JP4519969B2 - ジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法に関し、更に詳しくは、アルキルアクリレートとジメチルアミノエチルアルコールとのエステル交換反応により、ジメチルアミノエチルアクリレートを連続的に、高い生産性で製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジメチルアミノアルキアクリレートは、分子内にアミノ基を有しているため、繊維の染色性改質剤、プラスチックの静電防止剤などとして、またこれらのモノマーを重合・共重合させたポリマーは、トナーバインダー、紫外線硬化印刷用材料、塗料用樹脂、高分子凝集剤およびイオン交換樹脂などとして有用である。
【0003】
ジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法として、アルキルアクリレートとジメチルアミノエチルアルコールをエステル交換反応触媒の存在下で加熱し、エステル交換反応する方法が用いられている。この反応は平衡反応であるため、反応を有利に進めるために、副生したアルキルアルコールを蒸留などにより分離除去しながら行われる。その後、反応液から未反応の原料や不純物等を蒸留などにより除去し、精製して製品を得る。
【0004】
その製造方法については、例えば、塩化カルシウムを用いる方法(特開昭57−24336号公報)、有機スズを用いる方法(特開昭58−46048号公報)、ニッケル化合物を用いる方法(特開昭63−101350号公報)、特定金属のアセチルアセトン錯体を用いる方法(特開平1−180861号公報)、有機スズ化合物を用いる方法(特開平1−299263号公報)、β−ジケトンコバルト化合物を用いる方法(特開平2−59546号公報)など、従来より種々検討されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、生産性を向上させるためには、上述のような触媒開発により反応時間を短縮する方法の他に、一般的には製造条件等の製造方法そのものを変更することも考えられる。例えば、高反応率まで反応させる方法、反応温度の高温化、適切な原料組成の選択等が考えられる。
【0006】
しかし、エステル交換反応は平衡反応であるので高反応率では反応速度が遅くなるため、反応率が高くなると逆に生産性が悪化する。また、温度が高くなるとアルキルアクリレートおよびジメチルアミノエチルアクリレートの重合が起こったり、マイケル付加物等の副生物の生成が起こるなど、製品の品質上の問題が生じる。さらに、平衡反応であるエステル交換反応の特徴として、アルキルアクリレートの量がジメチルアミノエチルアクリレートに対して過剰モル存在する状態では反応速度が速くなることが知られているが、大過剰であると単位容積当たりの生産量が小さくなる。また、反応液から、未反応のアルキルアクリレートおよびジメチルアミノエチルアルコールを除去する場合にも、ジメチルアミノエチルアクリレートの重合や、マイケル付加物等の副生成物の生成等の品質上の問題が生じる。
【0007】
前述の特許公報は、いずれも特定の触媒に関する提案がほとんどで、このように現象が複雑であるエステル交換反応に対して、適切な製造条件等を設定し製造方法そのものを改善して、生産効率を向上させる方法は全く明らかにされていなかった。
【0008】
即ち、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、非常に生産性が高くかつ副生成物が少ないジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エステル交換反応触媒の存在下で、アルキルアクリレートとジメチルアミノエチルアルコールのエステル交換反応によりジメチルアミノエチルアクリレートを製造する方法において、ジメチルアミノエチルアルコールと、該ジメチルアミノエチルアルコールに対して、x(モル%)(但し、80≦x≦280)の割合でアルキルアクリレートを含む原料を、少なくとも1槽以上の連続反応槽を用いた反応器に連続的に供給し、ジメチルアミノエチルアルコールの反応率y(%)が、次の(式1)
49+0.1x<y<71+0.1x (式1)
を満足するように連続反応させることを特徴とするジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法に関する。但し、反応率y=A/(A+B)×100であり、Aは生成したジメチルアミノエチルアクリレートのモル数、Bは未反応のジメチルアミノエチルアルコールのモル数を表す。
【0010】
本発明では、前記エステル交換反応を、90℃以上110℃以下の反応温度で行うことが好ましい。このような条件により、エステル交換反応後の反応液中のメチル−3−メトキシプロピオネート濃度を0.5質量%以下とすることができる。
【0011】
