JP2004154060A - ホスファチジルセリン可溶化液、製造方法及び用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】水難溶性ホスファチジルセリンを水溶性組成物とすることで食品、化粧料などの幅広い分野での使用を可能にし、長期間保存してもホスファチジルセリンの析出、沈殿または浮上を生じることなく、均質で安定な可溶化状態を保持し、さらに、飲食品に添加する際に必要とされる耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、該組成物を配合した飲食品、化粧料においても、ホスファチジルセリンが析出、沈澱、浮上したりすることがなく、透明性に優れたホスファチジルセリン可溶化液を提供する。
【解決手段】ホスファチジルセリン(A)を水系溶媒に分散する可溶化液であって、炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル(B1)と炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖とのエステル(B2)とステアリン酸モノグリセライドと有機酸とのエステル(B3)とを組合せ用いることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液。
【選択図】なし
【解決手段】ホスファチジルセリン(A)を水系溶媒に分散する可溶化液であって、炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル(B1)と炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖とのエステル(B2)とステアリン酸モノグリセライドと有機酸とのエステル(B3)とを組合せ用いることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はホスファチジルセリン可溶化液、および製造方法並びに、この可溶化液を含有することを特徴とする飲食品、化粧料に関する。さらに詳しくは、長期間保存してもホスファチジルセリンが、沈殿、析出または浮上しないで、均質な可溶化状態を保持しうる上、飲食品に添加する際に必要とされる耐熱性、耐酸性、耐塩性などに優れた、ホスファチジルセリン可溶化液およびそれの製造方法並びに、この可溶化液を含有する飲食品、化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホスファチジルセリンは、リン脂質の一種であり、植物や動物に普遍的に存在している物質である。近年、ホスファチジルセリンには、脳内グルコースの上昇作用や記憶障害の回復(J.Nutr.Sci.Vitaminol.,42,Sakai M.et al, 1996年)(非特許文献1)などの脳機能改善効果があることがわかり、生理活性物質として注目され始め、盛んにその製造方法や用途が検討されている。
しかしながら、ホスファチジルセリンは油および水に対する溶解性が極めて低いことなどから、水に均一に分散して安定な液状品として利用することは困難であった。そのため、製剤や食品では、油へ懸濁させるか、あるいは粉末、顆粒の形で供されてきたが、製剤、食品への添加、利用の際の作業性の悪さなどが問題となり、改善が求められていた。
特開平5−139957号公報(特許文献1)では、ホスファチジルセリンを5〜100重量%を占めるリン脂質からなることを特徴とした、肺臓に集積しやすい薬剤キャリヤーが開示されている。この技術で得られる脂肪乳剤の粒径は188±32nmであり、得られるホスファチジルセリンの乳化剤は、粒径が大きく透明感で劣る問題がある。
【0003】
またさらに、特開平6−293615号公報(特許文献2)には、粒径100〜3000オングストローム(10〜300nm)のO/W/O型混合脂質膜小胞が得られているが、その製造方法は超音波処理によるもので、得られるホスファチジルセリン可溶化液は保存安定性が悪い問題がある。
特開平11−209307号公報(特許文献3)には、非経口投与製剤について開示されているが、この技術では、その製造工程が非常に煩雑である等の問題がある。
特開2001−48743号公報(特許文献4)には、低温での保存安定性に優れた化粧水が開示されているが、この技術では、液温の低下とともに透明性が乏しくなり、沈殿も発生し、しかも飲食品製造の際に必要とされる耐熱性、耐酸性、耐塩性に劣る等の問題がある。
特開平11−262653号公報(特許文献5)には、多種の油性物質に適用可能な水中油型マイクロエマルションが開示されている。この技術では耐酸性、耐塩性に劣る等の問題がある。
特開平11−332463号公報(特許文献6)には、ポリグリセリンの脂肪酸エステル、油性成分とレシチンの可溶化液が開示されている。この可溶化液では、安定性に悪い等の問題がある。
したがって、飲食品に添加する際に必要とされる性質である、透明性、耐酸性、耐塩性、耐熱性がともに優れ、安定な可溶化状態を保つホスファチジルセリン可溶化液として十分に満足できるものがなく、求められているのが現状であった。
また、化粧料等に配合する際に、透明性、耐酸性、耐塩性、耐熱性がともに優れ、安定な可溶化液状態を保つホスファチジルセリン可溶化液として十分満足できるものがなく、求められていいるのが現状であった。
【0004】
【非特許文献1】J.Nutr.Sci.Vitaminol.,42,Sakai M.et al1996年、(第47〜54頁)
【特許文献1】特開平5−139957号公報(第2〜4頁)
【特許文献2】特開平6−293615号公報(第2〜5頁)
【特許文献3】特開平11−209307号公報(第3〜6頁)
【特許文献4】特開2001−48743号公報(第2〜4頁)
【特許文献5】特開平11−262653号公報(第3〜7頁)
【特許文献6】特開平11−332463号公報(第2〜12頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような水難溶性ホスファチジルセリンを水溶性組成物とすることで食品、化粧料などの幅広い分野での使用を可能にし、長期間保存してもホスファチジルセリンの析出、沈殿または浮上を生じることなく、均質で安定な可溶化状態を保持し、さらに、飲食品に添加する際に必要とされる耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、該組成物を配合した飲食品、化粧料においても、ホスファチジルセリンが析出、沈澱、浮上したりすることがなく、透明性に優れたホスファチジルセリン可溶化液、およびこの可溶化液の製造方法、並びにこの可溶化液を含有する飲食品、化粧料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題解決のため鋭意研究した結果、特定の3種の界面活性剤を用いるとホスファチジルセリンが可溶化状態となることの知見を得て、本発明を完成するに至った。即ち本発明は次の〔1〕〜〔10〕である。
〔1〕ホスファチジルセリン(A)を水系溶媒に分散してなる可溶化液であって炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル(B1)と、
炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル(B2)と、
ステアリン酸モノグリセリドと有機酸とのエステル(B3)と、
を組合せ用いることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液。
〔2〕 B1;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステルが0.1〜50重量%、
B2;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステルが0.1〜50重量%、
B3;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステルが0.1〜50重量%
である請求項1に記載のホスファチジルセリン可溶化液。
〔3〕 {ホスファチジルセリン/界面活性剤(前記のB1+B2+B3)}の重量比が1/10〜1/0.01の配合比である前記の〔1〕または〔2〕記載のホスファチジルセリン可溶化液。
〔4〕 ホスファチジルセリン可溶化液の平均粒径が100nm以下の可溶化状態である前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のホスファチジルセリン可溶化液。
〔5〕 A;ホスファチジルセリン0.01〜50重量%と、
B1;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル0.1〜50重量%と、
B2;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル0.1〜50重量%と、
B3;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル0.1〜50重量%と、C;安定剤の1種または2種以上0.01〜99.2重量%と、
D;水0.01〜99.2重量%と、
を含有する前記の〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のホスファチジルセリン可溶化液。
【0007】
〔6〕 下記の工程I、II、IIIを順次行い、可溶化液中の油性成分の平均粒子径が100nm以下となるようにすることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程I;B1成分;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル0.1〜50重量%と、
B2成分;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル0.1〜50重量%と、
B3成分;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル0.1〜50重量%と、
D成分;水0.01〜99.2重量%の一部を、
原料としてはかり取り、加熱溶解する。
工程II;次いで、A成分;ホスファチジルセリン0.01〜50重量%と、C成分;安定剤の1種または2種以上0.01〜99.3重量%、D成分の水の残部を添加する。
工程III;前記の工程において、分散させながら減圧下、もしくは常圧下にて粗乳化の工程を行なう。
〔7〕 前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程IVを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程IV;前記の工程IIIの後、均質機による均質化圧力49MPa(500kg/cm2)以上の高せん断力を与える。
〔8〕 前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程Vを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程V;前記の工程IIIの後、ホモミキサーによる攪拌羽の周速が750m/分以上の高せん断力を与える。
〔9〕 請求項1〜5のいずれかに記載のホスファチジルセリン可溶化液を含んでなることを特徴とする飲食品。
〔10〕 請求項1〜5のいずれかに記載のホスファチジルセリン可溶化液を含んでなることを特徴とする化粧料。
