JP4518042B2 - コエンザイムq10を含有する水溶性組成物の製造方法 - Google Patents

コエンザイムq10を含有する水溶性組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コエンザイムQ10を含有する水溶性組成物、およびその製造方法、並びにこの水溶性組成物を含有する医薬、飲食品、化粧料および飼料に関する。詳細には、コエンザイムQ10を高濃度で含有することができ、長期間保存してもコエンザイムQ10が沈殿、析出または浮上しない等、保存安定性に優れ、かつ絶食時においても吸収性が得られる等、吸収性に優れた水溶性組成物に関する。また、本発明は、添加する際に必要とされる耐熱性、耐酸性、耐塩性に優れたコエンザイムQ10を含有する医薬、飲食品、化粧料、飼料に関する。
コエンザイムQ10は、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノンの側鎖のイソプレン単位が10の高等動物に存在するユビキノン類(構造式C59904、分子量863.4)であり、ユビデカレノンまたは補酵素Q10として知られる補酵素Qの1種である。その物性としては、橙黄色結晶、融点約49℃の脂溶性物質として知られている。コエンザイムQ10は、補酵素として生物活性をもつだけでなく、酸素利用効率を改善させる作用を有するビタミン様作用物質として知られている。コエンザイムQ10はミトコンドリア中のアデノシン三リン酸の生産に必須とされており、免疫機能を向上させることにより心臓病、高血圧、リウマチ性弁疾患、歯槽の炎症に対する有効性等が報告されている。また、うっ血性心不全、脳血管障害、抗ガン剤の副作用防止(アドリアマイシンによる心臓障害の防止)、疲労回復、エネルギー賦活、生体内活性酸素に対する抗酸化等に使用されている。さらに、皮膚外用剤としての老化防止に対する有効性も期待されている。このようにコエンザイムQ10は高い生理活性を有し、且つ生体内に存在する安全性の高い物質と考えられている。
このような状況から近年、コエンザイムQ10に関しては、各種の技術が開示されている。
例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコール、硬化ヒマシ油ポリオキシエチレン−(20)−エーテル等の非イオン界面活性剤を用いて、マントン−ゴーリン型の高圧ホモジナイザー(500〜550kg/cm2)で処理された脂肪乳剤が開示されている。
また、特許文献2には、大豆油等の植物油、ホスファチジルコリン等のリン脂質界面活性剤を用いて処理し、粒径を0.5〜300μmとした静注用乳化液が開示されている。
また、特許文献3には、油性溶媒としてデカグリセリルペンタオレートをコエンザイムQ10の12.5〜13.5倍量用い、安定化剤としてジアシルモノカプリンをコエンザイムQ10の0.4〜1.6倍量配合してなる自己乳化型軟カプセル薬剤が開示されている。また、特許文献4には、植物油、レシチン等のリン脂質界面活性剤を用いて、特定粒径(0.5μm以下)の脂肪乳剤に含有されてなる脂肪乳剤が静脈内投与可能な乳剤として開示されている。
特許文献5には、結晶性薬剤としてユビキノンを用い、アジピン酸、大豆油等の油分に過飽和状態に溶解し、ポリオキシアルキレン系、ポリグリセリン脂肪酸エステル、トゥイーン系等の界面活性剤を用いて、O/W型マイクロエマルションを作成し、さらの他のO/W型マイクロエマルションに添加した吸収性のよい医薬品等の乳化組成物が開示されている。
特許文献6には、ユビキノンを油脂に溶解しほ乳類乳汁中の脂肪球皮膜を用いて乳化し、特定粒径の粒子(1〜5μm)を分画して吸収性を改善させる組成物が開示されている。
特許文献7には、脂溶性物質としてユビキノンを、また乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセロリン脂質、さらに多価アルコールおよび水を加えてかき混ぜ、その後500〜2000kg/cm2の高圧で均質化処理することを特徴とする脂溶性物質水性液剤が開示されている。
特許文献1のコエンザイムQ10脂肪乳剤は、粒径が大きく透明感で劣る問題がある。
またさらに、特許文献2の静注用乳化液はコエンザイムQ10の含有量が少なく、高濃度にした場合に保存安定性が悪い問題がある。特許文献3で得られる自己乳化型軟カプセル薬液はコエンザイムQ10に対して12.7〜15.1倍と大過剰の活性剤を必要としているため、風味や活性剤の1日摂取許容量の関係でコエンザイムQ10の摂取量が少なく制限される問題がある。
特許文献2、特許文献4および特許文献6には、静注用乳化液や非経口投与製剤について開示されているが、この技術では、コエンザイムQ10を油脂に必ず溶解して用いており、さらに粒径が大きく透明感で劣る等の問題がある。しかも飲食品製造の際に必要とされる耐熱性、耐酸性、耐塩性に劣る等の問題がある。
特許文献5には、低温での保存安定性に優れた化粧水が開示されているが、この技術では、液温の低下とともに透明性が乏しくなり、沈殿も発生し、しかも飲食品製造の際に必要とされる耐熱性、耐酸性、耐塩性に劣る等の問題がある。
特許文献7には、多種の油性物質に適用可能な水中油型マイクロエマルションが開示されている。この技術では耐酸性、耐塩性さらに各条件下での耐熱性に劣る等の問題がある。
特許文献8には、油性成分をポリグリセリンの脂肪酸エステル、水および食品添加物からなる可溶化液が開示されている。この可溶化液では、透明性や安定性に劣る等の問題がある。
コエンザイムQ10を含有する水溶性組成物としては、
(1)粒径が小さく透明感に優れる、
(2)コエンザイムQ10を溶解若しくは分散するための油性成分を必要としないで高濃度にできる、
(3)食感や味に優れる、
(4)製造の際に特殊な条件、複雑な工程等が不要である、
(5)各種食品へ添加に必要な耐酸耐熱性、耐塩耐熱性に優れる、
等が求められている。
