本発明に係る画像定着装置を添付の図面に示す好適実施例に基づいて以下に詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明の画像定着装置の一実施形態である画像定着装置10を示す図である。
画像定着装置10は、隣接して配置された一対の定着ロール12A,12Bおよびこれら定着ロール12A,12Bそれぞれの両軸端部を軸支する一対の支持部材としての移動側板14L,14Rを備えた定着ユニットと、これら定着ロール12A,12Bを駆動する定着ロール駆動機構20A,20Bを備えた定着ロール駆動手段と、前述した移動側板14L,14Rを回転可能に支持する一対の固定側板16L、16Rおよびこれら固定側板16L、16Rを介して前述した移動側板14L,14Rを回転させる回転機構22を備えた定着ユニット移動手段と、を有する。
また、この画像定着装置10には、定着ロール12A,12Bそれぞれの両軸端部を移動側板14L,14Rに固定する定着ロール保持機構18L,18Rと、定着ロール12A,12Bに記録媒体Pを案内するガイド機構24(図2参照)と、移動側板14Rに取り付けられた移動側板位置決め機構26とが設けられている。
また、図示しないが、画像定着装置10の近傍には、画像記録媒体P(以下、単に、記録媒体Pとする)を画像定着装置10に搬入する搬送手段および画像定着装置10における定着処理後の記録媒体Pを搬出する搬送手段が、ガイド機構24の紙送りガイド70(図2参照)に近接して設けられている。
画像定着装置10は、画像が記録され、図示しない搬送手段によって送られてきた記録媒体Pを、熱ロールである一対の定着ロール12Aおよび12Bによって挟持しつつ搬送することで、記録媒体P上の未定着画像を定着する。この画像定着装置10は、表層の硬度、表面粗さおよび材質がそれぞれ異なる定着ロール12Aおよび12Bを備えており、定着ロール12Aおよび12Bの位置が記録媒体Pの搬送経路に対して反転できる構成を有している。すなわち、記録媒体Pの画像記録面に接触する定着ロールを、定着ロール12Aおよび12Bの2つから選択可能とされている。
定着ロール12A,12Bは、図1に示すように、それぞれ、胴部に金属材料からなる円筒の芯材30A,30Bを有し、その両端部が蓋36A,36A;36B,36Bで閉塞されている。蓋36A,36A;36B,36Bには、芯材30A,30Bと軸心を同一にする中空の回転シャフト38A,38A;38B,38Bが外方に伸びて設けられている。
定着ロール12A,12Bの内部には、加熱源であるランプヒータ40が、芯材30A,30Bおよびその両側の回転シャフト38A,38A;38B,38Bを貫通して、そのほぼ軸心に配置されている。ランプヒータ40は、その放熱部が芯材30A,30Bの全幅に亘るように配置され、その両端部は回転シャフト38A,38A;38B,38Bから突出し、突出した両部分がそれぞれヒータ保持具42によって後述するリングギア64L,64Rに固定されている。すなわち、ランプヒータ40は、回転(自転)する定着ロール12A,12Bからは独立に、定着ロール12A,12Bを保持する部材に固定的に保持されている。このランプヒータ40は、定着ロール12A,12Bの表面温度を所定の温度に調整するために、図示しない温度調整手段によって発熱量を調整されている。
定着ロール12A,12Bとしては、その胴部に所定の表面粗さを有し、かつ、弾性(易変形性)を有するものであれば、各種のものが利用可能である。
一例として、ロールの芯材(基体)を弾性層で被覆した単層構成のロール; 弾性層を、さらに離型層で被覆した2層構成のロール; 弾性層と離型層との間に、中間層を有する3層構成のロール; が例示される。
ロールの芯材は、加圧に対して十分な強度を有するものが、各種利用可能であるが、好ましくは、熱伝導性の良好な材料で形成される物が好ましい。具体的には、A5056、A5052、A5083、A6063等のアルミニウム材のロール、STKM11等の非磁性ステンレス鋼材のロール等が例示される。図示例においては、定着ロール12A,12Bに加熱源(ランプヒータ40)が内蔵されるので、中空の円筒体が用いられている。なお、加熱源を有さない場合には、芯材の熱伝導性は、必ずしも高い必要はない。
弾性層は、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムで形成すればよい。特に、単層構成とする場合には、画像記録後の記録媒体Pとの離型性に優れるLTV(低温加硫型)シリコーンゴムが好適に例示される。
また、加熱定着時における熱伝導性を向上するために、これらの合成ゴム中に、フィラーとしてシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物の粉末を5〜30重量%配合するもの好ましい。また、同様の理由で、フィラーとして導電性カーボンブラックを用いてもよく、この際には、弾性層の電気抵抗を低減し、帯電防止を図ることができる。弾性層の厚さは、1〜8mmに形成される。ゴム硬度は、JIS K 6253−1997に規定されているタイプA デュロメータを用いて測定した値(以下、JIS Aと記す)で1〜50の範囲で、本発明に適する値に調整する。
離型層は、記録媒体Pとの離型性を向上するためのものである。離型層は、例えば、PFA(フッ素樹脂)製のチューブで弾性層を被覆して形成してもよく、PTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂塗料を弾性層の表面に塗布して形成してもよい。離型層の厚さは、10〜100μmに形成される。フッ素樹脂はシリコーンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムより硬く、色材粒子を押しつぶすのに適している。
また、前記弾性層の表面に、フッ素ゴムとフッ素樹脂とを混合して形成した中間層を形成し、その上に前記離型層を形成した3層構成とすることにより、弾性層と離型層との接着性向上、中間層の緩衝作用による離型層の損傷(クラックの発生等)防止等を図った3層構成の定着ロールも好適である。
さらに、弾性層として耐熱性に優れるHTV(高温加硫型)シリコーンゴムを用い、その上に弾性層の膨潤を防止するためのフッ素ゴム層を中間層として設け、中間層の上に離型層としてLTVシリコーンゴム層を設けてなる、3層構成の定着ロールも、好適である。最表層の表面粗さRaは、0.03〜5μmの範囲で調整される。
図示例においては、定着ロール12Aは、芯材30Aの表面に弾性層32Aが設けられ、さらにその表面に離型層34が設けられた2層構成とされている。弾性層32Aは、ゴム硬度20 JIS A、厚さ2mmのシリコーンゴムで構成されており、離型層34は、厚さ50μm、表面粗さRa=0.1μmのPFAで構成されている。
定着ロール12Bは、芯材30Bの表面に弾性層32Bが設けられた単層構成とされている。この弾性層32Bは、定着ロール12Aの弾性層32Aと同様のゴム硬度20 JIS Aのシリコーンゴムで構成されており、その厚さは3mm、表面粗さRa=0.3μmである。なお、オフセット性を向上させるために、シリコーンオイル等の離型剤を定着ロール12B上に塗布することもできる。
定着ロール12Aと定着ロール12Bとは、表層の表面粗さ、硬度および材質が異なっている。すなわち、定着ロール12Aの表層(弾性層32A上の離型層34)と、定着ロール12Bの表層(弾性層32B)とでは、定着ロール12Aの方が硬度が高く、弾性が小さく、表面粗さが小さくなっている。また、材質がPFAであるため、定着ロール12Aの方がインク離型性が良い。このような定着ロール12Aおよび定着ロール12Bは、どちらが記録媒体Pの画像面に接するように配置されるかが、定着後の画像の望まれる光沢性に応じて選択される。
ここで、印刷用紙とロールの層構成の選択について述べる。
本実施形態においては、例えば、本紙校正において、記録媒体Pの紙質に応じて光沢を変えることができるように、定着ロール12Aをアート紙用とし、定着ロール12Bを上質紙用として構成している。
アート紙では、記録媒体P上に画像を形成している色材粒子をつぶして平らにし、光沢を発現させるのが好ましい。そのためには、定着ロール12Aのロール最表面の硬さを定着温度に加温された色材粒子の硬さよりも硬くする必要があり、ロール最表面(離型層34)には、フッ素樹脂の硬さが最適である。さらに、アート紙は表面粗さが比較的小さく平らだが、それでも紙の凹部に形成された画像色材粒子をもつぶさないと十分な光沢を発現しない。そのため、最表層(離型層34)のPFAの厚さを10〜50μmと薄くして、PFA表面が紙の凹凸に沿って変形し、凹部の色材粒子に達してつぶせるようにする。PFA層(離型層34)は薄いほど良いが、10μm以下では耐久性が低くなってしまう。
また、弾性層32Aは、耐熱性に優れるHTV(高温加硫型)シリコーンゴムが最適であり、その硬度はJIS Aで1〜40程度が好ましく、3〜20程度がさらに好ましい。ゴム硬度3以下では、耐久性が低くなる場合がある。
弾性層32Aの厚さは、2〜5mm程度にして、ニップ幅を広く取れるようにし、加熱時間を稼ぐようにする。また、PFA(離型層34)の表面が硬いため、つぶしたときにPFA表面が色材画像表面にプリントされるので、PFAの表面粗さRaは、0.03〜5μm程度にする。
続いて、上質紙の場合は、光沢を発現させない方が良いので、定着ロール12Bの最表面の硬さを、定着温度に加熱された色材粒子の硬さよりも柔らかくして、色材粒子の粒状性を残すようにするため、ゴム系、特に、硬度がJIS A 10〜30のシリコーンゴムの弾性層32Bを単層設けたものとするのが好ましい。弾性層32Bの厚さは、1〜3mmが好ましい。表面粗さRaは、大きくても表面形状がプリントされないので、1〜5μmで良い。
