JP4528972B2 - 染色体組み込みマンノース発酵性ザイモモナス属細菌 - Google Patents

染色体組み込みマンノース発酵性ザイモモナス属細菌 Download PDF

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Description

本発明は、染色体組み込みマンノース発酵性ザイモモナス(Zymomonas)属細菌、さらに詳しくは、外来遺伝子の染色体への組み込みにより、安定なマンノース発酵性を付与した、未利用セルロース系バイマスからの燃料用エタノールの製造に有用な新規ザイモモナス属細菌に関する。
建築廃材、製材廃チップ、稲藁、古紙などの未利用セルロース系バイオマスから微生物を用いて燃料用エタノールを効率よく生産するためには、その主要な成分であるヘミセルロースに由来するマンノースからのエタノール回収がキーとなる。燃料用エタノール生産に用いられる主な微生物としてサッカロミセス(Saccharomayces)属の酵母やザイモモナス属またはザイモバクター(Zymobacter)属の細菌が挙げられるが、サッカロミセス属酵母以外の微生物はマンノースからエタノールを生産することはできない。
しかしながら、ザイモモナス属細菌のエタノール生産性は酵母よりも3〜5倍優れており、このような細菌にマンノース発酵性を付与できれば、未利用セルロース系バイオマスからの燃料用エタノール生産に大きく貢献できる。
非特許文献1には、ザイモモナス属細菌にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のホスホマンノースイソメラーゼ遺伝子をプラスミドに載せて導入し、マンノースでの生育を可能にした報告がある。しかし、この報告は、染色体への組み込みではなく、また、マンノースからのエタノール生産については言及されていない。
Appl. Envirom. Microbiol., 62(11), 4153-4161 (1996)
本発明の目的は、マンノースを含有する原料からのエタノールの効率的な生産のために、ホスホマンノースイソメラーゼをコードする遺伝子をザイモモナス属細菌の染色体に組み込み、安定したマンノース発酵性を付与した組換え微生物を構築することを目的とする。
上記のごとく、ザイモモナス属細菌はマンノース発酵性を示さない。発酵可能なグルコースはグルコース輸送促進タンパク質(GLF)により細胞内に取り込まれ、グルコース6リン酸になった後、ザイモモナス属細菌の解糖系であるエントナー・ドゥドロフ(Entner-Doudroff)経路に入りエタノールを発酵生産する。また、GLFにより細胞内に取り込まれたフルクトースは、フルクトキナーゼによりフルクトース6リン酸にリン酸化された後、この解糖系を経てエタノールへと変換される。しかし、マンノースは、GLFにより細胞内に取り込むことは可能とされているが、ザイモモナス属細菌はマンノースをエタノールに変換できない。
マンノースの発酵性を付与するためには、マンノースをフルクトース6リン酸へと変換した後、エントナー・ドゥドロフ経路へ効率良く導入する必要がある。すなわち、細胞内に取り込まれたマンノースは、フルクトキナーゼ(FRK)によりマンノース6リン酸にまで代謝されると推定されるが、ザイモモナス属細菌はマンノース6リン酸をフルクトース6リン酸へと異性化するホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)遺伝子が欠損しており、マンノースが解糖系へと導入されず、したがって、エタノールへと変換できないことになる。
本発明者らは、(1)ホスホマンノースイソメラーゼ遺伝子をザイモモナス属菌に導入することにより、マンノースを、エントナー・ドゥドロフ経路へ導入でき、最終的にエタノールを発酵生産することが可能であり、また、(2)ザイモモナス属菌を用いてのエタノール生産において市場を切り開くには、エタノールを高効率、低コストで生産する必要があり、ベクター導入株とは違い、導入した遺伝子の安定性が増し、マーカー等の薬剤の必要性がなくなる染色体への組み込みにより、上記目的が達成できると考えた。この考えに基づき、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ホスホマンノースイソメラーゼをコードする外来遺伝子を、相同組換え法によるダブルクロスオーバーによってザイモモナス属細菌の染色体上の標的遺伝子内に組み込んでなるザイモモナス属細菌、
(2)外来遺伝子がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来である上記(1)記載の細菌、
(3)標的遺伝子が、レバンスクラーゼ遺伝子である上記(1)記載の細菌、
(4)ザイモモナス・モビリスである上記(1)記載の細菌、