しかしながら、コエンザイムQ10は、水に不溶で、光や熱、アルカリに対して不安定であると同時に結晶性が高いため、一般的に乳化による製剤化には困難性が伴う。また、一旦乳化組成物を調製しても、コエンザイムQ10の再結晶化による分離、沈殿、析出または浮上が生じ易いという問題がある。さらに、コエンザイムQ10の十分な効果を得るためには、水溶性組成物中のコエンザイムQ10の濃度を高くする必要があるが、このような難溶性および高結晶性のために水溶液化が困難である。
また、コエンザイムQ10を飲食品、化粧料等に添加する場合に、通常使用される油性成分を必要とせず、さらにこれらに配合する際に必要とされる性質、透明性、耐酸性、耐塩性、耐熱性がともに優れ、乳化安定性・保存性が良く、かつコエンザイムQ10を高濃度で含有しうる可溶化液が求められていた。さらに、コエンザイムQ10は生体内での吸収性も低いため、吸収性の改善についても求められていた。
特開昭60−199814号公報 特開昭61−56124号公報 特開昭62−67019号公報 特開昭62−123113号公報 特開昭63−150221号公報 特開平05−78240号公報 特開2000−212066号公報 特開平9−168369号公報
したがって、本発明の課題は、油脂等の溶解媒体を使用せずに高濃度に配合したコエンザイムQ10が長期間保存しても析出、沈殿または浮上を生じることなく、均質で安定な水溶化(可溶化)状態を保持し、さらに、医薬、飲食品、化粧料、飼料に添加する際に必要とされる食感、味、耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、かつ生体内吸収性が顕著に改善された、コエンザイムQ10を含有する水溶性組成物およびその製造方法を提供することである。また、該組成物を配合しても、コエンザイムQ10が析出、沈澱、浮上したりすることがなく、透明性に優れた医薬、飲食品、化粧料および飼料、並びにその投与方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題解決のため鋭意研究した結果、特定の2種の界面活性剤を用いて水中油型エマルジョンを形成させると、高濃度のコエンザイムQ10の可溶化状態が良好に保たれ、かつ生体内吸収性が向上することの知見を得て、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は次の〔1〕〜〔8〕である。
〔1〕 (A)コエンザイムQ10 5〜40質量%、(B)平均重合度10のポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノエステル 5〜30質量%、(C)平均重合度3〜6のポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノ、ジ、トリまたはペンタエステル 1〜18質量%、および、(D)水、からなり、かつ平均粒子径が110nm以下であることを特徴とする水溶性組成物、
〔2〕 成分(B)の脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸またはリノール酸であり、成分(C)の脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸またはリノール酸である前記1記載の水溶性組成物、
〔3〕 さらに(E)可溶化助剤 10〜80質量%を含む、前記〔1〕または〔2〕記載の水溶性組成物、
〔4〕 可溶化助剤が、ガム質、糖類または多価アルコールである、前記〔3〕記載の水溶性組成物、
〔5〕 成分(A)/{(B)+(C)}の質量比が1/5〜0.7であり、且つ成分(B)/(C)の質量比が1/0.2〜1である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の水溶性組成物、
〔6〕 次の工程:
(I)成分(B)、(C)および(D)、場合により成分(E)を加熱溶解する、
(II)成分(A)を添加して混合する、次いで
(III)ホモミキサーを用いて攪拌羽の周速750m/分以上のせん断力により均質化処理する、および/または
(IV)均質機を用いて98MPa(1,000kg/cm2)以上の均質化圧力により均質化処理する
ことからなり、上記工程により平均粒径を110nm以下にすることを特徴とする、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のコエンザイムQ10を含有する水溶性組成物の製造方法、
〔7〕 工程(III)もしくは(IV)を繰り返す、または工程(III)を行い、次いで工程(IV)を行う、前記〔6〕記載の製造方法、
〔8〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のコエンザイムQ10を含有する水溶性組成物を含む医薬、飲食品、化粧料および飼料
本発明のコエンザイムQ10を含有する水溶性組成物は、保存安定性に優れ、長期間保存してもコエンザイムQ10が析出することなく、均質で安定な状態を保つことができる。また、耐酸性、耐塩性、耐熱性にも優れ、医薬、飲食品、化粧、飼料およびこれらに通常使用される添加物等と配合しても水溶化状態を安定に保つことができる。さらに、熱処理に対しても安定であり、高温殺菌または滅菌処理することができる。
また、本発明の水溶性組成物は、コエンザイムQ10の吸収性が顕著に改善されており、特に空腹時でも十分な量のコエンザイムQ10を摂取することが可能となる。
本発明の水溶性組成物は、そのまま摂取してもよいが、医薬、飲食品、化粧料および飼料等の製造に際して配合することにより、十分な量のコエンザイムQ10を効率よく摂取させることができる。特に、虚弱高齢者、嚥下障害者、術後の栄養補給等、固形物を摂取することが困難な人に対しても、コエンザイムQ10を確実に補給することができる。