〔11〕 請求項1〜5のいずれか1項に記載のホスファチジルセリン可溶化液を、動物を対象として経口投与することを特徴とする投与方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、ホスファチジルセリン(A)を水系溶媒に分散してなる可溶化液であって、
炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル(B1)と、
炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル(B2)と、
ステアリン酸モノグリセリドと有機酸とのエステル(B3)と、を組合せ用いることを特徴とする。
本発明で用いられるホスファチジルセリンは、グリセリンの1−、および2−位の位置に脂肪酸由来のアシル基を有し、3−位にホスホリルセリンを有する化合物であり、動物由来、植物由来あるいは微生物由来などの起源に限定されるものではなく、また天然より得られるもの、酵素によりアシル基や塩基部分を交換させたもの、さらに水素添加させたもの、化学合成により得られたものなどが挙げられる。ここで構成脂肪酸としては、炭素数12〜20の飽和不飽和の脂肪酸が好ましく挙げられる。
天然品としては、例えば卵黄、牛脳等の動物由来のもの、大豆、菜種または亜麻仁等の植物由来のものなどが挙げられる。好ましくは、ホスファチジルコリンを酵素変換したものが、工業的にも、入手性からもより好ましく挙げられる
使用するホスファチジルセリンの純度は、特に限定されないが、純度の高いものが好ましい。好ましくは、10〜80重量%、入手性から30〜70重量%が好ましい。
本発明のホスファチジルセリン可溶化液において、ホスファチジルセリンは可溶化液中に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%となるように配合するのが好ましい。ホスファチジルセリンの含有量が0.01重量%未満の場合には、目的とする実用的な生理活性の価値を有する水溶性組成物を得ることができなくなり、50重量%より多い場合には、ホスファチジルセリン可溶化液の乳化安定性が劣るので、好ましくない。市販品としては、例えば、日本油脂(株)製、商品名:ニチユPS−20[ホスファチジルセリン純度20重量%]が好ましく挙げられる。なおまた、ホスファチジルセリンは、特開2002−218991号公報に記載されている方法に準じて、合成してもよい。
【0009】
本発明に用いる炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル(B1とする)としては、重合度が5以上の通常のポリグリセリンと炭素数が12〜18の脂肪酸とのエステルであり、具体的には例えば、ヘキサグリセリン(6)モノラウリン酸(FA12)エステル[以下モノラウリン酸(FA12)ヘキサグリセリン(6)という場合もある。以下同様]、テトラグリセリン(4)モノラウリン酸(FA12)エステル、デカグリセリン(10)モノラウリン酸(FA12)エステル、ヘキサグリセリン(6)モノステアリン酸(FA18)エステル、テトラグリセリン(4)モノステアリン酸(FA18)エステル、デカグリセリン(10)モノステアリン酸(FA18)エステルヘ、ヘキサグリセリン(6)モノオレイン酸(FA18:1)エステル、テトラグリセリン(4)モノオレイン酸(FA18:1)エステル、デカグリセリン(10)モノオレイン酸(FA18:1)エステル等が挙げられる。前記の炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステルは、1種単独でまたは2種以上のものを混合して使用できる。
また、前記のポリグリセリンエステルの界面活性剤は、蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要なく、反応混合物であってもよい。
添加量としては、0.1重量%〜50重量%、好ましくは、1〜30重量%、さらに好ましくは、2〜15重量%である。
添加量が0.1重量%未満の場合には可溶化能が少なく、50重量%より多い場合には味に悪影響を与える。
【0010】
また、本発明に用いる炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル(B2とする)としては、ショ糖と炭素数が12〜18の脂肪酸とのエステルであり、具体的には例えば、ショ糖モノラウリン酸(FA12)エステル、ショ糖モノミリスチン酸(FA14)エステル、ショ糖モノパルミチン酸(FA16)エステル、ショ糖モノステアリン酸(FA18)エステル、ショ糖モノオレイン酸(FA18:1)エステル等が挙げられる。前記の炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステルは、1種単独でまたは2種以上のものを混合して使用できる。
添加量としては、0.1重量%〜50重量%、好ましくは、1〜30重量%、さらに好ましくは、2〜15重量%である。
【0011】
また、本発明に用いるステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル(B3とする)としては、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸等の有機酸とステアリン酸モノグリセリドとのエステルが挙げられる。具体的には例えば、乳酸モノステアリン酸グリセリン、クエン酸モノステアリン酸グリセリン、コハク酸モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。
前記のステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステルは、1種単独で、または2種以上配合して使用できる。
添加量としては、0.1重量%〜50重量%、好ましくは、0.2〜30重量%、さらに好ましくは、0.5〜10重量%である。
【0012】
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステル(B1)、ショ糖脂肪酸エステル(B2)、有機酸モノステアリン酸グリセライド(B3)の合計の配合量は通常0.2〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜25重量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライドの合計の配合量が50重量%を超えると、ホスファチジルセリン可溶化液を飲食物へ添加した際、界面活性剤特有の味が飲食品の味へ影響し、好ましくない。
成分B1:B2:B3の比率は、2〜15:2〜15:0.5〜10が好ましい。
【0013】
前記のB1、B2、B3に相当する活性剤の市販品としては、例えば、B1相当品として、モノラウリン酸ヘキサグリセリン[商品名:SYグリスターML−500 阪本薬品工業(株)製]、モノステアリン酸デカグリセリン[商品名:サンソフトQ−18S 太陽化学(株)製]、モノオレイン酸デカグリセリン[商品名:ポエムJ−0381 理研ビタミン(株)製、商品名:SYグリスターMO−750 阪本薬品工業(株)製]等が挙げられる。
またB2相当として、ショ糖パルミチン酸エステル[商品名:サンソフトSE−16P 太陽化学(株)製]、ショ糖ステアリン酸エステル[商品名:サンソフトSE−11 太陽化学(株)製]、ショ糖ミリスチン酸エステル[商品名:リョートーシュガーエステルL−1695 三菱化学フーズ(株)製]等が挙げられる。
またB3相当として、コハク酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:サンソフトNo.681NU 太陽化学(株)製、商品名:ポエムB−10 理研ビタミン(株)製]、クエン酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:ポエムK−30 理研ビタミン(株)製]、等が挙げられる。
好ましくは、モノオレイン酸(C18)デカグリセリン(G10)[商品名:SYグリスターMO−750 阪本薬品工業(株)製、商品名:ポエムJ−0381 理研ビタミン(株)製]、ショ糖ミリスチン酸エステル[商品名:リョートーシュガーエステルM−1695 三菱化学フーズ(株)製]、コハク酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:ポエムB−10 理研ビタミン(株)製]が挙げられる。
【0014】
本発明では、上記の3種の界面活性剤に加え、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の界面活性剤を混合して使用しても構わない。これらの界面活性剤としては、具体的には例えば、B1以外のポリグリセリン脂肪酸エステル、B2以外のショ糖脂肪酸エステル、B3以外のグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ステロール、コール酸、デオキシコール酸、ユッカ抽出物、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、前記以外の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0015】
本発明に用いる安定剤としては、ガム質や糖アルコール、糖類などが挙げられる。具体的には例えば、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等のガム質類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール等の多価アルコール類;マルチトール、還元水あめ、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖果糖液糖、乳糖等の単糖類や二糖類;デキストリン等の多糖類;などが挙げられる。これらの安定剤は、1種単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。
添加量としては、0.01重量%〜99.2重量%、好ましくは、1〜90重量%、さらに好ましくは、10〜80重量%である。本発明では、水分が少なくても水溶性の安定剤が多い場合には、油性成分が可溶化液となりうる。
【0016】
本発明で使用する水は、飲食品、化粧料に配合できる水であれば特に制限はなく、例えば、イオン交換水、蒸留水等の精製水、水道水、天然水、アルカリイオン水等が挙げられる。また、これは水のみであっても、その他に食品添加物を加えた水であってもよい。食品添加物としては、界面活性剤、安定剤、調味料、酸および塩などが挙げられる。
添加量としては、0.01重量%〜99.2重量%、好ましくは、1〜80重量%、さらに好ましくは、10〜50重量%である。
【0017】
次に製造方法について記載する。
下記の工程I、II、IIIを順次行い、可溶化液中の油性成分の平均粒子径が100nm以下となるようにすることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法である。
工程I;B1成分;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル0.1〜50重量%と、
B2成分;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル0.1〜50重量%と、
B3成分;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル0.1〜50重量%と、
