JP4526686B2 - Ats地上装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、性能試験の容易なATS地上装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道において、信号機が停止信号を現示しているにもかかわらず、列車運転士が列車を停止させなかったり、あるいは停止信号を進行信号等と誤認して列車を進行させようとする場合がある。このような場合に、列車に自動的にブレーキをかけて停止させ、追突事故や衝突事故等を防止する装置としてATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)が用いられている。
【0003】
ATSは、図示はしていないが、地上側に設けられるATS地上装置と、列車側に設けられるATS車上装置により構成される。ATS地上装置は、検知用地上子と、制御用地上子と、ATS受信器を備えている。各地上子は、レールの間などの軌道近傍に設置される。検知用地上子には主コイルが内蔵され、ATS車上装置の車上子から送信される所定の常時発振周波数を受信する。ATS受信器は、ATS車上装置からの常時発振周波数信号を受信すると、あらかじめ設定されたタイマー時間の経過後、制御用地上子に制御出力を送る。この場合、タイマーの設定時間の経過前に列車の車上子が制御用地上子の上に来て制御用地上子からの制御出力を受信すると、ATS車上装置は、列車速度が所定の制限値を超過しているとして、列車にブレーキをかけるように制御する。
【0004】
ATS地上装置は、列車運転の安全確保のために重要な装置であり、その性能が劣化したり故障していないか確認する必要がある。このため、従来は、可搬型の試験装置を使用し、検知用地上子の主コイルの上に、車上子を模擬した試験用コイル等を配置し、この試験用コイルに試験用の発振周波数信号を流し、ATS地上装置の性能試験を行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ATS地上装置は、駅周辺だけでなく種々の場所に設置されているため、上記した従来の方法では、試験装置をATS地上装置の設置箇所まで運搬してセットする必要があった。また、列車が運行される間合において試験作業を行わなければならず、慎重な作業が要求され煩雑である、という問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、性能試験が容易なATS地上装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係るATS地上装置は、鉄道の軌道近傍に配置され、鉄道の列車のATS車上装置から送信される列車側情報を受信する主コイルを有する検知用地上子と、鉄道の軌道近傍に配置され、前記鉄道の列車のATS車上装置へATS制御情報を送信する制御用地上子と、前記検知用地上子から送られた前記列車側情報を受信し、前記検知用地上子が前記列車側情報を受信した時点からATS制御用時間が経過した場合には前記制御用地上子に前記ATS制御情報を送信させるように制御するATS受信器を備えたATS地上装置において、
前記検知用地上子の前記主コイルの近傍に、当該主コイルの性能を試験するための試験用コイルを配置する一方、前記ATS受信器に、前記試験用コイルに送信する試験用情報を発生する発振器と、該発振器から前記試験用情報を前記試験用コイルに送信する送信経路を開閉する試験用リレーと、試験時にONする試験スイッチと、該試験スイッチのON動作により前記試験用リレーを動作させて前記送信経路を介して前記発振器を前記試験用コイルに接続して試験用情報を試験用コイルへ送信させる試験制御部と、を備える構成としたことを特徴とする。
【0008】
上記のATS地上装置において、好ましくは、前記試験制御部は、前記試験用情報による前記主コイルの出力結果が受信された場合に、その値に基づき良否判定を行う構成とするとよい
【0009】
また、上記のATS地上装置において、好ましくは、
前記ATS受信器は、
前記良否判定の結果を表示又は外部出力する判定結果出力手段を有する。
【0010】
また、上記のATS地上装置において、好ましくは、前記ATS受信器は、外部から入力される試験指令を受信する試験指令受信手段を備え、前記試験制御部は、前記試験指令受信手段で前記試験指令が受信された場合には前記試験スイッチをONして前記試験用リレーを動作させ前記試験用情報を前記試験用コイルに送信制御するとともに、前記良否判定の結果を前記判定結果出力手段から外部へ出力させるように制御する構成とするとよい
【0011】
また、上記のATS地上装置において、好ましくは、前記試験制御部は、タイマーを備え、該タイマーの計時により予め設定した所定の試験用時刻となった場合には前記試験スイッチをONして前記試験用リレーを動作させ前記試験用情報を前記試験用コイルに送信制御するとともに、前記良否判定の結果を前記判定結果出力手段から外部へ出力させるように制御する構成とするとよい
