JP4524077B2 - 電線選択装置とそれを用いた圧接装置及び電線選択方法 - Google Patents

電線選択装置とそれを用いた圧接装置及び電線選択方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の並列な電線のなかから使用する電線のみを選択して電線先端側を外部に突出させる電線選択装置とそれを用いた圧接装置及び電線選択方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は従来の電線圧接装置の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この電線圧接装置61は、上下一対の電線送りローラ62と、複数の電線63を並列に保持して前後(電線長手方向)に進退可能な電線供給ヘッド64と、圧接コネクタ65をセットするコネクタテーブル66と、前後の圧接コネクタ65の間で電線63を案内する電線ガイド67と、コネクタテーブル66の上方で昇降自在に配置された圧接ブレード68とを備えるものである。
【0004】
電線送りローラ62はモータ69で回動され、複数本の電線63を同時に検尺しつつ前進させる。電線供給ヘッド64は各電線63を保持した状態で水平シリンダ(図示せず)によって前進して前後の圧接コネクタ65の間を進退する。電線ガイド67は垂直シリンダ70で昇降して前後の圧接コネクタ65の間で各電線63を位置決めする。圧接ブレード68は、電線供給ヘッド64の前端から突出した各電線63を圧接コネクタ内の各圧接端子に圧接する。圧接端子は電線被覆切裂刃を有する左右一対の圧接片を備えたものである。コネクタテーブル66や電線送りローラ62は左右に進退可能である。
【0005】
各電線63は電線供給ヘッド64の前進時に前側の圧接コネクタ65に圧接され、電線供給ヘッド64の後退時に電線送りローラ62で所要の長さに繰り出され、後側の圧接コネクタ65に圧接される。コネクタテーブル66や電線送りローラ62を左右に移動させることで、電線63の長さを変えたり、他の圧接コネクタ(図示せず)に圧接させたりすることができる。電線圧接装置61は上記形態に限らず種々の形態のものが提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−296933号公報(第5〜6頁、図24)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の電線圧接装置にあっては、複数本の電線63を並列に送り出し、各電線63を同時に圧接することはできても、ワイヤハーネスの回路仕様によって圧接コネクタ内の複数の圧接端子のうちの何れかに電線63を圧接する必要がない場合には、電線63の使用を選択的に取り止めることができず、電線63を無駄に使用して、コストの増大やワイヤハーネスの肥大化を招くという問題があった。また、圧接コネクタごとに電線の色を替えてコネクタの識別を行わせるためには、供給する電線を一々交換しなければならず、段取り作業が大変であった。これらの問題は電線圧接装置61に限らず、複数の電線を同時に扱う電線圧着装置や電線皮剥き装置といった他の装置においても起こり得るものである。
【0008】
本発明は上記した点に鑑み、複数本の電線のなかから使用しない電線を選択して圧接等の処理を行わせないようにすることができると共に、電線の色替えを容易に行うことのできる電線選択装置とそれを用いた圧接装置及び電線選択方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電線選択装置は、複数本の電線を直線状に並列に挿通させる複数の孔を有するスライドブロックと、該スライドブロックを進退させる駆動手段と、該スライドブロックに設けられ、該複数本の電線を選択的に固定可能な固定手段と、該スライドブロックを進退自在に係合させると共に該駆動手段を設けた水平な略板状のベース部と、該スライドブロックの前方に対向して該ベース部の前端上部に設けられ、該複数本の電線を該スライドブロックを経て直線状に並列に進退自在に挿通させる複数の孔を有する電線支持部とを少なくとも備え、該複数本の電線が該スライドブロック内と該電線支持部内とに挿通され、使用しない電線のみを該固定手段で固定した状態で該スライドブロックが該電線支持部から電線長手方向に後退し、次いで全ての電線を該固定手段で固定した状態で該スライドブロックが前進することで、該使用しない電線が該電線支持部から前方に突出することなく該電線支持部内に残り、使用する電線のみが該電線支持部から前方に突出することを特徴とする。
