第1の実施形態の画像形成装置1は、図1の構成図に示すように、中間転写体10と第1画像ステーション11Lkと第2画像ステーション11Kと第3画像ステーション11Cと第4画像ステーション11Mと第5画像ステーション11Yと給紙部12と定着装置13と排紙部14と制御部15とを備えるタンデムタイプの画像形成装置である。
中間転写体10は、中間転写ベルト20と駆動ローラ21とテンションローラ22と二次転写対向ローラ23と二次転写ローラ24とクリーナ25とを有する。
中間転写ベルト20は、駆動ローラ21とテンションローラ22と二次転写対向ローラ23とに張架されたシームレスベルトであり、駆動ローラ21とテンションローラ22とにより回転駆動される。二次転写ローラ24は、二次転写対向ローラ23との間に挟んで搬送する記録媒体に、中間転写ベルト20のトナー像を二次転写させる。クリーナ25は、中間転写ベルト20に残留した二次転写残トナーなどを除去する。なお、本実施形態では、画像支持体として中間転写ベルトを用いた例について説明するが、本発明の画像支持体は他の中間転写体や、感光体や記録媒体などであってもよい。
中間転写ベルト20は、図2の平面図に示すように、回転方向に直交する主走査方向の一端側において、副走査方向に沿って第1の実施形態と同様のマーカ26を設けている。マーカ26は、中間転写ベルト20と反射率の異なる物質で形成された複数のスケールを、副走査方向に等間隔で配置して構成されており、スケールの間隔を広くしたマーカ26の切れ目を一部に設けている。各スケールは、副走査方向に10μm程度の幅をもち、副走査方向に間隔65μmで配置されている。
第1画像ステーション11Lk、第2画像ステーション11K、第3画像ステーション11C、第4画像ステーション11M、及び、第5画像ステーション11Yは、それぞれ現像するトナー色が異なる他は同様の構成をもつ。各画像ステーションにおいて、同じ機能をもつ要素には同じ符号を付加し、各符号にLkが付加された要素はライトブラックを現像する第1画像ステーション11Lkに属する要素であることを示し、各符号にKが付加された要素はブラックを現像する第2画像ステーション11Kに属する要素であることを示し、各符号にCが付加された要素はシアンを現像する第3画像ステーション11Cに属する要素であることを示し、各符号にMが付加された要素はマゼンダを現像する第4画像ステーション11Mに属する要素であることを示し、各符号にYが付加された要素はイエローを現像する第5画像ステーション11Yに属する要素であることを示す。
なお、ブラックとライトブラック(グレーとも称する)とは、互いに同系色の顕画剤である高濃度顕画剤と低濃度顕画剤との関係にそれぞれ対応する。低濃度顕画剤とは高濃度顕画剤に比べて濃度が低い顕画剤である。なお、本明細書において、低濃度顕画剤と高濃度顕画剤との関係は、無彩色に限定されず、薄いシアンと濃いシアンとの組み合わせ、薄いマゼンタと濃いマゼンタとの組み合わせ、薄いブルーと濃いブルーとの組み合わせなどであってもよい。薄い色と濃い色を区別する場合、薄い色は色の名称の前に「ライト」をつけ、ライトブラック、ライトシアン、ライトブルーなどと表現し、濃い色は色の名称をそのまま用いる。以下、顕画剤としてトナーを用いる場合について主に説明するため、濃い色の顕画剤を高濃度トナー、薄い色の顕画剤を低濃度トナーと記載するが、顕画剤は、トナーと称されるものに限定されず、例えば、インクであってもよい。
各画像ステーションは、中間転写ベルト20上の駆動ローラ21とテンションローラ22との間の領域において、中間転写ベルト20の回転方向上流から、第1画像ステーション11Lk、第2画像ステーション11K、第3画像ステーション11C、第4画像ステーション11M、第5画像ステーション11Yの順に対向している。第1画像ステーション11Lkと第2画像ステーション11Kとは版ずれを高精度に抑制するために、隣接して配置されている。各画像ステーションは約10cmの等間隔で配置されている。
