JP4517069B2 - ポリ乳酸又はその誘導体からラクチドを回収する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ乳酸又はその誘導体からラクチドを回収する方法に関し、更に詳しくは、ポリ乳酸又はその誘導体単独、あるいはそれらを含む樹脂組成物から、ポリ乳酸又はその誘導体を解重合して、乳酸の環状二量体であるラクチドを回収・製造するケミカルリサイクル方法に関するものである。
近年、環境問題に対する意識が高まり、電気・電子機器製品に用いられるプラスチック材料の難燃剤として広く使用されてきたハロゲン系化合物が、材料の廃棄焼却時にダイオキシンを発生する可能性があることが指摘され、そのためノンハロゲン系難燃剤への転換が進んできている。その中でも、分解吸熱量が大きく安全な無機系難燃化剤として金属水酸化物、とりわけ水酸化アルミニウムの需要は多く、分解した後の生成物が化学的に安定なアルミナである点もその使用を促進している。しかしながら最近では、難燃材料は廃棄時の燃焼を阻害するということも危惧されてきつつある。
一方で、炭酸ガスの増大に基づく地球温暖化の問題のために、化石燃料から合成されるプラスチック材料に代わって、再生可能資源であるバイオマスから合成され、かつバイオリサイクルおよびケミカルリサイクル可能な乳酸ポリマーの利用が活発に展開されてきている。乳酸ポリマーを利用することの利点は、乳酸ポリマーは炭酸ガスを固定したバイオマスから合成されるため、たとえ焼却処理されても、全プロセスを通じて炭酸ガスの増大は非常に少ない、というカーボンニュートラルの考え方によっても支持されている。ケミカルリサイクルは、少ないエネルギーによって元の原料に戻す方策であり、環境対応策としては、カーボンニュートラルの考え方から更に一歩踏み込んだ方策である。
乳酸ポリマーの製造方法として、乳酸オリゴマーから熱分解によってラクチドを合成し、さらにそのラクチドを重合することによって乳酸ポリマーを製造するという技術は従来から良く知られている。この製造過程において、光学純度の保持は重要である。何故なら、実用的な乳酸ポリマーは、光学活性なL,L―ラクチドの開環重合によって製造され、融点約175℃の透明で高強度のポリマーであり、わずかの光学活性の低下は、融点の著しい低下を招き、その実用性を失ってしまうからである。
再生可能資源から合成される乳酸ポリマーを難燃化するために、難燃化剤として、安全な水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を利用する方法は、例えば、以下の文献(特許文献1〜3参照)で既に知られている。しかしながら、難燃化は、乳酸ポリマーの燃焼や高温での熱分解を抑制することを目的としているため、当該難燃化組成物中の乳酸ポリマーの熱分解よって、原料のラクチドを回収するという方策については、いずれの文献においても、一切の開示がなされていない。
難燃化とは別に、乳酸ポリマーの熱分解よって原料のラクチドを回収するに際して、金属化合物を触媒として用いることもまた知られている。例えば、アルミニウム化合物による乳酸ポリマーの熱分解については、ディジーらは、アルミニウムイソプロポキサイドを開始剤として用いてラクチドを重合し、さらに生成した乳酸ポリマーの熱分解を行なっている(非特許文献1参照)。また、野田と奥山は、アルミニウムイソプロポキサイドとアルミニウムエチルアセトアセテートを用いて乳酸オリゴマーの熱分解を行い、その分解産物として得られたラクチドの純度を測定している(非特許文献2参照)。しかし、アルミニウム化合物を用いるこれらの技術は、光学純度の非常に低いラクチドが回収されることを開示しているに過ぎない。
また、特許文献では、特開平6−279434(特許文献4)に、アルカリ金属塩と周期律表4属〜15属の金属および/又はその塩を併用して、乳酸系オリゴマーから光学純度の低いラクチド(メソ体含有量7−40%)を得る技術が開示されている。その際の熱分解触媒の添加量は0.01−5重量部の範囲である。特開平10−168077(特許文献5)及び特開平10−306091(特許文献6)には、乳酸オリゴマーの熱分解触媒としてIIIA属、IVA属、IIB属、IVB属およびVA属からなる金属化合物が開示されているが、アルミニウム化合物としてはアルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、酸化アルミニウム、塩化アルミニウムという、難燃化剤として作用しない化合物が開示されている。特開2000−15107(特許文献7)には、乳酸オリゴマーの熱分解触媒として、特殊な環状アルコキシアルミニウム化合物を、全乳酸単位に対して0.1−1モル%用いる技術が開示されている。これらの文献にはいずれも、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物を用いる、ラクチド回収技術については具体的開示はない。
