JP4528945B2 - バイオマスのガス化触媒及びこの触媒を用いるバイオマスからの水素の製造方法 - Google Patents
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Description
また、Rh担持触媒を用い、タール生成やカーボン蓄積を防ぐ方法は富重らによって報告されているが(非特許文献3参照)、Rhは高価なため、安価な材料でタール生成やカーボン蓄積を防ぐ触媒の開発が求められている。
すなわち、本発明によれば、第一に、ニッケルを担持したH−ZSM−5型ゼオライトからなる触媒を含有することを特徴とするバイオマスのガス化触媒が提供される。
第二に、補助成分としてセリウムが含有されていることを特徴とする第一に記載のガス化触媒が提供される。
第三に、バイオマスがセルロースであることを特徴とする第一又は第二に記載のガス化触媒が提供される。
第四に、上記第一〜第三何れかに記載のガス化触媒の存在下でバイオマスを熱分解することを特徴とする水素の製造方法が提供される。
この場合のセリウムとしては、セリウム金属単体及びセリウムを含む化合物のいずれも使用可能であるが、具体的には硝酸セリウム、炭酸セリウム、塩化セリウム、シュウ酸セリウム、セリウムアセチルアセトナート、硫酸セリウム、などが適宜用いられるが、なかでも、硝酸セリウムを用いることが望ましい。
2.2021gの硝酸ニッケルをイオン交換水に溶解させ、この中にH−Beta型ゼオライト担体(商品名:HSZ−930NHA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:27)4gを入れて含浸させ、一晩放置した。ゼオライト担体は含浸前に空気存在下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。一晩放置した後、120℃のオーブン中で乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をセラミックス製の焼成管中、空気流通下で焼成を行った。焼成温度は700℃、焼成時間は3時間とした。これにより、ニッケルが10重量%含まれるニッケル担持H−Beta型ゼオライト触媒が調製された。
調製したニッケル触媒は、プレスして錠剤とした後、乳鉢などで磨り潰して顆粒状とし、篩を用いて直径0.5〜2mmのものを選別して用いた。
こうして得た触媒1gを内径9mmの石英製反応管中央に充填した。この場合、触媒層の下流側に石英ウールを充填して反応中に触媒が移動しないようにした。上流側にも少量だけ石英ウールを充填した。
原料ガスは窒素/酸素の体積比が90/10混合ガスを用いる。混合ガスの流速は30cm3/分とする。活性の測定方法は、500℃で反応を行い、1回の反応につき0.3gのセルロースを反応管上部より投下する方法を用いた。セルロースは反応前にプレスして錠剤とした後、乳鉢などで磨り潰して顆粒状とし、篩を用いて直径0.5〜2mmのものを選別して用いた。
反応によって生成するガスは、ガスバッグで30分間にわたって収集し、ガスクロマトグラフでガス組成を分析した。氷水で冷却した試験管で生成したタールをトラップした。7回反応を行い、その前後のトラップ用試験管の重量の変化から、生成したタール量を比較した。
また、7回反応を行った後の触媒表面に析出している炭素の重量を測定した。測定方法は熱重量分析装置(マックサイエンス、TG DTA 2000)により空気流通下で加熱昇温を行い、炭素の燃焼に伴う重量減少を測定することによった。
本触媒を用いて、1回の反応で得られた水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、その他のガス生成物の生成量を表1の参考例1に示した。ガス生成物の生成量は1回目の反応では少なく、2回目から増加する傾向が見られたので、生成量が安定した5回目の反応の結果を示した。また、7回反応を行った後のタール生成量とタールの色、熱重量分析によって求められた析出炭素の燃焼に伴う重量減少率も同時に表1の参考例1に示した。
ニッケル担持H−Beta型ゼオライト触媒においては、1回の反応で水素1627μmol、一酸化炭素2153μmol、二酸化炭素2642μmol、メタン110μmolが得られ、ガス合計は6691μmolであった。また7回反応を行った結果、0.64gの黄色のタールが得られ、熱重量分析では13.3%の重量減少が認められた。
