JP4519808B2 - 薄膜成膜方法および薄膜成膜装置 - Google Patents
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ところが、プラスチック製容器はこのような長所を有しているものの、酸素や二酸化炭素のような低分子ガスを透過するという短所、すなわち、ガスバリア性が低いという短所があり、容器内の内容物の種類によっては、これらのガスによってその品質が影響を受けてしまう場合があった。そこで、プラスチックのガスバリア性を向上させるために従来より種々の検討がなされ、そのなかでは、ガスバリア性の高い材料と安価で汎用性のある材料とを多層構造とし、これを容器に使用する方法が工業的に実施されている。
そこで、最近では、リサイクル性と、酸素、二酸化炭素、水蒸気などのガスバリア性とを両立させる方法として、汎用性プラスチックからなる容器の内表面にガスバリア性を有する薄膜を形成する方法が検討されている。このような薄膜成膜方法の1つとしては、プロセスガスをプラズマ化して化学反応させることにより、容器の内表面に薄膜を形成するプラズマ助成式CVD法がある。プラズマ助成式CVD法の具体的な方法としては、容器の外形とほぼ相似形の内形を有する中空状の高周波電極と、容器の内形とほぼ相似形の内部電極の間に容器を配置し、成膜する方法(例えば、特許文献1参照。)や、高周波電極と内部電極とをともに容器の表面からほぼ一定の距離として成膜する方法(例えば、特許文献2参照。)などが知られている。
前記第1成膜工程の後に、前記供給流量比を増加させる第2成膜工程を有することが好ましい。
また、前記薄膜成膜方法においては、100MHz以下の高周波電力を整合機を通してから高周波電極に供給することにより、発生する反射電力を供給した高周波電力の10%以下に制御しながら、前記プラズマ化を行うことが好ましい。
前記筒状容器と前記高周波電極との間には、絶縁性材料からなる着脱自在のスペーサが設けられていてもよい。
前記ガス発生口は、直径0.5mm以下の孔および/または幅0.5mm以下の略矩形スリットの1つ以上からなることが好ましい。
また、前記アース電極の外表面の表面平均粗さが、5〜50μmであるか、前記アース電極には、その外周の少なくとも一部に、着脱自在なカバー管が備えられ、該カバー管の外表面の表面平均粗さが、5〜50μmであることが好ましい。
また、前記外表面は、金属またはセラミックが溶射され、前記表面平均粗さとしたことが好ましい。
また、本発明の成膜装置によれば、複数の成膜チャンバに対して1つの高周波電源部から高周波電力を供給可能であるので、多数のプラスチック製容器に対して、一定の性能を有する薄膜をばらつきなく安定に形成でき、かつ、設備コストが低く、また、コンパクトである。
図1はこの例の薄膜成膜方法において好適に使用される成膜装置10の一例であって、4台の成膜チャンバ20を備え、各成膜チャンバ20内の所定位置に筒状容器を1つずつ配置することにより、これら4個の筒状容器に対して同時に薄膜を形成可能なものである。
この例の高周波電極22は、導電性材料からなる筒部22aと、この筒部22aの一端を閉塞する導電性材料からなる蓋部22bとから構成されていて、蓋部22bは筒部22aに対して着脱自在となっている。
また、アース電極23は導電性材料から形成され、その先端部には、酸化ケイ素の薄膜を形成するためのプロセスガス、すなわちモノマーガスと酸化性の反応ガスとを含有する混合ガスを、筒状容器21の内側に向けて発生するガス発生口23aが形成されていて、基端部側からモノマーガスと反応ガスとを導入することにより、ガス発生口23aから混合ガスを発生するようになっている。このように、この例のアース電極23は、プロセスガスのガス導入管としても作用する。また、この例においてガス発生口23aは、図3に示すように、幅0.5mmの5本の略矩形スリット23bからなっている。
高周波電源部30は、高周波電力を供給する高周波電源31と、この高周波電源31からの高周波電力を整合する整合機32とを備えていて、高周波電源31からの高周波電力を整合させ整合値を制御しながら高周波電極22に供給することにより、発生する反射電力を抑え、供給する高周波電力を効率的に高周波電極22に送り、その結果、優れたガスバリア性を有する薄膜を形成可能としたものである。