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るATS地上装置の実施形態について、図面を参照しながら説明を行う。
【0014】
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態であるATS地上装置の構成を示す図である。図1に示すように、第1実施形態のATS地上装置101は、検知用地上子1と、制御用地上子2と、ATS受信器3Aを備えて構成されている。検知用地上子1と制御用地上子2は、鉄道の軌道近傍に配置されている。
【0015】
検知用地上子1は、主コイル11と、試験用コイル12を有している。試験用コイル12は、主コイル11の近傍に配置されている。
【0016】
また、制御用地上子2は、制御コイル21を有している。また、ATS受信器3Aは、信号処理部31と、制御部32と、試験制御部33Aと、増幅器34と、発振器35と、表示部36と、出力端子37と、電源38と、試験スイッチ39と、電圧検知部40と、試験用リレー41を有している。
【0017】
制御部32は、図示しないCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)を備えており、情報の処理、演算、制御を行う。制御部32は、図示しないROM(読出し専用メモリ:Read Only Memory)を備えており、CPUの実行する処理、演算、制御等のプログラム等が格納されている。また、制御部32は、図示しないRAM(Random Access Memory:随時書込み読出しメモリ)を備えており、演算等の途中結果は、RAMに一時的に記憶される。試験制御部33Aも、図示しないCPUとROMとRAMを備えており、情報の処理、演算、制御を行う。
【0018】
次に、上記したATS地上装置101の作用について詳細に説明する。
【0019】
まず、通常時の作用について説明する。通常時には、検知用地上子1の主コイル11は、ATS車上装置(図示せず)の車上子(図示せず)から送信される所定の常時発振周波数を受信する。ATS受信器3Aの信号処理部31は、ATS車上装置からの常時発振周波数信号を受信して制御部32に出力する。制御部32は、ハードウェア又はソフトウェアにより構成されるタイマー(図示せず)を有しており、あらかじめ設定されたタイマー時間が経過した後、制御用地上子2の制御コイル21に制御出力を送る。この場合、制御部32のタイマーの設定時間の経過前に列車の車上子が制御用地上子2の上に来て制御コイル21からの制御出力を受信すると、ATS車上装置は、列車速度が所定の制限値を超過しているとして、列車にブレーキをかけるように制御する。ここに、ATS車上装置の車上子から送信される所定の常時発振周波数は、列車側情報に相当している。また、タイマー時間は、ATS制御用時間に相当している。また、制御用地上子2の制御コイル21に送られる制御出力は、ATS制御情報に相当している。
【0020】
次に、このATS地上装置101の性能試験を行う場合には、試験担当者が試験スイッチ39を操作し、試験制御部33Aを作動させる。発振器35は、ATS車上装置(図示せず)の車上子(図示せず)から送信される所定の常時発振周波数と等価な周波数信号を発生している。試験スイッチ39が操作されると、試験制御部33Aは、発振器35で発振された常時発振周波数の信号(試験用信号)を増幅器34で適宜に増幅させ、試験用リレー41を動作させて試験用コイル12に送出させる。
【0021】
試験用コイル12に送られた試験用信号は、主コイル11により受信される。ATS受信器3Aの信号処理部31は、性能試験時には、試験用信号を受信して試験制御部33Aに出力する。試験制御部33Aは、受信された試験用信号の検知レベルを測定する。このようにして、試験用信号レベルの測定を低いレベルから高いレベルまで何回か行い、その結果によりATS地上装置101の良否判定を行う。この良否判定結果は、表示部36に表示される。
【0022】
図2は、図1に示すATS地上装置のATS受信器における表示部の構成を示す図である。図2に示すように、表示部36は、試験中表示灯36aを有している。試験中表示灯36aは、例えば、LED(発光ダイオード)等により構成される。試験スイッチ39が操作され、試験制御部33AがON状態となると、試験制御部33Aの制御により試験中表示灯36aが点灯される。また、表示部36は、レベル測定値表示器36dを有している。レベル測定値表示器36dは、例えば、液晶表示器等により構成される。測定された試験用信号レベルは、試験制御部33Aからレベル測定値表示器36dに出力され数値表示される。また、表示部36は、判定良好表示灯36bと判定不良表示灯36cを有している。判定良好表示灯36bと判定不良表示灯36cは、例えば、LED(発光ダイオード)等により構成される。試験制御部33Aによる良否判定の結果、性能が良好であると判定された場合には、試験制御部33Aの制御により判定良好表示灯36bが点灯され、性能が不良であると判定された場合には、試験制御部33Aの制御により判定不良表示灯36cが点灯される。
