JP4520030B2 - ステンレス用冷間圧延油 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス用冷間圧延油に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷間圧延により製造されるステンレスには種々のものがあり、それらに求められる性状も様々である。例えば、バネ材ステンレスは、伸び、引っ張り強さ、耐力といった一般のステンレスに要求される性能に加え、特定の曲げ性および硬さが性質として重要である。
【0003】
ステンレスの冷間圧延では、通常は生産性を上げるために圧延速度を上げ、圧下率を高くして加工をおこなうため、この条件でも焼き付きが起こらない圧延油が要望される。一方、バネ材ステンレス等のある種のステンレス圧延物の製造においては、圧延後の製品に対して要求される性状を満たすために特殊な条件での圧延が必要となる。具体的には例えば、圧延の工程の一部で低圧下率で圧延する必要が生じる場合がある。
【0004】
このような低圧下率のもとでは焼き付きといった問題は生じないが、接触弧内での材料とワークロールの接触率が下がるため、ワークロール幅方向に対してロールコーティングにむらが発生しやすくなる。そのコーティングむらは、転写により圧延後の板表面に光沢むらを起こす。この光沢むらの発生は高品位な表面性状を求められるステンレスにとっては大きな問題となる。このような低圧下率での圧延における光沢むらを減少させるため、従来は接触率を少しでも上げるために圧延速度を遅くすることで対応しているが、圧延速度を遅くすることは生産性を低下させるという大きな不利益をもたらす。
【0005】
圧延速度を遅くする以外の光沢むら発生防止方法としては、圧延油の粘度を下げる、油性剤の添加量を下げる等の方法が考えられる。しかしながら、このような方法をとった場合、いずれも圧延条件が厳しいパスではヒートスクラッチを発生してしまう可能性が高く、実用的にこれらの方法をとることは困難である。
【0006】
従って、高圧下率時で焼き付き、ヒートスクラッチ等を生じず、且つ低圧下率で圧延速度を上げても光沢むらを生じない圧延油の開発が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高圧下率時で焼き付き、ヒートスクラッチ等を生じず、且つ低圧下率で圧延速度を上げても光沢むらを生じないステンレス用冷間圧延油を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記式(I)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中R1及びR2は同一又は異なる基であって炭素数3〜5の炭化水素基を示し、nは4〜8の数を示す。)で表わされるジエステルを含むステンレス用冷間圧延油が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のステンレス用冷間圧延油は、前記式(I)で表わされるジエステルを含む。
【0012】
前記式(I)において、R1、R2は同一又は異なる基であって、炭素数3〜5の炭化水素基である。R1、R2の炭素数を3以上とすることにより、ヒートスクラッチ発生限界が高いステンレス用冷間圧延油を与えることができ、5以下とすることにより圧延後の板表面に光沢むらを発生させにくいステンレス用冷間圧延油を与えることができる。また、前記式(I)においてnは4〜8の数を示す。nが8より大きいと光沢むらを発生する。また、nが4より小さいと圧下率の高い条件において焼き付きを生じやすい。このうち、原料の入手のしやすさ、および価格の点からn=4、6が特に好ましい。
【0013】
本発明のステンレス用冷間圧延油中の前記ジエステルのR1及びR2としては、アルキル基、アルケニル基等が使用可能であるが、この中でもアルキル基が好ましい。アルキル基としては、直鎖のもの又は分岐のものを用いることができ、直鎖のものと分岐のものが混在したものを用いることもできるが、分岐のものが好ましい。前記R1、R2としては、具体的には例えば、直鎖又は分岐のプロピル基、直鎖又は分岐のブチル基、直鎖又は分岐のペンチル基等を挙げることができる。
【0014】
本発明のステンレス用冷間圧延油中の前記ジエステルの含有割合は特に制限されないが、焼き付き、ヒートスクラッチに関し良好な効果が得られ、且つ圧延後の板表面に光沢むらを発生させにくいという点で通常1質量%以上99質量%以下、好ましくは2質量%から75質量%、より好ましくは3質量%から60質量%である。
【0015】
前記式(I)で表わされるジエステルは、炭素数6〜10(炭素数6から順に、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸)の直鎖飽和ジカルボン酸又はその誘導体と炭素数3〜5のアルコールとをエステル化させる等の任意の方法で得ることができる。
【0016】