(5)Zymomonas mobilis Z6 E2:manA(FERM −20581)である上記(4)記載の細菌等を提供するものである。
本発明によれば、ホスホマンノースイソメラーゼをコードする遺伝子をザイモモナス属細菌に導入することより、ザイモモナス属細菌自体の有する優れたエタノール生産性を利用したマンノース発酵性を付与できる。また、染色体への組み込みにより、マーカー等の薬剤の必要性なく、安定なマンノース発酵性の付与が可能となる。したがって、この細菌を用いることにより、マンノースを含有する原料からのエタノールの生産を効率的に行うことが可能となる。
本発明に従ってマンノース発酵性を付与するザイモモナス属細菌としては、ザイモモナス属の細菌であれば、特に限定するものではないが、通常、エタノール産生に使用されるザイモモナス・モビリスが好ましい。
本発明の組み換えザイモモナス属細菌を得るために使用するホスホマンノースイソメラーゼをコードする外来遺伝子は、マンノース分解能を有する供与体微生物から得ることができる。
供与体微生物としては、特に限定するものではなく、ザイモモナス属、エシェリヒア(Escherichia)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、ロドバクター(Rhodobacter)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、アセトバクター(Acetobacter)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、リゾビウム(Rhizobium)属、アブロバクテリウム(Abrobacterium)属、サルモネラ(Salmonella)属およびシウドモナス(Pseudomonas)属に属する微生物が好適に用いられ、その中でもエシェリヒア・コリが好ましい。
供与体微生物のホスホマンノースイソメラーゼをコードするDNAを分離、精製した後、種々の方法で切断して得られるDNA断片を調製する。さらに同様にして得られるベクターDNA断片とを、例えばDNAリガーゼなどにより結合させ、ホスホマンノースイソメラーゼ遺伝子を含有する組換えDNAを形成する。DNAの分離、精製、DNA断片の調製、DNAリガーゼによる結合等は、市販のDNA抽出キットなどを用い、当該分野で公知の方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)3rd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載の方法などに従って行なうことができる。
染色体への組み込みは、公知の相同組換え法によるダブルクロスオーバーによって行うことができる。すなわち、ザイモモナス属細菌の染色体上の適当な標的遺伝子をクローニングした後、試験管内でクローン化した該染色体標的遺伝子の中にホスホマンノースイソメラーゼをコードする外来遺伝子を挿入し、この外来遺伝子の上流と下流に標的遺伝子の一部が連結されたDNAを調製し、これをザイモモナス属細菌の染色体上の標的遺伝子内に組み込む。 例えば、図1に示すごとく、ザイモモナス・モビリスの染色体DNA上には、レバンスクラーゼ遺伝子(以下E2と称する)とインベルターゼ遺伝子(以下、E3と称する)が配位しており、この二つの酵素はザイモモナス・モビリスの細胞表層に提示され、スクロースを基質としてフルクトースを遊離し、転移反応を触媒してレバンを形成する。そのE2部位をターゲットにして、相同組換え法を用いたダブルクロスオーバーによりホスホマンノースイソメラーゼ遺伝子組み込み、E2を欠損させる。その結果、レバンを形成するフルクトースからエタノールの生産が可能となり、一方では、ベクター導入株とは違い、導入した遺伝子の安定性が増し、マーカー等の薬剤の必要性がなくなり、さらに、キシロース代謝系遺伝子といった他の遺伝子を導入することもできる。
染色体上の標的遺伝子としては、このレバンスクラーゼ遺伝子の他に、例えば、インベルターゼ遺伝子、乳酸脱水素酵素遺伝子等があげられる。
得られた本発明の組換えザイモモナス属細菌は、従来の細菌と同様にしてマンノースを含む原料からのエタノール生産に使用できる。
以下、参考例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
参考例では、エシェリヒア・コリ(E. coli)由来のホスホマンノースイソメラーゼ遺伝子(manA)のクローニングと、ザイモモナス・モビリス(Zm. mobilis)への導入を示す。また、フルクトキナーゼがマンノース発酵性の律速であると予想され、セルフクローニングにより発現を強化させることにより、さらなるエタノール発酵生産の向上が期待されるので、Zm. mobilis由来のフルクトキナーゼ遺伝子(frk)を導入した例と、これら遺伝子を効率よく発現させることによるマンノース発酵性付与の検討結果も示す。