D成分;水0.01〜99.2重量%の一部を、
原料としてはかり取り、加熱溶解する。
前記の工程Iの場合は、配合物の液温度が60〜80℃になるように湯煎にてスリーワンモーター等で攪拌し、加熱溶解することが好ましい。
工程II;次いで、A成分;ホスファチジルセリン0.01〜50重量%と、C成分;安定剤の1種または2種以上0.01〜99.3重量%、D成分の水の残部を添加する。
工程III;前記の工程において、分散させながら減圧下、もしくは常圧下にて粗乳化の工程を行なう。
前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程IVを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程IV;前記の工程IIIの後、均質機による均質化圧力49MPa(500kg/cm2)以上の高せん断力を与える。
前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程Vを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程V;前記の工程IIIの後、ホモミキサーによる攪拌羽の周速が750m/分以上の高せん断力を与える。
【0018】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液の製造方法は、前記の各種成分を所定量はかりとり、混合できればよく、特に、液温40℃以上で攪拌、混合する。更に可溶化液の安定性を高めるために、高圧ホモジナイザー[商品名:マイクロフルイダイザー みづほ工業(株)製、アルティマイザー (株)スギノマシン製]などの均質化処理機を使用して49MPa(500Kg/cm2)以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上の高せん断力を与える方法、また例えばホモミキサー[商品名;TKホモミキサー 特殊機化工業(株)製、クレアミックス エム・テクニック(株)製]で攪拌羽の周速が750m/分以上の高せん断力を与える方法等の均質化処理を行うことにより、均一な液状のホスファチジルセリン可溶化液を得ることができる。
また、均質化処理は前記の均質化処理機以外にも、ナノマイザー、超音波乳化機等の均質化処理機やアジホモミキサー、ウルトラミキサーなどのホモミキサーを用いることができる。
ホスファチジルセリン可溶化液をより安定化させるために、この均質化処理を2回以上行ってもよい。
乳化方法としては、自然乳化法、転相乳化法、液晶乳化法、ゲル乳化法、およびD相乳化法およびPIT乳化法なども利用できる。また、これらの方法と前記均質化処理などの機械式乳化法を組み合わせて行ってもよい。
【0019】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、そのまま摂取する、あるいは主に、スポーツ飲料、炭酸飲料、栄養飲料などの飲料やパン、めん、菓子類、乳肉製品、調味料などの食品にホスファチジルセリンを添加するための配合原料として使用することができる。その用途としては、特に制限はなく、あらゆる種類の飲食品に適用することができる。
本発明のホスファチジルセリン可溶化液を含有する食品としては、例えば、パン、ビスケット、キャンディー、ゼリーなどのパン・菓子類や、ヨーグルト、ハムなどの乳肉加工食品や味噌、ソース、タレ、ドレッシングなどの調味料や豆腐、麺類などの加工食品やマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどの油脂加工食品や粉末飲料、粉末スープなどの粉末食品などやカプセル状、タブレット状、粉末状、顆粒状などにした健康食品などを挙げることができる。
本発明のホスファチジルセリン可溶化液を含有する飲料としては、食塩、鉄分などの塩類やミネラル分、酸味料、甘味料、アルコール、ビタミン、フレーバーおよび果汁の中から少なくとも1種を含む飲料、例えばスポーツ飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、アルコール飲料、ビタミン・ミネラル飲料などが挙げられる。さらに、加工乳、豆乳、体質改善のための飲料、生理効果を期待できる天然素材をホスファチジルセリンと組み合わせた飲料などを挙げることができる。
これらの使用時、ホスファチジルセリンの配合量は、特に限定されないが、例えば製品中、0.01〜10重量%が望ましい。
前記のホスファチジルセリン可溶化液は、対象としては特に限定されないが、例えば、人、牛、豚、羊等の家畜、犬、猫、ウサギ、ねずみ等の小動物、を対象としてホスファチジルセリン可溶化液を経口投与することができる。
【0020】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、化粧水などの化粧料にホスファチジルセリンを添加するための配合原料として使用することができる。その用途としては、特に制限はなく、皮膚や毛髪に直接使用される化粧料および浴用化粧料等あらゆる種類の化粧料に適用することができる。例えば、化粧水、ボディーローション、ヘアリキッド、ヘアトニック、育毛剤、浴用剤等である。本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、保湿性、皮膚の保護、油性成分の分散性向上等に利用できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、長期間保存してもホスファチジルセリンが析出、沈殿あるいは浮上することなく、均質で安定な状態を保つことができる。また、耐酸性、耐塩性、耐熱性にも優れ、食品および食品添加物に使用される酸および塩を配合しても安定性を保つことができ、60〜100℃で殺菌処理または必要に応じて100〜150℃の高温殺菌または滅菌処理することができ、この際の加熱に対しても安定であり、また、長期間保存しても均一な状態を保つことができる。
このホスファチジルセリン可溶化液は、そのまま食品として摂取でき、さらに各種飲食品の製造に際して配合することによりホスファチジルセリンを含有する飲食品を得ることができる。
またさらに、本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、化粧料にも配合することができ、塩や酸と併用したり、熱処理したりする場合にも安定性を有することから有用である。
【0022】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
次に用いた試験方法、評価方法を示す。
1.保存安定性試験1;
実施例および比較例で得たホスファチジルセリン可溶化液を試料として用い、100mlサンプルビンに入れ、調製直後、および40℃での30日静置保存後の外観状態を目視により評価した。○は状態良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
2.耐熱性試験
精製水にホスファチジルセリン可溶化液を1%添加し、常温でのホスファチジルセリン可溶化液の水溶液の外観状態を目視により評価した。さらに、この水溶液の耐熱性を確認するため、この水溶液を湯煎にかけ液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。これらの水溶液を室温にて放冷した後、外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の水溶液の耐熱性を確認した。○は状態良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
3.乳化分散液の平均粒径の測定
乳化分散液の平均粒径の測定には、サブミクロン粒子分析装置[COULTER N4SD型 ベックマン・コールター(株)製]を用いた。
【0023】
4.1 耐酸・耐熱試験
クエン酸にてpHを3以下に調整した精製水にホスファチジルセリン可溶化液を1%添加し、常温での外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の耐酸性を確認した。さらに、この酸性条件での耐熱性を確認するため、この可溶化液含有酸性水溶液を湯煎にかけ液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。これらの可溶化液含有酸性水溶液を室温にて放冷した後、外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の耐酸・耐熱性を確認した。○はほとんど均一状態で良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
4.2 耐酸保存安定性試験
前記の耐酸・耐熱試験を行った試験溶液の40℃静置保存試験を実施し、30日静置保存後の外観状態を目視により評価した。○はほとんど均一状態で良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
5.1 耐塩性・耐熱性試験
同様に、食塩を5%含有する精製水にホスファチジルセリン可溶化液を1%添加し、常温での外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の耐塩性を確認した。さらに、この高塩濃度条件での耐熱性を確認するため、この可溶化液含有食塩水を湯煎にかけ、液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。これらの可溶化液含有食塩水の外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の耐塩・耐熱性を確認した。○はほとんど均一状態で良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
5.2 耐塩保存安定性試験
前記の耐酸・耐熱試験を行った試験溶液の40℃静置保存試験を実施し、30日静置保存後の外観状態を目視により評価した。○はほとんど均一状態で良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
【0024】
実施例1
2000mL容ステンレス製ビーカーに、ショ糖パルミチン酸(C16)エステル[商品名:サンソフトSE−16P 太陽化学(株)製]40gと還元水飴[商品名:エスイー58 日研化学(株)製]600g、水250gの順に入れ、かき混ぜながら80℃に加温した。モノオレイン酸(C18:1)ヘキサグリセリン(G6)[商品名:SYグリスターMO−500 坂本薬品工業(株)製]40g、コハク酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:ポエムB−10 理研ビタミン(株)製]20gを添加し、十分溶解させた後、ホスファチジルセリン[試作品 日本油脂(株)製、ホスファチジルセリン純度35%]50gを添加し、ホスファチジルセリンを分散した。次いで高圧ホモジナイザー147MPa(1500kg/ cm2)の圧力で均質化処理を行い、平均粒径が92nmのホスファチジルセリン可溶化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0025】
比較例1
モノオレイン酸ヘキサグリセリン、ショ糖パルミチン酸エステルおよびコハク酸モノステアリン酸グリセリンの合計100gをモノミリスチン酸ヘキサグリセリン100gとした以外は、実施例1と全く同じ操作を行い、平均粒径が150nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0026】
比較例2
