以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における油圧回路の要部を示す図である。
図において、SIは自動変速機の油圧回路、95は自動変速機の制御を行う制御装置である。ところで、前記自動変速機は流体伝動装置としての図示されないトルクコンバータ及び変速装置を備え、エンジンの回転がトルクコンバータを介して変速装置に送られ、該変速装置において、シフトアップの変速又はシフトダウンの変速が行われ、増速された回転、又は減速された回転が図示されない駆動輪に伝達されるようになっている。そのために、前記変速装置は、一つ以上の差動回転装置としてのプラネタリギヤユニット、摩擦係合要素としての各種のクラッチ及び各種のブレーキ、ワンウェイクラッチ等が配設され、所定のクラッチ及びブレーキを選択的に係脱させたり、ワンウェイクラッチを選択的にロックさせたりすることによって、プラネタリギヤユニットから増速された回転、又は減速された回転を出力するようになっている。
また、前記油圧回路SIには、電流を供給したり、信号油圧を供給したりすることによって作動させられる各種のバルブが配設され、所定のバルブを作動させることによって所定のクラッチ及びブレーキが係脱させられる。
ところで、前記制御装置95が変速を行うに当たり、変速出力を発生させると、制御装置95から前記バルブのうちの所定のリニアソレノイドバルブに電流が供給され、該リニアソレノイドバルブ10によって所定のパターンで発生させられた制御圧がクラッチ及びブレーキの油圧サーボに供給され、その結果、油圧サーボ内に油圧がアプライ圧として供給されたり、油圧サーボがドレーンされ、油圧が抜かれたりする。
この場合、前記クラッチ及びブレーキの係脱に伴って、変速装置における入力側の回転速度、すなわち、入力回転速度と出力側の回転速度、すなわち、出力回転速度との関係が変化する。そこで、第1、第2の回転速度検出部としての図示されない第1、第2の回転速度センサが配設され、該第1、第2の回転速度センサは、前記出力回転速度及び入力回転速度を検出して、制御装置95に送る。該制御装置95の図示されない変速判定処理手段は、変速判定処理を行い、前記出力回転速度及び入力回転速度を読み込み、出力回転速度に対する入力回転速度の比によって表されるギヤ比を算出し、該ギヤ比の変化率を更に算出し、該変化率に基づいて変速の状況を把握する。
ところで、本実施の形態においては、前記摩擦係合要素のうちのクラッチCを係脱するために、前記油圧回路SIに、圧力制御弁としての、かつ、制御圧発生部としてのリニアソレノイドバルブ10が配設され、該リニアソレノイドバルブ10によって発生させられた制御圧がクラッチCの図示されない油圧サーボに供給され、クラッチCが係脱される。そして、90は圧力調整弁としてのレギュレータバルブであり、該レギュレータバルブ90は、オイルポンプ97によって発生させられた油圧を調圧してレギュレータ圧としてのライン圧を発生させる。そのために、圧力調整装置としての、かつ、調整圧力発生部としてのリニアソレノイドバルブ99は、制御装置95からの電流を受けて信号圧を発生させ、該信号圧を前記レギュレータバルブ90に送る。
また、前記リニアソレノイドバルブ10は、ソレノイド駆動装置を構成するリニアソレノイド部11、及びバルブ部としての調圧バルブ部12を備え、リニアソレノイド部11を上方に、調圧バルブ部12を下方に置いて図示されない自動変速機ケースに取り付けられる。前記リニアソレノイドバルブ10は、前記レギュレータバルブ90と接続され、ライン圧を入力圧として受け、制御装置95からの電流が、リニアソレノイド部11の図示されないコイルに供給されることによって、調圧バルブ部12を作動させ、電流に対応する油圧を所定の出力圧(パイロット圧)として発生させ、該出力圧を前記制御圧として前記クラッチCの油圧サーボに供給する。なお、本実施の形態においては、前記摩擦係合要素としてクラッチCを係脱するようにしているが、該クラッチCに代えてブレーキを係脱することもできる。
本実施の形態においては、レギュレータバルブ90とリニアソレノイドバルブ10とが直接接続されるようになっているが、レギュレータバルブ90とリニアソレノイドバルブ10との間にモジュレータバルブを配設し、ライン圧をモジュレータバルブで減圧することによってモジュレータ圧を発生させ、該モジュレータ圧を入力圧としてリニアソレノイドバルブ10に供給することもできる。
次に、前記リニアソレノイドバルブ10について詳細に説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの作動状態を示す図、図4は本発明の第1の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの初期状態を示す図、図5は本発明の第1の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの特性図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの動作を示すフローチャートである。なお、図5において、横軸に時間tを、縦軸にライン圧、出力圧P及び電流iを採ってある。
前記リニアソレノイドバルブ10のリニアソレノイド部11は、環状のコア15、該コア15に巻装され、電流が供給されて推力を発生させる被電流供給部としてのコイル17、該コイル17に対して進退(図3及び4において左右方向に移動)自在に配設され、前記推力によって移動させられる可動部としての可動鉄心54、前記コイル17に電流を供給するターミナル21、及び筒状の筐(きょう)体としてのヨーク20を備え、該ヨーク20は、前記コア15、コイル17及び可動鉄心54を包囲して配設される。
前記コア15は、筒状の本体16、及び該本体16の前端(図3及び4において左端)に径方向外方に向けて突出させて形成されたフランジ部28を備え、本体16に貫通孔18が形成される。また、前記本体16は、軸方向においてコイル17より長くされ、本体16の後端(図3及び4において右端)は、所定の量だけコイル17の後端より後方(図3及び4において右方)に突出させられる。
