JP4521621B2 - 半導体単結晶製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体単結晶製造装置の制御方法に係わり、特には、フローティングゾーン法による半導体単結晶棒の製造装置および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体単結晶育成方法の一つにフローティングゾーン法(以下、FZ法という)がある。この方法では、図9に示すように、不活性ガスで充たされた成長炉31内に給電部33を介して支持された偏平な単巻きの誘導加熱コイル35(以下、コイル35という)に高周波電流を流すことで、多結晶原料棒37(以下、原料棒37という)の一端を溶解させ、これに図示しない小さな種結晶を溶着させ絞り作業を行うことで以降に凝固させる部分を無転移化させている。なお、以下では、同一名称の部品には後述する本発明に用いる部品には添付符号Aを、従来技術の部品には添付符号Bを付して区別している。この後、原料棒37は回転させながら軸方向下方に移動させることで、コイル35の周囲に溶融部39Bを形成し、これをコイル35の下方、固液界面41Bの位置で凝固させ、この以下の部分を軸方向下方に移動させることで、半導体単結晶棒43B(以下、単結晶棒43Bという)を作製している。このとき、単結晶棒43Bは、周方向の熱的均一性を確保するために凝固した部分を回転させることが一般的に行われている。さらに、単結晶棒43Bに対しガス状のほう素BやリンPの濃度や流量を調整して溶融部39Bに吹き付けるか、あるいは、原料棒37の中に予めほう素BやリンPを添加しておくことで凝固する単結晶の凝固部41Bに取り込ませ、単結晶棒43Bの電気抵抗率が調整されている。
【0003】
この操作に用いられるコイル35は、図10に示すように、平面視で中空環状の導体を巻回して、その一部にスリット状の空隙45を有する構成としている。また、コイル35は、図9に示すように、側面視で縦断面が楔形で、内周縁端部の厚さが最も薄く、外周部の厚さが最も厚くなるように構成されている。また、コイル35は、外周部上で空隙45を挟む二点に設置された給電端子47が図示しない高周波電源に接続されている。この給電端子47からコイル35に高周波電流が流れることで交流磁界が発生し、コイル35の上面、内周内部35a、および、下面で誘導電流が発生し、ジュール熱により原料棒37の溶解、および溶融部39Bの保持が行われている。そして、溶融部39Bを凝固させることにより、単結晶棒43Bが育成されることになるが、凝固する融液分は原料棒37を連続的に溶融することにより供給され、一定径、一定長さの単結晶棒43Bを育成することができる。単結晶棒43Bの一定径の制御は、基本的に、コイル35への供給電力量(固体/融液界面近傍の温度)と種結晶引下げ速度(成長速度)の調整によって行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記単結晶育成方法には、次のような問題点がある。所望の一定径の単結晶棒を製造しようとするとき、単結晶棒の成長速度は単結晶棒側面からの放熱量に律速される。生産性を考慮した場合には、成長速度は出来るだけ早いほうが好ましいが、単結晶棒側面からの放熱量が十分でない場合に、単結晶棒が成長するに必要な熱バランスを確保するために、コイルへの供給電力量を減ずるか、若しくは、成長速度を減じなければならない。上記のうち供給電力量を減ずる場合には、当然溶融部への投入熱量も減ぜられるため、溶融部表面接線方向の温度勾配も緩くなる。溶融部内の流れの強さは、その表面部の温度勾配に律速されており、(S.Togawa et al.,High Purity Silicon V,p.67) 、前述のように温度勾配が緩い場合、内部の流れは十分に発達しえない。
【0005】
さらに、図10に示したような単巻きのコイルを用いた場合、空隙45の部分では他の部分と異なり、対向電流49が流れるため、この部分での磁束密度は他の部分と比較して最も強いものとなる。よって、この下部の溶融部分は、他の溶融部分より高温となるため、溶融部の表面には、常に周方向の温度不均一性が生じていることになる。このような環境下で、単結晶棒を回転させながら凝固させると、温度の高い空隙45の下部を通過するときは凝固速度が遅くなり、反対側では速くなるといった成長速度の不均一が発生するため、結晶に取り込まれる不純物のほう素BやリンPの濃度が、微小領域で変動することになる。これは、微小領域での電気抵抗率の変動となるため、単結晶棒から切り出される半導体基板内に作製されるデバイスの不良につながる。この不純物濃度の変動を出来るだけ小さく抑えるためには、単結晶棒の回転速度を出来るだけ早くして、空隙の下部を通過する時間を短くした方が好ましい。