実施例1におけるモノオレイン酸ヘキサグリセリン、ショ糖パルミチン酸エステルおよびコハク酸モノステアリン酸グリセリンの合計100gをショ糖ミリスチン酸エステル100gとした以外は、実施例1と同様に操作を行い、平均粒径が120nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0027】
比較例3
モノオレイン酸ヘキサグリセリン、ショ糖パルミチン酸エステルおよびコハク酸モノステアリン酸グリセリンの合計100gをコハク酸モノステアリン酸グリセリン100gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径が200nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0028】
比較例4
モノオレイン酸ヘキサグリセリン、ショ糖パルミチン酸エステルおよびコハク酸モノステアリン酸グリセリンの合計100gをモノオレイン酸ヘキサグリセリン100gとし、水の一部に酵素分解大豆レシチンを加えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径が160nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.8)
結果を表1に示す。
なお、表中には、ホスファチジルセリン(PSと略す、35%純度)の試作品の量と純度換算した量で示す。
【0029】
【表1】
【0030】
以上の結果から、比較例1は耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液およびホスファチジルセリン可溶化液自体の40℃30日間静置保存における安定性において劣っている。比較例2は耐塩・耐熱試験溶液および耐酸・耐熱試験溶液の40℃30日間静置保存における安定性が共に劣っており、比較例3は耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液およびホスファチジルセリン可溶化液自体の安定性が劣っている。比較例4は40℃30日間静置保存における安定性において、耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液は劣っており、また、ホスファチジルセリン可溶化液自体も若干劣っている。それに対して、実施例1は耐熱、耐塩、耐酸性が共に優れ、それぞれの試験溶液の40℃30日間静置保存後も安定であることがわかる。
【0031】
実施例2
2000mL容ステンレス製ビーカーに、ショ糖ラウリン酸(C12)エステル[商品名:リョートーシュガーエステルL−1695 三菱化学フーズ(株)製]40gとグリセリン[商品名:食添用グリセリン 日本油脂(株)製]500g、水350gの順に入れ、かき混ぜながら80℃に加温した。モノミリスチン酸(C14)デカグリセリン(G10)[商品名:サンソフトQ−12S 太陽化学(株)製]40g、クエン酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:サンソフトNo.621B 太陽化学(株)製]20gを添加し、十分溶解させた後、ホスファチジルセリン[試作品 日本油脂(株)製、ホスファチジルセリン純度35%]50gを添加し、ホスファチジルセリンを分散した。次いで高圧ホモジナイザー162MPa(1650kg/ cm2)の圧力で均質化処理を行い、平均粒径が86nmのホスファチジルセリン可溶化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0032】
比較例5
ショ糖ラウリン酸エステルおよびクエン酸モノステアリン酸グリセリンの合計60gをショ糖ラウリン酸エステル60gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径が140nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0033】
比較例6
ショ糖ラウリン酸エステルおよびクエン酸モノステアリン酸グリセリンの合計60gをクエン酸モノステアリン酸グリセリン60gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径が160nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0034】
比較例7
ショ糖ラウリン酸エステルおよびモノミリスチン酸デカグリセリンの合計80gをショ糖ラウリン酸エステル80gとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、平均粒径が120nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
結果を表2に示す。なお、表中には、ホスファチジルセリン(PSと略す、35%純度)の試作品の量と純度換算した量で示す。
【0035】
【表2】
【0036】
以上の結果から、比較例4は耐塩・耐熱試験溶液およびホスファチジルセリン可溶化液自体の保存安定性が劣っている。比較例5は耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液およびホスファチジルセリン可溶化液自体の保存安定性が共に劣っており、比較例6は耐塩・耐熱性および耐酸・耐熱試験溶液の保存安定性が劣っている。それに対して、実施例2は耐熱、耐塩、耐酸性が共に優れ、それぞれの試験溶液の40℃30日間静置保存後も安定であることがわかる。
【0037】
実施例3
2000mL容ステンレス製ビーカーに、ショ糖ミリスチン酸(C14)エステル[商品名:リョートーシュガーエステルM−1695 三菱化学フーズ(株)製]60g、還元水飴[商品名:アマミール 東和化成工業(株)製]400g、水300gの順に入れ、かき混ぜながら80℃に加温した。モノオレイン酸(C18)デカグリセリン(G10)[商品名:SYグリスターMO−750 阪本薬品工業(株)製]60g、コハク酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:サンソフトNo.681NU 太陽化学(株)製]30gを添加し、十分溶解させた後、ホスファチジルセリン[試作品 日本油脂(株)製、ホスファチジルセリン純度35%]150gを添加し、ホスファチジルセリンを分散した。次いで高圧ホモジナイザーで147MPa(1500kg/ cm2)の圧力で均質化する工程を2回行い、平均粒径が65nmの均一なホスファチジルセリン可溶化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/2.9)
【0038】
実施例4
実施例3の還元水飴400gおよび水300gを水700gとした以外は、実施例3と同様な操作を行い、平均粒径が97nmの均一なホスファチジルセリン可溶化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/2.9)
結果を表3に示す。なお、表中には、ホスファチジルセリン(PSと略す、35%純度)の試作品の量と純度換算した量で示す。
【0039】
【表3】
【0040】
以上の結果から、実施例3は、耐熱、耐塩、耐酸性が共に優れ、40℃30日間静置保存後も安定であり、また、実施例4は、ホスファチジルセリン可溶化液、耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液の40℃30日間静置保存において、安定性で若干劣っていたが使用できないほどではなかった。
【0041】
実施例5
実施例3のホスファチジルセリン可溶化液を用いて、第4表の組成で飲料を調製し、100mL容ビンに充填し密封した。この飲料を95℃で15分間加熱殺菌し、飲料を調製した。このようにして得られた飲料を40℃の恒温槽に30日間静置保存した後、分散安定性を評価したところ、ホスファチジルセリンの析出は全く認められず、分散状態は安定であった。
【0042】
比較例8
第4表の配合材料中、実施例3のホスファチジルセリン可溶化液を比較例4のホスファチジルセリン可溶化液に代えた以外は実施例5と同様にして飲料を調製した。このようにして得られた飲料を40℃の恒温槽に30日間静置保存した後、分散安定性を評価したところ、ホスファチジルセリンの析出が認められ、分散状態は不安定であった。
結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
以上の結果から、実際の飲料に配合した本発明の実施例3は、耐酸性、耐熱性等に優れているのに対して、比較例4が耐酸性、耐熱性等に劣っていることがわかる。
【0045】
実施例6
実施例3のホスファチジルセリン可溶化液を用いて、第5表の組成で化粧水を調製し、100mL容ビンに充填し密封した。この化粧水を95℃で15分間加熱殺菌し、化粧水を調製した。このようにして得られた化粧水を40℃の恒温槽に30日間静置保存した後、安定性を評価したところ、ホスファチジルセリンの析出は全く認められず、可溶化状態は安定であった。
【0046】
比較例9
第5表の配合材料中、実施例3のホスファチジルセリン可溶化液を比較例4のホスファチジルセリン可溶化液に代えた以外は実施例6と同様にして化粧水を調製した。このようにして得られた化粧水を40℃の恒温槽に30日間静置保存した後、安定性を評価したところ、ホスファチジルセリンの析出が認められ、可溶化状態は不安定であった。
結果を表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
以上の結果から、実際の化粧水に配合した本発明の実施例3は、耐熱性等に優れているのに対して、比較例4が耐熱性等に劣っていることがわかる。
なお、用いたホスファチジルセリンの試作品は次の方法により合成した。
<ホスファチジルセリンの試作品の合成>
例えば特開2002−218991号公報記載の方法に準じて、精製水に大豆由来のホスファチジルコリン(ホスファチジルコリン純度55%)、セリン(食品添加物グレード)塩化カルシウム、グリセリン脂肪酸モノエステルを加えて混合し懸濁させた後、さらに基質変換触媒として、ストレプトマイセス属のホスフォリパーゼD(旭化成工業(株)品)を加えて、45〜50℃の温度15時間反応を行った。反応終了後、塩析し、凍結乾燥して、ホスファチジルセリン生成物を得た。このホスファチジルセリン生成物中のホスファチジルセリン含量は、ガスクロマトグラフィーで測定したところ35%であった。
【発明の属する技術分野】
本発明はホスファチジルセリン可溶化液、および製造方法並びに、この可溶化液を含有することを特徴とする飲食品、化粧料に関する。さらに詳しくは、長期間保存してもホスファチジルセリンが、沈殿、析出または浮上しないで、均質な可溶化状態を保持しうる上、飲食品に添加する際に必要とされる耐熱性、耐酸性、耐塩性などに優れた、ホスファチジルセリン可溶化液およびそれの製造方法並びに、この可溶化液を含有する飲食品、化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホスファチジルセリンは、リン脂質の一種であり、植物や動物に普遍的に存在している物質である。近年、ホスファチジルセリンには、脳内グルコースの上昇作用や記憶障害の回復(J.Nutr.Sci.Vitaminol.,42,Sakai M.et al, 1996年)(非特許文献1)などの脳機能改善効果があることがわかり、生理活性物質として注目され始め、盛んにその製造方法や用途が検討されている。
