JP4524936B2 - 防曇性能の付与方法および光学物品 - Google Patents
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- C03C17/00—Surface treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by coating
- C03C17/28—Surface treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by coating with organic material
- C03C17/30—Surface treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by coating with organic material with silicon-containing compounds
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防曇性能を有するメガネ・カメラ等のレンズ、または窓ガラス、車のフロントガラス、ヘルメットのシールド、水中メガネ等の光学物品、または浴室内で使用する鏡等の酸化物表面に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
物品表面が曇る現象は、表面に微小な水滴が付着、結露し、この微少水滴が光を乱反射するために生じる。この曇りは眼鏡レンズや光学レンズなどの光学部品ではその性能の著しい低下を引き起こし、自動車をはじめとする車両用窓ガラスとしては、安全性の点で大きな問題である。
【0003】
物品に防曇性能を付与するには、1)基材に吸水性を持たせる、2)基材表面を親水性にする、3)基材表面を疎水性にする、4)光学物品の表面温度を高くし、空気中の水分が表面で凝結しない様にする。の4点の方法が過去から提案され、色々な試みがなされている。
1)の基材に吸水性を持たせる方法について、コーティング組成物または、合成樹脂基材自体に吸水性材料を混合する、または、親水性、吸水性の単量体を共重合して吸水性を付与する方法がある。これについては、特開平10−311902,特開平05−156202などに開示されている。また、吸水性の悪いガラスなどの無機質に吸水性を持たせる方法としては、無機質を多孔性にして吸水性を持たせる方法が特開平10−114543等で試みられている。
【0004】
2)の基材表面を親水性にする方法については、もっとも簡便な手段として、界面活性剤を表面に塗布することで基材表面を親水性とし、曇りを防ぐ方法がある。また、連続的な効果を期待するために、前述同様、合成樹脂基材自体に界面活性剤を混合し、または親水性、吸水性の単量体を共重合して合成樹脂基材を形成して防曇性能を付与する方法がある。これについては、特開平10−114035、特開平10−130511、特開平10−158453、特開平10−182912、特開平10−202798などに開示されている。また、光学樹脂物品の表面に防曇性能を有するコーティングを施す方法も良く知られ、特開平8−17646,特開平8−27291、特開平9−136374,特開平9−151368,特開平9−155282などに開示されている。
【0005】
光触媒性金属酸化物被膜を形成し、超親水性を発現させる方法については特開2000−309068、特開2000−86933、特開平9−77535、特開平10−68091、特開平10−85100、特開平10−167727、特開平10−297940等に開示されている。
【0006】
表面改質の方法としてのグラフト重合は、基材表面に親水性基を単分子的に導入する方法で、反射防止特性を有する酸化物膜上に非常に有効な手段である。特開平5−202216、特開平5−295139、特開平8−176328、特開平9−301742、特開平10−90503等に開示されている。その他表面改質方法としては特開平10−114543、特開平10−167768があげられる。
【0007】
さらに、無機物質の細孔・凹凸と親水性物質を組み合わせた特許及び表面の凹凸を利用した特許として、特開平9−202651、特開平9−295835、特開平11−77876が挙げられる。
【0008】
3)は基材表面の接触角を高くして、水滴をその自重によって落脱させる方法である。これは、特開2000−103007、特開平10−26703、特開平10−45429、特開平11−320743に開示されている。
【0009】
