以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、ソレノイドバルブのうちのリニアソレノイドバルブについて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの断面図、図2は図1のA−A断面図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの応答性を説明する図である。
図において、10はリニアソレノイドバルブであり、該リニアソレノイドバルブ10は、例えば、自動変速機の油圧回路に配設される。該油圧回路において、図示されないオイルポンプから吐出された油圧は、図示されないプライマリレギュレータバルブによって調整されてライン圧になり、該ライン圧が前記リニアソレノイドバルブ10に入力圧として供給される。
そして、リニアソレノイドバルブ10は、電流に基づいて作動させられ、電流に対応する油圧を図示されない摩擦係合要素のアクチュエータとしての、かつ、供給先としての油圧サーボに供給する。
また、51はソレノイド駆動装置を構成するソレノイド部、12は該ソレノイド部51を駆動することによって作動させられるバルブ部を構成する調圧バルブ部であり、前記リニアソレノイドバルブ10は、ソレノイド部51及び調圧バルブ部12を備え、図示されない自動変速機ケースに対して水平に取り付けられる。
前記ソレノイド部51は、コイルアッセンブリ13、該コイルアッセンブリ13に対して進退(図1において左右方向に移動)自在に配設されたプランジャ14、前記コイルアッセンブリ13を包囲して配設された外側のヨーク20、及び前記コイルアッセンブリ13のコイル17に電流を供給するためのターミナルtmを備える。なお、前記プランジャ14は、前進(図1において左方向に移動)するのに伴って、調圧バルブ部12側に向けて移動し、後退(図1において右方向に移動)するのに伴って、調圧バルブ部12から離れる方向に移動するので、本発明の説明において、リニアソレノイドバルブ10における調圧バルブ部12側を前方(図1において左方)とし、ソレノイド部51側を後方(図1において右方)とする。
また、前記コイルアッセンブリ13は、ボビン15、該ボビン15に巻線16を巻装することによって形成された前記コイル17、主要部が前記コイル17より径方向内方に配設されたコア34等を備える。該コア34は、コイル17より径方向内方において、コイル17に隣接させて、かつ、コイル17の所定の箇所、本実施の形態においては、前端(図1において左端)の近傍より後方に延在させて配設された筒状のエンド部18、前記コイル17の所定の箇所、本実施の形態においては、前端の近傍より前方に配設された環状のエンド部19、及びエンド部18、19間に配設された磁気抵抗部としての、筒状の磁気遮蔽(へい)部21を備え、ボビン15とエンド部18、19及び磁気遮蔽部21とは、溶接、ロー付け、焼結接合、接着等によって一体的に組み付けられる。なお、前記エンド部18によって第1の内側のヨークが、エンド部19によって第2の内側のヨークが構成される。また、前記エンド部19は、コア34においてフランジ部を構成し、コイル17より径方向内方の部分から径方向外方に向けて延在させて形成される。
前記磁気遮蔽部21は、エンド部18の前端の薄肉部18aを外側から覆う第1の包囲部31、エンド部19の後端(図1において右端)を外側から覆う第2の包囲部32、及び第1、第2の包囲部31、32間において、径方向内方に向けて突出させて、かつ、プランジャ14と対向させて形成され、エンド部18、19間を磁気的に分離させるための分離部33を備える。
磁気抵抗部として、前記磁気遮蔽部21に代えて、第1、第2の内側のヨークの一部を薄くした薄肉部を形成したり、第1、第2の内側のヨークの一部に、径方向に延びる複数の穴を設けた穴開部を形成したりすることができる。その場合、第1、第2の内側のヨークと前記穴開部とは一体に形成される。
前記コイルアッセンブリ13は、前記ターミナルtmの部分を除いて円筒状に形成され、コア34内には、軸方向において一定の径を有する中空部22が形成され、該中空部22に前記プランジャ14が、前記コア34に対して進退自在に、かつ、摺動自在に嵌入される。したがって、プランジャ14は、コア34に嵌入された状態でコイルアッセンブリ13によって支持される。
前記ヨーク20は、有底の筒状体から成り、コイル17を包囲する筒状部55、円形の形状を有する底部56、及び筒状部55と底部56との間に、肉厚で形成され、コイル17の後端から後方に向けて突出するコア34の部分を包囲するコーナ部57を備え、深絞り、冷間鍛造等の塑性金属加工によって、筒状部55、底部56及びコーナ部57が一体に形成される。前記筒状部55の前端の円周方向における所定の部分に、矩(く)形の形状を有する切欠58が形成され、該切欠58を介してコイルアッセンブリ13にターミナルtmが取り付けられる。前記筒状部55の前端に、薄肉のかしめ部80が形成され、ヨーク20内にコイルアッセンブリ13を嵌入し、調圧バルブ部12のバルブ本体62をセットした後、かしめ部80とバルブ本体62の後端に形成されたフランジ部63とをかしめることによって、ソレノイド部51及び調圧バルブ部12が一体的に組み付けられる。