上記構成により、複数本の電線はスライドブロック内を進退自在であり、スライドブロック内で使用しない電線が固定手段で固定され、スライドブロックが使用しない電線と一体に後退することで、使用する電線が使用しない電線よりも前側に位置する。そして、使用する電線を使用しない電線と共にスライドブロックにより後退と同じストロークで前進させることで、使用する電線のみを装置外部に突出させることができる。各電線の先端は初期状態において装置端部に位置するものとする。外部に突出した電線は圧接や圧着や皮剥き等の加工(処理)を施される。また、異なる色の各電線を並列に並べ、例えば圧接コネクタごとに使用しない電線を端から電線並び順に変えていく(選択する)ことで、スライドブロック内の各電線を何ら変更することなく、圧接コネクタに圧接される端部電線の色を替えることができる。
【0010】
請求項2に係る電線選択装置は、請求項1記載の電線選択装置において、前記電線支持部に設けられ、前記複数本の電線を個別に固定可能な主固定手段と、前記ベース部を進退させる主駆動手段を備えたことを特徴とする。
上記構成により、スライドブロックは前記駆動手段でベース部に沿って進退し、ベース部はスライドブロック及び駆動手段と一体的に主駆動手段で進退する。電線支持部は複数本の電線を並列に支持する。複数本の電線は主固定手段で固定された状態で電線支持部と一体に主駆動手段で前進し、遠くに離間した加工機(圧接機等)まで運ばれる。前記固定手段でスライドブロックに使用する電線と使用しない電線とが固定され、駆動手段によるスライドブロックの前進動作で、使用する電線のみが電線支持部から外部に突出し、使用しない電線は電線支持部内に残る。ベース部とスライドブロックと固定手段と主固定手段と電線支持部と駆動手段と主駆動手段とでユニットが構成される。
【0011】
請求項3に係る電線選択装置は、請求項2記載の電線選択装置において、前記固定手段や主固定手段以外に、前記複数本の電線を一括して固定可能な補助固定手段が設けられたことを特徴とする。
上記構成により、例えばスライドブロック側の補助固定手段や、スライドブロック後方のベース部と一体の部分に設けた補助固定手段と、前記固定手段及び主固定手段とで、複数本の電線をその長手方向の複数箇所で押圧固定することで、固定力が固定手段の数に応じた大きさとなり、且つ固定力が電線長手方向に均等に発揮される。補助固定手段は電線を前進させる際に他の固定手段と一括して使用され、例えば電線リールからの電線の繰り出しがスムーズ且つ確実に行われる。
【0012】
請求項4に係る電線選択装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の電線選択装置において、前記固定手段や主固定手段や補助固定手段が前記複数本の電線を一本ずつ押圧する細径な付勢部材であることを特徴とする。
上記構成により、各電線のピッチが小さく抑えられ、例えばファインピッチな端子配列の圧接コネクタに適用可能となる。細径シリンダを千鳥状に配置すれば、その効果は一層助長される。
【0013】
請求項5に係る電線選択装置は、請求項4記載の電線選択装置において、前記付勢部材の数を前記複数本の電線よりも多く配置し、前記主駆動手段を設けた主ベース部を電線並び方向に移動可能としたことを特徴とする。
上記構成により、主ベース部を細径シリンダや各電線と共にユニットごと電線並び方向に移動させ、ユニットから突出した識別色の異なる電線を例えば圧接機側の圧接コネクタごとに圧接することができる。これにより、請求項1における端部電線の色替えをスムーズに行うことができる。
【0014】
請求項6に係る電線選択装置は、請求項2〜5の何れか1項に記載の電線選択装置において、前記主駆動手段で前記ベース部を前進させ、前記駆動手段で前記スライドブロックを後退させた位置で、前記スライドブロックをロックさせるロック手段を備えたことを特徴とする。
上記構成により、電線支持部を前進させて使用する電線を加工機側に供給した後、スライドブロックを例えば後退位置でロックさせ、該スライドブロックの駆動手段を作動させてスライドブロックを前進させる代わりに(ロックされているから前進しない)電線支持部をユニットごとゆっくり後退させることができる。駆動手段はスライドブロックよりも重いユニットを後退させる訳であるから、ユニットはゆっくりと後退し、それによって電線にかかるバックテンションが防止される(引張力が最小限に抑えられる)。ユニットは電線支持部やベース部を含むものである。主駆動手段は排気状態として無負荷で圧縮されるようにすることが好ましい。
