み、外周縁の他円筒部11cを加締めることで、芯金11の立板部11bに重なり状態に多極磁石14が固定されて、焼結体芯金一体品21とされる。上記他円筒部11cは、その断面における先端側部分または略全体が、加締部となる。また、この加締部は、芯金11の円周方向の全周にわたって延び、したがって円環状となっている。なお、多極磁石14の他円筒部11cにより固定される部分は、多極磁石14の被検出面となる表面よりも凹む凹み部14bとなっていて、これにより塑性変形部11caが多極磁石14の被検出面となる表面に突出しないように成されている。
加締固定は、上記のように全周に連続して行う他に、図4,図5に断面図および正面図で示すように行っても良い。この例では、芯金11を図1の例と同じく、内径側の円筒部11aと、その一端から外径側へ延びる立板部11bと、その外径縁の円筒状の他円筒部11cとでなる断面概ね逆Z字状の円環状としている。また、他円筒部11cにおける周方向の複数箇所に、ステーキング等によって、内径側へ突出状態に塑性変形させた塑性変形部11caを設け、その塑性変形部11caにより多極磁石14を芯金11の立板部11bに固定している。この例においても、多極磁石14の塑性変形部11caにより固定される部分は、多極磁石14の被検出面となる表面よりも凹む凹み部14bとなっていて、これにより塑性変形部11caが多極磁石14の被検出面となる表面に突出しないように成されている。凹み部14bは、外径側に至るに従って表面から背面側へ近づく傾斜面14bとされている。
図1および図4に示す各例において、芯金11は、図6のように、立板部bが、内周側部分11baと外周側部分11bbとで互いに軸方向にずれた2段形状を成すものとしても良い。図6において、図示は省略するが、多極磁石14は、図1の例と同様に立板部11bにおける他円筒部11cの突出側の面に配置される。
さらに、図7に示すように、図1の例と同様に断面概ね逆Z字状とされた芯金11において、その他円筒部11cの端縁における円周方向複数箇所に舌片状の爪部11cbを設け、この舌片状爪部11cbを矢印のように内径側へ塑性変形させることにより、つまり折り曲げるように加締ることにより、多極磁石14を芯金11に固定しても良い。多極磁石14は、図1などの例と同様に立板部11bにおける他円筒部11cの突出側の面に配置される。この例においても、図6の例と同様に、立板部11bを2段形状としている。立板部11bを2段形状とした場合、多極磁石14の立板部11b側の側面形状は、図12(B)に示すように、立板部11bの2段形状に沿った側面形状としても良い。
この構成の磁気エンコーダ10は、図3と共に前述したように、多極磁石14に磁気センサ15を対面させて回転検出に使用される。磁気エンコーダ10を回転させると、多極磁石14の多極に磁化された各磁極N,Sの通過が磁気センサ15で検出され、パルスのかたちで回転が検出される。磁極N,Sのピッチp(図2)は細かく設定でき、例えばピッチpが1.5mm、ピッチ相互差±3%という精度を得ることもでき、これにより精度の高い回転検出が行える。ピッチ相互差は、磁気エンコーダ10から所定距離だけ離れた位置で検出される各磁極間の距離の差を目標ピッチに対する割合で示した値である。磁気エンコーダ10が図3のように軸受のシール装置18に応用されたものである場合、磁気エンコーダ10の取付けられた軸受の回転が検出されることになる。
この磁気エンコーダ10は、焼結体からなる多極磁石14における磁性粉100自身に表面処理を施して防食皮膜101を形成したため、磁性粉100自身の耐食性が向上し、この磁性粉100を用いた焼結体に優れた耐食性が得られる。例えば、多極磁石14に表面処理を施して防食皮膜を形成した場合よりも優れた耐食性が得易い。そのため、長期の使用や、塩泥水を浴びるような厳しい環境下の使用においても錆の発生の問題のない磁気エンコーダとなる。
また、この磁気エンコーダ10において、多極磁石14は、磁性粉の混入した焼結体からなるため、焼結体の強度を確保しながら、磁性粉の配合比率を高め、安定したセンシングの得られる磁力を確保でき、耐摩耗性に優れ、また生産性にも優れたものとなる。
さらに、多極磁石14の表面硬度は、従来の磁性粉や磁性粒子の含有する弾性部材やエラストマー製のコーダに比べて硬い。そのため、車輪回転検出のための回転検出装置20に応用した場合に、車両走行中に回転側の多極磁石14の表面と固定側の磁気センサ15の表面の隙間に、砂粒などの粒子が噛み込まれても、多極磁石14の摩耗損傷が生じ難く、従来の弾性体製としたものに比べて、摩耗の大幅な低減効果がある。
