JP4524380B2 - 植物由来の天敵誘引成分 - Google Patents

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Description

本発明は、植物由来の天敵誘引成分に関するものであり、より詳細には、害虫の食害を受けた植物から放出され、その害虫の天敵を誘引する成分及びその利用に関するものである。
植物は害虫の食害を受けると、天敵誘引組成物を誘導的に生産放出する。この天敵誘引組成物は、食害している害虫の天敵を誘引する機能がある。この機能により植物に誘引された天敵は、害虫を捕食したり、害虫に寄生したりして害虫を殺す。結果として植物は、害虫からの被害を防ぐことができる。上記のような、植物−害虫−天敵の相互作用を利用して、いわば防衛的機能として植物が自己の体内において天敵誘引組成物を生成し体外に放出する機能は、植物の「誘導的間接防衛戦略」と呼ばれている。
上記植物−害虫―天敵の三者系として、例えばアブラナ科植物では、その害虫にコナガ、その害虫に対する特異的な天敵にコナガコマユバチを挙げることができる。コナガコマユバチは、コナガの体内に卵を産み付ける。コナガ体内で孵化したコナガコマユバチの幼虫は、コナガに寄生して最終的に害虫を殺す。
すなわち、コナガコマユバチは、コナガの天敵である。アブラナ科植物にとっては、このような害虫を殺す天敵は、非常に有益な動物であるといえる。
近年、農業技術分野において、害虫を駆除するための農薬が広く使用されている。しかしながら、農薬の有する環境ホルモン様効果が生態系に及ぼす作用は、大きな社会問題になっている。このような農薬の使用を低減するために様々な研究が進められている。特に今日注目を浴びているのは、害虫を殺す天敵を利用して害虫を防除する方法である。わが国においても天敵を従来の農薬の代替として使用する害虫防除方法が実用化されつつある。
しかしながら、農薬の代替として使用されている天敵のほとんどは、海外から輸入されているのが現状である。このため、環境保全や生物多様性保護の観点から、このような天敵が、日本土着の天敵相に悪影響を及ぼすといった新たな問題が指摘されている。このような観点からは、日本土着の天敵を従来の農薬の代替として利用することが、より望ましい害虫の駆除方法であるといえる。
ところで、非特許文献1には、リリマメがナミハダニによる食害を受けた時に葉から放出する揮発成分を、ナミハダニ等の害虫が忌避することが報告されている。また、非特許文献2には、シロイチモジヨトウ幼虫によって食害を受けたトウモロコシが夜間に葉から放出する揮発成分を、シロイチモジヨトウ雌成虫が忌避するということが報告されている。
Dicke, M.Physiological Entomology 11: 251-262(1986) De Moraes et al. Nature, 410: 577-580(2001)
上述のように、植物の「誘導的間接防衛戦略」の解明は、天敵を有効利用した農業技術開発につながり、環境の保全に大きく貢献することが期待されるため、非常に有用性が高いといえる。
しかしながら、植物の「誘導的間接防衛戦略」に関する研究は、まだ開始されたばかりであり、とりわけ、害虫による食害を受けた植物から放出される天敵誘引組成物に関する知見は、全体像の一部に過ぎない。このため、日本土着の天敵を有効利用した天敵誘引組成物は、これまで開発されていない。したがって、このような天敵誘引組成物を用いて、植物−害虫−天敵という三者間相互作用を有効に農業に利用する方法も確立されていない。
そこで、植物から放出される上記天敵誘引成分を利用して、農薬を用いることなく、また外来種の天敵を新たに持ち込むことなく、農作物を含む植物を効果的に防除することが望まれている。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、日本土着の天敵を有効利用しうる植物由来の天敵誘引成分及びその利用を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、害虫が植物へ付着することを直接的に抑制し、かつ、環境に悪影響を及ぼさない植物由来の害虫付着抑制成分を提供することと、この植物由来の害虫付着抑制成分を用いた害虫付着防止剤及び害虫付着防止方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み、害虫の食害を受けた植物から放出される物質の成分を分析することにより、天敵誘引組成物を同定した。そして、この天敵誘引組成物について種々の分析を行なった結果、害虫防除方法などに利用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、コナガの天敵を誘引する植物由来の天敵誘引成分であって、短鎖アルデヒド、テルペン化合物、及び、みどりの香り関連化合物の少なくとも1つを含んでなることを特徴としている。より好ましくは、コナガの天敵を誘引する植物由来の天敵誘引成分であって、短鎖アルデヒドと、テルペン化合物と、みどりの香り関連化合物とを含んでなることを特徴としている。
また、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、揮発性物質であることが好ましい
た、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、上記みどりの香り関連化合物が、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートであることが好ましい。
また、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、上記テルペン化合物が、α‐ピネン、サビネン、ミルセン、または、ショウノウのうち少なくとも2つから選択されることが好ましい。
さらに、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、以下の(a)〜(c)の何れかに記載の植物由来の天敵誘引成分であることが好ましい。
(a)n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
(b)n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート、及び、ミルセンを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
(c)n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート、及び、ショウノウを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
また、上記n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートが、2:2:1:1:2の重量比率で含んでなるこ
とが好ましい。
また、本発明の植物用害虫防除剤は、上記課題を解決するために、上述の植物由来の天敵誘引成分を含んでなることを特徴としている。
また、本発明の植物用害虫防除剤は、コナガに対して使用されることが好ましい。
また、本発明の植物用害虫防除剤は、アブラナ科植物に対して使用されることが好ましい。
本発明の植物の害虫防除または予防方法は、上記の課題を解決するために、上述の植物用害虫防除剤を植物に曝露することを特徴としている。
本発明の天敵トラップは、上記課題を解決するために、上述の植物由来の天敵誘引成分と、当該天敵誘引成分によって誘引される天敵を捕捉する捕捉手段とを備えていることを特徴とする。
また、本発明の天敵トラップは、上記捕捉手段が、粘着シートを備えていることが好ましい。
また、本発明の天敵トラップは、上記捕捉手段が、L*a*b*表色系色度において、20≦L*≦100、かつ、−30≦a*≦30、かつ、b*≧20である色を有することが好ましい。
また、本発明の天敵トラップは、選択的遮断手段をさらに備えていることが好ましい。また、本発明の天敵トラップは、上記選択的遮断手段が、所定の大きさの開口部を有するものであることが好ましい。
また、本発明の天敵トラップは、上記選択的遮断手段が、上記選択的遮断手段が、L*a*b*表色系色度において、20≦L*≦100、かつ、−30≦a*≦30、かつ、b*≧20である色を有することが好ましい。
本発明の害虫忌避成分は、上記課題を解決するために、上述の植物由来の天敵誘引成分からなり、かつ、害虫が忌避することを特徴とする。
また、本発明の害虫忌避成分は、上記害虫がハモグリバエ類又はカブラハバチ類であることが好ましい。
本発明の害虫付着抑制剤は、上記課題を解決するために、上述の害虫忌避成分を含むことを特徴とする。
本発明の害虫付着抑制方法は、上記課題を解決するために、上述の害虫付着抑制剤を植物に曝露する工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の害虫付着抑制方法は、上記曝露される植物が、アブラナ科に属する植物であることが好ましい。
また、本発明の害虫付着抑制方法は、害虫の付着を抑制する植物と共に食害されているアブラナ科植物を載置する工程を含むものであってもよい。
