以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態に係る自動変速機の変速制御装置について説明する。図1は本発明の変速制御装置が適用可能な自動変速機の全体構成を示しており、エンジンENGの出力を変速して車輪に伝達する自動変速機TMにより動力伝達機構が構成される。
この自動変速機TMの変速制御は、変速制御バルブCVによる油圧制御により行われ、変速制御バルブCVの作動は電子制御ユニットECUからの変速制御信号によりソレノイドバルブを作動させて行われる。
電子制御ユニットECUはシフト操作装置7に信号ライン9を介して繋がり、シフト操作装置7からシフトレバー7aのシフトポジション信号を受け取る。また、シフトレバー7aはケーブル8を介して変速制御バルブCV内のマニュアルバルブと繋がり、シフトレバー7aの操作に応じてマニュアルバルブのスプールを移動させる。
まず、自動変速機TMの構成を図2及び図3に基づいて説明する。この変速機は、変速機ハウジングHSG内に、エンジン出力軸(図示せず)に繋がるトルクコンバータTCと、トルクコンバータTCの出力部材(タービン)に繋がった平行軸式変速機構TMと、この変速機構TMの終減速駆動ギヤ6aと噛合する終減速従動ギヤを有した図示しないデファレンシャル機構を配設して構成されており、デファレンシャル機構から左右の車輪に駆動力が伝達される。
平行軸式変速機構TMは、互いに平行に延びた第1入力軸1、第2入力軸2、カウンタ軸3及びアイドル軸5を有して構成され、これら各軸の軸線位置は図3においてS1,S2,S3及びS5で示す位置にそれぞれ配置されている。
この平行軸式変速機構TMの動力伝達構成が図2(A)及び図2(B)に示されており、図2(A)は図3の2A−2Aに沿って第1入力軸1(S1)、カウンタ軸3(S3)及び第2入力軸(S2)を通る断面を示しており、図2(B)は図3の2B−2Bに沿って第1入力軸1(S1)、アイドル軸5(S5)及び第2入力軸2(S2)を通る断面を示している。
第1入力軸1はトルクコンバータTCのタービンに連結されており、ベアリング41a,41bにより回転支持され、タービンからの駆動力を受けてこれと同一回転する。第1入力軸1には、トルクコンバータTC側(図における右側)から順に、5速駆動ギヤ25a、5THクラッチ15、4THクラッチ14、4速駆動ギヤ24a、リバース駆動ギヤ26a及び第1連結ギヤ31が配設されている。
5速駆動ギヤ25aは第1入力軸1の上に回転自在に配設されており、油圧力により作動される5THクラッチ15により第1入力軸1と係脱される。また、4速駆動ギヤ24a及びリバース駆動ギヤ26aは一体的に連結されると共に第1入力軸1の上に回転自在に配設されており、油圧力により作動される4THクラッチ14により第1入力軸1と係脱される。第1連結ギヤ31は第1入力軸1を回転自在に支持するベアリング41aの外側に位置して、片持ち状態で第1入力軸1と結合されている。
第2入力軸2はベアリング42a,42bにより回転支持され、この軸上には、図における右側から順に、2NDクラッチ12、2速駆動ギヤ22a、LOW駆動ギヤ21a、LOWクラッチ11、3RDクラッチ13、3速駆動ギヤ23a及び第4連結ギヤ34が配設されている。
2速駆動ギヤ22a、LOW駆動ギヤ21a及び3速駆動ギヤ23aはそれぞれ第2入力軸2の上に回転自在に配設されており、油圧力により作動される2NDクラッチ12、LOWクラッチ11及び3RDクラッチ13により第2入力軸2と係脱される。第4連結ギヤ34は第2入力軸2と結合されている。
図2(B)に示されるように、アイドル軸5はベアリング45a,45bにより回転支持され、この軸と一体に第2連結ギヤ32及び第3連結ギヤ33が配設されている。第2連結ギヤ32は第1連結ギヤ33と噛合し、第3連結ギヤ33は第4連結ギヤ34と噛合している。これら第1〜第4連結ギヤにより連結ギヤ列30が構成され、第1入力軸1の回転が連結ギヤ列30を介して第2入力軸2に常時伝達される。
カウンタ軸3はベアリング43a,43bにより回転支持され、この軸上には、図における右側から順に、終減速駆動ギヤ6a、2速従動ギヤ22b、LOW従動ギヤ21b、5速従動ギヤ25b、3速従動ギヤ23b、4速従動ギヤ24b、ドグ歯式クラッチ16及びリバース従動ギヤ26cが配設されている。
終減速駆動ギヤ6a、2速従動ギヤ22b、LOW従動ギヤ21b、5速従動ギヤ25b及び3速従動ギヤ23bはカウンタ軸3に結合されており、これと一体回転する。4速従動ギヤ24bはカウンタ軸3の上に回転自在に配設されている。
また、リバース従動ギヤ26cもカウンタ軸3の上に回転自在に配設されている。ドグ歯式クラッチ16が軸方向に作動されて、4速従動ギヤ24bとカウンタ軸3と係脱させたり、リバース従動ギヤ26cとカウンタ軸3とを係脱させたりすることができる。
なお、図示のように、LOW駆動ギヤ21aとLOW従動ギヤ21bとが噛合し、2速駆動ギヤ22aと2速従動ギヤ22bとが噛合し、3速駆動ギヤ23aと3速従動ギヤ23bとが噛合し、4速駆動ギヤ24aと4速従動ギヤ24bとが噛合し、5速駆動ギヤ25aと5速従動ギヤ25bとが噛合する。さらに、リバース駆動ギヤ26aは図示しないアイドラギヤを介してリバース従動ギヤ26cと噛合する。
以上のような構成の変速機において、各速度段の設定及びその動力伝達経路について以下に説明する。なお、この変速機においては、前進レンジにおいてはドグ歯式クラッチ16が図において右方向に移動されて4速従動ギヤ24bとカウンタ軸3とが結合される。一方、後進(リバース)レンジにおいては、ドグ歯式クラッチ16が左方向に移動されてリバース従動ギヤ26cとカウンタ軸3とが係合される。
まず、前進レンジにおける各速度段について説明する。LOW速度段はLOWクラッチ11を係合させて設定される。トルクコンバータTCから第1入力軸1に伝達された回転駆動力は、連結ギヤ列30を介して第2入力軸2に伝達される。
ここで、LOWクラッチ11が係合されているため、LOW駆動ギヤ21aが第2入力軸2と同一回転で駆動され、これと噛合するLOW従動ギヤ21bが回転駆動され、カウンタ軸3が駆動される。この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