なお、本実施形態においては、定着ロール12Aおよび12Bの構成として、芯材30A,30B、蓋36A,36B、および回転シャフト38A,38Bの形状寸法を同じものとするが、芯材30A,30Bの径や肉厚、幅、シャフトの径や長さ等の寸法は、定着ロール12Aと定着ロール12Bとで同じでなくてもよく、適宜設計されればよい。
特に、定着ロール12A,12Bの軸方向断面の形状については、通常は、芯材30A,30Bや弾性層の厚さは一定に作られるが、ロールのたわみや紙皺を考慮して、軸方向位置によって厚さを変えても良く、いわゆるクラウン形状、逆クラウン形状としても良い。
また、定着ロール12A,12Bとしては、上記のもの以外にも、芯材30A,30Bをシリコーンゴム層、フッ素ゴム層、シリコーンゴムなどの発泡材料を用いたスポンジ状の発泡ゴム層等で被覆してなるソフトロールも、好適に利用可能である。さらに、芯材30A,30Bを、PTFE、PFA、FEPなどのフッ素樹脂や、PFTチューブ等で被覆してなるハードロールも好適に利用可能である。
定着ロール12A,12Bの各ロールは、加熱定着のための押圧力に耐えうるものであれば、公知の各種のロールを用いることができる。なお、加熱源を内蔵するロールは、熱伝導性の高い材料で形成するのが好ましいのはもちろんである。
定着ロール12Aおよび12Bは、互いの軸線を平行にして、ロール表面がロール幅のほぼ全体で均等に接するように配置されている。定着ロール12Aおよび12Bの回転シャフト38A,38Aおよび38B,38Bは、定着ロール12Aおよび12Bの両軸端部側に配置された移動側板14L,14Rに、後述する定着ロール保持機構18L,18Rによって保持されている。
移動側板14L,14Rは、回転シャフト38Aおよび38Bを保持するのに十分な強度および面積を有する円盤状の部材であり、定着ロール12Aおよび12Bの両側(図1中左右側)の、定着ロール12Aおよび12Bを挟んで対向する位置に、その面を定着ロール12Aおよび12Bの軸線方向に垂直、かつ、互いの面を平行にして配置されている。移動側板14L,14Rには、回転シャフト38Aおよび38Bを回転可能に支持する支承部材である軸受け48L,48Rが嵌め込まれる2つの穴部が設けられている。この移動側板14L,14Rは、固定側板16L,16Rに嵌め込まれて保持されており、固定側板16Lと固定側板16Rとは、複数本(図示例では4本)のシャフト45およびボルトやナット等の締結具を用いて固定的に接続されている(図2および図3参照)。移動側板14L,14Rは、回転機構22の作用よって、両者が一体となって固定側板16L,16Rに対して回転する。
固定側板16L,16Rは、移動側板14L,14Rの外径よりも僅かに大きい直径の穴部を有する矩形の平板である。固定側板16L,16Rは、その間に定着ロール12Aおよび12Bを配置するための所定の間隔を置いて、互いの面を平行にして配置されており、両者は複数本(図示例では4本)のシャフト46およびボルトやナット等の締結具を用いて固定的に接続されている。固定側板16L,16Rは、画像定着装置10のほぼすべての部材を支持するものであって、固定側板16L,16R自体は、任意の固定手段によって、所定の位置に固定されている。
固定側板16L,16Rのそれぞれの穴部には、移動側板14L,14Rが、緩衝部材44を介して嵌めこまれている。緩衝部材44は、移動側板14L,14Rが固定側板16L,16Rに対して回転するときの摺動摩擦を軽減するためのものであり、移動側板14L,14Rの全周にわたってほぼ均等に設けられるのが好ましい。緩衝部材44は、移動側板14L,14Rと固定側板16L,16Rとの摩擦を緩衝するものであればよく、樹脂部材やグリース等の潤滑剤を付与してもよいし、ころを介在させるなどの機械的構成を備えてもよい。あるいは、移動側板14L,14Rおよび固定側板16L,16Rの材料および形状の選択により、摺動部の摩擦が十分小さくでき、移動側板14L,14Rの回転に要する力を大きくすることがない場合には、緩衝部材44を設けなくてもよい。
リングギア64L,64Rは、移動側板14L,14Rよりも径の大きい円盤状の部材であり、その外周部にはギアが形成されている。また、リングギア64L,64Rにも、
移動側板14L,14Rに開けられている回転シャフト38A,38Bを保持するための穴部に対応する位置に、同じ形状の穴部が形成されている。リングギア64L,64Rは、移動側板14L,14Rの外側の面(定着ロール12A,12Bと反対側の面)に固定され、移動側板14L,14Rと一体化されている。もちろん、リングギア64L(64R)および移動側板14L(14R)は、一体に成形されたものであってもよい。
リングギア64L,64Rは、固定側板16L,16Rの穴部よりも大きい外径を有しているので、その定着ロール12A(12B)の軸方向の位置は、固定側板16L,16Rの外側の面に当接する位置に定められる。これにより、リングギア64L,64Rと一体化されている移動側板14L,14Rの前記軸方向の内側(定着ロール12A,12B側)に向かう位置が定められており、固定側板16L,16Rの内側にずれることがない。なお、移動側板14L,14Rが回転するときのリングギア64L,64Rと固定側板16L,16Rとの摺動摩擦を軽減するため、リングギア64L,64Rと固定側板16L,16Rとの間の少なくとも一部には、緩衝部材44と同様に、緩衝部材を介在させるのが好ましい。このリングギア64L,64Rは、回転機構22を構成するものであるが、回転機構22としての作用については後に詳述する。
定着ロール保持機構18L,18Rは、定着ロール12Aおよび12Bについて、それぞれの両側の回転シャフト38A,38Aおよび38B,38Bを移動側板14L,14Rに保持するものであって、軸受け48L,48Rと、軸受け止め50と、ニップ圧付勢具52,52とから構成されている。
まず、定着ロール12Aの図1中左側の定着ロール保持機構18Lについて説明する。図1において、定着ロール12Aを保持する左側の軸受け(軸受けホルダ)48Lは、固定側板16Lおよびリングギア64Lに設けられた2つの穴部の一方に、外側(定着ロール12Aと反対側)から挿入されて、左側の回転シャフト38Aを支持している。軸受け48Lの軸方向の位置は、リングギア64Lの穴径よりも大きなホルダ部分によって内側(定着ロール12Aの側)へのずれが防止されており、軸受け48Lの外側に設けられた軸受け止め50によって、外側へのずれが防止されている。
定着ロール12Aの軸受け48Lには、軸受け48Lを定着ロール12Bの方向へ押し付けるニップ圧付勢具52が取り付けられている。ニップ圧付勢具52は、定着ロール12Aおよび12Bによる記録媒体Pのニップ圧(挟持力)を調整する挟持力調整手段であり、軸受け48Lを押し付けることで、軸受け48Lに保持される定着ロール12Aを定着ロール12Bの方向へ押し付けて、定着ロール12Aおよび12Bによる記録媒体Pのニップ圧(挟持圧力)を付勢する。ニップ圧付勢具52は、コイルスプリングをボルトの締め込みによって圧縮させ、その反発力によって軸受け48Lの押圧力を得るように構成されている。このような構成のニップ圧付勢具52は、極簡単な構成で、コイルスプリングの選定およびボルトの締め込み量(コイルスプリングの圧縮量)の調整によって所定の押圧力を得ることができる。なお、ニップ圧付勢具52としては、これ以外にも、エアシリンダを用いる等、公知の押圧手段を利用することができる。
定着ロール12Aの軸受け48Lは、移動側板14Lおよびリングギア64Lの穴部に嵌入された状態において回転不能とされており、かつ、対向する定着ロール12Bの方向、すなわちニップ圧付勢具52によるニップ圧付勢方向(図中、上下方向)にのみスライド移動可能とされている。このような機構は、例えば、次のような構成により実現できる。すなわち、軸受け(ホルダ)48Lとして、移動側板14Lおよびリングギア64Lの穴部への嵌入部分に1対の平行面を有するものを用い、対する移動側板14Lおよびリングギア64Lの穴部には、軸受け48Lの平行面に対応する平行壁を、ニップ圧付勢具52によるニップ圧付勢方向と平行に、軸受け48Lの嵌入部分長さよりも長く形成する。これにより、平行壁間において軸受け48Lは回転不能となり、かつ両平行壁に案内されてニップ圧付勢方向にスライド移動可能となる。
固定側板16Lおよびリングギア64Lの穴部において、軸受け48Lの上下には、それぞれ、軸受け48Lの移動のための隙間54a,54bが設けられている。この隙間54a,54bは、ニップ圧付勢具52によるニップ圧の大小による定着ロール12A(軸受け48L)の移動量、および、移動側板14Lの回転により、定着ロール12Aおよび12Bが上下反転したときの定着ロール12Aおよび12Bの重量による定着ロール12A(軸受け48L)の移動量に対して最適値に設定される。すなわち、定着ロール12B側(定着部側)の隙間54bは、ニップ圧付勢具52からの付勢力による定着ロール12Aの移動を妨げることのないように、定着ロール12A(軸受け48L)の移動量よりもやや広い間隔に設定されている。一方、定着ロール12Bと反対側の隙間54aは小さく設定され、定着ロール12Aの定着ロール12Bと離れる方向への移動を抑制している。