代表して第1画像ステーション11Lkの構成について説明する。第1画像ステーション11Lkは、感光体30Lkの周囲に順に帯電部31Lkと書込装置32Lkと現像装置33Lkと転写ローラ34Lkとクリーニング部材35Lkと走査光受光部36Lkとマーカ検知部37Lkとを配置している。
感光体30Lkは、像担持体として機能し、矢印の方向に回転駆動され、現像装置33Lkとクリーニング部材35Lkとの間で中間転写ベルト20に対向している。帯電部31Lkは、感光体30Lkを暗中にて所定の電位に一様に帯電する。
書込装置32Lkは、図2の平面図に示すように、画像情報に応じて変調されて光源40Lkから出力されるレーザービームをコリメートレンズ41Lkによりコリメートし、回転多面鏡用モータにより回転する回転多面鏡42Lkの偏向反射面により走査し、結像レンズ43Lkで絞り込んでレーザースポットを形成し、感光体30Lkを回転方向と直交する主走査方向に走査露光することにより、感光体30Lkの回転と連動して感光体30Lkを2次元に露光する。露光部分は除電されて画像部を形成し、非露光部分は非画像部を形成し、感光体30Lkに静電潜像が形成される。
なお、図3の感光体30Lk表面の展開図に示すように、感光体30Lk上で画像情報を構成する画素のうち、副走査方向の位置が等しい画素の集合をラインと称し、画像形成の際に時間的に先に走査されるラインから時間的に後に走査されるラインに向かって各ラインずつ1ライン目、2ライン目と順に表現する。本実施形態を、マルチビーム光源などを用いて一度の走査で複数のラインを形成する画像形成装置に適用する場合にも、同様に各ライン毎に1ライン目、2ライン目と順に表現する。
現像装置33Lkは、トナー含む現像剤を担持する現像剤担持体を感光体30Lkに対向させ、現像剤担持体に対して静電潜像の非画像部電位と画像部電位との中間の電位を印加することにより現像剤担持体上のトナーを択一的に画像部に付着させ、感光体30Lkの潜像からライトブラックのトナー像を現像する。転写ローラ34Lkは、中間転写体10との近接領域である一次転写部において、印加された電圧と感光体表面との電位差により、現像されたトナー像を中間転写体10に転写させる。クリーニング部材35Lkは、感光体30Lkの転写後の領域に残留するトナー、現像液、異物などを除去する。
中間転写ベルト20は、一周する間に、第1画像ステーション11Lk、第2画像ステーション11K、第3画像ステーション11C、第4画像ステーション11M、第5画像ステーション11Yの順に、各トナー色のトナー像を転写される。
走査光受光部36Lkは、第1の実施形態の走査光受光部15と同様に主走査同期信号発生手段として機能し、具体的には、書込装置32Lkによるレーザの走査範囲内であって画像範囲外に配置された受光素子によりレーザービームを受光し、主走査方向の記録開始位置(横レジスト)を決定する主走査同期信号を形成する。
マーカ検知部37Lkは、第1の実施形態のマーカ検知部16と同様に副走査同期信号発生手段として機能し、具体的には、マーカ26の通過領域付近に固定され、LEDなどの発光素子から中間転写ベルト20に光を照射し、ホトセンサなどの受光素子で反射光を受光し、反射光強度の変化からマーカ26を検出することにより、副走査同期信号を形成する。
マーカ検知部37Lkから出力される副走査同期信号は、図4の波形図に示すように、マーカ26の検知ごとに一定時間間隔T1で出力されるととともに、マーカ26の切れ目においては時間T2空けて出力される。時間間隔T1より時間間隔T2のほうが大きくなるため、1つのスケールを検知してから次のスケールを検知するまでの経過時間が、所定のしきい値より大きいことを検知することによりマーカの切れ目を検知し、次に検知されるスケールにより発生する信号がホームポジション検知信号となる。マーカ検知部37Lkは、マーカの切れ目の横に別に形成されたマーカを検出することにより、マーカの切れ目を検知するものであってもよく、マーカ切れ目検知専用のセンサでマーカの切れ目を検知するものであってもよい。ホームポジションを検知することにより、ホームポジション通過後に検知されるスケールの数、すなわち副走査同期信号のカウント数から、常に中間転写体20上の絶対位置が把握される。ホームポジション検知信号は、主走査同期信号のカウントの基準として利用される。