2速段は2NDクラッチ12を係合させて設定される。トルクコンバータTCから第1入力軸1に伝達された回転駆動力は、連結ギヤ列30を介して第2入力軸2に伝達される。ここで、2LDクラッチ12が係合されているため、2速駆動ギヤ22aが第2入力軸2と同一回転で駆動され、これと噛合する2速従動ギヤ22bが回転駆動され、カウンタ軸3が駆動される。この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
3速段は3RDクラッチ13を係合させて設定される。トルクコンバータTCから第1入力軸1に伝達された回転駆動力は、連結ギヤ列30を介して第2入力軸2に伝達される。ここで、3RDクラッチ13が係合されているため、3速駆動ギヤ23aが第2入力軸2と同一回転で駆動され、これと噛合する3速従動ギヤ23bが回転駆動されて、カウンタ軸3が駆動される。この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
4速段は4THクラッチ14を係合させて設定される。トルクコンバータTCから第1入力軸1に伝達された回転駆動力は、4THクラッチ14を介して4速駆動ギヤ24aを回転駆動させ、これと噛合する4速従動ギヤ24bを回転駆動する。
ここで、前進レンジにおいては、ドグ歯式クラッチ16により4速従動ギヤ24bがカウンタ軸3と係合されているため、カウンタ軸3が駆動され、この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
5速段は5THクラッチ15を係合させて設定される。トルクコンバータTCから第1入力軸1に伝達された回転駆動力は、5THクラッチ15を介して5速駆動ギヤ25aを回転させ、これと噛合する5速従動ギヤ25bを回転駆動する。5速従動ギヤ25bはカウンタ軸3と結合されているため、カウンタ軸3が駆動され、この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
一方、後進(リバース)段は、4THクラッチ14を係合させると共にドグ歯式クラッチ16を左方向に移動させて設定される。トルクコンバータTCから第1入力軸1に伝達された回転駆動力は、4THクラッチ14を介してリバース駆動ギヤ26aを回転駆動させ、図示しないリバースアイドラギヤを介してこのアイドラギヤと噛合するリバース従動ギヤ26cを回転駆動する。
ここで、後進(リバース)レンジにおいては、ドグ歯式クラッチ16によりリバース従動ギヤ26cがカウンタ軸3と係合されているため、カウンタ軸3が駆動され、この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。このことから判るように、4THクラッチ14はリバースクラッチの作用を兼用する。
以上のような構成の自動変速機において、変速制御を行わせる変速制御バルブCVを構成する油圧回路を図4及び図6〜図11に示しており、これについて以下に説明する。なお、図6〜図11は図4における一点鎖線A〜Fにより6分割された部分をそれぞれ拡大して示す。また、この油圧回路図において、油路が開放しているところはドレン(オイルタンク)に繋がる。
この装置は、オイルタンクOTの作動油を吐出するオイルポンプOPを有しており、オイルポンプOPはエンジンにより駆動されて油路100に作動油を供給する。油路100は油路100aを介してメインレギュレータバルブ50に繋がり、ここで調圧されて油路100,100aにライン圧PLが発生する。
このライン圧PLは油路100bを介してマニュアルバルブ58に供給される。油路100bは、マニュアルバルブ58のポートを介して油路100dと常時繋がっており(マニュアルバルブ58の作動の如何に拘わらず常に繋がっており)、油路100dを介してライン圧PLが第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ81〜84及び第1リニアソレノイドバルブ86に常時供給される。
メインレギュレータバルブ50においてライン圧PLを調圧した余剰油は油路191に供給され、更に油路192に供給される。油路191に供給された余剰油は、ロックアップシフトバルブ51、ロックアップコントロールバルブ52、トルクコンバータチェックバルブ53により制御され、トルクコンバータTCのロックアップ制御及び作動油供給に用いられ、この後、オイルクーラー54を通ってオイルタンクOTに戻される。
なお、トルクコンバータTCの制御については、本発明に直接関係しないため、作動説明は省略する。また、油路192に供給された余剰油は、潤滑リリーフバルブ55により調圧されて各部の潤滑油として供給される。
この油圧回路図においては、上述の変速機を構成するLOWクラッチ11、2NDクラッチ12、3RDクラッチ13、4THクラッチ14、5THクラッチ15を示しており、各クラッチにはそれぞれLOWアキュムレータ75、2NDアキュムレータ76、3RDアキュムレータ77、4THアキュムレータ78、5THアキュムレータ79が油路を介して繋がっている。また、ドグ歯式クラッチ16を作動させるための前後進選択油圧サーボ機構70を備える。
これら各クラッチ11〜15及び前後進選択油圧サーボ機構70への作動油圧供給制御を行うため、第1シフトバルブ60、第2シフトバルブ62、第3シフトバルブ64、第4シフトバルブ66、Dインヒビタバルブ68、第1カットバルブ90、第2カットバルブ92が図示のように配設されている。
そして、これらのバルブの作動制御及び各クラッチ等への供給油圧制御を行うため、第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ81〜84と、第1〜第3リニアソレノイドバルブ86〜88が図示のように配設されている。
以上のような構成を有する変速制御装置の作動を各速度段毎に分けて以下に説明する。各速度段の設定は、シフト操作装置7のシフトレバー7aの操作に対応してマニュアルバルブ58のスプール58aが移動されて油路の切り替えが行われると共に、電子制御ユニットECUより第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ81〜84及び第1〜第3リニアソレノイドバルブ86〜88の作動を図5に示すように設定して行われる。
なお、これら第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ81〜84及び第1〜第3リニアソレノイドバルブ86〜88はノーマルクローズタイプのソレノイドバルブであり、通電時(オン時)に開放作動され信号油圧を発生させる。