前記可動鉄心54は、環状のプランジャ31、及び該プランジャ31の中央に形成された穴34に嵌(かん)入されて固定されたシャフト32を備える。前記プランジャ31は、円板状部35、及び該円板状部35の外周縁において前方(図3及び4において左方)に向けて突出させて形成された筒状部36を備える。そして、前記シャフト32は、前記貫通孔18を貫通して延び、本体16の前端及び後端に配設されたブシュ19を介して、コア15に対して進退自在に、かつ、摺(しゅう)動自在に支持される。また、前記円板状部35の前端面(図3及び4において左端面)には、環状のプレート33がシャフト32を包囲して取り付けられ、前記プレート33は、コア15とプランジャ31とを磁気的に分離させるために非磁性体によって形成される。
そして、前記ヨーク20は、有底の筒状体から成り、筒状部55及び円形の形状を有する底部56を備え、前記筒状部55の前端の円周方向における所定の箇所に切欠57が形成され、該切欠57を介してコア15にターミナル21が取り付けられる。
また、前記ヨーク20において、筒状部55の前端にかしめ部80が形成され、ヨーク20内にコア15、コイル17及び可動鉄心54を嵌入し、調圧バルブ部12のスリーブ62をセットした後、かしめ部80とスリーブ62の後端に形成されたフランジ部63とをかしめることによって、リニアソレノイド部11及び調圧バルブ部12が一体的に組み付けられる。このとき、前記可動鉄心54において、シャフト32の前端面に調圧バルブ部12の内スプール26の後端面(図3及び4において右端面)が当接させられる。
前記コア15、プランジャ31及びヨーク20は、強磁性体から成り、強磁性体として、例えば、電磁軟鉄等を使用することができる。該電磁軟鉄としては、純鉄を95〔%〕以上、好ましくは、ほぼ99〔%〕以上(小数点第1位で四捨五入して99〔%〕以上)含むもの、すなわち、実質的に純鉄が使用される。また、シャフト32は、非磁性体から成り、非磁性体として、例えば、ステンレス鋼を使用することができる。
前記可動鉄心54は、図3に示される作動状態で前進限位置に置かれ、図4に示される初期状態で後退限位置に置かれる。そして、作動状態において、プランジャ31は、本体16の後端にプレート33を介して当接させられ、本体16の後端部(図3及び4において右端部)を包囲する。また、初期状態において、プランジャ31はヨーク20に当接する。なお、Sは、前記ターミナル21に電流が供給されると、本体16の後端の外周縁と筒状部36の内周縁との間に形成される吸引部である。
前記筒状部36には、円周方向における所定の箇所に、軸方向に貫通させて穴30が形成され、該穴30を介してプランジャ31より前方と後方とが連通させられる。したがって、可動鉄心54が進退させられるのに伴って、プランジャ31より前方の油が後方に流れたり、プランジャ31より後方の油が前方に流れたりする。
一方、調圧バルブ部12は、前記スリーブ62、内スプール26、外スプール27、前記スリーブ62の前端に固定され、外スプール27がスリーブ62から抜け出すのを防止する抜止め用のエンドプレート64、該エンドプレート64と外スプール27の前端との間に配設され、外スプール27をリニアソレノイド部11側に向けて第1の付勢力としてのスプリング荷重f1で付勢する第1の付勢部材としてのスプリング44、及び前記外スプール27内において、内スプール26をリニアソレノイド部11側に向けて第2の付勢力としてのスプリング荷重f2で付勢する第2の付勢部材としてのスプリング45を備える。なお、前記外スプール27によって第1のスプールが、内スプール26によって第2のスプールが構成される。また、前記エンドプレート64は、前記スプリング荷重f1を調整するための付勢力調整部材を構成する。
前記内スプール26は、外スプール27より径方向内方において進退自在に、すなわち、外スプール27に対して相対的に移動自在に、かつ、摺動自在に配設される。そして、前記内スプール26は、前端に形成され、スプリング45内に挿入されるばね座60、該ばね座60の後方に隣接させて形成された大径のランド66、該ランド66の後方に隣接させて形成された中径のグルーブ67、該グルーブ67の後方に隣接させて形成された大径のランド68、及び該ランド68の後方に隣接させて形成され、前記シャフト32の前端面と当接させられる小径の可動鉄心当接部69を備える。
また、前記外スプール27は、スリーブ62より径方向内方において進退自在に、かつ、スリーブ62に対して相対的に移動自在に、かつ、摺動自在に配設される。そして、前記外スプール27は、前端に形成され、スプリング44内に挿入されるばね座70、該ばね座70の後方に隣接させて形成された大径のランド71、該ランド71の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ72、該グルーブ72の後方に隣接させて形成された大径のランド73、該ランド73の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ74、及び該グルーブ74の後方に隣接させて形成された中径のランド75を備える。そして、前記グルーブ72内には、スプリング45内に挿入されるばね座76が、ランド71の後端面に隣接させて、かつ、前記ばね座60と対向させて形成される。なお、ばね座60、76によって内スプール26用の停止部が構成される。
前記ばね座70、ランド71及びばね座76の軸心には、軸方向に貫通するドレーン孔78が形成され、該ドレーン孔78は、外スプール27内において内スプール26より前方に形成された室をスリーブ62外に連通させる。
また、前記グルーブ72、74の所定の箇所には、径方向に貫通する第1、第2のフィードバック孔81、82が形成され、内スプール26と外スプール27との間には、グルーブ67の外周面に沿って筒状のフィードバック油路83が形成される。そして、ランド75の径方向内方において、後端面から前方にかけて加工部としての内周面を加工して、所定の距離だけ内径が大きくされ、ランド68及び可動鉄心当接部69の外周面に沿って、筒状のドレーン油路84が形成される。