本発明のコエンザイムQ10を含有する水溶化組成物は、(A)コエンザイムQ10 5〜40質量%、(B)平均重合度10のポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノエステル 5〜30質量%、(C)平均重合度3〜6のポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノ、ジ、トリまたはペンタエステル 1〜18質量%、および(D)水、場合により(E)可溶化助剤 10〜80質量%からなり、かつ平均粒子径が110nm以下、好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下であることを特徴とする。
成分(A)
コエンザイムQ10は、ユビキノン10、ユビデカレノンまたは補酵素UQ10等として、日本薬局方に記載されている。本発明で用いるコエンザイムQ10は、牛等の動物の心臓から抽出されるものでもよいし、合成法、発酵法で得たものが挙げられる。特に、市販品としては、食品素材コエンザイムQ10(日清ファルマ(株)製、商品名)、カネカ・コエンザイムQ10(鐘淵化学(株)製、商品名)、CoEnzyme Q10(旭化成(株)製、商品名)等が挙げられる。使用に際しては特に純度等は限定されないが、本発明の水溶性組成物は、医薬、各種サプリメント等を含む飲料や食品、化粧料へ適用されるものであるため、用途の使用目的に応じて不純物やその含有量等、製品の品質が十分に管理されているものが望ましい。
水溶性組成物へのコエンザイムQ10の配合量は、5〜40質量%、好ましくは7〜30質量%、さらに好ましくは9〜25質量%である。
コエンザイムQ10の配合量が、5質量%より少ない場合は、目的とする効果を得るために水溶性組成物の使用量が多くなるので好ましくない。コエンザイムQ10の配合量が、40質量%より多い場合は、水溶性組成物中のコエンザイムQ10の可溶化状態を安定して保持することが難しくなるため、好ましくない。
成分(B)
成分(B)、即ち平均重合度10のポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノエステルの配合量は5〜30質量%であるが、乳化安定性や風味の点から5〜25質量%、さらに好ましくは7〜20質量%である。
成分(B)の構成脂肪酸としては、炭素数18の脂肪酸であれば特に限定はないが、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が好ましい。
したがって、成分(B)のモノエステルとしては、特に限定はないが、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノリノレート等が好ましい。また、これらの混合物も用いることができる。
このようなポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノエステルは市販されており、例えば、サンソフトQ―18S、同Q―17S(以上、太陽化学(株)製、商品名)、ポエムJ−0381(理研ビタミン(株)製、商品名)、SYグリスターMO−750、FRL−1(以上、阪本薬品工業(株)製、商品名)、O−15D(三菱化学フーズ(株)製、商品名)等が挙げられる。
ポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノエステルの純度としては、特に限定されないが、製造の性質上、平均重合度10のポリグリセリン脂肪酸モノエステルの他に、若干のジエステルやトリエステルを含んでいても良い。
成分(C)
成分(C)、即ち平均重合度3〜6のポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノ、ジ、トリまたはペンタエステルの配合量は1〜18質量%であるが、乳化安定性や風味の点から2〜18質量%、さらに好ましくは3〜9質量%である。
成分(C)の構成脂肪酸としては、炭素数18の脂肪酸であれば特に限定はないが、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が好ましい。
平均重合度3〜6ポリグリセリンエステルとしては、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリンと炭素数18の脂肪酸のモノエステル、同ジエステル、同トリエステル、同ペンタエステルが挙げられる。特に好ましくは、ペンタグリセリンモノエステルである。
ここでグリセリン部分は平均重合度3〜6のポリグリセリンであり、これらの混合物であってもよい。
成分(C)のポリグリセリンと脂肪酸のモノ、ジ、トリ、またはペンタエステルの具体例としては、トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサグリセリンのモノ、ジ、トリまたはペンタステアレート;トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサグリセリンのモノ、ジ、トリまたはペンタオレート;トリ、テトラ、ペンタまたはヘキサグリセリンのモノ、ジ、トリまたはペンタリノレート等が挙げられ、これらの混合物も使用することができる。
このようなポリグリセリンと炭素数18の脂肪酸エステルは市販されており、例えば、SYグリスターMS−310、同TS−310、同MO−310、同PO−310、同MS−500、同PS−500、同MO−500、同PO−500(以上 阪本薬品工業(株)製、商品名)、サンソフトQ―18F、同Q―17F、同A−181C、同A−171C、同A181E、同A171E、同A−183E、同A−173E(以上 太陽化学(株)製、商品名)、ポエムJ−4581(理研ビタミン(株)製、商品名)等が挙げられる。
また平均重合度3〜6のポリグリセリン脂肪酸エステルの純度としては特に限定されないが、製造の性質上、複数のエステル体を含んでいてもよい。
また、前記成分(B)および(C)の界面活性剤は、蒸留等で高度に精製されたものであることは必ずしも必要なく、反応混合物であってもよい。
本発明の水溶性組成物において、成分(A)/{(B)+(C)}の配合比(質量比)が1/5〜0.7であり、且つ成分(B)/(C)の配合比(質量比)が1/0.2〜1であることが安定した水溶性組成物を得る点から、より好ましい。
成分(D)