画像定着装置10において、図1の状態から定着ロール12Aおよび12Bが上下反転され、定着ロール12Aが下側となった場合には、定着ロール12Aの軸受け48Lは、定着ロール12Aおよび12Bのロール重量を受けて下方へ移動するが、定着ロール12Bと反対側の隙間54aを小さくすることにより、ロール重量による隙間54a側への移動量を最小限にできる。これにより、定着ロール12Aおよび12Bの上下反転時におけるニップ圧の変動を最小にすることができる。
ニップ圧付勢具52は、定着ロール12Aの図1中右側の定着ロール保持機構18Rにも設けられており、ニップ圧付勢具52,52によって定着ロール12Aの両側を均等に押し付けることにより、定着ロール12Aの軸方向に均等にニップ圧を付勢する。
また、定着ロール12Aの右側の定着ロール保持機構18Rにおける、軸受け48Rの固定側板16Rおよびリングギア64Rへの嵌入部、ならびに固定側板16Rおよびリングギア64Rの穴部の構成も、定着ロール12Aの左側の定着ロール保持機構18Lにおける構成と同様であり、定着ロール12Aが軸方向を保った状態でニップ圧付勢方向へスライド移動する(平行移動する)ことが可能とされている。
定着ロール12Aの右側の定着ロール保持機構18Rにおいては、左側の定着ロール保持機構18Lの軸受け止め50に替えて、スプロケット56Aが軸受け48Rの外側へのずれを防止している。スプロケット56Aは、右側の回転シャフト38Aの端部近傍に取り付けられ、例えば揉み付けねじによって回転シャフト38Aに固定されている。このスプロケット56Aは、定着ロール駆動機構20としての機能を有しているが、これについては後述する。
定着ロール12Bの定着ロール保持機構18L,18Rは、ニップ圧付勢具52が設けられていない以外は、上述の定着ロール12Aの定着ロール保持機構18L,18Rと、基本的に同様の構成を有している。すなわち、軸受け48L,48Rは、移動側板14Lおよびリングギア64Lの穴部に嵌入された状態において回転不能、かつ、対向する定着ロール12Aの方向(図中、上下方向)にスライド移動可能とされており、さらに、定着ロール12Aと反対側の隙間54aが小さく設定されることにより、定着ロール12Bの定着ロール12Aと離れる方向への移動が抑制されている。
なお、図1の例では、定着ロール12Bの軸受け48L,48Rにはニップ圧付勢具52が取り付けられていないが、これは、定着ロール12Aおよび12Bが反転され、定着ロール12Bが上側となったときに、定着ロール12Aおよび12Bによる定着部(定着ロール12Aおよび12Bの接触部)において必要とされるニップ圧が、定着ロール12B自体の重量で得られる場合の例である。もちろん、定着ロール12Bの軸受け48L,48Rにも、定着ロール12Aと同様に、ニップ圧付勢具52が取り付けられていてもよい。
定着ロール駆動機構20は、図1および図3に示すように、定着ロール12A,12Bを回転駆動するための駆動モータおよび減速機60A,60Bと、駆動モータ60A,60Bに取り付けられたスプロケット62A,62Bと、定着ロール12A,12Bの図1中右側の回転シャフト38A,38Bに取り付けられたスプロケット56A,56Bと、駆動モータ側のスプロケット62A,62Bおよび定着ロール側のスプロケット56A,56Bをそれぞれ巻回するチェーン58A,58Bと、図示しない駆動モータ60A,60Bの制御手段とから構成されている。なお、図示していないが、駆動モータ60A,60Bとスプロケット62A,62Bとの間には、減速機が備えられており、駆動モータ60A,60Bの伝動速度を調整している。
駆動モータ60A,60Bは、図1中右側のリングギア64R(移動側板14R)の外側面に取り付けられている。また、駆動モータ60A,60Bは、図示しない制御手段によって制御される。定着ロール駆動機構20を構成する部材は、駆動モータ60A,60Bの制御手段と除くすべてが移動側板14R(リングギア64R)に支持されているので、移動側板14Rが回転した場合にも、定着ロール駆動機構20の構成に異なるところは無く、定着ロール12A,12Bの駆動に影響は無い。
駆動モータ60Aの作動によってスプロケット62Aが回転すると、スプロケット62Aに巻回されたチェーン58Aが周回し、それによってスプロケット56Aが回転して定着ロール12Aが回転する。同様に、駆動モータ60Bの作動によってスプロケット62Bが回転すると、スプロケット62Bに巻回されたチェーン58Bが周回し、スプロケット56Bが回転して定着ロール12Bが回転する。このように定着ロール12Aまたは定着ロール12Bが回転駆動されることにより、定着ロール12Aおよび定着ロール12Bの間に搬送された記録媒体Pが挟持搬送される。
駆動モータ60A,60Bは、定着ロール12A,12Bを、記録媒体Pを搬送する向きに回転させる。図1、図2(A)および図3の例においては、記録媒体Pの画像記録面(以下、単に、記録面とする)に接する側の定着ロール12Aを駆動する。このとき、定着ロール12Bの駆動側のスプロケット62Bはニュートラルとされ、定着ロール12Bは、定着ロール12Aの駆動力によって搬送される記録媒体Pにつれ回りする。このように、記録媒体Pの記録面側の定着ロールを駆動することで、定着時の画像の擦り(画像流れ、ずれ)の発生を抑えることができる。
画像定着装置10において、記録媒体Pの記録面に接触する定着ロールは、移動側板14L,14Rが180度回転することによって取り替えられる。移動側板14L,14Rの回転により、定着ロール12Bが図中上側に配置され、記録媒体Pの記録面側となるときは、駆動モータ60Bによって定着ロール12Bを駆動し、定着ロール12Aはつれ回りさせる。
本実施形態のように、記録面側に配置される定着ロールに対応して駆動するロールを変える場合には、駆動モータ60A,60Bの回転方向は、それぞれ一定の方向に定められ、駆動モータ60A,60Bのどちらを駆動するかが、図示しない駆動モータ60A,60Bの制御手段によって切替えられる。
なお、定着ロール12A,12Bの駆動については、記録媒体Pとの摩擦係数の高い方の定着ロールを駆動するようにしてもよい。記録媒体Pとの摩擦係数の高い方の定着ロールを駆動ロールとすることにより、記録媒体Pの搬送を精度良く行うことができる。この場合、記録面側、非記録面側の配置にかかわらず、定着ロールの表層の構成によって、駆動される定着ロールが1つに決定されるので、定着ロール駆動機構20は、駆動モータ60Aおよび60Bのいずれか一方を備えればよいが、駆動ロールが記録面側(図中上側)のときと、非記録面側(図中下側)ときとで回転方向が異なるので、駆動モータ60Aまたは60Bの制御手段によって、その回転方向が切替えられる。
また、駆動モータ60Aおよび60Bの両方を作動させて、定着ロール12Aおよび12Bの両方を同時に駆動してもよい。定着ロール12Aおよび12Bの両方を駆動する場合には、記録媒体Pの搬送中にせん弾力せん断応力や表面摩擦力当の負荷を与えないために、定着ロール12A,12Bそれぞれの周速度を同一にするように、駆動モータ60Aおよび60Bを制御することが重要である。また、移動側板14L,14Rが回転され、定着ロール12A,12Bの位置が反転されると、定着ロール12A,12Bの回転方向が反対になるので、駆動モータ60A,60Bの制御手段によってその回転方向が切替えられる。
定着ロール駆動機構20において、駆動モータ60A,60Bの動力を定着ロール12A,12Bに伝達する手段としては、上述のチェーンとスプロケットを用いるもの以外にも、ベルト伝動等、公知の伝動手段が利用できる。
また、色材の特性によっては、色材がロール表面に付着することがある。その場合は記録媒体の非通過時に、定着ロール12A,12Bの周速度を0.1〜3%ずらして回転させることにより、ロール自体で付着した色材を除去することも可能である。
回転機構22は、リングギア64L,64Rと、外部に固定された移動側板回転モータ66と、移動側板回転モータ66の減速機構を構成するギア68A、ギア68B、ギア68Cと、図示しない移動側板回転モータ66の制御手段から構成されている。図3には、移動側板14R(リングギア64R)側(図1中右側)における回転機構22を示す。図1および図3に示すように、移動側板回転モータ66、ギア68Aおよび68Bは、移動側板14R(リングギア64R)の側にのみ設けられている。
ギア68Cは、移動側板14L,14Rの両方の外側に、リングギア64L,64Rにそれぞれ係合して設けられており(移動側板14L側のギア68Cは図示しない)、両方のギア68C,68Cは、図示しないシャフトで連結されている。したがって、一方の68Cに伝達された動力は、もう一方の68Cにも伝えられ、移動側板14L,14Rの両方を同じタイミングで同じ角度だけ回転させる。
回転機構22は、移動側板回転モータ66の回転動力が、ギア68A,68Bおよび68C,68Cに順に伝達されることによって、リングギア64L,64Rを回転させ、リングギア64L,64Rと一体化されている移動側板14L,14Rを回転させて、定着ロール12A,12Bの位置を反転させる。移動側板回転モータ66としては、移動側板14L,14Rを、移動側板14L,14Rに支持される定着ロール12A,12B、定着ロール駆動機構20等の部材ごと回転させるのに十分な動力を有し、かつ、回転角度を制御可能なもので、例えばステッピングモータ等が用いられる。
回転機構22は、制御手段によって、移動側板位置決め機構26から得られた移動側板14L,14Rの検知結果に応じて制御される。