4)光学物品の表面温度を高くし、空気中の水分が表面で凝結しない様にする。方法については、特開平7−241932、特開2000−86299に開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これまでの方法はさまざまな欠点を有している。特に、反射防止特性を有する光学物品の場合、その反射防止特性を変化させずに最表面に防曇特性を持たせることは困難である。
【0011】
1)の基材に吸水性を持たせる方法については、防曇性能としては十分な性能が得られるが、吸水した場合、非常に柔らかくなってしまい、傷の付きやすいものであった。また、これを改善するために、架橋点を増加させると、吸水率が低下してしまうという。加えて、飽和吸水量以上になると、曇ってしまうという欠点がある。さらに、空気中の汚れ、例えばタバコの煙なども吸着し易く、光学物品が着色してしまうなどの欠点もある。また、このような吸水性の膜の場合、ある程度の膜厚を持たせなければならず、反射防止特性を持つ基材の上には処方不可能である。
【0012】
無機物質を多孔性にして吸水性を持たせる方法は、その膜厚に制限があるため、吸水量も少なく、多孔質にすることで表面はもろくなり、耐擦傷性に問題がある。
【0013】
2)の基材表面を親水性にする方法については、水の付着等により殆どの種類の界面活性剤は流れ落ちてしまい、連続的な効果は期待できず、都度塗布しなければならないなどの手間がかかる。しかし、反射防止特性を有する膜上の防曇性付与には、反射防止特性の阻害をしない点で非常に有効な手段である。
【0014】
光触媒性金属酸化物被膜を形成し、超親水性を発現させる方法については、その機構上、紫外線に暴露される状況になければ、超親水性の発現は困難であり、また、曇りの様な極微小な水滴の場合、光触媒性物質の結晶構造に対して、充分な大きさを持たないため、水滴の広がりは充分ではなく、曇りが認識される。また、特に反射防止特性を有する光学材料については、最表面に一般的に屈折率の高い光触媒線物質が存在することにより、反射がかえって大きくなってしまう。
【0015】
グラフト重合について様々な方法が提案されているが、これは最表面に親水性、疎水性の薄膜を成膜するものである。従来技術に従うと反応が煩雑であり、基材表面に密に防曇成分が反応せずに充分な防曇性が得られない。
【0016】
3)の基材表面基材表面の接触角を高くして、水滴をその自重によって落脱させる方法では、ある程度の大きさの水滴になってはじめて、水滴は落下する。よって、曇りの様な極微小な水滴の場合、自重が不十分なため、自然に落下しない。
【0017】
4)の方法では、ヒーター部、エネルギー源は不可欠であり、装置が煩雑になりすぎてしまう。
【0018】
そこで、本発明は以上の様な問題点を解決し、光学物品の光学特性を低下させることなく、酸化物表面上に持続性に優れた防曇性能を有する光学物品を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の防曇性能を有する光学物品は、酸化物を主として表面に含む光学物品において、該物品の表面にオルガノシランまたは/及びその加水分解物と、界面活性剤を、順次または同時に処理する。これにより、基材側の鎖状炭化水素鎖と、界面活性剤の鎖状炭化水素鎖に分子間相互作用が働き、また、界面活性剤がアニオン系である場合、基材側の窒素と分子間に静電気的相互作用が働く。これらの相互作用により界面活性剤は基材に強固に結びつくため、酸化膜表面に持続性のよい防曇性能が付与可能である。
【0020】
酸化ケイ素を主成分とするガラスの光学物品の場合、耐擦傷性に大きな問題はないが、合成樹脂からなる光学物品は傷がつき易く、耐擦傷性を向上させなければならない。合成樹脂の耐擦傷性を向上させる為には、ハードコート処理がよく行われる。特に、コロイダルシリカを含むハードコートが有効で広く用いられている。眼鏡レンズなどの場合、その光学特性を向上させるために無機物質から構成される反射防止膜が表面に形成される。反射防止膜の最上層には、低屈折率層が形成されるが、耐久性、取扱い易さの点で二酸化ケイ素が広く用いられている。 この様に、耐擦傷性の向上や反射防止膜には、二酸化ケイ素が多く用いられており、無機ガラスに限らず合成樹脂製の光学物品についても二酸化ケイ素が表面に存在している場合が多い。反射防止膜として有機物からなる膜を利用する場合でも最上層にコロイダルシリカが含まれれば、表面に二酸化ケイ素が存在することになる。
【0021】
本発明は、二酸化ケイ素及び金属酸化物を主成分とするガラスの光学物品、コロイダルシリカ及び金属酸化物を含むハードコートを表面に塗布した合成樹脂製光学物品、最上層に二酸化ケイ素及び金属酸化物を用いた反射防止膜を有する光学物品、いずれの場合でも表面に二酸化ケイ素及び金属酸化物が存在する物品に対して適用できる。
