JP4524126B2 - 超電導sfq回路 - Google Patents

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Description

本発明は、超電導体を用いた単一磁束量子回路に関し、詳しくはグランドプレーンにグランド電位が接続された単一磁束量子回路に関する。
超伝導体の巨視的量子効果として、超伝導体でループを形成するとループ内の磁束が量子化される。このように超伝導体の中で量子化された磁束の最小単位のことをSFQ(Single Flux Quantum:単一磁束量子)と呼ぶ。磁束量子を情報担体とする論理回路がSFQ回路であり、2個のジョセフソン接合を含む超伝導ループに磁束量子が入った状態を論理”1”、磁束量子が入っていない状態を論理”0”に対応させる。
SFQ回路の基本構造である超伝導ループを多数個接続すると,超伝導体とジョセフソン接合で構成されるはしご型線路ができる。これがJTL(Josephson Transmission Line:ジョセフソン伝送線)であり、磁束量子を伝搬させることができる。即ち、あるループで発生したSFQはその隣のジョセフソン素子のスイッチングを引き起こし、隣のループにSFQが発生する。この連鎖反応によりSFQが伝播していく。これによりフリップフロップ等の様々な論理回路をSFQ回路により形成することができる。このようなSFQ回路は、例えば、高速信号を測定する超伝導サンプラや、高速信号や微小信号用のA/D変換器等のアナログ要素を含む回路等、様々なデイジタル処理回路への応用が期待される。
超電導SFQ回路においては、情報担体として極めて時問幅の短いパルスが伝播していくので、この時間幅の短いSFQパルスを常温の半導体論理回路で検出可能な電圧パルスに変換する必要がある。そのための出力回路としては、ACバイアスで動作するラッチ回路や高電圧ドライバゲートが使用される。
超電導回路においては、グランドプレーンと呼ばれる超電導の薄膜層を最下部層や最上部層に設ける構成とすることで、超電導配線のインダクタンスを減らし、且つ同一チップ内の隣接した回路問のクロストークを低減している。このグランドプレーン層は、一般的には回路面の全面に設けられる。
ジェー・エックス・プリジビズ、他4名(J.X.Przybysz, et. al.)著、 「インターフェイス・サーキッツ・フォー・インプット・アンド・アウトプット・オブ・ギガビット・パー・セカンド・データ(Interface Circuits for Input and Output of Gigabit per Second Data)」、 インターナショナル・スーパーコンダクティブ・エレクトロニクス・コンファレンス(International Superconductive Electronics Conference (ISEC’95))、8-3, p. 304−306 ケー・ケー・リカレフ、ブイ・ケー・セメノフ(K. K. Likharev and V. K. Semenov)著、「RSFQロジック/メモリ・ファミリー:ア・ニュー・ジョセフソン・ジャンクション・テクノロジー・フォー・サブ−テラヘルツ−クロック−フレケンシー・デジタル・システムズ(RSFQ logic/Memory Family: A New Josephson-Junction Technology for Sub-Teraherts-Clock-Frequency Digital Systems)」、アイトリプルイー・トランザクション・オン・アプライド・スーパーコンダクティビティー(IEEE Trans. on Applied Superconductivity)、第1巻、第1号、1991年3月、p.3−28
上記のようにグランドプレーン層は回路面の全面に設けられるので、出力回路等においてACバイアスを使用すると、寄生インダクタンスや寄生抵抗の働きによりグランド電位が変動し、これが隣接する超電導SFQ回路の動作に影響を与えるという問題がある。
以上を鑑みて本発明は、一方の超電導SFQ回路のグランド電位の変動により他方の超電導SFQ回路の動作が影響を受けることのない超電導SFQ回路を提供することを目的とする。