本発明では、前記エステル交換反応によって得られた反応液を蒸留塔に導き、その際の蒸留塔の塔底温度が100℃以下、塔頂温度が−20℃以上、20℃以下、塔頂の圧力が13kPa以下の条件にて、未反応のアルキルアクリレートおよびジメチルアミノエチルアルコールを留去させて精製を行う精製工程をさらに有することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明では、エステル交換反応触媒の存在下で、アルキルアクリレートとジメチルアミノエチルアルコールとをエステル交換反応させる。その際に用いられるエステル交換触媒は、従来からエステル交換反応に用いられている触媒であれば特に制限はなく、例えばアルカリ金属アルコラート、チタンアルコラートおよびアルミニウムアルコラートなどのアルコラート類、有機スズ化合物、鉛化合物、並びにタリウム化合物などを用いることができる。エステル交換触媒の使用量は、生産性が悪化しない程度に必要な量を用いることが好ましく、一般的にはジメチルアミノエチルアルコールの0.001モル%以上が好ましい。さらに好ましくは、0.005モル%以上である。また、エステル交換触媒の量を多く添加すればそれだけ反応速度は向上するが、多すぎても添加した触媒のコストに見合うだけの反応速度の向上の効果が認められなくなるので、通常はジメチルアミノエチルアルコールの0.1モル%以下で用いれることが好ましい。
【0013】
本発明において用いられるアルキルアクリレートとしては、炭素数1〜6(特に好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状または分岐状アルキルのアクリル酸エステルが好ましく、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート等を挙げることができる。この中でも、一般的には最も安価なメチルアクリレートが最も好ましい。
【0014】
アルキルアクリレート使用量は、ジメチルアミノエチルアルコール1モルに対して80〜280モル%である。即ち、ジメチルアミノエチルアルコールをあまりに過剰にした条件では、反応終了後に残存するジメチルアミノエチルアルコールの量が増大し、これがメチルアミノエチルアクリレートの沸点と比較的近いために精製工程への負荷が大きくなるので、通常は80モル%以上が好ましい。また、原料中のジメチルアミノエチルアルコールの割合が小さくなり過ぎると、反応液中のジメチルアミノエチルアクリレートの割合が小さくなって生産性が悪化する傾向にあるので、一般的には280モル%以下が好ましい。
【0015】
そして、本発明では、所定量のアルキルアクリレートとジメチルアミノエチルアルコールとを含む原料を、少なくとも1槽以上の連続反応槽を用いた反応器に供給する。これらの実際に反応に関与する原料のほかに、適当な溶媒を用いてもよい。特にエステル交換反応によって副生するアルキルアルコールを共沸によって除去できるような溶媒が好ましく、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2,3−ジメチルブタン、2,5−ジメチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン等を用いることができる。
【0016】
本発明では、ジメチルアミノエチルアルコールに対するアルキルアクリレートの割合をxモル%(但し、上述のように80≦x≦280である。)で表したとき(即ち、ジメチルアミノエチルアルコールのモル数:アルキルアクリレートのモル数=1:(x/100))、反応率(%)が(49+0.1x)より大きく、(71+0.1x)未満となるように製造条件を設定して反応を制御する。反応率がこの範囲に入ると、高い生産性が得られかつ精製時の熱負荷も小さくなり、プロセス全体として有利な条件となることがわかった。尚、反応率とは、供給ジメチルアミノエチルアルコール全量に対して、反応してジメチルアミノエチルアクリレートに転換したジメチルアミノエチルアルコールの割合である。
【0017】
即ち、同じ量のジメチルアミノエチルアクリレートを得るためには、多量の原料を供給し低反応率の反応液を多量得る方法から、少量の原料を供給し高反応率の反応液を少量得る方法まで考えられる。前者では反応槽を小さくすることができるが、精製工程への熱負荷が大きく、後者では反応槽が大きくなるが、精製工程への熱負荷が小さくなる。
【0018】
しかし、本発明のように、反応率(%)を49+0.1xより大きくすることにより、精製工程への熱負荷の負担も小さくなり、また、反応率を71+0.1xより小さくすることにより、反応工程で十分な生産効率が得られる。本発明では、さらに、反応率y(%)が次の式を満たすようにすることが好ましい。
【0019】
52+0.1x<y<68+0.1x
反応率の制御は、反応槽体積、流量、反応槽温度、圧力、原料組成、触媒量等を制御することで、任意に選択することが可能である。