以上のように、従来、難燃化剤としての水酸化アルミニウム等の金属水酸化物と、乳酸ポリマーからなる組成物に関して、当該組成物中の乳酸ポリマーからの、高光学純度ラクチドの回収と難燃化剤を関連づけた技術的開示は一切無い。これは、難燃化という分解燃焼抑制と、ケミカルリサイクルという分解促進制御とが、概念的に全く相容れないためである。そればかりでなく、例えば、従来、アルミニウム化合物によるラクチド回収では、光学純度が低下しやすいことが示されてきた。この様な状況の下で、再生可能資源から製造される乳酸ポリマーを、例えば、電気・電子機器部品に応用し、且つそのケミカルリサイクルを合理的に実施するために、難燃化と効率的な高光学純度ラクチド回収を両立して行うための新しい技術が望まれていた。
特開2001−303387号公報 特開2003−192925号公報 特開2004−75772号公報 特開平6−279434号公報 特開平10−168077号公報 特開平10−306091号公報 特開2000−15107号公報 ピー・ディジーら「Macromolecular Chemistry and Physics, 198巻 1985 (1997)」 野田,奥山「島津評論, 56巻, 169 (2000); M. Noda and H. Okuyama, Chemical & Pharmaceutical Bulletin, 47巻, 467 (1999)」
本発明は、ポリ乳酸又はその誘導体あるいはそれを含む樹脂組成物をケミカルリサイクルするために、ポリ乳酸又はその誘導体を解重合して、高い光学純度のラクチドを効率的に回収・製造する方法を提供することを目的とするものである。
本発明の目的は、ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムとの混合物を、ポリ乳酸又はその誘導体の溶融温度以上で320℃以下の温度範囲において熱分解しラクチドを回収するという方法によって達成される。
本発明によれば、ポリ乳酸又はその誘導体からあるいはそれを含む樹脂組成物から、簡単な方法で、高い光学純度のラクチドが効率的に回収されるので、ケミカルリサイクル方法として利用価値が非常に大きい。
精製ポリ(L−乳酸)/水酸化アルミニウム組成物のTG/DTA曲線 スズ含有ポリ(L−乳酸)/水酸化アルミニウム組成物のTG/DTA曲線 スズ含有ポリ(L−乳酸)/ポリスチレン/水酸化アルミニウム組成物のTG/DTA曲線
本発明は、ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムとの混合物を、ポリ乳酸又はその誘導体の溶融温度以上で320℃以下の温度範囲、好ましくは200〜300℃において熱分解しラクチドを回収する方法である。本発明の背景技術として既に述べたように、ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムの組成物自体は、難燃性組成物として知られている。しかしながら、後述する実施例において詳述するように、実際上、燃焼時に乳酸ポリマー組成物が晒される温度域(たばこの火でも約650℃以上、炎は1200℃以上といわれる)と、ケミカルリサイクル時に制御される温度域とは非常に異なり、それぞれの温度域で進行する反応の種類も異なる。従って、水酸化アルミニウムは燃焼時に難燃剤として作用することは公知であるが、水酸化アルミニウムが、ケミカルリサイクルのための分解触媒として有効に作用し、しかも、本発明の温度範囲において、極めて高い光学純度のラクチドを回収できるという事実は、本発明において初めて見出されたものである。
本発明において、ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムとの混合物は、ポリ乳酸又はその誘導体の溶融温度以上で320℃以下の温度範囲、好ましくは200〜300℃において熱分解され、高い光学純度のラクチドが選択的に回収される。ポリ乳酸又はその誘導体の溶融温度以下では、ポリ乳酸又はその誘導体の熱分解は殆ど進行せず、また320℃を超える温度では、ポリ乳酸又はその誘導体中の乳酸エステル構造ユニットのラセミ化が起こり易くなり、結果としてメソ−ラクチドの生成が増大し、得られるラクチドの光学純度が低下する。好ましい温度範囲は200〜300℃であり、より好適には250〜300℃の温度範囲である。この温度範囲は、ポリ乳酸又はその誘導体の分子量に依存する。一般に、分子量の低いポリマーほど、より低温領域で分解が進行する傾向にある。しかしながら、乳酸エステル構造ユニットのラセミ化は、分子量に関係なく320℃を超える温度で顕著になる。このような水酸化アルミニウムの分解作用と温度に依存する分解特性についての知見は、本発明において初めて見出されたものである。