移動側板位置決め機構26は、固定側板16Rの所定の2箇所に固定されたリミッタ76,76と、リングギア64Rの所定箇所に固定された当て材78とから構成されている。図3に示すように、リミッタ76,76は、固定側板16R上のリングギア64Rの外側に、リングギア64Rの回転方向に180度を隔てて配置されている。また、当て材78は、リングギア64R上の外周部分に、その一部を外周から突出して配置されており、その突出量は、リミッタ76の位置でリミッタ76のリミットスイッチを押し込むように設定されている。
この移動側板位置決め機構26は、リングギア64Rの回転によって当て材78が移動してリミッタ76に当接し、リミッタ76のリミットスイッチが所定量押し込まれると、移動側板14L,14Rが所定位置に到達したことを検知し、リミッタ76から移動側板回転モータ66の制御手段へ信号を送る。移動側板回転モータ66の制御手段は、リミッタ76からの信号を受け取ると、移動側板回転モータ66の回転を停止させ、これにより、移動側板14L,14Rの回転が完了する。
リミッタ76は、移動側板14R(リングギア64R)の回転方向に180度を隔てて配置されているので、回転機構22および移動側板位置決め機構26によって、移動側板14L,14Rが180度ずつ回転され、移動側板14L,14Rに取り付けられた定着ロール12A,12Bが反転される。
なお、移動側板位置決め機構26としては、上記のような機械的なもの以外にも、リミッタ76および当て材78に代えて受光部および発光部等を備え、光学的な方法により移動側板14L,14Rの回転位置を検知するものを用いてもよい。
ガイド機構24は、紙送りガイド70、ガイド支点72、およびガイドピン74,74から構成されている。図2(A)に示すように、ガイド機構24は、定着ロール12A,12Bの記録媒体Pの搬送方向の上流側および下流側に対称に設けられており、画像定着装置10に搬入された記録媒体Pを、定着ロール12Aおよび12Bによる定着部(定着ロール12Aおよび12Bの接触部)へ案内し、また、定着ロール12Aおよび12Bの定着部を通過した記録媒体Pを、画像定着装置10の外部へ案内する。
ガイド支点72は、定着ロール12Aおよび12Bから略等距離の位置に設けられており、紙送りガイド70は、ガイド支点72の位置から、定着ロール12Aおよび12Bの記録媒体Pの定着部に向けて延在し、定着ロール12A,12Bの軸方向長さと略等幅のガイド面を有している。
紙送りガイド70は、ガイド支点72を支点に揺動自在とされており、その揺動幅は、ガイドピン74によって規制されている。このように、紙送りガイド70を一定角度内で揺動自在とすることで、常に、記録媒体Pが定着ロール12Aおよび12Bの定着部へ入り易いようにされている。また、記録媒体Pが当接したときに柔軟に動くので、記録媒体Pに折れなどの損傷を与えることが無い。
図2(B)に示すように、移動側板14L,14Rが180度回転されて定着ロール12A,12Bが反転されると、紙送りガイド70は、自重により、ガイド支点72を支点にして図中下側に動き、紙送りガイド70の図中上側の面で記録媒体Pを定着部に案内する位置になって、図2(A)のときと同様に、記録媒体Pを適切に案内する。
次に、画像定着装置10の作用を説明する。
色材および樹脂を含有する色材粒子を含むインクを用いて記録された画像の定着において、記録媒体Pとしてアート紙を用いる場合には、硬度が高く、弾性が小さく、表面粗さが小さく、インク離型性が良い定着ロール12Aを、記録媒体Pの記録面に接触させて定着を行う。画像定着装置10の移動側板14L,14Rは、図2(A)に示すように、定着ロール12Aが記録面側(図中上側)となるように予め設定される。
画像が記録され、未定着画像を有する記録媒体Pは、記録面を上にして画像定着装置10に搬入され、上流側(図中右側)の紙送りガイド70によって定着ロール12Aおよび12Bの間の定着部へ案内される。続いて、記録媒体Pは、定着ロール12Aおよび12Bによって挟持搬送されて、加熱および加圧されることにより、記録媒体P上の画像が定着される。
このとき、定着ロール12Aおよび12Bは、ランプヒータ40および図示しない温度調整手段によって所定の温度(例えば、表面温度が80℃)に加熱されている。また、定着ロール12Aおよび12Bによるニップ圧(加圧力)は、ニップ圧付勢具52によって設定されている。また、定着ロール12Aおよび12Bによる記録媒体Pの搬送速度(定着速度)、すなわち定着ロール12Aの回転速度は、定着ロール12Aを駆動する駆動モータ60A(その制御手段)によって制御されている。
定着ロール12Aおよび12Bを通過した記録媒体Pは、下流側(図中左側)の紙送りガイド70に案内されて、画像定着装置10の外部へ搬出される。
記録媒体P上に定着された画像は、記録面に接触した定着ロール12Aに対応する表面粗さを呈する。すなわち、定着ロール12Aは、表層に、硬度が高く、表面粗さが小さく、インク離型性の良いPFA層を有しているので、記録媒体P上に未定着画像を形成するインク中の色材粒子は、定着ロール12Aおよび12Bにおよる加熱加圧時に、定着ロール12Aの表面でほぼ完全に押し潰されて定着される。したがって、定着後の画像面の表面粗さを小さくし、平滑で光沢を発現する画像を得ることができる。
一方、記録媒体Pとして上質紙を用いる場合には、硬度が低く、弾性が大きく、必要に応じて表面粗さが大きい定着ロール12Bを、記録媒体Pの記録面に接触させて定着を行う。画像定着装置10の移動側板14L,14Rは、回転機構22によって図2(A)の状態から180度回転され、図2(B)に示すように、定着ロール12Bが記録面側(図中上側)となるように設定される。
オペレータの指示入力等により、移動側板14L,14Rの回転が指示されると、移動側板回転モータ66の制御手段が、移動側板回転モータ66を作動させる。移動側板回転モータ66の回転により、リングギア64L,64Rおよび移動側板14L,14Rが回転される。リングギア64Rに取り付けられた当て材78がリミッタ76に当接することにより、リングギア64L,64Rおよび移動側板14L,14Rが所定位置に到達したことが、リミッタ76によって検知されると、その結果を受けて移動側板回転モータ66の制御手段が移動側板回転モータ66を停止させる。以上により、移動側板14L,14Rは180度回転され、定着ロール12Aおよび12Bが反転されて、図2(B)の状態とされる。
図2(B)の状態とされた画像定着装置10において、未定着画像を有する上質紙の記録媒体Pは、上述の図2(A)の場合と同様にして、定着ロール12Aおよび12Bによって加熱加圧されながら搬送され、記録媒体P上の未定着画像が定着されて、記録媒体Pが画像定着装置10から排出される。ここでは、定着ロール12A,12Bの温度やニップ圧、定着速度は、図1(A)の場合と同様であるが、記録媒体Pの記録面には定着ロール12Bが接触して定着が行われる。
このようにして得られた記録媒体P上の定着画像は、記録面に接触した定着ロール12Bに対応する表面粗さを呈する。すなわち、定着ロール12Bは、表層に、硬度が低く、表面粗さが大きいシリコーンゴム層を有しているので、記録媒体P上に未定着画像を形成するインク中の色材粒子は、定着ロール12Aおよび12Bにおよる加熱加圧時においても、定着ロール12Bの表面によって押し潰されることがほとんど無く、融着はするものの、粒子の粒状性が残った状態で定着される。そのため、定着後の画像面の表面粗さを大きいまま維持し、光沢を発現しない画像を得ることができる。
このように、アート紙上の画像に望まれる光沢を発現する画像を得ることのできる定着ロール12Aと、上質紙上の画像に望まれる光沢を抑えた画像を得ることのできる定着ロール12Bとを備え、記録媒体Pがアート紙であるか、上質紙であるかによって、定着ロール12Aおよび定着ロール12Bのうち、適した方の定着ロールを画像記録面側に配置して、適切な定着ロールを画像記録面に接触させて定着を行うことで、記録媒体に応じた光沢性を有する画像を得ることができる。
したがって、色材および樹脂を含有する色材粒子を含むインクを用いて、インクジェット方式等によって記録された画像を、画像定着装置10によって定着することにより、オフセット印刷による画像と同様に、アート紙には光沢性の高い画像を、上質紙には光沢性の低い画像を記録することができ、オフセット印刷の本紙校正適性を満たすことができる。
なお、上述の例では、色材および樹脂を含有する色材粒子を少なくとも含むインクを用いて形成された画像を定着する画像定着装置の説明をしたが、これを、液体トナーまたは乾式トナーを用いて形成した画像を定着する装置に適用することも可能である。
また、上述の例では、定着ロール12A,12Bとして、それらの表層の構成が、硬度、表面粗さおよび材質のすべてがそれぞれ異なるものを用いることによって、定着後の画像に望まれる2種類の光沢性を付与しているが、硬度、表面粗さおよび材質の少なくとも1つを異ならしめた2つの定着ロールを使用することにより、記録媒体種に対応する所望の光沢性を付与できるものとすればよい。
また、上述の例では、定着ロール12Aおよび定着ロール12Bの何れを画像記録面側に配置する場合にも、定着ロール12A,12Bの加熱温度、加圧力(ニップ圧)、定着速度等の定着条件を同一としたが、定着ロール12A,12Bの選択と合わせて、加熱温度、加圧力等の定着条件も、記録媒体Pの種類に応じて設定することで、更に広範多種の記録媒体種(紙質等)に対応することができ、オフセット印刷の本紙校正適性を増すことができる。
例えば、上記の例では、ランプヒータ40は、定着ロール12Aおよび12Bの両方に備えられているが、定着条件の設定に応じて、定着ロール12Aまたは12Bのいずれか一方にのみ備えられていてもよいし、両方に備えた上で、ランプヒータ40の使用、不使用を切替えるようにしてもよい。また、ランプヒータ40の温度を定着ロール12Aおよび12Bで異なる温度としてもよい。