本発明の植物由来の天敵誘引成分を用いることにより、日本土着の天敵を有効利用しうる植物用害虫防除剤を提供することができ、さらに従来から害虫駆除に使用される農薬などとは異なり、自然環境への悪影響が少ないため、環境保全に貢献することができる。
本発明についてより具体的に説明すれば、以下の通りである。なお言うまでもないが、本発明はこの記載に限定されるものではない。
(1)本発明の植物由来の天敵誘引成分
本発明の植物由来の天敵誘引成分は、植物が害虫による食害を受けたときに放出され、当該害虫の天敵を誘引するものである。
上記「植物由来の天敵誘引成分」とは、上述の植物の「誘導的間接防衛戦略」において、害虫の食害を受けた植物が体外へ放出する物質のことをいう。したがって、この天敵誘引組成物により、植物に多くの天敵が誘引して、害虫を捕食したり、害虫に寄生したりして、害虫を防除することができる。また、ここでいう「成分」とは、単一の化合物のみならず、複数の化合物を含んでなる組成物を意味する。
これによれば、従来から害虫駆除に使用される農薬などとは異なり、自然環境への悪影響が少ないため、環境保全に貢献することができる。
なお、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、植物体が合成したものに限定されることなく、植物由来の天敵誘引成分と同一の化学構造を有する人工的に合成された物質であってもよい。したがって、本発明でいう「植物由来の天敵誘引成分」には、植物が生産する「天然」の化合物であってもよいし、公知の方法で人為的に合成された化合物であってもよい。
なお、本発明に適用しうる植物の「誘導的間接防衛戦略」としては、植物−害虫−天敵の三者系による防衛的機能であれば、特に限定されないが、例えば、リママメ、ナシ、リンゴ、キュウリ、ワタ(植物)−ハダニ類(害虫)−チリカブリダニ、ケナガカブリダニ、捕食性アザミウマ、または、捕食性ハネカクシ(天敵)の三者系、アブラナ科植物(植物)−コナガ、及び、モンシロチョウ幼虫(害虫)−コナガコマユバチ、及び、アオムシコマユバチ(天敵)の三者系、イネ科植物(植物)−アワヨトウ幼虫(害虫)−カリヤコマユバチの三者系が挙げられる。なかでも特に、アブラナ科植物(植物)−コナガ、及び、モンシロチョウ幼虫(害虫)−コナガコマユバチが好ましい。これは、後述する実施例に示すように、コナガに対する天敵を誘引する効果が非常に高いからである。
また、上記「天敵を誘引する」とは、害虫の天敵を呼び寄せることを意味する。すなわち、「天敵を誘引する」とは、上述の植物の「誘導的間接防衛戦略」の植物−害虫−天敵の三者系において、害虫−天敵間のバランス以上に天敵が存在した状態にすることを意味する。
一般的に、天敵と害虫との個体群の間には、一定のバランスが成立しており、そのバランスを崩して害虫個体群を壊滅的に減らすことはほとんどない。本発明の植物用害虫防除剤を用いることにより、当該植物用害虫防除剤に含まれる植物由来の天敵誘引成分が、害虫の天敵を植物近傍に呼び寄せ、上記の害虫−天敵間のバランス以上に、天敵が植物近傍に存在するようになる。そして、天敵の害虫発見効率は高くなり、効率的に害虫を駆除することができる。
また、本明細書において、上記のように天敵を誘引する性質を「天敵の誘引性」とする。天敵の誘引性を調べる方法としては、上記の害虫−天敵間のバランスを検定しうる方法であれば、特に限定されないが、例えば後述する実施例2〜4に示すような、一定容量の容器内において、対象植物に誘引する天敵の数を測定する方法が挙げられる。
また、このような植物由来の天敵誘引成分の構成成分は、質量分析装置により、害虫による食害を受けた植物から放出される揮発性組成物の構成成分と、害虫による食害を受けていない植物から放出される揮発性組成物の構成成分とを同定し、両者の比較により得られる。その比較の結果、害虫による食害を受けた植物特異的に放出される揮発性組成物の構成成分が、本発明の植物由来の天敵誘引成分の構成成分である。
上記質量分析装置は、植物から放出される揮発性組成物の構成成分を同定できる分析方装置であれば、特に限定されず、従来公知の質量分析装置を採用することができる。このような質量分析としては、例えばガスクロマトグラフ質量分析装置が挙げられる。
上記ガスクロマトグラフ質量分析装置(GCMS)とは、移動相に気体を用いるクロマトグラフ分析装置を意味する。
このような質量分析装置により、害虫による食害を受けた植物から放出される植物由来の天敵誘引成分の成分の同定を、効率的に行なうことが可能になる。
また、上記「害虫特異的に放出される揮発性組成物の構成成分」とは、食害を受けた植物において、上述の質量分析装置により同定された揮発性組成物の構成成分のうち、食害を受けていない植物のものと比較して検出量が高い構成成分のことをいう。
例えば、後述する実施例1に示すように、害虫がコナガの場合、コナガの食害を受けた植物が放出した揮発性組成物の構成成分は、ガスクロマト質量分析の結果、図1に示す化合物になる。この化合物にうち、「害虫特異的に放出される揮発性組成物の構成成分」は、図1において四角で囲んだ、n‐ヘプタナール、α‐ピネン、サビネン、ミルセン、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート、及び、ショウノウである。
かかる上記植物由来の天敵誘引成分としては、例えば、短鎖アルデヒド、テルペン化合物、及び、みどりの香り関連化合物の少なくとも1つを含んでなるものが挙げられる。
より好ましくは、上記植物由来の天敵誘引成分は、短鎖アルデヒドと、テルペン化合物と、みどりの香り関連化合物と含んでなるものが挙げられる。
後述する実施例1に示すように、本発明の植物由来の天敵誘引成分として、1つの化合物単独で用いた場合、天敵の誘引性を示すことがない。したがって、本発明の植物用害虫防除剤に含まれる植物由来の天敵誘引成分は、複数の化合物が混合された物質であることが好ましい。
上記「短鎖アルデヒド」とは、カルボニル基に水素原子を少なくとも1つ(すなわちホルミル基−CHO)を有するカルボニル化合物のことをいう。短鎖アルデヒドとしては、害虫による食害を受けた植物から放出される、または、上述のガスクロマトグラフ質量分析装置により同定される短鎖アルデヒドであれば、特に限定されないが、例えば、N‐ヘプタナール(N-heptanal)、が挙げられる。
また、上記「テルペン化合物」とは、種々の植物から得られる有機化合物のうち、炭素数が5の倍数5n(n≧2)の化合物のことをいい、別名テルペノイドとも呼ばれている
。また、テルペン化合物は、植物の生合成的見地から、n個のイソプレンまたはイソペンタンから構成される前駆物質に由来している。テルペン化合物としては、特に限定されないが、例えばその炭素数(n)から分類されうる、1)n=2、モノテルペン化合物(炭素数10)、2)n=3、セスキテルペン化合物(炭素数15)、3)n=4、ジテルペン化合物(炭素数20)、4)n=5、セスタテルペン化合物(炭素数25)、5)n=6、トリテルペン化合物(炭素数30)、6)n=8、テトラテルペン化合物(炭素数40)が挙げられる。この中でも、モノテルペン、及び、セスキテルペンは、揮発性を有しているので、さらに好ましい。
また、上記テルペン化合物は、その化学構造に含まれる環の数により分類されうる、a)非環式テルペン化合物(環を持たない)、b)単環式テルペン化合物(環を1つ持つ)、c)2環式テルペン化合物、d)3環式テルペン化合物、e)4環式テルペン化合物、f)5環式テルペン化合物であってもよい。
このようなテルペン化合物として、具体的には、リモネン(limonene)、α‐ピネン(α-Pinene)、サビネン(Sabinene)、ミルセン(myrcene)、ショウノウ(Camphor)、α−レピネン(α−lerpinene)、β−オシメン(β−ocimene)、γ−テルピネン(γ−terpinene)、α−テルピノレン(α−terpinolene)、β−カリオフィレン(β−Caryophyllene)、α−コパエン(α−Copaene)、及び、トランス−β−ファルネセン(trans-β-Farnesene)、(E)-4,8-dimethyl-1,3,7-nonatriene、(E,E)-4,8,12-trimethyl-1,3,7,11-tridecatetraene、α-ベルガモテン(α‐bergamotene)、リナロール(linalool)、カレン(carene)が挙げられる。
さらに、後述する実施例2及び3に示すように、上記害虫がコナガである場合、上記テルペン化合物は、α‐ピネン、サビネン、ミルセン、または、ショウノウのうち少なくとも2つから選択されることが好ましい。
また、上記「みどりの香り関連化合物」とは、上述の質量分析により同定された物質のうち、短鎖アルデヒド、及び、テルペン化合物以外の成分で、かつ、青葉アルコールの化学構造を含む化合物を意味する。青葉アルコールなどは、葉の香りで別名「みどりの香り」と呼ばれている。このようなみどりの香り関連化合物としては、リノレン酸、リノール酸より酸化的分解によって生じる炭素数6ないし9の化合物であれば、アルコール類、アミン類、環式化合物などでもよく、特に限定されない。具体的には、みどりの香り関連化合物としてヘキサノール(hexenol)、(Z)‐3‐ヘキセノール((Z)-3-hexenol)等のアルコール、ヘキサナール(hexanal)、(E)‐2‐ヘキセナール((E)-2-hexenal)、(E)‐3‐ヘキセナール((E)-3-hexenal)等のアルデヒド、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート((Z)-3- Hexenyl acetate)等のエステル、が挙げられる。