前記スリーブ62は、前記レギュレータバルブ90(図1)から供給された入力圧が供給(IN)される入力ポートp1、出力圧Pを制御圧として発生させ、油圧サーボに対して出力(OUT)するための出力ポートp2、密閉されたフィードバック圧作用部としてのフィードバックポートp3及びドレーンポートp4〜p6を備え、前記フィードバックポートp3は、第1、第2のフィードバック孔81、82及びフィードバック油路83を介して前記出力ポートp2と連通させられ、出力圧Pがフィードバック圧として供給され、ランド73、75の面積差に対応するフィードバック力を発生させ、該フィードバック力で外スプール27を前方に付勢する。
したがって、該外スプール27は、可動鉄心54において発生させられ、内スプール26及びスプリング45を介して伝達された推力、スプリング44のスプリング荷重f1及びフィードバック圧によるフィードバック力を受け、可動鉄心当接部69をシャフト32に当接させた状態で、可動鉄心54と一体的に進退する。
また、前記内スプール26は、可動鉄心54において発生させられ、直接伝達された推力及びスプリング45のスプリング荷重f2を受け、前記フィードバック油路83を介して供給された前記出力圧Pを、選択的にフィードバックさせて外スプール27に加え、作用させる。そのために、前記推力が変更されるのに伴って、内スプール26と外スプール27とが相対的に移動させられると、フィードバック油路83と入力ポートp1及びドレーン油路84との連通状態が切り換えられる。そして、前記内スプール26は、外スプール27内において、フィードバック圧を前記外スプール27に作用させるかどうかの切換えを行うためのフィードバック圧切換手段を構成する。
本実施の形態においては、フィードバック圧作用部としてフィードバックポートp3が形成されるようになっているが、フィードバックポートp3に代えてフィードバック圧を外スプール27に作用させるための圧力室を形成することもできる。
次に、図5及び6に基づいて、前記構成のリニアソレノイドバルブ10の動作について説明する。なお、図5において、横軸に時間tを、縦軸に出力圧Pを採っていて、リニアソレノイドバルブ10の特性を表すために、便宜上、時間tの経過に伴う出力圧Pの推移が表されているが、クラッチCを係脱する際の実際の出力圧Pの推移を表すものではない。
この場合、リニアソレノイドバルブ10はノーマルオープンタイプの構造を有し、ターミナル21に電流iが供給されない場合、調圧バルブ部12において、入力ポートp1と出力ポートp2とが連通させられる。
そこで、制御装置95は、所定の変速開始条件が成立すると、変速出力を発生させ、変速を開始する。そして、前記制御装置95の図示されない初期化処理手段は、初期化処理を行い、タイミングt0で、ターミナル21に最大の値i1の電流iを供給する。
また、前記制御装置95の図示されない油圧調整処理手段は、油圧調整処理を行い、所定の電流I1をリニアソレノイドバルブ99に送り、該リニアソレノイドバルブ99は、信号圧を発生させてレギュレータバルブ90に送り、ライン圧を、制御圧を発生させるのに適した低めの第1の圧力、本実施の形態においては、1000〔kPa〕に設定する。
続いて、前記制御装置95の図示されないスウィープ制御処理手段は、スウィープ制御処理を行い、スウィープ制御を開始する。
この場合、出力圧Pのパターンに対応させてターミナル21に供給される電流iが設定され、図示されない記録装置に、時間tの経緯と共に電流iが記録される。そして、前記スウィープ制御処理手段は、時間tの経緯に対応させて電流iを読み込み、ターミナル21に供給する。なお、電流iの変化量に対する出力圧Pの変化量の比は、前記スプリング44、45の各ばね定数、ランド73、75の面積差等によって設定される。
そして、前記ターミナル21に電流iが供給されると、リニアソレノイド部11において、前記電流iに対応する磁束が生じ、ヨーク20からプランジャ31及びコア15を順に通ってヨーク20に戻る磁路が形成され、該磁路における本体16の後端の外周縁と筒状部36の前端の内周縁との間に前記吸引部Sが形成される。
次に、コイル17が可動鉄心54を所定の吸引力で吸引すると、可動鉄心54に、電流iに比例する推力が発生させられ、可動鉄心54が電流iの値i1に対応させて設定された前進限位置に置かれ、可動鉄心54の後端面が底部56から離される。
一方、調圧バルブ部12において、前記推力が、内スプール26に直接伝達され、内スプール26は前記スプリング荷重f2に抗して前進(図3及び4において左方向に移動)させられ、スプリング45を収縮させるとともに、内スプール26及びスプリング45を介して外スプール27に伝達され、外スプール27はスプリング荷重f1に抗して前進させられ、スプリング44を収縮させる。
その結果、入力ポートp1と出力ポートp2とがランド73によって絞られた状態で連通させられる。この場合、入力圧はライン圧であり、1000〔kPa〕であるが、前記出力圧Pは、ランド73によって絞られる分だけ低くされる。
また、図3に示されるように、可動鉄心54が前進限位置に置かれ、ばね座60がばね座76に当接するのに伴って、第1、第2のフィードバック孔81、82が開放され、出力ポートp2とフィードバック油路83とが連通させられ、更にフィードバック油路83とフィードバックポートp3とが連通させられ、フィードバック油路83とドレーン油路84とが遮断される。これに伴って、出力圧Pは、第1のフィードバック孔81、フィードバック油路83及び第2のフィードバック孔82を介してフィードバックポートp3に供給されてフィードバック圧を発生させ、外スプール27をフィードバック力で前方に押す。
したがって、外スプール27に、内スプール26及びスプリング45を介して伝達された可動鉄心54からの推力、フィードバック力及びスプリング荷重f1が加わり、外スプール27は、推力、フィードバック力及びスプリング荷重f1がバランスする位置に置かれる。この場合、前記スプリング荷重f1と推力及びフィードバック力とが対向させられる。
このように、前記入力ポートp1と出力ポートp2との間がランド73の前端によって絞られ、出力圧Pは電流iに対応する値に制御される。
前記スウィープ制御において、電流iを変化させて徐々に小さくすると、外スプール27に加わる推力が小さくなり、外スプール27は後退(図3及び4において右方向に移動)させられる。それに伴って、可動鉄心54のストローク量に基づいて、外スプール27が内スプール26及び可動鉄心54と一体に後退させられ、前記入力ポートp1と出力ポートp2との間のランド73の前端による絞り量が少なくなり、出力圧Pが電流iの値に比例して高くなる。