成分(D)、即ち水は、医薬、飲食品、化粧料、飼料に配合できる水であれば特に制限はなく、例えば、イオン交換水、蒸留水等の精製水、水道水、天然水、アルカリイオン水等が挙げられる。また、これは水のみであっても、その他に食品添加物を加えた水であってもよい。食品添加物としては、ビタミン類、界面活性剤、安定剤、調味料、酸および塩等が挙げられる。
成分(E)
成分(E)の可溶化助剤としては、コエンザイムQ10の可溶化状態を安定化させる作用を有するガム質や糖アルコール、糖類等が挙げられる。具体的には例えば、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等のガム質類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール等の多価アルコール類;マルチトール、還元水あめ、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖果糖液糖、乳糖等の単糖類や二糖類;デキストリン等の多糖類;等が挙げられる。これらの可溶化助剤を1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。好ましくは、甘味の点からブドウ糖果糖液糖等の還元性糖類、風味の点からアラビアガム等のガム質である。
可溶化助剤の添加量としては、10〜80質量%、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは15〜60質量%である。可溶化助剤の配合量が80質量%を超えるとコエンザイムQ10や可溶化剤の配合量が少なくなり、コエンザイムQ10の摂取する目的の効果が得られにくく、また安定な水溶性組成物が得られ難くなり好ましくない。
本発明では、前記の成分(B)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルおよび成分(C)のポリグリセリン脂肪酸モノ、ジ、トリまたはペンタエステル以外に加え、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の界面活性剤を1種または2種以上を混合して使用してもよい。これらの界面活性剤としては、具体的には例えば、成分(B)や成分(C)以外のポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サポニン、ステロール、コール酸、デオキシコール酸、ユッカ抽出物、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、前記以外の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
次に、本発明の水溶性組成物の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、下記の工程(I)〜(II)、次いで(III)および/または(IV)からなる。
工程(I);上述の成分(B)、(C)および(D)、場合により成分(E)を原料として所定量はかりとり、加熱溶解する。例えば、60〜80℃の湯煎にてスリーワンモーター等で攪拌し、加熱溶解することが好ましい。
工程(II);成分(A)、即ちコエンザイムQ10を添加して混合する。
工程(III);ホモミキサーを用いて攪拌羽の周速750m/分以上のせん断力により均質化処理する。
工程(IV);均質機を用いて98MPa(1,000kg/cm2)以上の均質化圧力により均質化処理する。
上記の工程により、本発明の水溶性組成物中のコエンザイムQ10(コエンザイムQ10を含有する水中油型エマルジョン)の平均粒子径が110nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下となるようにする。
コエンザイムQ10の平均粒子径が110nmを超えると、水溶性組成物の保存安定性、生体への吸収性や透明性が不十分であり、本発明の目的である効果が得られない。
またさらに、コエンザイムQ10の生体への吸収性をより改善するためには60nm以下とすることが望ましい。
工程(III)の均質化処理において用いるホモミキサーとして、例えば、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製、商品名)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製、商品名)が挙げられ、均質化法としては、攪拌羽の周速が750m/分以上、好ましくは1000m/分以上、さらに好ましくは1500m/分以上の高せん断力を与える方法等が挙げられる。
また、工程(IV)の均質化処理において用いる高圧ホモジナイザーとして、例えば、マイクロフルイダイザー(みづほ工業(株)製、商品名)、アルティマイザー((株)スギノマシン製、商品名)等の均質化処理機が挙げられ、均質化法としては、98MPa(1,000kg/cm2)以上、より好ましくは150MPa(1531kg/cm2)以上、さらに好ましくは200MPa(2039kg/cm2)以上の高せん断力を与える方法が挙げられる。
工程(III)もしくは(IV)の均質化処理を単独で繰り返す、または工程(III)と(IV)を連続して行うことにより、均一な液状のコエンザイムQ10の水溶化組成物を得ることができる。コエンザイムQ10の水溶性組成物をより微細化して安定化させるために、この均質化処理を2回以上行うことが望ましい。
また、均質化処理は前記の均質化処理機以外にも、ナノマイザー、超音波乳化機等の均質化処理機やアジホモミキサー、ウルトラミキサー等の各種のホモミキサーを用いることができる。
本発明のコエンザイムQ10の水溶性組成物の製造方法としては、自然乳化法、転相乳化法、液晶乳化法、ゲル乳化法、およびD相乳化法およびPIT乳化法等も利用できる。また、これらの方法と前記均質化処理等の機械式乳化法を組み合わせて行ってもよい。
なお、コエンザイムQ10は、油性成分であるので、必要に応じて、食品等に使用できる油脂、脂質、その他の油性成分等を配合しても構わない。