本発明による超電導SFQ回路は、第1の超電導SFQ回路と、該第1の超電導SFQ回路のグランド側に接続される第1のグランドプレーンと、第2の超電導SFQ回路と、該第2の超電導SFQ回路のグランド側に接続される第2のグランドプレーンと、該第1の超電導SFQ回路と該第2の超電導SFQ回路との間を接続する少なくとも1段の分離用超電導SFQ回路と、該少なくとも1段の分離用超電導SFQ回路のグランド側に接続される少なくとも1つのグランドプレーンと、該第1のグランドプレーン、該少なくとも1つのグランドプレーン、及び該第2のグランドプレーンの間を接続するインダクタンスを有する配線を含み、前記分離用超電導SFQ回路は直流であるDCバイアスで駆動されることを特徴とする。
インダクタンスのインピーダンスは高周波になる程大きくなる。従って高周波になる程、隣接する回路間でのグランドの分離状態が良好になる。即ち、第1の超電導回路に供給する交流(AC)バイアス電流によって第1の超電導回路のグランド電位が変動しても、その変動は上記インダクタンスにより吸収され、第2の超電導回路のグランド電位には殆ど影響を及ぼさない。
これにより安定した動作を実現する超電導SFQ回路を提供することができる。
本発明においては、第1の超電導SFQ回路ブロックと第2の超電導SFQ回路ブロックとの間を接続するように、SFQパルスを伝える機能を有し且つグランド変動をアイソレーションするための分離用超電導SFQ回路を1段或いは複数段配置する。第1の超電導SFQ回路ブロック、分離用超電導SFQ回路の各段、及び第2の超電導SFQ回路ブロックには、それぞれ対応するグランドプレーンが設けられ、これらのグランドプレーン間は数pH程度以上のインダクタンスを有するような幅狭のグランドラインで接続する。これにより、第1の超電導SFQ回路ブロックと第2の超電導SFQ回路ブロックとの間で、一方から他方に流れ込むAC信号を抑制する。
図1は、本発明の原理を説明するための図である。
図1において、チップ10は、超電導回路11、超電導回路12、及び複数n段の超電導SFQ回路13−1乃至13−nを含む。超電導回路11と超電導回路12との間は超電導SFQ回路13−1乃至13−nにより接続され、超電導SFQ回路13−1乃至13−nをSFQ(単一磁束量子)パルスが伝播する。超電導回路11はバイアスB1及びグランド電位に接続され、超電導回路12はバイアスB2及びグランド電位に接続される。ここでバイアスB1及びB2は、ACバイアス又はDCバイアスであるが、ACバイアスの影響を削減するという本発明の目的上、少なくともB1及びB2の一方はACバイアスである。
超電導SFQ回路13−1乃至13−nは、例えばジョセフソン伝送線路(JTL:Josephson Transmission Line)であり、DCバイアスDC+及びDC−に接続される。図1では、一段の超電導SFQ回路13−x(x=1,2,・・・,n)はDCバイアスDC+に抵抗Rを介して接続され、DCバイアスDC−には直接に接続される。しかしこの部分の接続は上記構成に限定されるものではなく、後の実施例で説明するように、DC+及びDC−側の何れにおいても、抵抗及び/又はインダクタンスを介しての接続としてよく、また他の回路を介してバイアスに接続する構成としてもよい。図1において、超電導回路11のグランド、超電導回路12のグランド、及び超電導SFQ回路13−1乃至13−nのマイナス側DCバイアスDC−は、共通のグランド電位に設定される。なお超電導回路11とグランド電位間の寄生抵抗及び寄生インダクタンスを抵抗20−1及びインダクタンス21−1で示し、超電導回路12とグランド電位間の寄生抵抗及び寄生インダクタンスを抵抗20−2及びインダクタンス21−2で示してある。
超電導SFQ回路13−xは、ジョセフソン接合14−x、グランドプレーン15−x、及び隣接する回路間を接続するインダクタンスLUx及びLLxを含む。インダクタンスLUxは通常の配線層で構成され、インダクタンスLLxはグランドプレーン層或いは他の層で隣接するグランド間を接続するよう構成される。これらのインダクタンスLUx及びLLxは、数pH程度以上のインダクタンスを有するように線幅を細くした接続配線により実現される。
インダクタンスのインピーダンスは高周波になる程大きくなる。従って高周波になる程、隣接する回路間でのグランドの分離状態が良好になる。即ち、超電導回路12に供給する交流(AC)バイアス電流によって超電導回路12のグランド電位が変動しても、その変動は複数のインダクタンスLU1乃至LUnにより吸収され、超電導回路11のグランド電位には殆ど影響を及ぼさない。
SFQ信号の伝搬に用いるJTLは、動作マージンが大きいので、グランド電位の変動に対しては影響を受け難い。入出力間の遅延時間がさほど問題にならない回路の場合、超電導SFQ回路13−1乃至13−nの段数nを、原理的にはグランド変動を充分に吸収するに必要なだけ幾らでも増やすことが可能である。
