JP2004036802A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】前進駆動状態での停車時に後進駆動用の係合装置を係合させる車両用動力伝達装置の制御装置において、遮断状態から前進駆動状態への切換時にライン油圧が低下して係合ショックが発生することを防止する。
【解決手段】走行中からの停車時(S2の判断がYES)には、直ちにステップS5を実行して後進駆動用のブレーキB4を係合させるが、「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへの前進駆動シフトの場合(S6の判断がYES)には、前進駆動用のクラッチC1が係合した後、そのC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に作動油が十分充填されるのに必要な遅延時間β1を経過した後に、ステップS5を実行するようにした。
【選択図】 図9
【解決手段】走行中からの停車時(S2の判断がYES)には、直ちにステップS5を実行して後進駆動用のブレーキB4を係合させるが、「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへの前進駆動シフトの場合(S6の判断がYES)には、前進駆動用のクラッチC1が係合した後、そのC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に作動油が十分充填されるのに必要な遅延時間β1を経過した後に、ステップS5を実行するようにした。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用動力伝達装置の制御装置に係り、特に、前進駆動状態での停車時に後進駆動用の係合装置を係合させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(a) 前進走行が可能な前進駆動状態を成立させるために必要な油圧式の第1係合装置と、(b) 後進走行が可能な後進駆動状態を成立させるために必要な第2係合装置と、を有する車両用動力伝達装置が多用されている。特開平11−37273号公報に記載の自動変速機はその一例で、複数の遊星歯車装置とクラッチおよびブレーキとを備えて構成されており、そのクラッチおよびブレーキの作動状態により複数の前進変速段を有する前進駆動状態や後進駆動状態、動力伝達を遮断する遮断状態が成立させられるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の車両用動力伝達装置においては、ガレージシフトなどで前進駆動状態から後進駆動状態へ切り換える際に、前進駆動用の第1係合装置を解放するとともに後進駆動用の第2係合装置を係合させる必要があるため、後進駆動状態が成立するまでに時間がかかり、後進駆動状態が成立する前にアクセル操作されるとショックが発生する可能性があった。例えば図1に示す自動変速機16の場合、前進駆動状態(第1変速段)から後進駆動状態へ切り換える際には、図2の作動表から明らかなように、クラッチC1(第1係合装置)を解放するとともにクラッチC3およびブレーキB4を係合させる必要があり、後進駆動状態が成立するまでに時間がかかる。また、クラッチC3およびブレーキB4を同時に係合させると、例えば図15に示すように作動油が不足してライン油圧PLが一時的に低下し、係合ショックを生じる可能性もある。特に、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンを駆動力源として備えている車両においては、燃費や排出ガスを低減するためにアクセルOFF時のアイドル回転速度をできるだけ低くすることが考えられており、そのエンジンでオイルポンプを回転駆動している場合、作動油の吐出量が少ないため上記問題が顕著となる。図15のPC1はクラッチC1の油圧で、PB4はブレーキB4の油圧で、PC3はクラッチC3の油圧であり、時間t1 の「D→R」はD(ドライブ)ポジションからR(リバース)ポジションへのシフト操作で、前進駆動状態から後進駆動状態への切換操作を意味しており、マニュアルバルブによる油圧回路の切換などでクラッチC1が解放されるとともにブレーキB4およびクラッチC3が係合させられる。
【0004】
一方、後進駆動状態を成立させるために必要な上記ブレーキB4(第2係合装置)は、前進駆動状態(第1変速段)においても係合させることが可能であるため、未だ公知ではないが、前進駆動状態における停車時にそのブレーキB4を係合させることが考えられている。このようにすれば、運転者のシフトレバー操作などに従って実際に後進駆動状態へ切り換える際には、既にブレーキB4が係合させられているため、クラッチC1を解放してクラッチC3を係合させるだけで良く、作動油不足による油圧の低下が軽減されて係合ショックの発生が抑制されるとともに切換時間が短縮される。
【0005】
しかしながら、走行中からの停車時など、既にクラッチC1(第1係合装置)が係合している前進駆動状態でブレーキB4(第2係合装置)を係合させる場合には問題はないが、遮断状態(パーキングPやニュートラルN)から前進駆動状態へ切り換えられた時には、クラッチC1を係合させるとともにブレーキB4を係合させることになるため、作動油不足により油圧が一時的に低下して係合ショックを発生する可能性があった。図16は、クラッチC1を係合させた後にブレーキB4を係合させる場合で、例えばトルクコンバータ14(図1参照)のタービン回転速度NTが略0となった後にブレーキB4に対する作動油の供給を開始しているが、ブレーキB4に対する作動油の供給に伴ってライン油圧PLが低下することにより、一旦係合したクラッチC1が解放され、再係合する際に係合ショックが発生する。図16の時間t1 の「N→D」はN(ニュートラル)ポジションからD(ドライブ)ポジションへのシフト操作で、遮断状態から前進駆動状態への切換操作を意味しており、マニュアルバルブによって油圧回路が機械的に切り換えられることにより、クラッチC1に作動油が供給されて係合させられる。また、時間t2 は、クラッチC1が略係合してタービン回転速度NTが略0となった時間で、ブレーキB4に対する作動油の供給が開始されるが、クラッチC1の油圧アクチュエータやアキュムレータには作動油が完全に満たされていないため、ブレーキB4に対する作動油の供給開始に伴ってライン油圧PLが低下すると、クラッチC1の油圧PC1も低下して解放してしまうのである。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、前進駆動状態での停車時に後進駆動用の係合装置を係合させる車両用動力伝達装置の制御装置において、遮断状態から前進駆動状態への切換時にライン油圧が低下して係合ショックが発生することを防止することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、走行可能な駆動状態を成立させる際に油圧式の第1係合装置を係合させる車両用動力伝達装置の制御装置において、(a) 前記駆動状態での停車時に、係合、解放に拘らずその駆動状態を許容する油圧式の第2係合装置を係合させる停車時係合手段と、(b) 停車時に前記駆動状態へ切り換えられた時には、前記第1係合装置に対する作動油の供給が略完了した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させる遅延手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
なお、「第1係合装置に対する作動油の供給が略完了した後」とは、単に第1係合装置が係合しただけでなく、第2係合装置に対する作動油の供給でライン油圧が変動しても第1係合装置の係合状態が維持されるように、油圧アクチュエータやアキュムレータに作動油が略満たされた状態を意味する。
【0009】
第2発明は、第1発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、(a) 前記第1係合装置は、前進走行が可能な前進駆動状態を成立させるために必要な係合装置で、(b) 前記第2係合装置は、係合、解放に拘らず前記前進駆動状態を許容するとともに、後進走行が可能な後進駆動状態を成立させるために必要な係合装置で、(c) 前記停車時係合手段は、前記前進駆動状態での停車時に前記第2係合装置を係合させるものであることを特徴とする。
【0010】
第3発明は、第2発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、(a) 前記前進駆動状態では、前記第1係合装置の他に油圧式の第3係合装置が係合させられるようになっており、(b) 前記遅延手段は、前記第1係合装置および前記第3係合装置に対する作動油の供給が共に略完了した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものであることを特徴とする。
【0011】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの車両用動力伝達装置の制御装置において、前記遅延手段は、前記第1係合装置の係合に伴って回転速度が変化する回転部材の回転速度変化に基づいてその第1係合装置の係合状態を判断する係合判断手段を有し、その係合判断手段によって前記第1係合装置が所定の係合状態と判断された後、予め定められた第1遅延時間が経過した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものであることを特徴とする。
【0012】
第5発明は、第1発明〜第3発明の何れかの車両用動力伝達装置の制御装置において、(a) 前記駆動状態を成立させる際に前記第1係合装置に作動油を供給するように油圧回路を切り換える油路切換手段を有し、(b) 前記遅延手段は、前記駆動状態を成立させる際に前記油路切換手段によって油圧回路が切り換えられた後、予め定められた第2遅延時間が経過した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものであることを特徴とする。
【0013】
第6発明は、第4発明または第5発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記第1遅延時間および前記第2遅延時間は、油温をパラメータとして定められていることを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
このような車両用動力伝達装置の制御装置においては、第1係合装置が係合させられる駆動状態での停車時に、停車時係合手段により第1係合装置とは別に第2係合装置が係合させられるが、停車時に駆動状態へ切り換えられた時には、第1係合装置に対する作動油の供給が略完了した後に第2係合装置に対する作動油の供給が開始されるため、第2係合装置に対する作動油の供給でライン油圧が変動しても第1係合装置の係合状態が維持される。これにより、例えば図16に示すように、一旦係合させられた第1係合装置(クラッチC1)がライン油圧PLの低下に起因して解放され、再係合する際に係合ショックを発生することが防止される。
【0015】
第2発明は、前進駆動状態を成立させる際に第1係合装置が係合させられ、後進駆動状態を成立させるために第2係合装置が係合させられる場合で、前進駆動状態での停車時に停車時係合手段によって第2係合装置が係合させられるため、運転者のシフトレバー操作などに従って実際に後進駆動状態へ切り換える際には第2係合装置に作動油を供給する必要がなく、作動油不足による油圧の低下が軽減されて係合ショックの発生が抑制されるとともに後進駆動状態を速やかに成立させることができる。
【0016】
第3発明は、前進駆動状態で第1係合装置の他に第3係合装置が係合させられる場合で、遅延手段は、それ等の第1係合装置および第3係合装置に対する作動油の供給が共に略完了した後に、停車時係合手段による第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるため、第2係合装置に対する作動油の供給に起因して第1係合装置や第3係合装置が解放、再係合して係合ショックを発生することが防止される。
【0017】
第4発明、第5発明の遅延手段は、何れも予め定められた第1遅延時間、第2遅延時間が経過した後に、停車時係合手段による第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるため、例えば油圧センサにより第1係合装置の油圧を検出するなどして作動油の供給の完了を判断する場合に比較して、装置が簡単且つ安価に構成される。第4発明では、所定の回転部材の回転速度変化に基づいて第1係合装置の係合状態を判断し、所定の係合状態になった時を基準として第1遅延時間を計測するため、第1係合装置に対する作動油の供給状態を高い精度で判定でき、第1係合装置の解放を回避しつつできるだけ速やかに第2係合装置に対する作動油の供給を開始することができる。
【0018】