ここで、食品等に使用できる油脂としては、動物、植物、微生物を原料とする油脂または合成油が挙げられる。具体的には、豚脂、牛脂、鶏油、鯨油、マグロ油、イワシ油、サバ油、サンマ油、カツオ油、ニシン油、肝油、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、パーム油、シソ油、エゴマ油、カカオ脂、落花生油、ヤシ油、月見草油、ボラージ油、乳脂肪、バター等、および、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成トリグリセリド等を配合した油脂が挙げられる。
脂質の例としては、グリコシルセラミド、オクタコサノール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、フィトステロール、リコピン、ベータカロチン、ルテイン、SAIB(ショ糖酢酸・イソ酪酸エステル)等の比重調整剤等が挙げられる。
その他の油性成分として、脂溶性ビタミン類、油溶性香料、炭化水素類等が挙げられる。脂溶性ビタミン類としては、具体的には、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンP等の脂溶性ビタミン類が挙げられる。また同じく油溶性香料としては、具体的には、例えば、メントール、オレンジオイル、レモンオイル、ユズオイル、精油等が挙げられる。
さらに、炭化水素類としては、例えば、スクワレン、スクワラン、ラノリン、流動パラフィン等が挙げられる。
特に前記の油脂、脂質、その他の油性成分等の使用量は、本発明ではコエンザイムQ10をそのまま使用できるので特に限定されないが、通常使用する場合には、0.1〜20質量%が好ましい。
本発明のコエンザイムQ10を含有する水溶性組成物は、そのまま水中油型エマルジョンとして用いてもよいが、例えば、噴霧乾燥法等により水分を除去して乾燥粉末として用いることができる。この場合、乾燥粉末を水等の水性液体に添加した場合には速やかに溶解してコエンザイムQ10を含有する水溶液となる。また、粉末を服用・摂取した場合、生体内の水分に溶解して、同様に水溶液となる。
本発明の水溶性組成物は、そのまま摂取してもよいが、種々の食品にコエンザイムQ10を添加するための配合原料として使用することができる。その用途としては、特に制限はなく、あらゆる種類の飲食品に適用することができる。
本発明の水溶性組成物を含有する食品としては、例えば、清涼飲料、スポーツ飲料、炭酸飲料、ドリンク剤等の飲料;うどんやスパゲッテイ等のめん類、お好み焼き、パン、ビスケット、キャンディー、ゼリー等のパン・菓子類;ヨーグルト、ハム等の乳肉加工食品;味噌、ソース、液状スープ、タレ、ドレッシング等の調味料;豆腐、麺類等の加工食品;マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の油脂加工食品が挙げられる。さらにその形状から粉末飲料、粉末スープ等の粉末食品;カプセル状、タブレット状、粉末状、顆粒状等にした健康食品;その他の医薬、医薬部外品、特別用途食品、特定保健用食品、栄養機能食品、動物用飼料用として、飲料時に水に混ぜる等動物の栄養強化として投与される等等を挙げることができる。
本発明のコエンザイムQ10の水溶性組成物を含有する飲料としては、食塩、鉄分等の塩類やミネラル分、酸味料、甘味料、アルコール、ビタミン、フレーバーおよび果汁の中から少なくとも1種を含む飲料、例えば、清涼飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、アルコール飲料、ビタミン・ミネラル飲料、ドリンク剤等が挙げられる。さらに、加工乳、豆乳、体質改善のための飲料、生理効果を期待できる天然素材と組み合わせた飲料等を挙げることができる。
摂取の利便性から好ましくは、清涼飲料、ドリンク剤等の飲料の用途が挙げられる。このような飲料は、手軽にどこでも飲むことが可能であり、虚弱高齢者、嚥下障害者、術後の栄養補給等、固形物を摂取することが困難な人に対しても、確実に補給されさらに、生体内利用率向上も期待される。
これらの使用時、コエンザイムQ10の配合量は、特に限定されないが、例えば、製品中、0.001〜80質量%が望ましい。
また、本発明の水溶性組成物を含有する化粧料としては、O/W型ローション、O/W型クリーム、粘稠マイクロエマルジョンエッセンスおよびO/W型エッセンス等を挙げることができる。また、本発明の化粧料は、当該技術分野で通常使用されるから添加剤、例えば、抗酸化剤、紫外線遮断剤、角層剥離剤、界面活性剤、香料、色素、防腐剤、pH調整剤、キレート剤等を適宜配合することができる。本発明の化粧料は、皮膚の老化防止、肌荒れの防止・改善に使用することができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
以下に用いた測定方法、評価方法を示す。
1.平均粒子径の測定方法
試料の平均粒子径は、分散粒子をサブミクロン粒度分布測定装置〔型式:N4SD ベックマン・コールター(株)製〕により測定した。
2.耐酸・耐熱試験
クエン酸にてpHを3以下に調整した精製水にコエンザイムQ10の水溶性組成物を1%添加し、この組成物含有酸性水溶液を湯煎にかけ液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。これらの組成物含有酸性水溶液を室温にて放冷し、1日後の平均粒子径により耐酸・耐熱性を評価した。
3.耐塩性・耐熱性試験
食塩を5%含有する精製水にコエンザイムQ10の水溶性組成物を1%添加し、この組成物含有食塩水を湯煎にかけ、液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。これらの組成物含有食塩水を室温にて放冷し、1日後の平均粒子径により耐酸・耐熱性を評価した。
実施例1