そして、タイミングt1で電流iがあらかじめ設定されたスウィープ制御における最小の値i2になると、外スプール27に加わる推力が最小になり、出力圧Pがスウィープ制御において最大の値P1になる。この場合、入力圧はライン圧であるので、値P1は、
P1=1000〔kPa〕
になる。
そこで、前記制御装置95の図示されないステップダウン処理手段は、ステップダウン処理を行い、ターミナル21を介してコイル17に供給される電流iをほぼ零(0)の値i3(又は零)にし、リニアソレノイドバルブ10を初期状態に置く。
該初期状態においては、図4に示されるように、リニアソレノイド部11において、可動鉄心54が後退限位置に置かれ、可動鉄心54の後端面が底部56と当接させられる。一方、調圧バルブ部12において、スプリング44のスプリング荷重f1によって外スプール27が、スプリング45のスプリング荷重f2によって内スプール26がいずれも後退限位置に置かれる。このとき、入力ポートp1と出力ポートp2とが連通させられ、ドレーンポートp4はランド71によって閉鎖される。したがって、入力圧と同じ値P2の出力圧Pが出力ポートp2から出力される。この場合、入力圧はライン圧であるので、値P2は、
P2=1000〔kPa〕
になる。
また、ばね座60がばね座76から離れ、第1のフィードバック孔81がランド66によって閉鎖され、出力ポートp2とフィードバック油路83とが遮断され、更にフィードバック油路83とドレーン油路84とが連通させられる。その結果、出力圧Pは、フィードバックポートp3に供給されなくなり、フィードバック油路83内の油がドレーンされ、フィードバック圧による付勢力はなくなる。
ところで、前記クラッチCを係合するに当たり、クラッチCの係合が進むにつれて変速装置のギヤ比が徐々に小さくなる。そこで、前記油圧調整処理手段は、スウィープ制御が行われている間、前記ギヤ比の変化率を算出し、タイミングt2で前記変化率が所定の閾(しきい)値α1以下になり、クラッチCの係合がほぼ終了したと判断すると、所定の電流I2をリニアソレノイドバルブ99に送り、該リニアソレノイドバルブ99は、信号圧を発生させてレギュレータバルブ90に送り、ライン圧を高くし、クラッチCを係合させるのに適した第2の圧力、本実施の形態においては、1800〔kPa〕に設定する。その結果、入力圧と同じ値P3の出力圧Pが出力ポートp2から出力される。この場合、値P3は、
P3=1800〔kPa〕
になる。
そして、前記制御装置95の図示されないロック制御処理手段は、ロック制御処理を行い、前記タイミングt2で、電流iを一定にして前記値i3に保持する。その結果、一定の値P3の出力圧Pが制御圧として前記クラッチCの油圧サーボに供給され、油圧サーボ内の圧力を急激に高くすることができる。なお、前記ステップダウン処理は、スウィープ制御処理が終了した後、ロック制御処理が開始される前に行われる。
続いて、前記変化率が所定の閾値α2(<α1)以下になると、制御装置95は、クラッチCが完全に係合させられたと判断し、変速を終了する。
次に、変速に伴って、係合させられているクラッチCを解放する場合について説明する。なお、クラッチCが係合させられている間、前記油圧調整処理手段は、ライン圧を1800〔kPa〕に設定する。また、前記ロック制御処理手段は、電流iを値i3に保持する。その結果、リニアソレノイドバルブ10は初期状態に置かれ、入力圧と同じ値P3の出力圧Pが出力ポートp2から出力される。
そして、変速が開始されるのに伴って、クラッチCが係合させられた状態から徐々に解放されていき、変速装置のギヤ比が徐々に大きくなる。そこで、前記油圧調整処理手段は、ギヤ比を読み込み、タイミングt3でギヤ比の変化率が所定の閾値β1以上になると、ライン圧を低くし、1000〔kPa〕に設定する。また、ロック制御処理手段は、ロック制御を終了する。これに伴って、出力圧Pの値は、入力圧と同じ値P2になる。
続いて、タイミングt4で前記変化率が所定の閾値β2(>β1)以上になると、制御装置95の図示されないステップアップ処理手段は、ステップアップ処理を行い、ターミナル21を介してコイル17に供給される電流iの値をi2にする。これに伴って、出力圧Pの値はP1になる。
続いて、前記スウィープ制御処理手段は、スウィープ制御を開始する。前記スウィープ制御処理において、電流iを徐々に大きくすると、外スプール27に加わる推力が大きくなり、外スプール27は前進させられる。それに伴って、可動鉄心54のストローク量に基づいて、外スプール27が内スプール26及び可動鉄心54と一体に前進させられ、前記入力ポートp1と出力ポートp2との間のランド73の前端による絞り量が多くなり、出力圧Pが電流iの値に比例して低くなる。なお、前記ステップアップ処理は、ロック制御処理が終了した後、スウィープ制御処理が開始される前に行われる。
前記スウィープ制御処理手段において出力される出力圧Pによって第1の出力圧が、前記ロック制御処理において出力される出力圧Pによって第2の出力圧が構成される。
このように、スウィープ制御が行われている間、出力圧Pをフィードバック圧として外スプール27に作用させることができるので、リニアソレノイドバルブ10を配設するだけで、出力圧Pを制御圧として安定して発生させることができる。
したがって、コントロールバルブ等が不要になり、油圧回路SIにおける部品点数を少なくすることができ、油圧回路SIを簡素化することができる。
また、スウィープ制御が行われている間、ライン圧が低くされるので、可動鉄心54に発生させる推力をその分小さくすることができる。したがって、リニアソレノイド部11を小型化することができ、リニアソレノイドバルブ10を小型化することができる。
また、ロック制御が行われている間、ライン圧が高くされるので、クラッチCを安定させて係合させることができる。