本発明のステンレス用冷間圧延油は、前記特定のジエステルに加えて、アルコールを含むことが好ましい。アルコールを含有することにより、焼き付き、ヒートスクラッチに関しさらに良好な効果が得られるばかりでなく、表面光沢もさらに向上させることができる。
【0017】
前記アルコールとしては、特に制限はないが、冬期における流動性および圧延油への溶解性の点から、また、耐ヒートスクラッチ性能および作業環境の点から炭素数が12〜18のアルコールを含むことが好ましい。具体的には各種の飽和アルコール又は不飽和アルコール等を挙げることができ、飽和アルコール、不飽和アルコール共良好に使用することができるが、流動性、臭気等の作業性、耐ヒートスクラッチ性能の点から直鎖アルコールと分岐アルコールを併用することが好ましい。直鎖のものが占める割合は炭素数12〜18のアルコール全量基準で通常40質量%〜90質量%、好ましくは35質量%〜90質量%、好ましくは40質量%〜80質量%、さらに好ましくは50質量%〜70質量%である。前記飽和アルコールとしては、具体的には例えば、直鎖又は分岐状のドデカノール、直鎖又は分岐状のトリデカノール、直鎖又は分岐状のテトラデカノール、直鎖又は分岐状のペンタデカノール、直鎖又は分岐状のヘキサデカノール、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0018】
前記不飽和アルコールとしては、直鎖状または分岐状のデセノール、直鎖状または分岐状のウンデセノール、直鎖状または分岐状のドデセノール、直鎖状または分岐状のトリデセノール、直鎖状または分岐状のテトラデセノール、直鎖状または分岐状のペンタデセノール、直鎖状または分岐状のヘキサデセノール、直鎖状または分岐状のヘプタデセノール、 直鎖状または分岐状のオクタデセノール等が挙げられる。
【0019】
本発明の圧延油がアルコールを含む場合のアルコールの含有割合は特に限定されないが、ヒートスクラッチ防止性能および表面光沢の点から圧延油中、通常1質量%以上20質量%以下、好ましくは2質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上12質量%以下である。
【0020】
本発明のステンレス用冷間圧延油は、前記特定のジエステル及びアルコールに加えて、基油を含むことができる。
【0021】
前記基油の粘度は、特に限定されないが、一般的には、40℃における動粘度が1〜20mm2/sの範囲にあるものが好ましく、2〜15mm2/sの範囲にあるものがより好ましい。
【0022】
前記基油のナフテン分は、特に限定されないが、10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上であることが望ましい。また、80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下であることが望ましい。
【0023】
前記基油のパラフィン分は、特に制限はないが、10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上であることが望ましい。また、90%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下であることが望ましい。
【0024】
本発明においてナフテン分、パラフィン分とは、FIイオン化(ガラスリザーバ使用)による質量分析法により得られた分子イオン強度をもって、これらの割合を決定するものである。以下にその測定法を具体的に示す。
▲1▼ 径18mm,長さ980mmの溶出クロマト用吸着管に、約175℃、3時間の乾燥により活性化された呼び径74〜149μmシリカゲル(富士デビソン化学(株)製grade923)120gを充填する。
▲2▼ n−ペンタン75mlを注入し、シリカゲルを予め湿す。
▲3▼ 試料約2gを精秤し、等容量のn−ペンタンで希釈し、得られた試料溶液を注入する。
▲4▼ 試料溶液の液面がシリカゲル上端に達したとき、飽和炭化水素成分を分離するためにn−ペンタン140mlを注入し、吸着管の下端より溶出液を回収する。
▲5▼ ▲4▼の溶出液をロータリーエバポレーターにより溶媒を留去し、飽和炭化水素成分を得る。
▲6▼ ▲5▼で得られた飽和炭化水素成分を質量分析計でタイプ分析を行う。質量分析におけるイオン化方法としては、ガラスリザーバを使用したFIイオン化法が用いられ、質量分析計は日本電子(株)製JMS−AX505Hを使用する。
【0025】
測定条件を以下に示す。
【0026】
加速電圧 :3.0kV
カソード電圧 :−5〜−6kV
分解能 :約500
エミッター :カーボン
エミッター電流:5mA
測定範囲 :質量数35〜700
Sub Oven温度 :300℃
セパレータ温度:300℃
Main Oven 温度:350℃
試料注入量 :1μl