また、上述のように、記録媒体Pの種類に応じて、その記録媒体Pに適した定着ロールを画像記録面に接触させることにより、オフセット印刷に対応する画像を得ることができるなどの効果を得るが、同一の種類の記録媒体Pに記録された画像の定着において、定着ロール12Aまたは12Bを切替えることによって、同一の種類の記録媒体Pに、異なる光沢性を有する画像を得ることもできる。
上述の例では、記録媒体Pの搬送経路に対し、定着ロール12Aおよび12Bを反転させることによって、記録媒体Pの記録面に接する定着ロールを変えるものとした。これは、未定着のインク画像を有する記録媒体Pを、その画像に、画像擦り、画像流れ(画像のずれ)や等の不良を全く発生させることなく反転させるのは困難であり、また、未定着のインク画像を下向きにして搬送するのは困難であり、そのような反転装置は、複数対のロールやガイド板が必要になって、複雑なものとなってしまうからである。
本実施形態のように、定着ロール12Aおよび12Bを反転させれば、記録媒体Pの表裏を反転させることなく、所望の光沢性を得るための定着ロールを画像記録面に接触させることができ、記録媒体Pを反転する形態に比べて、装置のコンパクト化、低コスト化を実現できる点で有利である。
しかしながら、本発明はこれに限定されず、記録媒体Pの画像記録面と、記録媒体Pに望まれる画像を得るために適切な定着ロールとを接触させることができれば、その構成は適宜変更してもよく、画質に影響を与えずに記録媒体Pを反転させる手段を備え、この反転手段を制御することにより、画像記録面に接する定着ロールを選択可能としてもよい。
次に、本発明の画像定着装置が対象とする、画像記録に用いられるインクについて説明する。本発明の画像定着装置は、色材および樹脂を含有する色材粒子を含むインクを用いて記録された画像の定着装置として用いられることにより、定着後の画像の表面粗さを変化させ、その光沢性を変化させることができるという特有の効果を発揮する。この、色材および樹脂を含有する色材粒子を含むインクの好適な例としては、以下のようなものが例示される。
すなわち、色材および樹脂を含有する色材粒子を含むインクとしては、粒径が0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜2μm、さらに好ましくは0.8〜1.5μmの色材粒子を水溶媒または非水溶媒に分散させたものが例示される。色材粒子は、顔料または染料等の色材と、定着性を向上させるための分散樹脂等の樹脂とを含有するものである。色材粒子の構成としては、色材として顔料を用いる場合には、樹脂材料で顔料を被覆して樹脂被覆粒子とする方法が一般的であり、染料を用いる場合には、分散樹脂粒子を色材で着色して着色粒子とする方法が一般的である。
色材としては、従来からインクジェットインク組成物、印刷用(油性)インキ組成物、あるいは静電写真(電子写真)用液体現像剤に用いられている顔料および染料が、特に限定することなく使用される。
例えば、色材として用いる顔料としては、無機顔料、有機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ぺリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、等が例示される。
また、例えば、色材として用いる染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ペンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料、等の油溶性染料が好適な例として挙げられる。
分散樹脂としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
次に、本発明の画像定着装置を利用した本発明のインクジェット記録装置の一実施形態について説明する。
本発明の画像定着装置は、色材および樹脂を含有する色材粒子を少なくとも含むインクや、液体トナーまたは乾式トナーを用いて画像を記録する各種の画像記録装置において、その画像定着手段として用いることにより、所望の光沢性を有する画像を形成することができる。たとえば、上記のインクを用いる各種方式のインクジェット記録装置や、液体トナーまたは乾式トナーを用いる電子写真方式の記録装置に適用可能である。以下には、好適な例として、高画質な画像記録が可能な静電式のインクジェット記録装置について説明する。
図4は、本発明インクジェット記録装置の一実施形態である静電式インクジェット記録装置100の概略構成を示す模式図である。同図に示すインクジェット記録装置100は、静電力により、帯電した色材粒子(帯電微粒子)を含むインクの吐出を制御し、記録媒体P上に4色印刷をしてフルカラー画像を記録する静電式のインクジェット記録装置であり、記録媒体Pの記録媒体保持手段102、記録媒体搬送手段104と、記録手段106と、本発明の画像定着装置10と、溶媒回収手段108と、筐体110とを備えている。
記録媒体Pの記録媒体保持手段102は、記録前の記録媒体Pを保持する給紙トレイ114と、ピックアップロール116と、記録後の記録媒体Pを保持する排紙トレイ118とを備えている。
給紙トレイ114は、記録に供される複数枚の記録媒体Pを保持するものであって、図4中、筐体110の左面下部から筐体110の内部に挿入されて装着されている。ピックアップロール116は、給紙トレイ114の装着部の先端部(図中、右端部)近傍に配置されている。画像の記録時には、ピックアップロール116により、記録媒体Pが給紙トレイ114から1枚ずつ取り出され、記録媒体Pの記録媒体搬送手段104に供給される。ピックアップロール116の近傍には、重ねてストックされている記録媒体Pの分離を容易にするために、記録媒体Pの除電を行う除電ブラシや除電ロール、エア吹きつけブロアー等が備えられているのが好ましい。
排紙トレイ118は、画像が形成された記録媒体Pを保持するものであって、筐体110内部の記録媒体Pの搬送経路の終端に設けられ、その先端部(記録媒体Pの搬送方向先端側)は筐体110の外部に位置している。記録後の記録媒体Pは、記録媒体搬送手段104により搬送されて、排紙トレイ118に排紙され、排紙トレイ118に順次重ねてストックされる。
記録媒体搬送手段104は、記録媒体Pを、給紙トレイ114から排紙トレイ118まで所定の経路に沿って搬送するものであり、搬送ロール対120と、搬送ベルト122と、ベルトロール124a、124b、124cと、記録媒体Pの帯電器126および除電器128と、分離爪130と、ガイド132とを備えている。
搬送ロール対120は、ピックアップロール116と搬送ベルト122との間の位置に設けられている。ピックアップロール116により給紙トレイ114から取り出された記録媒体Pは、この搬送ロール対120により挟持搬送され、搬送ベルト122上の所定の位置に供給される。この搬送ロール対120は、ソフトニップロールを使用することが好ましく、それにより高速給紙を行う場合にも正確な位置精度で給紙が可能となる。
記録媒体Pの帯電器126は、スコロトロン帯電器134と、負の高圧電源136とを備えている。スコロトロン帯電器134は、記録媒体Pの搬送経路上の、搬送ロール対120と記録手段106との間の位置に、搬送ベルト122の表面に対向して配置されている。また、スコロトロン帯電器134は、負の高圧電源136の負側の端子に接続されており、負の高圧電源136の正側の端子は接地されている。
記録媒体Pの表面は、負の高圧電源136に接続されたスコロトロン帯電器134により所定の負の高電位に均一に帯電され、記録に必要な一定のDCバイアス電圧(例えば、約−1.5kV)が印加された状態となる。また、これにより、記録媒体Pは、搬送ベルト122の絶縁性を有する表面上に静電吸着される。
搬送ベルト122は、ループ状のエンドレスベルトであり、3つのベルトロール124a、124b、124cによって三角形状に張架されている。ベルトロール124a、124b、124cのうちの少なくとも1つは図示していない駆動源に接続されており、記録時には、所定の速度で回転駆動される。これにより、搬送ベルト122は、図中の矢印方向(図中、半時計回り)に周回し、搬送ベルト122に静電吸着している記録媒体Pを所定の速度で搬送する。
搬送ベルト122は、記録媒体Pが静電吸着される側の面(表面)が絶縁性、ベルトロール124a、124b、124cと接触する側の面(裏面)が導電性のものである。ベルトロール124a、124b、124cのうちの1つ(図示例では、ベルトロール124b)は接地されており、これにより、搬送ベルト122は、記録手段106に対向する位置において、インクジェットヘッドの対向電極としても機能する。
記録媒体Pの除電器128は、コロトロン除電器138と、交流電圧源140と、高圧電源142とを備えている。コロトロン除電器138は、記録手段106の記録媒体P搬送方向の下流側に、搬送ベルト122の表面に対向して配置されている。コロトロン除電器138は、交流電圧源140を介して高圧電源142に接続されており、高圧電源142の他端は接地されている。
記録後の記録媒体Pは、コロトロン帯電器52により除電された後、その下流側に配置された分離爪130によって搬送ベルト122上から分離される。搬送ベルト122上から分離された記録媒体Pは、ガイド132に沿って画像定着装置10に供給され、画像定着装置10における定着処理を経て、排紙トレイ118に排紙される。