第6発明では、上記第1遅延時間および第2遅延時間が油温をパラメータとして定められるため、油温の相違に拘らず第2係合装置に対する作動油供給の開始タイミングが適切に制御され、第1係合装置の解放、再係合による係合ショックを防止しつつ、第2係合装置に対する作動油供給の開始タイミングをできるだけ早くして、第2係合装置を速やかに係合させることができる。すなわち、油温が低い場合は一般に粘性が高くなり、油圧回路内の圧漏れが減少してライン油圧の低下が抑制されるため、第1係合装置が係合した後の第1遅延時間については、一旦係合した第1係合装置が解放する可能性が低くなるため、油温が低い程第1遅延時間を短くすることができる一方、第1係合装置に対する作動油の充填時間を含む第2遅延時間については、第1係合装置に対する作動油の充填に必要な所要時間が長くなるため、一旦係合した第1係合装置が解放する可能性が低くなることとの兼ね合いで、作動油の粘性特性などを考慮して第2遅延時間を定めることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の車両用動力伝達装置は、例えば複数の遊星歯車装置とクラッチおよびブレーキとを有し、そのクラッチおよびブレーキの作動状態により複数の前進変速段を成立させることができる前進駆動状態や後進駆動状態、動力伝達を遮断する遮断状態に切り換えることができる自動変速機を有して構成されるが、第1係合装置が係合させられる駆動状態と、その他の駆動状態或いは非駆動状態(遮断状態)とを有するものであれば良く、必ずしも変速比が異なる複数の変速段を成立させる必要はない。第2発明、第3発明では、前進駆動状態を成立させる際に第1係合装置が係合させられ、第2係合装置は後進駆動状態を成立させために必要なものであるが、他の発明の実施に際しては、逆に後進駆動状態を成立させる際に第1係合装置が係合させられ、第2係合装置は前進駆動状態を成立させために必要なものであっても良いなど、種々の態様が可能である。
【0020】
係合、解放に拘らず駆動状態を許容する第2係合装置は、例えば一方向クラッチと並列に配設され、第1係合装置が係合させられる駆動状態においては、通常は解放状態に保持されて一方向クラッチの作用で動力伝達が行われる一方、エンジンブレーキ等の駆動力源ブレーキを作用させる際に係合させられるものである。
【0021】
第2係合装置に対する作動油の供給時に、ライン油圧の変動に起因して第1係合装置が解放、再係合することを一層確実に防止する上で、その第1係合装置にはアキュムレータを接続することが望ましい。但し、第1係合装置の油圧アクチュエータ内に作動油が充填されてライン油圧程度まで達した場合には、第2係合装置に対する作動油の供給でライン油圧が変動しても、第1係合装置を係合状態に維持できる場合には、必ずしもアキュムレータは必要ない。
【0022】
遅延手段は、例えば第4発明、第5発明のように所定の遅延時間が経過した後に第2係合装置に対する作動油の供給を開始するように構成されるが、第1係合装置の油圧アクチュエータ内の油圧を油圧センサによって検出し、その油圧が所定値以上となった時に第2係合装置に対する作動油の供給を開始したり、アキュムレータのピストンの移動ストロークを検出して、その移動ストロークが所定値以上となった時に第2係合装置に対する作動油の供給を開始したり、第1係合装置の係合に伴って回転速度が変化する回転部材の回転速度変化や上記ピストンの移動速度などから作動油の供給が略完了する時間を推測して第2係合装置に対する作動油の供給を開始したりするなど、第2係合装置に対する作動油の供給に拘らず第1係合装置を係合状態に維持できるか否かを判断できる種々の態様が可能である。その場合も、タイマにより所定時間が経過したら第2係合装置に対する作動油の供給を開始するバックアップを設けることが望ましい。
【0023】
第4発明における第1係合装置の所定の係合状態は、例えば係合が完了して回転部材の回転速度が所定値に達した状態、或いは回転速度変化が略0となった状態などであるが、回転速度が変化する過渡時の所定のスリップ状態などでも良い。
【0024】
第5発明の油路切換手段は、例えば運転者によって操作されるシフトレバーなどの駆動状態選択操作手段の操作に従って駆動状態が選択された場合に、電気的或いは機械的に油圧回路を切り換えて第1係合装置に作動油を供給するように構成される。例えば、駆動状態選択操作手段としてのシフトレバーの操作に従って機械的に弁体(スプールなど)が移動させられて油圧回路を切り換えるマニュアルバルブが好適に用いられるが、電磁弁からの信号圧などで電気的に弁体が移動させられて油圧回路を切り換えるものでも良い。第2係合装置に対する作動油の供給は、作動油の供給を電気的に制御できるように、電磁弁からの信号圧などで電気的に弁体を移動させて油圧回路を切り換える切換弁装置が用いられる。第3発明の第3係合装置についても、電気的に油圧回路を切り換える切換弁装置を用いることが望ましい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。トルクコンバータ14は、エンジン12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えており、ポンプ翼車20とタービン翼車24との間で流体を介して動力伝達を行うとともに、ポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26を備えている。ロックアップクラッチ26は、係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチで、完全係合させられることにより、ポンプ翼車20およびタービン翼車24は一体回転させられる。
【0026】
自動変速機16は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置40、およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置42、第3遊星歯車装置44を備えている遊星歯車式の変速機で、第1遊星歯車装置40のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF2およびブレーキB3を介してハウジング38に選択的に連結され、逆方向(入力軸22と反対方向)の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジング38に選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられた一方向クラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置42のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっている。第2遊星歯車装置42のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置44のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF0およびクラッチC1を介して入力軸22に選択的に連結され、その入力軸22に対して相対的に逆方向へ回転することが阻止されるようになっている。第2遊星歯車装置42のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置44のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっており、更にブレーキB4と並列に設けられた一方向クラッチF3により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。そして、第3遊星歯車装置44のキャリアCA3は、出力軸46に一体的に連結されている。
【0027】
上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1〜B4(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路98(図3参照)のソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図5参照)の操作位置(ポジション)に応じて6つの前進変速段(1st〜6th)および1つの後進変速段(Rev)が成立させられる。図2の「1st」〜「6th」は前進の第1変速段〜第6変速段を意味しており、第1変速段「1st」から第6変速段「6th」へ向かうに従って変速比(入力軸22の回転速度Nin/出力軸46の回転速度Nout )は小さくなり、第4変速段「4th」の変速比は1.0である。また、図2において「○」は係合、空欄は解放を表し、「(○)」はエンジンブレーキ時の係合を表し、「●」は動力伝達に関与しない係合を表している。
【0028】
図3の油圧制御回路98は、上記変速用のソレノイド弁Sol1〜Sol5、リニアソレノイド弁SL1、SL2の他に、主にロックアップ油圧すなわち前記係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPを制御するリニアソレノイド弁SLU、主にライン油圧PLを制御するリニアソレノイド弁SLTを備えており、油圧制御回路98内の作動油は、ロックアップクラッチ14へも供給されるとともに、自動変速機16等の各部の潤滑にも使用される。
【0029】
図3は、図1のエンジン12や自動変速機16などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によってアクセル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン12のアイドル回転速度NEIDL を制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC(アイドル回転速度制御)バルブ53が設けられている。この他、エンジン12の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン12の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速V(出力軸46の回転速度Nout に対応)を検出するための車速センサ66、エンジン12の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度Nin)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
【0030】
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や自動変速機16の変速制御、ロックアップクラッチ26の係合制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
【0031】
エンジン12の出力制御は、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射装置92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御し、アイドル回転速度制御のためにISCバルブ53を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図4に示す関係から実際のアクセル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン12の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってエンジン12のクランク軸をクランキングする。
【0032】
自動変速機16の変速制御は、シフトレバー72のレバーポジションPSHに応じて行われる。シフトレバー72は運転席の近傍に配設され、図5に示す4つのレバーポジション「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、または「S(シーケンシャル)」へ手動操作されるようになっている。「R」ポジションは後進走行位置で、「N」ポジションは動力伝達遮断位置で、「D」ポジションは自動変速による前進走行位置で、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置であり、シフトレバー72がどのレバーポジションへ操作されているかが前記レバーポジションセンサ74によって検出される。また、レバーポジション「R」、「N」、「D(S)」は車両の前後方向(図5の上方が車両前側)に沿って設けられており、シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブ100(図8参照)がシフトレバー72の前後操作に伴って機械的に作動させられることにより、油圧回路が切り換えられるようになっており、「R」ポジションではリバース用回路が機械的に成立させられるなどして図2に示す後進変速段「Rev」が成立させられ、「N」ポジションではニュートラル回路が機械的に成立させられて総てのクラッチCおよびブレーキBが解放され、動力伝達を遮断するニュートラル「N」が成立させられる。