また、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、上記の短鎖アルデヒド、テルペン化合物、及び、みどりの香り関連化合物のみならず、ガスクロマトグラフ質量分析装置の結果、上記「害虫特異的に放出される物質」として同定されたその他の成分が含まれていてもよい。
上記その他の成分としては、上述のガスクロマトグラフ質量分析装置により同定され、かつ、害虫特異的に放出された物質であれば、特に限定しないが、例えば、アルコール類、アミン類、短鎖アルコール、オキシム化合物、ニトリル化合物、カラシ油、インドール、サリチル酸メチル、ジャスモン、ジャスモン酸メチル、などが挙げられる。
具体的には、本発明の植物由来の天敵誘引成分として、以下の(a)〜(c)の何れかに記載の植物由来の天敵誘引成分が挙げられる。
(a)短鎖アルデヒドであるn‐ヘプタナールと、テルペン化合物であるサビネン、(+)α‐ピネン、及び、(−)α‐ピネンと、みどりの香り関連化合物である(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートとを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
(b)n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート、及び、ミルセンを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
(c)n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート、及び、ショウノウを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
上記サビネン、(+)α‐ピネン、及び、(−)α‐ピネンは、モノテルペン(炭素数10のテルペン)である。また、上記(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートは、植物細胞内のリポキシゲナーゼ経路により、脂肪酸(リノール酸、リノレン酸)が分解して生成されたものであると考えられる。
後述する実施例3に示すように、上記の化合物を含んでなる植物由来の天敵誘引成分は、コナガの天敵であるコナガコマユバチの誘引性を向上させる機能を有する。それゆえ、上記植物由来の天敵誘引成分を野外の設置することにより、土着の天敵を誘引することができる。したがって、従来から害虫駆除に使用される農薬などとは異なり、自然環境への悪影響が少ないため、環境保全に貢献することができる。
また、従来の海外から輸入された天敵を利用する場合と異なり、本発明の植物由来の天敵誘引成分を用いた場合では、土着の天敵、すなわち、農生態系において元々存在する天敵を誘引させているので、環境保全や生物多様性保護の観点から、このような天敵が、農生態系に悪影響を及ぼすことがない。
また、本発明の植物由来の天敵誘引成分において、天敵を誘引するための、含有する化合物の最適濃度、及び、最適比率は、天敵の誘引性を調べる従来公知の方法を用いて、適宜設定することができる。上記天敵の誘引性を調べる方法としては、例えば後述の実施例2に示す選択室実験が挙げられる。
具体的には、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、上記n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートが、2:2:1:1:2の重量比率で含んでなることが好ましい。
さらに、上記植物由来の天敵誘引成分における化合物の濃度は、n‐ヘプタナール、サビネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートが、それぞれ1×10−9〜1×10−5μg/μl、(+)α‐ピネン、及び、(−)α‐ピネンがそれぞれ、5×10−10〜5×10−6μg/μlであることが好ましい。また、上記濃度は、n‐ヘプタナール、サビネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートが、それぞれ1×10−9〜1×10−6μg/μl、(+)α‐ピネン、及び、(−)α‐ピネンが、それぞれ5×10−10〜5×10−7μg/μlであることがより好ましい。さらに、上記濃度は、n‐ヘプタナール、サビネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートが、それぞれ1×10−7μg/μl、(+)α‐ピネン、及び、(−)α‐ピネンが5×10−8μg/μlであることがさらに好ましい。
後述する実施例4に示すように、上記植物由来の天敵誘引成分における化合物の濃度は、n‐ヘプタナール、サビネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートが、それぞれ1×10−9〜1×10−5μg/μl、(+)α‐ピネン、及び、(−)α‐ピネンがそれぞれ、5×10−10〜5×10−6μg/μlである場合(図6の10−2希釈〜10−6希釈に対応する)、コナガの天敵であるコナガコマユバチは、選好性を示し、コナガコマユバチの誘引性が認められた。一方、上記植物由来の天敵誘引成分における化合
物の濃度は、n‐ヘプタナール、サビネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートが、それぞれ1×10−4/μl、または、1×10−11/μl、(+)α‐ピネン、及び、(−)α‐ピネンがそれぞれ、5×10−5/μl、または、5×10−12/μlである場合(図6の10−1希釈、または、10−8希釈に対応する)には、コナガコマユバチの誘引性が認められなかった。
また、後述する実施例3に示すように、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、n‐ヘプタナールと、サビネンと、(+)α‐ピネンと、(−)α‐ピネンと、 (Z)‐3‐ヘキセニルアセテートと、ミルセンまたはショウノウとが、2:2:1:1:2:2の重量比率で含んでいてもよい。
(2)植物由来の天敵誘引成分の取得方法
上記植物由来の天敵誘引成分を取得する方法としては、植物から従来公知の方法に従って精製するという方法を用いることができる。さらに、上記植物用害虫防除剤に含まれる天敵誘引成分は、植物から採取したものに限らず、上記植物由来の天敵誘引成分と同一物質であればよい。それゆえ、植物由来の天敵誘引成分の取得には、微生物から従来公知の方法を用いて採取してもよいし、また従来公知の合成法に従って、植物由来の天敵誘引成分と同一の組成や化学構造を有する物質を人工的に合成するという方法などを用いてもよい。
特に、上述の植物由来の天敵誘引成分におけるn‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート、及び、ショウノウについては、安価に製造することが可能であるので、人工的に合成するという方法が好適である。
(3)本発明の利用
本発明の植物由来の天敵誘引成分は、従来大量に用いられてきた害虫駆除のための農薬を低減させることができ、それらの環境に対する悪影響を避けることができるという利点を有している。それゆえ、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、農業的、社会的に大きな波及効果が期待できる。本発明の植物天敵誘引組成物の産業上の利用分野としては、農業、農薬(特に生物農薬)関連産業、または、香料製造関連産業が挙げられる。
以下に、本発明の植物由来の天敵誘引成分の利用の一例として、植物用害虫防除剤、及び、植物用害虫防除剤の調製方法(3−1)、植物の害虫防除方法・食害予防方法(3−2)、天敵トラップ・天敵誘引方法(3−3)、害虫忌避成分・害虫付着抑制剤・害虫付着抑制方法(3−4)について説明するが、本発明の植物由来の天敵誘引成分の利用は、これに限定されるものではない。
(3−1)本発明の植物用害虫防除剤、及び、植物用害虫防除剤の調製方法
本発明の害虫防除剤は、上述の植物由来の天敵誘引成分を含んでなることを特徴としている。この植物用害虫防除剤を用いることにより、従来から害虫駆除に使用される農薬などとは異なり、自然環境への悪影響が少ないため、環境保全に貢献することができる。
ここでいう「害虫防除剤」とは、害虫の天敵を呼び寄せるための製剤を意味する。
また、本発明の植物用害虫駆除剤は、上記の植物由来の天敵誘引成分のみならず、その他の副成分が含まれていてもよい。上記副成分としては、例えば、pH緩衝液、安定化剤等を挙げることができる。また害虫による食害を予防するために、適宜農薬等を添加してもよい。
次に、上述の植物由来の天敵誘引成分、あるいは植物由来の天敵誘引成分と同一の物質を含む植物用害虫防除剤の調製方法(製造方法)について説明する。