デカグリセリンモノオレート 12質量%、ペンタグリセリントリオレート 5質量%、水 78質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10(日清ファルマ(株)商品名、食品素材コエンザイムQ10)5質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いで高圧ホモジナイザーで150MPa(1531kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、前記の方法により評価した。
水溶性組成物の組成および結果を表1に示す。表中の数字の単位はnmであり、また記号○は、組成物の粒径が100nm未満の場合には±10nm以内、組成物の粒径が100nm以上の場合には±10%以内で安定性が良好、記号△は、組成物の粒径が100nm未満の場合には±20nm以内、組成物の粒径が100nm以上の場合には±20%以内で安定性がやや悪い、記号×は、安定性が悪く前記範囲以上の変化をそれぞれ表す。
実施例2
デカグリセリンモノオレート 9.5質量%、ペンタグリセリンモノオレート 6.5質量%、水 24質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 50質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 10質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
実施例3
デカグリセリンモノオレート 9.5質量%、ペンタグリセリンモノオレート 6.5質量%、水 18質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 52質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてあらかじめ混合、溶解したコエンザイムQ10 10質量%とパーム油 4質量%とを先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
実施例4
デカグリセリンモノオレート 9.5質量%、ペンタグリセリンモノオレート 4質量%、クエン酸モノグリセライド 2質量%、水 55.5質量%、アラビアガム 19質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 10質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速1800m/分の条件で60分間処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
実施例5
デカグリセリンモノオレート 13.5質量%、ヘキサグリセリンモノオレート 6.5質量%、水 31質量%、還元澱粉糖化物 30質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてあらかじめ混合、溶解したコエンザイムQ10 15質量%とSAIB 4質量%とを先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで245MPa(2500kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
実施例6
デカグリセリンモノオレート 13.5質量%、テトラグリセリンモノオレート 6.5質量%、水 31質量%、還元澱粉糖化物 30質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてあらかじめ混合、溶解したコエンザイムQ10 15質量%とSAIB 4質量%とを先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速が1500m/分の条件で20分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで245MPa(2500kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
実施例7
デカグリセリンモノオレート 12.5質量%、ペンタグリセリンモノオレート 8.5質量%、水 19質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 30質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 30質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いで高圧ホモジナイザーで150MPa(1531kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、さらに200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を2回行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
比較例1
実施例1のデカグリセリンモノオレート 12質量%、ペンタグリセリンモノオレート 5質量%を、デカグリセリンモノオレート 17質量%とした以外は同様の工程で処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
比較例2
実施例1のデカグリセリンモノオレート 12質量%、ペンタグリセリンモノオレート 5質量%を、デカグリセリンモノステアレート 17質量%とした以外は同様の工程で処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
比較例3
デカグリセリンモノオレート 3質量%、ペンタグリセリンモノオレート 0.5質量%、水 34.5質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 52質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 10質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速が1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表1に示す。