本発明において、ポリ乳酸又はその誘導体とは、乳酸エステル構造を基本ユニットとするポリマーであり、特にL−又はD−乳酸エステル構造ユニットが全ユニットの90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上のポリマーである。L−またはD−乳酸エステル構造ユニット以外の成分としては、ラクチドと共重合可能なラクトン類、環状エーテル類、環状アミド類、環状酸無水物類などに由来する共重合成分ユニットが存在することが可能である。好適に用いられる共重合成分としては、カプロラクトン、バレロラクトン、β−ブチロラクトン、バラジオキサノンなどのラクトン類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、オキセタン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類;ε-カプロラクタムなどの環状アミド類;琥珀酸無水物、アジピン酸無水物などの環状酸無水物類などである。更に、開始剤成分として、ポリ乳酸又はその誘導体中に共存しうるユニットとして、アルコール類、グリコール類、グリセロール類、その他の多価アルコール類、カルボン酸類、および多価カルボン酸類、フェノール類などが用いられる。好適に用いられる開始剤成分を具体的に例示すれば、エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン、オクチル酸、乳酸、グリコール酸などである。
本発明において用いられる水酸化アルミニウムは、200℃以上の温度になると脱水反応を起こし、理論的には34.6重量%の水を放出してアルミナへと変化する。その脱水反応時に大きな吸熱効果があるため、難燃剤フィラーとして利用される。
本発明で用いられる水酸化アルミニウムは、何ら特別なものである必要はない。一般に知られている水酸化アルミニウムとしては、ギブサイト、バイヤライト、ダイスポア、ベーマイトなどがあるが、好適にはギブサイトおよびバイヤライトが用いられ、さらに好適にはギブサイトが用いられる。これらの種類を2種以上混合して用いることも可能であり、更には上記水酸化アルミニウムを10重量%以上含有する、複合化合物を用いることも可能である。水酸化アルミニウムは、通常、白色粉末であり、その形状などは特に限定されず、いかなる形状のものも使用可能である。但し、ポリ乳酸又はその誘導体あるいはそれらを含むポリマー組成物への均一分散性や、混合物の溶融流動性を考慮した場合、その平均粒子径が0.01〜200μmであることが好ましく、1〜50μmであることが特に好ましい。
ポリ乳酸又はその誘導体あるいはそれを含むポリマー組成物に対する水酸化アルミニウムの混合量は、ポリ乳酸又はその誘導体100重量部に対して水酸化アルミニウム10〜100重量部が適当であり、20〜60重量部がより好ましい。例えば、水酸化アルミニウムの量は、難燃剤として作用可能な量の範囲であり、且つケミカルリサイクルを実施するのに可能な量の範囲でもあるのが便利であるが、難燃剤としては、乳酸ポリマー中の含有率が5〜50重量%(ポリ乳酸100重量部に対して5.3〜100重量部)の範囲が好適であることが知られている。従って、本発明のケミカルリサイクルを実施する場合、ポリ乳酸又はその誘導体が他の金属等を含まない場合には、難燃剤として水酸化アルミニウムを5〜50重量%含むポリマーをそのまま熱分解すれば良い。しかし、ポリ乳酸又はその誘導体に含まれる他の金属(重合触媒等として用いられたもの)、例えば、スズの影響を打ち消して、水酸化アルミニウムによる熱分解機構を優先させるには、ポリ乳酸又はその誘導体100重量部に対して、少なくとも10重量部(ポリマー中の含有率で9.1重量%)の水酸化アルミニウムが必要である。しかし、100重量部(ポリマー中の含有率で50重量%)を超えると、ポリマーの流動性が著しく低下し、溶融成形が難しくなり好ましくない。
乳酸ポリマーの熱分解は、重合開始剤として使用されたスズ化合物の微量の残存量に応じて、その熱分解温度と熱分解生成物が顕著に変化することは、既に良く知られている事実である(例えば、H. Nishida et al., Polymer Degradation and Stability, 81巻, 515 (2003))。スズの含有量が169ppm以上では、乳酸ポリマーの分解温度は非常に低く、分解生成物は高光学純度のラクチドに選択的となる。一方で、スズの含有量が60ppm以下では、乳酸ポリマーの分解温度は高くなり、分解生成物の光学純度は低下し、オリゴマーの混入も顕著となる。このようなスズの作用は、ケミカルリサイクルには有効であるが、乳酸ポリマー製品の溶融成型時にその分解を引き起こしやすいため、一般的に、残留スズ化合物は、溶融成形前に極力抽出する処理が施されている。そしてこれが、乳酸ポリマーの高コストの一因になっている。