【0023】
なお、上記のATS地上装置101では、性能試験は、試験スイッチ39の操作によって行うようにしたが、この方法とは異なり、電源38の投入を電圧検知部40が検知し、電源投入をトリガーとして性能試験を開始するように構成してもよい。下記の実施形態においても同様である。
【0024】
また、試験制御部33Aからの良否判定結果、受信された試験用信号の検知レベル等は、出力端子37から外部へ出力されるように構成してもよい。
【0025】
上記した第1実施形態は、以下のような利点を有している。
【0026】
(a)重量の大きな試験用コイルを現地へ運搬しなくてもよいため、試験作業が大幅に簡素化される。
【0027】
(b)試験スイッチ39と表示部36をレールの外部に配置すれば、列車走行時でも試験が可能となり、列車間合作業から解放され、試験作業が容易となる。
【0028】
(2)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態であるATS地上装置の構成を示す図である。
【0029】
第2実施形態のATS地上装置102が、第1実施形態のATS地上装置101と異なる点は、異なる試験制御部33Bを有し、表示部36を有さず、試験指令受信部42と判定結果出力部43を有する点である。他の構成要素の構成と作用については、第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0030】
試験指令受信部42は、鉄道の信号保守機関等から有線又は無線により送信されてくる試験指令を受信する受信装置である。この試験指令は、試験制御部33Bに出力される。試験制御部33Bは、外部から試験指令が入力された場合には、試験スイッチ39をONさせて試験モードとし、発振器35で発振された常時発振周波数の信号(試験用信号)を増幅器34で適宜に増幅させ、試験用リレー41を動作させて試験用コイル12に送出させる。
【0031】
試験用コイル12に送られた試験用信号は、主コイル11により受信される。ATS受信器3Bの信号処理部31は、性能試験時には、試験用信号を受信して試験制御部33Bに出力する。試験制御部33Bは、受信された試験用信号の検知レベルを測定する。このようにして、試験用信号レベルの測定を低いレベルから高いレベルまで何回か行い、その結果によりATS地上装置102の良否判定を行う。判定結果出力部43は、送信装置であり、良否判定結果は、試験制御部33Bの制御により、判定結果出力部43から外部へ出力される。
【0032】
上記した第2実施形態は、以下のような利点を有している。
【0033】
(c)重量の大きな試験用コイルを現地へ運搬しなくてもよいため、試験作業が大幅に簡素化される。
【0034】
(d)遠隔操作により、ATS地上装置の性能試験を行うことができ、試験作業が容易となる。
【0035】
(3)第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図4は、本発明の第3実施形態であるATS地上装置の構成を示す図である。
【0036】
第3実施形態のATS地上装置103が、第1実施形態のATS地上装置101と異なる点は、異なる試験制御部33Cを有し、表示部36を有さず、判定結果出力部43を有する点である。他の構成要素の構成と作用については、第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0037】
試験制御部33Cは、ハードウェア又はソフトウェアにより構成されるタイマー(図示せず)を有しており、あらかじめ設定された試験用タイマー時間の計時により、所定の試験用時刻となった場合には、試験スイッチ39をONさせて試験モードとし、発振器35で発振された常時発振周波数の信号(試験用信号)を増幅器34で適宜に増幅させ、試験用リレー41を動作させて試験用コイル12に送出させる。
【0038】
試験用コイル12に送られた試験用信号は、主コイル11により受信される。ATS受信器3Cの信号処理部31は、性能試験時には、試験用信号を受信して試験制御部33Cに出力する。試験制御部33Cは、受信された試験用信号の検知レベルを測定する。このようにして、試験用信号レベルの測定を低いレベルから高いレベルまで何回か行い、その結果によりATS地上装置103の良否判定を行う。判定結果出力部43は、送信装置であり、良否判定結果は、試験制御部33Cの制御により、判定結果出力部43から外部へ出力される。
【0039】
上記した第3実施形態は、以下のような利点を有している。
【0040】
(e)重量の大きな試験用コイルを現地へ運搬しなくてもよいため、試験作業が大幅に簡素化される。