つぎに、この磁気エンコーダ10を備えた車輪用軸受の一例、およびそのシール装置18の例を、図8,図9と共に説明する。図8に示すように、この車輪用軸受10は、第3世代型のものであって、内周に複列の転走面1aを有する外方部材1と、これら転走面1aに対向する転走面2aを有する内方部材2と、対向する転走面1a,2a間に介在した複列の転動体3と、内外の部材2,1間の環状空間の両端をそれぞれ密封するシール部材8,9とを備える。
この車輪用軸受10は、複列の転がり軸受、詳しくは複列のアンギュラ玉軸受とされていて、その内方部材2は、ハブ輪5とその軸部外周に嵌合する内輪6とでなり、各列の転走面2a,2aが、ハブ輪5および内輪6の各外周に形成されている。ハブ輪5は、その外周に車輪取付用のフランジ5aを有し、このフランジ5aに車輪(図示せず)がボルト7で取付けられる。外方部材1は、その外周のフランジ1bを対して、車体の懸架装置におけるナックルに取付けられる。転動体3はボールからなり、保持器4により保持されている。
この車輪用軸受10は、複列の転がり軸受、詳しくは複列のアンギュラ玉軸受とされていて、その内方部材2は、ハブ輪5とその軸部外周に嵌合する内輪6とでなり、各列の転走面2a,2aが、ハブ輪5および内輪6の各外周に形成されている。ハブ輪5は、その外周に車輪取付用のフランジ5aを有し、このフランジ5aに車輪(図示せず)がボルト7で取付けられる。外方部材1は、その外周のフランジ1bを対して、車体の懸架装置におけるナックルに取付けられる。転動体3はボールからなり、保持器4により保持されている。
図9は、磁気エンコーダ付きのシール装置18を拡大して示す。このシール装置18は、図3に示したものと同じであり、その一部を前述したが、図9において、詳細を説明する。このシール装置18は、磁気エンコーダ10またはその芯金11がスリンガとなり、内方部材1および外方部材2のうちの回転側の部材に取付けられる。この例では、回転側の部材は内方部材1であるため、磁気エンコーダ10は内方部材1に取付けられる。
このシール装置18は、内方部材1と外方部材2に各々取付けられた第1および第2の金属板製の環状のシール板(11),12を有する。第1のシール板(11)は、上記磁気エンコーダ10における芯金11のことであり、以下、芯金11として説明する。磁気エンコーダ10は、図1ないし図3と共に前述した第1の実施形態にかかるものであり、その重複する説明を省略する。この磁気エンコーダ10における多極磁石14に対面して、同図のように磁気センサ15を配置することにより、車輪回転速度の検出用の回転検出装置20が構成される。
第2のシール板12は、上記シール部材9(図3)を構成する部材であり、第1のシール板である芯金11の立板部11bに摺接するサイドリップ16aと円筒部11aに摺接するラジアルリップ16b,16cとを一体に有する。これらリップ16a〜16cは、第2のシール板12に加硫接着された弾性部材16の一部として設けられている。これらリップ16a〜16cの枚数は任意で良いが、図9の例では、1枚のサイドリップ16aと、軸方向の内外に位置する2枚のラジアルリップ16c,16bとを設けている。第2のシール板12は、固定側部材である外方部材2との嵌合部に弾性部材16を抱持したものとしてある。すなわち、弾性部材16は、円筒部12aの内径面から先端部外径までを覆う先端覆い部16dを有するものとし、この先端覆い部16dが、第2のシール板12と外方部材2との嵌合部に介在する。第2のシール板12の円筒部12aと第1のシール板である芯金11の他円筒部11cとは僅かな径方向隙間をもって対峙させ、その隙間でラビリンスシール17を構成している。
この構成の車輪用軸受によると、車輪と共に回転する内方部材1の回転が、この内方部材1に取付けられた磁気エンコーダ10を介して、磁気センサ15で検出され、車輪回転速度が検出される。
磁気エンコーダ10は、シール装置18の構成要素としたため、部品点数を増やすことなく、車輪の回転を検出することができる。車輪用軸受は、一般に路面の環境下にさらされた状態となり、磁気エンコーダ10が塩泥水を被ることがあるが、磁気エンコーダ10を構成する多極磁石14は、その焼結体に用いられる磁性粉100に防食皮膜101が形成されたものであるため、塩泥水により磁気エンコーダ10に錆が発生することの防止効果が高い。また、磁気エンコーダ10と、これに対面させる磁気センサ15との間に砂粒等の粒子が噛み込むことがあるが、上記のように磁気エンコーダ10の多極磁石14は焼結体からなるものであって硬質であるため、多極磁石14の表面の摩耗損傷は従来の弾性体製のものに比べて大幅に低減される。