しかしながら、ホスファチジルセリンは油および水に対する溶解性が極めて低いことなどから、水に均一に分散して安定な液状品として利用することは困難であった。そのため、製剤や食品では、油へ懸濁させるか、あるいは粉末、顆粒の形で供されてきたが、製剤、食品への添加、利用の際の作業性の悪さなどが問題となり、改善が求められていた。
特開平5−139957号公報(特許文献1)では、ホスファチジルセリンを5〜100重量%を占めるリン脂質からなることを特徴とした、肺臓に集積しやすい薬剤キャリヤーが開示されている。この技術で得られる脂肪乳剤の粒径は188±32nmであり、得られるホスファチジルセリンの乳化剤は、粒径が大きく透明感で劣る問題がある。
【0003】
またさらに、特開平6−293615号公報(特許文献2)には、粒径100〜3000オングストローム(10〜300nm)のO/W/O型混合脂質膜小胞が得られているが、その製造方法は超音波処理によるもので、得られるホスファチジルセリン可溶化液は保存安定性が悪い問題がある。
特開平11−209307号公報(特許文献3)には、非経口投与製剤について開示されているが、この技術では、その製造工程が非常に煩雑である等の問題がある。
特開2001−48743号公報(特許文献4)には、低温での保存安定性に優れた化粧水が開示されているが、この技術では、液温の低下とともに透明性が乏しくなり、沈殿も発生し、しかも飲食品製造の際に必要とされる耐熱性、耐酸性、耐塩性に劣る等の問題がある。
特開平11−262653号公報(特許文献5)には、多種の油性物質に適用可能な水中油型マイクロエマルションが開示されている。この技術では耐酸性、耐塩性に劣る等の問題がある。
特開平11−332463号公報(特許文献6)には、ポリグリセリンの脂肪酸エステル、油性成分とレシチンの可溶化液が開示されている。この可溶化液では、安定性に悪い等の問題がある。
したがって、飲食品に添加する際に必要とされる性質である、透明性、耐酸性、耐塩性、耐熱性がともに優れ、安定な可溶化状態を保つホスファチジルセリン可溶化液として十分に満足できるものがなく、求められているのが現状であった。
また、化粧料等に配合する際に、透明性、耐酸性、耐塩性、耐熱性がともに優れ、安定な可溶化液状態を保つホスファチジルセリン可溶化液として十分満足できるものがなく、求められていいるのが現状であった。
【0004】
【非特許文献1】J.Nutr.Sci.Vitaminol.,42,Sakai M.et al1996年、(第47〜54頁)
【特許文献1】特開平5−139957号公報(第2〜4頁)
【特許文献2】特開平6−293615号公報(第2〜5頁)
【特許文献3】特開平11−209307号公報(第3〜6頁)
【特許文献4】特開2001−48743号公報(第2〜4頁)
【特許文献5】特開平11−262653号公報(第3〜7頁)
【特許文献6】特開平11−332463号公報(第2〜12頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような水難溶性ホスファチジルセリンを水溶性組成物とすることで食品、化粧料などの幅広い分野での使用を可能にし、長期間保存してもホスファチジルセリンの析出、沈殿または浮上を生じることなく、均質で安定な可溶化状態を保持し、さらに、飲食品に添加する際に必要とされる耐酸性、耐塩性、耐熱性に優れ、該組成物を配合した飲食品、化粧料においても、ホスファチジルセリンが析出、沈澱、浮上したりすることがなく、透明性に優れたホスファチジルセリン可溶化液、およびこの可溶化液の製造方法、並びにこの可溶化液を含有する飲食品、化粧料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題解決のため鋭意研究した結果、特定の3種の界面活性剤を用いるとホスファチジルセリンが可溶化状態となることの知見を得て、本発明を完成するに至った。即ち本発明は次の〔1〕〜〔10〕である。
〔1〕ホスファチジルセリン(A)を水系溶媒に分散してなる可溶化液であって炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル(B1)と、
炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル(B2)と、
ステアリン酸モノグリセリドと有機酸とのエステル(B3)と、
を組合せ用いることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液。
〔2〕 B1;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステルが0.1〜50重量%、
B2;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステルが0.1〜50重量%、
B3;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステルが0.1〜50重量%
である請求項1に記載のホスファチジルセリン可溶化液。
〔3〕 {ホスファチジルセリン/界面活性剤(前記のB1+B2+B3)}の重量比が1/10〜1/0.01の配合比である前記の〔1〕または〔2〕記載のホスファチジルセリン可溶化液。
〔4〕 ホスファチジルセリン可溶化液の平均粒径が100nm以下の可溶化状態である前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のホスファチジルセリン可溶化液。
〔5〕 A;ホスファチジルセリン0.01〜50重量%と、
B1;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル0.1〜50重量%と、
B2;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル0.1〜50重量%と、
B3;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル0.1〜50重量%と、C;安定剤の1種または2種以上0.01〜99.2重量%と、
D;水0.01〜99.2重量%と、
を含有する前記の〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のホスファチジルセリン可溶化液。
【0007】
〔6〕 下記の工程I、II、IIIを順次行い、可溶化液中の油性成分の平均粒子径が100nm以下となるようにすることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程I;B1成分;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル0.1〜50重量%と、
B2成分;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル0.1〜50重量%と、
B3成分;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル0.1〜50重量%と、
D成分;水0.01〜99.2重量%の一部を、
原料としてはかり取り、加熱溶解する。
工程II;次いで、A成分;ホスファチジルセリン0.01〜50重量%と、C成分;安定剤の1種または2種以上0.01〜99.3重量%、D成分の水の残部を添加する。
工程III;前記の工程において、分散させながら減圧下、もしくは常圧下にて粗乳化の工程を行なう。
〔7〕 前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程IVを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程IV;前記の工程IIIの後、均質機による均質化圧力49MPa(500kg/cm2)以上の高せん断力を与える。
〔8〕 前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程Vを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程V;前記の工程IIIの後、ホモミキサーによる攪拌羽の周速が750m/分以上の高せん断力を与える。
〔9〕 請求項1〜5のいずれかに記載のホスファチジルセリン可溶化液を含んでなることを特徴とする飲食品。
〔10〕 請求項1〜5のいずれかに記載のホスファチジルセリン可溶化液を含んでなることを特徴とする化粧料。
〔11〕 請求項1〜5のいずれか1項に記載のホスファチジルセリン可溶化液を、動物を対象として経口投与することを特徴とする投与方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、ホスファチジルセリン(A)を水系溶媒に分散してなる可溶化液であって、
炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル(B1)と、
炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル(B2)と、
ステアリン酸モノグリセリドと有機酸とのエステル(B3)と、を組合せ用いることを特徴とする。
本発明で用いられるホスファチジルセリンは、グリセリンの1−、および2−位の位置に脂肪酸由来のアシル基を有し、3−位にホスホリルセリンを有する化合物であり、動物由来、植物由来あるいは微生物由来などの起源に限定されるものではなく、また天然より得られるもの、酵素によりアシル基や塩基部分を交換させたもの、さらに水素添加させたもの、化学合成により得られたものなどが挙げられる。ここで構成脂肪酸としては、炭素数12〜20の飽和不飽和の脂肪酸が好ましく挙げられる。
天然品としては、例えば卵黄、牛脳等の動物由来のもの、大豆、菜種または亜麻仁等の植物由来のものなどが挙げられる。好ましくは、ホスファチジルコリンを酵素変換したものが、工業的にも、入手性からもより好ましく挙げられる
使用するホスファチジルセリンの純度は、特に限定されないが、純度の高いものが好ましい。好ましくは、10〜80重量%、入手性から30〜70重量%が好ましい。
本発明のホスファチジルセリン可溶化液において、ホスファチジルセリンは可溶化液中に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%となるように配合するのが好ましい。ホスファチジルセリンの含有量が0.01重量%未満の場合には、目的とする実用的な生理活性の価値を有する水溶性組成物を得ることができなくなり、50重量%より多い場合には、ホスファチジルセリン可溶化液の乳化安定性が劣るので、好ましくない。市販品としては、例えば、日本油脂(株)製、商品名:ニチユPS−20[ホスファチジルセリン純度20重量%]が好ましく挙げられる。なおまた、ホスファチジルセリンは、特開2002−218991号公報に記載されている方法に準じて、合成してもよい。
【0009】
本発明に用いる炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル(B1とする)としては、重合度が5以上の通常のポリグリセリンと炭素数が12〜18の脂肪酸とのエステルであり、具体的には例えば、ヘキサグリセリン(6)モノラウリン酸(FA12)エステル[以下モノラウリン酸(FA12)ヘキサグリセリン(6)という場合もある。以下同様]、テトラグリセリン(4)モノラウリン酸(FA12)エステル、デカグリセリン(10)モノラウリン酸(FA12)エステル、ヘキサグリセリン(6)モノステアリン酸(FA18)エステル、テトラグリセリン(4)モノステアリン酸(FA18)エステル、デカグリセリン(10)モノステアリン酸(FA18)エステルヘ、ヘキサグリセリン(6)モノオレイン酸(FA18:1)エステル、テトラグリセリン(4)モノオレイン酸(FA18:1)エステル、デカグリセリン(10)モノオレイン酸(FA18:1)エステル等が挙げられる。前記の炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステルは、1種単独でまたは2種以上のものを混合して使用できる。