実施例は、染色体組み込み用ベクターの構築と、E2部位へのmanAの導入を示す。
参考例および実施例で使用したプライマーは、公知のZm. mobilis由来グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素遺伝子配列(J. Bacteriol. Vol.169 (12), 5653-5662, 1987)、公知のE. coli由来のmanAの塩基配列(Gene 32 (1-2), 41-48 (1984))、公知のZm. mobilis由来のfrkの塩基配列(J. Bacteriol. 174 (11), 3455-3460 (1992))、公知のZn. mobilisゲノムE2配列(Biosci. Biotech. Biochem., 59(2), 289-293 (1995) DNAのAccession number D17524 (DDBJ, EMBL))に基づいて設計した表1に示すプライマーである。
[表1]
manAプライマー
manA(1)(配列番号1):CGGAATTCGTTCGATCAACAACCCGAATCCTATCG
manA(2)(配列番号2):CTTAATAAGTTAGGAGAATAAACATGCAAAAACTCATTAACTCAGTGCAA
manA(3)(配列番号3):TTGCACTGAGTTAATGAGTTTTTGCATGTTTATTCTCCTAACTTATTAAG
manA(4)(配列番号4): CGCGGATCCTTACAGCTTGTTGTAAACACGCGCTA

frkプライマー
frk(1)(配列番号5):CGCGGATCCGTTCGATCAACAACCCGAATCCTATC
frk(2)(配列番号6):CTTAATAAGTTAGGAGAATAAACATGAAAAACGATAAAAAAATTTATGGA
frk(3)(配列番号7):TCCATAAATTTTTTTATCGTTTTTCATGTTTATTCTCCTAACTTATTAAG
frk(4)(配列番号8):GGCGTCGACTTCCAAAATCCCTTTTCGGTTAAGAA

E2プライマー
E2(1) (配列番号9) :ACTTAATAAGTTAGGAGAATAAACATGTTGAATAAAGCAGGCATTGCAGA
E2(2) (配列番号10):GCTCTAGATCATTATTTATTCAATAAAGACAGGGC
E2(3) (配列番号11):AGCAAATAATTTCTGGGATTTCCGC
E2(4) (配列番号12):AGGCCGCTCCGTCTGG
参考例1
(1)E. coli由来manAのクローニング
表1にまとめた合成オリゴヌクレオチドの組み合わせにより、目的遺伝子を含むDNA断片をPCRにより増幅した。
まず、Zm. mobilisの野生株 (IFO13756)のクロモゾームDNA(Chr. DNA)を鋳型として1次PCRを行い、gapプロモーターを増幅させた。同様に、E. coli K12株のChr. DNAを鋳型とし、manAを増幅させた。次に、2つのPCR産物を用いてヘテロ二本鎖を形成し、2次PCRを行い、gap-manA断片を構築して、ベクターpUC118のHincIIサイトにライゲーションさせ、E. coli JM109株へ形質転換した。
挿入断片のシークエンスを行った結果、データベースに登録されているmanAの塩基配列と一致したことからpUC118-manAとした。
(2)Zm. mobilis由来frkのクローニング
Zm. mobilisのChr. DNAを鋳型として1次PCRを行い、gapプロモーターとfrkを増幅させた。次に、2つのPCR産物を用いてヘテロ二本鎖2を形成し、次PCRを行い、gap-frk断片を構築した。構築したgap-frk断片を平滑化し、ベクターpUC118のHincIIサイトにライゲーションさせ、E. coli JM109株へ形質転換した。
挿入断片のシークエンスを行った結果、データベースに登録されているfrkの塩基配列と一致したことからpUC118-frkとした。
図2にこのクローニング操作をまとめる。
参考例2
Zm. mobilis導入のための人工マンノースオペロンの構築
pSTV29-manAの構築:E. coli用ベクターpSTV29とpUC118-manAをEcoRIおよびBamHIで消化し切り出した。その断片のライゲーション反応を行った。クロラムフェニコール耐性(Cmr)、X-gal、IPTG入り寒天培地にプレーティングし、形質転換したpSTV29-manAについて、欠損lacZ遺伝子であるためX-galによるカラーセレクションを行った。その結果、manAの増幅断片を確認することができ、さらにBamHI、EcoRIで消化確認したところ3.0 kbp、1.4 kbpにバンドが検出された。以上からpSTV29-manAを構築することができたことを確認した。