なおSFQパルスを伝播させるためには、SFQ回路の基本構造である超伝導ループのインダクタンスLとジョセフソン接合の臨界電流値Icとの積が磁束量子の大きさΦ0よりも小さく、更に好ましくはΦ0/2よりも小さい必要がある。Φ0は2×10−15ウェーバーであるので、臨界電流値Icを例えば0.1mAとすると、インダクタンスLは20pH或いは更に好ましくは10pH以下に設定する必要がある。この条件を満たす範囲で、インダクタンスLUx及びLLxの上限を設定するが、下限としては実質的にゼロでないインダクタンスを実現すればよい。なお実際上、配線によりインダクタンスを構成する場合、最低でも数pH程度のインダクタンスが発生してしまうので、例えば1pHのインダクタンスを実現することは殆ど不可能である。従って、実質的には、数pHから10pH程度の値にインダクタンスを設定することになる。
以下に、本発明の実施例を添付の図面を用いて詳細に説明する。
図2は、本発明による超電導SFQ回路の第1の実施例を示す図である。図2において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。
図2において、本発明による超電導SFQ回路であるチップ10Aは、超電導回路11A、超電導回路12A、及び複数n段の超電導SFQ回路13A−1乃至13A−nを含む。超電導回路11Aと超電導回路12Aとの間は超電導SFQ回路13A−1乃至13A−nにより接続される。バイアス及びグランドの接続は図1の原理図と同様である。超電導回路11Aは、超電導SFQ回路31及びグランドプレーン33−1を含み、超電導回路12Aは、例えば出力回路である超電導SFQ回路32及びグランドプレーン33−2を含む。なお超電導回路11A及び12Aについて図示する回路構成は模式的なものであり、具体的な回路の詳細を示すものではない。
超電導SFQ回路13−1乃至13−nは、ジョセフソン伝送線路(JTL:Josephson Transmission Line)である。超電導SFQ回路13−x(x=1,2,・・・,n)は、グランドプレーン15−x、インダクタンス16−x、ジョセフソン接合17−x、ジョセフソン接合18−x、及び隣接する回路間を接続するインダクタンスLUx及びLLxを含む。超電導SFQ回路13−xに、2つのジョセフソン接合17−x及び18−xとインダクタンス16−xとを含めることで、JTLの2段構成となっている。インダクタンスLUxは通常の配線層で構成され、インダクタンスLLxはグランドプレーン層或いは他の層で隣接するグランド間を接続するよう構成される。これらのインダクタンスLUx及びLLxは、数pH程度以上のインダクタンスを有するように線幅を細くした接続配線により実現される。
インダクタンスのインピーダンスは高周波になる程大きくなるので、超電導回路12Aに供給するACバイアス電流によって超電導回路12Aのグランド電位が変動しても、その変動は複数のインダクタンスLU1乃至LUnにより吸収され、超電導回路11Aのグランド電位には殆ど影響を及ぼさない。なおSFQ信号の伝搬に用いるJTLは、動作マージンが大きいので、グランド電位の変動に対しては影響を受け難い。
図3は、本発明による超電導SFQ回路の第2の実施例を示す図である。図3において、図2と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。
図3において、本発明による超電導SFQ回路であるチップ10Bは、超電導回路11A、超電導回路12A、及び複数n段の超電導SFQ回路13A−1乃至13A−nを含む。超電導SFQ回路13−1乃至13−nは、ジョセフソン伝送線路(JTL:Josephson Transmission Line)である。超電導SFQ回路13−x(x=1,2,・・・,n)は、グランドプレーン15−x、インダクタンス16−x、ジョセフソン接合17−x、ジョセフソン接合18−x、及び隣接する回路間を接続するインダクタンスLUx及びLLxを含む。
インダクタンスのインピーダンスは高周波になる程大きくなるので、超電導回路12Aに供給するACバイアス電流によって超電導回路12Aのグランド電位が変動しても、その変動は複数のインダクタンスLU1乃至LUnにより吸収され、超電導回路11Aのグランド電位には殆ど影響を及ぼさない。