【0022】
本発明で用いるオルガノシランまたは/及びその加水分解物は、少なくとも1個以上の窒素を含む鎖状飽和炭化水素を含むものが好ましい。鎖状飽和炭化水素の炭素数は3から20、好ましくは12から18とする。窒素原子の一個は炭化水素鎖末端に位置し、それ以外の窒素原子の位置は限定されない。最表層に存在する二酸化ケイ素及び金属酸化物との反応は、クロルシランやアルコキシシラン、シラザンの様な、基材側のシラノールと反応する基を持つシランカップリング剤を用いることにより表面の二酸化ケイ素及び金属酸化物の持つシラノールとの反応が実現できる。これは一般的に用いられている方法である。
【0023】
このようなオルガノシランとして、18−アミノオクタデシルトリクロロシラン、16−アミノヘキサデシルトリクロロシラン、12−アミノドデシルトリクロロシラン、18−アミノオクタデシルメチルジクロロシラン、16−アミノヘキサデシルメチルジクロロシラン、12−アミノドデシルメチルジクロロシラン、18−アミノオクタデシルトリメトキシシラン、16−アミノヘキサデシルトリメトキシシラン、12−アミノドデシルトリメトキシシラン、18−アミノオクタデシルメチルジメトキシシラン、16−アミノヘキサデシルメチルジメトキシシラン、12−アミノドデシルメチルジメトキシシラン、18−アミノオクタデシルトリメトキシシラン、16−アミノヘキサデシルトリメトキシシラン、12−アミノドデシルトリメトキシシラン、12−アミノドデシルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、18−アミノオクタデシルジメチルクロロシラン、16−アミノヘキサデシルジメチルクロロシラン、12−アミノドデシルジメチルクロロシラン、18−アミノオクタデシルジメチルメトキシシラン、16−アミノヘキサデシルジメチルメトキシシラン、12−アミノドデシルジメチルメトキシシラン、6−アジドスルフォニルヘキシルトリエトキシシラン、6−(2−アミノエチルアミノヘキシル)トリメトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)ヘキシル]トリメトキシシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、11−シアノウンデシルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、N−(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)サッカニイミドなどがあげられるがこの限りではない。
【0024】
オルガノシランと酸化物の反応性を高める為に、プラズマ処理、アルカリ処理を、予め表面に存在する二酸化ケイ素及び金属酸化物に施すと効果があり、防曇効果も向上する。
【0025】
本発明で用いる界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両面界面活性剤などの界面活性剤類、およびその反応性誘導体などのうち、疎水性部分として鎖状飽和炭化水素を含むことが望ましい。オルガノシラン側の窒素を含む基との相互作用から、好ましくはアニオン性のものが良く、更に好ましくはアニオン性基が硫酸、または硫酸塩であるアニオン性界面活性剤が用いられる。炭素数は4から20、好ましくは12から18とし、更に好ましくは鎖状炭化水素を含むオルガノシランの炭素数より1乃至3少ないものが用いられる。これにより基材側の鎖状炭化水素鎖と、界面活性剤の鎖状炭化水素鎖が分子間相互作用により、また、基材側の末端窒素と界面活性剤の硫酸基が静電気的相互作用により強固に結びつく。用いられる防曇性物質は特定の化合物一種または二種類以上を混合して使用しても良い。
【0026】
具体的には、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフエニルエーテルジスルホン酸ナトリム等のアルキルジフエニルエーテルジスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルアリル)硫酸エステル塩;特殊反応型アニオン界面活性剤;特殊カルボン酸型界面活性剤;β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;特殊ポリカル ボン酸型高分子界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等がある.