▲7▼ ▲6▼の質量分析法によって得られた分子イオンは、同位体補正後、その質量数からパラフィン類(CnH2n+2)とナフテン類(CnH2n、CnH2n-2、CnH2n-4・・・)の2タイプに分類・整理し、それぞれのイオン強度の分率を求め、飽和炭化水素成分全体に対する各タイプの含有量を定める。次いで、▲5▼で得られた飽和炭化水素成分の含有量をもとに、試料全体に対するパラフィン分、ナフテン分の各含有量を求める。
【0027】
なお、FI法質量分析のタイプ分析法によるデータ処理の詳細は、「日石レビュー」第33巻第4号135〜142頁の特に「2.2.3 データ処理」の項に記載されている。
【0028】
前記基油の芳香族分は、特に限定されないが、25容量%以下、好ましくは20容量%以下、より好ましくは15容量%以下であることが望ましい。ここでいう芳香族分とは、JIS K 2536「石油製品−炭化水素タイプ試験方法」の蛍光指示薬吸着法を準用して測定された値を表すものを意味している。
【0029】
前記基油としては、鉱油、油脂、合成油、又はこれらの2種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
前記鉱油としては、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られるパラフィン系またはナフテン系の鉱油を挙げることができる。
【0031】
前記油脂としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、あるいはこれらの水素添加物などが挙げられる。
【0032】
また、前記合成油としては、例えば、ポリα-オレフィン(エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、およびこれらの水素化物など)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、モノエステル(ブチルステアレート、オクチルラウレート)、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセパケートなど)、ポリエステル(トリメリット酸エステルなど)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネートなど)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、リン酸エステル(トリクレジルフォスフェートなど)、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィンなど)、シリコーン油などを挙げることができる。
【0033】
本発明のステンレス用冷間圧延油は、前記特定のジエステル、アルコール及び基油に加えて、その優れた効果をさらに向上させるため、他の添加剤を含むことができる。
【0034】
前記他の添加剤としては、極圧添加剤、酸化防止剤、さび止め剤、消泡剤、ミスト防止剤、脂肪酸、金属不活性化剤、粘度指数向上剤等を含むことができる。また、前記特定のジエステル以外の他のエステルをさらに含んでもよい。
【0035】
前記極圧添加剤としては、トリクレジルフォスフェート等のりん系化合物、及びジアルキルジチオリン酸亜鉛等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0036】
前記酸化防止剤としては、2,6-ジターシャリーブチル-P-クレゾール(DBPC)等のフェノール系化合物、フェニル-α-ナフチルアミンなどの芳香族アミン、およびジアルキルジチオリン酸亜鉛等の有機金属化合物が例示できる。
【0037】
前記さび止め剤としては、オレイン酸などの脂肪酸の塩、ジノニルナフタレンスルホネートなどのスルホン酸塩、ソルビタンモノオレエートなどの多価アルコールの部分エステル、アミンおよびその誘導体、 リン酸エステルおよびその誘導体などが例示できる。
【0038】
前記消泡剤としては、シリコン系のものなどが挙げられる。
【0039】
前記ミスト防止剤としてはエチレンとプロピレンのコポリマーなどか挙げられる。
【0040】
前記脂肪酸としては一塩基酸と多塩基酸が挙げられる。
【0041】
前記一塩基酸としては、通常炭素数6〜24の脂肪酸を用いることができ、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。