図3の第2の実施例の回路構成では、図2の第1の実施例の回路構成と比較して、超電導SFQ回路13−xのDCバイアスDC+側に、抵抗Rに加えてインダクタンスLを設けると共に、DCバイアスDC−側にインダクタンスLGx及び抵抗RGxを設けたことを特徴とする。これらのインダクタンスは、例えば幅が狭く長い配線をジグザグに配置することで実現し、抵抗は、例えばモリブデン薄膜を用いることで実現する。
図3のようにグランド側にインダクタンスLGx及び抵抗RGxを設けることにより、超電導回路12AからJTL(超電導SFQ回路13−1乃至13−n)に漏れるACバイアスの変動が低減される。図2の構成のようにJTLのグランドプレーン15−1乃至15−nを直接にグランドに接続した場合には、JTLを介した経路の方がグランドへ近いために、ACバイアスの変動の漏れによりグランドが変動してしまう。図3の構成では、このようなACバイアスの変動の漏れを抑制することができる。
図4は、本発明による超電導SFQ回路の第3の実施例を示す図である。図4において、図3と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。
図4において、本発明による超電導SFQ回路であるチップ10Cは、超電導回路11A、超電導回路12C、及び複数n段の超電導SFQ回路13A−1乃至13A−nを含む。超電導SFQ回路13−1乃至13−nは、ジョセフソン伝送線(JTL:Josephson Transmission Line)である。超電導SFQ回路13−x(x=1,2,・・・,n)は、グランドプレーン15−x、インダクタンス16−x、ジョセフソン接合17−x、ジョセフソン接合18−x、及び隣接する回路間を接続するインダクタンスLUx及びLLxを含む。超電導SFQ回路13−xのDCバイアスDC−側には、抵抗RGxを設けている。この抵抗は、例えばモリブデン薄膜を用いることで実現する。
図4の第3の実施例の回路構成は、図3の第2の実施例の回路構成と比較して、超電導回路12Cとして多段構成の高電圧ゲートが用いられる点に特徴がある。超電導回路12Cは、抵抗41乃至43及びジョセフソン接合44−1乃至44−8を含む。ジョセフソン接合44−1乃至44−4及び抵抗43を多段に接続し、抵抗41を介してACバイアスB2を印加する。その多段接続と並列に、抵抗42及びジョセフソン接合44−5乃至44−8を多段に接続し、抵抗41を介してACバイアスB2を印加する。これにより、4段のパラレル接続からなる高電圧ゲートが構成される。高電圧ゲートは他の回路構成の方式を用いることも可能であり図4に示した方式に限定するものではない。
超電導回路11AがA/Dコンバータ等のようにグランド変動により入力の分解能が影響を受ける回路の場合、本発明により超電導回路間に分離用超電導SFQ回路を設けることの効果が特に大きい。
図5は、本発明による超電導SFQ回路の第4の実施例を示す図である。図5において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。
図5の構成においては、単一のチップ10D内に超電導回路11を複数個設け、それらの超電導回路11間を分離用(アイソレーション用)の超電導SFQ回路13−1乃至13−nで接続したことを特徴とする。またACバイアスで駆動される例えば出力回路である超電導回路12とそれに隣接する超電導回路11との間も、図1の構成と同様に超電導SFQ回路13−1乃至13−nで接続されている。
図5のように2個以上の超電導回路が互いに接続されている場合であっても、超電導回路間に分離用の超電導SFQ回路を設けることで、ある超電導回路に供給するACバイアスの変動によって生じる他の超電導回路におけるグランド変動を抑制することが可能となる。
図6は、本発明による超電導SFQ回路の第5の実施例を示す図である。図6において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。
図6において、本発明による超電導SFQ回路であるチップ10Aは、超電導回路11A、超電導回路12A、及び複数n段の超電導SFQ回路13A−1乃至13A−nを含む。超電導回路11Aと超電導回路12Aとの間は超電導SFQ回路13A−1乃至13A−nにより接続される。バイアス及びグランドの接続は図1の原理図と同様である。超電導回路11Aは、超電導SFQ回路31及びグランドプレーン33−1を含み、超電導回路12Aは、例えば出力回路である超電導SFQ回路32及びグランドプレーン33−2を含む。なお超電導回路11A及び12Aについて図示する回路構成は模式的なものであり、具体的な回路の詳細を示すものではない。