【0006】
ところが、溶融部39Bの表面の温度勾配が緩く、溶融部39Bの内部の流れの強さが十分に発達していない場合に、単結晶棒43Bの回転速度を増すと、図11に模式的に示したように、内部の流れが大きい渦51(実線で示す)から小さい渦53(点線で示す)のように回転慣性力の影響により縮小させられるため、結晶中心部の凝固界面付近に流れの淀み55が発生することになる。発生した淀み55の領域では、偏析の効果によりほう素BやリンPといった不純物の拡散境界層厚みが増し、単結晶棒43Bの面内でこの部分に取り込まれる不純物量が増す。すなわち、この面内で電気抵抗率が他の部分より低下することになる。このような単結晶棒43Bから切り出された半導体基板は、その面内に大きな電気抵抗率のむらを持つことになるため、その内部に形成されるデバイスは不良となることが多くなる。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に着目してなされたもので、単結晶棒の周囲に冷却手段を設けて単結晶棒からの放熱を促す一方、この放熱を補償するようにコイルへの供給電力量を上げることにより、溶融部表面の温度勾配を増加し、溶融部内の流れを活性化させて抵抗率の面内バラツキが小さく、また、回転速度を増して微小領域での広がり抵抗の小さい単結晶を得ることが可能な半導体単結晶製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る半導体単結晶製造方法が適用される装置は、誘導加熱コイルにより多結晶棒を溶融し、その溶融部の下方で凝固させて単結晶棒を成長させるフローティングゾーン法の半導体単結晶製造装置において、単結晶棒の成長域を囲繞する冷却手段を設けた構成としている。
【0009】
本発明に係る半導体単結晶製造方法の発明は、誘導加熱コイルにより多結晶棒を溶融し、その溶融部の下方で凝固させて単結晶棒を成長させるフローティングゾーン法の半導体単結晶製造方法において、単結晶棒周囲を強制的に冷却して熱放射量を制御し、溶融部表面の温度勾配を制御して単結晶を成長させる方法である。
また、単結晶棒周囲を強制的に冷却するとともに誘導加熱コイルへの入力電力量を増加させて溶融部表面の温度勾配を大きくし、溶融部内の対流を活性化して単結晶面内の抵抗率分布をほぼ一定に保つようにしている。
また、同時に単結晶棒の回転速度を制御することにより単結晶面内の微小領域での抵抗変動を制御している。
【0010】
【作用】
上記構成によれば、単結晶側面からの放熱が、単結晶周囲に冷却手段を配置したことにより促進されるため、単結晶棒が成長するに必要な熱バランスを確保させるには、コイルへの入力電力量を増加させる必要がある。これにより、コイルから溶融部表面への投入熱量は自ずと増加することとなり、溶融部表面にはきつい温度勾配が形成される。このため、溶融部内の対流が活性化される。よって、結晶回転速度を増しても結晶中心部付近に淀み部が形成されにくくなり、結晶中心部において不純物濃度が濃くなることがなくなり、ひいては単結晶棒から切り出した半導体基板の中心部での電気抵抗率が崩落することを防ぐことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る半導体単結晶製造方法の実施の形態について図面を参照して説明する。但し、この実施例に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その配置などは、特に特定的記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、本発明が適用されるフローティングゾーン法による半導体単結晶製造装置を構成する結晶成長炉1の一部を示す側面断面図である。なお、本実施例の結晶成長炉1Aは図9に示したものと基本構造は同一であるので、同一部品には同一符号を付して説明は省略する。また、同一名称の場合に、本実施の形態では添付符号Aを付し、従来技術ではB符号を付して区別している。
【0012】
図1において、本実施例の結晶成長炉1A内には、冷却手段3がコイル35と同芯軸上で、コイル35から一定間隔離間した下側の位置に配設されている。冷却手段3は、単結晶棒43AをスキマTaを介して内部に収容する熱放射率の高い材質よりなる冷却板5と、冷却板5の外周に当接されて巻回付設され、冷却板5を保持する熱伝達率の高い配管9とから構成されている。冷却板5は、例えば、中空の所定の厚さを有する円筒パイプで、熱放射率の高いカーボン等よりなり、その外周に付設された配管9により保持されている。