【0015】
請求項7に係る圧接装置は、請求項1〜6の何れか1項に記載の電線選択装置を用いた圧接装置であって、前記電線支持部を案内する水平なガイド板と、該ガイド板の前後に配置されて、前記使用する電線を圧接コネクタに圧接させる手段と、該ガイド板の上下に配置されて、圧接時に該電線を固定する固定手段とを備えたことを特徴とする。
上記構成により、圧接装置側の固定手段で各電線が固定された状態で圧接コネクタへの圧接が前後左右の位置ずれなく確実に行われる。
【0016】
請求項8に係る圧接装置は、請求項7記載の圧接装置において、前記圧接装置側の固定手段で前記使用する各電線を固定した状態で、該圧接装置側で各電線を一括して押し下げて検尺させる昇降自在なローラを備えたことを特徴とする。
上記構成により、ローラがその自重によって小さな駆動力でスムーズに下降しつつ複数本の電線を電線支持部から一括して引き出して検尺する。ローラの下降力で各電線が後方の電線リールから繰り出される。
【0017】
請求項9に係る電線選択方法は、複数本の電線を並列にスライドブロックと電線支持部とに挿通させ、該スライドブロックに該複数本の電線を挿通させた状態で該スライドブロックを該複数本の電線に沿って空で該電線支持部側に前進させ、該スライドブロックに設けた固定手段で使用しない電線のみを固定した状態で、該スライドブロックを後退させることで、該使用しない電線を該電線支持部内で使用する電線から長手方向に分離させ、全ての電線を該固定手段で固定した状態で該スライドブロックと一体に前進させて、該使用する電線のみを該電線支持部から前方に突出させることを特徴とする。
上記構成により、複数本の電線はスライドブロック内を進退自在であり、スライドブロック内で使用しない電線が固定手段で固定され、スライドブロックが使用しない電線と一体に後退することで、使用する電線が使用しない電線よりも前側に位置する。そして、使用する電線を使用しない電線と共にスライドブロックにより後退と同じストロークで前進させることで、使用する電線のみを装置外部に突出させることができる。各電線の先端は初期状態において装置端部に位置するものとする。外部に突出した電線は圧接や圧着や皮剥き等の加工を施される。
【0018】
請求項10に係る電線選択方法は、請求項9記載の電線選択方法において、前記使用しない電線を前記電線支持部内で使用する電線から長手方向に分離させた後、前記使用しない電線と使用する電線とを一括して、前記スライドブロックと前記電線支持部と前記固定手段とを含むユニットごと前進させることを特徴とする。
上記構成により、スライドブロックはユニットに沿って進退し、ユニットはスライドブロックと一体的に進退する。複数本の電線が固定された状態でユニットごと前進し、遠くに離間した加工機(圧接機等)まで運ばれる。前記固定手段でスライドブロックに使用する電線と使用しない電線とが固定され、スライドブロックの前進動作で、使用する電線のみがユニットから外部に突出し、使用しない電線はユニット内に残る。
【0019】
請求項11に係る電線選択方法は、請求項10記載の電線選択方法において、前記ユニットの前進位置で前記スライドブロックをロックさせ、該スライドブロックの駆動手段を作動させて前記ユニットを後退させることを特徴とする。
上記構成により、ユニットを前進させて、使用する電線を加工機側に供給した後、スライドブロックを例えば後退位置でロックさせ、該スライドブロックの駆動手段を作動させてスライドブロックを前進させる代わりに(ロックされているから前進しない)ユニットをゆっくり後退させることができる。駆動手段はスライドブロックよりも重いユニットを後退させる訳であるから、ユニットはゆっくりと後退し、それによって電線にかかるバックテンションが防止される(引張力が最小限に抑えられる)。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明に係る電線選択装置の一実施形態を示すものである。
【0021】
この電線選択装置1は、複数本の電線(絶縁被覆電線)2を並列に並べた状態で電線長手方向に一括して前進させる第一部分3と、複数本の電線2のなかから使用しない電線を選択的に後退させ、且つ全ての電線2をさらに前進させて、使用する電線のみを第一部分3から突出させる第二部分4とを少なくとも備えたものである。
【0022】