なお、マーカ検知部37Lkは、以上の方法に限らず他の種々の方法でマーカを検知するものであってもよい。例えば、中間転写ベルト20に開口で構成したマーカ26のスケールの透過光を検知するものであってもよい。マーカ検知部37Lkは、光を単独のスケールに対して照射するものであっても、複数のスケールに対して同時に照射するものであってもよい。マーカ26のスケールパターンは等間隔でなくてもよく、規則的またはランダムに間隔が変化するスケールパターンを用い、間隔の変化をあらかじめ把握しておき中間転写ベルト20の移動量を正しく検知するものなどであってもよい。例えば、マーカ26は、第1番目のスケールから第2番目のスケールまでの距離が20μm、第2番目のスケールから第3番目のスケールまでの距離が50μm、第3番目のスケールから第4番目のスケールまでの距離が20μm、というようにスケール間の距離が20μm、50μm、20μm、50μm、20μm、50μmと以後順に繰り返されるものであれば、マーカ検知部37Lkは、20μmと50μmとの繰り返し単位を記憶しておき、繰り返し単位に対応したタイミングでスケールの移動量を検知する。
なお、副走査同期信号は、種々の発生方式により発生されるものであってもよく、例えば、感光体30Lk上に設置された感光体上マーカに光を照射して得られる反射光や透過光を検知する受光手段、レジストローラのスタートタイミング、紙検知センサからの検知信号、感光体駆動手段に内蔵されたロータリーエンコーダなどにより検知されて生成されるものであってもよい。
給紙部12は、給紙トレイに積載した転写紙を送りローラで1枚ずつ送り出し、レジストローラでタイミングを調整しながら中間転写ベルト20に送る。中間転写ベルト20に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写対向ローラ23と二次転写ローラ24との対向部に到達し、二次転写ローラ24に印加された電圧により、給紙部12から送られる記録媒体に一括して転写される。定着装置13は、中間転写ベルト20でトナー像を転写された記録媒体に圧力を加えながら加熱してフルカラートナー像を定着させる。排紙部14は、定着後の転写紙を排紙する。
制御部15は、図5のブロック図に示すように、ROM50とCPU51とRAM52と入出力部53と速度制御部54と画像処理部55と書込制御部56とを有する。
ROM50は、CPU51が画像形成動作を実効するための動作プログラムなどを記憶している。CPU51は、動作プログラムを適宜読み出しながら画像形成動作全体を制御する。RAM52は、CPU51により適宜記憶領域として使用される。入出力部53は、外部機器と接続され画像データなど各種信号を入出力する。
速度制御部54は、マーカ26のスケール間隔を65μmとあらかじめ把握しているため、マーカ検知部37Lkなどの各マーカ検知部をエンコーダとして機能させ、1つのスケールを検知した時刻から次のスケールを検知する時刻までの経過時間T1を測定することにより、マーカ26の移動速度すなわち中間転写ベルト20の移動速度を検出し、中間転写ベルト20の表面速度を一定に制御する。マーカ検知部37Lkなどの各マーカ検知部をエンコーダとして機能させることにより、エンコーダを別途設ける場合に比較して部品点数増加を抑えることができる。表面速度を一定に近づける制御を併用することにより、さらに版ずれを低減させることができる。