このとき、ソレノイド部51内と調圧バルブ部12内とを分離させるための分離部材としてのダイヤフラムdpの外周縁が、エンド部19とフランジ部63との間に挟まれる。なお、前記ダイヤフラムdpの内周縁は、調圧バルブ部12のスプール26に取り付けられているので、ダイヤフラムdpは、ソレノイド部51内と調圧バルブ部12内とを完全に分離する。
前記プランジャ14は、外周面が軸方向において一定の径を有し、軸方向においてコイル17より長くされる。そして、前記プランジャ14において、前端面(図1において左端面)の中央に、調圧バルブ部12のスプール26の後端に形成されたプランジャ当接部72が当接させられ、後端面(図1において右端面)には、前記底部56から突出させて形成された突起としての当接部27が当接させられる。該当接部27の表面には表面処理が施され、非磁性体から成る図示されない外層が形成される。このように、底部56に当接部27が形成され、かつ、当接部27の表面に非磁性体から成る外層が形成されるので、プランジャ14がヨーク20に当接した状態において、プランジャ14と当接部27との間に磁束が生じるのを抑制することができ、磁気を切り離すことができる。
なお、本実施の形態において、底部56に当接部27が形成されるようになっているが、プランジャ14の後端面に当接部を底部56側に向けて突出させて形成したり、プランジャ14及びヨーク20の両方に当接部を形成したりすることもできる。
また、前記プランジャ14には、軸方向において所定の径を有する複数の油路30が貫通させて形成され、該油路30を介してプランジャ14の前端側(図1において左端側)と後端側(図1において右端側)とが連通させられる。したがって、プランジャ14が進退させられるのに伴って、中空部22内におけるプランジャ14の前端とダイヤフラムdpとの間のヨーク20の筒頭部内の油が後方に流れたり、中空部22内におけるプランジャ14の後端と底部56との間のヨーク20の筒底部内の油が前方に流れたりする。なお、前記筒底部によって油溜(だ)めが形成される。
前記ボビン15及び磁気遮蔽部21は非磁性体から成り、非磁性体として、例えば、ステンレススチール(SUS)等の非磁性金属を使用したり、合成樹脂を使用したりすることができる。また、前記エンド部18、19、ヨーク20及びプランジャ14は、磁性体、好ましくは、強磁性体から成り、強磁性体として、例えば、電磁軟鉄等を使用することができる。該電磁軟鉄としては、純鉄を95〔%〕以上、好ましくは、ほぼ99〔%〕以上(小数点第1位で四捨五入して99〔%〕以上)含むもの、すなわち、実質的に純鉄が使用される。
ところで、前記エンド部19の後端に、吸引部として、断面が直角三角形の形状を有する縁部61が形成され、該縁部61の外周面はテーパ状に形成される。前記縁部61の外径は、前端において最も大きく、後方になるに従って小さくなり、縁部61の後端において分離部33の内径と等しくされる。この場合、縁部61は後方に向けて先細に形成されるので、縁部61において磁気飽和が生じる。
一方、前記第2の包囲部32の後端部(図1において右端部)に、前記縁部61を包囲する収容部32aが形成され、該収容部32aの内周面はテーパ状に形成される。前記収容部32aの内径は、前端において最も大きく、後方になるに従って小さくなり、収容部32aの後端において分離部33の内径と等しくされる。
なお、本実施の形態において、前記縁部61の外周面及び収容部32aの内周面はテーパ状にされるが、前記外周面及び内周面を、凸状又は凹状に湾曲させたり、異なる傾斜角の多段傾斜面にしたりすることもできる。
一方、調圧バルブ部12は、バルブ本体62、該バルブ本体62に対して進退自在に嵌入されたスプール26、前記バルブ本体62の前端にスナップ止めされ、スプール26がバルブ本体62から抜け出すのを防止する抜止め用のエンドプレート64、該エンドプレート64とスプール26の前端との間に配設され、スプール26をソレノイド部51側に向けて所定のスプリング荷重で付勢する付勢部材としてのスプリング44、及びスプール26の後端において、径方向外方に向けて延在させて配設され、ソレノイド部51側と調圧バルブ部12側とを分離するダイヤフラムdpを備える。