参考例1に用いたH−Beta型ゼオライト担体に代えて、参考例2としてH−Mordenite型ゼオライト担体(商品名:HSZ−640HOA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:18.3)、参考例3としてNa−Mordenite型ゼオライト担体(商品名:HSZ−642NAA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:18.3)、実施例1としてH−ZSM−5型ゼオライト担体(商品名:HSZ−830NHA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:29)、参考例4としてNa−ZSM−5型ゼオライト担体(シリカ/アルミナ比:29)、実施例2としてH−ZSM−5型ゼオライト担体(商品名:HSZ−890HOA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:1900)、参考例5としてUSY型ゼオライト担体(商品名:HSZ−360HUA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:14.0)、参考例6としてNa−Y型ゼオライト担体(商品名:HSZ−320NAA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:5.7)を用いて、参考例1と同様にしてニッケル担持ゼオライト触媒を調製した。なお、Na−ZSM−5型ゼオライト担体は、H−ZSM−5型ゼオライト担体(商品名:HSZ−830NHA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:29)を硝酸ナトリウム水溶液中でイオン交換してNa型とした。得られたNa型担体は、吸引濾過した後、120℃のオーブン中で乾燥し、空気流通下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。
触媒活性の測定も、参考例1と同様にして行った。
測定の結果は、それぞれ表1の実施例1,2及び参考例2〜6のようになった。参考例5のニッケル担持USY型ゼオライト触媒では水素の生成量が1726μmolと、参考例1のニッケル担持H−Beta型ゼオライト触媒と並んで少なくなった。しかし、他のニッケル担持ゼオライト触媒では、全てが2500〜3500μmolの水素生成量を示した。タールの生成量では、やはり参考例5のニッケル担持USY型ゼオライト触媒が0.58gのタールを生成し、参考例1のニッケル担持H−Beta型ゼオライト触媒と並んで多くなった。あと参考例2のニッケル担持H−Mordenite型ゼオライト触媒ではタール生成量が0.33gと少なくなったが、それ以外のニッケル担持ゼオライト触媒ではタール生成量は0.4〜0.5gの範囲に収まった。生成したタールの色は、参考例3のニッケル担持Na−Mordenite型ゼオライト触媒や参考例6のニッケル担持Na−Y型ゼオライト触媒では茶色であった。実施例1のニッケル担持H−ZSM−5型ゼオライト触媒(シリカ/アルミナ比:29)では透明のタールが得られたが、他の多くのニッケル担持ゼオライト触媒では黄色のタールが得られた。
一方、熱重量分析の結果、2〜14重量%の重量減少が見られ、ゼオライトの種類との相関はあまり認められなかった。またガス合計は、概ね7000〜10000μmolであった。
担持量が5重量%、10重量%、30重量%のセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体を用いたニッケル/セリウム/H−ZSM−5型ゼオライト触媒をそれぞれ、実施例3、4、5とする。
実施例3のセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体(セリウム:5重量%)は以下のようにして調製した。
0.6524gの硝酸セリウムをイオン交換水に溶解させ、この中にH−ZSM−5型ゼオライト担体(商品名:HSZ−830NHA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:29)4gを入れて含浸させ、一晩放置した。ゼオライト担体は含浸前に空気存在下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。一晩放置した後、120℃のオーブン中で乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をセラミックス製の焼成管中、空気流通下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。これにより、セリウムが5重量%含まれるセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体が調製された。
実施例4のセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体(セリウム:10重量%)は以下のようにして調製した。