画像処理部55は、画像データに対して中間調処理を含む各種画像処理を施し、第1画像ステーション11Lk、第2画像ステーション11K、第3画像ステーション11C、第4画像ステーション11M、及び、第5画像ステーション11Yで各トナー色の画像を書き込むための信号を作成する。
中間調処理前の画像の濃度は、濃度値が0に近いほど濃度が薄くなるように0〜255の256階調で表現されている。画像処理部55は、画像データの無彩色の部分において、濃度がしきい値Pth未満の画素を第1画像ステーション11Lkのライトブラックのトナーで画像形成させ、濃度がしきい値Pth以上の画素を第2画像ステーション11Kのブラックのトナーで画像形成させるように、書込み用の信号を作成する。しきい値Pthは変更可能で、例えばPth=64のように選択される。中間調処理前の画像の濃度に関わらず高濃度トナーのみで現像を行ない、低濃度トナーを使用しないようにする場合には、しきい値Pth=0に設定される。画像処理部55は、高濃度トナー、低濃度トナーによって現像を行う領域を決定した後は、高濃度トナー、低濃度トナーのそれぞれについて、ディザ、誤差拡散など適宜採用される種々の方式により中間調処理を行う。また、高濃度トナーに対する低濃度トナーの使用率に応じ、必要に応じてフィルタ処理などを変更する。
書込制御部56は、図6のブロック図に示すように、副走査同期信号カウンタ60と主走査同期信号カウンタ61と経過時間計測部62とクロック63としきい値記憶部64と開始タイミング決定部65と計測データ記憶部66とβ記憶部67と開始タイミング記憶部68と版ずれ低減処理部69と走査制御部70とをもつ。
副走査同期信号カウンタ60は、副走査同期信号をカウントして値yとして保持する。マーカ検知部37Lkから入力される副走査同期信号のカウント値yLkと、マーカ検知部37Kから入力される副走査同期信号のカウント値yKとは区別してカウント及び保持される。
主走査同期信号カウンタ61は、主走査同期信号をカウントして値xとして保持する。走査光受光部36Lk、走査光受光部36K、走査光受光部36C、走査光受光部36M、及び、走査光受光部36Yから入力される主走査同期信号のカウント値xLk、値xK、値xC、値xM、値xYは、それぞれ区別してカウント及び保持される。
経過時間計測部62は、走査光受光部36Lkから主走査同期信号が入力されるたびに主走査同期信号が入力されてからの経過時間をtLkとして繰り返し計測するとともに、走査光受光部36Kから主走査同期信号が入力されるたびに主走査同期信号が入力されてからの経過時間をtKとして繰り返し計測する。クロック63は、経過時間計測部62の時間計測に必要なパルスを発生させ、経過時間計測部62へ出力する。
しきい値記憶部64は、しきい値yth(=100)を記憶している。しきい値ythは、副走査同期信号カウンタ60の値yLk及び値yKがいくつになるまで、開始タイミング決定部65によりデータが計測されるかを示す。スケール間隔は65μmであるので、しきい値をyth=100に設定することにより中間転写ベルト20の移動方向の距離に換算して約6.5mmのデータが取得される。なお、しきい値ythは、100に限られるものではない。
開始タイミング決定部65は、ライトブラックの1ライン目の露光を値xLkがいくつのときに開始するかを示すxstart1を決定するとともに、ブラックの1ライン目の露光を値xKがいくつのときに開始するかを示すxstart2を決定する。版ずれ低減処理部69は、画像処理部55に対し、高濃度トナーと低濃度トナーとの使用割合を設定する。走査制御部70は、各画像ステーションのレーザ光源40を制御することにより、画像処理部55から送られる書込み信号に従った書込みを、開始タイミング決定部65で決定されたタイミングで開始させる。
書込制御部56は、1色目のライトブラック及び2色目のブラックの露光時には、図7のフロー図に示すように、画像処理決定部65でxstart1及びxstart2を決定し(ステップS1)、次に、版ずれ量低減処理部69で低濃度トナーと高濃度トナーとの使用割合を設定し(ステップS2)、次に、走査制御部67で露光を行う(ステップS3)。