上記植物用害虫防除剤は、これらの植物由来の天敵誘引成分を最適比率、かつ、最適濃度に希釈して調整すればよい。希釈する媒質に関しては、水系、有機系等は特に限定されないが、有機系の場合は植物の生育に悪影響をおよぼさない物質であることが好ましい。上記の媒質として具体的には、クエン酸トリエチル(以下TECという)などが挙げられる。TECのような、低揮発性の媒質を用いれば、本発明の植物由来の天敵誘引成分の揮発性成分の匂い以外の、溶媒の匂いが揮発することが少なく、天敵の誘引性をマスクすることがない。また、低揮発性の媒質によって天敵誘引成分を徐放することができる。それゆえ、低揮発性の媒質を用いれば、天敵の誘引性をさらに長時間高めるという効果を奏する。
なお、これらの植物用害虫防除剤は、上記植物由来の天敵誘引成分が揮発性物質であれば、当該植物用害虫防除剤の匂い成分を拡散させる際に、広範囲の植物にまんべんなく害虫の天敵を誘引することができ、害虫防除に有効に利用することができる。
(3−2)本発明の植物の害虫防除または予防方法
本発明の植物の害虫防除方法は、上述の植物用害虫防除剤を対象となる植物に曝露させることにより達成される。
ここでいう「害虫防除方法」とは、害虫の天敵を呼び寄せる方法のことをいう。
また「害虫予防方法」とは、植物の害虫による食害を予防する方法のことをいう。
対象となる植物は特に限定されるものではなく、例えば、食用植物、果実や野菜、花・木その他の有効樹木を含む園芸作物、工芸作物、さらには飼肥料作物等が挙げられる。
また、後述の実施例では、アブラナ科の植物であるキャベツにおいては、有効に害虫の天敵の誘引性が向上していた。それゆえ、本発明の植物用害虫防除剤は、アブラナ科植物に対して使用されることが好ましく、それに伴い、本発明の植物の害虫防除方法も、アブラナ科植物に対する害虫防除に使用されることが好ましい。なお、アブラナ科植物として具体的には、シロイナズナ、アブラナ、カブ、ハクサイ、ダイコン、ワサビ、カラシ、ナズナなどを挙げることができる。上記のアブラナ科植物以外にも、トマト、キュウリ、メロン、ピーマン等の果実や野菜に対しても、本発明の植物用害虫防除剤を適用することができる。
本発明の植物用害虫防除剤の曝露方法は、特に限定されるものではないが、例えば、霧吹き、スプレー容器等に当該植物用害虫防除剤を充填し、対象植物に天敵誘引成分を拡散させる方法などが挙げられる。
また、上記植物由来の天敵誘引成分が揮発性物質である場合には、上記植物用害虫防除剤に除放性を付与するための保持担体を用いて曝露させる方法を採用してもよい。このような方法としては、例えば、本発明の植物用害虫防除剤を浸透させた脱脂綿・スポンジ等を対象植物の近傍に設置し、それらから蒸発することで植物に曝露させる方法、当該植物用害虫防除剤とゲル化剤とを混合してゲル化させ、そのゲルを対象植物の近傍に設置し、それらから蒸発することで植物に曝露させる方法などが挙げられる。また、植物用害虫防除剤をポリ塩化ビニルで除放性を確保したものを、植物の根本に取り付けてもよい。ビニルハウス・温室等の密閉系(半密閉系)で対象植物を栽培している場合では、空調から当該植物用害虫防除剤を曝露させる方法を採用してもよい。こうすることで、対象植物にま
んべんなく天敵誘引成分を拡散させることができ、害虫の天敵が誘引しやすい環境を提供することできる。
また、本発明の害虫防除方法において利用される害虫の天敵としては、特に限定されるものではなく、農生態系付近の周辺環境に生息している日本土着の天敵、または、室内増殖し放飼した日本土着の天敵等が挙げられる。特に、室内増殖し放飼した日本土着の天敵を利用した場合、対象となる植物に効率よく、害虫の天敵を誘引することができ、害虫を低密度に保つことが可能になる。
後述する実施例では、密閉容器内で、ポリ塩化ビニルで除放性を確保した植物用害虫防除剤を植物体の根本に取り付けたとき、コナガの天敵であるコナガコマユバチの誘引性が確認されており、本発明の植物の害虫防除方法が有効であることがわかった。
また、本発明の植物の害虫防除方法において、対象となる害虫としては、例えばコナガが挙げられる。
特に、後述する実施例に示すように、当該植物用害虫防除剤を曝露した植物において、コナガの天敵であるコナガコマユバチの誘引性を検討した結果、有意なコナガコマユバチの誘引性が確認された。それゆえ、本発明の植物用害虫防除剤は、コナガに対して使用されることが好ましい。また、本発明の植物の害虫防除方法は、コナガの食害を防止するために利用されることが好ましい。
以上のように、本発明の植物の害虫防除方法によれば、上記植物用害虫防除剤を植物に曝露させることにより、害虫の食害を受けた植物に、当該害虫の天敵の誘引性を付与することができる。それゆえ、例えば、食用の作物に対して本発明の植物の害虫防除方法を用いれば、害虫を駆除するための農薬の散布量を低減させることができ、人体に対して安全性の高い作物を収穫することができる。また、環境に対しても悪影響の少ない農業を実現できる。
また、日本の農地面積の約4割を占める中山間地では、主に少量多品目の農業生産が行なわれている。近年、このような中山間地では高齢化が進んでおり、少量多品目の農業生産において、害虫防除作業の負担の軽減が急務の課題である。また、農薬の使用を減らしたり、無農薬で栽培したりした農作物の付加価値が消費者にとって認められてきている。本発明の植物の害虫防除方法を適用することにより、土着の天敵を人為的に誘引させることが可能になる。それゆえ、従来から害虫駆除に使用される農薬などとは異なり、自然環境への悪影響が少ないため、環境保全に貢献することができる。さらに、本発明の植物の害虫防除方法は、農作業者の負担の少ない防除手段の確立につながり、地域における持続的農業の発展・活性化に貢献できる。
本発明の害虫予防方法は、上述の植物用害虫防除剤を用いて、害虫の天敵の誘引性を向上させることによって、害虫の食害を予防するというものである。
後述の実施例に示すように、当該植物用害虫防除剤を曝露した植物において、コナガの天敵であるコナガコマユバチの誘引性を検討した結果、有意なコナガコマユバチの誘引性が確認された。それゆえ、本発明の植物の害虫防除方法を適用すれば、植物の害虫による食害を有効に予防できるといえる。
特に、後述の実施例では、本発明の植物用害虫防除剤を曝露した植物において、コナガの天敵であるコナガコマユバチの有意な誘引性が確認された。そのため、本発明の植物の食害予防方法は、コナガによる食害を予防することが好ましい。
(3−3)天敵トラップ及び天敵誘引方法
天敵トラップは、上述の天敵誘引成分の利用の一例である。
上述のコナガコマユバチ等の日本土着の天敵を利用して害虫を防除する際には、防除しようとする土地の農生態系にどの程度の天敵が生息しているのかを予め推定することが必要である。このような推定は、天敵の生息密度を測定することによって行われる。
上述の天敵誘引成分は、コナガの天敵であるコナガコマユバチ等の天敵を誘因することができるので、これを利用して天敵を誘引し、効率的に生息密度を測定することができる。天敵トラップとは、天敵誘引成分によって天敵を誘引し、誘引した天敵を効率的に捕捉(トラップ)するものをいう。
従って、天敵トラップは、上述の天敵誘引成分と、天敵誘引成分によって誘引される天敵を捕捉する捕捉手段とを主として備えている。天敵トラップを用いれば、害虫を防除しようとする土地における天敵の生息密度を効率的に測定することができるため、農薬を用いずに日本土着の天敵を利用した農業に貢献することができる。
捕捉対象である誘引される天敵は特に限定されるものではないが、寄生蜂であることが好ましく、寄生蜂の中でもコナガコマユバチであることが特に好ましい。上述した天敵誘引成分は、天敵のうち、寄生蜂、中でもコナガコマユバチを効果的に誘引するものであるので、上記構成によれば、寄生蜂、或いはコナガコマユバチを効果的に誘引及び捕捉して、生息密度を測定することができる。
また、捕捉手段は、誘引された天敵を捕捉するものであれば特に限定されるものではなく、従来公知の捕捉手段を用いることができる。このような捕捉手段としては、従来公知の粘着シートを適用すればよく、例えば商品名:ホリバー(販売元:アリスタライフサイエンス)が好的に利用可能である。前記ホリバーをはじめとする粘着シートを用いることによって、誘引した天敵を粘着性によって捕捉することができる。以下の説明において、前記ホリバーを適宜「ホリバー粘着シート」と称する。
さらに、捕捉手段をより一層効果的なものにするために、捕捉手段は黄色であってもよい。黄色は一部の昆虫が好む色であるため、捕捉手段に用いることにより、天敵を一層効果的に誘引することができる。なお、上記「黄色」とは、L*a*b*表色系色度において、20≦L*≦100、かつ、−30≦a*≦30、かつ、b*≧20である色であり、好ましくは、40≦L*≦80、かつ、−20≦a*≦20、かつ、b*≧40である色をいう。(以下、同じ)。
また、天敵を捕捉し、生息密度を測定する際に、他の大型昆虫等が捕捉されると、測定の対象である天敵の捕捉数に悪影響を及ぼし、精確な生息密度を測定できないおそれがある。従って、本発明に天敵トラップは、天敵以外が捕捉されるのを防ぐために、選択的遮断手段を備えていることが好ましい。ここで、「選択的遮断手段」とは、トラップする天敵は通過させ、それ以外の生物及び/又はゴミ等の無生物を選択的に遮断することによって、結果的に捕捉する対象となる天敵のみを捕捉手段が効率的に捕捉できるようにすることを目的とするものをいう。