さらに、ロック制御が行われている間、フィードバック圧が外スプール27に加わらない状態で出力圧Pを発生させることができるので、過大な推力が不要になり、リニアソレノイド部11を一層小型化することができる。その結果、リニアソレノイドバルブ10を一層小型化することができる。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 スウィープ制御処理を行う。
ステップS2 ステップダウン処理を行う。
ステップS3 ライン圧を高くする。
ステップS4 ロック制御処理を行う。
ステップS5 ライン圧を低くする。
ステップS6 ステップアップ処理を行う。
ステップS7 スウィープ制御処理を行い、処理を終了する。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は本発明の第2の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの初期状態を示す図、図8は本発明の第2の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの作動状態を示す図、図9は本発明の第2の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの特性図、図10は本発明の第2の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの動作を示すフローチャートである。なお、図9において、横軸に時間tを、縦軸にライン圧、出力圧P及び電流iを採ってある。
この場合、リニアソレノイドバルブ10の、ソレノイド駆動装置を構成するリニアソレノイド部11は、コイルアッセンブリ313、該コイルアッセンブリ313に対して進退(図7及び8において左右方向に移動)自在に配設されたプランジャ354、及び前記コイルアッセンブリ313を包囲して配設された筒状の筐体としてのヨーク320を備える。また、前記コイルアッセンブリ313は、ボビン315に巻線316が巻装され、電流が供給されて推力を発生させる被電流供給部としてのコイル317、該コイル317の後端(図7及び8において右端)に隣接させて配設された第1のエンドヨークとしての環状のエンド部358、前記コイル317の前端(図7及び8において左端)に隣接させて配設された第2のエンドヨークとしての環状のエンド部359、及び前記コイル317に電流を供給するターミナル21を備える。
前記コイルアッセンブリ313は、前記ターミナル21の部分を除いて円筒状に形成され、コイルアッセンブリ313の径方向内方には、軸方向において同じ径を有する中空部322が形成され、該中空部322に前記プランジャ354が摺動自在に嵌入される。したがって、プランジャ354は、中空部322に嵌入された状態でコイルアッセンブリ313によって支持される。
前記ボビン315は非磁性体から成り、非磁性体として、例えば、ステンレススチール(SUS)等の非磁性金属を使用したり、合成樹脂を使用したりすることができる。前記ボビン315は、筒状部351、該筒状部351の後端において径方向外方に向けて形成された環状のフランジ部352、及び筒状部351の前端において径方向外方に向けて形成された環状のフランジ部353を備え、断面が「コ」字状の形状を有する。そして、前記ボビン315とエンド部358、359とは、溶接、ロー付け、焼結接合又は接着等によって一体的に組み付けられる。
前記エンド部358、359は、磁性体、すなわち、強磁性体から成り、強磁性体として、例えば、電磁軟鉄等を使用することができる。該電磁軟鉄としては、純鉄を95〔%〕以上、好ましくは、ほぼ99〔%〕以上(小数点第1位で四捨五入して99〔%〕以上)含むもの、すなわち、実質的に純鉄が使用される。
また、前記ヨーク320は、有底の筒状体から成り、筒状部355及び円形の形状を有する底部356を備え、深絞り、冷間鍛造等の塑性金属加工によって一体に形成される。前記筒状部355の前端の円周方向における所定の部分に切欠357が形成され、該切欠357を介してコイルアッセンブリ313にターミナル21が取り付けられる。
前記ヨーク320は、磁性体、すなわち、強磁性体から成り、強磁性体として、塑性金属加工が容易な炭素量の少ない低炭素鋼、例えば、前記エンド部358、359と同様の電磁軟鉄を使用するのが好ましい。
また、前記ヨーク320において、筒状部355の前端にかしめ部80が形成され、ヨーク320内にコイルアッセンブリ313を嵌入し、バルブ部としての調圧バルブ部12のスリーブ62をセットした後、かしめ部80とスリーブ62の後端に形成されたフランジ部63とをかしめることによって、リニアソレノイド部11及び調圧バルブ部12が一体的に組み付けられる。
前記プランジャ354は、外周面が軸方向において同じ径を有し、軸方向においてコイル317より長くされる。そして、前記プランジャ354の前端面(図7及び8において左端面)の中央に、当接ロッド371が前方(図7及び8において左方)に突出させてプランジャ354と一体に形成される。なお、前記プランジャ354及び当接ロッド371によって可動鉄心が形成される。
また、前記当接ロッド371の前端の近傍の外周面に環状の溝が形成され、該溝に弾性体から成る環状の薄板材372の内周縁が取り付けられ、該薄板材372の外周縁はフランジ部63とエンド部359との間に挟持される。前記薄板材372は鉄粉等が中空部322に進入するのを防止する。
また、前記プランジャ354の後端面(図7及び8において右端面)には、所定の高さの球面状の当接部327が一体に形成される。該当接部327の表面には表面処理が施され、非磁性体から成る外層が形成される。
また、前記プランジャ354には、軸方向に所定の径の油路330が貫通させて形成され、該油路330を介してプランジャ354の前端側と後端側とが連通させられる。したがって、プランジャ354が進退させられるのに伴って、中空部322内におけるプランジャ354の前端側の油が後方(図7及び8において右方)に流れたり、中空部322内におけるプランジャ354の後端側の油が前方に流れたりする。
このように、プランジャ354に当接部327が形成され、かつ、当接部327の表面に非磁性体から成る外層が形成されるので、当接部327がヨーク320に当接した状態において、ヨーク320と当接部327との間に磁束が生じるのを抑制することができ、磁気を切り離すことができる。