【0020】
用いられる連続反応槽としては、一般的な連続槽型反応槽を用いことが可能である。反応率yに関する(式1)を満足するように設定される限り、連続反応槽の段数、各槽の形状、各槽の大きさ、各槽の並べ方等には特に制限はなく、必要により適宜変更することができる。即ち、多槽の反応槽を用いるときは、全体の反応率が、(式1)を満たすように、各反応槽での反応率を適宜変更すればよい。
【0021】
また、一般的には蒸留塔の付いた反応槽が好ましいが、これに限定されるものではない。反応槽に付属する蒸留塔の形式についても特に制限はなく、例えば、トレイ型や充填塔型等が利用できる。
【0022】
また、本発明での反応温度は、反応速度を考慮すると90℃以上が好ましく、反応温度が90℃未満になる場合は、例えば加圧して反応温度を高くすることが望ましい。沸点の高い溶媒を用いて温度を高くすることも可能である。また、反応温度を高くしすぎると副生成物が増えたり、原料および生成物のアクリレート化合物の重合が起こりやすくなるので、反応温度は110℃以下が好ましい。例えば原料として、メチルアクリレートを用いた場合は、反応温度が110℃を越えると、副生成物、特に原料のメチルアクリレートと副生成物であるメタノールとのマイケル付加物であるメチル−3−メトキシプロピオネートの発生が多くなり、メチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルアクリレートの重合が生じやすくなる。メチル−3−メトキシプロピオネートの生成は、目的生成物であるジメチルアミノエチルアクリレートの収率が低くなるので好ましくないが、本発明では反応温度を抑えることによって、反応液中のメチル−3−メトキシプロピオネートの濃度を0.5質量%以下と低く抑えることが可能である。
【0023】
反応温度が110℃を越える場合は、例えば減圧して温度を110℃以下保つことが好ましい。沸点の低い溶媒を用いて温度を低くすることも可能である。本発明の反応温度として、さらに好ましくは105℃以下である。
【0024】
本発明では、このような反応後の反応液中には、未反応のアルキルアルキレートおよびジメチルアミノエチルアルコールが含まれるので、蒸留によりこれらを留去して精製を行う。この精製工程で用いられる蒸留塔の形式については特に限定されず、例えば、トレイ型や充填塔型等を利用することができる。
【0025】
精製工程では、アルキルアクリレートおよびジメチルアミノエチルアクリレートの重合、およびマイケル付加物等の副生成物の生成量の増加による収率の低下を抑制するために、蒸留塔の塔底の温度を100℃以下(一般的には50℃以上)に保って操作することが望ましく、さらに好ましくは、70〜90℃である。このときさらに、蒸留塔の塔頂圧力を13kPa以下、かつ、蒸留塔の塔頂の温度を−20℃〜20℃の範囲に保つことが好ましい。このようにすると、重合およびマイケル付加物等の副生成物の生成を抑制しながら、1本の蒸留塔を用いて、未反応のアルキルアクリレートおよびジメチルアミノエチルアルコールを留去することが可能である。尚、塔頂の温度が−20℃未満になると、凝縮器での冷却装置への負荷が大きくなる傾向がある。塔頂の温度としては、好ましくは−15〜10℃である。蒸留塔の塔頂圧力としては、一般的には1kPa以上であり、好ましくは2kPa〜10kPaである。
【0026】
反応および精製工程における蒸留に際して、アルキルアクリレートおよびジメチルアミノエチルアクリレートの重合を防止するため、蒸留塔に重合防止剤を添加すること、例えば、蒸留塔塔頂や凝縮器から重合防止剤を添加することができる。通常用いられる重合防止剤としては、例えば、フェノチアジン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等を挙げることができる。重合防止剤の添加量は、重合抑制の効果が充分に現れるだけの量で、かつ、多すぎるときの影響、例えば重合防止剤の目的生成物であるジメチルアミノエチルアクリレートからの分離の問題や、得られたジメチルアミノエチルアクリレートを重合体の原料単量体として使用する際の重合阻害等の悪影響がない範囲で選ぶことが好ましく、例えば蒸留液質量の0.001〜2質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0027】
また、酸素または酸素と不活性気体の混合物、例えば、空気、酸素とアルゴンの混合気体等を蒸留塔下部などから導入してもよく、アルキルアクリレートやジメチルアミノエチルアクリレートの重合抑制効果をさらに向上させることができる。
【0028】
【実施例】
次に、実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0029】
分析はガスクロマトグラフィにより行い、反応率は、反応工程後の反応液を分析した結果から次式により算出した。