記録手段106は、帯電した色材粒子を含むインクを用い、画像データに応じてインクの吐出を静電力により制御して、記録媒体P上に、画像データに応じた画像を記録するものであり、インクジェットヘッド144と、ヘッドドライバ146と、インク循環機構148と、プラテン150と、記録媒体Pの位置検出器152とを備えている。
インクジェットヘッド144は、搬送ベルト122による記録媒体Pの搬送経路において、記録媒体Pが安定した平面状態で搬送される位置に、そのインク吐出部が搬送ベルト122の表面(搬送ベルト122の表面に保持される記録媒体Pの表面)と所定の距離になるように配置されている。図示例では、インクジェットヘッド144は、ベルトロール124bおよび124cの間の搬送ベルト122に対向して配置されている。
また、プラテン150は、搬送ベルト122を挟んでインクジェットヘッド144と対向する位置に配置されている。すなわち図示例では、ベルトロール124bおよび124cの間に配置されている。プラテン36は、ベルトロール124bおよび124cの外周を結ぶ線よりインクジェットヘッド144側に張り出すように配置されるのも好ましい。そのように配置することにより、搬送ベルト122に張力を付与して、搬送ベルト122のばたつきを抑えることができる。
インクジェットヘッド144は、同時に1行分の画像を記録することが可能なラインヘッドであり、フルカラー画像を記録するためのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(B)の4色の吐出ヘッドを備えている。各色の吐出ヘッドは、基本的に同様の構成を有しているので、以下ではその1色の吐出ヘッド160について説明する。
図5は、静電式インクジェットヘッド144における吐出ヘッド160の具体的な構造を説明する模式図であり、図5(A)は、吐出ヘッド160の一部を示す模式的断面図、図5(B)は、図5(A)のV−V線における模式的断面図である。吐出ヘッド160は、複数のノズルを2次元的に備えるマルチチャンネルヘッドであるが、ここでは、その構成を明確に示すために、2つの吐出部のみを示してある。
吐出ヘッド160は、ヘッド基板162と、インクガイド164と、ノズル基板166と、吐出電極を構成する吐出電極168と、浮遊導電板176とを備えている。吐出ヘッド160は、インク滴Rの吐出(飛翔)ポイントとなるインクガイド164の先端が、対向電極となる記録媒体Pを支持する搬送ベルト122と対向するように配置されている。
ヘッド基板162およびノズル基板166は、吐出ヘッド160の全ノズルに共通な平板基板であり、絶縁性材料から構成されている。ヘッド基板162およびノズル基板166は、所定の間隔をあけて配置され、その間にインク流路178が形成されている。インク流路178内のインクQは、吐出電極168に印加される電圧と同極性に帯電した色材粒子を含み、記録時には、インク循環機構148(図4参照)によって、所定方向、図5(A)に示す例ではインク流路178内を右側から左側(図中矢印a方向)へ向かって所定の速度(例えば、200mm/sのインク流)で循環される。以下では、インク中の色材粒子が正帯電している場合を例にとって説明する。
ノズル基板166には、インクQの吐出口となるノズル174が穿孔されており、このノズル174は、所定の間隔で2次元的に複数配置されている。また、ノズル174の中央部には、インクQの吐出(飛翔)ポイントを定めるためのインクガイド164が配置されている。
インクガイド164は、突状先端部分164aを持つ所定厚みの絶縁性樹脂製平板からなり、各ノズル174に対応する位置に、ヘッド基板162の上に配置されている。インクガイド164は、同じ列(図5(A)における左右方向、図5(B)における紙面垂直方向)に配列される複数のインクガイド164に共通の基部164bを有しており、この基部164bがヘッド基板162上に、浮遊導電板176を挟んで固定されている。
また、インクガイド164の先端部分164aは、吐出ヘッド160の記録媒体P(搬送ベルト122)側の最表面から突出するように配置されている。先端部分164aの形状および構成は、インクQ(インク滴R)の吐出ポイントを安定させ、かつ、先端部分164aにおいて、インクQを十分に供給し、インクQ中の色材粒子を好ましい状態に濃縮させることができるように設定される。例えば、先端部分164aを吐出方向に向けて次第に細くした形状のものや、インク案内溝となる切り欠きを図中上下方向に形成したもの、先端部分84aの誘電率を実質的に大きくするために、先端部分164aに金属を蒸着したものなどが好適である。
ノズル基板166の記録媒体P側の面(図中、上面)には、各ノズル174を囲むように、吐出電極168が配置されている。また、ノズル基板166の記録媒体P側には、吐出電極168の上方(上面)を覆う絶縁層170aと、吐出電極168の上方に絶縁層170aを介して配置されるシート状のガード電極172と、ガード電極172の上面を覆う絶縁層170bとが設けられている。
吐出電極168は、ノズル基板166に開孔されたノズル174の周囲を囲むように、ノズル基板166の図中上側、すなわち記録媒体P側の表面に、吐出部毎にリング状に、すなわち円形電極として配置されている。なお、吐出電極168の電極形状は、円形電極に限定されず、略円形であっても、分割円形電極であっても、平行電極または略平行電極であっても良い。
吐出電極168は、ヘッドドライバ146によって制御され、画像データに応じて所定のパルス電圧が印加される。上述したように、インクガイド164と対向する位置には、インク中の帯電した色材粒子と極性が反対となる電圧に帯電された記録媒体Pが、搬送ベルト122に保持されて一定速度で搬送される。記録媒体Pは負の高電圧(例えば、−1500V)に帯電されており、吐出電極168との間に、インクQを吐出させない程度の所定の電界が形成されている。
吐出電極168が吐出オフ状態(吐出待機状態)のときは、パルス電圧は0Vまたは低電圧とされる。この状態では、吐出部の電界強度はバイアス電圧(または、バイアス電圧にオフ状態のパルス電圧が重畳された電圧)による電界強度となっており、これはインクQの吐出に必要な強度よりも低く設定されているため、インクQの吐出は行われない。しかし、この吐出待機状態の低電界により、ノズル174の内部においてインク中の色材粒子がインクガイド164の先端部分176aに濃縮する。
吐出電極168が吐出オン状態のときは、パルス電圧が印加され、バイアス電圧に高電圧のパルス電圧(例えば、400〜600V)が重畳されて、吐出部の電界強度はインクQが吐出するのに十分な強度となり、インクガイド164の先端部分176aに濃縮されたインクQがインク滴Rとして飛翔する。このインク滴Rのサイズは極めて小さいため、解像度の高い、高画質な画像記録を行うことができる。
このように、画像データに応じて、記録媒体Pの全幅に亘って配置された各吐出部の吐出電極168のオン、オフが制御され、所定速度で搬送される記録媒体Pに対して所定のタイミングでインク吐出が行われることにより、記録媒体Pに2次元画像が記録される。
ガード電極172は、隣接する吐出部の吐出電極168の間に配置され、隣接する吐出部のインクガイド164の間に生じる電界干渉を抑制するためのものである。ガード電極172は、吐出ヘッド160の全吐出部に共通な金属板などのシート状の電極であり、2次元的に配列されている各ノズル174の周囲に形成された吐出電極168に相当する部分が穿孔されている。ガード電極172を設けることによって、ノズル174を高密度に配置した場合にも、隣接するノズル174の電界の影響を最小限にし、ドットサイズおよびドットの描画位置を常に安定して保つことができる。
ヘッド基板162のインク流路178側の表面には、浮遊導電板176が配置されている。浮遊導電板176は、電気的に絶縁状態(ハイインピーダンス状態)とされており、画像の記録時に、吐出部に印加された電圧値に応じて、誘起された誘導電圧を発生し、インク流路178内のインクQにおいて、その色材粒子をノズル基板166側へ泳動させる。また、浮遊導電板176の表面には、電気絶縁性である被覆膜(図示せず)が形成されており、インクへの電荷注入等によりインクの物性や成分が不安定化することが防止されている。この絶縁性被覆膜は、インクに対して耐腐食性を有するものが用いられる。
浮遊導電板176を設けることにより、インク流路178内のインクQ中の色材粒子をノズル基板166側へ泳動させて、ノズル基板166のノズル174を通過するインクQ内の色材粒子の濃度を所定濃度に高めることができ、インクガイド164の先端部分84aに濃縮させて、インク液滴Rとして吐出させるインクQ内の色材粒子の濃度を所定濃度に安定させることができる。
なお、図示例においては、吐出電極を単層電極構造としているが、これ以外にも、例えば、列方向に接続された第1吐出電極と、行方向に接続された第2吐出電極とを備える2層電極構造とし、第1吐出電極と第2吐出電極とをマトリクス状に配列してマトリクス駆動を行うものとしてもよい。このようなマトリクス駆動方式によれば、吐出電極の高集積化とドライバ配線の簡素化の両方を同時に実現できる。
インク循環機構148は、インクタンク154と、ポンプ(図示省略)と、インクの供給路および回収路156とを備えている。インクタンク154は、筐体110内部の底面上に配置され、インクの供給路および回収路156を介してインクジェットヘッド144と接続されている。