具体的には例えば、直鎖状または分岐状のヘキサン酸、直鎖状または分岐状のオクタン酸、直鎖状または分岐状のノナン酸、直鎖状または分岐状のデカン酸、直鎖状または分岐状のウンデカン酸、直鎖状または分岐状のドデカン酸、直鎖状または分岐状のトリデカン酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン酸、直鎖状または分岐状のペンタデカン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状または分岐状のオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のノナデカン酸、直鎖状または分岐状のエイコサン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコサン酸、直鎖状または分岐状のドコサン酸、直鎖状または分岐状のトリコサン酸、直鎖状または分岐状のテトラコサン酸などの飽和脂肪酸、直鎖状または分岐状のヘキセン酸、直鎖状または分岐状のヘプテン酸、直鎖状または分岐状のオクテン酸、直鎖状または分岐状のノネン酸、直鎖状または分岐状のデセン酸、直鎖状または分岐状のウンデセン酸、直鎖状または分岐状のドデセン酸、直鎖状または分岐状のトリデセン酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン酸、直鎖状または分岐状のペンタデセン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状または分岐状のオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状または分岐状のノナデセン酸、直鎖状または分岐状のエイコセン酸、直鎖状または分岐状のヘンエイコセン酸、直鎖状または分岐状のドコセン酸、直鎖状または分岐状のトリコセン酸、直鎖状または分岐状のテトラコセン酸などの不飽和脂肪酸およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、特に炭素数8〜20の飽和脂肪酸、または炭素数8〜20の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物が好ましい。
【0042】
前記多塩基酸としては炭素数2〜16の二塩基酸およびトリメリト酸等かが挙げられる。炭素数2〜16の二塩基酸は、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状または分岐状のブタン二酸、直鎖状または分岐状のペンタン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサン二酸、 直鎖状または分岐状のオクタン二酸、直鎖状または分岐状のノナン二酸、直鎖状または分岐状のデカン二酸、直鎖状または分岐状のウンデカン二酸、直鎖状または分岐状のドデカン二酸、直鎖状または分岐状のトリデカン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状または分岐状のへキサデカン二酸、直鎖状または分岐状のヘキセン二酸、直鎖状または分岐状のオクテン二酸、直鎖状または分岐状のノネン二酸、直鎖状または分岐状のデセン二酸、直鎖状または分岐状のウンデセン二酸、直鎖状または分岐状のドデセン二酸、直鎖状または分岐状のトリデセン二酸、直鎖状または分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状または分岐状のヘキサデセン二酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
前記金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、有機スルホン酸塩、りん酸エステル、オレフィンのりん硫化物等を挙げることができる。
【0044】
前記粘度指数降下剤としては、ポリメタクリレート、ポリイソブテン、エチレンプロピレンコポリマー等を挙げることができる。
【0045】
前記他のエステルとしては、モノエステル(ブチルステアレート、オクチルラウレート)、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリテシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセパケートなど)、ポリエステル(トリメリット酸エステルなど)等が挙げられる。
【0046】
前記他の添加剤の含有量は、合計量として、圧延油全量中、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下であることが望ましい。
【0047】
本発明のステンレス用冷間圧延油の物性は、特に限定されないが、40℃における動粘度が2〜15mm2/sの範囲にあるものが好ましく、3〜12mm2/sの範囲にあるものがより好ましい。このような所望の粘度は、基油の種類、配合割合等を適宜調整することによって容易に得ることができる。
【0048】
本発明のステンレス用冷間圧延油は、種々の圧下率での圧延に用いることができる。具体的には圧下率が30%を超える中・高圧下率の圧延に用いることができる他、圧下率30%以下の低圧下率での圧延に好ましく用いることができる。ここで、圧下率30%以下の圧延とは、圧延の工程の全部又は一部において、圧下率が30%以下となる圧延をいう。本発明のステンレス用冷間圧延油は、そのような条件下においても、焼き付き、ヒートスクラッチ、光沢むらを生じにくい。