図5において、符号×及び○はそれぞれソレノイドが通電オフ及びオンとなることを意味する。図5のオン・オフソレノイドバルブの欄において、符号A〜Dがそれぞれ第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ81〜84を意味する。
第1及び第2カットバルブの欄における「セ」及び「作」はセット状態及び作動状態を示す。さらに、クラッチ油圧供給欄における1,2,3,4,5はそれぞれLOWクラッチ11、2NDクラッチ12、3RDクラッチ13、4TH(リバース)クラッチ14、5THクラッチ15を示し、上述の説明から明らかなようにリバースクラッチと4THクラッチは同一クラッチ14が兼用する。
図5のクラッチ油圧供給欄において、PLはライン圧PLが供給されることを意味し、A〜Cは第1〜第3リニアソレノイドバルブ86〜88を意味する。さらに、サーボ位置欄は前後進選択油圧サーボ機構70がR(後進)及びD(前進)のいずれか側に作動されるかを示している。
図5において、ポジションはシフトレバー7aの操作位置及びマニュアルバルブ58の作動位置を示し、このポジションとしては、駐車(P)ポジション、後進(R)ポジション、中立(N)ポジション及び前進(D)ポジションが少なくとも設けられて、本実施形態では更に前進ポジションとしてもう3つのポジション(図10において*印で示すポジション)が設けられている。なお、図4及び図6〜図11においては、マニュアルバルブ58がNポジションに位置した状態を示している。
図5においては、シフトレバー7aが駐車(P)ポジション、後進(R)ポジション、中立(N)ポジション及び前進(D)ポジションにあるときに設定される各種モードを表示しているが、本発明では前進(D)ポジションでの変速制御を対象とするため、以下においては前進(D)ポジションでの変速制御について説明し、それ以外のポジションでの変速制御の説明は省略する。
なお、シフトレバー7aが前進(D)ポジションに操作されているときには、図5に示すような10種類のモードが設定される。また、このときマニュアルバルブ58のスプール58aは溝部58bが図10のDポジションに移動し、油路100bのライン圧PLが油路101にも供給される。
まず、シフトレバー7aが中立(N)ポジションから前進(D)ポジションに操作されたときの初期段階に設定されるLOWインギヤモードについて説明する。このモードでは、第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ81〜84の全てがオフ作動される。
このため、第1オン・オフソレノイドバルブ81の出力圧が供給される油路111の圧力が0若しくは極低圧となる。油路111は油路111aから第1シフトバルブ60の右端ポート60aに繋がるが、ここに作用する油圧が0であるため、スプール61aはスプリング61bにより右方に押圧されてセット状態(図示の状態)となる。
油路111は更に油路111bから第1カットバルブ90の左端ポート90aに繋がるが、ここに作用する油圧が0であるため、スプール91aはスプリング91bにより左方に押圧されセット状態(図示の状態)となる。
第2オン・オフソレノイドバルブ82の出力圧が供給される油路112の圧力も0若しくは極く低圧となる。油路112は油路112aからDインヒビターバルブ68の左端ポート68aに繋がるが、ここに作用する油圧は0であるため、この左端ポート68aからスプール69aを右方向に押圧する力は生じない。
油路112は更に油路112bから第2シフトバルブ62の右端ポート62aに繋がるが、ここに作用する油圧は0であるため、スプール63aはスプリング63bにより右方に押されてセット状態(図示の状態)となる。
第3オン・オフソレノイドバルブ83の出力圧が供給される油路113の圧力も0若しくは極く低圧となる。油路113は油路113aから第2カットバルブ92の右端ポートに繋がり、スプール93aがスプリング93bで左方向に押圧されてセット状態(図示の状態)となる。
油路113は更に油路113bから第3シフトバルブ64の右端ポート64aに繋がるが、ここに作用する油圧は0であるため、スプール65aはスプリング65bにより右方に押圧されてセット状態(図示の状態)となる。
第4オン・オフソレノイドバルブ84の出力圧が供給される油路114の圧力も0若しくは極く低圧となる。油路114は油路114aから第4シフトバルブ66の左端ポート66aに繋がるが、ここに作用する油圧は0であるため、スプール67aはスプリング67bにより左方向に押圧されてセット状態(図示の状態)となる。
油路114は更に油路114bからロックアップシフトバルブ51の右端ポート51aに繋がるが、ここに作用する油圧は0であるため、スプール51bはスプリング51cにより右方に押圧されてセット状態(図示の状態)となる。
以上のようにLOWインギヤモードの初期状態では、第1〜第4シフトバルブ60,62,64,66及び第1,第2カットバルブ90,92がセット状態となり、この状態において、第1リニアソレノイドバルブ86から油路115に出力される係合制御油圧を用いて、LOWクラッチ11の係合制御が成される。
第1リニアソレノイドバルブ86からの油路115は油路115aに繋がり、油路115aはセット状態のロックアップシフトバルブ51のスプール溝を介して油路116に繋がり、油路116はセット状態の第2シフトバルブ62を介して油路117に繋がる。
油路117はDポジションに位置したマニュアルバルブ58のスプール溝を介して油路118に繋がり、油路118から分岐した油路118aはセット状態の第1シフトバルブ60のスプール溝を介して油路119に繋がり、油路119はセット状態の第3シフトバルブ64のスプール溝を介して油路120に繋がる。
油路120はLOWクラッチ11に繋がっており、このように第1リニアソレノイドバルブ86から油路115に出力された係合制御油圧がLOWクラッチ11に供給されてその係合制御が成される。
このとき、油路120から分岐した油路120aは第2カットバルブ92の左端ポート92aに作用する。このため、LOWクラッチ11に作用する係合制御油圧が所定圧を超えると、スプール93aがスプリング93bの付勢力に抗して右動され、第2カットバルブ92が作動状態となる。