インクタンク154内には、各色の色材粒子と、これを分散させる分散溶媒とを含む4色のインクが保持されている。インクタンク154内の各色のインクは、ポンプにより、インクの供給路156を介して、インクジェットヘッド144の各色の吐出ヘッドに供給される。また、画像記録に使用されなかった余分な各色のインクは、ポンプにより、インクの回収路156を介して各色のインクタンク154内に回収される。
インクジェット記録装置100においては、インクQとして、上述した、画像定着装置10での定着に好適な構成を有するインクQであって、さらに、以下のような構成を有するインクが好適に用いられる。
すなわち、インクQとしては、粒径0.1〜5μm程度の帯電した色材粒子(着色荷電粒子)を溶媒(キャリア液)中に分散したものを用いる。インク中には、色材粒子とともに、印刷後の画像の定着性を向上させるための分散樹脂粒子を、適宜含有させてもよい。キャリア液は、高い電気抵抗率(109 Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上、また、好ましくは1016Ω・cm以下)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であることが好ましい。電気抵抗率の高いキャリア液を使用すると、吐出電極によって印加される電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けることを少なくでき、荷電粒子(帯電微粒子成分)の濃度を高めることができ、荷電粒子を濃縮することができる。また、電気抵抗率の高いキャリア液は、隣接する記録電極間での電気的導通の防止にも寄与し得る。また、このような程度の電気低効率の液体からなるインクを用いると、低電界下でも、インクの吐出を良好に行うことができる。
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下である。比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。このような比誘電率の範囲とすることによって、誘電性液体中の荷電粒子に有効に電界が作用され、泳動が起こりやすくなる。それにより、溶媒の分極を抑え、電界が緩和されることを抑えることができ、滲みの少ない良好な画像濃度のドットを形成することができる。
誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
インク中に分散された色材粒子の含有量(着色粒子および/または樹脂粒子の合計含有量)は、印刷画像濃度、均一な分散液の形成、吐出ヘッドでのインクの目詰まりの抑制という観点から、インク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、さらに好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。
また、誘電性溶媒中に分散された色材粒子および/または樹脂粒子等のインク粒子の平均粒径は、0.1μm〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2μm〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4μm〜1.0μmの範囲である。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
なお、インク中のインク粒子(分散樹脂粒子および/または着色粒子あるいは色材粒子)は、好ましくは正荷電または負荷電の検電性粒子である。
これらのインク粒子に検電性を付与するには、湿式静電写真用現像剤の技術を適宜利用することで達成可能である。具体的には、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の検電材料および他の添加剤を用いることで行われる。
また、インク組成物として、粘度は、0.5〜5mPa・secの範囲が好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、さらに好ましくは0.7〜2.0mPa・secの範囲である。着色粒子は、荷電を有し、必要に応じて電子写真用液体現像剤に用いられている種々の荷電制御剤が使用でき、その荷電量は5〜200μC/gの範囲が望ましく、より好ましくは10〜150μC/g、さらに好ましくは15〜100μC/gの範囲である。また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化する事もあり、下記に定義する分配率Pが、50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、インク組成物の電気伝導度、σ2は、インク組成物を遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなインク組成物とすることによって、荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
一方、インク組成物の電気伝導度σ1は、100〜3000pS/cmの範囲が好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、さらに好ましくは200〜2000pS/cmの範囲である。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、吐出電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。また、インク組成物の表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/mさらに好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、吐出電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
記録媒体Pの位置検出器152は、フォトセンサ等の従来公知の位置検出手段であり、記録媒体Pの搬送経路上の、帯電器126とインクジェットヘッド144との間の位置で、記録媒体Pが搬送される搬送ベルト122の表面に対向する位置に配置されている。位置検出器152により検出された記録媒体Pの位置情報はヘッドドライバ146に供給される。
ヘッドドライバ146は、インクジェットヘッド144のドライバであって、インクジェットヘッド144と駆動信号ケーブルを介して接続されている。図示例では、ヘッドドライバ146は、筐体110内部の図中右面に取り付けられている。ヘッドドライバ146には、外部装置から画像データが入力され、位置検出器152から記録媒体Pの位置情報が入力される。そして、ヘッドドライバ146により、記録媒体Pの位置情報に従って、インクジェットヘッド144の各色の吐出ヘッドの吐出タイミングが制御されつつ、画像データに応じて各色の吐出ヘッドから各色のインクが吐出され、記録媒体P上には、画像データに対応したフルカラー画像が記録される。
画像定着装置10は、本発明に係る画像定着装置であり、その構成は、図1〜図3に示して先に詳述した通りである。すなわち、記録媒体Pの種類に応じて、定着ロール12A,12Bの何れかが、記録媒体Pの画像記録面側となるように配置され、記録媒体Pを加熱加圧しながら挟持搬送することにより、記録媒体P上の画像を定着する。
ここで、インクジェット記録装置100において、画像定着装置10の移動側板回転モータ66および駆動モータ60A,60Bは、オペレータからの指示入力を受けて、図示しない制御手段によって自動制御される。すなわち、記録開始に先立って、オペレータによって、記録媒体Pがアート紙であることが入力されていた場合には、制御手段が移動側板回転モータ66を作動させて、定着ロール12Aが記録媒体Pの記録面側となるように移動側板14L,14Rを回転させる。そして、制御手段は、駆動モータ60Aを作動させて、定着ロール12Aを回転駆動させる。
一方、オペレータによって、記録媒体Pが上質紙であることが入力されていた場合には、制御手段が移動側板回転モータ66を作動させて、定着ロール12Bが記録媒体Pの記録面側となるように移動側板14L,14Rを回転させる。そして、制御手段は、駆動モータ60Bを作動させて、定着ロール12Bを回転駆動させる。
溶媒回収手段108は、インクジェットヘッド144から記録媒体P上に吐出されたインクから蒸発する分散溶媒や、画像の定着時にインクから蒸発する分散溶媒等を回収するもので、活性炭フィルタ180と、排出ファン182とを備えている。活性炭フィルタ180は、筐体110の図中、上側の裏面に取り付けられており、排出ファン182は、活性炭フィルタ180の上に取り付けられている。
インクジェットヘッド114から吐出されるインクからのインク溶媒の自然蒸発、記録媒体P上の未定着画像を形成するインク溶媒の自然蒸発、および、画像定着装置10における定着時に発生するインク溶媒の蒸発によって生じる、筐体110内部の分散溶媒成分を含む空気は、排出ファン182により回収され、活性炭フィルタ180を通過することにより、その溶媒成分が活性炭フィルタ180に吸着して除去されて、除去後の空気が筐体110の外部に排出される。
以下、インクジェット記録装置100の動作を説明する。
記録開始に先立って、まず、オペレータによって、図示しない制御手段に記録媒体Pの種類が入力され、制御手段によって、画像定着装置10の定着ロール12A,12Bの配置が設定される。
記録が開始時には、給紙トレイ114に収納された記録媒体Pがピックアップロール116により1枚ずつ取り出され、搬送ロール対120により挟持搬送されて搬送ベルト122上の所定位置に供給される。搬送ベルト122上に供給された記録媒体Pは、帯電器126により負の高電位に帯電され、搬送ベルト122の表面に静電吸着される。