本発明者らの検討によると、乳酸ポリマーに水酸化アルミニウムを添加した場合、興味深いことに、残留スズ化合物の多い乳酸ポリマーの場合には、水酸化アルミニウムの添加量に応じて、熱分解温度が上昇する傾向が見出された(溶融成型時の安定性に寄与する)。一方で、残留スズ化合物が殆ど抽出された精製乳酸ポリマーの場合には、水酸化アルミニウムの添加量に応じて、熱分解温度が低下する傾向が見出された。この分解温度の減少は、水酸化アルミニウムの添加量が30重量部まではその添加量に応じて進行するが、30重量部以上ではある特定温度領域に収束し、それ以上では顕著な熱分解温度の低下は進行しない。つまり、水酸化アルミニウムの添加は、乳酸ポリマーの熱分解を特定の温度範囲に収束させる効果と、スズ化合物の著しい分解促進効果を打ち消し、スズが残留する乳酸ポリマーの安定化に寄与する効果もあることが見出された。
従って、本発明者らの知見によると、スズ化合物を含有するポリ乳酸又はその誘導体は、スズ化合物を格別除去しなくとも、水酸化アルミニウムとの混合物とすれば、溶融成型加工が容易となる。そして、かかるスズ化合物を含有するポリ乳酸又はその誘導体に対しても、本発明は、好ましく適用することができる。
本発明の方法において、ケミカルリサイクルの対象となる、ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムとの混合物は、ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムだけの混合物であっても、その他に、樹脂や強化用繊維類やフィラー類や添加剤等が共存した、いわゆる樹脂組成物であっても良い。共存可能な成分としては、燃焼時に水酸化アルミニウムの難燃機能を妨げないことと、ポリ乳酸又はその誘導体のケミカルリサイクルを妨げないことが必要な要件である。
実用的な物性を付与するための樹脂類としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリスチレン、ABS、ASなどのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート(PC)、PC/ABS、PC/ASなどのポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコールなどのビニルアルコール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリオキシメチレンなどのエンジニアリングプラスチック類;ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの耐衝撃性改良用ゴム類;ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリテトラメチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリパラジオキサノン、アセチルセルロース、ポリ−γ−グルタミン酸、ポリリシンなどの生分解性改良剤などが好適に用いられる。これらの樹脂類の添加量は、製品物性に要求される物性に応じて適宜選択することができるが、一般的にポリ乳酸又はその誘導体100重量部に対して200重量部以下、好ましくは100重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。これらの樹脂類は、通常、ポリ乳酸又はその誘導体のケミカルリサイクルの際に溶融し、再ペレット化によってマテリアルリサイクルされる。
強化用繊維類およびフィラー類としては、特に制限されず、公知の強化用繊維類およびフィラー類が何ら制限無く用いられるが、好適に使用される繊維類としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、植物由来のセルロース繊維などであり、また、好適に使用されるフィラー類としては、ガラスマイクロビーズ、チョーク、石英、長石、雲母、タルク、ケイ酸塩、カオリン、ゼオライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、フェライト、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー類;エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、パーフルオロ樹脂などの有機フィラー類などがあり、これらのフィラー類は1種又は2種以上を混合して使用してもかまわない。これらのフィラー類の添加量は、製品に要求される物性に応じて適宜選択することができるが、一般的にポリ乳酸又はその誘導体100重量部に対して200重量部以下、好ましくは100重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。