第二部分4は第一部分3に設けられ、第一部分3に沿って一定の範囲で電線長手方向に進退自在である。
【0023】
第一部分3は、水平な第一ベース板(主ベース部)5と、第一ベース板5に設けられた電線長手方向の長い第一レール6と、第一ベース板5に一方(本体部分)を固定された水平方向の長いエア式の第一駆動シリンダ(主駆動手段)7と、第一レール6にスライド自在に係合したスライダ8と、スライダ8に固定され、且つ第一駆動シリンダ7の他方(ロッド)7aに連結された第二ベース板9と、第二ベース板9に設けられた短い第二レール10と、第二ベース板9の前方に一体に延設された第一電線支持部11と、第一電線支持部11に設けられ、全ての電線2を個別に押圧可能な垂直で細径なエア式の複数本の第一クランプシリンダ(付勢部材)12とを備えている。
【0024】
第二部分4は、第二ベース板9に一方(本体部分)を固定された水平方向の短いエア式の第二駆動シリンダ(駆動手段)13と、第二レール10にスライド自在に係合したスライダ14と、スライダ14に固定され、且つ第二駆動シリンダ13の他方(ロッド)13aに連結されたスライドブロック(第二電線支持部)15と、スライドブロック15に設けられ、全ての電線2を個別に押圧可能な垂直で細径なエア式の複数本の第二クランプシリンダ(固定手段又は付勢部材)16とを備えている。
【0025】
上記以外の構成として、スライドブロック15には、全ての電線2一括して押圧可能な垂直で細径な複数本の第三クランプ部材(付勢部材)17が設けられ、スライドブロック15の後方に隣接して第二ベース板(ベース部)9に第三電線支持部18が一体に設けられ、第三電線支持部18には全ての電線を一括して押圧可能な垂直で細径な複数本の第四クランプ部材(付勢部材)19が設けられ、さらに、スライドブロック15には、スライドブロック15の後退動作を規制するロック係合部(ロック手段)20が設けられ、ロック係合部20に進入可能な垂直なエア式のロックシリンダ(ロック手段)21が第一電線支持部(電線支持部)11の上方においてフレーム22に設けられている。各電線クランプ部材17,19はピン状ロッド17a,19aとそれを付勢するコイルばねとで細径に構成されている。
【0026】
第一ベース板5は下側の電線直交方向(電線並び方向)の水平なレール23にスライダ24でスライド自在に係合している。第一電線支持部11は複数の電線挿通溝(孔)25を等ピッチで並列に有している。第一電線支持部11の基部(後部)側に第一クランプシリンダ(主固定手段)12が設けられ、電線挿通溝(孔)25内にシリンダ12のピン状ロッド12aが突出して各電線2を個別に押圧固定させる。第一電線支持部11の先端は前進状態で後述の圧接装置側の圧接コネクタの少し手前に位置し、スライドブロック15の前進動作で第一電線支持部11の先端から圧接コネクタ上に電線2が突出される。
【0027】
第一電線支持部11と後方のスライドブロック(第二電線支持部15)とは複数の並列な金属製の電線挿通管26で連絡されている。電線挿通管26の一方は例えばスライドブロックに固定され、他方は第一電線支持部内にスライド自在に係合して電線挿通孔25に連通している。電線挿通管26に続くスライドブロック15の電線挿通孔27に第二のクランプシリンダ16及び第三のクランプ部材17の各ピン状ロッド16a,17aが進入して電線2を押圧固定させる。第四クランプ部材19のピン状ロッド19aは第三電線支持部18の各電線挿通溝(孔)28内に進入して電線2を押圧固定させる。
【0028】
各クランプシリンダ12,16や各クランプ部材17,19は電線2のファインピッチ化に対応して千鳥状に配置されている。各クランプシリンダ12,16や各クランプ部材17,19の本数は電線2の本数よりも多く設定され、第一の圧接コネクタに各電線2を圧接した後、ユニット全体を電線直交方向の水平なレール23に沿って移動して、第二の圧接コネクタに異なる識別色の電線2を圧接可能となっている。ここでユニットとは第一ベース板5を含むものを言う。
【0029】
第三,第四のクランプ部材17,19は補助的に電線2を押圧するものであり、電線押圧力が小さくて済む場合は、第三,第四のクランプ部材(補助固定手段)17,19を省略して、第一,第二のクランプシリンダ12,16のみで電線2の押圧固定を行わせることも可能である。
【0030】
以下に上記電線選択装置1の作用を説明する。