このように、第2カットバルブ92のポート92bはポート92cと繋がるが、上述したようにマニュアルバルブ58を介してライン圧PLが供給される油路101から分岐した油路101aが分岐油路101bを介してポート92bに繋がっており、ポート92bから供給されるライン圧PLがスプール93aの段部に作用して、スプール93aを右動状態でセルフロックする。
すなわち、LOWクラッチ11に作用する係合制御油圧が所定圧を超えてスプール93aが右動されると、ポート92bから供給されるライン圧PLによりスプール93aが右方向に押されて、第2カットバルブ92は作動状態でセルフロックされる。
また、油路120から分岐した油路120bはDインヒビターバルブ68のポート68cに作用し、そのスプール69aの段部に作用してスプール69aを右方向に押圧する。このため、LOWクラッチ11に作用する係合制御油圧が所定圧を超えるとスプール69aがスプリング69bの付勢力に抗して右動され、Dインヒビターバルブ68は作動状態となる。
これにより、Dインヒビターバルブ68のポート68dとポート68eとが繋がるが、上述したようにマニュアルバルブ58を介してライン圧PLが供給される油路101から分岐した油路101aが分岐油路101cを介してポート68dに繋がっており、ポート68dから供給されるライン圧PLがスプール69aの段部に作用して、スプール69aを右動状態でセルフロックする。
すなわち、LOWクラッチ11に作用する係合制御油圧が所定圧を超えてスプール69aが右動されると、ポート68dから供給されるライン圧PLによりスプール69aが右方向に押されて、Dインヒビターバルブ68は作動状態で保持(セルフロック)される。
Dインヒビターバルブ68が作動状態のときには、ポート68dとポート68eとが繋がるため、ポート68eに繋がる油路102にライン圧PLが供給され、前後進選択油圧サーボ機構70の右側油室73にライン圧PLが供給される。
このとき左側油室72はセット状態の第4シフトバルブ66を介してドレインに繋がっており、ロッド71は作動状態となる。このロッド71はドグ歯式クラッチ16を作動させるシフトフォークと繋がっており、ロッド71が作動状態ではドグ歯式クラッチ16により4速従動ギヤ24bとカウンタ軸3とを結合させる。
なお、前後進選択油圧サーボ機構70の右側油室73に供給されたライン圧PLは油路103から油路103a,103bを通って第2及び第3リニアソレノイドバルブ87,88に供給される。
LOWインギヤモードでは、2NDクラッチ12は第2リニアソレノイドバルブ87の出力ポートに繋がってドレインされ、3RDクラッチ13は第3リニアソレノイドバルブ88の出力ポートに繋がってドレインされ、4THクラッチ14は第4シフトバルブ66に繋がってドレインされ、5THクラッチ15は第1カットバルブ90に繋がってドレインされており、いずれも開放状態となる。
次に、LOWモードについて説明する。LOWモードにおいては、LOWインギヤモードの状態から第2オン・オフソレノイドバルブ82がオン作動される。これにより、油路112にライン圧PLが供給され、Dインヒビターバルブ68を作動状態とし(既に作動状態であるときには、このまま保持し)第2シフトバルブ62のスプール63aを作動させて第2シフトバルブ62を作動状態とする。
この結果、油路101から油路101a及び油路101bを通って供給されるライン圧PLは、作動状態のDインヒビターバルブ68を通って油路102に供給され、前後進選択油圧サーボ機構70の右側油室73にライン圧PLが供給されたままの状態で維持される。
さらに、マニュアルバルブ58のポートを介して油路100bと常時繋がってライン圧PLが供給されている油路100dは油路100eに分岐し、作動状態の第2カットバルブ92を介して油路100eが油路104に繋がり、油路104はセット状態の第1カットバルブ90を介して油路105に繋がる。
さらに、油路105は作動状態の第2シフトバルブ62を介して油路117と繋がる。油路117はDポジションに位置したマニュアルバルブ58のスプール溝を介して油路118に繋がり、油路118はセット状態の第1シフトバルブ60のスプール溝を介して油路119に繋がり、油路119はセット状態の第3シフトバルブ64のスプール溝を介して油路120に繋がる。油路120はLOWクラッチ11に繋がっており、この結果、ライン圧PLがLOWクラッチ11に供給されて、これが完全に係合されてLOW変速段が設定される。
なお、図5には、LOWモードにおいて第4オン・オフソレノイドバルブ84がオン若しくはオフ作動するように表示されている。この第4オン・オフソレノイドバルブ84からの出力油圧が供給される油路114は、上述したように、油路114bからロックアップシフトバルブ51の右端ポート51aに繋がっており、第4オン・オフソレノイドバルブ84からの出力油圧はロックアップシフトバルブ51の作動、即ちトルクコンバータTCのロックアップクラッチの作動制御に用いられる。
このような第4オン・オフソレノイドバルブ84によるロックアップクラッチ作動制御は、以下に説明する各モード全てにおいて同様に行われる。すなわち、図5に示すDポジションにおけるLOWインギヤモードを除く全てのモードにおいては、第4オン・オフソレノイドバルブ84はロックアップクラッチの作動制御に用いられ、変速制御モードの設定は第1〜第3オン・オフソレノイドバルブ81〜83により行われる。
ただし、(1)−2−3変速モード及び(2)−3−4変速モードにおいては、第4オン・オフソレノイドバルブ84がオフ状態(ロックアップクラッチ作動制御を行わない状態)で、第1リニアソレノイドバルブ86から出力される制御油圧がそれぞれLOWクラッチ11及び2NDクラッチ12に供給されて、これらの係合制御が成される。
次に、このようにLOW変速段が設定されたLOWモードから2速段に変速する制御を説明する。このときには、まず1−2変速モードが設定された後に2NDモードが設定されて2速段への変速が行われる。
1−2変速モードでは、LOWモードの状態から第1オン・オフソレノイドバルブ81がオン作動されて設定される。これにより、油路111にライン圧PLが出力され、第1シフトバルブ60のスプール61aが左動されて第1シフトバルブ60が作動状態となる。
