JP4516182B2 - トレッド用ゴム組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレッド用ゴム組成物、とりわけ耐摩耗性、ウェットグリップ性能および氷上グリップ性能のバランスを向上させたトレッド用ゴム組成物にかかわる。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の高速化にともない、タイヤに要求される特性は年々厳しくなってきており、高速走行時のウェット路面における諸性能もその1つとしてとりあげられている。
【0003】
従来、タイヤ用ゴム組成物のウェットグリップ性能を改善するために、ガラス転移温度(Tg)の高いスチレン−ブタジエンゴム(SBR)やブチルゴムなどを入れて、低温(たとえば0℃)の損失正接(tanδ)を向上させることが行なわれてきた。また、水酸化アルミニウムなどの無機紛体を使用することにより、タイヤ用ゴム組成物のウェットグリップ性能が改善されることが知られている。
【0004】
しかし、Tgの高いSBRやブチルゴムを使用すると耐摩耗性が低下する、低温時のグリップ性能と転がり抵抗が高くなるなどの問題があった。また、Tgを上げる手法にも限界がある。さらに、水酸化アルミニウムなどの無機紛体を使用したタイヤトレッド用ゴム組成物も、耐摩耗性に問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、トレッド用ゴム組成物において、耐摩耗性を保ちつつウェットグリップ性能および氷上グリップ性能を向上させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、ヒステリシスロスを大きくして摩擦力を改善することによってではなく、ゴムの撥水性を向上させて路面とゴムのあいだに存在する水を除去することにより、ウェットグリップ特性を高めることを検討し、溶剤可溶性シリコーン系高分子などをゴムに配合することにより、ゴムの撥水性を高めてウエットグリップの改善を図った。
【0007】
すなわち、本発明は、ジエン系ゴム100重量部に対し、溶剤可溶性シリコーン系高分子を2〜40重量部含むことを特徴とするトレッド用ゴム組成物に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴムおよび溶剤可溶性シリコーン系高分子を含む。
【0009】
本発明で用いられるジエン系ゴムとしては、とくに限定はないが、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、イソプレン−イソブチレンゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などをあげることができる。ジエン系ゴムは、単独で、または2種類以上を使用することができる。
【0010】
シリコーン系高分子は、有機珪素化合物の重合体であり、つまり、シロキサン結合(−Si−O−Si−O−)からなる骨格を有する高分子であり、この骨格に、アルキル基、アリル基、アリール基などの有機基が結合した分子構造を有する。
【0011】
溶剤可溶性シリコーン系高分子は、たとえば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ヘキサン、シリコーンオイルなどの溶剤に25℃の条件で溶解することができる。
【0012】
溶剤可溶性シリコーン系高分子としては、たとえば、SiOH基などの極性基を少量有するシリコーン系高分子などをあげることができる。
【0013】
溶剤可溶性シリコーン系高分子としては、たとえば、溶剤可溶性シリコーン系高分子粒子を用いることができる。本発明で用いられる溶剤可溶性シリコーン系高分子粒子は不定形である。
【0014】
このような溶剤可溶性シリコーン系高分子粒子としては、たとえば、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のトレフィルR−910などがあげられる。
【0015】
トレフィルR−910は、−Si(CH32−O−で表わされる繰り返し単位を主体とし、SiOH基を少量有する。トレフィルR−910は、25℃で、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン、ミネラルターペン、ゴム揮発油、ジメチルシリコーンオイル(SH200−100cs、SH200−350cs、SH200−1000cs、SH200−5000cs)、メチルハイドロジエンシリコーンオイル(SH1107)、アルコール変性シリコーンオイル(SF8427、SF8428)に10重量%以上の相溶性を有する。
【0016】
前記溶剤可溶性シリコーン系高分子の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して、2〜40重量部、好ましくは3〜30重量部、より好ましくは3〜25重量部とすることができる。前記溶剤可溶性シリコーン系高分子の配合量が2重量部未満では、撥水性の改善効果が小さく、40重量部をこえると耐摩耗性が低下する。
【0017】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴムおよび溶剤可溶性シリコーン系高分子を通常の加工装置、たとえばロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどにより混練りすることにより得られる。本発明のトレッド用ゴム組成物には、前記成分のほかにトレッド用ゴム組成物の製造に一般に使用される成分、添加剤を必要に応じて通常使用される量、配合・添加してもよい。前記成分、添加剤の具体例としては、たとえば、充填剤(カーボンブラック、シリカなど)、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなど)、加硫剤(硫黄、塩化硫黄化合物、有機硫黄化合物など)、加硫促進剤(グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンデート系の化合物など)、架橋剤(有機パーオキサイド化合物、アゾ化合物などのラジカル発生剤や、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物など)、補強剤(ハイインパクトポリスチレン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂など)、酸化防止剤ないし老化防止剤(ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系などのアミン誘導体、キノリン誘導体、ハイドロキノン誘導体、モノフェノール類、ジフェノール類、チオビスフェノール類、ヒンダードフェノール類、亜リン酸エステル類など)、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、軟化剤、短繊維、可塑剤などがあげられる。