前記スプール26は、前端に形成され、スプリング44内に挿入されるばね座60、該ばね座60の後方に隣接させて形成された大径のランド66、該ランド66の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ67、該グルーブ67の後方に隣接させて形成された大径のランド68、該ランド68の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ69、該グルーブ69の後方に隣接させて形成された中径のランド71、及び該ランド71の後方に隣接させて形成された小径の前記プランジャ当接部72を備える。なお、前記ダイヤフラムdpの内周縁は、ランド71とプランジャ当接部72との間に取り付けられる。
前記バルブ本体62は、図示されないモジュレータバルブから供給された入力圧が供給される入力ポートp1、出力圧をコントロールバルブに対して出力するための出力ポートp2、密閉されたフィードバックポートp3及びドレーンポートp4を備え、前記フィードバックポートp3は、図示されないフィードバック油路を介して前記出力ポートp2と連通させられ、出力圧がフィードバック圧として供給され、ランド68、71の面積差に対応する付勢力を発生させ、該付勢力でスプール26を前方に付勢する。なお、前記入力ポートp1には切欠kが形成される。また、前記入力ポートp1及び出力ポートp2には、バルブ本体62内に異物が進入しないようにフィルタf1、f2が配設される。
したがって、前記スプール26は、プランジャ14による推力、スプリング44のスプリング荷重、及びフィードバック圧によるフィードバック力を受け、プランジャ当接部72をプランジャ14に当接させた状態で、プランジャ14と一体的に進退させられる。
このように、プランジャ14は、コア34によって直接支持されるので、従来のように、コイル17より径方向内方にステータコアを配設する必要がない。したがって、ソレノイド部51をその分小型化することができるだけでなく、巻線16の巻数を多くし、起磁力を大きくすることができる。
次に、前記構成のリニアソレノイドバルブ10の動作について説明する。
プランジャ14の初期位置、すなわち、非作動状態において、当接部27と底部56とが当接させられ、ターミナルtmを介してコイル17に電流が供給されると、磁束が生じるが、ボビン15が非磁性体で形成されているので、電流はボビン15を迂(う)回し、ヨーク20からエンド部18、プランジャ14及びエンド部19を順に通ってヨーク20に戻る磁路が形成され、これに伴って、該磁路における縁部61とプランジャ14との間に吸引部が形成される。
この場合、当接部27が形成された分だけプランジャ14の後端面とヨーク20との間に間隙(げき)が形成されるとともに、当接部27の表面には表面処理が施され、非磁性体から成る図示されない被覆層が形成されているので、プランジャ14の後端から磁束が漏れることがない。また、エンド部18、19の内周面とプランジャ14の外周面との間の間隙が十分小さくされるので、磁路の磁気抵抗を小さくすることができる。
そして、コイル17がプランジャ14を所定の吸引力で吸引し、プランジャ14に推力を発生させ、プランジャ14を作動状態に置く。その結果、前記スプリング44によるスプリング荷重に抗して、推力は前記フィードバック圧と共にスプール26に伝達され、調圧バルブ部12が作動させられ、スプール26が前進させられる。この場合、プランジャ14のストローク量に基づいて、スプール26がスプリング荷重に抗してプランジャ14と一体に前進させられ、スプール26の位置が制御される。これにより、入力ポートp1とドレーンポートp4との流通割合が制御され、リニアに油圧が調整され、出力ポートp2から調整された油圧が前記出力圧として出力される。
ところで、コア34内においてプランジャ14が進退させられるのに伴って、前述されたように、筒頭部の油が油路30を介して後方に流れたり、筒底部の油が油路30を介して前方に流れたりするが、筒頭部において、中空部22がダイヤフラムdpによって閉鎖されているので、油路30内の油の流れが規制され、プランジャ14を前進させたときに、筒底部に十分な量の油を供給することができなかったり、プランジャ14を後退させたときに、筒底部の油を十分に排出することができなかったりする。その場合、筒底部内に進入した異物が、ポンピング作用によって、例えば、コア34とプランジャ14との間に進入すると、リニアソレノイドバルブ10においてスティックが発生してしまう。
そこで、本実施の形態においては、プランジャ14を前進させたときに、油路30を介して筒頭部の油を筒底部に送るほかに、リニアソレノイドバルブ10外の油を筒底部に流入させて、筒底部に十分な量の油を供給し、プランジャ14を後退させたときに、油路30を介して筒底部の油を筒頭部に送るほかに、筒底部の油をリニアソレノイドバルブ10外に流出させて、筒底部の油を十分に排出することができるようにしている。