また、選択的遮断手段は、所定の大きさの開口部を有するものであってもよい。選択的遮断手段が所定の大きさの開口部を有していれば、捕捉手段を選択的手段で被包することによって、開口部を通過できない程度に大きい昆虫等を遮断することができる。このように、開口部に対する大小によって、通過しようとする生物及び/又は無生物を選択的に遮
断することができる。ここで、開口部は、捕捉する対象となる天敵が通過できる程度に大きく、遮断しようとする生物及び/又は無生物が通過できない程度に小さいことが好ましい。上記開口部のサイズとしては、例えばコナガコマユバチを捕捉する場合、0.8mm×0.8mm以上、10mm×30mm以下が好ましく、0.8mm×0.8mm以上、10mm×10mm以下がより好ましく、0.8mm×0.8mm以上、1mm×1mmがさらに好ましい。これにより、コナガコマユバチを支障なく通過させる一方で、他の大型の昆虫を選択的に阻止することができる。なお、このような選択的遮断手段としては、例えば適切な大きさの開口部を有する金網又はネット等が挙げられる。また、選択的遮断手段は、上記捕捉手段と同様に黄色であっても良い。
(3−4)害虫忌避成分・害虫付着抑制剤・害虫付着抑制方法
本発明の害虫付着抑制成分は、上述の天敵誘引成分を用いたものである。本発明者は、上述の天敵誘引成分についてさらに解析を行った結果、天敵誘引成分には、天敵を誘引する効果のみならず、害虫の付着を抑制する効果もあることを明らかにし、本発明の完成に至った。
すなわち後述の実施例に示すように、本発明者は、アブラナ科に属する植物であるコマツナを上述の天敵誘引成分を含む雰囲気に曝露することによって、ハモグリバエ類及びカブラハバチ類を含む害虫がコマツナを忌避することを明らかにした。
本発明の害虫忌避成分を用いれば、アブラナ科植物にとって非常に有害なハモグリバエ類やカブラハバチ類の付着を抑制することができる。ここで、害虫忌避成分は、上述の植物由来の天敵誘引成分からなるので、環境に悪影響を及ぼさずに、害虫が植物へ付着することを直接的に抑制することができるという効果を奏する。
本発明の害虫忌避成分は、上述の天敵誘引成分からなり、かつ、害虫が忌避するものであればよい。
ここで、上記の害虫は、ハモグリバエ類又はカブラハバチ類であることが好ましい。すなわち、本発明の害虫忌避成分は、ハモグリバエ類又はカブラハバチ類が忌避するものであることが好ましい。なお、ハモグリバエ類とは、例えば、ナモグリバエ(Chromatomyia
horticola)、トマトハモグリバエ(Liriomyza sativae)等をいう。また、カブラハバチ類とは、例えば、カブラハバチ(Athalia rosae ruficornis)、セグロカブラハバチ(Athalia lugens infumata)等をいう。
また、本発明の害虫付着抑制剤は、本発明の害虫忌避成分を含んでいることを特徴としている。害虫忌避成分を様々な態様に加工することによって、害虫付着抑制剤は、植物に害虫が付着するのを抑制することができる。なお本発明の害虫付着抑制剤は、上記加工を行なっていない本発明の害虫忌避成分そのものであってもよい。
なお、「様々な態様に加工する」とは、例えば、ゲル状等の、剤として適切な状態に害虫付着抑制成分を加工すること;保存効果を高める等のために他の化合物をさらに混合して物理・化学特性をより適切なものにすること;剤として運搬や設置等がしやすいように害虫付着抑制成分を所定の容器に封入すること;等を指す。ただし、上記の例は一部に過ぎず、本発明の害虫付着抑制剤は、これらに限定されるものではない。
なお、害虫付着抑制剤の調製方法は、上記「(3−1)本発明の植物用害虫防除剤、及び、植物用害虫防除剤の調製方法」の項で説示した方法と同様の方法を用いて行なってもよい。
また、本発明の害虫付着抑制方法は、本発明の害虫付着抑制剤を植物に曝露する工程を含むことを特徴としている。上述の通り、害虫は本発明の害虫付着抑制剤に含まれる害虫忌避成分を忌避するので、植物に曝露することによって、害虫の付着を抑制することができる。また、このとき、農薬とは違い、植物由来の天然成分であることから、対象物や環境に対して悪影響を及ぼすおそれは少ないことが示唆される。
なお、本発明の害虫付着抑制成分を植物に暴露する方法については、上記「(3−2)本発明の植物の害虫防除または予防方法」の項で説示した方法と同様の方法を用いて行えばよい。
また、上記の害虫付着抑制方法において、曝露される植物は特に限定されるものではないが、アブラナ科に属する植物が好ましく、コマツナ、ミズナ、ハダイコン、キョウナ、ミブナ、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、カブ等がより好ましい。これらの植物は、いずれも幼苗期に害虫が付着することにより収穫高が下がってしまうが、本発明の害虫付着抑制方法によって、害虫の付着を抑制し、高い収穫高を得ることができる。
また、本発明の害虫付着抑制方法は、害虫の付着を抑制する植物と共に食害されているアブラナ科植物を載置する工程を含むものであってもよい。食害を受けているアブラナ科植物は上述の天敵誘引成分を放出しており、害虫はこの天敵誘引成分を忌避するので、上記構成によれば、害虫が対象物に付着するのを抑制することができる。
上記アブラナ科植物は特に限定されるものではないが、コマツナであることが好ましい。また、食害を受けている植物は、コナガ幼虫による食害を受けていることが好ましい。コナガ幼虫は、アブラナ科の植物を好んで食害するために、アブラナ科植物から天敵誘引成分を効率的に放出させることができる。
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例1〕コナガ食害キャベツ株から特異的に放出される物質の同定
本実施例では、アブラナ科植物であるキャベツが、その害虫であるコナガの食害を受けた場合に、植物体外へ放出する物質をガスクロマトグラフ質量分析装置により同定した。上記の結果を図1に示す。図1には、コナガ被害キャベツから放出される揮発性の各種物質の放出量を示す。なお、図1において、Aはコナガ小被害株を、Bはコナガ中程度被害株を、Cはコナガ大被害株を示している。また、図1のグラフの縦軸は、放出される各種揮発性物質のイオン強度(gFW)を示している。
図1に示すように、コナガ被害キャベツにおいては、四角で囲んだ揮発性物質がコナガ食害特異的に放出されていた。すなわち、n‐ヘプタナールと、テルペン化合物であるミルセン、サビネン、α‐ピネン、及び、ショウノウと、みどりの香り関連化合物である(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートとが、コナガ被害キャベツから特異的に放出される揮発性物質であった。
〔実施例2〕天敵誘引組成物の単独成分におけるコナガコマユバチの誘引性
続いて、上記実施例1のガスクロマトグラフ質量分析装置にて同定された、n‐ヘプタ
ナール、ミルセン、サビネン、α‐ピネン((+)-α‐ピネン及び(−)-α‐ピネン)、ショウノウ、及び、 (Z)‐3‐ヘキセニルアセテートの各種化合物をサンプルとして、選択箱を用いて、コナガの天敵であるコナガコマユバチの誘引性の比較を行った。
ここで、選択箱を用いた実験、すなわち選択室実験について、図2を参照にして説明する。本実施例で用いる選択室は、図2に示すように、30cm×35cm×25cmの容器1である。この容器1内に2株の植物体2,3が、配置されている。そして、植物体2と植物体3との間には、所定数のコナガコマユバチを飼育しているケージ4が配置されている。
上記植物体2、または、植物体3の何れか一方には、ポリ塩化ビニルで除放性を確保したサンプル5が、植物体の根本に取り付けられている。もう片方の植物体には、サンプルが取り付けられていない。このように、選択室(容器1)内で、処理株(サンプル5が取り付けられた株)と対照株(サンプル5が取り付けられていない株)とを設置し、ケージ4から出たコナガコマユバチの誘引性を調べる。なお、以下の実施例1〜4では、上記植物体3として、コナガによる食害を受けていない健全コマツナ株を使用した。
また、この選択室実験において、天敵の誘引性は、サンプルを取りつけた処理株に対するコナガコマユバチの選好性、すなわち、植物体2及び3に定着したコナガコマユバチの数に対する、サンプル5を取り付けた処理株に定着したコナガコマユバチの数が占める割合として評価した。
上述の選択室実験によりコナガコマユバチの誘引性を調べた結果を図3に示す。なお、本実施例では、コナガコマユバチの誘引性をより詳細に検討するために、上記実施例1においてコナガ被害キャベツ特異的な放出が認められなかったDMNTについても、コナガコマユバチの誘引性を調べた。
その結果、図3に示すように、n‐ヘプタナール、サビネン、(+)-α‐ピネン、(−)-α‐ピネン、ショウノウ、及び、 (Z)‐3‐ヘキセニルアセテートの何れの化合物をサンプルとしても、DMNTと同等の選好性を示し、コナガコマユバチの誘引性が認められなかった。また、図3に示すように、(+)-α‐ピネン、(−)-α‐ピネン、ショウノウ、及び、ミルセンについて、サンプル濃度を増加させて同様の実験を行なっても、コナガコマユバチの誘引性が認められなかった。