【0033】
また、前進走行位置である「D」ポジションまたは「S」ポジションへ操作された場合は、同じくシフトレバー72の操作に従ってマニュアルバルブにより油圧回路が切り換えられることにより前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」で変速しながら前進走行することが可能となる。シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。すなわち、前記ソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁をそれぞれ制御することにより、油圧回路を切り換えて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の何れかの前進変速段を成立させるのである。この変速制御は、例えば図6に示すように車速Vおよびスロットル弁開度θTHをパラメータとして予め記憶された変速マップ(変速条件)に従って行われ、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段を成立させる。
【0034】
シフトレバー72が「S」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断してマニュアル変速モードを成立させる。「S」ポジションは、車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、油圧回路は「D」ポジションの時と同じであるが、「D」ポジションで変速可能な変速範囲内すなわち第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の間で定められた複数の変速レンジを任意に選択できるマニュアル変速モードを電気的に成立させるのである。「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「(+)」、およびダウンシフト位置「(−)」が設けられており、シフトレバー72がそれ等のアップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」へ操作されると、そのことが前記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82によって検出され、アップ指令RUPやダウン指令RDNに従って図7に示すように最高速段すなわち変速比が小さい高速側の変速範囲が異なる6つの変速レンジ「D」、「5」、「4」、「3」、「2」、「L」の何れかを電気的に成立させるとともに、各変速範囲内において例えば図6の変速マップに従って自動的に変速制御を行う。図7の○付き数字はエンジンブレーキ作用が得られる変速段で、各変速レンジの高速側の変速段でエンジンブレーキ作用が得られるようになっており、例えば下り坂などでシフトレバー72をダウンシフト位置「−」へ繰り返し操作すると、変速レンジが例えば「4」レンジから、「3」レンジ、「2」レンジ、「L」レンジへ切り換えられ、第4変速段「4th」から第3変速段「3rd」、第2変速段「2nd」、第1変速段「1st」へ順次ダウンシフトされて、エンジンブレーキが段階的に増大させられる。
【0035】
上記アップシフト位置「(+)」およびダウンシフト位置「(−)」は何れも不安定で、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により自動的に「S」ポジションへ戻されるようになっており、アップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」への操作回数或いは保持時間などに応じて変速レンジが変更される。
【0036】
本実施例では上記自動変速機16が動力伝達装置に相当し、シフトレバー72が「D」ポジション或いは「S」ポジションへ操作された時に成立させられる第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」は、前進走行が可能な前進駆動状態で、そのうち停車時に成立させられる第1変速段「1st」で係合させられるクラッチC1は第1係合装置に相当する。シフトレバー72が「R」ポジションへ操作された時に成立させられる後進変速段「Rev」は、後進走行が可能な後進駆動状態で、その後進変速段「Rev」において係合させられるクラッチC3およびブレーキB4のうち、第1変速段「1st」でもエンジンブレーキを作用させる際に係合させられるブレーキB4は第2係合装置に相当する。また、シフトレバー72が「N」ポジションへ操作された時に成立させられるニュートラル「N」は動力伝達遮断状態である。
【0037】
図8は、油圧制御回路98のうち上記第1変速段「1st」および後進変速段「Rev」に関与するクラッチC1、C4およびブレーキB4に関する部分を示す概略図で、油圧発生装置102から出力されるライン油圧PLは、シフトレバー72に機械的に連結されたマニュアルバルブ100を介して各部の油圧アクチュエータへ出力される。油圧発生装置102は、前記エンジン12によって回転駆動されるオイルポンプおよびリニアソレノイド弁SLTなどを有して構成されており、アクセル操作量Accなどに応じてライン油圧PLを調圧する。マニュアルバルブ100は油路切換手段に相当し、シフトレバー72が「D」または「S」ポジションへ操作されると、ライン油圧PLを前進用油圧PD として出力し、C1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106へ作動油が供給されることにより、クラッチC1が係合させられて第1変速段「1st」が成立させられる。また、ソレノイド弁Sol5からの信号油圧に従って開閉されるC4リレーバルブ108を経てC4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112へ作動油が供給されることにより、クラッチC4が係合させられ、リニアソレノイド弁SL2からの信号油圧に従って開閉されるブレーキコントロールバルブ114を経てB4油圧アクチュエータ116へ作動油が供給されることにより、ブレーキB4が係合させられる。ソレノイド弁Sol5およびC4リレーバルブ108、リニアソレノイド弁SL2およびブレーキコントロールバルブ114は、電気的に油圧回路を切り換える切換弁装置として機能する。
【0038】
一方、前記電子制御装置90は、前進駆動状態での停車時、すなわち通常は第1変速段「1st」での停車時に、後進用のブレーキB4を係合させる後進予備制御を実施するようになっている。図9は、かかる後進予備制御を具体的に説明するフローチャートで、ステップS5を実行する部分は停車時係合手段に相当し、ステップS6〜S11を実行する部分は遅延手段に相当し、そのうちのステップS8を実行する部分は係合判断手段に相当する。
【0039】
図9のステップS1では、車速Vに基づいて走行中か否かを判断し、走行中の場合はステップS2で車両が停止したか否か、すなわち走行中からの停車か否かを判断する。走行中からの停車の場合は、ステップS3で前進走行ポジション、すなわちレバーポジションPSHが「D」または「S」であるか否か、言い換えれば前進駆動状態か否かを判断し、前進走行ポジションの場合はステップS4でフットブレーキがON(操作中)か否かを判断する。そして、ブレーキONの場合は、ステップS5でリニアソレノイド弁SL2によりブレーキコントロールバルブ114を切り換えることにより、B4油圧アクチュエータ116に作動油を供給してブレーキB4を係合させる。図10は、この時のブレーキB4の油圧PB4の変化を示すタイムチャートである。
【0040】
上記ブレーキB4は、一方向クラッチF3と並列に配設されているもので、第1変速段「1st」では、通常は解放状態に保持されて一方向クラッチF3の作用で動力伝達が行われ、エンジンブレーキを作用させる際に係合させられるものであり、ブレーキB4を係合させても第1変速段「1st」での発進が損なわれる恐れはない。また、ブレーキB4は後進変速段「Rev」を成立させる際に係合させられるものであるため、駐車場などで前進走行からの停車後にシフトレバー72が「R」ポジションへ操作された場合には、マニュアルバルブ100による油圧回路の切換などでクラッチC1が解放されるとともにクラッチC3へ作動油が供給され、そのクラッチC3が係合させられることにより、後進変速段「Rev」が成立させられる。ブレーキB4は、車両の停止に伴って事前に係合させられているため、作動油不足による油圧の低下が軽減されて係合ショックの発生が抑制されるとともに、後進変速段「Rev」への切換時間が短縮される。
【0041】
前記ステップS1の判断がNO(否定)の場合、すなわち走行中でない場合は、ステップS6を実行し、前進駆動シフトか否か、すなわちシフトレバー72が「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへ操作されたか否かを判断する。前進駆動シフトの場合は、ステップS7でタイマTimAによる計時をスタートし、ステップS8でクラッチC1の係合が略完了したか否かを判断する。クラッチC1は、マニュアルバルブ100による油圧回路の切換に伴い、C1油圧アクチュエータ104に前進用油圧PD が供給されることによって係合させられるもので、停車時にはクラッチC1の係合に伴ってタービン回転速度NTが0になるため、そのタービン回転速度NTが略0になったか否かによりクラッチC1の係合を判断できる。タービン翼車24は、クラッチC1の係合に伴って回転速度が変化する回転部材である。
【0042】
タービン回転速度NTが略0でない場合には、ステップS9でタイマTimAが予め定められたバックアップ時間αに達したか否かを判断し、バックアップ時間αになるまでステップS8を繰り返す。バックアップ時間αは、クラッチC1の係合に必要な時間より大きく、通常はタイマTimAがバックアップ時間αに達する前にタービン回転速度NTが略0となってステップS8の判断がYES(肯定)になり、ステップS10以下を実行するが、タービン回転速度センサ76の故障時などには、タイマTimAがバックアップ時間αに達してステップS9の判断がYESになることによりステップS10以下を実行する。バックアップ時間αは一定値であっても良いが、クラッチC1の係合所要時間は作動油の粘性すなわちAT油温TOIL などによって変化するため、そのAT油温TOIL などをパラメータとして定められるようにしても良い。
【0043】
ステップS10では、タイマTimBによる計時をスタートし、ステップS11では、タイマTimBが予め定められた遅延時間β1に達したか否かを判断する。遅延時間β1は、前記ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動しても、前記クラッチC1の係合状態が維持されるように、そのクラッチC1を係合させるC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に作動油が十分充填されるのに必要な時間であり、AT油温TOIL をパラメータとして定められたマップや演算式などに従って設定されるようになっている。AT油温TOIL が低い場合は粘性が高くなり、油圧制御回路98内の圧漏れが減少してライン油圧PLの低下が抑制されるため、一旦係合したクラッチC1が解放する可能性は低くなり、遅延時間β1を短くすることができるのである。遅延時間β1は第1遅延時間に相当し、タイマTimBがその遅延時間β1に達したらステップS5を実行し、B4油圧アクチュエータ116に作動油を供給してブレーキB4を係合させる。図11は、N→Dシフトの場合のタイムチャートで、時間t2 はクラッチC1が係合してタービン回転速度NTが略0となり、ステップS8の判断がYESになった時間であり、時間t3 はタイマTimBが遅延時間β1に達して、B4油圧アクチュエータ116に対する作動油の供給が開始された時間である。
【0044】
このように、本実施例では前進走行ポジションでの停車時にステップS5でブレーキB4が係合させられるため、その後にシフトレバー72が「R」ポジションへ操作されて実際に後進変速段「Rev」を成立させる際には、ブレーキB4に作動油を供給する必要がなく、クラッチC3を係合させるだけで良いため、作動油不足によるライン油圧PLの低下が軽減されて係合ショックの発生が抑制されるとともに、後進変速段「Rev」を速やかに成立させることができる。
【0045】