そのために、本実施の形態においては、切欠58とターミナルtmとの間に、油を筒底部に流入させたり、筒底部から油を流出させたりするために、径方向に延びる第1の油流出入部h1が形成され、該第1の油流出入部h1と筒底部との間に第1の油路が形成される。
該第1の油路は、第1の油流出入部h1と連通させて形成され、軸方向に延びる流路m1、該流路m1と連通させて形成され、径方向及び円周方向に延びる流路m2、並びに該流路m2及び筒底部と連通させて形成され、円周方向における少なくとも2箇所に配設され、軸方向に延びる流路m3を備える。なお、流路m1によって第1の軸方向流路が、流路m2によって第1の円周方向流路が、流路m3によって第2の軸方向流路が構成される。
前記流路m1は、筒状部55の内周面の、円周方向におけるターミナルtmと対応する部分(図1及び2において下端部)に、所定の幅で、かつ、所定の深さで形成された一つの溝、及びコイル17の外周面(ボビン15の外周面)から成る閉鎖空間であり、前端は、切欠58の後端において第1の油流出入部h1と連通させられ、後端は、コイル17の後端において、流路m2と連通させられる。なお、前記溝の幅及び深さの寸法は、ヨーク20に形成される磁路の断面積が小さくならないように、十分に小さく設定される。
また、該流路m2は、コーナ部57の前端面の、コイル17と対向する部分に沿って所定の深さで形成された環状の溝、及びコイル17の後端面(ボビン15の後端面)から成る閉鎖空間であり、外周縁は、円周方向におけるターミナルtmと対応する部分において、流路m1と連通させられ、内周縁は、円周方向の全体において流路m3と連通させられる。なお、前記流路m2は、円周方向の全体にわたって形成されるので、軸方向における隙(すき)間(クリアランス)となる。そこで、コイル17が外力を受けたときに、軸方向に移動することがないように、ボビン15の後端に、底部56に向けて突起82が形成され、突起82の先端が底部56の前端面に当接させられる。なお、突起82は、円周方向における所定の箇所に形成され、リニアソレノイドバルブ10を組み付ける際に、コイル17の位置決め用としても使用される。
また、前記流路m3は、筒状部55の内周面の、円周方向における複数箇所、本実施の形態においては、2箇所に形成され、軸方向に延びる溝、及びコア34の外周面(エンド部18の外周面)から成る閉鎖空間であり、前端は、コイル17の後端において油路m2と連通させられ、後端は、コア34の後端において筒底部と連通させられる。
前記構成のリニアソレノイドバルブ10において、プランジャ14を前進させると、油路30を介して筒頭部の油が筒底部に送られるほかに、リニアソレノイドバルブ10外の油が第1の油流出入部h1を介して流路m1に進入し、該流路m1を後方に向けて流れ、流路m1の後端から流路m2に進入する。前記流路m1は円周方向におけるターミナルtmに対応する箇所に形成されるのに対して、流路m2は環状に形成されるので、流路m2に進入した油は、左右に分岐し、円弧状の流路m2を上方に向けて流れ、上端で合流する。また、流路m2に進入した油は、上方に向けて流れるだけでなく、流路m3に進入し、該流路m3を後方に向けて流れ、流路m3の後端から筒底部に進入する。
このようにして、リニアソレノイドバルブ10外の油は、第1の油路を介して筒底部に流入させられる。
また、プランジャ14を後退させると、油路30を介して筒底部の油が筒頭部に送られるほかに、筒底部の油は、前記第1の油路内を反対の方向に流れ、リニアソレノイドバルブ10外に流出させられる。
このように、本実施の形態においては、第1の油路が形成されるので、プランジャ14を進退させると、十分な量の油を筒底部に対して給排することができ、プランジャ14を円滑に進退させることができる。また、流路m2に進入した油は、左右に分岐して上方に向けて流れ、円周方向における少なくとも2箇所、本実施の形態においては、ターミナルtm側及び反対側(180〔°〕離れた側)の2箇所から流路m3に進入し、筒底部に供給されるので、一層十分な量の油を筒底部に対して給排することができる。したがって、図3に示されるように、リニアソレノイドバルブ10の応答性を向上させることができる。なお、この場合、応答性は、プランジャ14が移動したとき、プランジャ14の移動分(体積の変化量)に相当する量の油の移動が終了するまでの時間で表される。
また、本実施の形態においては、流路m1が軸方向に形成され、流路m1の後端において流路m2と連通させられ、かつ、流路m2が環状に形成され、さらに、円周方向における少なくとも2箇所において流路m2が流路m3と連通させられるので、第1の油路を長くすることができる。したがって、第1の油流出入部h1から進入した異物が筒底部に到達するのが困難になるので、リニアソレノイドバルブ10においてスティックが発生するのを防止することができる。
しかも、前記流路m1〜m3はヨーク20に形成された溝によって構成されるので、第1の油路を形成するためにソレノイド部51の寸法を大きくする必要がない。したがって、リニアソレノイドバルブ10を小型化することができる。