まず、各成膜チャンバ20における高周波電極22の蓋部22bをはずし、筒状容器21を高周波電極22内に入れ、絶縁板24に形成された口部保持口24aにその口部を嵌合、保持させる。ついで蓋部22bを高周波電極22の筒部22aに嵌め、密封し、高周波電極22の一端を閉塞する。アース電極23は、その先端部に形成されたガス発生口23aが筒状容器21の内側に位置するように配置されている。その後、図示略の吸引ポンプを作動させて、成膜チャンバ20内を減圧し所定の真空状態となった後に、アース電極23の基端部側から、流量制御手段42によって流量制御されたモノマーガスと反応ガスとの混合ガスを導入し、ガス発生口23aから混合ガスを発生させる。ついで、高周波電源部30を作動させ、100MHz以下の高周波電力を整合機32を通し、その際の整合値を変化させることにより、発生する反射電力を供給した高周波電力の10%以下に制御しながら、それぞれの成膜チャンバ20の高周波電極22に供給する。その結果、各成膜チャンバ20の高周波電極22とアース電極23との間で混合ガスがプラズマ化し、筒状容器21の内表面に、酸化ケイ素からなる薄膜が形成される。
また、この例では、第1成膜工程における供給流量比の初期値を0.1とし、それから減少させているが、好ましい供給流量比の初期値は0.02〜0.2、より好ましくは0.02〜0.1である。0.01未満では、供給流量比を減少させてもガスバリア性の優れた薄膜を形成できない場合があり、一方、0.2を超えると、薄膜を形成するのに要する総時間が長くなる。
また、この例のようにガスバリア性の高い酸化ケイ素の薄膜に対して柔軟性を付与する際には、反応ガスに対するモノマーガスの供給流量比が最終的に、好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、さらには、混合ガス中における反応ガスの流量をゼロとすることが好ましい。また、このような場合、第2成膜工程に要する時間は、1〜3秒の範囲とすることが好ましい。
また、薄膜を形成する際に、特に図示例のような、複数の成膜チャンバ20に対して1つの高周波電源部30から高周波電力を供給可能な成膜装置10を使用することにより、多量の筒状容器21に対して薄膜を形成する場合であっても、高いガスバリア性を備えた薄膜を容器間のばらつきが生じることなく安定に形成できる。さらに、このような成膜装置10は設備コストが低く、また、コンパクトな構成となることからも好ましい。
ここで表面平均粗さが5μm以下では、粗さが不十分であり、薄膜の剥離を十分に抑制できず、一方、50μmを超えると、突出した部分に異常放電を起こす場合があり、安定な成膜が行えなくなる場合がある。
このようにカバー管26を使用することにより、カバー管26の外表面に薄膜がある程度の厚みに形成された場合でもカバー管26の交換という簡単、短時間の操作により、ただちに装置の運転を続行でき、メンテナンス性に優れる。
すなわち、薄膜を形成する対象の筒状容器21が直径の小さいものである場合には、比較的厚みの大きな筒状のスペーサ27を使用する。その結果、筒状容器21と高周波電極22との間の空間の体積が小さくなり、成膜チャンバ20内を短時間で真空にすることができる。また、スペーサ27を使用しても、筒状容器21は高周波電極22と同軸上に位置するため、形成される薄膜の厚みが均一となる。また、筒状容器21の断面が円形以外の形状、例えば楕円形、矩形などの場合には、内表面の断面形状が筒状容器21の外形に沿う相似形に形成されたスペーサ27を使用することにより、どのような筒状容器21に対しても、厚みが均一でガスバリア性にも優れた薄膜を形成することができる。
また、この際、スペーサ27が、高周波電極22の内表面と接するように設けられることにより、筒状容器21の内表面に効果的に薄膜を形成することができる。
スペーサ27の材質としては、その内表面が汚染されたとしても高周波電極22の放電効率に影響を与えないプラスチックやセラミックが例示できるが、特に好ましくは加工性にも優れるプラスチックである。
また、薄膜を形成する際に、特に図示例のような、複数の成膜チャンバ20に対して1つの高周波電源部30から高周波電力を供給可能な成膜装置10を使用することにより、多量のプラスチック製容器に対して薄膜を形成する場合であっても、高いガスバリア性やプラスチック製容器への密着性を備えた薄膜を容器間のばらつきが生じることなく、より安定に、高い生産性で形成できる。さらに、このような成膜装置10は設備コストが低く、また、大きさもコンパクトであることからも好ましい。
[実施例1]
