JP5051044B2 - シリコン単結晶の育成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という)によるシリコン単結晶の育成方法に関し、特に、ルツボ内のシリコン融液に水平方向の横磁場を印加しつつ、ルツボ内にシリコン融液を逐次供給しながらシリコン単結晶を引き上げ育成する、連続チャージ方式の横磁場印加CZ法によるシリコン単結晶の育成方法に関する。
シリコン単結晶は、半導体デバイスに用いられるシリコンウェーハの素材であり、その製造には、CZ法による単結晶育成方法が広く採用されている。通常、CZ法によるシリコン単結晶の育成では、減圧下の不活性ガス雰囲気に維持された単結晶育成装置内において、石英ルツボ内に初期チャージとして充填された多結晶シリコンなどのシリコン原料をヒータにより加熱し融解させる。石英ルツボ内にシリコン融液が形成されると、石英ルツボの上方で引き上げ軸に保持された種結晶を下降させシリコン融液に浸漬する。この状態から種結晶および石英ルツボを所定の方向に回転させながら種結晶を徐々に上昇させ、これにより、種結晶の下方にシリコン単結晶が育成され引き上げられる。
近年では、石英ルツボを挟んで一対の電磁コイルを対向配置し、その電磁コイルにより石英ルツボ内のシリコン融液に横磁場を印加しながらシリコン単結晶の育成を行う、横磁場印加CZ法(以下、「HMCZ法」という)が多用されている。HMCZ法による単結晶育成方法は、横磁場の印加によりシリコン融液の自然対流を抑制できることから、変動の少ない熱環境下で単結晶の育成が可能であり、シリコン単結晶中の酸素濃度を制御でき、安定した品質のシリコン単結晶を製造するのに有効な方法である。特に、この方法は、シリコン融液の精密な温度制御のもとで、シリコン単結晶の直径変動を低減しつつ、低速で速度変動を抑制した引き上げを行い、COP(Cristal Originated Particle)や転位クラスターなどのgrown−in欠陥が存在しない無欠陥単結晶の育成で好適に用いられる。
一方、シリコン単結晶は、シリコンウェーハの素材であることから、品質特性として電気的特性が要求され、用途に応じて比抵抗が規定される。このため、シリコン単結晶を育成する際は、B(ボロン)、P(リン)、As(砒素)、またはSb(アンチモン)などのドーパントを初期チャージでルツボ内に適量添加して、シリコン融液中のドーパント濃度を調整し、これにより、育成されるシリコン単結晶中のドーパント濃度を調整し、比抵抗を制御している。
ところが、シリコン単結晶の育成では、育成が進行するのに伴い、ルツボ内に残存するシリコン融液が減少するとともに、固相のシリコン単結晶と液相のシリコン融液との間での不純物元素の偏析現象に起因して、シリコン融液中のドーパント濃度が上昇し、シリコン単結晶中のドーパント濃度も上昇するため、単結晶の比抵抗が次第に低下するという問題がある。
シリコン単結晶の比抵抗の低下を抑制する方法として、シリコン単結晶を育成する際に、単結晶引き上げ用のルツボにシリコン融液または固形のシリコン原料を逐次供給する、連続チャージ方式のCZ法がある。連続チャージ方式のCZ法では、単結晶育成中に、ルツボにシリコン融液または固体シリコン原料を供給することから、そのルツボ内のシリコン融液中のドーパント濃度をほぼ一定に確保することができ、これにより、シリコン単結晶中のドーパント濃度がほぼ一定になり、単結晶の比抵抗を均一にすることができる。
ここで、固形のシリコン原料をルツボに供給する場合は、ルツボ内のシリコン融液に温度変動が生じ易く、育成するシリコン単結晶の品質低下が懸念されるため、シリコン融液を供給する手法の方が実用的である。
連続チャージ方式のCZ法によりシリコン単結晶を育成する技術に関し、特許文献1には、単結晶育成中に、ルツボの原料融液充填域に先端部を浸漬させた保護筒を通じて、シリコン融液を供給する単結晶育成装置が提案されている。また、特許文献2には、ルツボの内側にシリコン融液の液面よりも高い隔壁を同心状に設け、この隔壁の内側で単結晶の引き上げを行いながら、その隔壁とルツボの側壁との間にシリコン融液を供給し、隔壁の下部に形成した孔を通じて隔壁の内側にシリコン融液を導入する単結晶育成装置が提案されている。
