JP4525102B2 - 流体動圧軸受の作動流体注入装置、方法および流体動圧軸受の製造方法 - Google Patents
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Description
これらの特許文献1〜3に示される作動流体注入方法は、いずれも真空注入法であって、特許文献1の方法は、ハウジングとシャフトとの間の隙間に気密状態に接続する注入チューブを利用して、ハウジングとシャフトとの間の隙間および注入チューブ内を減圧して空気を排気した後に、注入チューブの開放端を作動流体の液面に浸漬し、その後周囲の減圧状態を解除することにより、減圧状態となった注入チューブおよびハウジングとシャフトとの隙間内に作動流体を吸い上げて注入する方法である。
また、特許文献3に示される作動流体注入方法は、ハウジングとシャフトとの隙間の開放端に適正量と同等の容積を有する環状の凹部を形成した軸受ユニットを減圧状態に配して軸受ユニット内部の空気を排気し、減圧状態において前記凹部に作動流体を滴下して貯留させた後、減圧状態を解除することにより軸受ユニット内外の圧力差を利用して貯留されていた作動流体を軸受ユニットの隙間内に注入する方法である。
本発明は、開口部を有するハウジングと、該ハウジング内にその開口部から一端を露出させて収容されたシャフトとからなる軸受ユニットのハウジングとシャフトとの隙間に作動流体を注入する装置であって、前記軸受ユニットを位置決め固定するアダプタと、前記開口部におけるリング状の前記隙間の開放部より大きな下部開口と、該下部開口から上方に向かって漸次広がるテーパ内面とを有し、前記アダプタにより前記開放部を上向きにして位置決め固定された前記軸受ユニットのハウジングの上面に前記下部開口が接触状態に載置され、前記開放部の半径方向外方を覆うカバー部材と、該カバー部材を載置した軸受ユニットを密封可能に収容するチャンバと、該チャンバの内部空間を外部空間に対して開閉するバルブと、前記チャンバの内部空間の空気を排出して減圧状態にする排気装置と、作動流体を貯留するリザーバと、減圧状態にされたチャンバ内において、前記リザーバに貯留された作動流体を、前記貯留部に滴下するディスペンサとを備え、前記カバー部材が、前記アダプタにより位置決め固定され、前記テーパ面により、前記開放部の上方に、該開放部に連通して作動流体を貯留可能な貯留部を形成する流体動圧軸受の作動流体注入装置を提供する。
シャフトの上端面には、通常他の部材を固定するためのネジ穴等が設けられるので、シャフトの外周面とカバー部材との間に貯留部を構成することにより、ネジ穴内に作動流体が入り込む不都合を回避することができる。
このようにすることで、テーパ内面に沿う作動流体の流れをよりスムーズにすることができる。
これにより、リザーバ内に貯留されている作動流体が、混入していた空気を予め除去されていることになり、軸受ユニット内に注入された後に、気泡となって現れることを防止することができる。
コントローラの作動により、減圧状態から大気圧状態まで、比較的ゆっくりと圧力を上昇させるようにバルブを制御することにより、作動流体の急激な流れにより、周囲の空気を巻き込んで隙間内に注入されてしまうことを防止できる。
これにより、注入時における作動流体の急激な流れを防止して、空気の巻き込みによる作動流体への混入を防止することができる。
このようにすることで、軸受ユニット内の隙間の総容積内に作動流体が充填されても、導入具の内面とシャフトとの間に作動流体がいくらか残ることになる。すなわち、作動流体の注入途中で隙間の開放部において作動流体が切れて空気が隙間内に混入してしまう不都合の発生を防止することができる。
このようにすることで、作動流体の急激な注入による空気の巻き込みが防止され、空気の混入していない作動流体を充填した流体動圧軸受を製造することができる。
このようにすることで、作動流体の注入途中における、隙間内への空気の混入を防止することができ、より確実に、空気の混入していない作動流体を充填した流体動圧軸受を製造することができる。
本実施形態のオイル注入装置1を説明する前に、該オイル注入装置1によりオイル2を注入する流体動圧軸受3について、図3を参照して説明する。
前記リザーバ18は、真空ポンプ15によって、その内部空間を減圧状態に維持されており、オイル2内に溶け込んでいる空気を排出(脱気)した状態でオイル2を貯留している。符号24は、リザーバ18内が十分な減圧状態となったときに閉止されるバルブ、符号25は、リザーバ18内のオイル2をディスペンサ17に供給する際にリザーバ18内を大気圧にするためのバルブ、符号26は流量調節弁、符号27はフィルタである。