図3にこの構築操作をまとめる。
pSZ1-manAの構築:構築したpSTV29-manAおよび、E. coliとZm. mobilis間のシャトルベクターpZA323内のザイモモナス由来遺伝子部位からpSZ1-manAの構築を試みた。まず、pSTV29-manAをHindIIIで消化しBAP処理(アルカリフォスファターゼ1μL、30分×2)をした後、DNA断片を切り出した。pZA323もHindIIIで消化後、pZA3部位を切り出した。ベクター2μL、挿入断片5μLの割合で混合し、ライゲーション反応を一晩行った。それをE. coli JM109に形質転換してクロラムフェニコール(Cm)100μL入りLB寒天培地に塗布した。多数のコロニーが形成しており、それからプラスミド抽出を行い、SalIとHindIIIで消化確認したところ、それぞれ5.8 kbp、4.4 kbp、1.4 kbpの位置にバンドが検出された。以上のことより、pSZ1-manA(5.8 kbp)が構築できたことを確認した。
図4にこの構築操作をまとめる。
pSZ1-manA-frkの構築:先に構築したpSZ1-manA(5.8 kbp)をBamHIおよびSalIで切り出し、アルカリホスファターゼ処理した。また、frk(1.2 kbp)断片はpUC118-frkからBamHIおよび SalIで切り出した。これら二つの断片をライゲーションし、E. coli JM109の形質転換を行った。生育したコロニーから適当なコロニーを選びプラスミド抽出を行い、BamHIおよびSalIで消化確認を行った。BamHI消化では7.0 kbp、BamHIとSalIの両方で消化した時には5.8 kbpと1.2 kbpの位置にバンドが見られ、これをもってpSZ1-manA-frkを構築できたことを確認した。
図5にこの構築操作をまとめる。
参考例3
(1)Zm. mobilisへのマンノースオペロン遺伝子の導入
構築したpSZ1-manAを用いて、Zm. mobilis IFO13756(以下、Zm. mobilis Z6と称する)の形質転換を行った。5〜10μLのプラスミドをコンピテントセルと混合しエレクトロポレーション法により形質転換を行い、遺伝子の導入を行った。形質転換株からプラスミド抽出後、PCRを行ったところ、1.4 kbpに遺伝子の増幅が見られ、manA遺伝子の導入を確認した。同様に、pSZ1-manA-frkによるZm. mobilis Z6の形質転換を行った。エレクトロポレーション後、プラスミドの抽出を行い、E. coli JM109[pSZ1-manA-frk]と比較してmanAおよびfrk遺伝子の導入を確認した。また、ネガティブコントロールとして、構築したpSZ1を用いて、同様にZm. mobilis Z6の形質転換を行った。5μLのpSZ1をコンピテントセルと混合してエレクトロポレーション法により形質転換を行った。プラスミド抽出後、JM109[pSZ1]から得たプラスミドと比較してpSZ1の導入を確認した。
(2)Zm. mobilis内でのマンノースオペロン遺伝子の発現
導入した遺伝子の発現を確認するため、Zm. mobilis Z6および遺伝子組換え体を用いて酵素活性測定を行った。無細胞抽出液を20mM KPBで一晩透析して酵素液とし、PMI活性とFK活性を測定した。
結果を表2に示す。
[表2]
Figure 0004528972

表2に示すごとく、Zm. mobilis Z6はPMI活性を示さず、微弱なFK活性を持つことを確認した。また、ネガティブコントロールのpSZ1を導入した形質転換株においても同様であった。しかし、manAと共にfrkを導入することによりPMI活性が約2倍程度上昇しており、組換え株は野性株およびネガティブコントロールに比べてみると大幅な活性増加を明らかにした。2%マンノース培地で培養した場合でもfrkを導入することによりPMI活性に大幅な増加が見られた。一方、FK活性ではfrkの導入による活性値の著しい活性上昇は認められなかった。マンノース培地を用いるとPMI活性は増加し、RM培地ではFK活性の増加が見られた。
参考例4
育種Zm. mobilisによるマンノース発酵性試験
マンノース発酵性遺伝子を導入した形質転換体を、2%マンノース培地10mLに植菌し、30℃で前培養し、そこから1mL採取して100mLの2%グルコース、2%マンノース、2%グルコース+2%マンノース培地に植え継いだ。12時間毎に増殖測定(OD610)およびHPLC測定用にサンプリングを行った。
結果を図6に示す。