しかし、前記特許文献1に提案された単結晶育成装置を用い、横磁場を印加しながらシリコン単結晶を育成した場合、ルツボへのシリコン融液の供給位置によっては、単結晶育成中に、シリコン単結晶の直径変動や引き上げ速度の変動が著しく発生し、製品歩留りが低下することがあった。
また、前記特許文献2に提案された単結晶育成装置を用い、横磁場を印加しながら単結晶の育成を行う場合は、単結晶育成中に、シリコン単結晶の直径や引き上げ速度は安定しているが、ルツボの内側に設置された隔壁が石英製であることから、ルツボ内のシリコン融液にはルツボ内表面のみならず隔壁からも酸素が溶出する。このため、ルツボ内のシリコン融液に溶出する酸素の量が増大し、シリコン単結晶中の酸素濃度が規格を超えて過度に高くなり、製品歩留りが低下する。しかも、前記特許文献2に提案された単結晶育成装置では、ルツボの内側に隔壁を設置するために、ルツボの製作コストが悪化する。
特開平2−279582号公報 特開昭52−58080号公報
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、連続チャージ方式のHMCZ法によりシリコン単結晶を育成する際に、ルツボへのシリコン融液の供給位置を特定の範囲内に制限することにより、製品歩留りを低下させることなく、安定した品質のシリコン単結晶を育成することができるシリコン単結晶の育成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、ルツボの内部に隔壁を設けずに行う連続チャージ方式のHMCZ法による単結晶の育成において、ルツボへのシリコン融液の供給位置によってシリコン単結晶の直径変動や引き上げ速度の変動の発生度合いが異なることに着目し、その発生メカニズムを詳細に検討した。その結果、シリコン単結晶の直径変動や引き上げ速度の変動は、横磁場の印加に伴って生じるルツボ内のシリコン融液の流れに起因して発生することを知見した。
図1は、HMCZ法におけるルツボ内のシリコン融液の流れを模式的に示す図であり、同図(a)に斜視図を、同図(b)に平面図をそれぞれ示す。HMCZ法におけるルツボ内のシリコン融液の流れは、図1中の実線矢印で示すように、図1中の太線矢印で示す横磁場の中心線の両側で、横磁場の印加方向に垂直な一対のロール状の流れとなる。これらのロール状流れは、横磁場の中心線を挟んで面対称となる対流であり、シリコン融液の液面付近で横磁場の中心線側に向く流れである。
そうすると、ルツボ内のシリコン融液におけるルツボの側壁とシリコン単結晶の外周との間の環状領域R(図1(b)中のハッチング部およびクロスハッチング部)のうち、シリコン単結晶の外周から横磁場の印加方向と直交する方向に延在する第1領域R1(図1(b)中のハッチング部)に、高温状態に調整したシリコン融液を供給した場合、その高温融液は、ルツボ内のシリコン融液の対流によりシリコン単結晶が存在する方向に流れ、結晶成長界面に達する。その結果、結晶成長界面における融液温度が局部的に変動し、これに伴って単結晶の直径変動や引き上げ速度の変動が発現する。
一方、上記の環状領域Rのうち、上記の第1領域R1を除く第2領域R2(図1(b)中のクロスハッチング部)に、高温状態のシリコン融液を供給した場合、その高温融液は、ルツボ内のシリコン融液の対流によりシリコン単結晶が存在しない方向にしか流れず、結晶成長界面に達することはない。その結果、結晶成長界面における融液温度が局部的に変動することはなく、単結晶の直径変動や引き上げ速度の変動を抑制することができる。
本発明は、このような知見に基づいて完成させたものであり、その要旨は、下記のシリコン単結晶の育成方法にある。すなわち、ルツボを挟んで一対の電磁コイルを対向配置し、電磁コイルによりルツボ内のシリコン融液に横磁場を印加しつつ、ルツボ内にシリコン融液を供給しながらCZ法によりシリコン単結晶を育成する方法であって、ルツボ内のシリコン融液におけるルツボの側壁とシリコン単結晶の外周との間の環状領域のうち、シリコン単結晶の外周から横磁場の印加方向と直交する方向に延在する第1領域を除く第2領域に、シリコン融液を供給することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法である。