開始タイミング決定部65は、図8のフロー図に示すタイミング決定方法に従って、xstart1及びxstart2を決定する。開始タイミング決定部65は、まず、マーカ検知部37Lkから副走査同期信号を入力し、版ずれ量計算開始信号を検知したか所定のタイミングで判定し続ける(ステップS10)。開始タイミング決定部65は、副走査同期信号の時間間隔の変化から、マーカの切れ目通過後に最初に検知されるy=0の副走査同期信号、すなわちホームポジション検知信号を、版ずれ量計算開始信号として検出する。版ずれ量計算開始信号は、y=N回目(N≧0)の副走査同期信号の中から選ばれる他の信号であってもよい。
開始タイミング決定部65は、版ずれ量計算開始信号を検知すると、副走査同期信号カウンタ60の値yLkを0に設定し、マーカ検知部37Lkからの副走査同期信号を検知するたびに値yLkをカウントアップする動作を開始させ(ステップS11)、主走査同期信号カウンタ61の値xLkを0に設定し、走査光受光部36Lkからの主走査同期信号を検知するたびに値xLkをカウントアップする動作を開始させ(ステップS12)、内蔵のクロックからの入力をもとに走査光受光部36Lkからの主走査同期信号を検知してからの経過時間tLkの測定を繰り返す動作を開始させる(ステップ13)。
開始タイミング決定部65は、副走査同期信号カウンタ60が副走査同期信号を検知して値yLkがカウントアップされたか判定を繰り返し(ステップS14)、副走査同期信号カウンタ60の値yLkがカウントアップされると、検知時における値xLkと経過時間tLkとを値yLkに対応させて計測データ記憶部66に記憶させる(ステップS15)。例えば、副走査方向に1200dpiの解像度で画像を形成する場合、1ラインの間隔は約21μmである一方、マーカ34を構成するスケールの間隔は65μmであるため、主走査同期信号の検知周期は副走査同期信号の検知周期よりも短く、y=0回目の副走査同期信号とy=1回目の副走査同期信号との間に3つ程度の主走査同期信号が検知される。
開始タイミング決定部65は、値yLkがあらかじめ設定されたしきい値ythに到達したか判定し(ステップS16)、値yLkがしきい値ythに達していなければ、副走査同期信号の検知(ステップSS14)と、値xLkと値yLkと経過時間tLkとの記憶(ステップS15)と、値yLkとしきい値ythとの比較(ステップS16)とを繰り返す。
値yLkがしきい値ythになるまでに計測データ記憶部66には、図9の測定データ表に例示されるような測定データが記憶される。例えば、版ずれ量計算開始信号、すなわちホームポジション検知信号に相当するyLk=0回目の副走査同期信号を検知した後、yLk=1回目の副走査同期信号を検知するまでに3つの主走査同期信号が検知され、3つ目の主走査同期信号からyLk=1回目の副走査同期信号が検知されるまでの時刻がt1である場合、最初にyLk=1に対応させてxLk=3とtLk=t1とが記憶される。yLk=2回目の副走査同期信号が検知されるまでに6つの主走査同期信号が検知され、6つ目の主走査同期信号からyLk=2回目の副走査同期信号を検知するまでの時刻がt2である場合には、yLk=2に対応させてxLk=6とtLk=t2とを記憶し、順にyLk=100に対応するxLk=309とtLk=t100まで記憶される。
開始タイミング決定部65は、値yLkがしきい値ythに到達すると、計測された値yLkと値xLkとの関係を一次関数yLk=(1/α)×xLk+βで近似することにより、所定の副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれを表すβを算出し、各色ごとにβ記憶部67に記憶させる(ステップS17)。β記憶部67は、ライトブラック露光時に算出されるβをβ1として記憶し、ブラック露光時に算出されるβをβ2として記憶する。