本発明のステンレス用冷間圧延油は、種々のステンレス圧延材料を圧延し、ステンレス圧延物を製造するのに用いることができる。特に、低圧下率での圧延が必要とされるバネ材ステンレス圧延用として、好ましく用いることができる。
前記ステンレスとはバネ材に限られることなく使用されるステンレス一般を意味し、具体的にはオーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系等のステンレス材、特にSUS304材、SUS420材、SUS430材等を圧延材料として圧延に供することができる。なお、本発明において、バネ材ステンレスとはJIS G4313「バネ材用ステンレス鋼帯」で規定されるものであり、SUS304材、SUS420材等のステンレス材を圧延材料として所定の性質を満たすように圧延を行い得られるものである。
【0049】
【発明の効果】
本発明のステンレス用冷間圧延油は、特定のジエステルを含むので、高圧下率時で焼き付き、ヒートスクラッチ等を生じず、且つ低圧下率で圧延速度を上げても光沢むらを生じず、圧下率を変動させるステンレスの冷間圧延において、生産性の向上と圧延物の高品質とを両立することができる。
【0050】
【実施例】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
【実施例1〜20及び比較例1〜6】
下記圧延材料及び試料油を用い、試料油の光沢むら試験及びヒートスクラッチ発生試験を、下記条件に従って行った。
【0052】
圧延材料は、JIS SUS304材(厚さ0.65mm、幅100mm)又はJIS SUS420材(厚さ0.65mm、幅100mm)を用いた。
【0053】
試料油は、以下の組成のものを用いた。組成の%はいずれも質量%である。
1:アジピン酸ジイソブチル20%、残 鉱油
2:アジピン酸ジイソプロピル20%、残 鉱油
3:コルク酸ジペンチル20% 残 鉱油
4:セバシン酸ジイソブチル20% 残 鉱油
5:アジピン酸ジイソブチル35% 残 鉱油
6:アジピン酸ジイソブチル50% 残 鉱油
7:アジピン酸ジイソブチル20%、nドデシルアルコール6%、2メチル1ウンデシルアルコール4% 残 鉱油
8:アジピン酸ジイソブチル35%、nドデシルアルコール6%、2メチル1ウンデシルアルコール4% 残 鉱油
9:アジピン酸ジイソブチル50%、nドデシルアルコール6%、2メチル1ウンデシルアルコール4% 残 鉱油
10:アジピン酸ジイソブチル20%、nドデシルアルコール3%、2メチル1ウンデシルアルコール2% 残 鉱油
11:アジピン酸ジイソノニル20%、残 鉱油
12:アジピン酸ジnデシル20%、残 鉱油
13:アジピン酸ジメチル20%、残 鉱油
前記鉱油としては、40℃における動粘度が32mm2/secの鉱油である基油A(パラフィン分64質量%、ナフテン分29質量%、芳香族分7容量%)および40℃における動粘度が2.8mm2/secの鉱油である基油B(パラフィン分65質量%、ナフテン分28質量%、芳香族分7容量%)を、それぞれ下記表1に示す配合割合で用い、いずれの試料油も動粘度が7.0mm2/sec(40℃)になるように調整した。表中%CP、%CN及び%CAは、それぞれパラフィン分質量%、ナフテン分質量%及び芳香族分容量%を表わす。
【0054】
【表1】
【0055】
光沢むら試験
径51mmのワークロールを用い、圧延速度150m/min、圧下率13%で、長さ350mのコイル状圧延材料を3つ圧延し、3つ目の圧延終了点から20m前の表面光沢値を幅方向に9点(板の端から1cm間隔)測定し、その標準偏差を求めた。
ヒートスクラッチ発生試験
径51mmのワークロールを用い、圧延速度75m/minで圧延を行い、圧下率を10%から徐々に上げてヒートスクラッチが発生し始める圧下率を調べた。
ヒートスクラッチの確認は、目視で判定できないものは光学顕微鏡(400倍)を用いて、板表面を観察して行った。
【0056】
各実施例及び比較例において使用した圧延材料及び試料油、並びに試験結果を表2〜4に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
*「3」はSUS304、「4」はSUS420をそれぞれ示す。
**:9点の光沢値の標準偏差
***:ヒートスクラッチが発生した圧下率 %
以上の通り、本発明のステンレス用冷間圧延油(実施例1〜20)においては、圧下率20%での光沢むら試験において光沢むらはほぼ完全に発生せず、且つヒートスクラッチ発生試験も良好な結果を示し、高いヒートスクラッチ限界が得られた。
【0061】
これに対し、使用されるジエステルが本発明の規定の範囲外である場合についての試験結果(比較例1〜6)では、光沢むら及びヒートスクラッチ発生限界が、実施例に比べ著しく劣っていた。
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