複数本の電線2は後方の各電線リール(図示せず)から引き出されつつ、第三電線支持部18、スライドブロック(第二電線支持部)15、第一電線支持部11の順で挿通され、第一電線支持部11の先端11aに各電線2の先端が揃って位置される。スライドブロック15は図1のように後退した状態となっている。この状態から電線選択装置1の作用すなわち電線選択方法を説明する。
【0031】
先ず、第一行程として、全てのクランプシリンダ12,16及びクランプ部材17,19による電線2の押圧を解除した状態で、第二駆動シリンダ13の伸長動作でスライドブロック15を空(電線2を移動させない状態)で第一電線支持部側に一定ストローク前進させる。
【0032】
次いで、第二行程として、使用しない電線2のみを第二クランプシリンダ16で押圧固定させ、第二駆動シリンダ13の圧縮動作でスライドブロック15を後退させる。この際、他のクランプシリンダ12やクランプ部材17,19による使用しない電線2の押圧は解除する。使用しない電線2はスライドブロック15と一体に後退し、使用しない電線2の先端は第一電線支持部11の先端11aからスライドブロック15のストローク分だけ後退して位置する。使用する電線2の先端は第一電線支持部11の先端11aに位置する。第一〜第二行程は準備動作と言える。
【0033】
次いで、第三行程として、全てのクランプシリンダ12,16及びクランプ部材17,19で各電線2を押圧固定した状態で、第一駆動シリンダ7の伸長動作で第一電線支持部11をスライドブロック15と一体的に大きく前進させる。電線2の長手方向の複数の箇所で電線2を均一に押圧することで、電線2に大きな応力をかけることなく、固定力を増すことができ、後方の各電線リール(図示せず)から各電線2をスムーズ且つ確実に引き出すことができる。使用しない電線2は後退した位置から使用する電線2と共に同じストロークで前進し、使用する電線2の先端と使用しない電線2の先端との間にはスライドブロック15のストローク分の隔たりがある。
【0034】
次いで、第四行程として、第一クランプシリンダ12による全ての電線2の押圧を解除し、第二クランプシリンダ16と第三クランプ部材17で全ての電線2を押圧固定した状態で、第二駆動シリンダ13の伸長動作でスライドブロック15を前進させる。全ての電線2はスライドブロック15と一体的に前進し、使用する電線2のみが第一電線支持部11の先端11aから外部に突出して図4の圧接装置側の圧接コネクタの上に位置し、使用しない電線2は外部に突出せずに第一電線支持部11内に留まり、使用しない電線2の先端は第一電線支持部11の先端11aに位置する。
【0035】
次いで、第五行程として圧接装置側で各電線2がクランプ固定される。その状態で、ローラの下降動作で一括して検尺されつつ所要長さに引き出され、各電線が圧接コネクタ内の各圧接端子に圧接される。これらについては詳しく後述する。
【0036】
第五行程において圧接装置側で各電線2をクランプ固定した際に、第六行程として、バックテンションを防止する(電線のクランプ固定部に引張力をかけない)目的で、第二駆動シリンダ13の圧縮動作でスライドブロック15を後退させた後、図1の鎖線部に位置したロック係合部20をロックシリンダ21の伸長動作でロックさせ(ロックシリンダ21のロッド21aをロック係合部20の凹溝20aに進入させ)、スライドブロック15を固定(ロック)した状態で、第二駆動シリンダ13を伸長させることで、第一電線支持部11が他の部分と一体的にユニットごと後退し、第一駆動シリンダ7を作動させることなく、緩い速度でユニットごと後退させることができる。
【0037】
ここでユニットとは第一ベース板5とレール6を除く第一部分3を言う。第二駆動シリンダ13の力は第一駆動シリンダ7よりも弱く、しかもユニット全体の重量が第二駆動シリンダ13に負荷されるので、ユニットが緩い速度で後退する。
【0038】
この際、第一駆動シリンダ7はエア圧を除去した排気の状態にして無抵抗で圧縮されるようにしておく。第二駆動シリンダ13のロッド13aがスライドブロック15に連結され、第二駆動シリンダ13の本体が第二ベース板9に連結されているから、ロッド13aを固定した状態で本体を後退させることで、第二ベース板9と一体に第一電線支持部11が後退する。
【0039】
緩やかな速度で長い第一電線支持部11が後退することで、各電線2と電線挿通孔25,28との摩擦が低く抑えられ、電線2の引張が防止され、圧接装置側の電線先端の位置ずれや電線表面の摩耗(傷付き)等が防止され、圧接位置が確保され、電線被覆の品質が確保される。スライドブロック15は短いから、後退させても電線2との摩擦は小さく何ら問題はない。