超電導SFQ回路13−1乃至13−nは、ジョセフソン伝送線路(JTL:Josephson Transmission Line)である。超電導SFQ回路13−x(x=1,2,・・・,n)は、グランドプレーン15−x、インダクタンス16−x、ジョセフソン接合17−x、ジョセフソン接合18−x、及び隣接する回路間を接続するインダクタンスLUx及びLLxに加えて、ジョセフソン接合のノーマル抵抗に比べて十分小さな抵抗(例えば0.2Ω)RUX及びRLXの両方或いはどちらか一方を含む。RUX及びRLXはジョセフソン接合のノーマル抵抗に比べて十分小さければ、SFQパルスを伝播させることが可能である(IEEE Transactions on Applied Superconductivity, 第10巻、第3号、2000年9月、p.1637−1641)。超電導SFQ回路13−xに、2つのジョセフソン接合17−x及び18−xとインダクタンス16−xとを含めることで、JTLの2段構成となっている。インダクタンスLUxは通常の配線層で構成され、インダクタンスLLxはグランドプレーン層或いは他の層で隣接するグランド間を接続するよう構成される。これらのインダクタンスLUx及びLLxは、数pH程度以上のインダクタンスを有するように線幅を細くした接続配線により実現される。またRUX及びRLXは常電導材料であるMoやAu等により実現される
インダクタンスのインピーダンスは高周波になる程大きくなるので、超電導回路12Aに供給するACバイアス電流によって超電導回路12Aのグランド電位が変動しても、その変動は複数のインダクタンスLU1乃至LUnにより吸収され、超電導回路11Aのグランド電位には殆ど影響を及ぼさない。なおSFQ信号の伝搬に用いるJTLは、動作マージンが大きいので、グランド電位の変動に対しては影響を受け難い。また、LUX及びLLXと直列に挿入する抵抗RUX及びRLXは、DC的に回路間の電流漏れを防ぐことができる。
図7は、本発明による回路レイアウトの一例と実験の動作結果の一例を示す図である。
図7(a)には、チップ50において、2つの超電導回路間を分離用の超電導SFQ回路で接続した回路のレイアウトが示される。図において、チップ50の上部及び下部に配置される正方形部分は信号用又は電源用のパッドであり、チップ50の中央部に2つの超電導回路と分離用の超電導SFQ回路とが配置される。分離用の超電導SFQ回路部分を拡大し、回路部分51として図7(b)に示す。図7(b)において配線がジグザグに配置されている部分は、分離用の超電導SFQ回路のDCバイアス供給経路に設けられたインダクタンスであり、例えば図3のインダクタンスL乃至L及びLG1乃至LGnに相当する。
図7(c)は、図7(a)の回路の構成を示すブロック図である。図7(c)に示されるように、常温の半導体回路の論理レベルを入力としてSFQパルスを発生する入力回路(DC/SFQ+JTL)52の出力であるSFQパルスが、グランド分離用JTL53を介して伝播され、SFQパルスを受け取り常温の半導体回路の論理レベルへ変換する出力回路(JTL+SFQ/DC)54により信号出力される。
図7(d)は、実験結果の一例を示す図である。クロックとして示されるのは、ACバイアスを入力するタイミングに対応した信号であり、このクロックのインターバルに対応して1/0レベルの論理が出力されている。この例の場合の入力信号は”1010100110”であり、出力信号が正しく得られている。
前述のように、SFQパルスを伝播させるためには、SFQ回路の基本構造である超伝導ループのインダクタンスLとジョセフソン接合の臨界電流値Icとの積が磁束量子の大きさΦ0よりも小さく、更に好ましくはΦ0/2よりも小さい必要がある。Φ0は2×10−15ウェーバーであるので、臨界電流値Icを例えば0.1mAとすると、インダクタンスLは20pH或いは更に好ましくは10pH以下に設定する必要がある。この条件を満たす範囲で、インダクタンスの上限を設定するが、下限としては実質的にゼロでないインダクタンスを実現すればよい。このようにインダクタンスを設定することで、図7(d)の実験結果に示されるように、入力信号に応じてSFQパルスがJTLを問題なく伝播して、出力信号が正しく得られることが分る。
図8は、実験に用いたNb接合技術による超電導回路素子の構造の一例を示す断面図である。