なお、本実施の形態において、前記当接部327は、球面状の形状を有するが、円柱状、角柱状、環状等の各種の形状を有することができる。また、本実施の形態において、プランジャ354に当接部327が形成されるようになっているが、プランジャ354の後端面を平坦(たん)にし、ヨーク320に、当接部をプランジャ354側に向けて突出させて形成したり、プランジャ354及びヨーク320に当接部を形成したりすることもできる。
ところで、前記フランジ部352、353のうちの調圧バルブ部12側に配設されたフランジ部353が肉厚に形成され、かつ、フランジ部353の内周面がテーパ状に形成される。すなわち、フランジ部353の内径は、フランジ部353の前端において最も大きく、後方になるに従って小さくなり、フランジ部353の後端において筒状部351の内径と等しくなる。
そして、前記エンド部359の内周縁の近傍に、前記フランジ部353の内周面に対応させて、テーパ状の外周面を備え、断面が直角三角形の形状を有する縁部361が後方に向けて突出させて形成され、フランジ部353の内周面と縁部361の外周面とが接触させられる。そのために、縁部361の外径は、巻線316の前端において最も大きく、後方になるに従って小さくなり、エンド部359の内径と等しくなる。この場合、縁部361は後方に向けて先細に形成されるので、縁部361において磁気飽和が形成される。
なお、本実施の形態において、前記縁部361の外周面及びフランジ部353の内周面はテーパ状に形成されるが、外周面及び内周面を、凸状又は凹状に湾曲させたり、異なる傾斜角の多段傾斜面にしたりすることもできる。
また、前記プランジャ354は、エンド部358、359及びヨーク320と同様に強磁性体から成り、強磁性体として、例えば、電磁軟鉄等を使用することができる。
そして、前記制御装置95(図1)からターミナル21を介してコイル317に電流iが供給されると、磁束が生じるが、ボビン315が非磁性体で形成されているので、ボビン315を迂(う)回し、ヨーク320からエンド部358、プランジャ354及びエンド部359を順に通ってヨーク320に戻る磁路が形成され、これに伴って、該磁路における縁部361とプランジャ354との間に吸引部Sが形成される。
前記調圧バルブ部12は、スリーブ62、内スプール126、外スプール127、前記スリーブ62の前端に固定され、外スプール127がスリーブ62から抜け出すのを防止する抜止め用の第1のエンドプレート164、該第1のエンドプレート164と外スプール127の前端との間に配設され、外スプール127をリニアソレノイド部11側に向けて第1の付勢力としてのスプリング荷重f1で付勢する第1の付勢部材としてのスプリング44、前記外スプール127内において、内スプール126をリニアソレノイド部11と反対側に向けて、かつ、外スプール127をリニアソレノイド部11側に向けて第2の付勢力としてのスプリング荷重f2で付勢する第2の付勢部材としての調心用のスプリング145、前記第1のエンドプレート164より径方向内方に配設された第2のエンドプレート165を備える。
なお、前記外スプール127によって第1のスプールが、内スプール126によって第2のスプールが構成される。また、前記第1のエンドプレート164は、前記スプリング荷重f1を調整するための付勢力調整部材を構成し、そのために、スリーブ62と螺(ら)合させられる。そして、前記第2のエンドプレート165は、ねじ部101、及び該ねじ部101より径が小さい円柱状の当接部102を備え、該当接部102の後端と前記内スプール126の前端とが当接させられる。また、前記第2のエンドプレート165は、前記スプリング荷重f2を調整するための付勢力調整部材を構成するとともに、内スプール126の位置を調整するための位置調整部材を構成し、そのために、第1のエンドプレート164と、スリーブ62の前端において螺合させられる。
前記内スプール126は、外スプール127より径方向内方において、スプリング145のスプリング荷重f2によって第2のエンドプレート165に押し付けられ、常に所定の位置に置かれる。そして、前記内スプール126は、前端に形成され、前記当接部102と当接させられる大径のランド106、該ランド106の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ107、該グルーブ107の後方に隣接させて形成された大径のランド108、該ランド108の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ109、該グルーブ109の後方に隣接させて形成された大径のランド110、及び該ランド110の後方に隣接させて形成され、スプリング145内に挿入されるばね座111を備える。前記グルーブ107からグルーブ109にかけて、斜めに貫通するフィードバック油路201が形成され、該フィードバック油路201は、一端がグルーブ107の外周面において、他端がグルーブ109の外周面において開口させられる。
また、前記外スプール127は、スリーブ62より径方向内方において進退自在に、かつ、スリーブ62に対して相対的に移動自在に、そして、摺動自在に配設される。そして、前記外スプール127は、前端に形成され、スプリング44と当接させて形成された大径のランド131、該ランド131の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ132、該グルーブ132の後方に隣接させて形成された中径のランド133、該ランド133の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ134、該グルーブ134の後方に隣接させて形成された大径のランド135、及び該ランド135の後方に隣接させて形成され、当接ロッド371と当接させられる小径の可動鉄心当接部136を備える。
また、外スプール127の前記グルーブ134、132の所定の箇所には、径方向に貫通する第1、第2のフィードバック孔141、142が形成される。