この育成方法において、前記第2領域へのシリコン融液の供給は、前記第2領域のシリコン融液に融液供給管の先端部を浸漬し、この融液供給管を通じて行うことが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の育成方法によれば、ルツボ内のシリコン融液に対し、第2領域の範囲内にシリコン融液を供給する構成であるため、ルツボの内側に隔壁を設けなくても、ルツボ内に供給された高温融液は、横磁場の印加に伴って生じるシリコン融液の対流により、結晶成長界面に達することはない。従って、結晶成長界面における融液温度が局部的に変動することはなく、単結晶の直径変動や引き上げ速度の変動を抑制することができ、製品歩留りを低下させずに、安定した品質のシリコン単結晶を育成することが可能になる。
以下に、本発明のシリコン単結晶の育成方法について、その実施形態を詳述する。
図2は、本発明の一実施形態である連続チャージ方式のHMCZ法によるシリコン単結晶の育成に適した単結晶育成装置の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、単結晶育成装置は、その外郭をチャンバ1で構成され、チャンバ1内の中心部に単結晶引き上げ用のルツボ2が配置されている。このルツボ2は二重構造になっており、内側の石英ルツボ2aと、外側の黒鉛ルツボ2bとから構成される。ルツボ2は、支持軸3の上端部に固定され、その支持軸3の回転駆動および昇降駆動を介して、周方向に回転するとともに軸方向に昇降することが可能である。
単結晶引き上げ用ルツボ2の外側には、このルツボ2を囲繞する抵抗加熱式のヒータ4が配設され、そのさらに外側には、チャンバ1の内面に沿って断熱材5が配されている。ヒータ4は、ルツボ2内に充填された固体シリコン原料を融解させ、これにより、ルツボ2内にシリコン融液10が形成される。
単結晶引き上げ用ルツボ2の上方には、支持軸3と同軸上にワイヤなどの引き上げ軸6が配されている。引き上げ軸6は、チャンバ1の上端に設けられた図示しない引き上げ機構により回転するとともに昇降することが可能である。引き上げ軸6の先端には、種結晶7が取り付けられている。引き上げ軸6の駆動に伴って、種結晶7をルツボ2内のシリコン融液10に浸漬し、その種結晶7を回転させながら徐々に上昇させることにより、種結晶7の下方に、シリコン単結晶11が育成される。
さらに、チャンバ1内には、引き上げ中のシリコン単結晶11を囲繞する筒状の熱遮蔽体8が配設されている。熱遮蔽体8は、単結晶引き上げ用ルツボ2内のシリコン融液10やヒータ4からの輻射熱を遮断し、引き上げ中のシリコン単結晶11の冷却を促進させる役割を果たす。
また、チャンバ1の外側には、単結晶引き上げ用ルツボ2を挟んで対向する一対の電磁コイル9が配設されている。電磁コイル9は、電磁コイル9同士の間に水平方向の横磁場を発生させ、ルツボ2内のシリコン融液10に横磁場を印加する。横磁場の印加により、シリコン融液10の自然対流が抑制され、結晶成長界面における融液温度の急激な変動が抑えられるため、有転位化や直径変動などが発生しない高品質のシリコン単結晶11を育成することができる。
図2に示す単結晶育成装置は、シリコン単結晶11を育成する過程で単結晶引き上げ用のルツボ2にシリコン融液を逐次供給する融液供給装置20を備えている。本実施形態の融液供給装置20は、以下のように構成される。
図2に示すように、チャンバ1内には、単結晶引き上げ用ルツボ2の上方で、そのルツボ2の中心軸から外れた位置に、原料融解用のルツボ21が配設されている。この原料融解用ルツボ21は、銅などの熱伝導性および導電性に優れた金属から成る水冷ルツボ22と、この水冷ルツボ22の内側に配された石英ルツボ23とから構成される。