したがって、上記ガスクロマトグラフ質量分析装置にて同定された、n‐ヘプタナール、ミルセン、サビネン、α‐ピネン((+)-α‐ピネン及び(−)-α‐ピネン)、ショウノウ、及び、 (Z)‐3‐ヘキセン‐1‐オールアセテートの各種化合物単独では、コナガコマユバチを誘引することができないことが明らかになった。
〔実施例3〕ブレンドした天敵誘引組成物におけるコナガコマユバチの誘引性
続いて、上記実施例2の選択室実験により、n‐ヘプタナール、ミルセン、サビネン、α‐ピネン((+)-α‐ピネン及び(−)-α‐ピネン)、ショウノウ、及び、 (Z)‐3‐ヘキセニルアセテートの各種化合物を含む混合物に対する、コナガコマユバチの誘引性を調べた。
上記各種化合物を含む混合物の組成を以下の表1に示す。なお、表中の各種化合物の量(μg)は、混合物A10μl中での量(μg)を示している。
Figure 0004524380
その結果を図4に示す。図4に示すように、混合物(Blend)A、B、及び、Cにおいて、コナガコマユバチは、良好な選好性を示し、コナガコマユバチの有意な誘引性が認められた。
したがって、上記各種化合物を所定の比率で混合することにより、コナガコマユバチを誘引することができることが明らかになった。
また、混合物A〜C間で、コナガコマユバチの誘引性に差があるかを検討するため、混合物A対混合物C、及び、混合物A対混合物Bにおけるコナガコマユバチの誘引性を検討した。その結果を、図5に示す。
図5に示すように、混合物A〜C間でコナガコマユバチの誘引性の差が認められなかった。したがって、コナガコマユバチの植物由来の天敵誘引成分としては、上記混合物Aが適当であろうと考えられる。以下の実施例では、主に上記混合物Aを用いた。
〔実施例4〕コナガコマユバチの誘引濃度の検討
続いて、上記実施例3においてコナガコマユバチの誘引性が認められた混合物Aについて、当該混合物Aに含まれる化合物の濃度を変化させた場合での、コナガコマユバチの誘引性を調べた。具体的には、上記混合物Aを、TEC(溶媒)にて10倍、10倍、10倍、10倍、10倍、及び、10倍に希釈したときの、健全コマツナ株に対するコナガコマユバチの誘引性を調べた。
その結果を図6に示す。図6に示すように、混合物Aを10倍、あるいは、10倍希釈した場合、コナガコマユバチの誘引性が認められなかった。しかしながら、混合物Aを10倍、10倍、10倍、または、10倍希釈した場合、コナガコマユバチは選好性を示し、コナガコマユバチの誘引性が認められた。そして、混合物Aを10倍希釈したとき、最も高いコナガコマユバチの誘引性が認められた。
また、コナガコマユバチの誘引性の最も高い10希釈の混合物Aを、コナガの食害を受けたコマツナ被害株に付加したところ、コナガコマユバチは、コマツナ被害株単独よりも有意に選好した。これにより、この混合物Aを処理することで、コナガコマユバチの被害株に対する誘引性がさらに高まることが明らかになった。
〔実施例5〕混合物A(10倍希釈)中でのコナガコマユバチの株定位
次に、上記混合物Aの植物由来の天敵誘引成分が、コナガコマユバチにおける被害株に対する誘引性にどのような影響を与えるのかを検討した。コナガコマユバチは、コナガの食害を受けた株(被害株)に対して誘引する。そこで、上記混合物Aの存在下で、コナガ
コマユバチの被害株に対する誘引性がどのようになるかを検討した。
具体的には、上述の選択室実験により、混合物A(10倍希釈)をサンプルとして取り付けた健全株と、コナガ被害株とで、コナガコマユバチの誘引性を調べた。その結果を図7に示す。
図7に示すように、健全株に混合物A(10倍希釈)が取り付けられているにもかかわらず、コナガコマユバチは、コナガ被害株に対して選好性を示し、優位な誘引性が認められた。このことにより、植物由来の天敵誘引成分は、最終的な被害株に対する天敵の定位に影響を与えないことが明らかになった。
〔実施例6〕人工気象室におけるコナガコマユバチの誘引性
上述の実施例では、コナガコマユバチの誘引性に関しては、選択室(30×35×25cm)のような小スケールで実験を行なってきた。そこで、本実施例では、上記混合物Aの天敵誘引組成物の野外における有効性を確認するために、野外の環境に近づけた半野外環境におけるコナガコマユバチの誘引性について調べた。
まず、本実施例において半野外環境を作り出す人工気象室(バイオトロン)の概略構成図8を参照して説明する。図8(a)は、バイオトロン入り口から見たバイオトロン内部の写真である。図8(b)は、バイオトロン全体の平面図であり、図8(c)は、バイオトロン内に設けられたトラップの平面図である。
図8(b)に示すように、バイオトロン11内には、入り口12と対向してトラップ6、及び、トラップ7が配置されている。バイオトロン11の側壁には蚊帳が取り付けられており、トラップ6及び7の上には蛍光灯が設けられている。また、トラップ6及び7には、トラップ内の湿度を制御する湿度制御手段(図示せず)、及び、トラップ内の温度を制御する温度制御手段(図示せず)が設けられている。また、バイオトロン11内には、室内の風向きを制御する手段が設けられている。なお、このバイオトロン11の寸法は、3m×2.8m×2.2mである。
また、図8(c)に示すように、トラップ6及び7には、植物体株8が設置されている。また、トラップ6及び7においてバイオトロン11奥側には、ホリバー粘着シート8が設けられている。
次に、上記トラップの内部を図9を参照して、説明する。図9(a)は、バイオトロンの奥側から見たトラップ内部の写真である。図9(b)は、バイオトロンの奥側から見たトラップの正面図であり、図9(c)は、バイオトロン入り口から見たトラップの正面図である。
図9(b)に示すように、トラップ6及び7は、バイオトロン11の奥側では、上半分が蚊帳で閉められており、下半分が開放されている構成である。この開放部分から、コナガコマユバチがトラップ6及び7に侵入する。そして、図9(b)及び(c)に示すように、トラップ内部には、植物体8であるコマツナが配置されている。
このようなバイオトロン11内に産卵未経験のコナガコマユバチ20匹を放飼し、コナガコマユバチがトラップ6及び7の何れのトラップに侵入するかで、コナガコマユバチの誘引性を評価した。トラップに侵入したコナガコマユバチの数はトラップ内のホリバー粘着シート8により捕獲された数とした。すなわち、本実施例においては、誘引性を、トラップ6及び7其々のホリバー粘着シートに捕獲されたコナガコマユバチ数の相対比として評価した。なお、実験条件として、バイオトロン11内を、トラップ6及び7の上の蛍光
灯の明るさ5500lux、湿度60%、温度25℃の環境に設定した。
まず、トラップ6及び7の何れかに、植物体8としてコマツナ健全株を、もう一方にコナガの食害を受けたコナガ株を配置した状態で、産卵未経験のコナガコマユバチ20匹を放飼し、ホリバー粘着シート8に捕獲された個体数を調べた。その結果を表2に示す。
Figure 0004524380
表中の数値は延べ数である。表2に示すように、3回繰り返して実験を行なったが、何れもコナガ株を配置したトラップで、コナガコマユバチが多く捕獲された。これにより、コナガコマユバチの、コナガ株に対する誘引性が確認された。
次に、トラップ6及び7の何れかに、0.01%サンプルを取り付けたコマツナ健全株(以下、植物由来の天敵誘引成分設置株とする)を、もう一方にサンプルの溶媒であるTECを取り付けたコマツナ健全株(以下、未設置株とする)を配置した状態で、上記と同様の実験を行なった。その結果を表3に示す。なお、0.01%サンプルとは、上記実施例4において混合物AをTECにて10希釈したもののことである。
Figure 0004524380
なお、表3において、カッコ内の数字は、トラップの横に付着したコナガコマユバチの数を示す。また、表中の灰色部分は、バイオトロン11入り口10に対して向かって左に配置したトラップ6における結果を示している。
表3に示すように、植物由来の天敵誘引成分設置株を配置したトラップ(表中0・01%)で、コナガコマユバチの捕獲数が有意に高かった。また、この傾向は、植物由来の天敵誘引成分設置株をトラップ6及び7の何れに配置しても同様であった。このことにより
、人工気象室においても、コナガコマユバチの、植物由来の天敵誘引成分設置株に対する誘引性が確認された。
〔実施例7〕
本実施例では、トラップ6及び7の何れかに、上記植物由来の天敵誘引成分設置株を、もう一方に、サンプルの溶媒であるTECを取り付けたコマツナ食害株(以下、未設置食害株とする)を配置した状態で、実施例6と同様の実験を行なった。その結果を表4に示す。
Figure 0004524380
なお、表4において、カッコ内の数字は、トラップの横に付着したコナガコマユバチの数を示す。また、表中の灰色部分は、バイオトロン11入り口10に対して向かって左に配置したトラップ6における結果を示している。
表4に示すように、植物由来の天敵誘引成分設置株(表中の健全+0.01%)と未設置食害株(表中の食害+TEC)とを比較すると、コナガコマユバチは、植物由来の天敵誘引成分設置株を配置したトラップで有意に捕獲されることはなかった。また、この傾向は、植物由来の天敵誘引成分設置株をトラップ6及び7の何れに配置しても同様であった。
このことは、植物由来の天敵誘引成分設置株に取り付けた植物由来の天敵誘引成分の誘引性が、食害を受けた株が放出する植物由来天敵誘引物質の誘引性に匹敵することを示している。