【0040】
電線2の圧接後に第一駆動シリンダ7を完全に圧縮作動させて第一電線支持部11を原位置(図1の状態)に後退復帰させる。第二駆動シリンダ13は伸長した状態でとどめ、次に使用しない電線2の選択すなわち上記第二行程に備える。
【0041】
なお、ロックシリンダ21とロック係合部20は、第一電線支持部11の長さが短く、後退時における電線2との摩擦が小さな場合は省略することも可能である。また、各駆動シリンダ7,13をロッドレスシリンダやボールねじ軸とモータといった他の駆動手段に変えることも可能である。
【0042】
また、上記第三行程を省略し、前記第一駆動シリンダ7を圧縮させた状態(図1の状態)でスライドブロック15のみを第二駆動シリンダ13で進退させて、電線2の選択(後退時に使用しない電線のみをスライドブロック15で持ち帰ること)を行わせることも可能である。
【0043】
図4は電線圧接装置の一実施形態を示すものである。
この電線圧接装置31は、上記電線選択装置1の第一電線支持部11(図1)を案内する水平なガイド板32と、ガイド板32の前側側と後側とに配置された圧接機33と(図4では前側の圧接機のみ示す)、電線クランプ(固定手段)34,35と、電線検尺用の昇降自在なローラ36とを備えるものである。
【0044】
第一電線支持部11(図1)はガイド板32に沿って前後一対の圧接機(圧接手段)33を往復する。第一駆動シリンダ7(図1)を用いて前側の圧接機33まで第一電線支持部11を前進させ、後側の圧接機32に対しては第一駆動シリンダ7を作動させずに、第二駆動シリンダ13(図1)のみの進退操作で使用する電線2を圧接コネクタ37の上に突出させる。
【0045】
各圧接機(アプリケータ)33は上側に櫛歯状の圧接ブレード38、下側にコネクタセット台39を有する既存のものであり、圧接ブレード38はラム40と一体に昇降され、ラム40はシャンク係合部41で垂直シリンダ等の駆動手段(図示せず)に連結される。コネクタセット台39は基台42の上に配置され、基台42は電線直交方向の水平なレール43で電線並び方向に移動可能である。
【0046】
電線クランプ34,35は下側と上側に配置され、下側の電線クランプ34は前記同様の複数本のクランプシリンダで構成され、垂直な駆動シリンダ44で昇降可能であり、下側の電線クランプ44に対向して電線ガイド溝を有する電線ガイド板45がラム40と一体で昇降自在に位置する。上側の電線クランプ35は複数本の電線2を一括して押さえる柔軟部を有した補助クランプである。電線長手方向に少し位置ずれして配置された上下の電線クランプ34,35を用いることで、クランプ時の電線2の曲がり等が防止される。
【0047】
電線クランプ力が小さくて済む場合は上側の電線クランプ35を省略可能である。ガイド板32の後端側にも基台42や電線クランプ34が配置されていることは言うまでもない。電線2は後側の圧接コネクタ(図示せず)にブレード38で圧接されると同時にカッタ部で切断(剪断)される。
【0048】
電線検尺用のローラ36は垂直な支柱46にベアリングで回動自在に支持され、左右両側に電線外れ防止用の鍔部36aを有し、両鍔部36aの間に電線押し下げ用の滑らかな円弧状の面36bを有している。ローラ36は例えば垂直なエアシリンダとサーボモータ(図示せず)とで正確なストロークで下降する。この場合、エアシリンダの昇降部にサーボモータとボールねじ軸が固定される。
【0049】
前側の電線クランプ34,35で各電線2を固定した状態でローラ36を下降させて各電線2を同時に押し下げて検尺し、この際、電線選択装置1(図1)の各クランプシリンダ12,16は押圧を解除して、後方の電線リール(図示せず)からスムーズに電線2を繰り出させる。電線2はガイド板側の小径ガイドローラ47に沿って下向きに滑らかに屈曲しつつスムーズに検尺される。次いで、後側の電線クランプ34で電線2を押えた状態で、両圧接機33で両圧接コネクタ37に電線2が同時に圧接される。そして電線2の両端に圧接コネクタ37を有するサブハーネスが構成される。
【0050】
なお、片側(前側又は後側)の圧接機35のみを作動させて、電線2の片側のみに圧接コネクタ37を有するサブハーネスを構成させることも可能である。また、検尺用のローラ36を低摺動摩擦の材料で未回転式に形成したり、その際、断面半円状のローラを用いたりすることも可能である。また、前側の圧接機33で圧接コネクタ37に電線2を圧接した後、ローラ36の下降で電線2を検尺し、次いで後側の圧接コネクタに電線2を圧接させることも可能である。但し、前後のコネクタ37への圧接を同時に行うことが、タクト(時間)を低減させる上で好ましい。