容量が500mlのポリエチレンテレフタレート製の断面が円形の筒状容器21を、図2に示す成膜チャンバ20内に配置し、成膜チャンバ20内を真空状態(成膜初期圧力10Pa)とした後、アース電極23(ガス導入管)の基端部側から、ヘキサメチルジシロキサン(モノマーガス)と、酸素(反応ガス)とをそれぞれマスフローコントローラで流量制御して、供給した。この際、初期のヘキサジメチルジシロキサンの供給流量は10ml/min、初期の酸素の供給流量は500ml/min(すなわち、初期の供給流量比=0.02)とした。また、アース電極23としては、その先端部のガス発生口23aが、図3に示すように、5本の幅0.5mmの略矩形スリット23bからなるものを使用した。また、このアース電極23の外周には、サンドブラスト処理により表面平均粗さ(Ra)が10μmとされた銅製のカバー管26を図7に示すように設けた。
ついで、この成膜チャンバ20の高周波電極22に、印可電力400Wattで5秒間にわたって13.56MHzの高周波電力を印可して、薄膜の形成を行った。この間、酸素に対するヘキサメチルジシロキサンの供給流量比を表1に示すように、該供給流量比が0.05以下の範囲の少なくとも一部を含むように連続的に減少させた。
さらに、以上のような操作を繰り返し、合計30個の筒状容器21に薄膜を形成し、これら容器21の酸素透過性をそれぞれ測定し、平均値と標準偏差を求めたところ、表2に示すように、酸素透過性の平均値および標準偏差がいずれも小さく、高い酸素バリア性を有する薄膜をばらつきなく形成できたことが明らかとなった。なお、酸素透過性の測定には、モダンコントロール社製のMocon Oxitran 10/50を用い、筒状容器21の内側は25℃90%の窒素/水素混合ガス条件、筒状容器の外側は25℃65%の大気条件として測定した。
さらに、このような方法で数千回にわたって連続的に薄膜を形成したが、その間、カバー管26の外表面に形成された薄膜が剥離することはなかった。
表1に示すように、ヘキサメチルジシロキサン(モノマーガス)と、酸素(反応ガス)の初期の供給流量を設定し、該供給流量比が0.05以下の範囲の少なくとも一部を含むように連続的に減少させた以外は、実施例1と同様にして筒状容器21の内側に酸化ケイ素からなる薄膜を形成した。さらに、各例において以上のような操作を繰り返し、合計30個の筒状容器21に薄膜を形成し、これら容器の酸素透過性を測定し、平均値と標準偏差を求めたところ、表2に示すように、酸素透過性の平均値および標準偏差がいずれも小さく、高い酸素バリア性を有する薄膜をばらつきなく形成できたことが明らかとなった。
また、これらのうち、実施例5と実施例9で得られた筒状容器21に形成された薄膜の柔軟性を評価する目的で、この容器21の内圧を7kg/cm2として2時間保持し、その後、再度酸素透過性を測定した。その結果、酸素透過性はそれぞれ、0.028fmol/s・Pa、0.023fmol/s・Paであって、第1成膜工程の後に第2成膜工程を行った実施例9では、筒状容器21の内圧を高める前後における酸素透過性の変化がなく、第2成膜工程を省略した実施例5ではわずかに酸素透過性が増加した。これは、第2成膜工程を行うことにより、形成される薄膜は十分な柔軟性を備えたものとなり、内圧を高め、筒状容器21を若干変形させた場合であっても、薄膜が変形に追従するためにクラックが発生せず、酸素バリア性が高く維持されたことによる。
図1に示すように、4台の成膜チャンバ20と、これら成膜チャンバ20の各高周波電極22に高周波電力を供給する高周波電源部30とを備えた成膜装置10を使用して、4個のポリエチレンテレフタレート製の断面円形の筒状容器21に対して同時に成膜を行った。アース電極23としては、実施例1と同様のものを各成膜チャンバ20において使用した。
モノマーガスであるヘキサジメチルジシロキサンの初期の供給流量は各成膜チャンバ20において10ml/min、反応ガスである酸素の初期の供給流量は各成膜チャンバ20において500ml/min(すなわち、初期の供給流量比=0.02)とし、その後、酸素に対するヘキサメチルジシロキサンの供給流量比を表1に示すように、該供給流量比が0.05以下の範囲の少なくとも一部を含むように変化させた。
また、成膜初期圧力は10Pa、供給する高周波電力(印可電力)は各成膜チャンバ20について400Watt(合計1600Watt)とし、5秒間13.56MHzの高周波電力を印可して、薄膜の形成を行った。なお、高周波電力の供給中、整合値を変化させ、常に反射電力が160Watt以下、すなわち、印可電力の10%以下となるように制御した。