また、当接部27が形成されるので、常時、すなわち、プランジャ14を非作動状態に置いても、作動状態に置いても、流路m1〜m3と筒底部とが連通させられる。したがって、プランジャ14が非作動状態から作動状態に変化する際のリニアソレノイドバルブ10の応答性を高くすることができる。
ところで、通常、コア34は、後端をコーナ部57の内周面に、前端をかしめ部80の内周面に圧入することによってヨーク20に組み付けられる。本実施の形態においては、流路m3が圧入部分に形成されるので、流路m3を形成するのに余分な構造を追加する必要がない。したがって、リニアソレノイドバルブ10のコストを低くすることができる。
また、前記流路m3は、ターミナルtm側及び反対側に対称に形成されるので、ヨーク20を冷間鍛造で形成する場合に、成形型に応力を加えることなく、ヨーク20を抜くことができる。したがって、成形型の寿命を長くすることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図4は本発明の第2の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの断面図、図5は図4のB−B断面図である。
この場合、第1の油路は、第1の油流出入部h1と連通させて形成され、軸方向に延びる流路m1、該流路m1と連通させて形成され、径方向及び円周方向に延びる流路m2、並びに、円周方向における少なくとも2箇所において、流路m2及び筒底部と連通させて形成され、軸方向に延びる流路m13を備える。なお、流路m1によって第1の軸方向流路が、流路m2によって第1の円周方向流路が、流路m13によって第2の軸方向流路が構成される。
前記流路m1は、第1の実施の形態と同様に、筒状部55の内周面に形成された一つの溝、及びコイル17の外周面から成る閉鎖空間であり、流路m2は、第1の実施の形態と同様に、コーナ部57の前端面(図4において左端面)の、コイル17と対向する部分に沿って所定の深さで形成された環状の溝、及びコイル17の後端面(図4において右端面)から成る閉鎖空間である。
これに対して、流路m13は、コア34の外周面(エンド部18の外周面)の、円周方向における少なくとも2箇所において形成された溝、及びコーナ部57の内周面から成る閉鎖空間であり、前端(図4において左端)は、コイル17の後端(図4において右端)において油路m2と連通させられ、後端は、コア34の後端において筒底部と連通させられる。
前記構成のリニアソレノイドバルブ10において、プランジャ14を前進(図4において左方向に移動)させると、油路30を介して筒頭部の油が筒底部に送られるほかに、リニアソレノイドバルブ10外の油が第1の油流出入部h1を介して流路m1に進入し、該流路m1を後方に向けて流れ、流路m1の後端から流路m2に進入する。前記流路m1は円周方向におけるターミナルtmに対応する箇所に形成されるのに対して、流路m2は環状に形成されるので、流路m2に進入した油は、左右に分岐し、円弧状の流路m2を上方に向けて流れ、上端で合流する。また、流路m2に進入した油は、上方に向けて流れるだけでなく、流路m13に進入し、該流路m13を後方に向けて流れ、流路m13の後端から筒底部に進入する。
なお、前記第1、第2の実施の形態において、流路m1は、筒状部55の内周面に形成された一つの溝、及びコイル17の外周面から成る閉鎖空間であるが、筒状部55の内周面とコイル17の外周面との間の寸法誤差による隙間によって形成することができる。
このように、本実施の形態においては、第1の油路が形成されているので、プランジャ14を進退(図4において左右方向に移動)させると、十分な量の油を筒底部に対して給排することができ、プランジャ14を円滑に進退させることができる。また、流路m2に進入した油は、左右に分岐して上方に向けて流れ、円周方向における少なくとも2箇所から流路m13に進入し、筒底部に供給されるので、一層十分な量の油を筒底部に対して給排することができる。したがって、リニアソレノイドバルブ10の応答性を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、流路m1が軸方向に形成され、流路m1の後端において流路m2と連通させられ、かつ、流路m2が環状に形成され、さらに、円周方向における少なくとも2箇所において流路m2が流路m13と連通させられるので、第1の油流出入部h1と筒底部との間の第1の油路を長くすることができる。したがって、第1の油流出入部h1から進入した異物が筒底部に到達するのが困難になるので、リニアソレノイドバルブ10においてスティックが発生するのを防止することができる。
