JP4518448B2 - 耐光性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐光性ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる積層体に関する。更に、詳しくは光に暴露された際の変色を防止し、長期に亘って安定な色調を維持しうるポリカーボネート樹脂組成物、ならびにその押出成形品をポリカーボネート樹脂基材の片面もしくは両面に被覆してなる積層体を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、光に過度に暴露されると変色し、黄色味を帯びる(黄変)という問題を有している。そのため、これから得られた成形品を長期間、屋外等に暴露すると、光による黄変現象が生じ成形品の色調が変化するという問題があった。これを解決するために、従来より、紫外線吸収剤等をポリカーボネート樹脂に配合することが試みられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単に紫外線吸収剤を配合するだけでは光に暴露された際の成形品の黄変を十分に防止するには不十分であり、更なる改良が望まれていた。一方、紫外線吸収剤をポリカーボネート樹脂に配合すると紫外線吸収剤に起因してポリカーボネート樹脂の初期の色相が変色してしまうという問題もあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に、分子内にトリアジン骨格を有する化合物からなる紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤とを併用して配合することにより、初期色相の変色が少なく、かつ長期間に亘る光の暴露に対しても黄変せず安定した色調を維持することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、分子内にトリアジン骨格を有する化合物からなる紫外線吸収剤(B)1〜5重量部およびヒンダードアミン系光安定剤(C)1〜5重量部を配合してなることを特徴とする耐光性ポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。また、本発明の別の態様は当該耐光性ポリカーボネート樹脂組成物を必須成分として押出成形してなる厚み10〜100μmの押出成形品を、ポリカーボネート樹脂基材の片面もしくは両面に被覆してなる積層体を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0007】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3‘−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3‘−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4‘−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0008】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4‘−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0009】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。
3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4‘−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0010】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0011】
本発明にて使用される紫外線吸収剤(B)は、分子内にトリアジン骨格を有する化合物からなることを要件とする。好ましくは、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系化合物が用いられる。
一般式(1)
【化4】
Figure 0004518448
(式中、R1は水素または炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜12のアルコキシ基もしくはハロゲンで置換された炭素数2〜6のアルキル基またはベンジル基を、またR2は水素またはメチル基を表わす。R2は同一でも異なっても良い。)
【0012】
本発明にて使用されるヒンダードアミン系光安定剤(C)としては、下記一般式(2)または(3)で示される化合物などが挙げられる。
【0013】
一般式(2)
【化5】
Figure 0004518448
【0014】
一般式(3)
【化6】
Figure 0004518448
【0015】
ヒンダードアミン系光安定剤(C)は、単独もしくは1種以上を併用して使用してもよい。好ましくは、上記一般式(2)および一般式(3)の化合物が使用され、これらは単独または併用して使用しても良い。
【0016】
本発明にて使用される紫外線吸収剤(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、1〜5重量部である。配合量が1重量部未満では耐光性に劣り、また5重量部を超えるとポリカーボネート樹脂の初期色相の黄変が強くなり、また分子量を低下させる傾向があるので好ましくない。より好適な配合量は、2〜4重量部の範囲である。
【0017】
本発明にて使用されるヒンダードアミン系光安定剤(C)の合計の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、1〜5重量部である。配合量が1重量部未満では耐光性に劣り、また5重量部を超えるとそれ以上添加してもあまり耐光性に効果がない。また、ポリカーボネート樹脂の分子量を低下させる傾向があるので好ましくない。より好適な配合量は、2〜4重量部の範囲である。
【0018】