また、走行中からの停車時、すなわち既にクラッチC1が係合状態の場合には、直ちにステップS5を実行してブレーキB4を係合させるが、「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへの前進駆動シフトの場合には、ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動しても、クラッチC1の係合状態が維持されるように、そのクラッチC1を係合させるC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に作動油が十分充填されるのに必要な遅延時間β1を経過した後に、ステップS5を実行するため、B4油圧アクチュエータ116に対する作動油の供給でライン油圧PLが変動してもクラッチC1が係合状態に維持される。これにより、例えば図16に示すように、クラッチC1の係合(タービン回転速度NT≒0)を起点としてブレーキB4に対する作動油の供給が開始されることにより、ライン油圧PLの低下に起因してクラッチC1が解放され、再係合する際に係合ショックを発生することが防止される。
【0046】
また、本実施例ではクラッチC1が係合した後、予め定められた遅延時間β1が経過した後に、ブレーキB4に対する作動油の供給を開始するため、例えば油圧センサによりクラッチC1の油圧PC1を検出するなどして作動油の供給の完了を判断する場合に比較して、装置が簡単且つ安価に構成される。特に、タービン回転速度NTに基づいてクラッチC1の係合状態を判断し、係合が略完了した時(NT≒0)を基準として遅延時間β1を計測するため、C1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に対する作動油の供給状態を高い精度で判定でき、クラッチC1の解放を回避しつつできるだけ速やかにブレーキB4に対する作動油の供給を開始することができる。
【0047】
また、遅延時間β1はAT油温TOIL をパラメータとして定められるため、AT油温TOIL の相違に拘らずブレーキB4に対する作動油供給の開始タイミングが適切に制御され、クラッチC1の解放、再係合による係合ショックを防止しつつ、ブレーキB4に対する作動油供給の開始タイミングをできるだけ早くして、ブレーキB4を速やかに係合させることができる。
【0048】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0049】
図12は、前進駆動シフトすなわちシフトレバー72が「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへ操作された場合に、十分な伝達トルク性能を確保するために前記クラッチC1に加えてクラッチC4を係合させる場合で、前記図9の代わりに用いられるフローチャートであり、前記ステップS10およびS11の代わりにステップS20、S21、S22が設けられている。
【0050】
ステップS20では、タイマTimCによる計時をスタートし、ステップS21では、ソレノイド弁Sol5によりC4リレーバルブ108を切り換えることにより、C4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112に作動油を供給してクラッチC4を係合させる一方、ステップS22では、タイマTimCが予め定められた遅延時間β2に達したか否かを判断する。遅延時間β2は、前記ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動しても、クラッチC1およびC4の係合状態が維持されるように、それ等のクラッチC1、C4を係合させるC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106、C4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112に作動油が十分充填されるのに必要な時間であり、AT油温TOIL をパラメータとして定められたマップや演算式などに従って設定されるようになっている。特に、後から係合させられるクラッチC4の係合状態が維持されるように定める必要があり、そのクラッチC4のC4油圧アクチュエータ110、C4アキュムレータ112に対する作動油の充填時間は、AT油温TOIL が低くて粘性が高い程長くなる一方、一旦係合したクラッチC4はAT油温TOIL が低くて粘性が高い程解放し難くなるため、遅延時間β2は作動油の粘性特性などを考慮してAT油温TOIL をパラメータとして定められる。この遅延時間β2は第1遅延時間に相当し、タイマTimCがその遅延時間β2に達したらステップS5を実行してブレーキB4を係合させる。図13は、N→Dシフトの場合のタイムチャートで、時間t2 はクラッチC1が係合してタービン回転速度NTが略0となり、ステップS8の判断がYESになった時間であり、時間t3 はタイマTimCが遅延時間β2に達して、B4油圧アクチュエータ116に対する作動油の供給が開始された時間である。
【0051】
電子制御装置90によって実行される一連の信号処理のうち、図12のステップS6、S7、S8、S9、S20、S21、S22を実行する部分は遅延手段に相当し、そのうちのステップS8を実行する部分は係合判断手段に相当する。
【0052】
本実施例では、前進駆動シフトの際にクラッチC1に加えてクラッチC4が係合させられるため、十分な伝達トルク性能が得られて、車両の発進・加速性能が向上する。
【0053】
また、ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動してもクラッチC1、C4の係合状態が維持されるように、クラッチC1の係合から予め定められた遅延時間β2を経過した後に、ステップS5を実行するため、B4油圧アクチュエータ116に対する作動油の供給でライン油圧PLが変動してもクラッチC1、C4が係合状態に維持され、それ等の解放、再係合に起因するショックの発生が防止される。
【0054】
また、本実施例ではクラッチC1が係合した後、予め定められた遅延時間β2が経過した後に、ブレーキB4に対する作動油の供給を開始するため、例えば油圧センサによりクラッチC1、C4の油圧PC1、PC4を検出するなどして作動油の供給の完了を判断する場合に比較して、装置が簡単且つ安価に構成される。
【0055】
また、遅延時間β2はAT油温TOIL をパラメータとして定められるため、AT油温TOIL の相違に拘らずブレーキB4に対する作動油供給の開始タイミングが適切に制御され、クラッチC1、C4の解放、再係合による係合ショックを防止しつつ、ブレーキB4に対する作動油供給の開始タイミングをできるだけ早くして、ブレーキB4を速やかに係合させることができる。
【0056】
図14は、同じく前進駆動シフトの際にクラッチC1に加えてクラッチC4を係合させる場合で、前記図12のステップS21、S22の代わりにステップS23が設けられ、前記タイマTimAが予め定められた遅延時間β3に達したら前記ステップS5を実行してブレーキB4を係合させる。タイマTimAは、シフトレバー72が「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへ操作され、マニュアルバルブ100により油圧回路が切り換えられてC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に対する作動油の供給が開始された時に計時を開始するもので、遅延時間β3は、前記ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動しても、クラッチC1およびC4の係合状態が維持されるように、それ等のクラッチC1、C4を係合させるC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106、C4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112に作動油が十分充填されるのに必要な時間で、AT油温TOIL をパラメータとして予め定められたマップや演算式などに従って、例えば図13に示すように前記遅延時間β2の経過時と略同じ時間にブレーキB4に対する作動油の供給が開始されるように設定される。C1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106、C4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112に対する作動油の充填時間は、AT油温TOIL が低くて粘性が高い程長くなる一方、一旦係合したクラッチC1、C4はAT油温TOIL が低くて粘性が高い程解放し難くなるため、遅延時間β3は作動油の粘性特性などを考慮してAT油温TOIL をパラメータとして定められる。この遅延時間β3は第2遅延時間に相当し、マニュアルバルブ100は油路切換手段に相当する。
【0057】
電子制御装置90によって実行される一連の信号処理のうち、図14のステップS6、S7およびS23を実行する部分は遅延手段に相当する。
【0058】
本実施例においても、前記図12の実施例と同様の作用効果が得られる。なお、前記図9のように前進駆動シフトの際にクラッチC4を係合させることなくクラッチC1だけを係合させる場合にも、本実施例のようにタイマTimAが所定の第2遅延時間に達した時にステップS5を実行させるようにしても良い。
【0059】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された車両用駆動装置を説明する骨子図である。
【図2】図1の自動変速機における、複数の油圧式摩擦係合装置の作動の組合わせとそれにより成立する変速段との関係を示す図である。
【図3】図1の車両用駆動装置が備えている制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図4】図3の電子スロットル弁のスロットル弁開度とアクセル操作量との関係を示す図である。
【図5】図3のシフトレバーを具体的に示す斜視図である。
【図6】図1の自動変速機の変速段を運転状態に応じて自動的に切り換える変速マップの一例を説明する図である。
【図7】図5のシフトレバーの操作で切り換えられる変速レンジを説明する図である。
【図8】図3の油圧制御回路のうち第1変速段に関連する部分を説明するブロック線図である。
【図9】図1の車両用駆動装置において、前進駆動状態での停車時に後進駆動用のブレーキB4を係合させる後進予備制御を説明するフローチャートである。
【図10】図9において走行中からの停車時にブレーキB4を係合させる際の油圧PB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【図11】図9において前進駆動シフト時にクラッチC1に続いてブレーキB4を係合させる際の油圧PC1およびPB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【図12】前進駆動時にクラッチC1と共にクラッチC4を係合させる場合の実施例を説明する図で、前記図10に対応するフローチャートである。
【図13】図12において前進駆動シフト時にクラッチC1に続いてクラッチC4、ブレーキB4を係合させる際の油圧PC1、PC4、およびPB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【図14】前進駆動シフトからの経過時間に基づいてブレーキB4に対する作動油の供給を開始する場合の実施例を説明する図で、図12に対応するフローチャートである。
【図15】シフトレバーがDポジションからRポジションへ切り換えられた時に、クラッチC1を解放するとともにクラッチC3およびブレーキB4を係合させる際のそれ等の油圧PC1、PC3、およびPB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【図16】前進駆動シフト時にクラッチC1が係合した時点でブレーキB4に対する作動油の供給を開始した場合の油圧PC1およびPB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【符号の説明】
16:自動変速機(動力伝達装置) 24:タービン翼車(回転部材) 66:車速センサ 74:レバーポジションセンサ 76:タービン回転速度センサ 78:AT油温センサ 90:電子制御装置 100:マニュアルバルブ(油路切換手段) C1:クラッチ(第1係合装置) C4:クラッチ(第3係合装置) B4:ブレーキ(第2係合装置) β1、β2:第1遅延時間 β3:第2遅延時間
ステップS5:停止時係合手段
ステップS6〜S11:遅延手段
ステップS6〜S22:遅延手段
ステップS6、S7、S23:遅延手段
ステップS8:係合判断手段