水冷ルツボ22は、周方向で複数のセグメントに分割されて成り、内部を流通する冷却水との熱交換により冷却される。冷却水は、図示しない給水管を通じて水冷ルツボ22に導入され、水冷ルツボ22自身に形成された図示しない流路を経た後、図示しない排水管を通じて外部に排出される。石英ルツボ23の底には、上下方向に延在する石英製の融液流出管24が連結されており、この融液流出管24は、水冷ルツボ22の底を貫通している。
このような水冷ルツボ22と石英ルツボ23とで構成される原料融解用ルツボ21の外側には、このルツボ21を囲繞する誘導加熱コイル25が周設されている。この誘導加熱コイル25は、図示しない配線を介して電源装置に接続されており、その電源装置から交流電流が印加される。
原料融解用ルツボ21の上方には、石英製の原料供給管26が設けられている。この原料供給管26はチャンバ1を貫通し、その上端に図示しない原料フィーダが接続され、その下端が石英ルツボ23の内側に配置されている。原料供給管26には原料フィーダから固形のシリコン原料が導入され、原料供給管26を介して原料融解用ルツボ21にシリコン原料を供給することができる。
また、原料融解用ルツボ21の下方には、石英ルツボ23からの融液流出管24と同軸上で石英製の融液供給管27が配設されている。この融液供給管27は、その上端が融液流出管24の下端に向けて開口し、その下端部が単結晶引き上げ用ルツボ2の側壁の内側近傍でそのルツボ2内のシリコン融液10に浸漬するように構成される。
このように構成された融液供給装置20では、原料供給管26を介して石英ルツボ23に固体シリコン原料を供給し、誘導加熱コイル25に交流電流を印加することにより、誘導加熱コイル25の内側に磁界が形成される。この磁界により、石英ルツボ23内の固体シリコン原料に渦電流が生じ、この渦電流により発生するジュール熱で固体シリコン原料が発熱する。その結果、石英ルツボ23内で固体シリコン原料を融解させ、シリコン融液30を形成することができる。
さらに、形成されたシリコン融液30は、水冷ルツボ22の内表面に生じる渦電流とシリコン融液30の表面に生じる渦電流とによる電磁力の作用で浮揚力を受ける。石英ルツボ23内のシリコン融液30は、その浮揚力とシリコン融液自身の重量とのバランスにより、その位置に保持されつつ石英ルツボ23と非接触に維持される。
この状態で、原料供給管26から石英ルツボ23に固体シリコン原料を供給することにより、石英ルツボ23内に保持されているシリコン融液30のうち、固体シリコン原料の供給量に相当する量のシリコン融液30が、融液流出管24を通じて石英ルツボ23から流出する。そして、流出したシリコン融液30は、融液供給管27を通じて、単結晶引き上げ用ルツボ2に供給される。
このとき、石英ルツボ23に供給された固体シリコン原料は、石英ルツボ23内に存在するシリコン融液30と接触することにより温度が上昇し、誘導加熱コイル25からの電磁誘導で容易に融解する。
図3は、本発明における単結晶引き上げ用のルツボ内へのシリコン融液の供給位置を示す模式図である。同図に示すように、単結晶育成用のルツボ2内のシリコン融液10は、ルツボ2の側壁とシリコン単結晶11の外周との間の環状領域R(図3中のハッチング部およびクロスハッチング部)で上方に開放している。
本発明においては、その環状領域Rを第1領域R1(図3中のハッチング部)と第2領域R2(図3中のクロスハッチング部)に区分し、そのうちの第2領域R2にのみシリコン融液の供給を許容する構成としている。第1領域R1は、シリコン単結晶11の外周から横磁場の印加方向と直交する方向に延在する領域であり、その幅Wはシリコン単結晶11の直径Dと同一である。すなわち、第1領域R1は、横磁場の印加方向と直交する方向でシリコン単結晶11を挟む領域である。第2領域R2は、第1領域R1を除く領域であり、横磁場の印加方向でシリコン単結晶11を挟む領域である。
図3では、ルツボ2内にシリコン融液を供給するための融液供給管27を、第2領域R2における横磁場の中心線上に相当する位置に配置した状態を示しており、第2領域R2の範囲内に融液供給管27を配置するものである。特に、第2領域R2の範囲の内、横磁場装置の配置位置に近いルツボ2の側壁部近傍に融液供給管27を配置することが望ましい。