ポリ乳酸又はその誘導体を含む樹脂組成物に共存可能なその他の添加剤としては、水酸化アルミニウム以外の難燃剤、加水分解抑制剤、結晶化促進剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、相溶化剤、帯電防止剤などである。これらの添加剤は、水酸化アルミニウムの難燃化作用、及びポリ乳酸又はその誘導体のケミカルリサイクルに顕著な影響を及ぼさない範囲で添加可能であり、通常、ポリ乳酸又はその誘導体100重量部に対して5重量部以下、好ましくは3重量部以下で使用される。水酸化アルミニウム以外の難燃剤としては、ホウ酸系難燃化合物類;リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどのリン系難燃化合物類;硫酸金属化合物、アンチモン系化合物、酸化鉄化合物、硝酸金属化合物、チタン系化合物、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、アルミニウム系化合物などの無機系難燃化合物類;トリアジン環を有するシアヌレート化合物などのチッソ系難燃化合物類;シリコーンオイル、低融点ガラス、オルガノシロキサンなどのシリカ系難燃化合物類;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウムなどのコロイド系難燃化合物類などが用いられる。
ポリ乳酸又はその誘導体を含む樹脂組成物に、共存可能な加水分解抑制剤としては、ポリ乳酸又はその誘導体の加水分解を抑制する機能を有する、公知の加水分解抑制剤が何ら制限無く使用できる。好適に使用される加水分解抑制剤としては、カルボジイミド化合物類、イソシアネート化合物類、オキサゾリン化合物類であり、これらの加水分解抑制剤の添加量は、ポリ乳酸又はその誘導体100重量部に対して5重量部以下、好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下である。
ポリ乳酸又はその誘導体を含む樹脂組成物は、種々の用途に応用可能である。例えば、樹脂組成物を用いて、ラジオ、マイク、テレビ、キーボード、携帯型音楽再生機、携帯電話、パソコン、各種レコーダー類などの電気・電子機器の筐体などの成形物が得られる。また、自動車の内装部品類や各種梱包材、各種化粧シート類などの用途にも使用できる。これらの成形物の成形方法としては、例えば、フィルム成形、シート成形、押出成形、または射出成形などが挙げられ、中でも電気・電子機器製品部品の成形には射出成形が好ましく利用される。より具体的には、押出成形は、常法に従い、例えば単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機などの公知の押出成形機を用いて行うことができる。また、射出成形は、常法に従い、例えばインラインスクリュー式射出成形機、多層射出成形機、二頭式射出成形機などの公知の射出成形機を用いて行うことができる。
本発明において、ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムを混合する方法としては、公知の混合の手段が特に限定されず利用可能である。本発明において重要な点は、ポリ乳酸又はその誘導体中に、水酸化アルミニウムが均一に分散して存在することが不可欠な要因と考えられるため、水酸化アルミニウムがより微細に分散しやすい手段が好適に実施される。好適に用いられる添加混合方法としては、溶融混合法、溶液混合法、粉体混合後溶融分散法、マスターバッチ法などである。ポリ乳酸又はその誘導体が単独で、あるいは樹脂組成物として成形品となっている場合には、あらかじめこれを粉砕した後、水酸化アルミニウムと混合するのが良い。
本発明において、光学純度の高いラクチドを回収する方法として、ポリ乳酸又はその誘導体あるいはそれを含むポリマー組成物を、例えば、200−320℃の温度範囲に設定された熱分解反応器中に投入することが望ましいが、より低温から高速で昇温する方法も選択可能である。好適に利用される熱分解反応器としては、バッチ式、連続式のいずれも実施可能である。好適に用いられる反応器としては、エクストルーダー、オートクレーブ、流動床式反応器などである。エクストルーダーを用いる場合、シリンダーの各ブロックの温度設定とスクリューの回転数、スクリューの形状、一軸/二軸スクリューなどの形式によって、熱分解温度や熱分解速度の制御および昇温速度を、本発明における温度範囲に設定することが可能である。
これらの熱分解反応器を用いて、ポリ乳酸又はその誘導体の熱分解を実施する場合、生成したラクチドは気相中に揮発してくるため、気相成分を取り出すプロセスが不可欠である。上記した各反応器は、気相成分を取り出すための排出口、及び/又は、気相成分を押出し置換するための窒素ガスなどの不活性ガスの注入口を有する。例えば、エクストルーダー反応器の場合、ベント口が排出口として好適に用いられる。ベント口より気相成分を取り出す際に、一般的には、減圧下に取り出す方法が好適に実施される。減圧度および/又は排気速度は、気化成分の量や温度に応じて設定することができるが、通常、500mmHg以下、好ましくは200mmHg以下の減圧度で好適に実施される。
