JP4527209B2 - ステアリングコラム用軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のステアリングコラムシャフトを支承するステアリングコラム用軸受に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
自動車のステアリングコラムシャフトを支承するステアリングコラム用軸受としては、鋼製ボールからなる転がり軸受又は合成樹脂からなるすべり軸受が使用されている。一般に、自動車のステアリングコラムシャフトを支承するステアリングコラム用軸受に対しては、荷重や速度などの回転条件はさほど厳しくないが、アイドリング時等にステアリングシャフトに作用する振動を吸収する振動吸収性や摩擦トルクの安定性が要求される。
【0003】
転がり軸受は、その摩擦トルクは安定しているものの振動吸収性に劣り、また転がり軸受が固定されるケーシング及び転がり軸受に支承されるステアリングコラムシャフトの寸法精度を高精度に仕上げる必要があるため、軸受自体の高価な点に加えて加工コストも高くなるという問題がある。
【0004】
合成樹脂からなるすべり軸受は、上記転がり軸受に比べ、価格が安く、振動吸収性に優れるという利点を有するものの、すべり軸受とステアリングコラムシャフトとの間に適度のクリアランス(軸受隙間)を必要とするため、ステアリングコラムシャフトに生じる振動によりステアリングコラムシャフトと軸受との間に衝突音を発生し、自動車を運転する者に不快音として伝達されるという問題がある。
【0005】
また、ケーシングを車体側に固定するための部材(ブラケット)を溶接加工によりケーシング外周面に取付ける場合、溶接加工による溶接ひずみの影響がケーシングの内径寸法精度(真円度)に悪影響をもたらし、ケーシングに固定されるすべり軸受の内径寸法精度(真円度)を悪化させるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ステアリング操作時(ハンドル回転時)にはステアリングコラムシャフトに作用する負荷をより円滑に支承し、アイドリング時等のステアリングコラムシャフトに負荷が加わらない状態においては、ステアリングコラムシャフトに作用する振動を吸収することができるステアリングコラム用軸受を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様のステアリングコラム用軸受は、円筒状ケーシングとステアリングコラムシャフトとの間に介装されて、ステアリングコラムシャフトを回転自在に支承するためのステアリングコラム用軸受であって、弾性を有する合成樹脂からなる該軸受の外周面には円筒状ケーシング内周面に当接する領域と、当該領域と軸方向において隣接して該円筒状ケーシング内周面に部分的に当接しない領域とが形成されているとともに、該軸受の内周面にはステアリングコラムシャフトの周面と締め代をもって摺接する領域とステアリングコラムシャフトの周面と締め代をもたずに摺接する領域とを前記円筒状ケーシング内周面に部分的に当接しない領域に対応して周方向に備えた軸支承面と、該軸支承面と軸方向に隣接して該軸支承面に対して拡径した拡径円筒面とを備えており、該軸受外周面の前記円筒状ケーシング内周面に部分的に当接しない領域は、円筒を軸方向に切除してなる複数個の平坦面からなる円筒状ケーシンシング内周面に当接しない部位を備えており、該軸受内周面の前記ステアリングコラムシャフトの周面と締め代をもって摺接する領域は、該軸受外周面の前記円筒状ケーシング内周面に当接しない部位である平坦面に対応した該軸受内周面に、該平坦面に平行な平坦面として周方向に複数個形成されており、該軸受外周面の前記ケーシング内周面と部分的に当接しない領域において軸方向に伸びる切割り溝が該軸受に設けられており、該軸受内周面の軸支承面のステアリングコラムシャフトの周面と締め代をもって摺接する領域には少なくとも一個の窪み部が形成されていると共に該窪み部に潤滑油剤が充填されている。
【0008】
第一の態様のステアリングコラム用軸受によれば、軸支承面に締め代部が形成されていると共に該締め代部に対応して切割り溝が設けられているため、ステアリングコラムシャフトは軸支承面の締め代部において適度な弾性的な締め付けにより回転自在に支持される。したがって、アイドリング時等のステアリングコラムシャフトに負荷が作用しない状態では、ステアリングコラムシャフトは締め代部における軸支承面に弾性支持されるので、ステアリングコラムシャフトに作用する振動は吸収される。
【0009】
また、軸支承面の締め代部には少なくとも一個の窪み部が形成されていると共に該窪み部には潤滑油剤が充填されているので、ステアリング操作時におけるステアリングコラムシャフトは常に潤滑油剤を介して摺動支持され、常に円滑な摺動支持が維持される。