このように、単結晶育成用のルツボ2内のシリコン融液10に対し、第2領域R2の範囲内に融液供給管27を配置して高温状態のシリコン融液を供給する構成では、上述した通り、ルツボ2内に供給された高温融液は、横磁場の印加に伴って生じるルツボ2内のシリコン融液10の対流により、シリコン単結晶が存在しない方向にしか流れず、結晶成長界面に達することはない。その結果、結晶成長界面における融液温度が局部的に変動することはなく、単結晶の直径変動や引き上げ速度の変動を抑制することができる。
しかも、本発明では、単結晶育成用のルツボ2の内部に前記特許文献2に記載されるような石英製の隔壁を設ける必要がないことから、シリコン単結晶中の酸素濃度が過度に高くなる事態は起こらない。
従って、本発明のシリコン単結晶の育成方法によれば、製品歩留りを低下させることなく、安定した品質のシリコン単結晶を育成することができる。
また、上記した単結晶育成装置では、融液供給管27の先端部を単結晶育成用ルツボ2内のシリコン融液10に浸漬させているため、そのシリコン融液10が供給融液の着液に伴って飛散したり波打つのを防止することができ、育成するシリコン単結晶の品質を一層安定させることが可能になる。
上記した融液供給装置20では、原料融解用ルツボ21を石英ルツボ23と水冷ルツボ22とから構成しているが、融液供給管27を通じてシリコン融液を単結晶育成用ルツボ2に供給することができる限り、水冷ルツボ22に代えて導電性の低い断熱材を採用しても構わない。
本発明のシリコン単結晶の育成方法による効果を確認するため、以下の試験を行った。前記図2に示す単結晶育成装置を用い、内径32インチの単結晶引き上げ用ルツボを使用し、これにシリコン原料として粒塊状の多結晶シリコン200kgを初期チャージして融解させ、このシリコン融液から長さ1000mmのシリコン単結晶を育成した。育成条件は、横磁場の強度を3000ガウス、単結晶引き上げ用ルツボの回転数を1rpm、および引き上げ軸の回転数を8rpmとした。
その際、誘導加熱コイルに周波数30kHzの交流電流を電力56kWで印加して、原料融解用ルツボ内で固体シリコン原料を融解させ、単結晶引き上げ用ルツボ内のシリコン融液の液面位置が一定となるように、シリコン融液を逐次供給した。この融液供給は、内径40mmの融液供給管を用い、その先端部を単結晶引き上げ用ルツボ内のシリコン融液に50mm浸漬させた状態で行った。
本実施例1の試験では、単結晶引き上げ用ルツボへのシリコン融液の供給位置、すなわち融液供給管を配置した位置を、下記図4に示すA〜Dの4点に変動させ、A〜Dの各点でシリコン融液を供給しながらシリコン単結晶を育成した。
図4は、実施例1の試験で採用したシリコン融液の供給位置を示す模式図である。同図に示すように、第2領域R2の範囲内のA点およびB点は、本発明例として採用した融液供給位置であり、第1領域R1の範囲内のC点およびD点は、比較例として採用した融液供給位置である。
そして、A〜Dの各点で融液供給を行いながらシリコン単結晶を育成する過程で、単結晶の直径変動および引き上げ速度の変動を評価した。具体的には、操業が安定する結晶引き上げ長さ300〜800mmの範囲で、引き上げ長さ20mmごとに単結晶の直径を測定し、目標の直径に対する測定直径のズレ量で単結晶の直径変動を評価した。また、同じく結晶引き上げ長さ300〜800mmの範囲で、引き上げ長さ10mm間での平均引き上げ速度を算出し、目標の引き上げ速度に対する算出速度の比率で引き上げ速度の変動を評価した。
図5は、実施例1の試験によるシリコン単結晶の直径変動の結果を示す図である。同図に示すように、融液供給位置がA点およびB点(第2領域R2の範囲内)である本発明例では、融液供給位置がC点およびD点(第1領域R1の範囲内)である比較例と比べて、単結晶の直径変動が明らかに抑制された。
図6は、実施例1の試験による引き上げ速度の変動の結果を示す図である。同図に示すように、融液供給位置がA点およびB点である本発明例では、融液供給位置がC点およびD点である比較例と比べて、引き上げ速度の変動が顕著に抑制され、目標の引き上げ速度に対して±5%の範囲内に十分確保された。