しかも、前記流路m1、m2はヨーク20に形成された溝によって、流路m13はコア34に形成された溝によって構成されるので、第1の油路を形成するためにソレノイド部51の寸法を大きくする必要がない。したがって、リニアソレノイドバルブ10を小型化することができる。
また、当接部27が形成されるので、プランジャ14を非作動状態においても、流路m1、m2、m13と筒底部とが連通させられる。したがって、プランジャ14が非作動状態から作動状態に変化する際のリニアソレノイドバルブ10の応答性を高くすることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図6は本発明の第3の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの断面図、図7は図6のC−C断面図、図8は図6のD−D断面図である。
この場合、第1の油路は、第1の油流出入部h1と連通させて形成され、軸方向に延びる流路m1、該流路m1と連通させて形成され、径方向に延びる流路m2、並びに該流路m2及び筒底部と連通させて形成され、円周方向における少なくとも1箇所において軸方向に延びる流路m23を備える。なお、流路m1によって第1の軸方向流路が、流路m2によって第1の円周方向流路が、流路m23によって第2の軸方向流路が構成される。
前記流路m1は、第1の実施の形態と同様に、筒状部55の内周面に形成された一つの溝、及びコイル17の外周面から成る閉鎖空間であり、流路m2は、第1の実施の形態と同様に、コーナ部57の前端面(図6において左端面)の、コイル17と対向する部分に沿って所定の深さで形成された環状の溝、及びコーナ部57の前端面から成る閉鎖空間である。
これに対して、流路m23は、コア34の外周面の、流路m1と反対側(180〔°〕離れた側)に形成された1本の溝、及び第1の包囲部31の外周面から成る閉鎖空間であり、前端(図6において左端)は、コイル17の後端において油路m2と連通させられ、後端(図6において右端)は、コア34の後端において筒底部と連通させられる。
ところで、本実施の形態においては、リニアソレノイドバルブ10外の油を筒底部に対して安定させて給排することができるように、前記第1の油路と並列に、第2の油路が形成される。
そのために、前記切欠58内において、ターミナルtmの保持部84を挟んで第1の油流出入部h1と反対側、すなわち、保持部84より前側(図6において左側)に、第2の油流出入部h2が形成され、該第2の油流出入部h2と筒底部との間に第2の油路が形成される。
該第2の油路は、第2の油流出入部h2と連通させて形成され、径方向及び円周方向に延びる流路m21、並びに該流路m21及び前記流路m2と連通させて形成され、軸方向に延びる流路m22を備える。なお、流路m21によって第2の円周方向流路が、流路m22によって第3の軸方向流路が構成される。
前記流路m21は、コア34におけるフランジ部を構成するエンド部19の後端面(図6において右端面)の、コイル17と対向する部分に沿って所定の深さで形成された環状の溝、及びコイル17の前端面(ボビン15の前端面)から成る閉鎖空間であり、外周縁は、円周方向におけるターミナルtmと対応する部分において、第2の油流出入部h2と連通させられ、ターミナルtmと反対側(180〔°〕離れた側)の部分において、流路m22と連通させられる。
また、流路m22は、筒状部55の内周面の、円周方向におけるターミナルtmと反対側の部分(図6〜8において上端部)に、所定の幅で、かつ、所定の深さで形成された一つの溝、及びコイル17の外周面(ボビン15の外周面)から成る閉鎖空間であり、前端は、エンド部19の後端において第2の油流出入部h2と連通させられ、後端は、コイル17の後端において、流路m2と連通させられる。なお、前記溝の幅及び深さの寸法は、ヨーク20に形成される磁路の断面積が小さくならないように、十分に小さく設定される。
前記構成のリニアソレノイドバルブ10において、プランジャ14を前進(図6において左方向に移動)させると、油路30を介して筒頭部の油が筒底部に送られ、リニアソレノイドバルブ10外の油が第1の油路を介して筒底部に送られるほかに、リニアソレノイドバルブ10外の油が第2の油流出入部h2を介して流路m21に進入する。該流路m21は環状に形成され、かつ、前記第2の油流出入部h2は円周方向におけるターミナルtm側に形成されるのに対して、流路m22はターミナルtmと反対側に形成されるので、流路m21に進入した油は、左右に分岐し、円弧状の流路m21を上方に向けて流れ、上端で合流した後、流路m22に進入する。
続いて、油は、流路m22を後方に向けて流れ、流路m22の後端から流路m2に進入し、さらに、前記流路m23に進入した後、流路m23の後端から筒底部に進入する。
このようにして、リニアソレノイドバルブ10外の油は、第2の油路を介して筒底部に流入させられる。