【0013】
冷却板5と単結晶棒43AとのスキマTaは、単結晶棒43Aが回転するときに接触しない範囲で、出来るだけ小さく設定され冷却効率を良くしている。冷却手段3の上端、すなわち、冷却板5の上端5aは、結晶成長炉1Aに設けられた観察窓11を通して外部より、溶融部39Aと単結晶棒43Aの界面13が観察できるように、高さ方向で界面13より下方に設けられている。なお、冷却手段3の上端、すなわち、冷却板5の上端5aは界面13を外方より観察できる位置、すなわち、界面13の位置以下であれば出来るだけ上方に配置した方が冷却効率は良くなる。
【0014】
配管9は、例えば、熱伝導率が高い材質の銅よりなる銅配管よりなり、図1に示すように、配管9の入口側配管9aおよび出口側配管9bは、結晶成長炉1Aに保持されるとともに、結晶成長炉1Aを貫通し、入口側配管9aは図示しない冷却流体源に、出口側配管9bは排出路に接続されている。このとき、入口側配管9aは出口側配管9bより上側の結晶成長炉1Aに支持されており、冷却流体は単結晶棒43Aの界面13に近い方の配管9から入り、順次下方に流れて冷却している。このため、界面13に近い方の単結晶棒43Aが入口側配管9aからの冷たい冷却流体で先に冷却されるため、溶融部39A表面の温度勾配を大きくすることができる。冷却流体は、冷却水を用いているが、アルゴンガス、窒素ガス等の気体ガスを用いても良い。
【0015】
本実施例の結晶成長炉1Aの一例として、冷却手段3の冷却板5は、材質がカーボンで、その内径133mmとし、単結晶棒43Aの外周部43aにスキマTaを14mmとして配設されている。冷却板5の上端5aは、溶融部39Aと単結晶棒43Aの界面13から10mm下になる位置に配設され、成長炉1Aに設けられた観察窓11を通して外部より単結晶棒43Aの界面13が観察できるようになされている。冷却手段3は、冷却水を配管9に流して配管9に当接しているカーボンの冷却板5を冷却している。
【0016】
この結晶成長炉1Aを用いて、シリコンの単結晶棒43Aの成長を行った。その結晶の成長条件は、以下の通りである。
▲1▼ 単結晶棒直径 105mm
▲2▼ 多結晶棒直径 95mm
▲3▼ 成長速度 2.8mm/min
▲4▼ 単結晶棒回転速度 15rpm
▲5▼ 原料多結晶棒回転速度 0.5rpm
▲6▼ 印加電圧 628.8V
▲7▼ ゾーン部温度差 68.6℃
【0017】
上記成長条件で、コイル35には電圧628.8Vを印加し、原料棒37を溶融させるとともに、単結晶棒43Aの側面に配置された冷却手段3の配管9には冷却水を流して、冷却板5を介して単結晶棒43Aを冷却し、溶融部表面温度(℃)の温度勾配を図2に示すごとく増加させている。図2において、横軸は結晶中心からの距離(mm)を、縦軸は溶融部表面温度(℃)を表し、実線(A)は本実施例での温度勾配を、点線(B)は従来技術での温度勾配を示している。このように、印加電圧(V)およびゾーン部温度差(℃)は、表1に示すように従来技術によるよりも、コイルへの印加電圧を6%、および、ゾーン部温度差を1.21倍に増加させて単結晶棒43Aを成長させた。
【0018】
【表1】
【0019】
上記の成長条件で製造された単結晶棒43Aは、溶融部表面の温度勾配が実線(A)により示すように増加され、溶融部39A内の対流が活性化されており、図11に示す結晶中心部での淀み55が形成され難くなっている。この結果、図3に示すように、本実施例による半導体単結晶製造装置の結晶成長炉1Aを用いて成長させたシリコン単結晶の面内抵抗率RAの分布は、図4に示す従来技術により成長させたシリコン単結晶の面内の抵抗率RBの分布よりも小さくなる。図3および図4では、横軸は単結晶棒43A、43Bより作製したウエーハ基板中心(零)からの距離(mm)を、縦軸は抵抗率RA、RBの変動(%)を表し、結晶面内にわたって測定した抵抗率の平均値をゼロとして、平均値まわりのバラツキを、分布で表現している。従来技術によったウエーハ基板では、図4より抵抗率RBの変動幅SBがほぼ±15%以内に入っているのに対して、本実施例によったウエーハ基板では図3より抵抗率RAの変動幅SAはほぼ±8%以内に入りほぼ半減している。また、図3および図4から判るように、従来技術により成長させた結晶では結晶中心部において抵抗率RBが平均値より低下しているのに対し、本実施例での結晶では結晶中心部の抵抗率RAが従来に比べて上昇しており、結晶面内においてほぼ均一な抵抗率RAの分布が得られており、その効果が大きいことが判明した。