そして、前記内スプール126と外スプール127との間には、グルーブ107、109の外周面に沿って筒状のフィードバック油路202、203が形成される。また、ランド131の径方向内方において、所定の距離だけ内径が大きくされ、ランド106の外周面に沿って、筒状のドレーン油路205が形成される。さらに、前記ランド106の外周面には、前端から所定の距離にわたって、円周方向における少なくとも1箇所、本実施の形態においては2箇所に、互いに平行な加工部としての平坦部207(図7及び8においてはそのうちの一つを示す。)が形成され、前記ランド131の内周面と前記平坦部207との間に、各平坦部207に沿ってドレーン油路208が形成される。なお、前記ランド106の平坦部207より後方の部分には、円形部209が形成される。
前記スリーブ62は、前記レギュレータバルブから供給された入力圧が供給(IN)される入力ポートp11、出力圧Pを制御圧として発生させ、油圧サーボに対して出力(OUT)するための出力ポートp12、密閉されたフィードバック圧作用部としてのフィードバックポートp13及びドレーンポートp14〜p16を備え、前記フィードバックポートp13は、第1、第2のフィードバック孔141、142及びフィードバック油路201〜203を介して前記出力ポートp12と連通させされ、出力圧Pがフィードバック圧として供給され、ランド131、133の面積差に対応するフィードバック力を発生させ、該フィードバック力で外スプール127を後方に付勢する。
したがって、前記外スプール127は、プランジャ354において発生させられ、直接伝達された推力、スプリング44のスプリング荷重f1による付勢力、スプリング145のスプリング荷重f2による付勢力及びフィードバック圧による付勢力を受け、可動鉄心当接部136を当接ロッド371に当接させた状態で、プランジャ354と一体的に進退する。
また、前記推力が変更されるのに伴って、内スプール126に対して外スプール127が相対的に移動させられると、フィードバック油路201〜203と入力ポートp11及びドレーン油路205、208との連通状態が切り換えられる。そして、前記内スプール126は、外スプール127内において、フィードバック圧を前記外スプール127に作用させるかどうかの切換えを行うためのフィードバック圧切換手段を構成する。
本実施の形態においては、フィードバック圧作用部としてフィードバックポートp13が形成されるようになっているが、フィードバックポートp13に代えてフィードバック圧を外スプール127に作用させるための圧力室を形成することもできる。
次に、図9及び10に基づいて、前記構成の圧力制御弁としての、かつ、制御圧発生部としてのリニアソレノイドバルブ10の動作について説明する。なお、図9において、横軸に時間tを、縦軸に出力圧Pを採っていて、リニアソレノイドバルブ10の特性を表すために、便宜上、時間tの経過に伴う出力圧Pの推移が表されているが、実際に摩擦係合要素としてのクラッチCを係合させたり、解放させたりしたときの出力圧Pの推移を表すものではない。
この場合、リニアソレノイドバルブ10はノーマルクローズタイプの構造を有し、ターミナル21に電流iが供給されない場合、調圧バルブ部12において、入力ポートp1と出力ポートp2とがランド108によって閉鎖される。
そこで、制御装置95は、所定の変速開始条件が成立すると、変速出力を発生させ、変速を開始する。そして、前記制御装置95の前記初期化処理手段は、初期化処理を行い、タイミングt10で、ターミナル21に供給される電流iの値は零にされる。
このとき、リニアソレノイドバルブ10は初期状態に置かれ、図7に示されるように、リニアソレノイド部11において当接部327が底部356と当接させられる。
一方、調圧バルブ部12において、スプリング44のスプリング荷重f1によって外スプール127が後退限位置に置かれる。このとき、入力ポートp11及び出力ポートp12がランド133によって閉鎖され、ドレーン油路205は前記ランド106の円形部209によって閉鎖される。したがって、出力圧Pは零であり、出力ポートp12から出力されない。
また、前記制御装置95の前記油圧調整処理手段は、油圧調整処理を行い、所定の電流I11を圧力調整装置としての、かつ、調整圧力発生部としてのリニアソレノイドバルブ99に送り、該リニアソレノイドバルブ99は、信号圧を発生させて圧力調整弁としてのレギュレータバルブ90に送り、ライン圧を、制御圧を発生させるのに適した低めの第1の圧力、本実施の形態においては、1000〔kPa〕に設定する。
続いて、前記制御装置95の前記スウィープ制御処理手段は、スウィープ制御処理を行い、スウィープ制御を開始する。
この場合、第1の実施の形態と同様に、出力圧Pのパターンに対応させてターミナル21に供給される電流iが設定され、図示されない記録装置に、時間tの経緯と共に電流iが記録される。そして、前記スウィープ制御処理手段は、時間tの経緯に対応させて電流iを読み込み、ターミナル21に供給する。なお、電流iの変化量に対する出力圧Pの変化量の比は、前記スプリング44、145の各ばね定数、ランド131、133の面積差等によって設定される。
次に、前記制御装置95からターミナル21を介してコイル317に電流iが供給されると、コイル317がプランジャ354を所定の吸引力で吸引し、プランジャ354に推力を発生させる。その結果、推力が外スプール127に伝達され、外スプール127は前記スプリング荷重f1に抗して前進(図7及び8において左方向に移動)させられ、スプリング44を収縮させる。これに伴って、スプリング145も収縮させられる。
続いて、電流iを大きくすると、外スプール127の前進に伴って入力ポートp11と出力ポートp12とが連通させられ、出力ポートp12とフィードバックポートp13とが第1のフィードバック孔141、フィードバック油路203、201、202及び第2のフィードバック孔142を介して連通させられる。この間も、ドレーン油路205は前記ランド106の円形部209によって閉鎖される。
したがって、出力圧Pは、第1のフィードバック孔141、フィードバック油路203、201、202及び第2のフィードバック孔142を介してフィードバックポートp13に供給されてフィードバック圧を発生させ、外スプール127をフィードバック力で後方に押す。その結果、前記入力ポートp11と出力ポートp12との間がランド133の後端によって絞られ、出力圧Pは、電流iの値に比例する値になる。