また、プランジャ14を後退(図6において右方向に移動)させると、油路30を介して筒底部の油が筒頭部に送られ、筒底部の油は、前記第1の油路を反対の方向に流れ、リニアソレノイドバルブ10外に流出させられるほかに、前記第2の油路を反対の方向に流れ、リニアソレノイドバルブ10外に流出させられる。
このように、本実施の形態においては、第1、第2の油路が形成されているので、プランジャ14を進退(図6において左右方向に移動)させると、一層十分な量の油を筒底部に対して給排することができ、プランジャ14を円滑に進退させることができるだけでなく、リニアソレノイドバルブ10の応答性を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、前述されたように、第1の油路を長くすることができるだけでなく、流路m21が環状に形成され、流路m21の上端において流路m22と連通させられるので、第2の油流出入部h2と筒底部との間の第2の油路を長くすることができる。したがって、第2の油流出入部h2から進入した異物が筒底部に到達するのが困難になるので、リニアソレノイドバルブ10においてスティックが発生するのを一層防止することができる。
しかも、前記流路m21はエンド部19に形成された溝によって、流路m2、m22、m23はヨーク20に形成された溝によって構成されるので、第1、第2の油路を形成するためにソレノイド部51の寸法を大きくする必要がない。したがって、リニアソレノイドバルブ10を小型化することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図9は本発明の第4の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの断面図、図10は図9のE−E断面図、図11は図9のF−F断面図である。
この場合、第1の油路は、第2の実施の形態と同様に、第1の油流出入部h1と連通させて形成され、軸方向に延びる流路m1、該流路m1と連通させて形成され、径方向及び円周方向に延びる流路m2、並びに、円周方向における少なくとも1箇所において、流路m2及び筒底部と連通させて形成され、軸方向に延びる流路m13を備える。なお、流路m1によって第1の軸方向流路が、流路m2によって第1の円周方向流路が、流路m13によって第2の軸方向流路が構成される。
また、第2の油路は、第3の実施の形態と同様に、第2の油流出入部h2と連通させて形成され、径方向及び円周方向に延びる流路m21、並びに該流路m21及び前記流路m2と連通させて形成され、軸方向に延びる流路m22を備える。なお、流路m21によって第2の円周方向流路が、流路m22によって第3の軸方向流路が構成される。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図12は本発明の第5の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの要部を示す縦断面図、図13は図12のG−G断面図である。
この場合、コーナ部57の後端の外周縁に、流路m3と連通させて、環状の凹部から成る油溜り(外周縁油溜り)70が形成される。該油溜り70は、前記コーナ部57の内周面を径方向外方に向けて所定の深さで形成された溝から成る。
そして、油溜り70は、リニアソレノイドバルブ10が自動変速機ケースに対して水平に取り付けられたときに、ヨーク20の筒底部内に進入し、重力で最下端に沈殿した異物を収容する。そのために、前記油溜り70の内周面は、流路m3を構成する溝の底部より径方向外方に置かれる。
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図14は本発明の第6の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの横断面図である。
この場合、コーナ部57の後端の外周縁に、流路m13と連通させて、環状の凹部から成る油溜り70が形成され、該油溜り70は、リニアソレノイドバルブ10が自動変速機ケースに対して水平に取り付けられたときに、ヨーク20の筒底部内に進入し、重力で最下端に沈殿した異物を収容する。
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図15は本発明の第7の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの筒底部を示す図である。