また、第1カットバルブ90において、左端ポート90aにライン圧PLが作用するが、右端ポート90bには油路120から分岐した油路120cが繋がってLOWクラッチ11の制御油圧が作用するため、1−2変速モードにおいてLOWクラッチ11の制御油圧が低下すると(所定圧以下となると)、第1カットバルブ90のスプール91aが右動されて第1カットバルブ90が作動状態となる。
ここで、第1カットバルブ90が作動状態となると、そのポート90bに油路101から分岐した油路101bが繋がっているため、ポート90bを介してライン圧PLが右動したスプール91aの段部に作用し、これを右動状態でセルフロックする。すなわち、第1カットバルブ90は作動状態でセルフロックされる。
1−2変速モードでは、図5に示すように、第2及び第3リニアソレノイドバルブ87,88から出力される制御油圧が用いられる。まず、第3リニアソレノイドバルブ88から油路131に出力された制御油圧は、作動状態の第2シフトバルブ62を介して油路132に繋がり、油路132は作動状態の第2カットバルブ92を介して油路133に繋がり、油路133は作動状態の第1シフトバルブ60を介して油路119に繋がり、油路119はセット状態の第3シフトバルブ64を介して油路120に繋がる。
上述したように、油路120はLOWクラッチ11に繋がっており、第3リニアソレノイドバルブ88から出力される制御油圧は、LOWクラッチ11に供給されてその係合制御が行われる。
一方、第2リニアソレノイドバルブ87から油路141に出力された制御油圧は、セット状態の第3シフトバルブ64を介して油路142に繋がり、油路142は作動状態の第1シフトバルブ60を介して油路143に繋がり、油路143は作動状態の第2シフトバルブ62を介して油路144に繋がる。油路144は2NDクラッチ12に繋がっており、第2リニアソレノイドバルブ87から出力される制御油圧は2NDクラッチ12に供給されてその係合制御が行われる。
このように、1−2変速モードにおいては、第3リニアソレノイドバルブ88からの制御油圧によりLOWクラッチ11の係合を解除させながら、第2リニアソレノイドバルブ87からの制御油圧により2NDクラッチ12を係合させる制御を行って、LOW変速段から2速段への変速制御が行われる。
このようにして、1−2変速モードにおいてLOWクラッチ11が解放されて2NDクラッチ12が係合されると、2NDモードに移行する。2NDモードにおいては、1−2変速モードの状態から第2オン・オフソレノイドバルブ82がオフ作動され、第2シフトバルブ62がセット状態となる。
この結果、マニュアルバルブ58を介してライン圧PLが供給される油路101aから分岐した油路101cはセット状態の第3シフトバルブ64を介して油路106に繋がり、油路106はセット状態の第2シフトバルブ62を介して油路107に繋がり、油路107は作動状態の第1シフトバルブ60を介して油路144に繋がり、油路144は2NDクラッチ12に繋がる。この結果、ライン圧PLが2NDクラッチ12に供給されて2NDクラッチ12が完全係合され、2速段が設定される。
次に、このように2速段が設定された2NDモードから3速段に変速する制御を説明する。このときには、まず2−3変速モードが設定された後に3RDモードが設定されて3速段への変速が行われる。
2−3変速モードは、2NDモードの状態から第1オン・オフソレノイドバルブ81がオフ作動されて設定される。これにより、第1〜第3オン・オフソレノイドバルブ81〜83が全てオフとなるが、この状態はLOWインギヤモードと同一である。しかしながら、2−3変速モードでは、第1カットバルブ90が作動状態でセルフロックされた状態にあり、この点がLOWインギヤモードの状態と相違する。
2−3変速モードでは、図5に示すように、第2及び第3リニアソレノイドバルブ87,88から出力される制御油圧が用いられる。まず、第2リニアソレノイドバルブ87から油路141に出力された制御油圧は、セット状態の第3シフトバルブ64を介して油路142に繋がり、油路142はセット状態の第2シフトバルブ62を介して油路145に繋がり、油路145はセット状態の第1シフトバルブ60を介して油路144に繋がる。
油路144は2NDクラッチ12に繋がっているため、第2リニアソレノイドバルブ87から出力される制御油圧は2NDクラッチ12に供給されて、その係合制御が行われる。
一方、第3リニアソレノイドバルブ88から油路131に出力された制御油圧は、セット状態の第2シフトバルブ62を介して油路134に繋がり、油路134はセット状態の第1シフトバルブ60を介して油路135に繋がる。油路135は3RDクラッチ13に繋がっており、第3リニアソレノイドバルブ88から出力される制御油圧は3RDクラッチ13に供給されて、その係合制御が行われる。
このように、2−3変速モードにおいては、第2リニアソレノイドバルブ87からの制御油圧により2NDクラッチ12の係合を解除させながら、第3リニアソレノイドバルブ88からの制御油圧により3RDクラッチ13を係合させる制御を行って、2速段から3速段への変速制御が行われる。
一方、2−3変速モードにおいて、ロックアップクラッチがオフの状態、すなわちロックアップコントロールバルブ52がセット状態で、ロックアップクラッチへの油圧供給がない場合には、第1リニアソレノイドバルブ86からの制御油圧を利用して、2−1変速又は3−1変速が可能となる。このときには、第2カットバルブ92はセット状態となる。
このようにして、2−3変速モードにおいて2NDクラッチ12が解放されて3RDクラッチ13が係合されると、3RDモードに移行する。3RDモードにおいては、2−3変速モードの状態から第3オン・オフソレノイドバルブ83がオン作動され、第3シフトバルブ64が作動状態となり、且つ第2カットバルブ92がセット状態となる。
3RDモードでは第3リニアソレノイドバルブ88から油路131にライン圧PLが出力される。油路131はセット状態の第2シフトバルブ62を介して油路134に繋がり、油路134はセット状態の第1シフトバルブ60を介して油路135に繋がり、油路135は3RDクラッチ13に繋がっているので、第3リニアソレノイドバルブ88から出力されるライン圧PLが3RDクラッチ13に供給されて3RDクラッチ13が完全係合され、3速段が設定される。
ここで注意すべきは、2−3変速モードにおいてロックアップクラッチがオンの状態では、3RDモード時に第2カットバルブ92が作動状態からセット状態になる。この状態で、第1カットバルブ90、第2カットバルブ92共にLOWクラッチ11への油圧供給ができない構成が確立される。