載置台28には、図4に示されるように、軸受ユニット6がチャンバ14内部に挿入された状態で、チャンバ14の下面に押し当てられるフランジ28aが設けられている。フランジ28aには、該フランジ28aがチャンバ14の下面に押しつけられたときに圧縮されて、チャンバ14内を密封状態にするOリングのようなシール部材30が備えられている。また、昇降機構29は、例えば、載置台28を先端に取り付けたロッド31と、該ロッド31を上下方向に移動させるシリンダ32と、ロッド31の移動を支持するガイドスリーブ33とを備えている。
カバー部材35には、図5および図6に示されるように、中央にリング状の開放部11より大きな貫通孔35aが設けられている。また、カバー部材35は、前記貫通孔35aから上方に向かって漸次径寸法が大きくなるテーパ内面35bを備えている。テーパ内面35bのテーパ角度は、例えば、中心軸線に対して60°である。テーパ角度を60°とすることにより、テーパ内面35bに沿ってオイル2をスムーズに隙間の開放部11に向けて流動させることができる。なお、テーパ角度は60°に限定されるものではなく、45〜75°、好ましくは、55°〜65°がよい。
図4中、符号38は、カバー部材35とアダプタ34とにより囲まれた空間を外部に連通させる連通溝である。
本実施形態に係るオイル注入装置1により軸受ユニット6のシャフト4とハウジング5との間の隙間Cにオイル2を注入するには、まず、アダプタ34に軸受ユニット6を組み付け、その上からカバー部材35を組み付けた状態で、載置台28のボス部28bにアダプタ34の嵌合穴34bを嵌合させることにより載置台28上に載置する。アダプタ34をボス部28bに嵌合させると、ボールプランジャ36の作動により、アダプタ34が載置台28から抜けないように固定される。
この状態で、バルブ16を閉じてチャンバ14内部を密封し、真空ポンプ15を作動させてチャンバ14内部を減圧していく。この過程で、軸受ユニット6の隙間C、アダプタ34およびカバー部材35の内部空間等、チャンバ14内に連通している全ての空間から空気が排気される。そして、チャンバ14内の圧力が、所定の減圧状態、例えば、約70mTorr(9.3Pa)になったときに、ディスペンサ17を作動させて、所定量のオイル2をカバー部材35の上から滴下する。これにより、図5に示されるように、オイル2が貯留部39に貯留され、オイル2によってリング状の開放部11が閉塞されることになる。このとき、ハウジング5内の隙間Cとリザーバ14内の圧力はバランスしているので、オイル2は表面張力によって隙間Cに進入せずに、貯留部39に貯留状態に維持される。
チャンバ14内の減圧状態が解除されていくと、チャンバ14の内圧は徐々に上昇していくが、軸受ユニット6の開放部11はオイル2によって閉塞状態とされているために隙間C内は減圧状態に維持されている。その結果、ハウジング2内外の圧力差によって、貯留部39に貯留されていたオイル2が開放部11から隙間C内に吸引されていくことになる。
さらに、貯留部39に貯留するオイル2は、ディスペンサ17により貯留部39に供給される前に、リザーバ18内において減圧状態とされることにより、十分に脱気されているので、軸受として使用される際に、動圧発生時等に負圧状態となったときに、気泡を発生させ難いという利点がある。
また、オイル2を注入する軸受ユニット6として、軸方向の途中位置にスラスト軸受板8を有する形式のものを例に挙げて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、一端側に隙間Cの開放部11を有する他の任意の形式の密封型の流体動圧軸受に適用することができる。
1 オイル注入装置(作動流体注入装置)
2 オイル(作動流体)
4 シャフト
5 ハウジング
6 軸受ユニット
10a 開口部
11 開放部
14 チャンバ
15 真空ポンプ(排気装置)
16 バルブ(バルブ装置)
17 ディスペンサ
18 リザーバ
20 コントローラ
35 カバー部材
35a貫通孔(下部開口)
35b テーパ内面
39 貯留部
Claims (11)
- 開口部を有するハウジングと、該ハウジング内にその開口部から一端を露出させて収容されたシャフトとからなる軸受ユニットのハウジングとシャフトとの隙間に作動流体を注入する装置であって、
前記軸受ユニットを位置決め固定するアダプタと、