1.3773gの硝酸セリウムをイオン交換水に溶解させ、この中にH−ZSM−5型ゼオライト担体(商品名:HSZ−830NHA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:29)4gを入れて含浸させ、一晩放置した。ゼオライト担体は含浸前に空気存在下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。一晩放置した後、120℃のオーブン中で乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をセラミックス製の焼成管中、空気流通下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。これにより、セリウムが10重量%含まれるセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体が調製された。
実施例5のセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体(セリウム:30重量%)は以下のようにして調製した。
5.3124gの硝酸セリウムをイオン交換水に溶解させ、この中にH−ZSM−5型ゼオライト担体(商品名:HSZ−830NHA、東ソー社製、シリカ/アルミナ比:29)4gを入れて含浸させ、一晩放置した。ゼオライト担体は含浸前に空気存在下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。一晩放置した後、120℃のオーブン中で乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をセラミックス製の焼成管中、空気流通下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。これにより、セリウムが30重量%含まれるセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体が調製された。
上記の方法で調整したセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体に、10重量%のニッケルを担持した触媒を調製した。調製は以下のような方法で行った。
2.2021gの硝酸ニッケルをイオン交換水に溶解させ、この中に、ここで得られたセリウム担持H−ZSM−5型ゼオライト担体4gを入れて含浸させ、一晩放置した。その後、120℃のオーブン中で乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をセラミックス製の焼成管中、空気流通下で焼成を行った。焼成温度は700℃、焼成時間は3時間とした。これにより、ニッケルが10重量%含まれるニッケル/セリウム/H−ZSM−5型ゼオライト触媒が調製された。
触媒の前処理、反応条件などは、実施例1,2及び参考例1〜6と同様にして行った。
測定の結果は、表1の実施例3〜5のようになった。
実施例3、4、5における水素生成量はそれぞれ、2774μmol、2880μmol、2780μmolとなり、H−ZSM−5型ゼオライト担体にセリウムを担持させることによって、水素生成量に大きな変化は見られなかった。しかし、合計ガス量はそれぞれ、9321μmol、9910μmol、10315μmolとなり、セリウム担持量の増加にともない、合計ガス量は増加した。また、いずれも生成するタールは透明なままで、7回反応後のタール生成量はそれぞれ、0.37g、0.41g、0.31gとなり、セリウム担持量の増加にともない、タール生成量は若干減少する傾向が見られた。一方、熱重量分析による重量減少はそれぞれ、8.44重量%、6.50重量%、1.52重量%となり、セリウム担持量の増加にともない減少する傾向が顕著に見られた。
これらの結果から、触媒担体にH−ZSM−5型ゼオライト(シリカ/アルミナ比:29)を用いることによって色の濃いタールの生成を抑制できること、ゼオライト担体にセリウムを担持した担体を用いることによってタール生成量をある程度抑制し、更に触媒上への炭素析出を大幅に抑制できることが分かり、優れた水素製造触媒を調製する指針が得られたと考えられる。
担体にシリカ(富士シリシア、CARiACT−G10)、ジルコニア(日揮)を用いた他は、実施例5と同様の触媒を調製し、同様の反応を行った。
測定の結果は、それぞれ表1の比較例1、2のようになった。
水素生成量は比較例1のニッケル/セリウム/シリカ触媒では2358μmol、比較例2のニッケル/セリウム/ジルコニア触媒では1962μmolとなり、実施例3〜5のニッケル/セリウム/H−ZSM−5型ゼオライト触媒と比べて少なくなった。また合計ガス量もそれぞれ、6322μmol、6024μmolと、実施例3〜5よりかなり少なくなった。ニッケル/セリウム/シリカ触媒とニッケル/セリウム/ジルコニア触媒のいずれにおいても色の濃いタールが得られ、セリウム担持シリカやセリウム担持ジルコニアがこの反応においてはガス化効率はあまり優れていないことが分かる。
5.3124gの硝酸セリウムをイオン交換水に溶解させ、この中にシリカ(富士シリシア、CARiACT−G10)4gを入れて含浸させ、一晩放置した。シリカ担体は含浸前に空気存在下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。一晩放置した後、120℃のオーブン中で乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をセラミックス製の焼成管中、空気流通下で焼成を行った。焼成温度は500℃、焼成時間は6時間とした。これにより、セリウムが30重量%含まれるセリウム担持シリカ担体が調製された。