このようにして、本発明の方法を実施し、ケミカルリサイクルによって、高光学純度のラクチドを得ることができる。得られたラクチドの光学純度の評価は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、一つの乳酸エステル構造ユニットでラセミ化が生じ、続いてラクチド単位での脱離が生じた場合、メソ−ラクチドが生成する。連続する二つの乳酸エステル構造ユニットでラセミ化が生じ、その二つの乳酸エステル構造ユニットがラクチドとして脱離した場合、元のポリ乳酸とは逆の光学異性ラクチドが生成する。一般的に、ラセミ化反応がランダムに進行した場合、メソ−ラクチドが主な分解産物として生成する。これらのメソ−ラクチドおよびL,L−ラクチド、D,D−ラクチドの割合は、ガスクロマトグラフ分析によって確認することができる。ただし、光学分割が不可能なカラムを利用した場合、D,D−ラクチドとL,L−ラクチドとは、同一フラクションとして検知されるため、ラセミ化の評価は、メソ−ラクチドの生成割合を指標として利用することができる。従って、メソ−ラクチドの生成割合が、得られたラクチド中の10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下であるのが良い。
本発明により、ラセミ化が抑制されたラクチドを回収することができるが、得られるラクチドの光学純度は、用いるポリ乳酸又はその誘導体の光学純度に依存する。即ち、用いるポリ乳酸又はその誘導体の光学純度が高ければ高いほど、得られるラクチドの光学純度も高くなる。従って、ポリ乳酸又はその誘導体の光学純度が、80%e.e.以上、好ましくは90%e.e.以上、より好ましくは95%e.e.以上であれば、ケミカルリサイクルによって得られるラクチドの光学純度も、比例して高くなる。なお、ここで、%e.e.とは、enantiometric excessという鏡像異性体からなる混合物中に存在する、ひとつの鏡像異性体の過剰量を百分率で表したものである。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜6]及び[比較例1〜4]
塩酸処理によって金属を殆ど含まないポリ(L−乳酸)(PLLA)(Mn=279000、Mw/Mn=1.90、スズ含有量=17ppm)200mgと、表1に示した量の水酸化アルミニウム、又は比較例としてのアルミナをサンプル管にとり、これにクロロホルム5mLを加えて、室温下12時間、激しく磁気攪拌を行うことによって水酸化アルミニウム又はアルミナが均一に分散したPLLA溶液を調整した。次に、この溶液からフラットシャーレ中でキャストフィルムを作成した。得られたキャストフィルムは、メタノールで表面を洗浄した後、室温で1日真空乾燥を行った。得られたフィルムから、一回につき約5mgのサンプルを切り出し、SEIKO製TG/DTA6200を用いて、窒素雰囲気下、室温から400℃までの温度範囲で、5℃/分の昇温速度で熱分解を行った。その結果を図1と表1に示した。
水酸化アルミニウムを含まない精製PLLA単独の場合(比較例1)、分解による重量減少は300℃を超えて始まり、約370℃でほぼ完全に分解した。それに対し、水酸化アルミニウムを10重量部含有した組成物(実施例1)は、250℃付近で熱分解が開始し、約350℃付近で7.5重量%の残渣を残してほぼ分解は終了した。水酸化アルミニウムの含有量が増加するに伴い熱分解温度は低下したが、水酸化アルミニウム30重量部以上の場合(実施例3〜6)、その熱分解温度はほとんど変わらず、250℃付近で開始し340℃付近で終了した。水酸化アルミニウムの含有量に比例して、熱分解残渣は増大した(表1)。水酸化アルミニウムを単独で、同様の条件下でTG/DTA測定を行うと、熱分解による重量減少は210℃付近で開始し、270℃付近で約73重量%の残渣になるまで速やかに進行した。その後、徐々に重量減少が進行し、600℃で理論的残重量65.4重量%にほとんど同じ65.9重量%に到達した。この水酸化アルミニウム単独の熱分解挙動を考慮し、約73重量%の重量減少を指標として、表1の組成物の分解残渣と比較した結果、極めて近い値であった。
水酸化アルミニウムの代わりに、アルミナを用いて同様に熱分解を行った結果、PLLA100重量部に対して、アルミナを10〜30重量部添加しても、熱分解温度は全く変化せず、熱分解後の残渣のみがアルミナの添加量に比例して増大した(表1の比較例2〜4)。従って、本実施例および比較例の結果より、PLLA/水酸化アルミニウム組成物は、純粋なPLLAの熱分解温度を約50℃低下させ、PLLAはほぼ全て分解気化し、水酸化アルミニウムは、安定なアルミナへと変化することが明らかである。
Figure 0004517069
[実施例7]及び[比較例5〜6]