また、前記のポリグリセリンエステルの界面活性剤は、蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要なく、反応混合物であってもよい。
添加量としては、0.1重量%〜50重量%、好ましくは、1〜30重量%、さらに好ましくは、2〜15重量%である。
添加量が0.1重量%未満の場合には可溶化能が少なく、50重量%より多い場合には味に悪影響を与える。
【0010】
また、本発明に用いる炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル(B2とする)としては、ショ糖と炭素数が12〜18の脂肪酸とのエステルであり、具体的には例えば、ショ糖モノラウリン酸(FA12)エステル、ショ糖モノミリスチン酸(FA14)エステル、ショ糖モノパルミチン酸(FA16)エステル、ショ糖モノステアリン酸(FA18)エステル、ショ糖モノオレイン酸(FA18:1)エステル等が挙げられる。前記の炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステルは、1種単独でまたは2種以上のものを混合して使用できる。
添加量としては、0.1重量%〜50重量%、好ましくは、1〜30重量%、さらに好ましくは、2〜15重量%である。
【0011】
また、本発明に用いるステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル(B3とする)としては、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸等の有機酸とステアリン酸モノグリセリドとのエステルが挙げられる。具体的には例えば、乳酸モノステアリン酸グリセリン、クエン酸モノステアリン酸グリセリン、コハク酸モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。
前記のステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステルは、1種単独で、または2種以上配合して使用できる。
添加量としては、0.1重量%〜50重量%、好ましくは、0.2〜30重量%、さらに好ましくは、0.5〜10重量%である。
【0012】
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステル(B1)、ショ糖脂肪酸エステル(B2)、有機酸モノステアリン酸グリセライド(B3)の合計の配合量は通常0.2〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは5〜25重量%である。ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライドの合計の配合量が50重量%を超えると、ホスファチジルセリン可溶化液を飲食物へ添加した際、界面活性剤特有の味が飲食品の味へ影響し、好ましくない。
成分B1:B2:B3の比率は、2〜15:2〜15:0.5〜10が好ましい。
【0013】
前記のB1、B2、B3に相当する活性剤の市販品としては、例えば、B1相当品として、モノラウリン酸ヘキサグリセリン[商品名:SYグリスターML−500 阪本薬品工業(株)製]、モノステアリン酸デカグリセリン[商品名:サンソフトQ−18S 太陽化学(株)製]、モノオレイン酸デカグリセリン[商品名:ポエムJ−0381 理研ビタミン(株)製、商品名:SYグリスターMO−750 阪本薬品工業(株)製]等が挙げられる。
またB2相当として、ショ糖パルミチン酸エステル[商品名:サンソフトSE−16P 太陽化学(株)製]、ショ糖ステアリン酸エステル[商品名:サンソフトSE−11 太陽化学(株)製]、ショ糖ミリスチン酸エステル[商品名:リョートーシュガーエステルL−1695 三菱化学フーズ(株)製]等が挙げられる。
またB3相当として、コハク酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:サンソフトNo.681NU 太陽化学(株)製、商品名:ポエムB−10 理研ビタミン(株)製]、クエン酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:ポエムK−30 理研ビタミン(株)製]、等が挙げられる。
好ましくは、モノオレイン酸(C18)デカグリセリン(G10)[商品名:SYグリスターMO−750 阪本薬品工業(株)製、商品名:ポエムJ−0381 理研ビタミン(株)製]、ショ糖ミリスチン酸エステル[商品名:リョートーシュガーエステルM−1695 三菱化学フーズ(株)製]、コハク酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:ポエムB−10 理研ビタミン(株)製]が挙げられる。
【0014】
本発明では、上記の3種の界面活性剤に加え、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の界面活性剤を混合して使用しても構わない。これらの界面活性剤としては、具体的には例えば、B1以外のポリグリセリン脂肪酸エステル、B2以外のショ糖脂肪酸エステル、B3以外のグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ステロール、コール酸、デオキシコール酸、ユッカ抽出物、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、前記以外の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0015】
本発明に用いる安定剤としては、ガム質や糖アルコール、糖類などが挙げられる。具体的には例えば、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等のガム質類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エリスリトール等の多価アルコール類;マルチトール、還元水あめ、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、マンニトール、ブドウ糖果糖液糖、乳糖等の単糖類や二糖類;デキストリン等の多糖類;などが挙げられる。これらの安定剤は、1種単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。
添加量としては、0.01重量%〜99.2重量%、好ましくは、1〜90重量%、さらに好ましくは、10〜80重量%である。本発明では、水分が少なくても水溶性の安定剤が多い場合には、油性成分が可溶化液となりうる。
【0016】
本発明で使用する水は、飲食品、化粧料に配合できる水であれば特に制限はなく、例えば、イオン交換水、蒸留水等の精製水、水道水、天然水、アルカリイオン水等が挙げられる。また、これは水のみであっても、その他に食品添加物を加えた水であってもよい。食品添加物としては、界面活性剤、安定剤、調味料、酸および塩などが挙げられる。
添加量としては、0.01重量%〜99.2重量%、好ましくは、1〜80重量%、さらに好ましくは、10〜50重量%である。
【0017】
次に製造方法について記載する。
下記の工程I、II、IIIを順次行い、可溶化液中の油性成分の平均粒子径が100nm以下となるようにすることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法である。
工程I;B1成分;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル0.1〜50重量%と、
B2成分;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル0.1〜50重量%と、
B3成分;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル0.1〜50重量%と、
D成分;水0.01〜99.2重量%の一部を、
原料としてはかり取り、加熱溶解する。
前記の工程Iの場合は、配合物の液温度が60〜80℃になるように湯煎にてスリーワンモーター等で攪拌し、加熱溶解することが好ましい。
工程II;次いで、A成分;ホスファチジルセリン0.01〜50重量%と、C成分;安定剤の1種または2種以上0.01〜99.3重量%、D成分の水の残部を添加する。
工程III;前記の工程において、分散させながら減圧下、もしくは常圧下にて粗乳化の工程を行なう。
前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程IVを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程IV;前記の工程IIIの後、均質機による均質化圧力49MPa(500kg/cm2)以上の高せん断力を与える。
前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程Vを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程V;前記の工程IIIの後、ホモミキサーによる攪拌羽の周速が750m/分以上の高せん断力を与える。
【0018】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液の製造方法は、前記の各種成分を所定量はかりとり、混合できればよく、特に、液温40℃以上で攪拌、混合する。更に可溶化液の安定性を高めるために、高圧ホモジナイザー[商品名:マイクロフルイダイザー みづほ工業(株)製、アルティマイザー (株)スギノマシン製]などの均質化処理機を使用して49MPa(500Kg/cm2)以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上の高せん断力を与える方法、また例えばホモミキサー[商品名;TKホモミキサー 特殊機化工業(株)製、クレアミックス エム・テクニック(株)製]で攪拌羽の周速が750m/分以上の高せん断力を与える方法等の均質化処理を行うことにより、均一な液状のホスファチジルセリン可溶化液を得ることができる。
また、均質化処理は前記の均質化処理機以外にも、ナノマイザー、超音波乳化機等の均質化処理機やアジホモミキサー、ウルトラミキサーなどのホモミキサーを用いることができる。
ホスファチジルセリン可溶化液をより安定化させるために、この均質化処理を2回以上行ってもよい。
乳化方法としては、自然乳化法、転相乳化法、液晶乳化法、ゲル乳化法、およびD相乳化法およびPIT乳化法なども利用できる。また、これらの方法と前記均質化処理などの機械式乳化法を組み合わせて行ってもよい。
【0019】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、そのまま摂取する、あるいは主に、スポーツ飲料、炭酸飲料、栄養飲料などの飲料やパン、めん、菓子類、乳肉製品、調味料などの食品にホスファチジルセリンを添加するための配合原料として使用することができる。その用途としては、特に制限はなく、あらゆる種類の飲食品に適用することができる。