このように、3速段が設定された3RDモードから4速段に変速する制御を次に説明する。このときには、まず3−4変速モードが設定された後に4THモードが設定されて4速段への変速が行われる。
3−4変速モードは、3RDモードの状態から第1オン・オフソレノイドバルブ82がオン作動されて設定される。これにより、第1シフトバルブ60のスプール60aが左方向に移動されて第1シフトバルブ60が作動状態となる。
3−4変速モードでは、図5に示すように、第2及び第3リニアソレノイドバルブ87,88から出力される制御油圧が用いられる。まず、第3リニアソレノイドバルブ88から制御油圧が出力される油路131は、セット状態の第2シフトバルブ62を介して油路134に繋がる。
油路134は作動状態の第1シフトバルブ60を迂回して油路136に直接接続されている。なお、この油圧回路図においては、油路134が作動状態の第1シフトバルブ60により遮断されているようにも見えるが、実際には油路134は第1シフトバルブ60を迂回して油路136に直接繋がっている。
油路136は作動状態の第3シフトバルブ64を介して油路137に繋がり、油路137は作動状態の第1シフトバルブ60を介して油路135に繋がる。油路135は3RDクラッチ13に繋がっており、第3リニアソレノイドバルブ88から出力される制御油圧は3RDクラッチ13に供給されて、その係合制御が行われる。
一方、第2リニアソレノイドバルブ87から制御油圧が油路141に出力されるが、油路141は作動状態の第3シフトバルブ64を介して油路151に繋がり、油路151は作動状態の第1シフトバルブ60を介して油路152に繋がる。油路152は4THクラッチ14に繋がっており、第2リニアソレノイドバルブ87から出力される制御油圧は、4THクラッチ14に供給されてその係合制御が行われる。
このように、3−4変速モードにおいては、第3リニアソレノイドバルブ88からの制御油圧により3RDクラッチ13の係合を解除させながら、第2リニアソレノイドバルブ87からの制御油圧により、4THクラッチ14を係合させる制御を行って3速段から4速段への変速制御が行われる。
一方、3−4変速モードにおいてロックアップクラッチがオフの状態、即ちロックアップコントロールバルブ52がセット状態の場合には、第1リニアソレノイドバルブ86からの制御油圧が2NDクラッチ12に供給され、3−2変速又は4−2変速が可能となる。
3−4変速モードにおいて、3RDクラッチ13が解放されて、4THクラッチ14が係合されると、4THモードに移行する。4THモードにおいては、3−4変速モードの状態から第2オン・オフソレノイドバルブ82がオン作動され、第2シフトバルブ62が作動状態となる。
この結果、4THモードでは、第2リニアソレノイドバルブ87から油路141にライン圧PLが出力される。油路141は作動状態の第3シフトバルブ64を介して油路151に繋がり、油路151は作動状態の第1シフトバルブ60を介して油路152に繋がる。
油路152は4THクラッチ14に繋がっているので、第2リニアソレノイドバルブ87から出力されるライン圧PLが4THクラッチ14に供給されて、4THクラッチ14を完全係合し、4速段が設定される。
このように4速段が設定された4THモードから5速段に変速する制御を以下に説明する。このときには、まず4−5変速モードが設定された後に5THモードが設定されて5速段への変速が行われる。
4−5変速モードは、4THモードの状態から第1オン・オフソレノイドバルブ81がオフ作動されて設定される。これにより、第1シフトバルブ60のスプール61aが右方向に移動されて第1シフトバルブ60がセット状態となる。
4−5変速モードでは、図5に示すように、第2及び第3リニアソレノイドバルブ87,88から出力される制御油圧が用いられる。まず、第2リニアソレノイドバルブ87からの制御油圧は油路141に出力されるが、この油路141は作動状態の第3シフトバルブ64を介して油路151に繋がり、油路151は作動状態の第1シフトバルブ60を介して油路152に繋がる。油路152は4THクラッチ14に繋がっており、第2リニアソレノイドバルブ87から出力される制御油圧は4THクラッチ14に供給されて、その係合制御が行われる。
一方、第3リニアソレノイドバルブ88からは制御油圧が油路131に出力されるが、この油路131は作動状態の第2シフトバルブ62を介して油路132に繋がり、油路132はセット状態の第2カットバルブ92を介して油路161に繋がり、油路161は作動状態の第1シフトバルブ60を介して油路162に繋がり、油路162は作動状態の第1カットバルブ90を介して油路163に繋がる。油路163は5THクラッチ15に繋がっており、第3リニアソレノイドバルブ88から出力される制御油圧は5THクラッチ15に供給されて、その係合制御が行われる。
このように、4−5変速モードにおいては、第2リニアソレノイドバルブ87からの制御油圧により4THクラッチ14の係合を解除させながら、第3リニアソレノイドバルブ88からの制御油圧により、5THクラッチ15を係合させる制御を行って、4速段から5速段への変速制御が行われる。
このようにして、4−5変速モードにおいて4THクラッチ14が解放されて5THクラッチ15が係合されると、5THモードに移行する。5THモードにおいては、4−5変速モードの状態から第3オン・オフソレノイドバルブ83がオフ作動され、第3シフトバルブ64がセット状態となる。
それにより、第1及び第3オン・オフソレノイドバルブ81,83がオフとなり、第2オン・オフソレノイドバルブ82がオンとなるが、この状態はLOWモードと同一である。
しかしながら、LOWモードでは、第1カットバルブ90がセット状態で、第2カットバルブ92が作動状態でセルフロックされた状態にあり、5THモードでは第1カットバルブ90が作動状態でセルフロックされた状態にあり、第2カットバルブ92がセット状態にある点で相違する。
5THモードでは、第3リニアソレノイドバルブ88から油路131にライン圧PLが出力される。油路131は作動状態の第2シフトバルブ62を介して油路132に繋がり、油路132はセット状態の第2カットバルブ92を介して油路161に繋がり、油路161はセット状態の第1シフトバルブ60を介して、油路162に繋がり、油路162は作動状態の第1カットバルブ90を介して油路163に繋がる。