この場合、筒底部には、コーナ部57より径方向内方で、かつ、当接部27より径方向外方に、底部56から突出させて弧状の形状を有する隆起部75が形成される。該隆起部75の高さは当接部27と等しくされる。そして、前記隆起部75とコーナ部57との間に前記油溜り70が、隆起部75と当接部27との間に環状の溝d1が形成され、前記油溜り70と溝d1とは、円周方向におけるターミナルtm(図4)と反対側(180〔°〕離れた側)において、所定の幅で形成された連通部e1によって連通させられる。前記油溜り70、溝d1及び連通部e1は、プランジャ14の後端部が当接部27及び隆起部75と当接するとき、連通部e1で連通する第1、第2の底部流路を形成する。また、前記当接部27のほかに、隆起部75の表面に表面処理が施され、非磁性体から成る外層が形成される。
したがって、油溜り70が形成されるので、筒底部内に進入した異物を収容することができる。
また、当接部27及び隆起部75が形成されるので、常時、すなわち、プランジャ14を非作動状態、又は作動状態に置いても、流路m1〜m3と筒底部とが連通させられる。したがって、プランジャ14が非作動状態から作動状態に変化する際のリニアソレノイドバルブ10の応答性を高くすることができる。
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。なお、第7の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図16は本発明の第8の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの筒底部を示す図である。
この場合、筒底部には、コーナ部57より径方向内方で、かつ、当接部27より径方向外方に、底部56から突出させて「U」字状の形状を有する隆起部76が形成される。該隆起部76の高さは当接部27と等しくされる。そして、前記隆起部76とコーナ部57との間に油溜り70が、隆起部76と当接部27との間に環状の溝d2が形成され、前記油溜り70と溝d2とは、円周方向におけるターミナルtm(図4)と反対側(180〔°〕離れた側)において、所定の幅で形成された連通部e2によって連通させられる。
次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図17は本発明の第9の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの横断面図である。
この場合、コーナ部57の後端の外周縁に、流路m23と連通させて、環状の凹部から成る油溜り70が形成され、該油溜り70は、リニアソレノイドバルブ10が自動変速機ケースに対して水平に取り付けられたときに、ヨーク20の筒底部内に進入し、重力で最下端に沈殿した異物を収容する。
次に、本発明の第10の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図18は本発明の第10の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの筒底部を示す図である。
この場合、筒底部には、コーナ部57より径方向内方で、かつ、当接部27より径方向外方に、底部56から突出させて弧状の形状を有する隆起部77が形成される。該隆起部77の高さは当接部27と等しくされる。そして、前記隆起部77とコーナ部57との間に油溜り70が、隆起部77と当接部27との間に環状の溝d3が形成され、前記油溜り70と溝d3とは、円周方向におけるターミナルtm(図6)側において、所定の幅で形成された連通部e3によって連通させられる。前記油溜り70、溝d3及び連通部e3は、プランジャ14の後端部が当接部27及び隆起部77と当接するとき、連通部e3で連通する第1、第2の底部流路を形成する。また、前記当接部27のほかに、隆起部77の表面に表面処理が施され、非磁性体から成る外層が形成される。
したがって、油溜り70が形成されるので、筒底部内に進入した異物を収容することができる。
次に、本発明の第11の実施の形態について説明する。なお、第10の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図19は本発明の第11の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの筒底部を示す図である。
この場合、筒底部には、コーナ部57より径方向内方で、かつ、当接部27より径方向外方に、底部56から突出させて「U」字状の形状を有する隆起部78が形成される。該隆起部78の高さは当接部27と等しくされる。そして、前記隆起部78とコーナ部57との間に油溜り70が、隆起部78と当接部27との間に環状の溝d4が形成され、前記油溜り70と溝d4とは、円周方向におけるターミナルtm(図6)側において、所定の幅で形成された連通部e4によって連通させられる。
前記各実施の形態において、リニアソレノイドバルブ10について説明しているが、本発明を他のソレノイドバルブに適用することができる。
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。