本発明のホスファチジルセリン可溶化液を含有する食品としては、例えば、パン、ビスケット、キャンディー、ゼリーなどのパン・菓子類や、ヨーグルト、ハムなどの乳肉加工食品や味噌、ソース、タレ、ドレッシングなどの調味料や豆腐、麺類などの加工食品やマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどの油脂加工食品や粉末飲料、粉末スープなどの粉末食品などやカプセル状、タブレット状、粉末状、顆粒状などにした健康食品などを挙げることができる。
本発明のホスファチジルセリン可溶化液を含有する飲料としては、食塩、鉄分などの塩類やミネラル分、酸味料、甘味料、アルコール、ビタミン、フレーバーおよび果汁の中から少なくとも1種を含む飲料、例えばスポーツ飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、アルコール飲料、ビタミン・ミネラル飲料などが挙げられる。さらに、加工乳、豆乳、体質改善のための飲料、生理効果を期待できる天然素材をホスファチジルセリンと組み合わせた飲料などを挙げることができる。
これらの使用時、ホスファチジルセリンの配合量は、特に限定されないが、例えば製品中、0.01〜10重量%が望ましい。
前記のホスファチジルセリン可溶化液は、対象としては特に限定されないが、例えば、人、牛、豚、羊等の家畜、犬、猫、ウサギ、ねずみ等の小動物、を対象としてホスファチジルセリン可溶化液を経口投与することができる。
【0020】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、化粧水などの化粧料にホスファチジルセリンを添加するための配合原料として使用することができる。その用途としては、特に制限はなく、皮膚や毛髪に直接使用される化粧料および浴用化粧料等あらゆる種類の化粧料に適用することができる。例えば、化粧水、ボディーローション、ヘアリキッド、ヘアトニック、育毛剤、浴用剤等である。本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、保湿性、皮膚の保護、油性成分の分散性向上等に利用できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、長期間保存してもホスファチジルセリンが析出、沈殿あるいは浮上することなく、均質で安定な状態を保つことができる。また、耐酸性、耐塩性、耐熱性にも優れ、食品および食品添加物に使用される酸および塩を配合しても安定性を保つことができ、60〜100℃で殺菌処理または必要に応じて100〜150℃の高温殺菌または滅菌処理することができ、この際の加熱に対しても安定であり、また、長期間保存しても均一な状態を保つことができる。
このホスファチジルセリン可溶化液は、そのまま食品として摂取でき、さらに各種飲食品の製造に際して配合することによりホスファチジルセリンを含有する飲食品を得ることができる。
またさらに、本発明のホスファチジルセリン可溶化液は、化粧料にも配合することができ、塩や酸と併用したり、熱処理したりする場合にも安定性を有することから有用である。
【0022】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
次に用いた試験方法、評価方法を示す。
1.保存安定性試験1;
実施例および比較例で得たホスファチジルセリン可溶化液を試料として用い、100mlサンプルビンに入れ、調製直後、および40℃での30日静置保存後の外観状態を目視により評価した。○は状態良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
2.耐熱性試験
精製水にホスファチジルセリン可溶化液を1%添加し、常温でのホスファチジルセリン可溶化液の水溶液の外観状態を目視により評価した。さらに、この水溶液の耐熱性を確認するため、この水溶液を湯煎にかけ液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。これらの水溶液を室温にて放冷した後、外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の水溶液の耐熱性を確認した。○は状態良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
3.乳化分散液の平均粒径の測定
乳化分散液の平均粒径の測定には、サブミクロン粒子分析装置[COULTER N4SD型 ベックマン・コールター(株)製]を用いた。
【0023】
4.1 耐酸・耐熱試験
クエン酸にてpHを3以下に調整した精製水にホスファチジルセリン可溶化液を1%添加し、常温での外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の耐酸性を確認した。さらに、この酸性条件での耐熱性を確認するため、この可溶化液含有酸性水溶液を湯煎にかけ液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。これらの可溶化液含有酸性水溶液を室温にて放冷した後、外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の耐酸・耐熱性を確認した。○はほとんど均一状態で良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
4.2 耐酸保存安定性試験
前記の耐酸・耐熱試験を行った試験溶液の40℃静置保存試験を実施し、30日静置保存後の外観状態を目視により評価した。○はほとんど均一状態で良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
5.1 耐塩性・耐熱性試験
同様に、食塩を5%含有する精製水にホスファチジルセリン可溶化液を1%添加し、常温での外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の耐塩性を確認した。さらに、この高塩濃度条件での耐熱性を確認するため、この可溶化液含有食塩水を湯煎にかけ、液温が85℃に達温した時点より30分間加熱処理を行った。これらの可溶化液含有食塩水の外観状態を目視により評価し、ホスファチジルセリン可溶化液の耐塩・耐熱性を確認した。○はほとんど均一状態で良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
5.2 耐塩保存安定性試験
前記の耐酸・耐熱試験を行った試験溶液の40℃静置保存試験を実施し、30日静置保存後の外観状態を目視により評価した。○はほとんど均一状態で良好、△は状態がやや悪い、×は状態が悪く、析出・浮遊・沈殿が発生、−は未測定をそれぞれ表す。
【0024】
実施例1
2000mL容ステンレス製ビーカーに、ショ糖パルミチン酸(C16)エステル[商品名:サンソフトSE−16P 太陽化学(株)製]40gと還元水飴[商品名:エスイー58 日研化学(株)製]600g、水250gの順に入れ、かき混ぜながら80℃に加温した。モノオレイン酸(C18:1)ヘキサグリセリン(G6)[商品名:SYグリスターMO−500 坂本薬品工業(株)製]40g、コハク酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:ポエムB−10 理研ビタミン(株)製]20gを添加し、十分溶解させた後、ホスファチジルセリン[試作品 日本油脂(株)製、ホスファチジルセリン純度35%]50gを添加し、ホスファチジルセリンを分散した。次いで高圧ホモジナイザー147MPa(1500kg/ cm2)の圧力で均質化処理を行い、平均粒径が92nmのホスファチジルセリン可溶化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0025】
比較例1
モノオレイン酸ヘキサグリセリン、ショ糖パルミチン酸エステルおよびコハク酸モノステアリン酸グリセリンの合計100gをモノミリスチン酸ヘキサグリセリン100gとした以外は、実施例1と全く同じ操作を行い、平均粒径が150nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0026】
比較例2
実施例1におけるモノオレイン酸ヘキサグリセリン、ショ糖パルミチン酸エステルおよびコハク酸モノステアリン酸グリセリンの合計100gをショ糖ミリスチン酸エステル100gとした以外は、実施例1と同様に操作を行い、平均粒径が120nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0027】
比較例3
モノオレイン酸ヘキサグリセリン、ショ糖パルミチン酸エステルおよびコハク酸モノステアリン酸グリセリンの合計100gをコハク酸モノステアリン酸グリセリン100gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径が200nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0028】
比較例4
モノオレイン酸ヘキサグリセリン、ショ糖パルミチン酸エステルおよびコハク酸モノステアリン酸グリセリンの合計100gをモノオレイン酸ヘキサグリセリン100gとし、水の一部に酵素分解大豆レシチンを加えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径が160nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.8)
結果を表1に示す。
なお、表中には、ホスファチジルセリン(PSと略す、35%純度)の試作品の量と純度換算した量で示す。
【0029】
【表1】
【0030】
以上の結果から、比較例1は耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液およびホスファチジルセリン可溶化液自体の40℃30日間静置保存における安定性において劣っている。比較例2は耐塩・耐熱試験溶液および耐酸・耐熱試験溶液の40℃30日間静置保存における安定性が共に劣っており、比較例3は耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液およびホスファチジルセリン可溶化液自体の安定性が劣っている。比較例4は40℃30日間静置保存における安定性において、耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液は劣っており、また、ホスファチジルセリン可溶化液自体も若干劣っている。それに対して、実施例1は耐熱、耐塩、耐酸性が共に優れ、それぞれの試験溶液の40℃30日間静置保存後も安定であることがわかる。
【0031】
実施例2
2000mL容ステンレス製ビーカーに、ショ糖ラウリン酸(C12)エステル[商品名:リョートーシュガーエステルL−1695 三菱化学フーズ(株)製]40gとグリセリン[商品名:食添用グリセリン 日本油脂(株)製]500g、水350gの順に入れ、かき混ぜながら80℃に加温した。モノミリスチン酸(C14)デカグリセリン(G10)[商品名:サンソフトQ−12S 太陽化学(株)製]40g、クエン酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:サンソフトNo.621B 太陽化学(株)製]20gを添加し、十分溶解させた後、ホスファチジルセリン[試作品 日本油脂(株)製、ホスファチジルセリン純度35%]50gを添加し、ホスファチジルセリンを分散した。次いで高圧ホモジナイザー162MPa(1650kg/ cm2)の圧力で均質化処理を行い、平均粒径が86nmのホスファチジルセリン可溶化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0032】