実施例3で作成した精製PLLA/水酸化アルミニウム(100/30重量比)のフィルムを用いて、熱分解ガスクロマトグラフ−マススペクトル(Py−GC/MS)分析を行った。サンプラー付き熱分解装置(フロンティアラボ社製PY2020D、島津製作所製GC-17A + GCMS-QP5050)に、不活性ガス(ヘリウム)を通しながら,60℃に予熱した熱分解オーブンの中に、フィルムサンプル10μgをすばやく投入した。その後、10℃/分で300℃まで昇温した。60〜300℃の温度範囲での熱分解生成物は、サンプラーを用いて分取され、GC/MSを用いて分析された。分析の結果、全生成物中のラクチドの割合は、99.52%であり、メソ−ラクチドの含有率は0.56%であった。ラクチド以外の生成物としては、環状4量体および5量体の保持時間とほぼ同じ場所に、それぞれ0.28および0.20%のピークが観察されたのみであった。
一方、比較例5として、同様のサンプルを10℃/分で400℃まで昇温加熱した。60〜400℃の温度範囲での熱分解生成物は、サンプラーを用いて分取され、GC/MSを用いて分析された。分析の結果、全生成物中のラクチドの割合は、96.64%であり、メソ−ラクチドの含有率は12.17%であった。ラクチド以外の生成物としては、環状3〜6量体の成分が、それぞれ0.50および1.65、0.75,0.46%観察された。
さらに比較例6として、比較例4で作成した精製PLLA/アルミナ(100/30重量比)のフィルムを用いて、10℃/分で400℃まで昇温加熱した。60〜400℃の温度範囲での熱分解生成物は、サンプラーを用いて分取され、GC/MSを用いて分析された。分析の結果、全生成物中のラクチドの割合は、78.74%であり、メソ−ラクチドの含有率は18.28%であった。ラクチド以外の生成物としては、環状3〜7量体の成分が、それぞれ3.26および5.59、6.02,4.51、1.88%観察された。
以上の結果から、水酸化アルミニウムの選択的なラクチド生成と、300℃までの生成ラクチドの高い光学純度が明らかである。
[実施例8〜12]及び[比較例7〜8]
実施例3で作成した精製PLLA/水酸化アルミニウム(100/30重量比)のフィルムを用いて、熱分解ガスクロマトグラフ−マススペクトル(Py−GC/MS)分析を行った。サンプラー付き熱分解装置(フロンティアラボ社製PY2020D、島津製作所製GC-17A + GCMS-QP5050)に、不活性ガス(ヘリウム)を通しながら,60℃に予熱した熱分解オーブンの中に、フィルムサンプル10μgをすばやく投入した。その後、10℃/分で表2に示した温度まで昇温した。所定の温度範囲での熱分解生成物は、サンプラーを用いて分取され、GC/MSを用いて分析された。分析の結果は表2に示した。その結果、60−300℃の温度範囲では(実施例8〜11)、メソ−ラクチドおよび環状オリゴマーの生成は全く観測されず、ほぼ純粋なL,L−ラクチドが得られることが確認された。60−320℃では(実施例12)、メソ−ラクチドおよび環状オリゴマーの生成が若干観測され、それぞれ、6.08および2.00%であった。さらに、高温域ではメソ−ラクチドおよび環状オリゴマーの生成が増大した(比較例7〜8)。
以上の結果から、得られたラクチドから再び有用な乳酸ポリマーに変換するには、回収されるラクチドの光学純度を80%e.e.以上に保持する必要があり、そのためにPLLAの熱分解温度領域を320℃以下とすることが好ましいことがわかった。
Figure 0004517069
[実施例13]
実施例3で作成した精製PLLA/水酸化アルミニウム(100/30重量比)のフィルム150mgを、柴田製熱分解用ガラスチューブオーブンGTO-350D中に入れ、真空/窒素ガス置換を3回行った。その後、窒素雰囲気下でガラスチューブオーブンの温度を280℃まで徐々に上昇し、その後、その温度で2時間保持した。室温トラップに回収された熱分解生成物は、光学分割用キャピラリーカラム Varian cyclodextrine-β-236M-19(0.25 mm × 50 m)を備えた、島津製作所製ガスクロマトグラフGC-9Aを用いて分析した。その結果、生成物の組成は、L,L-ラクチド95.30%、メソ−ラクチド4.19%。D,D-ラクチド0.51%であった。
[実施例14〜16]及び[比較例9]
オクタン酸スズを触媒として合成したPLLA(Mn=150000、Mw/Mn=2.48、スズ含有量=388ppm)200mgと、表3に示した量の水酸化アルミニウムをサンプル管にとり、これにクロロホルム5mLを加えて、室温下12時間、激しく磁気攪拌を行うことによって、水酸化アルミニウムが均一分散したPLLA溶液を調整した。次にこの溶液からフラットシャーレ中で、キャストフィルムを作成した。得られたキャストフィルムは、メタノールで表面を洗浄した後、室温で1日真空乾燥を行った。得られたフィルムから、一回につき約5mgのサンプルを切り出し、SEIKO製TG/DTA6200を用いて、窒素雰囲気下、室温から400℃までの温度範囲で、1℃/分の昇温速度で熱分解を行った。その結果を図2と表3に示した。