【0030】
反応率(%)y= A/(A+B) × 100
ただし、Aは、生成したジメチルアミノエチルアクリレートのモル数、Bは未反応のジメチルアミノエチルアルコールのモル数である。
【0031】
副生成物のマイケル付加物である、メチル−3−メトキシプロピオネートの濃度は、反応液の質量に対するメチル−3−メトキシプロピオネートの質量で表される質量%で示す。この化合物も反応液をガスクロマトグラフィーで分析することにより求めた。
【0032】
最終反応槽から出るジメチルアミノエチルアクリレートとジメチルアミノエチルアルコールの流出速度は、全反応槽体積当たりの各成分の流出モル速度を表す。ジメチルアミノエチルアクリレートの流出速度を、反応工程の生産効率を表す指標として、一方、ジメチルアミノエチルアルコールの流出速度を、精製工程の負荷を表す指標として用いることができる。従って、ジメチルアミノエチルアルコールの流出量が小さく、ジメチルアミノエチルアクリレートの流出量が大きいと、生産性が高いと評価できる。
【0033】
反応および精製に用いた装置は図1に示すように、反応装置ユニットPと反応装置ユニットQの2槽連続槽型反応器と、蒸留装置ユニットRを用いて行った。
槽体積はオーバーフローしている状態での槽内反応液の実容積である。原料供給量は調合した原料液の体積流量である。
【0034】
[実施例1〜4]
図1に示すように、原料供給用導管(1)、オーバーフロー管(8)、攪拌翼(3)、温度計を備えたガラス製3Lフラスコからなる反応器(2)に、蒸留塔(4)、凝縮器(5)を備えた蒸留装置を取り付けた。蒸留塔は内径32mmのガラス製30段オールダーショウ蒸留塔を用いた。この反応装置ユニットPのオーバーフロー管(8)を同様の構成からなる反応装置ユニットQの反応器(2)に接続した。それぞれの反応装置ユニットには真空発生器(図示せず)が装着されている。
【0035】
反応装置ユニットQからのオーバーフロー管(8)から得られる反応液を蒸留装置ユニットRに供給し、製品であるジメチルアミノエチルアクリレート(ADAMと略す)と未反応のジメチルアミノエチルアルコール(DOHと略す。)とアルキルアクリレートを分離した。蒸留装置ユニットRには凝縮器(5)、液分配器(9)、加熱器(10)、真空発生器(図示せず)が装着されている。本装置を用いて以下の実験を行った。
【0036】
2Lの原料(組成割合:DOH1モル、メチルアクリレート(MAと略す。)2モル、触媒としてジブチルスズオキサイド0.01モル、重合禁止剤としてフェノチアジン0.0015モル)と、共沸溶媒としてn−ヘキサン30gを反応装置ユニットPの反応器(2)に投入し、オイルバスにより、フラスコを加熱し反応を開始した。系内で生成するメタノールはn−ヘキサンと共沸させ、塔頂より留出させた。留出液をデカンター(7)に導き、デカンターには100g/hで水供給導管(6)から水を供給し、主としてヘキサンからなる上層と主として水とメタノールからなる下層とに分離し、下層を反応系外に取り出し、上層を蒸留塔下部から10段目に戻した。蒸留塔は下部から15段目の温度が塔頂の温度よりも0〜10K高くなるように還流比を1〜10で調節した。
【0037】
反応開始6時間後に、原料供給用導管(1)より共沸溶媒含まない以外は最初の仕込み組成と同じ組成の原料を一定流量で反応装置ユニットPの反応器(2)に連続的に供給しはじめ、反応液をオーバーフローさせた。反応装置ユニットPからオバーフローした反応液を反応装置ユニットQへ導き、反応器が反応液で満たされた後に加熱を開始して、反応装置ユニットPと同様の方法で反応させた。反応装置ユニットP,Qともに、連続供給を開始してからも、その前と同じように、メタノールとn−ヘキサンとを含む留出液に、100g/hで水供給導管(6)から水を供給し、デカンター(7)で分離し、主としてヘキサンを含む上層を蒸留塔下部から10段目に戻し、主として水とメタノールからなる下層とに分離し、下層を反応系外に取り出した。反応装置ユニットPと反応装置ユニットQの蒸留塔は、連続供給する前と同様に下部から15段目の温度が塔頂の温度よりも0〜10K高くなるように還流比を1〜10で調節した。
【0038】
反応装置ユニットPおよび反応装置ユニットQにおける反応温度は表1、2に示した通りである。それぞれのユニットの反応温度が所定の温度を超える場合は、真空発生器により減圧を開始し、所定の温度を保持した。連続供給開始から20時間後の反応装置ユニットQからオーバーフローしてくる反応液の組成を分析した。
【0039】
そして、反応装置ユニットQからオーバーフローしてくる反応液を連続的に蒸留装置ユニットRに導いて蒸留を行った。蒸留塔は内径32mmのガラス製10段オールダーショウを用いた。蒸留塔下部から6段目に反応液を供給し、缶出液中に触媒とADAM以外の成分が0.1質量%以下になるように還流比を1〜10に調節し、塔頂の圧力が4.3kPaになるように減圧度を調整しながら蒸留を行った。また、蒸留塔塔頂からフェノチアジン10質量%を溶解させたADAM溶液を1g/hで凝縮器上部から投入した。そのとき蒸留塔缶出液の温度は80.0℃〜80.5℃であった。