ポリカーボネート樹脂(A)に紫外線吸収剤(B)およびヒンダードアミン系光安定剤(C)を混合する方法には、特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等で混合し、押出機等で溶融混練する方法が挙げられる。
【0019】
また、混合時、必要に応じて他の添加剤、例えば離型剤、充填剤、衝撃改良剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、染顔料を配合することができる。
【0020】
本発明の耐光性ポリカーボネート樹脂組成物をポリカーボネート樹脂基材の片面もしくは両面に被覆してなる積層体の製造方法は、共押出による方法、あるいは表層材として厚み10〜100μmのフィルムを作製し、ラミネーションによって積層体を形成する方法などが挙げられる。共押出による方法では、基材用押出機側に基材ポリカーボネート樹脂を、表層材用押出機側に表層材となるポリカーボネート樹脂組成物を溶融混練し、溶融物を押出ダイの手前のアダプターで合流することによって積層体を形成する方法(フィードブロック方式)あるいは、押出機ダイの中で合流させることによって積層体を形成させる方法(マルチマニーホールド方式)がある。
【0021】
当該耐光性ポリカーボネート樹脂組成物を表層材として用いるポリカーボネート樹脂積層体の最終形状は、特に制限はないが、シート状の平板、波板、多壁状の中空品であっても良い。
【0022】
本発明の耐光性ポリカーボネート樹脂組成物は優れた耐光性を有することから、とりわけ屋外にて光に暴露されるような用途、例えばカーポート、アーケード、その他建設資材用シート製品である平板や波板の如き押出成形品、またはグリーンハウス等に使用される複層ハニカムシート、その他フィルムなどに好適に使用できる。
【0023】
【実施例】
以下に、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。また、実施例中の「部」および「%」は特に断りのない限り、それぞれ重量部、重量%を意味する。
【0024】
(実施例1)
ビスフェノールAから合成されたポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製カリバー300−4、平均分子量(28,000)100部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバスペシャルケミカルズ社製チヌビン1577)3部および下記一般式(2)で示されるヒンダードアミン系光安定剤(三共社製サノールLS−2626)3部をブレンダーを用いて混合し、40mm単軸押出機(田辺プラスチック社製VC−40型)にて設定温度260℃で溶融混合し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
一般式(2)
【化7】
Figure 0004518448
【0025】
ポリカーボネート樹脂からなる基材の表層片面に、得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットからなる表層材を被覆するために、押出機ダイの中で合流させることによって積層体を形成させる方式(マルチマニーホールド方式)を用いた。基材となるポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製カリバー300−4)を40mm押出機(田辺プラスチック社製VC−40型)にて混練溶融し、その基材の表層片面に、得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットからなる表層材を被覆するために、25mm押出機(プラ技研社製)にて混練溶融し、溶融した基材と表層材をマルチマニーホールド方式 Tダイにて合流させ、被覆層50μmからなる厚み3mmの積層シートを得た。得られた積層シートサンプルをランニングソーを用いて80mm×50mmに裁断し、耐光性等を評価した。結果を表1に示す。尚、試験方法は以下のとおりである。
【0026】
1.メルトフローレイト
ポリカーボネート樹脂組成物の加工安定性を調べるために、得られた表層材用のペレットを、ASTM−1238に準拠し、メルトフローレイトを測定した。尚、試験条件は300℃、1.2kg加重下とし、試験機は東洋精機社製セミオートメルトインデクサーを用いた。用いるポリカーボネート樹脂のメルトフローレイトにもよるが、本実施例では4〜15g/10分を合格とした。
【0027】
2.初期の色相
得られた積層シートサンプルを用いて、分光光度計(村上色彩研究所社製CMS−35SP)にてD65光源(相関色温度約6504K)下、赤、緑、青に対するそれぞれの刺激値X,Y,Zを求め、次式に従い黄色味(イエローネス・インデックス(YI))を求める。この値が低いほど良好である。初期YI値が、1.5以下を合格とした。
YI=100(1.28X−1.06Z)/Y
【0028】
3.耐光性
得られた積層シートサンプルを、ウェザーメーター(スガ試験機社製サンシャイン・スーパーロングライフ・ウェザーメーターWEL−SUN−HCH−B型)を用いてブラックパネル温度63℃、降雨有りの条件で、500時間ならびに2000時間照射する。照射後の平板について、前述の初期の色相と同一の操作を行い、500時間照射後のYI、2000時間照射後のYIを求めた。
耐光性については、照射前に対する照射後の色相の変化(YIの変化)を各照射時間毎に求め、黄変度(△YI)として次式に従い表わした。
△YI=YI0−YIx
YI0:初期のYI値
YIx:x時間照射後のYI値
△YIの値が0に近い程、照射前のものに近い色相となり、光の照射に対する色の変化が少ないことになる。500時間後の△YIの値が3.0以下、2000時間後の△YIの値が5.0以下を合格とした。
【0029】
(実施例2)
ヒンダードアミン系光安定剤を下記一般式(3)で示される光安定剤(三共社製サノールLS−440)に変更する以外は全て実施例1と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。実施例1と同様に試験を行い、結果を表1に示した。