比較例4
デカグリセリンモノオレート 40質量%、ペンタグリセリンモノオレート 20質量%、水 30質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 10質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速が1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行なったが、組成物の粘性が大きく水性組成物を得ることが出来なかった。
以上の結果から、可溶化剤がデカグリセリンモノオレートのみで可溶化した比較例1、粒子径が110nm以上の比較例2は、耐酸・耐熱性、耐塩・耐熱性における安定性においてやや劣っている。
成分(B)のデカグリセリンモノオレートと、成分(C)のペンタグリセリンモノオレートの配合量が本発明の規定量の範囲より少ない比較例3は、粒子径が大きく、耐酸・耐熱性、耐塩・耐熱性における安定性において劣っている。
成分(B)のデカグリセリンモノオレートと、(C)のペンタグリセリンモノオレートの配合量が本発明の規定量の範囲より多い比較例4は、安定な水溶性組成物として得ることが出来ない。
これらに対して、本発明の実施例1〜7は、耐酸・耐熱性、耐塩・耐熱性が共に優れ、安定な、粒子径110nm以下の水溶性組成物であることが分かる。
実施例8
デカグリセリンモノステアレート 16質量%、ペンタグリセリンモノステアレート 4質量%、水 20質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 50質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 10質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表2に示す。
実施例9
デカグリセリンモノオレート 16質量%、ペンタグリセリンモノステアレート
4質量%、水 20質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 50質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 10質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表2に示す。
実施例10
デカグリセリンモノステアレート 8質量%、デカグリセリンモノリノレート 8質量%、ペンタグリセリンモノステアレート 4質量%、水 20質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 46質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてあらかじめ混合、溶解したコエンザイムQ10 10質量%とパーム油 4質量%とを先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表2に示す。
実施例11
デカグリセリンモノオレート 8質量%、デカグリセリンモノリノレート 8質量%、ペンタグリセリンモノオレート 4質量%、水 20質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 46質量%を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 10質量%を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて羽の周速1500m/分の条件で15分間処理を行ない、さらに高圧ホモジナイザーで200MPa(2039kg/cm2)の圧力にて均質化処理を行ない、均一な水性組成物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成および結果を表2に示す。
以上の結果から、成分(B)および成分(C)のオレイン酸エステルのどちらか一方または両方を他の炭素数18の脂肪酸エステルまたはその混合物等に置換した実施例8〜11も粒子径が110nm以下の水溶性組成物となり、耐酸・耐熱性、耐塩・耐熱性が共に優れ、安定であることが分かる。
実施例12
前記実施例2、3の水溶性組成物 0.3質量%、ぶどう糖果糖混合液糖 15質量%、グラニュー糖 7質量%、グレープフルーツ1/5濃縮果汁 4質量%、クエン酸 0.3質量%、クエン酸ナトリウム 0.2質量%、グレープフルーツフレーバー 0.2質量%、水 73質量%からなる飲料を調製し、100ml瓶に充填し、85℃で30分間の殺菌を行なった。
殺菌後もコエンザイムQ10の分離は全く認められず、問題なく飲むことが出来た。
比較例5
テトラグリセリンモノステアレート 9質量部、デカグリセリンモノステアレート 6質量部、グリセリン 5質量部、水 70質量部を加温して完全に溶解し、水相部とした。油相部としてコエンザイムQ10 10質量部を先の水相部へかき混ぜながら徐々に加えて、次いでホモミキサーを用いて5分間処理を行ない、平均粒径380nmのコエンザイムQ10の分散液を得た。製造直後の乳化状態は良好であったが、2週間後では一部上部に分離が見られた。
比較例6 コエンザイムQ10を含有する乳化粉末
コエンザイムQ10 100gを加温溶解し、予め60℃に加温溶解したショ糖脂肪酸エステル200gに添加し、乳化させる。さらに高圧ホモジナイザー(三和機械(株)製H−11型)を通過させ、流動層型造粒装置(フロイント産業製FLO−MINI)にて乳糖 1000g、デンプン 700gからなる賦形剤混合物を流動させた状態下でこの液を噴霧し、橙黄色の粉末〜顆粒状の組成物を得た。得られた粉末組成物 1gを100gの水中に投入すると、速やかに分散溶解し、淡黄色のコエンザイムQ10分散液が得られた。この分散液のコエンザイムQ10分散粒子径を測定すると50%粒子径が2.62μmであった。