【0018】
とくに限定するものではないが、通常、前記充填剤は20〜150重量部配合することができ、前記プロセスオイルは5〜180重量部配合することができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例にもとづいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0020】
以下、実施例で用いた薬品、試験方法をまとめて示す。
【0021】
(薬品)
溶液重合SBR:日本ゼオン(株)製のNS210(結合スチレン量25%、非油展)
カーボンブラック:昭和キャボット(株)製のショウブラックN220
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のJOMO X140
溶剤可溶性シリコーン系高分子粒子:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のトレフィルR−910
溶剤不溶性シリコーン系高分子粒子:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のトレフィルE−500(−Si(CH32−O−で表わされ る繰り返し単位からなる)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日本油脂(株)製
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0022】
(試験方法)
1)ランボーン摩擦試験
測定温度40℃、負荷荷重2.5kgf、スリップ率40%、落差量20g/分、測定時間4分間の測定条件で試験を行なった。
各例の重量変化より容積損失を計算し、比較例1の容積損失を100(基準)として下記計算式で指数化(ランボーン指数)した。ランボーン指数が大きいものほど耐摩耗性に優れる。
ランボーン指数(摩耗指数)= 基準配合の溶積損失÷容積損失 × 100
【0023】
2)ウェットスキッド試験
スタンレー製ポータブルスキッドテスターを用いてスキッドレジスタンスを測定した。測定は、室温で、セーフティーウォークの上に水膜1mmをはった路面で行なった。比較例1のスキッドレジスタンスを100(基準)として下記式で指数化した。指数が大きいものほどウェットスキッド性能に優れる。
ウェットスキッド指数=基準配合(比較例1)のスキッドレジスタンス÷スキッドレジスタンス × 100
【0024】
3)氷上スキッド試験
路面の表面温度を−1℃とし、表面、測定温度(試験室温度)を−3℃にした他は、2)と同様の方法で試験を行ない、指数化(氷上スキッド指数)した。氷上スキッド指数が大きいものほど氷上スキッド性能に優れる。
【0025】
実施例1〜3および比較例1〜3
硫黄および加硫促進剤以外の表1に示す成分を、1.7Lバンバリーミキサーで混練りした。そののち、硫黄および加硫剤をロールで混入し、ゴムシートを作成した。このゴムシートを170℃で20分間の条件で加硫し、前述の物性試験を行なった。
【0026】
【表1】
Figure 0004516182
【0027】
結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
Figure 0004516182
【0029】
シリコーン系高分子粒子を用いなかった比較例1に対し、溶剤可溶性シリコーン系高分子をジエン系ゴム100重量部に対して5〜40重量部配合した実施例1〜3では、耐摩耗性を低下させずにウェットスキッド性能および氷上スキッド性能を高めることができた。
【0030】
溶剤可溶性シリコーン系高分子粒子の配合量が多かった比較例2では、耐摩耗性が低下した。
【0031】
なお、溶剤可溶性シリコーン系高分子粒子の代わりに溶剤不溶性シリコーン系高分子粒子を用いた比較例3では、ウェットスキッド性能および氷上スキッド性能は改善されたが、耐摩耗性が大きく低下した。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、トレッド用ゴム組成物の耐摩耗性を保ちつつ、ウェットグリップ性能および氷上グリップ性能を向上させることができる。

Claims (1)

  1. ジエン系ゴム100重量部に対し、SiOH基を有する溶剤可溶性シリコーン系高分子を20〜40重量部含むことを特徴とするトレッド用ゴム組成物であり、
    前記溶剤がエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン、ミネラルターペン、ゴム揮発油、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイルまたはアルコール変性シリコーンオイルであり、さらに、
    ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤を20〜150重量部含み、
    溶剤可溶性シリコーン系高分子の配合量の充填剤の配合量に対する割合が、20/70〜35/70であるトレッド用ゴム組成物。
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