【0040】
原料供給流量、原料DOHとMAの供給比率{(MAのモル数/DOHモル数)×100=x}、反応装置ユニットP、Qの反応圧力を変更して4回の実験(実施例1〜4)を行った。各実験において反応装置ユニットQからオバーフローしてくる反応液中のDOHとADAM、メチル−3−メトキシプロピオネートの分析、蒸留ユニットRの蒸留塔塔頂温度の測定を行った。結果を表1、2に纏めて示した。
【0041】
[比較例1〜5]
実施例と同様な方法で、原料供給量、反応装置ユニットP、Qの反応圧力を変更して5回の実験(比較例1−5)を行った。結果を表1、2に纏めて示した。反応液を用いた蒸留装置ユニットRでの蒸留では、蒸留塔缶出液の温度は、80.0℃〜80.5℃であった。
【0042】
比較例1、比較例3は原料供給量が小さく、反応率y(%)が、式(1)の上限を越えており、その結果、未反応のジメチルアミノエチルアルコールの流出速度が小さいので、未反応物を留去する精製工程の熱負荷は小さくて済むが、製品であるジメチルアミノエチルアクリレートの流出速度も小さいために、生産効率が悪い。
【0043】
比較例2、比較例4は原料供給量が大きく、反応率y(%)が、式(1)の下限を下回っており、その結果、製品であるジメチルアミノエチルアクリレートの流出速度が大きく、生産効率は良いが、未反応のジメチルアミノエチルアルコールの流出速度が大きいために、未反応物を留去する精製工程の熱負荷が非常に大きいことがわかる。
【0044】
比較例5は、温度が高いために、反応率y(%)が、式(1)の上限を越えており、その結果、副生成物であるメチル−3−メトキシプロピオネートが多く生成している。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、適切な反応条件を選択することで非常に生産性が高くかつ副生成物の生成が少ないジメチルアミノエチルアクリレートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた連続反応装置および連続蒸留装置を示す図である。
【符号の説明】
1 原料供給用導管
2 反応器
3 攪拌機
4 蒸留塔
5 凝縮器
6 水供給導管
7 デカンタ
8 オーバーフロー管
9 液分配器
10 加熱器
P 第1段目の反応装置ユニット
Q 第2段目の反応装置ユニット
R 蒸留装置ユニット
Claims (5)
- エステル交換反応触媒の存在下で、アルキルアクリレートとジメチルアミノエチルアルコールのエステル交換反応によりジメチルアミノエチルアクリレートを製造する方法において、
ジメチルアミノエチルアルコールと、該ジメチルアミノエチルアルコールに対して、x(モル%)(但し、80≦x≦280)の割合でアルキルアクリレートを含む原料を、少なくとも1槽以上の連続反応槽を用いた反応器に連続的に供給し、ジメチルアミノエチルアルコールの反応率y(%)が、次の(式1)
49+0.1x<y<71+0.1x (式1)
を満足するように連続反応させることを特徴とするジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法。但し、反応率y=A/(A+B)×100であり、Aは生成したジメチルアミノエチルアクリレートのモル数、Bは未反応のジメチルアミノエチルアルコールのモル数を表す。 - 前記アルキルアクリレートがメチルアクリレートであることを特徴とする請求項1記載のジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法。
- 前記エステル交換反応を、90℃以上110℃以下の反応温度で行うことを特徴とする請求項1または2記載のジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法。
- 前記エステル交換反応によって得られた反応液を蒸留塔に導き、その際の蒸留塔の塔底温度が100℃以下、塔頂温度が−20℃以上、20℃以下、塔頂の圧力が13kPa以下の条件にて、未反応のアルキルアクリレートおよびジメチルアミノエチルアルコールを留去させて精製を行う精製工程をさらに有する請求項1〜3のいずれかに記載のジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法。
- 前記エステル交換反応によって得られた反応液中のメチル−3−メトキシプロピオネート濃度が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のジメチルアミノエチルアクリレートの製造方法。
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