【0020】
また、本実施例の単結晶棒43Aは、単結晶棒回転速度15rpmとし、従来技術より早い回転速度に増して成長させた。これより、溶融部39A内の溶融の流れは、本来なら溶融部39Aの表面の温度勾配が緩い場合には、図11に示し前述したように、内部の流れが回転速度の増加により大きい渦51から小さい渦53のように活性化されなくなる。しかし、本実施例では前述したように、単結晶棒43Aは温度勾配が実線(A)に示すように増加されているために、溶融部39A内の溶融の流れは、大きい渦51よりも更に活性化される。このため、前述したように、本実施例によって得られるウエーハの面内の抵抗率RAの分布は従来技術のものより小さくなるとともに、均一になる。
【0021】
また、本実施例では、単結晶棒回転速度15rpmは後述する従来技術によるものより速く回転させている。すなわち、単結晶棒43Aの回転速度を高速に保つことが出来るため、1回転する間の成長量が小さくなり、微小領域での抵抗分布の変動も図5に示すごとく小さく抑えることができる。一方、従来技術において結晶棒43Bの回転速度を、本実施例で結晶面内においてほぼ均一な抵抗率RAの分布が得られる速度、すなわち5rpmに等しくした場合、結晶の回転速度が遅いため、1回転する間の成長量が大きくなるとともに、前述した周方向の温度不均一の影響を受ける時間が長いため微小領域での広がり抵抗分布には、図6に示す如く大きな変動が生じてしまう。
【0022】
図5および図6では、横軸は単結晶棒43A、43Bより作製したウエーハ基板端からの距離(mm)を、縦軸は広がり抵抗QA、QBの変動(%)を表し、結晶面内にわたって測定した広がり抵抗の平均値をゼロとして、平均値まわりのバラツキで、分布を表現してある。従来技術によるウエーハ基板では、図5より広がり抵抗QBの変動幅WBがほぼ±35%以内に入っているのに対して、本実施例で得られたウエーハ基板では図4より広がり抵抗QAの変動幅WAはほぼ±20%以内に入りほぼ60%低減している。
【0023】
図7は、他の実施例の冷却手段21を示す平面図である。
図7において、冷却手段21がコイル35と同芯軸上で、コイル35から一定間隔離間した下側の位置に配設されている。冷却手段21は、凝固した単結晶棒43AをスキマTaを介して内部に収容する熱放射率の高い材質よりなる冷却板5と、冷却板5の外周の半分にそれぞれ当接されて巻回付設され、冷却板5を保持する熱伝達率の高い第1配管23と第2配管25とから構成されている。冷却板5は、その外周に付設された第1配管23と第2配管25により挟持されて保持されている。第1配管23および第2配管25は、それぞれ冷却板5の外周に沿って上下方向に複数個配設されている。
【0024】
第1配管23および第2配管25は、例えば、熱伝達率が高い材質の銅よりなる銅配管よりなり、図7に示すように、第1配管23の入口側第1配管23aおよび第2配管25の入口側第2配管25aは、コイル35の給電部33の下側、すなわち、空隙45の下側で結晶成長炉1Aに保持されるとともに、結晶成長炉1Aを貫通して結晶成長炉1A内に入っている。入口側第1配管23aおよび入口側第2配管25aは、結晶成長炉1Aの外側で温度調節器27を経て図示しない冷却流体源に接続されている。
【0025】
第1配管23および第2配管25は、冷却板5の外周の半分にそれぞれが当接されて巻き回された後、入口側第1配管23aおよび入口側第2配管25aの反対側で、出口側第1配管23bおよび出口側第2配管25bとして結晶成長炉1Aに保持されるとともに、結晶成長炉1Aを貫通して外部に出されて排出路、あるいは、温度調節器27に接続されている。また、第1配管23および第2配管25は、図1と同様に軸の上下方向に複数個配設されている。
【0026】
第1配管23および第2配管25は、周方向の温度が高いコイル35の空隙45側に設けられた冷却口から空隙45の反対側の温度の低いコイル35に向けて冷却流体を流している。これにより、温度が高いコイル35の空隙45側の下部の溶融部39Aは入口側第1配管23aおよび入口側第2配管25aの冷却口からのより低い冷却流体により冷却され、また、反対側では単結晶棒43Aからの熱を受けた冷却口側より温度の高い冷却流体により冷却されるため、空隙45側の冷却が大きくなり周方向で均一なゾーン部温度差を得ることができる。第1配管23および第2配管25に供給される冷却流体は温度調節器27により温度が制御されて供給されている。供給される冷却流体の温度が温度調節器27により変更されることにより、図8に示すように、単結晶棒43Aの溶融部39Aの溶融部表面温度差、すなわち、温度勾配を制御することができる。