そして、外スプール127に、プランジャ354からの推力、フィードバック力及びスプリング荷重f1が加わり、外スプール127は、推力、フィードバック力及びスプリング荷重f1がバランスする位置に置かれる。この場合、スプリング荷重f1、f2及びフィードバック力と推力とが対向させられる。
続いて、電流iを更に大きくすると、外スプール127に加わる推力が大きくなり、外スプール127は更に前進させられる。それに伴って、プランジャ354のストローク量に基づいて、外スプール127がプランジャ354と一体に前進させられ、前記入力ポートp11と出力ポートp12との間がランド133の後端によってその分開かれ、出力圧Pが、電流iの値に比例して高くなる。
そして、電流iの値を更に大きくすると、外スプール127に加わる推力が最大になり、外スプール127が更に前進させられる。これに伴って、第1のフィードバック孔141は、前記ランド108によって塞(ふさ)がれ、フィードバック油路203と遮断される。したがって、フィードバック圧による付勢力がなくなり、外スプール127は更に前進する。
また、ドレーン油路205とドレーンポートp16とがドレーン油路208を介して連通させられるので、フィードバックポートp13の油はドレーン油路205、208を介してドレーンポートp16から排出(EX)される。
そして、タイミングt11で電流iがあらかじめ設定されたスウィープ制御における最大の値i11になると、外スプール27に加わる推力が最大になり、入力ポートp11と出力ポートp12との間のランド133の後端による絞り量は最小になり、入力ポートp11に入力される入力圧は、減圧されることなく出力ポートp12から出力され、出力圧Pがスウィープ制御において最大の値P11になる。この場合、入力圧はライン圧であるので、値P11は、
P11=1000〔kPa〕
になる。
そこで、前記制御装置95の図示されないステップアップ処理手段は、ステップアップ処理を行い、ターミナル21を介してコイル317に供給される電流iを値i12にする。したがって、入力圧と同じ値P12の出力圧Pが出力ポートp2から出力される。この場合、入力圧はライン圧であるので、値P12は、
P12=1000〔kPa〕
になる。
ところで、前記クラッチCを係合するに当たり、クラッチCの係合が進むにつれて変速装置のギヤ比が徐々に小さくなる。そこで、前記油圧調整処理手段は、スウィープ制御が行われている間、前記ギヤ比の変化率を算出し、タイミングt12で前記変化率が所定の閾値α1以下になり、クラッチの係合がほぼ終了したと判断すると、所定の電流I12をリニアソレノイドバルブ99に送り、該リニアソレノイドバルブ99は、信号圧を発生させてレギュレータバルブ90に送り、ライン圧を高くし、クラッチCを係合させるのに適した第2の圧力、本実施の形態においては、1800〔kPa〕に設定する。その結果、入力圧と同じ値P13の出力圧Pが出力ポートp2から出力される。この場合、値P13は、
P13=1800〔kPa〕
になる。
そして、前記制御装置95の図示されないロック制御処理手段は、ロック制御処理を行い、前記タイミングt12で、電流iを値i12に保持する。その結果、値P13の出力圧Pが制御圧として前記クラッチCの油圧サーボに供給され、油圧サーボ内の圧力を急激に高くすることができる。なお、前記ステップアップ処理は、スウィープ制御処理が終了した後、ロック制御処理が開始される前に行われる。
続いて、前記変化率が所定の閾値α2(<α1)以下になると、制御装置95は、クラッチCが完全に係合させられたと判断し、変速を終了する。
続いて、変速に伴って、係合させられているクラッチCを解放する場合について説明する。なお、クラッチCが係合させられている間、前記油圧調整処理手段は、ライン圧を1800〔kPa〕に設定する。また、前記ロック制御処理手段は、電流iを値i12に保持する。その結果、リニアソレノイドバルブ10は作動状態に置かれ、入力圧と同じ値P13の出力圧Pが出力ポートp2から出力される。
そして、変速が開始されるのに伴って、クラッチCが係合させられた状態から徐々に解放されていき、変速装置のギヤ比が徐々に大きくなる。そこで、前記油圧調整処理手段は、ギヤ比を読み込み、タイミングt13でギヤ比の変化率が所定の閾値β1以上になると、ライン圧を1000〔kPa〕に設定する。また、ロック制御処理手段は、ロック制御を終了する。これに伴って、出力圧Pの値は、入力圧と同じ値P12になる。
続いて、タイミングt14で前記変化率が所定の閾値β2(>β1)以上になると、制御装置95の図示されないステップダウン処理手段は、ステップダウン処理を行い、ターミナル21を介してコイル317に供給される電流iの値をi11にする。これに伴って、出力圧Pの値はP11になる。
続いて、前記スウィープ制御処理手段は、スウィープ制御を開始する。前記スウィープ制御処理において、電流iを徐々に小さくすると、外スプール27に加わる推力が小さくなり、外スプール127はスプリング44、145の付勢力によって後退(図7及び8において右方向に移動)させられる。これに伴って、スプリング145も伸長させられ、外スプール127が内スプール126及びプランジャ354と一体に前進させられ、前記入力ポートp11と出力ポートp12との間のランド133の後端による絞り量が多くなり、出力圧Pが電流iの値に比例して低くなる。なお、前記ステップダウン処理は、ロック制御処理が終了した後、スウィープ制御処理が開始される前に行われる。
前記スウィープ制御処理手段において出力される出力圧Pによって第1の出力圧が、前記ロック制御処理において出力される出力圧Pによって第2の出力圧が構成される。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 スウィープ制御処理を行う。
ステップS12 ステップアップ処理を行う。
ステップS13 ライン圧を高くする。
ステップS14 ロック制御処理を行う。
ステップS15 ライン圧を低くする。
ステップS16 ステップダウン処理を行う。
ステップS17 スウィープ制御処理を行い、処理を終了する。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。