【0051】
【発明の効果】
以上の如く、請求項1記載の発明によれば、使用しない電線を使用する電線から分離することができるから、例えば圧接コネクタ内の所要の端子のみに電線を圧接させたり、所要の電線のみを皮剥きしたり、端子に圧着接続したりすることができ、サブハーネスの無駄な電線をなくして低コスト化・軽量化を図ることができる。また、例えば圧接コネクタごとに電線の識別色を変えることができるから、圧接コネクタを積層して使用する場合等において圧接コネクタの並び順を間違えることがなくなり、ワイヤハーネスの品質が高まる。
【0052】
請求項2記載の発明によれば、ベース部にスライドブロックを進退自在に配置することで、ベース部に続く電線支持部を主駆動手段で大きく前進させた状態で、使用する電線のみを電線支持部から外部に突出させることができ、それにより、遠く離間した加工機(圧接機等)に電線を供給することができ、例えば電線支持部の前進位置と後退位置との両方で各加工機に電線を供給して、電線の両端に圧接コネクタを有するサブハーネスを形成することができる。
【0053】
請求項3記載の発明によれば、大きな電線固定力によって電線を滑り等なく電線リール等からスムーズに且つ正確なストロークで引き出すことができる。また、固定力が電線の一点に集中しないから、電線に無理な応力が作用せず、電線(絶縁被覆等)の品質が確保される。
【0054】
請求項4記載の発明によれば、各電線の配列ピッチを小さく抑えることができ、例えばファインピッチな端子配列の圧接コネクタに電線をスムーズに圧接させることができる。
【0055】
請求項5記載の発明によれば、圧接コネクタごとに電線の色替えをスムーズに行うことができ、各圧接コネクタの識別を一層容易化することができる。
【0056】
請求項6記載の発明によれば、電線にかかるバックテンションが防止されるから、電線支持部から突出した電線部分の長さが変わることなく正確に保たれ、圧接コネクタへの圧接代(長さ)や皮剥き長さが保証されると共に、電線被覆の擦れが防止され、電線品質が確保される。
【0057】
請求項7記載の発明によれば、各電線を位置ずれなく圧接コネクタ内の端子に正確に圧接させることができ、電気的接続の信頼性が高まる。
【0058】
請求項8記載の発明によれば、簡単な構造のローラで複数本の電線を同時に引き出して正確に検尺することができ、ローラの下降ストロークも容易に延ばすことができ、長い電線のサブハーネスに容易に対応することができる。
【0059】
請求項9記載の発明によれば、使用しない電線を使用する電線から分離することができるから、例えば圧接コネクタ内の所要の端子のみに電線を圧接させたり、所要の電線のみを皮剥きしたり、端子に圧着接続したりすることができ、サブハーネスの無駄な電線をなくして低コスト化・軽量化を図ることができる。
【0060】
請求項10記載の発明によれば、ユニットにスライドブロックを進退自在に配置することで、ユニットを大きく前進させた状態で、使用する電線のみをユニットから外部に突出させることができ、それにより、遠く離間した加工機(圧接機等)に電線を供給することができ、例えばユニットの前進位置と後退位置との両方で各加工機に電線を供給して、電線の両端に圧接コネクタを有するサブハーネスを形成することができる。
【0061】
請求項11記載の発明によれば、電線にかかるバックテンションが防止されるから、ユニットから突出した電線部分の長さが変わることなく正確に保たれ、圧接コネクタへの圧接代(長さ)や皮剥き長さが保証されると共に、電線被覆の擦れが防止され、電線品質が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電線選択装置の一実施形態を示す一部を縦断面とした側面図である。
【図2】同じく電線選択装置を示す平面図である。
【図3】同じく電線選択装置を示す正面図である。
【図4】上記電線選択装置に続く電線圧接装置の一実施形態を示す側面図である
【図5】従来の電線圧接装置の一形態を示す説明斜視図である。
【符号の説明】
1 電線選択装置
2 電線
5 第一ベース板(主ベース部)
7 第一駆動シリンダ(主駆動手段)
9 第二ベース板(ベース部)
11 第一電線支持部(電線支持部)
12 第一クランプシリンダ(主固定手段)
13 第二駆動シリンダ(駆動手段)