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用動力伝達装置の制御装置に係り、特に、前進駆動状態での停車時に後進駆動用の係合装置を係合させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(a) 前進走行が可能な前進駆動状態を成立させるために必要な油圧式の第1係合装置と、(b) 後進走行が可能な後進駆動状態を成立させるために必要な第2係合装置と、を有する車両用動力伝達装置が多用されている。特開平11−37273号公報に記載の自動変速機はその一例で、複数の遊星歯車装置とクラッチおよびブレーキとを備えて構成されており、そのクラッチおよびブレーキの作動状態により複数の前進変速段を有する前進駆動状態や後進駆動状態、動力伝達を遮断する遮断状態が成立させられるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の車両用動力伝達装置においては、ガレージシフトなどで前進駆動状態から後進駆動状態へ切り換える際に、前進駆動用の第1係合装置を解放するとともに後進駆動用の第2係合装置を係合させる必要があるため、後進駆動状態が成立するまでに時間がかかり、後進駆動状態が成立する前にアクセル操作されるとショックが発生する可能性があった。例えば図1に示す自動変速機16の場合、前進駆動状態(第1変速段)から後進駆動状態へ切り換える際には、図2の作動表から明らかなように、クラッチC1(第1係合装置)を解放するとともにクラッチC3およびブレーキB4を係合させる必要があり、後進駆動状態が成立するまでに時間がかかる。また、クラッチC3およびブレーキB4を同時に係合させると、例えば図15に示すように作動油が不足してライン油圧PLが一時的に低下し、係合ショックを生じる可能性もある。特に、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンを駆動力源として備えている車両においては、燃費や排出ガスを低減するためにアクセルOFF時のアイドル回転速度をできるだけ低くすることが考えられており、そのエンジンでオイルポンプを回転駆動している場合、作動油の吐出量が少ないため上記問題が顕著となる。図15のPC1はクラッチC1の油圧で、PB4はブレーキB4の油圧で、PC3はクラッチC3の油圧であり、時間t1 の「D→R」はD(ドライブ)ポジションからR(リバース)ポジションへのシフト操作で、前進駆動状態から後進駆動状態への切換操作を意味しており、マニュアルバルブによる油圧回路の切換などでクラッチC1が解放されるとともにブレーキB4およびクラッチC3が係合させられる。
【0004】
一方、後進駆動状態を成立させるために必要な上記ブレーキB4(第2係合装置)は、前進駆動状態(第1変速段)においても係合させることが可能であるため、未だ公知ではないが、前進駆動状態における停車時にそのブレーキB4を係合させることが考えられている。このようにすれば、運転者のシフトレバー操作などに従って実際に後進駆動状態へ切り換える際には、既にブレーキB4が係合させられているため、クラッチC1を解放してクラッチC3を係合させるだけで良く、作動油不足による油圧の低下が軽減されて係合ショックの発生が抑制されるとともに切換時間が短縮される。
【0005】
しかしながら、走行中からの停車時など、既にクラッチC1(第1係合装置)が係合している前進駆動状態でブレーキB4(第2係合装置)を係合させる場合には問題はないが、遮断状態(パーキングPやニュートラルN)から前進駆動状態へ切り換えられた時には、クラッチC1を係合させるとともにブレーキB4を係合させることになるため、作動油不足により油圧が一時的に低下して係合ショックを発生する可能性があった。図16は、クラッチC1を係合させた後にブレーキB4を係合させる場合で、例えばトルクコンバータ14(図1参照)のタービン回転速度NTが略0となった後にブレーキB4に対する作動油の供給を開始しているが、ブレーキB4に対する作動油の供給に伴ってライン油圧PLが低下することにより、一旦係合したクラッチC1が解放され、再係合する際に係合ショックが発生する。図16の時間t1 の「N→D」はN(ニュートラル)ポジションからD(ドライブ)ポジションへのシフト操作で、遮断状態から前進駆動状態への切換操作を意味しており、マニュアルバルブによって油圧回路が機械的に切り換えられることにより、クラッチC1に作動油が供給されて係合させられる。また、時間t2 は、クラッチC1が略係合してタービン回転速度NTが略0となった時間で、ブレーキB4に対する作動油の供給が開始されるが、クラッチC1の油圧アクチュエータやアキュムレータには作動油が完全に満たされていないため、ブレーキB4に対する作動油の供給開始に伴ってライン油圧PLが低下すると、クラッチC1の油圧PC1も低下して解放してしまうのである。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、前進駆動状態での停車時に後進駆動用の係合装置を係合させる車両用動力伝達装置の制御装置において、遮断状態から前進駆動状態への切換時にライン油圧が低下して係合ショックが発生することを防止することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、走行可能な駆動状態を成立させる際に油圧式の第1係合装置を係合させる車両用動力伝達装置の制御装置において、(a) 前記駆動状態での停車時に、係合、解放に拘らずその駆動状態を許容する油圧式の第2係合装置を係合させる停車時係合手段と、(b) 停車時に前記駆動状態へ切り換えられた時には、前記第1係合装置に対する作動油の供給が略完了した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させる遅延手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
なお、「第1係合装置に対する作動油の供給が略完了した後」とは、単に第1係合装置が係合しただけでなく、第2係合装置に対する作動油の供給でライン油圧が変動しても第1係合装置の係合状態が維持されるように、油圧アクチュエータやアキュムレータに作動油が略満たされた状態を意味する。
【0009】
第2発明は、第1発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、(a) 前記第1係合装置は、前進走行が可能な前進駆動状態を成立させるために必要な係合装置で、(b) 前記第2係合装置は、係合、解放に拘らず前記前進駆動状態を許容するとともに、後進走行が可能な後進駆動状態を成立させるために必要な係合装置で、(c) 前記停車時係合手段は、前記前進駆動状態での停車時に前記第2係合装置を係合させるものであることを特徴とする。
【0010】
第3発明は、第2発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、(a) 前記前進駆動状態では、前記第1係合装置の他に油圧式の第3係合装置が係合させられるようになっており、(b) 前記遅延手段は、前記第1係合装置および前記第3係合装置に対する作動油の供給が共に略完了した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものであることを特徴とする。
【0011】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの車両用動力伝達装置の制御装置において、前記遅延手段は、前記第1係合装置の係合に伴って回転速度が変化する回転部材の回転速度変化に基づいてその第1係合装置の係合状態を判断する係合判断手段を有し、その係合判断手段によって前記第1係合装置が所定の係合状態と判断された後、予め定められた第1遅延時間が経過した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものであることを特徴とする。
【0012】
第5発明は、第1発明〜第3発明の何れかの車両用動力伝達装置の制御装置において、(a) 前記駆動状態を成立させる際に前記第1係合装置に作動油を供給するように油圧回路を切り換える油路切換手段を有し、(b) 前記遅延手段は、前記駆動状態を成立させる際に前記油路切換手段によって油圧回路が切り換えられた後、予め定められた第2遅延時間が経過した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものであることを特徴とする。
【0013】
第6発明は、第4発明または第5発明の車両用動力伝達装置の制御装置において、前記第1遅延時間および前記第2遅延時間は、油温をパラメータとして定められていることを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
このような車両用動力伝達装置の制御装置においては、第1係合装置が係合させられる駆動状態での停車時に、停車時係合手段により第1係合装置とは別に第2係合装置が係合させられるが、停車時に駆動状態へ切り換えられた時には、第1係合装置に対する作動油の供給が略完了した後に第2係合装置に対する作動油の供給が開始されるため、第2係合装置に対する作動油の供給でライン油圧が変動しても第1係合装置の係合状態が維持される。これにより、例えば図16に示すように、一旦係合させられた第1係合装置(クラッチC1)がライン油圧PLの低下に起因して解放され、再係合する際に係合ショックを発生することが防止される。
【0015】
第2発明は、前進駆動状態を成立させる際に第1係合装置が係合させられ、後進駆動状態を成立させるために第2係合装置が係合させられる場合で、前進駆動状態での停車時に停車時係合手段によって第2係合装置が係合させられるため、運転者のシフトレバー操作などに従って実際に後進駆動状態へ切り換える際には第2係合装置に作動油を供給する必要がなく、作動油不足による油圧の低下が軽減されて係合ショックの発生が抑制されるとともに後進駆動状態を速やかに成立させることができる。
【0016】
第3発明は、前進駆動状態で第1係合装置の他に第3係合装置が係合させられる場合で、遅延手段は、それ等の第1係合装置および第3係合装置に対する作動油の供給が共に略完了した後に、停車時係合手段による第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるため、第2係合装置に対する作動油の供給に起因して第1係合装置や第3係合装置が解放、再係合して係合ショックを発生することが防止される。
【0017】
第4発明、第5発明の遅延手段は、何れも予め定められた第1遅延時間、第2遅延時間が経過した後に、停車時係合手段による第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるため、例えば油圧センサにより第1係合装置の油圧を検出するなどして作動油の供給の完了を判断する場合に比較して、装置が簡単且つ安価に構成される。第4発明では、所定の回転部材の回転速度変化に基づいて第1係合装置の係合状態を判断し、所定の係合状態になった時を基準として第1遅延時間を計測するため、第1係合装置に対する作動油の供給状態を高い精度で判定でき、第1係合装置の解放を回避しつつできるだけ速やかに第2係合装置に対する作動油の供給を開始することができる。
【0018】
第6発明では、上記第1遅延時間および第2遅延時間が油温をパラメータとして定められるため、油温の相違に拘らず第2係合装置に対する作動油供給の開始タイミングが適切に制御され、第1係合装置の解放、再係合による係合ショックを防止しつつ、第2係合装置に対する作動油供給の開始タイミングをできるだけ早くして、第2係合装置を速やかに係合させることができる。すなわち、油温が低い場合は一般に粘性が高くなり、油圧回路内の圧漏れが減少してライン油圧の低下が抑制されるため、第1係合装置が係合した後の第1遅延時間については、一旦係合した第1係合装置が解放する可能性が低くなるため、油温が低い程第1遅延時間を短くすることができる一方、第1係合装置に対する作動油の充填時間を含む第2遅延時間については、第1係合装置に対する作動油の充填に必要な所要時間が長くなるため、一旦係合した第1係合装置が解放する可能性が低くなることとの兼ね合いで、作動油の粘性特性などを考慮して第2遅延時間を定めることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の車両用動力伝達装置は、例えば複数の遊星歯車装置とクラッチおよびブレーキとを有し、そのクラッチおよびブレーキの作動状態により複数の前進変速段を成立させることができる前進駆動状態や後進駆動状態、動力伝達を遮断する遮断状態に切り換えることができる自動変速機を有して構成されるが、第1係合装置が係合させられる駆動状態と、その他の駆動状態或いは非駆動状態(遮断状態)とを有するものであれば良く、必ずしも変速比が異なる複数の変速段を成立させる必要はない。第2発明、第3発明では、前進駆動状態を成立させる際に第1係合装置が係合させられ、第2係合装置は後進駆動状態を成立させために必要なものであるが、他の発明の実施に際しては、逆に後進駆動状態を成立させる際に第1係合装置が係合させられ、第2係合装置は前進駆動状態を成立させために必要なものであっても良いなど、種々の態様が可能である。
【0020】
係合、解放に拘らず駆動状態を許容する第2係合装置は、例えば一方向クラッチと並列に配設され、第1係合装置が係合させられる駆動状態においては、通常は解放状態に保持されて一方向クラッチの作用で動力伝達が行われる一方、エンジンブレーキ等の駆動力源ブレーキを作用させる際に係合させられるものである。