水酸化アルミニウムを含まないスズ含有PLLA単独の場合(比較例9)、PLLAの分解による重量減少は180℃を超えて始まり、約250℃でほぼ完全に分解した。それに対し、水酸化アルミニウムを10〜30重量部含有した組成物(実施例14〜16)は、200℃を超えて熱分解が開始し、約270℃付近で、水酸化アルミニウムの添加量に応じた残渣を残して、ほぼ完全に分解した。この温度範囲での水酸化アルミニウムのアルミナへの転化率は32−59%であった。従って、本実施例および比較例の結果より、スズ含有PLLA/水酸化アルミニウム組成物は、スズ含有PLLA単独に比べて、約20℃の熱分解温度の上昇を引き起こし、PLLAはほぼ全て分解気化し、水酸化アルミニウムは安定なアルミナへと部分的に変化したことが明らかである。
Figure 0004517069
[実施例17〜19]
オクタン酸スズを触媒として合成したPLLA(Mn=150000、Mw/Mn=2.48、スズ含有量=388ppm)100mgとポリスチレン(PSt)(Scientific Polymer Products, Inc.社製、Mw=280000)100mgに、表4に示した量の水酸化アルミニウムをサンプル管にとり、これにクロロホルム5mLを加えて、室温下12時間、激しく磁気攪拌を行うことによって、水酸化アルミニウムが均一分散したPLLA/PSt溶液を調整した。次に、この溶液からフラットシャーレ中でキャストフィルムを作成した。得られたキャストフィルムは、メタノールで表面を洗浄した後、室温で1日真空乾燥を行った。得られたフィルムから、一回につき約5mgのサンプルを切り出し、SEIKO製TG/DTA6200を用いて、窒素雰囲気下、室温から500℃までの温度範囲で、9℃/分の昇温速度で熱分解を行った。その結果を図3に示した。
水酸化アルミニウムを含有した組成物は、250℃付近で熱分解が開始し、約310℃付近で約50重量%の残渣を残して一段階目の分解が終了した。第2段階目の分解は、370℃付近より開始し、450℃付近で水酸化アルミニウムの含有量に応じた残渣を残して分解が終了した。結果を表4に示した。
実施例19で作成した精製PLLA/PSt/水酸化アルミニウム(100/100/30重量比)のフィルムを用いて、熱分解ガスクロマトグラフ−マススペクトル(Py−GC/MS)分析を行った。サンプラー付き熱分解装置(フロンティアラボ社製PY2020D、島津製作所製GC-17A + GCMS-QP5050)に、不活性ガス(ヘリウム)を通しながら,60℃に予熱した熱分解オーブンの中に、フィルムサンプル10μgをすばやく投入した。その後、10℃/分で300℃まで昇温した。60〜300℃の温度範囲での熱分解生成物は、サンプラーを用いて分取され、GC/MSを用いて分析された。分析の結果、全生成物中のラクチドの割合は、100%であり、メソ−ラクチドおよび環状オリゴマー類の含有は確認されなかった。以上の結果は、ポリ乳酸/水酸化アルミニウム組成物に、汎用樹脂であるポリスチレンが共存した場合も、ポリ乳酸は、300℃以下の温度で分解し、高い光学純度のラクチドに変換されたことを示している。
Figure 0004517069
本発明によって、ポリ乳酸又はその誘導体あるいはそれを含む樹脂組成物から、高い光学純度のラクチドを、効率的にかつ容易に製造・回収することが可能となり、これは、使用済みの難燃化ポリ乳酸又はその誘導体あるいはそれを含む樹脂組成物からなる成形品を、ケミカルリサイクルする上で極めて効果的である。

Claims (6)

  1. ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムとの混合物を、ポリ乳酸又はその誘導体の溶融温度以上で320℃以下の温度範囲において熱分解しラクチドを回収することを特徴とする、ポリ乳酸又はその誘導体からラクチドを回収する方法。
  2. 混合物が、ポリ乳酸又はその誘導体と水酸化アルミニウムを含む樹脂組成物からなるものである、請求項1記載のポリ乳酸又はその誘導体からラクチドを回収する方法。
  3. 混合物が、ポリ乳酸又はその誘導体100重量部に対して水酸化アルミニウム10〜100重量部からなるものである、請求項1又は2記載のポリ乳酸又はその誘導体からラクチドを回収する方法。
  4. ポリ乳酸又はその誘導体が、スズ化合物を含有するものである、請求項1〜3いずれか1つに記載のポリ乳酸又はその誘導体からラクチドを回収する方法。
  5. 熱分解温度が200〜300℃の温度範囲である、請求項1〜4いずれか1つに記載のポリ乳酸又はその誘導体からラクチドを回収する方法。
  6. ポリ乳酸又はその誘導体の光学純度が80%e.e.以上であって、且つ得られるラクチド中のメソラクチドの含有率が10モル%以下である、請求項1〜5いずれか1つに記載のポリ乳酸又はその誘導体からラクチドを回収する方法。
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