15 スライドブロック
16 第二クランプシリンダ(固定手段)
17,19 第三,第四クランプ部材(補助固定手段)
20 ロック係合部(ロック手段)
21 ロックシリンダ(ロック手段)
31 圧接装置
33 圧接機(圧接手段)
34,35 電線クランプ(固定手段)
36 ローラ
37 圧接コネクタ

Claims (11)

  1. 複数本の電線を直線状に並列に挿通させる複数の孔を有するスライドブロックと、該スライドブロックを進退させる駆動手段と、該スライドブロックに設けられ、該複数本の電線を選択的に固定可能な固定手段と、該スライドブロックを進退自在に係合させると共に該駆動手段を設けた水平な略板状のベース部と、該スライドブロックの前方に対向して該ベース部の前端上部に設けられ、該複数本の電線を該スライドブロックを経て直線状に並列に進退自在に挿通させる複数の孔を有する電線支持部とを少なくとも備え、
    該複数本の電線が該スライドブロック内と該電線支持部内とに挿通され、使用しない電線のみを該固定手段で固定した状態で該スライドブロックが該電線支持部から電線長手方向に後退し、次いで全ての電線を該固定手段で固定した状態で該スライドブロックが前進することで、該使用しない電線が該電線支持部から前方に突出することなく該電線支持部内に残り、使用する電線のみが該電線支持部から前方に突出することを特徴とする電線選択装置。
  2. 前記電線支持部に設けられ、前記複数本の電線を個別に固定可能な主固定手段と、前記ベース部を進退させる主駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電線選択装置。
  3. 前記固定手段や主固定手段以外に、前記複数本の電線を一括して固定可能な補助固定手段が設けられたことを特徴とする請求項2記載の電線選択装置。
  4. 前記固定手段や主固定手段や補助固定手段が前記複数本の電線を一本ずつ押圧する細径な付勢部材であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電線選択装置。
  5. 前記付勢部材の数を前記複数本の電線よりも多く配置し、前記主駆動手段を設けた主ベース部を電線並び方向に移動可能としたことを特徴とする請求項4記載の電線選択装置。
  6. 前記主駆動手段で前記ベース部を前進させ、前記駆動手段で前記スライドブロックを後退させた位置で、前記スライドブロックをロックさせるロック手段を備えたことを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載の電線選択装置。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の電線選択装置を用いた圧接装置であって、前記電線支持部を案内する水平なガイド板と、該ガイド板の前後に配置されて、前記使用する電線を圧接コネクタに圧接させる手段と、該ガイド板の上下に配置されて、圧接時に該電線を固定する固定手段とを備えたことを特徴とする圧接装置。
  8. 前記圧接装置側の固定手段で前記使用する各電線を固定した状態で、該圧接装置側で各電線を一括して押し下げて検尺させる昇降自在なローラを備えたことを特徴とする請求項7記載の圧接装置。
  9. 複数本の電線を並列にスライドブロックと電線支持部とに挿通させ、該スライドブロックに該複数本の電線を挿通させた状態で該スライドブロックを該複数本の電線に沿って空で該電線支持部側に前進させ、該スライドブロックに設けた固定手段で使用しない電線のみを固定した状態で、該スライドブロックを後退させることで、該使用しない電線を該電線支持部内で使用する電線から長手方向に分離させ、全ての電線を該固定手段で固定した状態で該スライドブロックと一体に前進させて、該使用する電線のみを該電線支持部から前方に突出させることを特徴とする電線選択方法。
  10. 前記使用しない電線を前記電線支持部内で使用する電線から長手方向に分離させた後、前記使用しない電線と使用する電線とを一括して、前記スライドブロックと前記電線支持部と前記固定手段とを含むユニットごと前進させることを特徴とする請求項9記載の電線選択方法。
  11. 前記ユニットの前進位置で前記スライドブロックをロックさせ、該スライドブロックの駆動手段を作動させて前記ユニットを後退させることを特徴とする請求項10記載の電線選択方法。
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