本実施例2の試験では、無欠陥単結晶の育成を意図して、上記の実施例1の試験条件に対し、引き上げ速度を低速に変更するとともに、単結晶引き上げ用ルツボ内の融液面から熱遮蔽体の下端までの間隔を変更し、上記のA〜Dの各点で融液供給を行いながら2本ずつ単結晶を育成した。そして、育成した単結晶それぞれについて、無欠陥となり得るべき結晶引き上げ長さの領域に対し、実際に無欠陥となった領域の割合を評価した。その結果を下記の表1に示す。
Figure 0005051044
同表に示すように、融液供給位置がA点およびB点である本発明例では、融液供給位置がC点およびD点である比較例と比べて、無欠陥領域の割合が格段に向上した。
本実施例3の試験では、上記の実施例1の試験での比較例として、前記特許文献2に記載されるような石英製の隔壁を設けた単結晶育成用ルツボを使用した。その際、融液供給位置を隔壁とルツボの側壁との間であって上記のA点に相当する位置とし、単結晶の育成を行った。そして、A点で融液供給を行いながら育成した本発明例の単結晶と、比較例の単結晶それぞれについて、引き上げ方向全域に亘ってサンプルウェーハを採取し、各サンプルウェーハの中心部での酸素濃度を測定した。その結果を下記の表2に示す。
Figure 0005051044
同表に示すように、融液供給位置がA点である本発明例では、隔壁を有するルツボを用いた比較例と比べて、酸素濃度が著しく低減した。
本発明のシリコン単結晶の育成方法によれば、単結晶育成用のルツボ内のシリコン融液に対し、第2領域の範囲内にシリコン融液を供給する構成であるため、ルツボの内側に隔壁を設けなくても、ルツボ内に供給された高温融液は、横磁場の印加に伴って生じるシリコン融液の対流により、結晶成長界面に達することはない。従って、結晶成長界面における融液温度が局部的に変動することはなく、単結晶の直径変動や引き上げ速度の変動を抑制することができ、その結果、製品歩留りを低下させずに、安定した品質のシリコン単結晶を育成することが可能になる。
HMCZ法におけるルツボ内のシリコン融液の流れを模式的に示す図であり、同図(a)に斜視図を、同図(b)に平面図をそれぞれ示す。 本発明の一実施形態である連続チャージ方式のHMCZ法によるシリコン単結晶の育成に適した単結晶育成装置の構成を模式的に示す図である。 本発明における単結晶引き上げ用のルツボ内へのシリコン融液の供給位置を示す模式図である。 実施例1の試験で採用したシリコン融液の供給位置を示す模式図である。 実施例1の試験によるシリコン単結晶の直径変動の結果を示す図である。 実施例1の試験による引き上げ速度の変動の結果を示す図である。
符号の説明
1:チャンバ、 2:単結晶引き上げ用ルツボ、 2a:石英ルツボ、
2b:黒鉛ルツボ、 3:支持軸、 4:ヒータ、 5:断熱材、
6:引き上げ軸、 7:種結晶、 8:熱遮蔽体、 9:電磁コイル、
10:原料融液、 11:シリコン単結晶、
20:融液供給装置、 21:原料融解用ルツボ、 22:水冷ルツボ、
23:石英ルツボ、 24:融液流出管、 25:誘導加熱コイル、
26:原料供給管、 27:融液供給管、 30:シリコン融液

Claims (2)

  1. ルツボを挟んで一対の電磁コイルを対向配置し、電磁コイルによりルツボ内のシリコン融液に横磁場を印加しつつ、ルツボ内にシリコン融液を供給しながらチョクラルスキー法によりシリコン単結晶を育成する方法であって、
    ルツボ内のシリコン融液におけるルツボの側壁とシリコン単結晶の外周との間の環状領域のうち、シリコン単結晶の外周から横磁場の印加方向と直交する方向に延在する第1領域を除く第2領域に、シリコン融液を供給することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。
  2. 前記第2領域へのシリコン融液の供給は、前記第2領域のシリコン融液に融液供給管の先端部を浸漬し、この融液供給管を通じて行うことを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の育成方法。
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