【0021】
第2係合装置に対する作動油の供給時に、ライン油圧の変動に起因して第1係合装置が解放、再係合することを一層確実に防止する上で、その第1係合装置にはアキュムレータを接続することが望ましい。但し、第1係合装置の油圧アクチュエータ内に作動油が充填されてライン油圧程度まで達した場合には、第2係合装置に対する作動油の供給でライン油圧が変動しても、第1係合装置を係合状態に維持できる場合には、必ずしもアキュムレータは必要ない。
【0022】
遅延手段は、例えば第4発明、第5発明のように所定の遅延時間が経過した後に第2係合装置に対する作動油の供給を開始するように構成されるが、第1係合装置の油圧アクチュエータ内の油圧を油圧センサによって検出し、その油圧が所定値以上となった時に第2係合装置に対する作動油の供給を開始したり、アキュムレータのピストンの移動ストロークを検出して、その移動ストロークが所定値以上となった時に第2係合装置に対する作動油の供給を開始したり、第1係合装置の係合に伴って回転速度が変化する回転部材の回転速度変化や上記ピストンの移動速度などから作動油の供給が略完了する時間を推測して第2係合装置に対する作動油の供給を開始したりするなど、第2係合装置に対する作動油の供給に拘らず第1係合装置を係合状態に維持できるか否かを判断できる種々の態様が可能である。その場合も、タイマにより所定時間が経過したら第2係合装置に対する作動油の供給を開始するバックアップを設けることが望ましい。
【0023】
第4発明における第1係合装置の所定の係合状態は、例えば係合が完了して回転部材の回転速度が所定値に達した状態、或いは回転速度変化が略0となった状態などであるが、回転速度が変化する過渡時の所定のスリップ状態などでも良い。
【0024】
第5発明の油路切換手段は、例えば運転者によって操作されるシフトレバーなどの駆動状態選択操作手段の操作に従って駆動状態が選択された場合に、電気的或いは機械的に油圧回路を切り換えて第1係合装置に作動油を供給するように構成される。例えば、駆動状態選択操作手段としてのシフトレバーの操作に従って機械的に弁体(スプールなど)が移動させられて油圧回路を切り換えるマニュアルバルブが好適に用いられるが、電磁弁からの信号圧などで電気的に弁体が移動させられて油圧回路を切り換えるものでも良い。第2係合装置に対する作動油の供給は、作動油の供給を電気的に制御できるように、電磁弁からの信号圧などで電気的に弁体を移動させて油圧回路を切り換える切換弁装置が用いられる。第3発明の第3係合装置についても、電気的に油圧回路を切り換える切換弁装置を用いることが望ましい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。トルクコンバータ14は、エンジン12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えており、ポンプ翼車20とタービン翼車24との間で流体を介して動力伝達を行うとともに、ポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26を備えている。ロックアップクラッチ26は、係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチで、完全係合させられることにより、ポンプ翼車20およびタービン翼車24は一体回転させられる。
【0026】
自動変速機16は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置40、およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置42、第3遊星歯車装置44を備えている遊星歯車式の変速機で、第1遊星歯車装置40のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF2およびブレーキB3を介してハウジング38に選択的に連結され、逆方向(入力軸22と反対方向)の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジング38に選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられた一方向クラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置42のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっている。第2遊星歯車装置42のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置44のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF0およびクラッチC1を介して入力軸22に選択的に連結され、その入力軸22に対して相対的に逆方向へ回転することが阻止されるようになっている。第2遊星歯車装置42のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置44のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっており、更にブレーキB4と並列に設けられた一方向クラッチF3により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。そして、第3遊星歯車装置44のキャリアCA3は、出力軸46に一体的に連結されている。
【0027】
上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1〜B4(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路98(図3参照)のソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図5参照)の操作位置(ポジション)に応じて6つの前進変速段(1st〜6th)および1つの後進変速段(Rev)が成立させられる。図2の「1st」〜「6th」は前進の第1変速段〜第6変速段を意味しており、第1変速段「1st」から第6変速段「6th」へ向かうに従って変速比(入力軸22の回転速度Nin/出力軸46の回転速度Nout )は小さくなり、第4変速段「4th」の変速比は1.0である。また、図2において「○」は係合、空欄は解放を表し、「(○)」はエンジンブレーキ時の係合を表し、「●」は動力伝達に関与しない係合を表している。
【0028】
図3の油圧制御回路98は、上記変速用のソレノイド弁Sol1〜Sol5、リニアソレノイド弁SL1、SL2の他に、主にロックアップ油圧すなわち前記係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPを制御するリニアソレノイド弁SLU、主にライン油圧PLを制御するリニアソレノイド弁SLTを備えており、油圧制御回路98内の作動油は、ロックアップクラッチ14へも供給されるとともに、自動変速機16等の各部の潤滑にも使用される。
【0029】
図3は、図1のエンジン12や自動変速機16などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によってアクセル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン12のアイドル回転速度NEIDL を制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC(アイドル回転速度制御)バルブ53が設けられている。この他、エンジン12の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン12の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速V(出力軸46の回転速度Nout に対応)を検出するための車速センサ66、エンジン12の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度Nin)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
【0030】
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や自動変速機16の変速制御、ロックアップクラッチ26の係合制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
【0031】
エンジン12の出力制御は、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射装置92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御し、アイドル回転速度制御のためにISCバルブ53を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図4に示す関係から実際のアクセル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン12の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってエンジン12のクランク軸をクランキングする。
【0032】
自動変速機16の変速制御は、シフトレバー72のレバーポジションPSHに応じて行われる。シフトレバー72は運転席の近傍に配設され、図5に示す4つのレバーポジション「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、または「S(シーケンシャル)」へ手動操作されるようになっている。「R」ポジションは後進走行位置で、「N」ポジションは動力伝達遮断位置で、「D」ポジションは自動変速による前進走行位置で、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置であり、シフトレバー72がどのレバーポジションへ操作されているかが前記レバーポジションセンサ74によって検出される。また、レバーポジション「R」、「N」、「D(S)」は車両の前後方向(図5の上方が車両前側)に沿って設けられており、シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブ100(図8参照)がシフトレバー72の前後操作に伴って機械的に作動させられることにより、油圧回路が切り換えられるようになっており、「R」ポジションではリバース用回路が機械的に成立させられるなどして図2に示す後進変速段「Rev」が成立させられ、「N」ポジションではニュートラル回路が機械的に成立させられて総てのクラッチCおよびブレーキBが解放され、動力伝達を遮断するニュートラル「N」が成立させられる。
【0033】
また、前進走行位置である「D」ポジションまたは「S」ポジションへ操作された場合は、同じくシフトレバー72の操作に従ってマニュアルバルブにより油圧回路が切り換えられることにより前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」で変速しながら前進走行することが可能となる。シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。すなわち、前記ソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁をそれぞれ制御することにより、油圧回路を切り換えて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の何れかの前進変速段を成立させるのである。この変速制御は、例えば図6に示すように車速Vおよびスロットル弁開度θTHをパラメータとして予め記憶された変速マップ(変速条件)に従って行われ、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段を成立させる。
【0034】