比較例5
ショ糖ラウリン酸エステルおよびクエン酸モノステアリン酸グリセリンの合計60gをショ糖ラウリン酸エステル60gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径が140nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0033】
比較例6
ショ糖ラウリン酸エステルおよびクエン酸モノステアリン酸グリセリンの合計60gをクエン酸モノステアリン酸グリセリン60gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、平均粒径が160nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
【0034】
比較例7
ショ糖ラウリン酸エステルおよびモノミリスチン酸デカグリセリンの合計80gをショ糖ラウリン酸エステル80gとした以外は、実施例1と同様な操作を行い、平均粒径が120nmのホスファチジルセリン乳化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/5.7)
結果を表2に示す。なお、表中には、ホスファチジルセリン(PSと略す、35%純度)の試作品の量と純度換算した量で示す。
【0035】
【表2】
【0036】
以上の結果から、比較例4は耐塩・耐熱試験溶液およびホスファチジルセリン可溶化液自体の保存安定性が劣っている。比較例5は耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液およびホスファチジルセリン可溶化液自体の保存安定性が共に劣っており、比較例6は耐塩・耐熱性および耐酸・耐熱試験溶液の保存安定性が劣っている。それに対して、実施例2は耐熱、耐塩、耐酸性が共に優れ、それぞれの試験溶液の40℃30日間静置保存後も安定であることがわかる。
【0037】
実施例3
2000mL容ステンレス製ビーカーに、ショ糖ミリスチン酸(C14)エステル[商品名:リョートーシュガーエステルM−1695 三菱化学フーズ(株)製]60g、還元水飴[商品名:アマミール 東和化成工業(株)製]400g、水300gの順に入れ、かき混ぜながら80℃に加温した。モノオレイン酸(C18)デカグリセリン(G10)[商品名:SYグリスターMO−750 阪本薬品工業(株)製]60g、コハク酸モノステアリン酸グリセリン[商品名:サンソフトNo.681NU 太陽化学(株)製]30gを添加し、十分溶解させた後、ホスファチジルセリン[試作品 日本油脂(株)製、ホスファチジルセリン純度35%]150gを添加し、ホスファチジルセリンを分散した。次いで高圧ホモジナイザーで147MPa(1500kg/ cm2)の圧力で均質化する工程を2回行い、平均粒径が65nmの均一なホスファチジルセリン可溶化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/2.9)
【0038】
実施例4
実施例3の還元水飴400gおよび水300gを水700gとした以外は、実施例3と同様な操作を行い、平均粒径が97nmの均一なホスファチジルセリン可溶化液を得た。(ホスファチジルセリン/界面活性剤=1/2.9)
結果を表3に示す。なお、表中には、ホスファチジルセリン(PSと略す、35%純度)の試作品の量と純度換算した量で示す。
【0039】
【表3】
【0040】
以上の結果から、実施例3は、耐熱、耐塩、耐酸性が共に優れ、40℃30日間静置保存後も安定であり、また、実施例4は、ホスファチジルセリン可溶化液、耐塩・耐熱試験溶液、耐酸・耐熱試験溶液の40℃30日間静置保存において、安定性で若干劣っていたが使用できないほどではなかった。
【0041】
実施例5
実施例3のホスファチジルセリン可溶化液を用いて、第4表の組成で飲料を調製し、100mL容ビンに充填し密封した。この飲料を95℃で15分間加熱殺菌し、飲料を調製した。このようにして得られた飲料を40℃の恒温槽に30日間静置保存した後、分散安定性を評価したところ、ホスファチジルセリンの析出は全く認められず、分散状態は安定であった。
【0042】
比較例8
第4表の配合材料中、実施例3のホスファチジルセリン可溶化液を比較例4のホスファチジルセリン可溶化液に代えた以外は実施例5と同様にして飲料を調製した。このようにして得られた飲料を40℃の恒温槽に30日間静置保存した後、分散安定性を評価したところ、ホスファチジルセリンの析出が認められ、分散状態は不安定であった。
結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
以上の結果から、実際の飲料に配合した本発明の実施例3は、耐酸性、耐熱性等に優れているのに対して、比較例4が耐酸性、耐熱性等に劣っていることがわかる。
【0045】
実施例6
実施例3のホスファチジルセリン可溶化液を用いて、第5表の組成で化粧水を調製し、100mL容ビンに充填し密封した。この化粧水を95℃で15分間加熱殺菌し、化粧水を調製した。このようにして得られた化粧水を40℃の恒温槽に30日間静置保存した後、安定性を評価したところ、ホスファチジルセリンの析出は全く認められず、可溶化状態は安定であった。
【0046】
比較例9
第5表の配合材料中、実施例3のホスファチジルセリン可溶化液を比較例4のホスファチジルセリン可溶化液に代えた以外は実施例6と同様にして化粧水を調製した。このようにして得られた化粧水を40℃の恒温槽に30日間静置保存した後、安定性を評価したところ、ホスファチジルセリンの析出が認められ、可溶化状態は不安定であった。
結果を表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
以上の結果から、実際の化粧水に配合した本発明の実施例3は、耐熱性等に優れているのに対して、比較例4が耐熱性等に劣っていることがわかる。
なお、用いたホスファチジルセリンの試作品は次の方法により合成した。
<ホスファチジルセリンの試作品の合成>
例えば特開2002−218991号公報記載の方法に準じて、精製水に大豆由来のホスファチジルコリン(ホスファチジルコリン純度55%)、セリン(食品添加物グレード)塩化カルシウム、グリセリン脂肪酸モノエステルを加えて混合し懸濁させた後、さらに基質変換触媒として、ストレプトマイセス属のホスフォリパーゼD(旭化成工業(株)品)を加えて、45〜50℃の温度15時間反応を行った。反応終了後、塩析し、凍結乾燥して、ホスファチジルセリン生成物を得た。このホスファチジルセリン生成物中のホスファチジルセリン含量は、ガスクロマトグラフィーで測定したところ35%であった。
Claims (11)
- ホスファチジルセリン(A)を水系溶媒に分散する可溶化液であって、炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステル(B1)と、炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖とのエステル(B2)と、ステアリン酸モノグリセリドと有機酸とのエステル(B3)と、を組合せ用いることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液。
- B1;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステルが、0.1〜50重量%、
B2;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステルが、0.1〜50重量%、B3;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステルが、0.1〜50重量%、
である請求項1に記載のホスファチジルセリン可溶化液。 - {ホスファチジルセリン/界面活性剤(前記のB1+B2+B3)}の重量比が1/10〜1/0.01の配合比である請求項1または2記載のホスファチジルセリン可溶化液。
- ホスファチジルセリン可溶化液の平均粒径が100nm以下の可溶化状態である請求項1〜3のいずれか1項に記載のホスファチジルセリン可溶化液。
- A;ホスファチジルセリン0.01〜50重量%と、
B1;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル0.1〜50重量%と、
B2;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル0.1〜50重量%と、
B3;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル0.1〜50重量%と、C;安定剤の1種または2種以上0.01〜99.2重量%と、
D;水0.01〜99.2重量%と、
を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のホスファチジルセリン可溶化液。 - 下記の工程I、II、IIIを順次行い、可溶化液中の油性成分の平均粒子径が100nm以下となるようにすることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程I;B1成分;炭素数12〜18の脂肪酸とポリグリセリンのエステル0.1〜50重量%と、
B2成分;炭素数12〜18の脂肪酸とショ糖のエステル0.1〜50重量%と、
B3成分;ステアリン酸モノグリセリドと有機酸のエステル0.1〜50重量%と、
D成分;水0.01〜99.2重量%の一部を、
原料としてはかり取り、加熱溶解する。
工程II;次いで、A成分;ホスファチジルセリン0.01〜50重量%と、C成分;安定剤の1種または2種以上0.01〜99.3重量%、D成分の水の残部を添加する。
工程III;前記の工程において、分散させながら減圧下、もしくは常圧下にて粗乳化の工程を行なう。 - 前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程IVを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程IV;前記の工程IIIの後、均質機による均質化圧力49MPa(500kg/cm2)以上の高せん断力を与える。 - 前記の工程I、II、IIIに引き続いて、さらに下記の工程Vを行い、粒子径100nm以下のホスファチジルセリン可溶化液を得ることを特徴とするホスファチジルセリン可溶化液の製造方法。
工程V;前記の工程IIIの後、ホモミキサーによる攪拌羽の周速が750m/分以上の高せん断力を与える。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のホスファチジルセリン可溶化液を含んでなることを特徴とする飲食品。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のホスファチジルセリン可溶化液を含んでなることを特徴とする化粧料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のホスファチジルセリン可溶化液を、動物を対象として経口投与することを特徴とする投与方法。
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