manA導入Zm. mobilis:2%マンノースのみで培養を行った場合、マンノースを72〜84時間に消費して、理論収率に近いエタノールを生産した。一方、グルコースとマンノースの混合培地では相乗効果による発酵性の向上が認められ、マンノースのみと比べ12〜36時間の短縮が見られ、並行発酵が可能であることが明らかになった。さらに、4%マンノースでは、理論収率のエタノール生産を達成しており、混合培地において発酵時間の短縮も可能であることが明らかになった。
manAとfrk導入Zm. mobilis:2%マンノースのみで培養を行った場合、エタノール変換には36〜48時間を要した。また、グルコースとマンノースの混合培地ではマンノースのみに比べ発酵時間は約12時間短縮した。さらに、4%マンノースでのmanAとfrk導入株においては理論収率のエタノール生産性を示した。
以上の結果から、Zm. mobilisにmanAのみの導入により、新たにマンノース発酵性を付与することに成功したことが判明。さらに、グルコースとマンノースの混合条件下では、マンノースのみに比べて発酵速度の向上と並行発酵が可能であることを明らかなった。
(1)染色体組込み用ベクターpUZE2d'-manAの構築
染色体組込み用ベクターをE2部位をターゲットにして行った構築図を図7に示す。
ベクターpUZE2d(4.8 kb)をNdeI処理、平滑化、ついでBAPP処理してDNAを切出した。また、pUC118-manA(4.8 kb)からPgap-manA(1.5 kb)をBamHIとEcoRIで消化し、平滑化し、manA断片を切出した。その後ライゲーション・ハイ(Ligation high)とT4リガーゼを用いて4℃、16℃で一晩ライゲーションさせ、ヒート・ショック(Heat shock)法によりE. coli JM109の形質転換を行い、プラスミド抽出を行った。その抽出したプラスミドからmanA(1)およびmanA(4)プライマーを用いて1.5 kbpのmanA断片をPCRにより確認した。さらに、EcoRVとKpnIで消化したところ、E2遺伝子と順方向であることを示す4.8 kbp、1.5 kbp断片であることを示す5.3 kbp断片のバンドを検出した。このとから、これをプラスミドpUZE2d'-manAとした。
(2)Zm. mobilis染色体DNAへのmanAの組込み確認
Zm. mobilis Z6株に対して、高濃度のプラスミド溶液を用いたエレクトロポレーション法により形質転換を行った。次に、3回の継代培養を行い2%マンノース−RWプレートに塗布した。その後3日から約2週間培養を続け、生育した大きなコロニーを任意に選び出し、2%マンノース−RM液体培地に接種した。生育した菌体懸濁液を集菌し、一度滅菌MilliQ水で洗浄後、1mLの滅菌MilliQ水に懸濁してDNA抽出用サンプルとした。その抽出液50μLの内1μLからmanAプライマーmanA(1)、manA(4)およびE2プライマーE2(1)、E2(2)によるPCR増幅を行った。その結果、manAプライマーによる増幅では、manA断片(1.5 kbp)が、また、E2プライマーによる増幅では2.8 kbpにバンドが検出された。これは、E2(1.3 kbp)にmanA(1.5 kbp)を組込んだ断片の2.8 kbpに合致することから、染色体DNA上のE2部位にmanAが挿入されたことが裏付けられた。
manAが染色体に組み込まれた菌株は、Zymomonus mobilis Z6 E2:manAと命名(略称ZymomonasE2M)し、平成17年7月1日から、茨城県つくば市東1−1−1 中央第6の、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受番号FERM −20581の下で寄託してある。
(3)染色体へ組込んだmanAの発現
染色体へmanAを組込んだ3種の株を用いて、manAの発現を確認するためPMI、FK活性測定を行った。また炭素源の違いによる活性値の比較も行った。
その結果を表3に示す。
[表3]
Figure 0004528972

染色体組込み株のグルコース培地での場合以外では、ベクター導入株より高いPMI活性値を有しており、活性値は比較的近似していたことから遺伝子が安定して複製し発現していることが判明した。
(4)染色体組込み株の発酵性試験
染色体組込み株をグリセロールストックから2%マンノース−RM培地に植菌し、そのOD610nm=0.8〜1.0付近もしくは対数増殖期後期の菌体懸濁液120μLを新鮮な2%糖濃度の培地12mLへ接種し、経時的にサンプリングし、生育度の測定とHPLC分析を行った。
結果を図8に示す。
図8から明らかなごとく、マンノース培地では、グルコース培地での生育度に比べ約半分であったが36時間までにマンノースを完全に消費し理論収率のエタノール生産力を有していた。混合培地においてはグルコース、マンノースともにスムーズな代謝と並行発酵が確認でき2日ほどで完全に消費した。ベクター導入株より安定した発酵性能を有していた。