一般式(3)
【化8】
Figure 0004518448
【0030】
(実施例3)
ヒンダードアミン系光安定剤として一般式(2)および(3)で示される光安定剤をそれぞれ1.5部併用して配合する以外は全て実施例1と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。実施例1と同様に試験を行い、結果を表1に示した。
【0031】
(比較例1)
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバスペシャルケミカルズ社製チヌビン1577)の配合量を3部のままとし、かつ一般式(2)で示されるヒンダードアミン系光安定剤を配合しないこと以外は全て実施例1と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。実施例1と同様に試験を行い、結果を表1に示した。
(比較例2)
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバスペシャルケミカルズ社製チヌビン1577)の配合量を3部のままとし、かつ一般式(2)で示されるヒンダードアミン系光安定剤を7部添加したこと以外は全て実施例1と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。実施例1と同様に試験を行い、結果を表1に示した。
【0032】
表1
Figure 0004518448
*1:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバスペシャルケミカルズ社製 チヌビン 1577)
*2:ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製 サノール LS-2626)
*3:ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製 サノール LS-440)
【0033】
(実施例4〜11、比較例3〜9)
配合成分およびその配合量を表2〜表4に示すとおり変更し、かつ被覆材の厚みについては表4のとおり変更する以外は全て実施例1と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。実施例1と同様に試験を行い、結果をそれぞれ表2〜表4に示した。
【0034】
【表2】
Figure 0004518448
*1:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバスペシャルケミカルズ社製
チヌビン1577)
*2:ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製 サノールLS−2626)
*3:ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製 サノール LS−440)
【0035】
表3
Figure 0004518448
*1:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバスペシャルケミカルズ社製 チヌビン 1577)
*2:ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製 サノール LS-2626)
*3:ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製 サノール LS-440)
【0036】
表4
Figure 0004518448
*1:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバスペシャルケミカルズ社製 チヌビン 1577)
*2:ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製 サノール LS-2626)
*3:ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製 サノール LS-440)
【0037】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、初期の色相に優れ、かつ光に暴露された際の変色が少なく長期に亘って安定な色調を維持するものであり、これから得られた押出成形品をポリカーボネート樹脂基材の片面もしくは両面に被覆した積層体は屋外等にて光の暴露を受ける用途に好適に使用することができる。

Claims (3)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、分子内にトリアジン骨格を有する化合物からなる紫外線吸収剤(B)1〜5重量部および下記一般式(2)および/または下記一般式(3)で示される化合物からなるヒンダードアミン系光安定剤(C)1〜5重量部を配合してなることを特徴とする耐光性ポリカーボネート樹脂組成物。
    一般式(2)
    Figure 0004518448
    一般式(3)
    Figure 0004518448
  2. 分子内にトリアジン骨格を有する化合物からなる紫外線吸収剤(B)が、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系化合物である請求項1に記載の耐光性ポリカーボネート樹脂組成物。
    一般式(1)
    Figure 0004518448
    (式中、R1は水素または炭素数1〜18のアルキル基または炭素数1〜12のアルコキシ基もしくはハロゲンで置換された炭素数2〜6のアルキル基またはベンジル基を、またR2は水素またはメチル基を表わす。R2は同一でも異なっても良い。)
  3. 請求項1または請求項2に記載の耐光性ポリカーボネート樹脂組成物を必須成分として押出成形してなる厚み10〜100μmの押出成形品を、ポリカーボネート樹脂基材の片面もしくは両面に被覆してなる積層体。
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