【0010】
さらに、軸支承面には切割り溝が設けられているので、円筒状ケーシングと軸受との熱膨張差に起因する締め代量の消失を回避し得、軸支承部の締め代部に適度な締め代が維持される。
【0011】
本発明のステアリングコラム用軸受を形成する弾性を有する合成樹脂としては、柔軟であってかつ強靭であり、概ねショア硬さ(D型)40〜60、反発弾性値(JIS−K6301)が50〜80を有していてゴム状の弾性挙動を残存しているもので、例えばポリエステル・エーテル共重合体あるいはポリウレタン樹脂等が好適に使用される。
【0012】
本発明の第二の態様のステアリングコラム用軸受では、第一の態様のステアリングコラム軸受において、軸受外周面には、少なくとも円筒状ケーシング内周面に当接する領域には軸方向に伸びたセレーションが形成されている。
【0013】
第二の態様のステアリングコラム用軸受によれば、軸受の円筒状ケーシング内周面への圧入の際に、該セレーションの弾性撓みによって円筒状ケーシングの内径真円度の悪影響を受けることなく円筒状ケーシング内周面に圧入保持される。
【0014】
本発明の第三の態様のステアリングコラム用軸受では、軸受外周面において、円筒状ケーシング内周面に当接する領域の側の端部には環状鍔部が形成されている。
【0015】
第三の態様のステアリングコラム用軸受によれば、環状鍔部は軸受を円筒状ケーシングの端部へ圧入固定する際の該ケーシングの端面への突き当て部となる
。
【0016】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明及びその実施の形態を、図を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何等限定されないのである。
【0017】
図1から図3において、本例のステアリングコラム用軸受10は弾性を有する合成樹脂からなる。該軸受10の外周面20には、円筒状ケーシング40の内周面41に当接する領域21と、当該領域21と軸方向の一方の端部に隣接して該円筒状ケーシング40の内周面41に部分的に当接しない領域22とが形成されている。領域22には、軸方向に伸びたセレーション23と、当該領域22における円筒状ケーシング40の内周面41に当接しない部位としての、円筒を軸方向に切除してなる複数個、本例では3個の平坦面24が周方向に交互に形成されている。
【0018】
該軸受10の内周面30には、軸支承面31と該軸支承面31と軸方向において隣接して該軸支承面31に対して拡径した拡径円筒面32が形成されている。該拡径円筒面32は、円筒状ケーシング40の内周面41に当接する領域21にほぼ対応して設けられている。
【0019】
軸支承面31は、ステアリングコラムシャフト50の周面51と所定の締め代をもって摺接する複数個、本例では3個の領域33と、ステアリングコラムシャフト50の周面51と締め代を持たずに摺接する複数個、本例では3個の領域34とを領域22に対応してかつ周方向において交互に等間隔をもって備えている。各領域33は、領域22に平行な平坦面35として形成されており、各平坦面35がステアリングコラムシャフト50の周面51に締め代をもって摺接するようになっている。
【0020】
円筒状ケーシング40の内周面41に当接しない部位としての領域22の平坦面24には、軸方向に伸びた断面三角形状の突条部25が軸支承面31の領域33に対応して設けられている。なお、突条部25の断面形状については三角形に限らず、その他四角形、半円形または半楕円形等であってもよい。各突条部25は、各平坦面24における補強リブとして機能する。
【0021】
該軸受10の外周面20の領域22において、該軸受10の端面26から軸方向に伸びて複数個、本例では3個の切割り溝27が該軸受10に設けられている。
【0022】
該軸受10の外周面20において、領域21には、軸方向に伸びたセレーション28が形成されている。セレーション28は、セレーション23と軸方向において連続して形成されている。領域21及び22において、セレーション23及び28の各頂部が円筒状ケーシング40の内周面41に実質的に当接するようになっている。
【0023】
軸支承面31のステアリングコラムシャフト50の周面51と所定の締め代をもって摺接する領域33の平坦面35には、少なくとも一個、本例では13個の窪み部36が形成されており、該窪み部36にはグリース等の潤滑油剤が充填されている。
【0024】
該軸受10の外周面20において、円筒状ケーシング40の内周面41に当接する領域21側の端部には環状鍔部29が形成されている。この環状鍔部29は軸受10を円筒状ケーシング40の端部へ圧入する際の該ケーシング40の端面への突き当て部となる。