搬送ベルト122の表面に静電吸着された記録媒体Pは、搬送ベルト122の移動とともに所定の一定速度で移動されつつ、インクジェットヘッド144により、その表面に画像データに対応した画像が記録される。
画像記録後の記録媒体Pは、除電器128により除電され、分離爪130により搬送ベルト122から分離され、ガイド132に沿って画像定着装置10に供給される。画像定着装置10では、記録媒体Pの種類に対応する定着ロール12Aまたは12Bが画像記録面に接触しながら、記録媒体Pを挟持搬送し、加熱加圧することによって画像を定着する。
画像が定着された記録媒体Pは、画像定着装置10から排出され、排紙トレイ118内にストックされる。このようにして得られた記録媒体P上の画像は、記録媒体Pの種類に対応する光沢を発現し、オフセット印刷による画像と同等の質感を有する画像となっている。
次に、本発明の画像定着装置の他の実施形態について説明する。上述の例では、定着ロール12Aおよび12Bの2つの定着ロールを備える定着ユニットを有し、定着ロール12Aおよび12Bの位置を記録媒体Pの搬送面に対して反転させることにより、記録媒体Pの画像記録面に接する定着ロールを定着ロール12Aおよび定着ロール12Bのどちらかに設定したが、本実施形態では、3つの定着ロールを備える定着ユニットを有し、その定着ユニットを搬送面に対して上下動させることにより、画像記録面側の定着ロールを設定する。
図6(A)および(B)は、本発明の画像定着装置の他の実施形態である画像定着装置80の定着ユニット(定着ロール部分)82の構成を概念的に示す図である。画像定着装置80は、定着ユニット82として、図1〜3の画像定着装置10における定着ロール12Aおよび12Bに加えて、定着ロール12Cを備えている。定着ロール12A,12B,12Cは、それぞれの回転軸が記録媒体Pの搬送方向に直交する向き(図中、紙面に垂直方向)で、記録媒体Pの搬送面に対して垂直方向(図中、上下方向)に順に隣接して配列され、各定着ロールの両端部が一対の移動側板14L,14Rに軸支されている。また、画像定着装置80は、定着ユニット82を記録媒体Pの搬送面に直交する方向に平行移動する定着ユニット移動手段として、移動側板14L,14Rを平行移動する平行移動機構(図示しない)と、一対の固定側板16L(16R)とを有しており、さらに、定着ロール12A,12B,12Cの1つ以上には、上述の例と同様の定着ロール駆動手段が備えられている。
定着ロール12Aおよび12Bは、画像定着装置10における定着ロール12Aおよび12Bと同様のものであり、内部にランプヒータを備える熱ロールである。
定着ロール12Cは、定着ロール12A,12Bと基本的に同様の構成を有する熱ロールであるが、定着ロール12Cは、記録媒体Pの画像記録面には接触しないので、その層構成は、適度な硬度、弾性等を有するように適宜設定されればよい。例えば、定着ロール12Aまたは12Bと同じ層構成としてもよいし、どちらとも異なるものとしてもよい。
定着ユニット82において、定着ロール12Aと定着ロール12Bとの間、および、定着ロール12Bと定着ロール12Cとの間は、それぞれ定着部として機能する。すなわち、画像記録面を上側にして搬送されてきた記録媒体Pは、定着ロール12Aおよび12Bの間、または、定着ロール12Bおよび12Cの間のいずれかで挟持搬送されることにより、記録媒体P上の未定着画像が定着される。
定着ロール12A,12B,12Cを回転駆動する定着ロール駆動手段は、図1の例と同様に、各定着ロール用の駆動モータと、駆動モータの動力を定着ロールに伝動する公知の伝動手段によって構成される。定着ロール12A,12B,12Cのいずれの定着ロールを駆動するかは、上述の例と同様に、記録面と反対の面側の定着ロールを駆動する方法、記録媒体Pとの摩擦係数の高い方の定着ロールを駆動する方法、定着部を構成する2つの定着ロールの両方を駆動する方法などから選択できる。
特に、本実施形態の場合には、定着ロール12Aと定着ロール12Bとの間で定着を行う場合と、定着ロール12Bと定着ロール12Cとの間で定着を行う場合とでは、定着ロール12Bのみ回転の向きが変わるので、例えば、定着ロール12Aおよび定着ロール12Cに一方向に回転させる駆動手段を設け、定着ロール12Bは常につれ回りするようにしてもよい。この場合、正逆回転の切替え制御が不要なので、駆動手段の構成を単純なものにできる。あるいは、駆動手段を定着ロール12Bにのみ設け、定着ロール12Bの回転方向を正逆に切替えるようにし、定着ロール12Aおよび定着ロール12Cをアイドルロールとしてもよい。この場合、駆動モータ等の駆動手段は1つでよいため装置の小型軽量化を図ることができる。
定着ユニット82の移動手段は、オペレータの指示等に応じて、定着ユニット82の2つの定着部、すなわち、定着ロール12Aと定着ロール12Bとの間、および、定着ロール12Bと定着ロール12Cとの間のいずれかを、記録媒体Pの搬送経路上に位置するように、定着ユニット82を記録媒体Pの搬送面に直交する方向(図中上下方向)に平行移動する。定着ユニット82の移動手段としては、例えば、モータやエアシリンダ、油圧シリンダ等の駆動源と、リニアガイド等のスライド機構とを組み合わせたものが利用される。
記録媒体Pは、画像記録面を上にして、図中右から左へと搬送される。定着ユニット82の移動手段によって、定着ユニット82の定着ロール12Aおよび12Bの間の定着部が搬送経路上に配置されている場合には、記録媒体Pの画像は、定着ロール12Aと接触して定着される。したがって、定着後の画像は、定着ロール12Aの表層の特性に対応する表面粗さとなる。一方、定着ユニット82の移動手段によって、定着ロール12Bおよび12Cの間の定着部が記録媒体Pの搬送経路上に配置されている場合には、記録媒体P上の画像記録面は定着ロール12Bと接触して定着されるため、定着後の画像は、定着ロール12Bの表層の特性に対応する表面粗さとなる。
色材および樹脂を含有する色材粒子を含むインクを用いて記録された画像の定着において、記録媒体Pとしてアート紙を用いる場合には、図6(A)に示すように、定着ロール12Aが画像記録面側に配置される。定着ロール12Aは、表層が、硬度が高く、弾性が小さく、表面粗さが小さく、インク離型性の良い構成とされているので、定着ロール12Aおよび12Bによって加熱加圧定着された画像の表面粗さは小さくなり、光沢性の高い画像が得られる。これにより、オフセット印刷によってアート紙に記録された画像と同等の画質(質感)を有する画像を形成することができる。
また、記録媒体Pとして上質紙を用いる場合には、図6(B)に示すように、定着ロール12Bが画像記録面側に配置される。定着ロール12Bは、表層が、硬度が低く、弾性が大きく、表面粗さが大きい構成とされているので、定着ロール12Bおよび12Cによって加熱加圧定着された画像の表面粗さは大きいままとなり、光沢性の低い画像が得られる。これにより、オフセット印刷によって上質紙に記録された画像と同等の画質(質感)を有する画像を形成することができる。
なお、図6の例では、定着ロール12A,12B,12Cが、記録媒体Pの搬送面に垂直な一直線上に並んで配置されている。このように配列することで、定着部における記録媒体Pの搬送経路が直線状となり、記録媒体Pへの負荷が最小となって、定着時の記録媒体Pの伸びや折れ、画像擦り等を抑止することができる点で好ましい。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、定着時に記録媒体Pや記録媒体P上の画像に不良を生じさせない範囲において、定着ユニット82の各定着部を構成する2つの定着ロールの軸を結ぶ線が、定着部前後の記録媒体Pの搬送面に対して鈍角または鋭角を成すように、各定着ロールが配列されてもよい。この場合にも、各定着部は、記録媒体Pの搬送面に垂直な方向に順に(搬送方向にはずらして)配置されるので、定着ユニット82の移動手段は、上記と同様に、定着ユニット82を記録媒体Pの搬送面に垂直な方向に平行移動すればよい。
また、定着ユニット82として、4つ以上の定着ロールを備えて、3つ以上の定着部を構成し、定着ユニット82の移動手段によって定着ユニット82を平行移動することにより、3種類以上の記録媒体Pに対応して光沢性を付与する、あるいは、画像に応じて3種類以上の光沢性から選択できるようにしてもよい。
また、画像定着装置80においては、定着ユニット82を平行移動させて、定着ロール12A,12B,12Cの3つの定着ロールのうち、定着ロール12Aまたは定着ロール12Bのどちらかを画像記録面に接触させるものとしたが、定着ユニット82の移動手段として、さらに、定着ユニット82を回転移動する手段を備え、定着ユニット82を記録媒体Pの搬送面に対して180度回転させることにより、定着ロール12Cも画像記録面に接触するようにしてもよい。この場合、定着ロール12Cとして定着ロール12A,12Bと異なる層構成のものを用いる。もちろん、上記の方法を組み合わせて、定着ユニット82として4つ以上の定着ロールを備え、さらに、回転移動手段を備えてもよい。
なお、先述の例と同様に、表層の構成の異なる複数の定着ロールを用いるのに加え、定着ロールの加熱温度、加圧力(ニップ圧)、定着速度等の定着条件を変化させ、更に豊富な種類の記録媒体に対応可能とするのも好ましい。
以上、本発明に係る画像定着装置について詳細に説明したが、本発明は上記種々の実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。