油路163は5THクラッチ15に繋がっているので、第3リニアソレノイドバルブ88から出力される制御油圧は5THクラッチ15に供給されて、5THクラッチ15が完全係合される。
5THからのシフトダウンは、これまで説明したアップシフトでのオン・オフソレノイドバルブ81〜84、カットバルブ90,92、リニアソレノイドバルブ86〜88の用い方を図5に示したパターンに従って逆に辿ることにより成立する。
ただし、2NDからLOWへのダウンシフトが、図5中の1−2変速モードではなく、(1)−2−3モードでのダウンシフトとなる。すなわちLOWクラッチ11への油圧供給は第1リニアソレノイドバルブ86により行われる。これにより、第2カットバルブ92はセット状態から作動状態に切り替えられる。
以上説明したように、マニュアルバルブ58がDポジションに位置した状態で、第1〜第3オン・オフソレノイドバルブ81,82,83のオン・オフ作動制御により、図5に示すように10種類のシフトモードが設定される。ここで、3個のオン・オフソレノイドバルブのオン・オフ作動の組み合わせでは、8種類のパターンしか設定できない。
しかしながら、上述したように、変速段階の途中において第1カットバルブ90がセット状態から作動状態に変更され、第2カットバルブ92が作動状態からセット状態に変更され、且つ一旦作動状態となるとライン圧PLにより第1及び第2カットバルブ90,92がセルフロックされて作動状態が維持されるようになっており、同一のオン・オフ作動の組み合わせパターンを用いて10種類のシフトモードが設定可能である。
以上説明した本発明の実施形態によると、第1又は第2カットバルブ90,92のフェイル状態で5TH信号を出力してもLOWクラッチ圧が発生しないため、特開2004−332862号に記載した制御装置で必要であった5TH信号が出力される以前の変速途中に正常時とは異なる変速段の油圧を発生させる必要がなく、従って油圧の事前の検知は不要となり、自動変速機はニュートラルとなる。
例えば、5TH信号出力時に第1カットバルブ90がフェイルしてセット状態となった場合には、両方のカットバルブ90,92ともセット状態となる。これにより、LOWクラッチ11〜5THクラッチ15のいずれにも油圧が供給されることはなく、自動変速機はニュートラルとなる。
他方、5TH信号出力時に第2カットバルブ92がフェイルして作動状態となった場合には、両方のカットバルブ90,92とも作動状態となる。これにより、LOWクラッチ11〜5THクラッチ15のいずれにも油圧が供給されることはなく、自動変速機はニュートラルとなる。
また、5TH走行中にカットバルブ90,92のセルフロック圧に対してこれ以下の想定外の油圧低下が発生した場合にも、第1カットバルブ90のセルフロックが解除されて第1カットバルブ90はセット状態となり、第2カットバルブ92はセット状態のままなので、LOWクラッチ圧が発生することがなく、自動変速機はニュートラルとなる。
さらに、LOW信号と5TH信号を第1及び第2カットバルブ90,92を用いて共用化することで、前進変速段(LOW〜5TH)の変速制御を3個のオン・オフソレノイドバルブ81,82,83を用いて構成することが可能となり、その結果コストダウンと燃費の向上を実現可能である。
図12を参照すると、本発明実施形態に係るLOW定常状態と、2ND定常状態と、3RD定常状態の間におけるモード遷移図が示されている。下記に示す表1がこのモード遷移図に対応している。
このモード遷移図において、UP12´は1−2制御モードにおける1−2アップシフト、KD21´は1−2制御モードにおける2−1キックダウンシフト、TS21´は1−2制御モードにおける2−1停止シフトをそれぞれ示している。ここで、停止シフトTSはブレーキを踏んで減速してシフトしたことを示している。
また、UP12は1−2−3制御モードにおける1−2アップシフト、KD21は1−2−3制御モードにおける2−1キックダウンシフト、UP23は1−2−3制御モードにおける2−3アップシフト、KD32は1−2−3制御モードにおける3−2キックダウンシフト、KD31は1−2−3制御モードにおける3−1キックダウンシフトをそれぞれ示している。
さらに、TS21は1−2−3制御モードにおける2−1停止シフト、TS32は1−2−3制御モードにおける3−2停止シフト、TS31は1−2−3制御モードにおける3−1停止シフトをそれぞれ示している。
また、1MAX(A)はリニアソレノイドバルブA、即ちリニアソレノイドバルブ86から最大油圧がLOWクラッチ11に供給されることを、1MAX(C)はリニアソレノイドバルブC、即ちリニアソレノイドバルブ88から最大油圧がLOWクラッチ11に供給されることを意味する。
なお、表1においては、図12のモード遷移図に示されたUP23変速モード、KD32変速モード、KD31変速モード、TS32変速モード、TS31変速モードが省略されている。
図12のモード遷移図及び表1から明らかなように、本実施形態では、アップシフト中はロックアップクラッチ制御を優先させるためダウンシフトとは異なるリニアソレノイドバルブ構成で変速を実施している。
(1)で示される1−2アップシフトでは、リニアソレノイドバルブA、即ちリニアソレノイドバルブ86がロックアップクラッチを制御し、リニアソレノイドバルブB、即ちリニアソレノイドバルブ87が2NDクラッチ12を制御し、リニアソレノイドバルブC、即ちリニアソレノイドバルブ88がLOWクラッチ11を制御している。
これに対して、(6)で示される2−1キックダウンシフト及び(9)で示される2−1停止シフトは1−2−3制御モードで制御され、この制御モードではリニアソレノイドバルブA、即ちリニアソレノイドバルブ86がLOWクラッチ11を制御し、リニアソレノイドバルブB、即ちリニアソレノイドバルブ87が2NDクラッチ12を制御し、リニアソレノイドバルブC、即ちリニアソレノイドバルブ88が3RDクラッチ13を制御する。
図12の(5)で示される2−1キックダウンシフトは1−2アップシフト中にキックダウンを行った特殊な変速状態であり、この場合には変速をスムーズに実施するためリニアソレノイドバルブの受け持ち構成をアップシフトから変えずに制御する。
すなわち、表1にはフラグ‘0’で示される1−2制御モード及びフラグ‘1’で示される1−2−3制御モードが示されているが、一旦これらの制御モードに入った場合には変速モードが変化してもリニアソレノイドバルブの割り当てを変えずに制御するようにしている。