さらに、以上のような操作を繰り返し、各成膜チャンバ20において合計30個の筒状容器21に薄膜を形成し、成膜装置10全体として120個の筒状容器21に対して薄膜を形成した。そして、これら筒状容器21の酸素透過性を測定し、平均値と標準偏差を求めたところ、表2に示すように、酸素透過性の平均値および標準偏差がいずれも小さく、高い酸素バリア性を有する薄膜をばらつきなく形成できたことが明らかとなった。
供給流量比を表1に示すように一定とした以外は実施例1と同様にして、薄膜の形成を行い、得られた合計30個の筒状容器21に対して、酸素透過性を測定した。その結果を、実施例1と同様に表2に示す。
一方、反応ガスに対するモノマーガスの供給流量比が一定に制御された比較例では、ガスバリア性の高い薄膜を形成できる場合もあったが、形成できない場合も多く、容器間のばらつきが大きかった。
20 成膜チャンバ
21 筒状容器
22 高周波電極
23 アース電極
23a ガス発生口
23b スリット
23c 孔
26 カバー管
27 スペーサ
30 高周波電源部
31 高周波電源
32 整合機
42 流量制御手段
Claims (9)
- モノマーガスと、酸化性の反応ガスとを含有する混合ガスをプラズマ化し、プラスチック製容器の表面に酸化ケイ素からなる薄膜を形成する薄膜成膜方法において、
前記反応ガスに対する前記モノマーガスの供給流量比を、初期値から連続的に減少させながら混合ガスをプラズマ化する第1成膜工程を有し、
前記モノマーガスは有機系ケイ素化合物であり、
前記反応ガスは酸素であり、
前記第1成膜工程の供給流量比の減少は、前記反応ガスの供給量を一定として前記モノマーガスの供給量を減少させることにより行い、
前記初期値は0.02〜0.2であり、
前記第1成膜工程において、供給流量比が0.05〜0.01の範囲となる時間が2〜5秒間であることを特徴とする薄膜成膜方法。 - 前記第1成膜工程の後に、前記供給流量比を増加させる第2成膜工程を有することを特徴とする請求項1に記載の薄膜成膜方法。
- 100MHz以下の高周波電力を整合機を通してから高周波電極に供給することにより、発生する反射電力を供給した高周波電力の10%以下に制御しながら、前記プラズマ化を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜成膜方法。
- モノマーガスと、酸化性の反応ガスとを含有する混合ガスをプラズマ化し、一端が閉塞したプラスチック製の筒状容器の内表面に酸化ケイ素からなる薄膜を形成する成膜装置であって、
一端が閉塞し、前記筒状容器をその内側に配置可能な筒状の高周波電極と、前記筒状容器の内側に配置され、先端部に混合ガスを発生するガス発生口が形成されたアース電極とを備えた複数の成膜チャンバと、
整合機と高周波電源とを備え、高周波電力を整合してから前記高周波電極に供給可能な高周波電源部と、
前記反応ガスに対する前記モノマーガスの供給流量比を、初期値から連続的に減少させる流量制御手段とを有し、
前記モノマーガスは有機系ケイ素化合物であり、
前記反応ガスは酸素であり、
前記流量制御手段は、前記初期値を0.02〜0.2とし、前記反応ガスの供給量を一定として前記モノマーガスの供給量を減少させることによって、前記供給流量比が0.05〜0.01の範囲となる時間が2〜5秒間となるように前記供給流量比を減少させ、
前記複数の成膜チャンバに、1つの高周波電源部から高周波電力が供給されることを特徴とする成膜装置。 - 前記筒状容器と前記高周波電極との間に、絶縁性材料からなる着脱自在のスペーサが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
- 前記ガス発生口は、直径0.5mm以下の孔および/または幅0.5mm以下のスリットの1つ以上からなることを特徴とする請求項4または5に記載の成膜装置。
- 前記アース電極の外表面の表面平均粗さは、5〜50μmであることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の成膜装置。
- 前記アース電極には、その外周の少なくとも一部に、着脱自在なカバー管が備えられ、該カバー管の外表面の表面平均粗さが、5〜50μmであることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の成膜装置。
- 前記外表面は、金属またはセラミックが溶射され、前記表面平均粗さとされていることを特徴とする請求項7または8に記載の成膜装置。
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