上述の実施例6及び7の結果より、人工気象室レベルでの混合物Aの植物由来の天敵誘引成分の誘引性が確認された。
〔実施例8〕
本実施例では、本発明の天敵誘引成分の応用利用例である天敵トラップについて以下に説明する。本実施例は、天敵トラップを用いて、複数の条件下で寄生蜂の捕捉効果について実験を行ったものである。
図10は、天敵トラップの一実施例を示すものであり、天敵トラップ10の構造の概略を示した模式図である。図10に示すように、本実施例の天敵トラップ10は、天敵誘引成分14を含む5本の天敵誘引ボトル11と、天敵を捕捉する捕捉手段12と、スタンド13とを備えている。なお捕捉手段12には、既述の「ホリバー粘着シート」を採用した。
ここで各天敵誘引ボトル11は、天敵誘引成分として、請求項9に示した混合物をTECで10倍希釈した1%サンプルを25g備えている。また、各天敵誘引ボトル11は、開口部を内外に貫通する芯を備えると共に、芯と開口部との隙間は密封されている。これによって、ボトル内部の天敵誘引成分13は、芯を経由することによってのみ外部に放散されるようになっており、徐放性を獲得している。
本実施例の捕捉手段12は、寄生蜂を誘引するために黄色のものとなっている。
スタンド13は、懸吊棒と、金網からなる天板とを備えている。本実施例では、スタンド13の懸吊棒には1枚の捕捉手段12が懸吊され、天板には5本の天敵誘引ボトル13が載置されている。図10に示すように、捕捉手段12の上方に天敵誘引ボトルを備えることによって、天敵誘引成分14が捕捉手段12に効率的に曝露されるようになっている。なお、図10に示すスタンド13は一つの実施例にすぎず、天敵誘引成分及び捕捉手段を設置できるようなものであれば、どのような形態であってもよい。
上記の天敵トラップ10の有効性を以下に示す実験によって判定した。
上記の天敵トラップ10と、上記の天敵トラップ10から全ての天敵誘引ボトル11を除いた対照トラップとのそれぞれについて、寄生蜂の誘引数を測定した。なお、測定実験は、3.5メートル四方で高さ2.7メートルの恒温室内で行った。恒温室内は、室温が23℃〜25℃で相対湿度が30%程度に保たれており、照度は700〜900ルクスである。この恒温室内に既交尾の寄生蜂のメス10匹を放飼し、6時間後の捕獲数を測定す
る工程を5回反復し、5回の捕獲数の平均値を算出する工程を、対照トラップ及び本実施例の天敵トラップについて実施した。
図11は、対照トラップ及び本実施例の天敵トラップのそれぞれについての測定結果を示す図である。図11に示すように、天敵誘引ボトルを備えていない対照トラップは、寄生蜂の捕捉数の平均値が2匹を若干上回る程度であったのに対し、本実施例の天敵トラップでは、捕捉数の平均値が4匹に達し、その効果は実に2倍程度にも向上した。
以上のように、本実施例の天敵トラップを用いることにより、寄生蜂を効果的に捕捉できることが示された。
〔実施例9〕
本実施例では、上記実施例8に示した天敵トラップの変化形として、(1)金網無しで天敵誘引成分無し、(2)銀色の金網有りで天敵誘引成分無し、(3)黄色の金網有りでコナガ食害コマツナ1株設置、(4)黄色の金網有りで4本の上記天敵誘引ボトル設置の4つの形態のトラップについて検討した。
なお、「金網有り」とは、銀色又は黄色の金網(選択的遮断手段)によって図10の捕捉手段12を被包したものであり、「コナガ食害コマツナ設置」とは、コナガ幼虫に食害されているコマツナをネットで被包して、捕捉手段12の周辺に載置したものであり、「天敵誘引ボトル設置」とは、スタンド13の天板上にネットで被包した4本の天敵誘引ボトル11を載置したものである。上記(1)〜(4)のトラップのうち、(2)〜(4)が天敵誘引成分を備えた天敵トラップである。
各トラップは大型選択箱内に設置した。この大型選択箱内は、室温が23℃〜25℃で相対湿度が30%程度に保たれており、照度は2700〜11000ルクスである。この大型選択箱内に既交尾の寄生蜂のメス10匹を放飼し、6時間後の捕獲数を測定する工程を(1)及び(3)については5回反復し、(2)及び(4)については6回反復し、捕獲数の平均値を算出する工程を、(1)〜(4)のそれぞれのトラップについて実施した。
図12は、(1)〜(4)のトラップのそれぞれについての測定結果を示す図である。図の縦軸は捕獲天敵数を示し、(1)〜(4)の条件下での捕獲天敵数を平均+標準偏差で示した。図12に示すように、(1)金網無し天敵誘引成分無しの結果は6匹を少し上回る程度であったのに対し、(1)の捕捉手段12を銀色の金網で被包した変化形である(2)では、3匹台にまで低下した。この結果から、銀色の金網で捕捉手段12を被包すると捕捉効果が低下することが示された。しかしながら、金網を黄色とし、天敵誘引成分を放散するコナガ食害コマツナを備えた(3)、及び、同様に金網を黄色とし、天敵誘引ボトルを備えた(4)では、それぞれ7匹台、6匹台と、捕捉効率が大きく向上した。これら、(1)と(2)との間における結果の差異、(2)と(3)とにおける結果の差異、及び(2)と(4)とにおける結果の差異は、チューキー法による有意差検定により、危険率5%以下で有意であることが示された。
以上のように、本実施例の天敵トラップでは、本発明の天敵誘引成分を用い、黄色の金網で捕捉手段12を被包することによって効果的に寄生蜂を捕捉できることが示された。
〔実施例10〕
本実施例では、本発明の害虫付着抑制剤及び害虫付着抑制方法の一実施例について以下に説明する。本実施例は、害虫であるハモグリバエ類が天敵誘引成分を忌避するかどうかを調査した実験である。
ハモグリバエ類の成虫は、コマツナを含むアブラナ科植物にマインを形成することが知られている。マインとは、ハモグリバエ類等の潜葉虫による食痕のことであり、このマインの数は、ハモグリバエ類の付着の頻度と正の相関関係がある。そこで、天敵誘引成分を設置している処理区と、設置していない対照区とにおいてマインの数をそれぞれ計測し、ハモグリバエ類が天敵誘引成分を忌避するかどうかを調査した。
まず、マインを形成する対象となるコマツナを20株程度有するプランターを用意した。対照区には、このコマツナプランターのみを設置した。一方、処理区には、コマツナプランターと共にコナガ食害コマツナを有するプランターを設置したもの(実験番号1〜5)、及び、コマツナプランターに実施例8の天敵誘引ボトルを設置したもの(実験番号6〜11)を準備した。処理区及び対照区は15メートル程度離し、互いに影響を及ぼさないようにした。
上記コナガ食害コマツナは、コナガ幼虫100頭をコマツナに接種したものである。コナガ食害コマツナは、コナガがコマツナを食害することによって天敵誘引成分が放出されるようになっている。また、天敵誘引ボトルを用いた処理区では、1本の天敵誘引ボトルをプランター中央部の土に突き刺す形で固定した。また、天敵誘引ボトルには、請求項9に示した混合物をTECにて10倍希釈したものが25g含まれている。
上記の処理区及び対照区のプランターの組を、京都府美山町内の屋外に設置し、設置後3〜21日後に各プランターにおけるハモグリバエ類のマイン数を計測した。以上の実験を合計11回行った。各実験番号と実験条件の対応を表5に示す。
Figure 0004524380
上記の実験結果を図13及び表6に示す。
Figure 0004524380
図13及び表6は、ハモグリバエ類のマイン数の計測結果を示した図である。図13において、縦軸は計測されたマイン数を対数変換した値を示し、横軸は実験番号を示す。それぞれの実験番号は、表5の条件及び表6の結果に対応する。また、表6の判定欄においては、処理区においてマイン数が少なかったものについて○を付した。この○を付した実験番号の実験結果は、ハモグリバエ類が天敵誘引成分を忌避することを示唆している。
処理区においてコナガ食害コマツナを設置した実験では、図13及び表6の実験番号1〜5の結果が示すように、5例中4例の実験結果において、処理区でハモグリバエ類のマイン数が減少することが示された。以上の結果から、ハモグリバエ類はコナガ食害コマツナが放出する天敵誘引成分を忌避する傾向があることが検証された。
また、処理区において天敵誘引成分を設置した実験では、図13及び表6の実験番号6〜11が示すように、6例中全ての調査結果において、処理区でハモグリバエ類のマイン数が減少することが示された。また、t検定により有意差を検定したところ、危険率0.028で有意差があることが明らかになった。以上の結果から、ハモグリバエ類は天敵誘引ボトルが放出する天敵誘引成分を有意に忌避していることが示唆された。
また、このようなハモグリバエ類には、少なくともナモグリバエ(Chromatomyia horticola)が含まれていることを確認した。
なお、本実施例における天敵誘引成分は、本発明の害虫忌避成分の一実施例に相当する。また、本実施例における天敵誘引ボトルは、本発明の害虫付着抑制剤の一実施例に相当する。また、本実施例における、ハモグリバエ類のマイン数を計測するコマツナプランターと共にコナガ食害コマツナを載置する工程は、本発明の害虫付着抑制方法の一実施例に相当する。
〔実施例11〕
本実施例では、本発明の害虫付着抑制剤及び害虫付着抑制方法の一実施例について以下に説明する。本実施例は、害虫であるカブラハバチ類が天敵誘引成分を忌避するかどうかを調査した実験である。