【0041】
(f)タイマーにより、ATS地上装置の性能試験を自動的かつ定期的に行うことができ、試験作業が容易となる。
【0042】
上記各実施形態において、試験用コイル12に送られる試験用信号は試験用情報に相当している。また、表示部36及び出力端子37は、判定結果出力手段に相当している。また、試験指令受信部42は、試験指令受信手段に相当している。また、判定結果出力部43は、判定結果出力手段に相当している。
【0043】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0045】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、主コイルの性能を試験するための試験用コイルを主コイルの近傍に予め配置し、試験用コイルに試験用情報を送るように構成したので、試験用コイルを現地へ運搬しなくてもよく、列車走行時でも試験が可能となり、試験作業は簡素化される、等の利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるATS地上装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示すATS地上装置のATS受信器における表示部の構成を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態であるATS地上装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態であるATS地上装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 検知用地上子
2 制御用地上子
3A〜3C ATS受信器
11 主コイル
12 試験用コイル
13a、13b 試験用情報入力端子
21 制御コイル
31 信号処理部
32 制御部
33A〜33C 試験制御部
34 増幅器
35 発振器
36 表示部
36a 試験中表示灯
36b 判定良好表示灯
36c 判定不良表示灯
36d レベル測定値表示器
37 出力端子
38 電源
39 試験スイッチ
40 電圧検知部
41 試験用リレー
42 試験指令受信部
43 判定結果出力部
101〜103 ATS地上装置

Claims (5)

  1. 鉄道の軌道近傍に配置され、鉄道の列車のATS車上装置から送信される列車側情報を受信する主コイルを有する検知用地上子と、鉄道の軌道近傍に配置され、前記鉄道の列車のATS車上装置へATS制御情報を送信する制御用地上子と、前記検知用地上子から送られた前記列車側情報を受信し、前記検知用地上子が前記列車側情報を受信した時点からATS制御用時間が経過した場合には前記制御用地上子に前記ATS制御情報を送信させるように制御するATS受信器を備えたATS地上装置において、
    前記検知用地上子の前記主コイルの近傍に、当該主コイルの性能を試験するための試験用コイルを配置する一方、
    前記ATS受信器に、前記試験用コイルに送信する試験用情報を発生する発振器と、該発振器から前記試験用情報を前記試験用コイルに送信する送信経路を開閉する試験用リレーと、試験時にONする試験スイッチと、該試験スイッチのON動作により前記試験用リレーを動作させて前記送信経路を介して前記発振器を前記試験用コイルに接続して試験用情報を試験用コイルへ送信させる試験制御部と、を備える構成としたことを特徴とするATS地上装置。
  2. 請求項1記載のATS地上装置において、
    前記試験制御部は、前記試験用情報による前記主コイルの出力結果が受信された場合に、その値に基づき良否判定を行うことを特徴とするATS地上装置。
  3. 請求項2記載のATS地上装置において、
    前記ATS受信器は、前記良否判定の結果を表示又は外部出力する判定結果出力手段を有することを特徴とするATS地上装置。
  4. 請求項3記載のATS地上装置において、
    前記ATS受信器は、外部から入力される試験指令を受信する試験指令受信手段を備え、前記試験制御部は、前記試験指令受信手段で前記試験指令が受信された場合には前記試験スイッチをONして前記試験用リレーを動作させ前記試験用情報を前記試験用コイルに送信制御するとともに、前記良否判定の結果を前記判定結果出力手段から外部へ出力させるように制御することを特徴とするATS地上装置。
  5. 請求項3記載のATS地上装置において、
    前記試験制御部は、タイマーを備え、該タイマーの計時により予め設定した所定の試験用時刻となった場合には前記試験スイッチをONして前記試験用リレーを動作させ前記試験用情報を前記試験用コイルに送信制御するとともに、前記良否判定の結果を前記判定結果出力手段から外部へ出力させるように制御することを特徴とするATS地上装置。
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