Zm. mobilisにマンノース発酵性を付与するためにはmanAのみを導入する方法と、マンノースからのエタノール発酵で律速であると推定されたfrkとのmanAの導入が考えられ、上記参考例におけるごとく、pSZ1-manAおよびpSZ1-manA-frkの2つのプラスミドをZm. mobilis株へ導入し、いずれもmanAが高発現してPMI活性が見られ、frkの導入によるFK活性値の上昇、PMI活性値の飛躍的上昇が認められた。しかし、組換え株を用いての発酵性試験を行った結果、マンノースからのエタノール発酵生産には必ずしもfrkの導入が発酵性能を向上させるために必要ではないということが判明した。
そこで、実施例におけるごとく、Zm. mobilisの実用菌を育種するため染色体に配位したE2をターゲットとし、構築した染色体組込みプラスミドを用いて、ダブルクロスオーバーにより染色体E2部位にmanAを挿入した染色体組込み株の開発に成功した。PMI、FK活性測定を行ったところ、染色体に組込んだmanAはベクター導入株(manA+frk)のPMI活性値と同等あるいはそれ以上の活性値を有しており、発酵性試験も行ったところ、マンノースからのスムーズなエタノール発酵生産が確認できた。
かくして、本発明によれば、ホスホマンノースイソメラーゼをコードする外来遺伝子をザイモモナス属細菌の染色体に組み込むことにより、安定なマンノース発酵性の付与が可能となり、当該菌株を、マンノースを含有する原料からのエタノールの効率的な生産に利用することができる。
染色体DNAへのmanA組み込み手順を示す図。 E. coli由来のmanAおよびZm. mobilis由来frkのクローニング操作を示す図。 pSTV-29-manAの構築操作を示す制限酵素地図。 pSZ1-manAの構築操作を示す制限酵素地図。 pSZ1-manA-frkの構築操作を示す制限酵素地図。 育種Zm. mobilisによるマンノース発酵性試験結果を示すグラフ。 染色体DNA組み込み用組換えプラスミドpUZE2d'-manAの構築操作を示す制限酵素地図。 染色体組み込み株によるマンノース発酵性試験結果を示すグラフ。
配列番号1:E. coliのmanAをコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号2:E. coliのmanAをコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号3:E. coliのmanAをコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号4:E. coliのmanAをコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号5:Zm. mobilisのfrkをコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号6:Zm. mobilisのmanAをコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号7:Zm. mobilisのmanAをコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号8:Zm. mobilisのmanAをコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号9:Zm. mobilisの染色体E2部位をコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号10:Zm. mobilisの染色体E2部位をコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号11:Zm. mobilisの染色体E2部位をコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。
配列番号12:Zm. mobilisの染色体E2部位をコードするDNA増幅用に設計したオルゴヌクレオチド・プライマー。

Claims (1)

  1. ホスホマンノースイソメラーゼをコードするエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来の外来遺伝子を、相同組換え法によるダブルクロスオーバーによってザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)の染色体上のレバンスクラーゼ遺伝子内に組み込んでなるザイモモナス属細菌であるZymomonas mobilis Z6 E2:manA(FERM P−20581)
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