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル:ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド等がある。
【0027】
カチオン性界面活性剤および両面界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライト、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルペンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルポキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイドがある。
【0028】
本発明に用いられる酸化物は二酸化ケイ素に限らず、オルガノシランと反応する金属酸化物膜であれば何でも良い。しかし、オルガノシランの反応性の点から、二酸化ケイ素が好ましい。本発明で用いられる酸化物膜は蒸着、スパッタ、CVD、縮合可能な有機金属化合物の脱水縮合など、いかなる方法で成膜しても良い。
【0029】
形成された処理層は、反射防止層の反射率特性に悪影響を与えない程度の薄膜であることが重要で、300Å以下が望ましいが、薄膜の屈折率を考慮して膜厚を決め、反射防止として薄膜を組み込むことも可能である。
【0030】
以上の操作により酸化物が表面に存在する光学物品の最表面には、界面活性剤の親水性部分が最表面に存在することになる。防曇性能を得る為には、水に対する静止接触角が10゜以下であることが望ましいが、十分な性能を得るためには5゜以下が必要となる。これは表面の活性点を増やし、界面活性剤の保持量を増加させることで達成可能である。また、用いる界面活性剤の構造によって親水性基の充填率を上げるなどの方法も可能である。
【0031】
本発明によって得られる防曇性能を有する光学物品は、持続性が良く、耐擦傷性に優れ、反射防止などの光学特性にも優れており、眼鏡レンズ、カメラレンズ、浴室内の鏡、水中眼鏡、窓ガラス、電子レンジの窓、車の窓ガラス、望遠鏡のレンズ、スキーのゴーグル、湿気の多い所で使用する光学機器のレンズ、ミラーなどに適用することが可能である。
【0032】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
【発明の実施の形態】
<酸化物膜の準備>
撹拌装置を備えた、反応容器中に、イソプロピルアルコール118.8g,蒸留水300.0g、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン139.4g、0.05規定塩酸水溶液38.2gを投入し、60分攪拌した。次に酸化チタン・酸化ジルコニウム・酸化珪素の複合ゾル(触媒化成工業(株)製“オプトレイク1120Z(U25A8)”)403.3gシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製“L−7604”)0.3g 添加し、十分攪拌した後コーティング液とした。
【0034】
予め水酸化ナトリウム溶液(0.1N) に浸漬し、よく水洗、乾燥したプラスチックレンズ(セイコーエプソン(株)製、セイコースーパーソブリン用レンズ生地、屈折率1.67)に上述したコーティング液をディッピング法で、膜厚が2.5μm になる様塗布し、135℃で2.5時間加熱硬化した。このようにして得られたレンズの表面に、プラズマ処理(アルゴンプラズマ400W×60秒)を行った後、無機物質の二酸化ケイ素、酸化ジルコニウムからなる反射防止膜を真空蒸着法で多層被覆し、ハードコート、反射防止付プラスチックレンズ、基材Aを作成した。この基材Aの水に対する静的接触角は5°であった。
【0035】
〔実施例1〕
1.オルガノシラン処理
11−シアノウンデシルジメチルクロロシラン0.5gをn−ヘキサン199.5gに溶解した液中に前述の基材Aを25℃で1時間浸漬した。その後、基材を取り出し、n−ヘキサンで洗浄を行った。これにより酸化物表面にオルガノシランを反応させた。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は44°であり、オルガノシランが表面に固定化されている事が確認された。
【0036】
2.界面活性剤処理
ラウリルスルホ酢酸ナトリウム0.5gを蒸留水199.5g中に溶解し、界面活性剤溶液を調合した。25℃に保ったこの液中に、上述のオルガノシラン処理した基材を1時間浸漬し、風乾した。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は3°であり、親水性基が最表面に存在する事が確認された。
【0037】
得られた光学物品の防曇性評価方法は“JIS−S4030 眼鏡用くもり止め剤試験方法”の低温部くもり止め性を参考にして1〜4級で評価した。(1級の一番防曇性能が良く、4級が一番悪い。)ここで、2級以上を実用可能なレベルとした。また、耐擦傷性についてはボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kg荷重、10往復表面を摩擦したときの傷の付き方によって評価した。(A:1cm*3cmの範囲内に全く傷が付かない。B:上記範囲内に1〜10本傷が付く。C:上記範囲内に11〜100本傷が付く。 D:上記範囲内に無数の傷が付く。)防曇持続性については、作製した光学物品を10分間40℃の蒸留水中に浸漬し、室温で1日風乾した後、同様に防曇性評価を行った。評価結果は表1にまとめて示した。
【0038】
〔実施例2〕
1.オルガノシランおよび界面活性剤処理処理