このように、本実施形態ではアップシフト中はロックアップクラッチの制御を優先させるため、ダウンシフトとは異なるリニアソレノイドバルブの割り当て構成で制御しているので、図5に示すようにLOW〜5THまでの各変速段においてロックアップクラッチの容量制御が可能となり、燃費の向上を図ることができる。さらに、1−2制御モード又は1−2−3制御モード中はリニアソレノイドバルブの割り当てを変えずに制御しているので、スムーズなシフトが可能である。
図5に示されるように、本実施形態の変速制御装置では、LOWと5THで同一のオン・オフソレノイドバルブ信号を共有している。よって、LOWクラッチ11と5THクラッチ15に選択的に油圧を供給するのは、第1及び第2カットバルブ90,92の状態である。
図5から明らかなように、LOWモードでは、第1カットバルブがセット状態で第2カットバルブが作動状態となっている。一方、5THモードでは、第1カットバルブ90が作動状態で第2カットバルブ92がセット状態となっており、LOWモードでの第1、第2カットバルブ90,92の状態と全く逆である。本実施形態では、このように第1、第2カットバルブ90,92の状態でLOWモードと5THモードとを切り分けている。
上述したように、第1、第2カットバルブ90,92は一旦作動状態になるとその状態でセルフロックされる。よって、LOW以外の他の変速段からLOWの定常制御に移行する際には、第1、第2カットバルブ90,92を必ずLOWクラッチ11に油圧を供給する側に移行させなければならない。
本実施形態では、図12のモード遷移図に示すように、LOW定常制御に移行する際にリニアソレノイドバルブA、即ち第1リニアソレノイドバルブ86から、又はリニアソレノイドバルブC、即ち第3リニアソレノイドバルブ88からLOWクラッチ11に最大油圧を供給するように制御している。
例えば、1−2−3制御モードの2−1キックダウン又は1−2−3制御モードの3−1キックダウンからLOW定常制御に移行する際には、第1リニアソレノイドバルブ86からLOWクラッチ11に最大油圧を所定時間供給する。この所定時間は例えば200msec程度である。また、この所定時間は、油圧の応答性を向上させることを考慮して、ATF油温(自動変速機油温)で持ち替える仕様としてもよい。
これにより、第1カットバルブ90のポート90c及び第2カットバルブ92のポート92aに所定時間の間最大油圧が供給され、第1カットバルブ90は確実にセット状態となり、第2カットバルブ92は確実に作動状態となる。
これにより、第1、第2カットバルブ90,92の不確定な動きは修正されて、LOW定常制御にスムーズに移行することができる。1−2−3制御モードのLOWインギヤからLOW定常状態に移行する場合も同様である。
一方、1−2制御モードの2−1キックダウン又は2−1停止シフトによりLOW定常制御に移行する際には、リニアソレノイドバルブC、即ち第3リニアソレノイドバルブ88からLOWクラッチ11に最大油圧を所定時間供給する。
これにより、第1カットバルブ90はセット状態に確実に移行し、第2カットバルブ92は作動状態に確実に移行する。その結果、第1、第2カットバルブ90,92の不確定な動きは修正されて、LOW定常状態にスムーズに移行することができる。
上述した実施形態では、LOW定常制御に移行する際、第1、第2カットバルブ90,92を必ずLOW側に移行させるため、一定時間LOWクラッチ11に最大油圧を供給しているが、本発明制御はこれに限定されるものではない。
例えば、2NDと5THでオン・オフソレノイドバルブ信号の組み合わせを共有し、第1,第2カットバルブ90,92の状態で2NDと5THとを切り分けている油圧回路においては、2ND定常制御に移行する際、一定時間2NDクラッチ12に最大油圧を出力するようすれば良い。
よって、上述した本発明制御は、複数のオン・オフソレノイドバルブの同一のオン・オフ作動組み合わせパターンが設定されている所定の変速段を確立する際に、第1、第2カットバルブ90,92を所定の変速段を確立するのに必要な作動状態又はセット状態とすべく、所定の変速段のクラッチに供給される油圧を所定時間のあいだ最大値にして第1、第2カットバルブ90,92に供給するように一般的に制御する。
ところで、LOW定常制御では、LOWクラッチ11にライン圧PLが供給されて、LOWが維持されるが、LOWから次の1−2変速制御にスムーズに移行させるために、シフトダウン時に割り当てられたリニアソレノイドバルブから1−2変速制御でのLOWクラッチ用リニアソレノイドバルブに切り替えを必要とするモードがある。
例えば、表2に示す3−1ダウンシフト(3−1キックダウンシフト)、1−2−3制御モードにおける2−1ダウンシフト(2−1キックダウンシフト)、又はLOWインギヤモードからLOW定常制御に移行し、LOW定常制御はライン圧PLで維持されるが、1−2変速制御の用意のためにリニアソレノイドバルブの割り当てをAからC、即ち第1リニアソレノイドバルブ86から第3リニアソレノイドバルブ88に切り替える必要がある。
すなわち、LOW定常状態ではLOWクラッチ11にライン圧PLが供給されて、いずれのリニアソレノイドバルブ86〜88もLOWクラッチ11には連通されないが、次の1−2変速制御の用意のためにLOWクラッチ11に割り当てられるリニアソレノイドバルブが第1リニアソレノイドバルブ86から第3リニアソレノイドバルブ88に切り替えられる。
LOW定常制御に移行する際には、オン・オフソレノイドバルブ81〜84の信号出力はLOWモードに移行するが、ライン圧PLがLOWクラッチ11に供給されるまでに多少の遅れ時間を伴う。
このように、オン・オフソレノイドバルブ81〜84が(1)−2−3変速モードからLOWモードに切り替えられ、同時にリニアソレノイドバルブが第1リニアソレノイドバルブ86から第3リニアソレノイドバルブ88に切り替えられると、LOWクラッチ11に供給される油圧が急減する恐れがある。
よって、望ましい実施形態では図13に示すように、オン・オフソレノイドバルブ81〜84をLOWモードに切り替えた後、所定のディレイ時間T(例えば数十ミリ秒)をもって第1リニアソレノイドバルブ86から第3リニアソレノイドバルブ88に切り替える。これにより、LOWクラッチ11の油圧が急減することが防止され、LOW定常状態にスムーズに移行することができる。