【0025】
以上の軸受10は、図3に示すように、円筒状ケーシング40の内周面41に、円筒状ケーシング40の内周面41に部分的に当接しない領域22側から挿入し、領域21において該円筒状ケーシング40の内周面41に圧入され、環状鍔部29を円筒状ケーシング40の端面に当接させて該円筒状ケーシング40に固定される。
【0026】
軸受10によれば、軸支承面31に締め代部が形成されていると共に該締め代部は切割り溝27によって舌片状に形成されているため、ステアリングコラムシャフト50は軸支承面31の締め代部において適度な弾性的な締め付けにより回転自在に支持される。したがって、アイドリング時等のステアリングコラムシャフト50に負荷が作用しない状態では、ステアリングコラムシャフト50は締め代部における軸支承面31に弾性支持されるので、ステアリングコラムシャフト50に作用する振動は吸収される。
【0027】
また、軸支承面31の締め代部には少なくとも一個の窪み部36が形成されていると共に該窪み部36には潤滑油剤が充填されているので、ステアリング操作時におけるステアリングコラムシャフト50は常に潤滑油剤を介して摺動支持され、常に円滑な摺動支持が維持される。
【0028】
さらに、軸支承面31には切割り溝27が設けられているので、円筒状ケーシング40と軸受10との熱膨張差に起因する締め代量の消失を回避し得、軸支承部31の締め代部に適度な締め代が維持される。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、ステアリング操作時(ハンドル回転時)にはステアリングコラムシャフトに作用する負荷をより円滑に支承し、アイドリング時等のステアリングコラムシャフトに負荷が加わらない状態においては、ステアリングコラムシャフトに作用する振動を吸収することができ、しかも熱による締め代量の消失を回避し得、軸支承部の締め代部に適度な締め代が維持されるステアリングコラム用軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一実施例の側面図である。
【図2】図1に示す例のA−A線断面図である。
【図3】図2に示す軸受を用いた軸受装置の断面図である。
【符号の説明】
10 軸受
20 外周面
21、22 領域
23 セレーション
24 平坦面
25 突条部
27 切割り溝
28 セレーション
30 内周面
31 軸支承面
33、34 領域
35 平坦面
36 窪み部
40 円筒状ケーシング
50 ステアリングコラムシャフト
Claims (3)
- 円筒状ケーシングとステアリングコラムシャフトとの間に介装されて、ステアリングコラムシャフトを回転自在に支承するためのステアリングコラム用軸受であって、弾性を有する合成樹脂からなる該軸受の外周面には円筒状ケーシング内周面に当接する領域と、当該領域と軸方向において隣接して該円筒状ケーシング内周面に部分的に当接しない領域とが形成されているとともに、該軸受の内周面にはステアリングコラムシャフトの周面と締め代をもって摺接する領域とステアリングコラムシャフトの周面と締め代をもたずに摺接する領域とを前記円筒状ケーシング内周面に部分的に当接しない領域に対応して周方向に備えた軸支承面と、該軸支承面と軸方向に隣接して該軸支承面に対して拡径した拡径円筒面とを備えており、該軸受外周面の前記円筒状ケーシング内周面に部分的に当接しない領域は、円筒を軸方向に切除してなる複数個の平坦面からなる円筒状ケーシンシング内周面に当接しない部位を備えており、該軸受内周面の前記ステアリングコラムシャフトの周面と締め代をもって摺接する領域は、該軸受外周面の前記円筒状ケーシング内周面に当接しない部位である平坦面に対応した該軸受内周面に、該平坦面に平行な平坦面として周方向に複数個形成されており、該軸受外周面の前記ケーシング内周面と部分的に当接しない領域において軸方向に伸びる切割り溝が該軸受に設けられており、該軸受内周面の軸支承面のステアリングコラムシャフトの周面と締め代をもって摺接する領域には少なくとも一個の窪み部が形成されていると共に該窪み部に潤滑油剤が充填されていることを特徴とするステアリングコラム用軸受。
- 軸受の外周面において、少なくとも円筒状ケーシング内周面に当接する領域には、軸方向に伸びたセレーションが形成されている請求項1に記載のステアリングコラム用軸受。
- 軸受の外周面において、円筒状ケーシング内周面に当接する領域の側の端部には、環状鍔部が形成されている請求項1又は2に記載のステアリングコラム用軸受。
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