3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)ヘキシル]トリメトキシシラン0.8gをエタノール199.2gに溶解し、ここに0.5N塩酸水溶液0.01gを混合し、25℃で2時間攪拌した。次にこの溶液中にラウリル硫酸ナトリウム0.5gを溶解し、処理液とした。ここに、基材Aを25℃で1時間浸漬した。その後、基材を取り出し、エタノールで洗浄を行い、風乾した。これにより酸化物表面にオルガノシランを反応させ、界面活性剤を保持した。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は5°であり、オルガノシラン、界面活性剤が表面に固定化されている事が確認された。
【0039】
〔実施例3〕
1.オルガノシラン処理
蒸着後の基材Aを蒸着槽内に保持し、真空度を保ったまま、槽内に4―アミノブチルメチルジクロロシラン1ccを注入し反応させた。その後、基材を取り出し、た。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は49°であり、オルガノシランが表面に固定化されている事が確認された。
【0040】
2.界面活性剤処理
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル0.5gを蒸留水199.5g中に溶解し、界面活性剤溶液を調合した。25℃に保ったこの液中に、上述のオルガノシラン処理した基材を1時間浸漬し、風乾した。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は3°であり、親水性基が最表面に存在する事が確認された。
【0041】
〔実施例4〕
1.オルガノシランおよび界面活性剤処理
蒸着後の基材Aを蒸着槽内に保持し、真空度を保ったまま、槽内に4―アミノブチルメチルジクロロシラン1ccとポリオキシエチレンラウリルエーテル1ccを注入し反応させた。その後、基材を取り出し、た。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は5°であった。
【0042】
〔実施例5〕
1.オルガノシラン処理
3−エチル−6−エチル−8−アミノオクチルトリクロロシラン0.5gをn−ヘキサン199.5gに溶解した液中に前述の基材Aを25℃で1時間浸漬した。その後、基材を取り出し、n−ヘキサンで洗浄を行った。これにより酸化物表面にオルガノシランを反応させた。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は78°であり、オルガノシランが表面に固定化されている事が確認された。
【0043】
2.界面活性剤処理
ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム0.5gを蒸留水199.5g中に溶解し、界面活性剤溶液を調合した。25℃に保ったこの液中に、上述のオルガノシラン処理した基材を1時間浸漬し、風乾した。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は20°であった。
【0044】
〔比較例1〕
基材Aそのものを比較例1とした。
【0045】
〔比較例2〕
基材Aの反射防止膜の替わりに、フッ化マグネシウムを膜厚100nmになるように、真空蒸着したものを用いた他は、実施例1と同様の方法で試料を作製した。
【0046】
〔比較例3〕
実施例3のオルガノシラン処理を行ったものを比較例とした。
【0047】
〔比較例4〕
ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.5gを溶解し、処理液とした。ここに、基材Aを25℃で1時間浸漬した。その後、基材を取り出し、エタノールで洗浄を行い、風乾した。この時のレンズの外観・反射防止の特性に大きな変化は見られなかった。また、この時の水に対する接触角は5°であった。
【0048】
【表1】
【発明の効果】
本発明によれば、酸化物が存在する表面に界面活性剤を密に保持させることが可能となり、反射防止特性の低下等の光学的影響を与えない防曇性能を有する光学物品が製造可能となった。
Claims (4)
- 酸化物を主として表面に含む物品において、該物品の表面にオルガノシランまたは/及びその加水分解物と、界面活性剤を、順次または同時に処理することを特徴とする防曇性能の付与方法であって、
前記オルガノシランの非カップリング部位が少なくとも1個以上の窒素を含む鎖状飽和炭化水素であり、
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤であることを特徴とする防曇性能の付与方法。 - 前記オルガノシランのカップリング部位がアルコキシシラン、またはクロロシラン、またはシラザンであることを特徴とする請求項1記載の防曇性能の付与方法。
- 前記イオン性界面活性剤が硫酸基または硫酸塩を含有することを特徴とする請求項1または2記載の防曇性能の付与方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の防曇性能の付与方法によって得られる光学物品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001042227A JP4524936B2 (ja) | 2001-02-19 | 2001-02-19 | 防曇性能の付与方法および光学物品 |
Applications Claiming Priority (1)
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