シフトレバー72が「S」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断してマニュアル変速モードを成立させる。「S」ポジションは、車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、油圧回路は「D」ポジションの時と同じであるが、「D」ポジションで変速可能な変速範囲内すなわち第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の間で定められた複数の変速レンジを任意に選択できるマニュアル変速モードを電気的に成立させるのである。「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「(+)」、およびダウンシフト位置「(−)」が設けられており、シフトレバー72がそれ等のアップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」へ操作されると、そのことが前記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82によって検出され、アップ指令RUPやダウン指令RDNに従って図7に示すように最高速段すなわち変速比が小さい高速側の変速範囲が異なる6つの変速レンジ「D」、「5」、「4」、「3」、「2」、「L」の何れかを電気的に成立させるとともに、各変速範囲内において例えば図6の変速マップに従って自動的に変速制御を行う。図7の○付き数字はエンジンブレーキ作用が得られる変速段で、各変速レンジの高速側の変速段でエンジンブレーキ作用が得られるようになっており、例えば下り坂などでシフトレバー72をダウンシフト位置「−」へ繰り返し操作すると、変速レンジが例えば「4」レンジから、「3」レンジ、「2」レンジ、「L」レンジへ切り換えられ、第4変速段「4th」から第3変速段「3rd」、第2変速段「2nd」、第1変速段「1st」へ順次ダウンシフトされて、エンジンブレーキが段階的に増大させられる。
【0035】
上記アップシフト位置「(+)」およびダウンシフト位置「(−)」は何れも不安定で、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により自動的に「S」ポジションへ戻されるようになっており、アップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」への操作回数或いは保持時間などに応じて変速レンジが変更される。
【0036】
本実施例では上記自動変速機16が動力伝達装置に相当し、シフトレバー72が「D」ポジション或いは「S」ポジションへ操作された時に成立させられる第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」は、前進走行が可能な前進駆動状態で、そのうち停車時に成立させられる第1変速段「1st」で係合させられるクラッチC1は第1係合装置に相当する。シフトレバー72が「R」ポジションへ操作された時に成立させられる後進変速段「Rev」は、後進走行が可能な後進駆動状態で、その後進変速段「Rev」において係合させられるクラッチC3およびブレーキB4のうち、第1変速段「1st」でもエンジンブレーキを作用させる際に係合させられるブレーキB4は第2係合装置に相当する。また、シフトレバー72が「N」ポジションへ操作された時に成立させられるニュートラル「N」は動力伝達遮断状態である。
【0037】
図8は、油圧制御回路98のうち上記第1変速段「1st」および後進変速段「Rev」に関与するクラッチC1、C4およびブレーキB4に関する部分を示す概略図で、油圧発生装置102から出力されるライン油圧PLは、シフトレバー72に機械的に連結されたマニュアルバルブ100を介して各部の油圧アクチュエータへ出力される。油圧発生装置102は、前記エンジン12によって回転駆動されるオイルポンプおよびリニアソレノイド弁SLTなどを有して構成されており、アクセル操作量Accなどに応じてライン油圧PLを調圧する。マニュアルバルブ100は油路切換手段に相当し、シフトレバー72が「D」または「S」ポジションへ操作されると、ライン油圧PLを前進用油圧PD として出力し、C1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106へ作動油が供給されることにより、クラッチC1が係合させられて第1変速段「1st」が成立させられる。また、ソレノイド弁Sol5からの信号油圧に従って開閉されるC4リレーバルブ108を経てC4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112へ作動油が供給されることにより、クラッチC4が係合させられ、リニアソレノイド弁SL2からの信号油圧に従って開閉されるブレーキコントロールバルブ114を経てB4油圧アクチュエータ116へ作動油が供給されることにより、ブレーキB4が係合させられる。ソレノイド弁Sol5およびC4リレーバルブ108、リニアソレノイド弁SL2およびブレーキコントロールバルブ114は、電気的に油圧回路を切り換える切換弁装置として機能する。
【0038】
一方、前記電子制御装置90は、前進駆動状態での停車時、すなわち通常は第1変速段「1st」での停車時に、後進用のブレーキB4を係合させる後進予備制御を実施するようになっている。図9は、かかる後進予備制御を具体的に説明するフローチャートで、ステップS5を実行する部分は停車時係合手段に相当し、ステップS6〜S11を実行する部分は遅延手段に相当し、そのうちのステップS8を実行する部分は係合判断手段に相当する。
【0039】
図9のステップS1では、車速Vに基づいて走行中か否かを判断し、走行中の場合はステップS2で車両が停止したか否か、すなわち走行中からの停車か否かを判断する。走行中からの停車の場合は、ステップS3で前進走行ポジション、すなわちレバーポジションPSHが「D」または「S」であるか否か、言い換えれば前進駆動状態か否かを判断し、前進走行ポジションの場合はステップS4でフットブレーキがON(操作中)か否かを判断する。そして、ブレーキONの場合は、ステップS5でリニアソレノイド弁SL2によりブレーキコントロールバルブ114を切り換えることにより、B4油圧アクチュエータ116に作動油を供給してブレーキB4を係合させる。図10は、この時のブレーキB4の油圧PB4の変化を示すタイムチャートである。
【0040】
上記ブレーキB4は、一方向クラッチF3と並列に配設されているもので、第1変速段「1st」では、通常は解放状態に保持されて一方向クラッチF3の作用で動力伝達が行われ、エンジンブレーキを作用させる際に係合させられるものであり、ブレーキB4を係合させても第1変速段「1st」での発進が損なわれる恐れはない。また、ブレーキB4は後進変速段「Rev」を成立させる際に係合させられるものであるため、駐車場などで前進走行からの停車後にシフトレバー72が「R」ポジションへ操作された場合には、マニュアルバルブ100による油圧回路の切換などでクラッチC1が解放されるとともにクラッチC3へ作動油が供給され、そのクラッチC3が係合させられることにより、後進変速段「Rev」が成立させられる。ブレーキB4は、車両の停止に伴って事前に係合させられているため、作動油不足による油圧の低下が軽減されて係合ショックの発生が抑制されるとともに、後進変速段「Rev」への切換時間が短縮される。
【0041】
前記ステップS1の判断がNO(否定)の場合、すなわち走行中でない場合は、ステップS6を実行し、前進駆動シフトか否か、すなわちシフトレバー72が「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへ操作されたか否かを判断する。前進駆動シフトの場合は、ステップS7でタイマTimAによる計時をスタートし、ステップS8でクラッチC1の係合が略完了したか否かを判断する。クラッチC1は、マニュアルバルブ100による油圧回路の切換に伴い、C1油圧アクチュエータ104に前進用油圧PD が供給されることによって係合させられるもので、停車時にはクラッチC1の係合に伴ってタービン回転速度NTが0になるため、そのタービン回転速度NTが略0になったか否かによりクラッチC1の係合を判断できる。タービン翼車24は、クラッチC1の係合に伴って回転速度が変化する回転部材である。
【0042】
タービン回転速度NTが略0でない場合には、ステップS9でタイマTimAが予め定められたバックアップ時間αに達したか否かを判断し、バックアップ時間αになるまでステップS8を繰り返す。バックアップ時間αは、クラッチC1の係合に必要な時間より大きく、通常はタイマTimAがバックアップ時間αに達する前にタービン回転速度NTが略0となってステップS8の判断がYES(肯定)になり、ステップS10以下を実行するが、タービン回転速度センサ76の故障時などには、タイマTimAがバックアップ時間αに達してステップS9の判断がYESになることによりステップS10以下を実行する。バックアップ時間αは一定値であっても良いが、クラッチC1の係合所要時間は作動油の粘性すなわちAT油温TOIL などによって変化するため、そのAT油温TOIL などをパラメータとして定められるようにしても良い。
【0043】
ステップS10では、タイマTimBによる計時をスタートし、ステップS11では、タイマTimBが予め定められた遅延時間β1に達したか否かを判断する。遅延時間β1は、前記ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動しても、前記クラッチC1の係合状態が維持されるように、そのクラッチC1を係合させるC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に作動油が十分充填されるのに必要な時間であり、AT油温TOIL をパラメータとして定められたマップや演算式などに従って設定されるようになっている。AT油温TOIL が低い場合は粘性が高くなり、油圧制御回路98内の圧漏れが減少してライン油圧PLの低下が抑制されるため、一旦係合したクラッチC1が解放する可能性は低くなり、遅延時間β1を短くすることができるのである。遅延時間β1は第1遅延時間に相当し、タイマTimBがその遅延時間β1に達したらステップS5を実行し、B4油圧アクチュエータ116に作動油を供給してブレーキB4を係合させる。図11は、N→Dシフトの場合のタイムチャートで、時間t2 はクラッチC1が係合してタービン回転速度NTが略0となり、ステップS8の判断がYESになった時間であり、時間t3 はタイマTimBが遅延時間β1に達して、B4油圧アクチュエータ116に対する作動油の供給が開始された時間である。
【0044】
このように、本実施例では前進走行ポジションでの停車時にステップS5でブレーキB4が係合させられるため、その後にシフトレバー72が「R」ポジションへ操作されて実際に後進変速段「Rev」を成立させる際には、ブレーキB4に作動油を供給する必要がなく、クラッチC3を係合させるだけで良いため、作動油不足によるライン油圧PLの低下が軽減されて係合ショックの発生が抑制されるとともに、後進変速段「Rev」を速やかに成立させることができる。
【0045】
また、走行中からの停車時、すなわち既にクラッチC1が係合状態の場合には、直ちにステップS5を実行してブレーキB4を係合させるが、「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへの前進駆動シフトの場合には、ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動しても、クラッチC1の係合状態が維持されるように、そのクラッチC1を係合させるC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に作動油が十分充填されるのに必要な遅延時間β1を経過した後に、ステップS5を実行するため、B4油圧アクチュエータ116に対する作動油の供給でライン油圧PLが変動してもクラッチC1が係合状態に維持される。これにより、例えば図16に示すように、クラッチC1の係合(タービン回転速度NT≒0)を起点としてブレーキB4に対する作動油の供給が開始されることにより、ライン油圧PLの低下に起因してクラッチC1が解放され、再係合する際に係合ショックを発生することが防止される。
【0046】
また、本実施例ではクラッチC1が係合した後、予め定められた遅延時間β1が経過した後に、ブレーキB4に対する作動油の供給を開始するため、例えば油圧センサによりクラッチC1の油圧PC1を検出するなどして作動油の供給の完了を判断する場合に比較して、装置が簡単且つ安価に構成される。特に、タービン回転速度NTに基づいてクラッチC1の係合状態を判断し、係合が略完了した時(NT≒0)を基準として遅延時間β1を計測するため、C1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に対する作動油の供給状態を高い精度で判定でき、クラッチC1の解放を回避しつつできるだけ速やかにブレーキB4に対する作動油の供給を開始することができる。
【0047】
また、遅延時間β1はAT油温TOIL をパラメータとして定められるため、AT油温TOIL の相違に拘らずブレーキB4に対する作動油供給の開始タイミングが適切に制御され、クラッチC1の解放、再係合による係合ショックを防止しつつ、ブレーキB4に対する作動油供給の開始タイミングをできるだけ早くして、ブレーキB4を速やかに係合させることができる。
【0048】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0049】