図8の超電導回路素子は、Nbグランドプレーン100、SiO層間絶縁膜101、Mo抵抗102、Nb下部電極103、SiO層間絶縁膜104、AlOトンネル障壁膜105、Nb/AlO/Nbジョセフソン接合106、及びNb上部電極107を含む。このような構造により超電導回路素子を構成して、図7のような回路を実現することができる。なおこの構造は一例であり、本発明に用いる超電導回路素子は係る構造に限定されるものではない。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
なお本発明は、以下の内容を含むものである。
(付記1)第1の超電導SFQ回路と、
該第1の超電導SFQ回路のグランド側に接続される第1のグランドプレーンと、
第2の超電導SFQ回路と、
該第2の超電導SFQ回路のグランド側に接続される第2のグランドプレーンと、
該第1の超電導SFQ回路と該第2の超電導SFQ回路との間を接続する少なくとも1段の分離用超電導SFQ回路と、
該少なくとも1段の分離用超電導SFQ回路のグランド側に接続される少なくとも1つのグランドプレーンと、
該第1のグランドプレーン、該少なくとも1つのグランドプレーン、及び該第2のグランドプレーンの間を接続する実質的にゼロでないインダクタンスを有する配線
を含むことを特徴とする超電導SFQ回路。
(付記2)該分離用超電導SFQ回路はSFQパルスを伝播させる回路であり、該インダクタンスを含む一段の超伝導ループのインダクタンスが約10pH以下であることを特徴とする付記1記載の超電導SFQ回路。
(付記3)該分離用超電導SFQ回路はJTLであることを特徴とする付記2記載の超電導SFQ回路。
(付記4)該少なくとも1つのグランドプレーンのそれぞれと外部グランド電位とを接続する経路に、抵抗及びインダクタンスの少なくとも一方を設けたことを特徴とする付記1記載の超電導SFQ回路。
(付記5)該分離用超電導SFQ回路は実質的に直流であるDCバイアスで駆動されることを特徴とする付記1記載の超電導SFQ回路。
(付記6)該分離用超電導SFQ回路において、該インダクタンスを含む超電導ループにSFQパルスを伝播させることが可能な程度に小さな抵抗を含むことを特徴とする付記1記載の超電導SFQ回路。
本発明の原理を説明するための図である。 本発明による超電導SFQ回路の第1の実施例を示す図である。 本発明による超電導SFQ回路の第2の実施例を示す図である。 本発明による超電導SFQ回路の第3の実施例を示す図である。 本発明による超電導SFQ回路の第4の実施例を示す図である。 本発明による超電導SFQ回路の第5の実施例を示す図である。 本発明による回路レイアウトの一例と実験の動作結果の一例を示す図である。 実験に用いたNb接合技術による超電導回路素子の構造の一例を示す断面図である。
符号の説明
10 チップ
11 超電導回路
12 超電導回路
13−1乃至13−n 超電導SFQ回路
14−1乃至13−n ジョセフソン接合
15−1乃至13−n グランドプレーン
U1乃至LLn インダクタンス
U1乃至LLn インダクタンス

Claims (4)

  1. 第1の超電導SFQ回路と、
    該第1の超電導SFQ回路のグランド側に接続される第1のグランドプレーンと、
    第2の超電導SFQ回路と、
    該第2の超電導SFQ回路のグランド側に接続される第2のグランドプレーンと、
    該第1の超電導SFQ回路と該第2の超電導SFQ回路との間を接続する少なくとも1段の分離用超電導SFQ回路と、
    該少なくとも1段の分離用超電導SFQ回路のグランド側に接続される少なくとも1つのグランドプレーンと、
    該第1のグランドプレーン、該少なくとも1つのグランドプレーン、及び該第2のグランドプレーンの間を接続するインダクタンスを有する配線
    を含み、前記分離用超電導SFQ回路は直流であるDCバイアスで駆動されることを特徴とする超電導SFQ回路。
  2. 該分離用超電導SFQ回路はSFQパルスを伝播させる回路であり、一段の超電導ループのインダクタンスが10pH以下であることを特徴とする請求項1記載の超電導SFQ回路。
  3. 該分離用超電導SFQ回路はJTLであることを特徴とする請求項2記載の超電導SFQ回路。
  4. 該少なくとも1つのグランドプレーンのそれぞれと外部グランド電位とを接続する経路に、抵抗及びインダクタンスの少なくとも一方を設けたことを特徴とする請求項1記載の超電導SFQ回路。
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