【0027】
図8では、横軸は冷却手段の熱放射率を、縦軸は溶融部表面温度差(℃)を表している。図中の直線(C)の溶融部表面温度差(℃)は、例えば、MA点では本実施例のゾーン部温度差68.6℃の熱放射率が0.9の場合であり、また、MB点では従来技術によるゾーン部温度差56.2の熱放射率が0.55の場合である。この間の熱放射率は、冷却手段21に付設されている第1配管23および第2配管25の中を流れる冷却水の温度を温度調節器27により制御して変更することにより適宜選択できる。これにより、温度勾配を制御することで、所望の抵抗率をもつp型あるいはn型のシリコン単結晶が得られるとともに、不均一になりがちなFZ法のシリコン結晶の面内分布をほぼ均一にできる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、FZ法によって製造する半導体単結晶は、成長中の単結晶棒側面付近に冷却手段を設置することで、結晶からの熱放射を促進することができる。この結果、コイルへの投入電力量は、結晶成長に必要な熱バランスを確保するために増加される。このため、溶融部表面の温度勾配が増加し、ひいては溶融部内の対流力を増加することができる。これにより、通常であれば単結晶棒の回転速度が早い領域において、対流が抑制され、淀みにより結晶中心部で抵抗率の低下が起きてしまうが、本発明では、溶融部内の対流力を増加することで単結晶棒の回転速度が早い領域においても、結晶面内全域にわたって均一な抵抗率分布をもつ結晶を成長させることができる。さらに、高回転の効果として、微小領域での抵抗変動も小さく抑えることができるようになる。また、界面に近い方に冷却流量の入口を設けたことにより、温度勾配を大きくとれ、溶融部の流れを活性化でき、均一な抵抗率分布をもつ結晶を成長させることができる。また、冷却手段は温度が制御できることにより、温度勾配が制御され、所望の抵抗率をもつp型あるいはn型のシリコン単結晶が得られるとともに、不均一になりがちなFZ法のシリコン結晶の面内分布をほぼ均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用される半導体単結晶製造装置を構成する一実施例による成長炉内の一部側面断面図である。
【図2】 結晶中心からの距離と溶融表面温度(温度勾配)との関係を説明する図である。
【図3】 本発明が適用される半導体単結晶製造装置を構成する一実施例の成長炉で製造したシリコン単結晶面内の抵抗分布率を示す図である。
【図4】 従来の半導体単結晶製造装置で製造したシリコン単結晶面内の抵抗分布率を示す図である。
【図5】 本発明の半導体単結晶製造装置を構成する一実施例の成長炉で製造したシリコン単結晶面内の広がり抵抗分布を示す図である。
【図6】 従来の半導体単結晶製造装置で製造したシリコン単結晶面内の広がり抵抗分布を示す図である。
【図7】 本発明に採用される冷却手段の他の実施形態を示す平面図である。
【図8】 熱放射率と溶融表面温度(温度勾配)との関係を説明する図である。
【図9】 従来の半導体単結晶製造装置の一部側面断面図である。
【図10】 半導体単結晶の製造に用いられる誘導加熱コイルの平面図である。
【図11】 溶融部内の対流変化の模式図である。
Claims (4)
- 加熱コイルにより多結晶棒を溶融し、その溶融部の下方で凝固させて単結晶棒を成長させるフローティングゾーン法の半導体単結晶製造方法において、単結晶棒成長域の周囲を強制的に冷却するとともに誘導加熱コイルへの入力電力量を増加させて溶融部表面の温度勾配を大きくし、溶融部内の対流を活性化して単結晶棒を成長させ、単結晶棒の回転速度を制御することにより単結晶面内の微小領域での抵抗変動を制御することを特徴とする半導体単結晶製造方法。
- 冷却流体を単結晶棒の界面側から周回させながら下方に順次流すようにしてなることを特徴とする請求項1記載の半導体単結晶製造方法。
- 前記加熱コイルによる単結晶棒周方向の加熱温度分布における高温領域の下部にて冷却流体を導入するようにしてなることを特徴とする請求項1記載の半導体単結晶製造方法。
- 冷却流体の導入温度を調節して単結晶棒の温度勾配を制御することを特徴とする請求項1記載の半導体単結晶製造方法。
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