0.3201gのアセチルアセトンロジウムをアセトンに溶解させ、その中に、ここで得られたセリウム担持シリカ担体4gを入れて含浸させ、一晩放置した。その後、120℃のオーブン中で乾燥し、前駆体を得た。この前駆体をセラミックス製の焼成管中、空気流通下で焼成を行った。焼成温度は700℃、焼成時間は3時間とした。これにより、ロジウムが2重量%含まれるロジウム/セリウム/シリカ触媒が調製された。
触媒の前処理、反応条件などは、実施例1〜5、参考例1〜6、比較例1、2と同様にして行った。
測定の結果は、表1の比較例3のようになった。水素生成量は3997μmol、合計ガス量11798μmol、タール生成量0.30g、熱重量分析による重量減少は0.94重量%となり、実施例5のニッケル/セリウム/H−ZSM−5型ゼオライト触媒(セリウム:30重量%)は、水素生成量に関してはロジウム/セリウム/シリカ触媒よりも劣るものの、タール生成やカーボン析出の抑制においては、ロジウム系と遜色ない特性を有していることが分かった。
活性の測定において、600℃で反応を行った他は、実施例1〜5及び参考例1〜6と同様にして行った。
結果はそれぞれ、表2の実施例6、7及び参考例7〜12のようになった。
水素生成量はいずれの触媒でも4200〜4700μmolの範囲内に収まり、ゼオライト担体の種類による違いは殆ど見られなかった。また合計ガス量も、11000〜13000μmolの範囲内に収まった。タールの色は透明もしくは黄色で、生成量も0.3〜0.4gの範囲内に収まり、ゼオライト担体の種類による違いは殆ど見られなかった。熱重量分析による重量減少においては、ニッケル担持Na−Mordenite型ゼオライト触媒では0.63重量%、ニッケル担持Na−Y型ゼオライト触媒では1.78重量%と少なくなったが、他のニッケル担持ゼオライト触媒では2〜4重量%となった。
ニッケル/セリウム/H−ZSM−5型ゼオライト触媒において、600℃で反応を行った他は実施例3〜5と同様にして活性の測定を行った。
結果はそれぞれ、表2の実施例8〜10のようになった。
セリウム担持量が5重量%、10重量%、30重量%での触媒における水素生成量はそれぞれ、4423μmol、4068μmol、3861μmolとなり、600℃ではセリウム担持量の増加にともない水素生成量の低下が認められたが、合計ガス量は12843μmol、12917μmol、12885μmolと、横ばいであった。
一方、生成するタールは透明なままで、タール生成量はセリウム担持量の増加にともない若干減少する傾向が見られた。一方、熱重量分析による重量減少は500℃の場合と同様、セリウム担持量の増加にともない減少する傾向が顕著に見られた。
活性の測定において、600℃で反応を行った他は、比較例1、2と同様にして行った。
結果はそれぞれ、表2の比較例4、5のようになった。
水素生成量は、比較例4のニッケル/セリウム/シリカ触媒では3783μmol、比較例5のニッケル/セリウム/ジルコニア触媒では3306μmolとなり、実施例8〜10のニッケル/セリウム/H−ZSM−5型ゼオライト触媒と比べて僅かな差ながら少なくなった。また合計ガス量はそれぞれ、9860μmol、8953μmolであり、ゼオライト系よりかなり少なくなった。タール生成においては、ニッケル/セリウム/シリカ触媒では透明なタールが得られ、ニッケル/セリウム/ジルコニア触媒では黄色のタールが得られた。以上の結果より、反応温度を600℃に上げても、依然、セリウム担持ゼオライト担体の方が優れていると言える。
活性の測定において、600℃で反応を行った他は、比較例3と同様にして行った。
結果は表2の比較例6のようになった。
水素生成量は3817μmol、合計ガス量は13107μmol、タール生成は透明のタールが0.21g、熱重量分析による重量減少も0.13重量%であった。500℃の場合と同様、実施例10のニッケル/セリウム/H−ZSM−5型ゼオライト触媒(シリカ/アルミナ比:29)(セリウム:30重量%)はロジウム系に匹敵する性能を示すことが分かった。
Claims (4)
- ニッケルを担持したH−ZSM−5型ゼオライトからなる触媒を含有することを特徴とするバイオマスのガス化触媒。
- 補助成分としてセリウムを含有することを特徴とする請求項1に記載のガス化触媒。
- バイオマス類がセルロースであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス化触媒。
- 請求項1〜3何れかに記載のガス化触媒の存在下でバイオマスを熱分解することを特徴とする水素の製造方法。
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