カブラハバチ類は、コマツナを含むアブラナ科植物に産卵することが知られている。この産卵数は、カブラハバチ類の付着の頻度と関係する。そこで、天敵誘引成分を設置している処理区と、設置していない対照区とにおいてカブラハバチ類の卵及び幼虫の数をそれぞれ計測し、カブラハバチ類が天敵誘引成分を忌避するかどうかを調査した。
まず、産卵する対象となるコマツナを20株程度有するプランターを用意した。処理区には、実施例8の天敵誘引ボトルを有するコマツナプランターを設置した。一方、対照区には、このコマツナプランターのみ、又はTECボトルを有するコマツナプランターを設置した。処理区及び対照区は15メートル程度放し、互いに影響を及ぼさないようにした。
ここで、天敵誘引ボトルを用いた処理区では、1本の天敵誘引ボトルをプランター中央部の土に突き刺す形で固定した。また、天敵誘引ボトルには、請求項9に示した混合物をTECにて10倍希釈したものが25g含まれている。一方、対照区におけるTECボトルは、内部に天敵誘引成分の代わりに溶媒であるTECのみが25g含まれている以外は、処理区における天敵誘引ボトルと同様のものである。また、TECボトルの設置形態は処理区と同様である。
上記の各組のプランターを、京都大学構内実験圃場又は美山圃場の屋外に設置し、設置後3〜21日後にそれぞれのプランターにおけるカブラハバチ類の卵及び幼虫の数を計測した。以上の実験を、構内実験圃場においては6回行い(実験番号1〜6)、美山圃場においては7回行った(実験番号7〜13)。各実験番号と実験条件の対応を表7に示す。
Figure 0004524380
上記の実験結果を図14及び表8に示す。
Figure 0004524380
図14及び表8は、カブラハバチ類の卵及び幼虫の数の計測結果を示した図である。図14において、縦軸は計測された卵及び幼虫の合計を対数変換した値を示し、横軸は実験番号を示す。それぞれの実験番号は、表7の条件及び表8の結果に対応する。また、表8の判定欄においては、処理区において、卵及び幼虫の合計が少なかったものについて○を付した。この○を付した実験番号の実験結果は、カブラハバチ類が天敵誘引成分を忌避することを示唆している。
図14及び表7の実験番号1〜13の結果が示すように、13例中11例の実験結果において、処理区でカブラハバチ類の卵及び幼虫の合計が減少することが示された。また、t検定により有意差を検定したところ、危険率0.047で有意差があることが明らかになった。以上の結果から、カブラハバチ類は天敵誘引ボトルが放出する天敵誘引成分を忌避していることが示唆された。また、このようなカブラハバチ類には、少なくともカブラハバチ(Athalia rosae ruficornis)及びセグロカブラハバチ(Athalia lugens infumata)が含まれていることを確認した。
なお、本実施例における天敵誘引成分は、本発明の害虫付着抑制成分の一実施例に相当する。また、本実施例における天敵誘引ボトルは、本発明の害虫付着抑制剤の一実施例に相当する。
本発明の植物由来の天敵誘引成分は、害虫駆除のための農薬を低減させることができ、それらの環境に対する悪影響を避けることができるという利点を有している。それゆえ、本発明の植物由来の天敵誘引成分は、農業的、社会的に大きな波及効果が期待できる。本
発明の植物天敵誘引組成物の産業上の利用分野としては、農業、農薬(特に生物農薬)関連産業、または、香料製造関連産業が挙げられる。
コナガ食害キャベツから放出される化合物の放出量を示すグラフである。 実施例2で用いた選択室実験の方法を示す説明図である。 図1で同定した放出化合物の単独成分におけるコナガコマユバチの誘引性を調査した結果を示すグラフである。 図1で同定した放出化合物の混合物におけるコナガコマユバチの誘引性を調査した結果を示すグラフである。 混合物A〜C間におけるコナガコマユバチの誘引性を調査した結果を示すグラフである。 図1で同定した放出化合物の混合物の濃度を変化させた場合におけるコナガコマユバチの誘引性を調査した結果を示すグラフである。 混合物A(10倍希釈)中でのコナガコマユバチの株定位性を調査した結果を示すグラフである。 実施例5で用いたバイオトロン(人工気象室)の概略構成を示す模式図である。(a)は、バイオトロン入り口から見たバイオトロン内部の写真である。(b)は、バイオトロン全体の平面図であり、(c)は、バイオトロン内に設けられたトラップの平面図である。 図8のバイオトロンに設けられたトラップの概略構成を示す図である。(a)は、バイオトロンの奥側から見たトラップ内部の写真である。(b)は、バイオトロンの奥側から見たトラップの正面図であり、(c)は、バイオトロン入り口から見たトラップの正面図である。 本実施例にかかる天敵トラップの構成を概略的に示した模式図である。 本実施例にかかる天敵トラップと対照トラップを用いて、天敵トラップの効果を測定した測定結果のグラフを示す図である。 本実施例にかかる天敵トラップと対照トラップを用いて、天敵トラップの効果を測定した測定結果のグラフを示す図である。 害虫付着抑制剤の害虫忌避効果を示すものであり、コマツナプランターに付着したハモグリバエのマイン数を計測した計測結果のヒストグラムを示す図である。 害虫付着抑制剤の害虫忌避効果を示すものであり、コマツナプランターに付着したカブラハバチの個体数を計測した計測結果のグラフを示す図である。
10 天敵トラップ
12 捕捉手段
14 天敵誘引成分

Claims (17)

  1. コナガの天敵であるコナガコマユバチを誘引する、以下の(a)〜(c)の何れかに記載の植物由来の天敵誘引成分。
    (a)n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
    (b)n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート、及び、ミルセンを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
    (c)n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテート、及び、ショウノウを含んでなる植物由来の天敵誘引成分。
  2. 上記n‐ヘプタナール、サビネン、(+)α‐ピネン、(−)α‐ピネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートが、2:2:1:1:2の重量比率で含んでなることを特徴とする請求項に記載の植物由来の天敵誘引成分。
  3. 上記n‐ヘプタナール、サビネン、及び、(Z)‐3‐ヘキセニルアセテートの濃度が、それぞれ1×10−9〜1×10−5μg/μl、(+)α‐ピネン、及び、(−)α‐ピネンがそれぞれ、5×10−10〜5×10−6μg/μlであることであることを特徴とする請求項に記載の植物由来の天敵誘引成分。
  4. 請求項1〜の何れか1項に記載の植物由来の天敵誘引成分を含んでなることを特徴とする植物用害虫防除剤。
  5. コナガによる食害を防ぐために使用されることを特徴とする請求項に記載の植物用害虫防除剤。
  6. アブラナ科植物に対して使用されることを特徴とする請求項4または5に記載の植物用害虫防除剤。
  7. 請求項4〜6の何れか1項に記載の植物用害虫防除剤を植物に曝露することを特徴とする植物の害虫防除または予防方法。
  8. 請求項1〜の何れか1項に記載の植物由来の天敵誘引成分と、当該天敵誘引成分によって誘引される天敵を捕捉する捕捉手段とを備えていることを特徴とする天敵トラップ。
  9. 上記捕捉手段が、粘着シートを備えていることを特徴とする請求項に記載の天敵トラップ。
  10. 上記捕捉手段が、L*a*b*表色系色度において、20≦L*≦100、かつ、−30≦a*≦30、かつ、b*≧20である色を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の天敵トラップ。
  11. 選択的遮断手段をさらに備えていることを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の天敵トラップ。
  12. 上記選択的遮断手段が、所定の大きさの開口部を有するものであることを特徴とする請求項11に記載の天敵トラップ。
  13. 上記選択的遮断手段が、L*a*b*表色系色度において、20≦L*≦100、かつ、−30≦a*≦30、かつ、b*≧20である色を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の天敵トラップ。
  14. 請求項1〜の何れか1項に記載の植物由来の天敵誘引成分からなり、かつ、害虫が忌避し、
    該害虫が、ハモグリバエ類又はカブラハバチ類である
    ことを特徴とする害虫忌避成分。
  15. 請求項14に記載の害虫忌避成分を含むことを特徴とする害虫付着抑制剤。
  16. 請求項15に記載の害虫付着抑制剤を植物に曝露する工程を含むことを特徴とする害虫付着抑制方法。
  17. 上記曝露される植物が、アブラナ科に属する植物であることを特徴とする請求項16に記載の害虫付着抑制方法。
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