比較例7 コエンザイムQ10を含有するソフトカプセル
コエンザイムQ10 60g、大豆油 240g、グリセリン脂肪酸エステル(ココナードMT) 300gを加温溶解し、60℃でコエンザイムQ10の溶解を確認後25℃付近まで冷却し、カプセル充填液を得た。次いで、慣用の技術を用いて、1包当たりコエンザイムQ10 30mgを含有するソフトカプセルを得た。
比較試験1
前記実施例2と前記比較例5で得られた水溶性組成物を用いて、動物実験によりコエンザイムQ10の吸収性の比較を行った。
<動物吸収実験>
1群3頭のビーグル犬(雄)2群を用い、投与前日の夕方5時以降から絶食とし、実施例2で得られたコエンザイムQ10可溶化液と前記比較例5で得られたコエンザイムQ10の分散液をそれぞれ1頭当たり、90mg/dogの投与量となるようにハードカプセルに詰めたもの単回強制投与した。投与後24時間まで、定期的に血液を採取して血漿中のコエンザイムQ10濃度の推移を調べた。結果を表3に示す。
<血漿中のコエンザイムQ10濃度の測定方法>
測定は、HPLCを用い下記の条件でおこなった。なお、血清中には、酸化型および還元型のコエンザイムQ10が存在するので、試料中に酸化鉄を加えて酸化型とし、HPLCで測定した。
<HPLCの条件>
カラム;Nucleosil5C18、4.6mmφ×25cm、
移動相;エタノール/アセトニトリル(=60/40容量比)、
流速;1ml/分、
検出器;紫外分光光度計、検出波長275nm。
注;Cmax(ng/ml): 最高血中濃度
tmax(hrs): 最高血中濃度に到達するまでの時間
AUC(0→24)(ng・hr/ml): 血中薬物濃度−時間曲線下面積
以上の結果から、実施例2で得られた粒径が小さい水溶性組成物を摂取した場合には、比較例5の分散液に比べ、生体内吸収性が有意に高かった。これまで通常絶食時では、コエンザイムQ10の吸収性が悪いと考えられていたが、粒径の小さいコエンザイムQ10水溶性組成物を用いると吸収性が顕著に改善されることがわかる。
比較試験2 絶食時摂取における吸収性試験
実施例2の水性組成物、比較例6の乳化粉末組成物、比較例7のソフトカプセルについて、それぞれ3人の被験者による経口投与にて絶食時摂取における吸収試験を行った。
前日の21時以降絶食とし、翌日朝8時に絶食条件にてコエンザイムQ10を一人あたり60mgを経ロ投与した。経口投与を行った。投与後、2、4、6、8、12、24時間後に血液を採取してコエンザイムQ10の血中濃度を測定した。
なお、測定はHPLCを用い下記の条件で行った。また血清中には酸化型および還元型のコエンザイムQ10が存在するので、両者を測定しその合計を求めた。
カラム:Nhdeosil5C18 4.6mm*25cm
移動相:エタノ一ル:アセトニトリル(55:45)
流速: 1m1/分
検出器:紫外分光光度計 275nm
その結果、比較例6の乳化粉末組成物と比較例7のソフトカプセルでは投与した後の血中濃度の上昇はごく僅かでほとんど吸収されないのに対して、実施例2の水溶性組成物は絶食下で経口投与しても確実にしかも高濃度にコエンザイムQ10が生体内に吸収されることが分かった。今までの知見では、食事と共に摂取しない限りコエンザイムQ10の吸収は得られないとされていたが、本発明の水溶性組成物を摂取することにより、絶食下でも吸収性が顕著に改善されることが確認された。これらの結果を図1に示す。
比較試験3 食後摂取における吸収性試験
実施例2の水性組成物、比較例6の乳化粉末組成物、比較例7のソフトカプセルについて、それぞれ3人の被験者による経口投与にて食後摂取における吸収試験を行った。
前日、22時までに食事を済ませ、翌日朝に血液を採取した後、朝食を摂取し、その10分以内にコエンザイムQ10 60mgを経口投与した。投与後、2、4、6、8、12、24時間後に血液を採取してコエンザイムQ10の血中濃度を測定した。なお、血中濃度は、比較試験2と同様に測定した。
その結果、比較例6の乳化粉末組成物と比較例7のソフトカプセルでは、摂取後2時間以降になって血中濃度が上昇し始めるが、実施例2の水溶組成物では摂取後直ぐに血中濃度が上昇し始め、吸収量の増加の立ち上がりが比較例と比較して非常に速いことが分かった。これは、本発明の水溶性組成物は、その吸収性が非常に優れていることを示す。これらの結果を図2に示す。
絶食時摂取におけるコエンザイムQ10の吸収性を示すグラフである。 食後時摂取におけるコエンザイムQ10の吸収性を示すグラフである。

Claims (3)

  1. (A)コエンザイムQ105〜40質量%、(B)平均重合度10のポリグリセリンとステアリン酸、オレイン酸またはリノール酸のモノエステル5〜30質量%、(C)平均重合度3〜6のポリグリセリンとステアリン酸、オレイン酸またはリノール酸のモノ、ジまたはトリエステル1〜18質量%、および、(D)水を、成分(A)/{(B)+(C)}の質量比が1/5〜0.7であり、且つ成分(B)/(C)の質量比が1/0.2〜1で、均質化処理する水溶性組成物の製造方法であって、下記(I)〜(IV)の工程を含む、コエンザイムQ10を含有する水溶性組成物の製造方法。
    (I)成分(B)、(C)および(D)を加熱溶解する、
    (II)成分(A)を添加して混合する、次いで
    (III)ホモミキサーを用いて攪拌羽の周速750m/分以上のせん断力により均質化処理する、および/または
    (IV)均質機を用いて98MPa(1,000kg/cm2)以上の均質化圧力により均質化処理する
  2. 水溶性組成物が、さらに、(E)ガム質、糖類、多価アルコールから選ばれる一種以上の可溶化助剤10〜80質量%を含み、工程(I)において、成分(B)、(C)、(D)および(E)を加熱溶解する、請求項1記載の水溶性組成物の製造方法。
  3. 工程(III)もしくは(IV)を繰り返す、または工程(III)を行い、次いで工程(IV)を行う、請求項1または2記載の水溶性組成物の製造方法。
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