図12は、前進駆動シフトすなわちシフトレバー72が「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへ操作された場合に、十分な伝達トルク性能を確保するために前記クラッチC1に加えてクラッチC4を係合させる場合で、前記図9の代わりに用いられるフローチャートであり、前記ステップS10およびS11の代わりにステップS20、S21、S22が設けられている。
【0050】
ステップS20では、タイマTimCによる計時をスタートし、ステップS21では、ソレノイド弁Sol5によりC4リレーバルブ108を切り換えることにより、C4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112に作動油を供給してクラッチC4を係合させる一方、ステップS22では、タイマTimCが予め定められた遅延時間β2に達したか否かを判断する。遅延時間β2は、前記ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動しても、クラッチC1およびC4の係合状態が維持されるように、それ等のクラッチC1、C4を係合させるC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106、C4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112に作動油が十分充填されるのに必要な時間であり、AT油温TOIL をパラメータとして定められたマップや演算式などに従って設定されるようになっている。特に、後から係合させられるクラッチC4の係合状態が維持されるように定める必要があり、そのクラッチC4のC4油圧アクチュエータ110、C4アキュムレータ112に対する作動油の充填時間は、AT油温TOIL が低くて粘性が高い程長くなる一方、一旦係合したクラッチC4はAT油温TOIL が低くて粘性が高い程解放し難くなるため、遅延時間β2は作動油の粘性特性などを考慮してAT油温TOIL をパラメータとして定められる。この遅延時間β2は第1遅延時間に相当し、タイマTimCがその遅延時間β2に達したらステップS5を実行してブレーキB4を係合させる。図13は、N→Dシフトの場合のタイムチャートで、時間t2 はクラッチC1が係合してタービン回転速度NTが略0となり、ステップS8の判断がYESになった時間であり、時間t3 はタイマTimCが遅延時間β2に達して、B4油圧アクチュエータ116に対する作動油の供給が開始された時間である。
【0051】
電子制御装置90によって実行される一連の信号処理のうち、図12のステップS6、S7、S8、S9、S20、S21、S22を実行する部分は遅延手段に相当し、そのうちのステップS8を実行する部分は係合判断手段に相当する。
【0052】
本実施例では、前進駆動シフトの際にクラッチC1に加えてクラッチC4が係合させられるため、十分な伝達トルク性能が得られて、車両の発進・加速性能が向上する。
【0053】
また、ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動してもクラッチC1、C4の係合状態が維持されるように、クラッチC1の係合から予め定められた遅延時間β2を経過した後に、ステップS5を実行するため、B4油圧アクチュエータ116に対する作動油の供給でライン油圧PLが変動してもクラッチC1、C4が係合状態に維持され、それ等の解放、再係合に起因するショックの発生が防止される。
【0054】
また、本実施例ではクラッチC1が係合した後、予め定められた遅延時間β2が経過した後に、ブレーキB4に対する作動油の供給を開始するため、例えば油圧センサによりクラッチC1、C4の油圧PC1、PC4を検出するなどして作動油の供給の完了を判断する場合に比較して、装置が簡単且つ安価に構成される。
【0055】
また、遅延時間β2はAT油温TOIL をパラメータとして定められるため、AT油温TOIL の相違に拘らずブレーキB4に対する作動油供給の開始タイミングが適切に制御され、クラッチC1、C4の解放、再係合による係合ショックを防止しつつ、ブレーキB4に対する作動油供給の開始タイミングをできるだけ早くして、ブレーキB4を速やかに係合させることができる。
【0056】
図14は、同じく前進駆動シフトの際にクラッチC1に加えてクラッチC4を係合させる場合で、前記図12のステップS21、S22の代わりにステップS23が設けられ、前記タイマTimAが予め定められた遅延時間β3に達したら前記ステップS5を実行してブレーキB4を係合させる。タイマTimAは、シフトレバー72が「R」または「N」ポジションから「D」または「S」ポジションへ操作され、マニュアルバルブ100により油圧回路が切り換えられてC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106に対する作動油の供給が開始された時に計時を開始するもので、遅延時間β3は、前記ステップS5の実行でB4油圧アクチュエータ116に作動油が供給されることによりライン油圧PLが変動しても、クラッチC1およびC4の係合状態が維持されるように、それ等のクラッチC1、C4を係合させるC1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106、C4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112に作動油が十分充填されるのに必要な時間で、AT油温TOIL をパラメータとして予め定められたマップや演算式などに従って、例えば図13に示すように前記遅延時間β2の経過時と略同じ時間にブレーキB4に対する作動油の供給が開始されるように設定される。C1油圧アクチュエータ104およびC1アキュムレータ106、C4油圧アクチュエータ110およびC4アキュムレータ112に対する作動油の充填時間は、AT油温TOIL が低くて粘性が高い程長くなる一方、一旦係合したクラッチC1、C4はAT油温TOIL が低くて粘性が高い程解放し難くなるため、遅延時間β3は作動油の粘性特性などを考慮してAT油温TOIL をパラメータとして定められる。この遅延時間β3は第2遅延時間に相当し、マニュアルバルブ100は油路切換手段に相当する。
【0057】
電子制御装置90によって実行される一連の信号処理のうち、図14のステップS6、S7およびS23を実行する部分は遅延手段に相当する。
【0058】
本実施例においても、前記図12の実施例と同様の作用効果が得られる。なお、前記図9のように前進駆動シフトの際にクラッチC4を係合させることなくクラッチC1だけを係合させる場合にも、本実施例のようにタイマTimAが所定の第2遅延時間に達した時にステップS5を実行させるようにしても良い。
【0059】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された車両用駆動装置を説明する骨子図である。
【図2】図1の自動変速機における、複数の油圧式摩擦係合装置の作動の組合わせとそれにより成立する変速段との関係を示す図である。
【図3】図1の車両用駆動装置が備えている制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図4】図3の電子スロットル弁のスロットル弁開度とアクセル操作量との関係を示す図である。
【図5】図3のシフトレバーを具体的に示す斜視図である。
【図6】図1の自動変速機の変速段を運転状態に応じて自動的に切り換える変速マップの一例を説明する図である。
【図7】図5のシフトレバーの操作で切り換えられる変速レンジを説明する図である。
【図8】図3の油圧制御回路のうち第1変速段に関連する部分を説明するブロック線図である。
【図9】図1の車両用駆動装置において、前進駆動状態での停車時に後進駆動用のブレーキB4を係合させる後進予備制御を説明するフローチャートである。
【図10】図9において走行中からの停車時にブレーキB4を係合させる際の油圧PB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【図11】図9において前進駆動シフト時にクラッチC1に続いてブレーキB4を係合させる際の油圧PC1およびPB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【図12】前進駆動時にクラッチC1と共にクラッチC4を係合させる場合の実施例を説明する図で、前記図10に対応するフローチャートである。
【図13】図12において前進駆動シフト時にクラッチC1に続いてクラッチC4、ブレーキB4を係合させる際の油圧PC1、PC4、およびPB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【図14】前進駆動シフトからの経過時間に基づいてブレーキB4に対する作動油の供給を開始する場合の実施例を説明する図で、図12に対応するフローチャートである。
【図15】シフトレバーがDポジションからRポジションへ切り換えられた時に、クラッチC1を解放するとともにクラッチC3およびブレーキB4を係合させる際のそれ等の油圧PC1、PC3、およびPB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【図16】前進駆動シフト時にクラッチC1が係合した時点でブレーキB4に対する作動油の供給を開始した場合の油圧PC1およびPB4の変化を示すタイムチャートの一例である。
【符号の説明】
16:自動変速機(動力伝達装置) 24:タービン翼車(回転部材) 66:車速センサ 74:レバーポジションセンサ 76:タービン回転速度センサ 78:AT油温センサ 90:電子制御装置 100:マニュアルバルブ(油路切換手段) C1:クラッチ(第1係合装置) C4:クラッチ(第3係合装置) B4:ブレーキ(第2係合装置) β1、β2:第1遅延時間 β3:第2遅延時間
ステップS5:停止時係合手段
ステップS6〜S11:遅延手段
ステップS6〜S22:遅延手段
ステップS6、S7、S23:遅延手段
ステップS8:係合判断手段
Claims (6)
- 走行可能な駆動状態を成立させる際に油圧式の第1係合装置を係合させる車両用動力伝達装置の制御装置において、
前記駆動状態での停車時に、係合、解放に拘らず該駆動状態を許容する油圧式の第2係合装置を係合させる停車時係合手段と、
停車時に前記駆動状態へ切り換えられた時には、前記第1係合装置に対する作動油の供給が略完了した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させる遅延手段と、
を有することを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。 - 前記第1係合装置は、前進走行が可能な前進駆動状態を成立させるために必要な係合装置で、
前記第2係合装置は、係合、解放に拘らず前記前進駆動状態を許容するとともに、後進走行が可能な後進駆動状態を成立させるために必要な係合装置で、
前記停車時係合手段は、前記前進駆動状態での停車時に前記第2係合装置を係合させるものである
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。 - 前記前進駆動状態では、前記第1係合装置の他に油圧式の第3係合装置が係合させられるようになっており、
前記遅延手段は、前記第1係合装置および前記第3係合装置に対する作動油の供給が共に略完了した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものである
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。 - 前記遅延手段は、前記第1係合装置の係合に伴って回転速度が変化する回転部材の回転速度変化に基づいて該第1係合装置の係合状態を判断する係合判断手段を有し、該係合判断手段によって前記第1係合装置が所定の係合状態と判断された後、予め定められた第1遅延時間が経過した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記駆動状態を成立させる際に前記第1係合装置に作動油を供給するように油圧回路を切り換える油路切換手段を有し、
前記遅延手段は、前記駆動状態を成立させる際に前記油路切換手段によって油圧回路が切り換えられた後、予め定められた第2遅延時間が経過した後に、前記停車時係合手段による前記第2係合装置に対する作動油の供給を開始させるものである
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。 - 前記第1遅延時間および前記第2遅延時間は、油温をパラメータとして定められている
ことを特徴とする請求項4または5に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
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