前記開口部に形成された前記隙間のリング状の開放部より大きな下部開口と、該下部開口から上方に向かって漸次広がるテーパ内面とを有し、前記アダプタにより前記開放部を上向きにして位置決め固定された前記軸受ユニットのハウジングの上面に前記下部開口が接触状態に載置され、前記開放部の半径方向外方を覆うカバー部材と、
該カバー部材を載置した軸受ユニットを密封可能に収容するチャンバと、
該チャンバの内部空間を外部空間に対して開閉するバルブ装置と、
前記チャンバの内部空間の空気を排出して減圧状態にする排気装置と、
減圧状態にされたチャンバ内において、前記貯留部に作動流体を滴下するディスペンサとを備え、
前記カバー部材が、前記アダプタにより位置決め固定され、前記テーパ面により、前記開放部の上方に、該開放部に連通して作動流体を貯留可能な貯留部を形成する流体動圧軸受の作動流体注入装置。 - 前記シャフトが、その一端を前記ハウジングの開口部から外方に突出状態に設けられ、
前記貯留部が、突出したシャフトの外周面と前記カバー部材との間にリング状に形成されている請求項1に記載の流体動圧軸受の作動流体注入装置。 - 前記テーパ内面のテーパ角度が、中心軸線に対して45〜75°である請求項1または請求項2に記載の流体動圧軸受の作動流体注入装置。
- 前記ディスペンサに供給する作動流体を貯留するリザーバを備え、
該リザーバ内が減圧状態に配されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体動圧軸受の作動流体注入装置。 - 前記チャンバ内の圧力を減圧状態から大気圧状態まで、10〜50秒の時間をかけて徐々に上昇させるよう吸気流量を制御するコントローラを備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の流体動圧軸受の作動流体注入装置。
- 開口部を有するハウジングと、該ハウジング内にその開口部から一端を露出させて収容されたシャフトとからなる軸受ユニットのハウジングとシャフトとの隙間に作動流体を注入する方法であって、
前記開口部に形成された前記隙間のリング状の開放部を上向きにして前記軸受ユニットをアダプタにより位置決め固定するステップと、
前記アダプタにより位置決め固定された前記軸受ユニットの前記開放部の半径方向外方を覆い、前記開放部の上方に、該開放部に連通し上方に向かって漸次広がるテーパ内面により作動流体を貯留可能な貯留部を形成するカバー部材をハウジング上面に接触状態に載置して前記アダプタにより位置決め固定するステップと、
前記軸受ユニットを減圧して前記隙間の空気を排気するステップと、
前記隙間の空気を排気した後に、減圧雰囲気下において、前記貯留部に作動流体を滴下して貯留するステップと、
作動流体が貯留された状態で、前記軸受ユニットの減圧状態を解除するステップとを含む流体動圧軸受の作動流体注入方法。 - 前記減圧状態を解除するステップが、10〜50秒の時間をかけて徐々に行われる請求項6に記載の流体動圧軸受の作動流体注入方法。
- 前記作動流体を滴下して貯留するステップが、前記隙間の総容積より多い作動流体を貯留する請求項6または請求項7に記載の流体動圧軸受の作動流体注入方法。
- ハウジング内に隙間をあけてシャフトを挿入することにより、ハウジングの開口部からシャフトの一端を露出させた軸受ユニットを構成し、
前記ハウジングの開口部と、該開口部から露出する前記シャフトとの間に形成された前記隙間のリング状の開放部を上向きにして前記軸受ユニットをアダプタにより位置決め固定し、
前記アダプタにより位置決め固定された前記軸受ユニットの前記開放部の半径方向外方を覆い、前記開放部の上方に該開放部に連通し上方に向かって漸次広がるテーパ内面により作動流体を貯留可能な貯留部を構成するカバー部材をハウジングの上面に接触状態に載置して前記アダプタにより位置決め固定し、
前記軸受ユニットを減圧して前記隙間の空気を排気し、
空気が排気された後に、減圧雰囲気下において、前記貯留部に作動流体を滴下して貯留し、
作動流体が貯留された状態で、前記軸受ユニットの減圧状態を解除する流体動圧軸受の製造方法。 - 減圧状態の解除が、10〜50秒の時間をかけて徐々に行われる請求項9に記載の流体動圧軸受の製造方法。
- 前記導入具とシャフトとの間に、前記隙間の総容積より多い作動流体を貯留する請求項9または請求項10に記載の流体動圧軸受の製造方法。
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