内外の部材1,2間のシールについては、第2のシール板12に設けられた各シールリップ16a〜16cの摺接と、第2のシール板12の円筒部12aに第1のシール板である芯金11の他円筒部11cが僅かな径方向隙間で対峙することで構成されるラビリンスシール17とで得られる。
図10は、車輪用軸受の他の実施形態を示す。この車輪用軸受は、第2世代型のものであり、内方部材1が、ハブ輪5Aと、このハブ輪5Aの外周に嵌合した複列の内輪6A,6Bとでなる。ハブ輪5Aには等速ジョイント7の外輪が連結される。その他の構成は図8,図4に示す車輪用軸受と同様である。なお、図8の例では図示を省略したが、図8の車輪用軸受も、等速ジョイントの外輪が連結される。
なお、図8および図9に示す車輪用軸受、および図10に示す車輪用軸受は、いずれも磁気エンコーダ10の芯金11を、図1の形状のものとした場合について示しているが、磁気エンコーダ10として図4〜図7に示した各例のものを用いても良い。
また、磁気エンコーダ10を軸受のシール装置18の構成要素とする場合等において、多極磁石14を、上記各実施形態とは逆に軸受に対して内向きに設けても良い。すなわち、多極磁石14を芯金11の軸受内側の面に設けても良い。その場合、芯金11は非磁性体製のものとすることが好ましい。
また、外方部材が回転側部材となる車輪用軸受では、外方部材に磁気エンコーダを取付ける。
また、磁気エンコーダ10を軸受のシール装置18の構成要素とする場合等において、多極磁石14を、上記各実施形態とは逆に軸受に対して内向きに設けても良い。すなわち、多極磁石14を芯金11の軸受内側の面に設けても良い。その場合、芯金11は非磁性体製のものとすることが好ましい。
また、外方部材が回転側部材となる車輪用軸受では、外方部材に磁気エンコーダを取付ける。
1…内方部材
2…外方部材
3…転動体
10…磁気エンコーダ
11…芯金(第1のシール板)
14…多極磁石
15…磁気センサ
16a…サイドリップ
16b,16c…ラジアルリップ
85…シール装置
20…回転検出装置
100…磁性粉
101…防食皮膜
2…外方部材
3…転動体
10…磁気エンコーダ
11…芯金(第1のシール板)
14…多極磁石
15…磁気センサ
16a…サイドリップ
16b,16c…ラジアルリップ
85…シール装置
20…回転検出装置
100…磁性粉
101…防食皮膜
Claims (5)
- 円周方向に交互に磁極を形成した多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石が磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、この焼結体に用いる前記磁性粉の粉体自身を、耐食性の表面処理が施されたものとしたこと特徴とする磁気エンコーダ。
- 請求項1において、前記磁性粉の表面処理として燐酸処理を施した磁気エンコーダ。
- 請求項1において、前記磁性粉の表面処理としてメッキ処理を施した磁気エンコーダ。
- 内周に複列の転走面を有する外方部材と、この転走面に対向する複列の転走面を外周に有する内方部材と、対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、
前記外方部材および内方部材のうちの回転側の部材におけるインボード側端に磁気エンコーダを嵌合させ、この磁気エンコーダを、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気エンコーダとした車輪用軸受。 - 請求項4において、前記磁気エンコーダの芯金に摺接する複数のリップを有するシール部材を、前記外方部材および内方部材のうちの固定側の部材に嵌合させた車輪用軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004342253A JP2006153563A (ja) | 2004-11-26 | 2004-11-26 | 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受 |
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Publications (1)
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2004
- 2004-11-26 JP JP2004342253A patent/JP2006153563A/ja active Pending
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