βの具体的な算出方法について説明する。ここでは値yと値xと経過時間tとの組み合わせは、ライトブラックに対するβ1の算出時には値yLkと値xLkと経過時間tLkとの組み合わせに対応し、ブラックに対するβ2の算出時には値yKと値xKと経過時間tKとの組み合わせに対応する。開始タイミング決定部65は、値y=Nすなわちy(N)において取得された値x、経過時間tをそれぞれx(N)、t(N)とし、1つの主走査同期信号が検知されてから次の主走査同期信号が検知されるまでの時間間隔pを用い、(式1)に基づいてN=1からN=yth-1までΔy(N)を算出する。例えば、N=1の場合Δy(1)は(式2)のように算出される。t(N)/pは、y=N+1の副走査同期信号が検知される直前に主走査同期信号が検知された時刻から、y=N+1が検知される時刻までの経過時間を主走査同期信号の検知数に換算して表した値である。
なお、pは、1つの主走査同期信号が検知される時間と次の主走査同期信号が検知される時間との時間差を示す値である。回転多面鏡(ポリゴン)42などの走査により発生する主走査同期信号は、副走査同期信号と比較して正確にパルスを刻むため、pの値はほぼ一定とみなすことができるため、あらかじめpを測定して記憶されている。
次に、開始タイミング決定部65は、(式3)に従って、N=1からN=yth-1までの全てのΔy(N)を加えた値を(yth-1)で割ることにより、Δy(N)の平均値αを算出する。平均値αは、yのカウントが1つ進む間にxのカウントが平均的にいくつ進んだかを示すため、値yと値xとの関係は平均値αを用いて比例関係y=(1/α)x+βで近似される。β=0の場合は、版ずれ量計算開始信号の検知時刻において主走査同期信号と副走査同期信号とが同時に検知されてy=(1/α)xが成立する場合に相当する。すなわち、βは、y=(1/α)xのy=(1/α)x+βからのずれに相当し、所定の副走査同期信号を検知した時刻と、平均的な主走査同期信号の検知時刻とのずれを、主走査同期信号のカウントに換算した値を表す。βは副走査同期信号と主走査同期信号との平均的なずれを示す値である。
次に、開始タイミング決定部65は、y=(1/α)×xの成立を仮定した場合に想定されるy(N)と実際のカウントy(N)との差を平均化し、y=(1/α)×x+βとy=(1/α)×xとのずれ、すなわちβを算出する。具体的には、開始タイミング決定部65は、(式4)に基づいてN=1からN=ythまで計算し、(式5)に示すように全て加算してythで割ることによりβを算出する。
測定データである値xと値yとの関係、及び1色目のβ1と2色目のβ2との関係を図10のグラフに例示する。なお、βの算出方法は、副走査同期信号と主走査同期信号との比例直線の差であるβ間の差が求まれば、他のアルゴリズムを用いるものであってもよい。
開始タイミング決定部65は、β記憶部67にβ1を記憶すると、あらかじめ開始タイミング記憶部68に記憶されたxstart1=6000を、値xLkがいくつのときに1色目(ライトブラック)の1ライン目の露光を開始するかを示すxstart1として決定する(ステップS18)。
2色目(ブラック)のタイミング決定方法について説明する。開始タイミング決定部65の動作は、1色目(ライトブラック)の露光時と同様であり、マーカ検知部37Kから副走査同期信号を入力する点と、求めるβがβ2である点と、xstart2の決定方法が異なる。
開始タイミング決定部65は、マーカ検知部37Kから副走査同期信号を入力し、版ずれ量計算開始信号を検知したか所定のタイミングで判定し続ける(ステップS10)。開始タイミング決定部65は、版ずれ量計算開始信号を検知すると、副走査同期信号カウンタ60の値yKを0に設定し、マーカ検知部37Kからの副走査同期信号を検知するたびに値yKをカウントアップする動作を開始させ(ステップS11)、主走査同期信号カウンタ61の値xKを0に設定し、走査光受光部36Kからの主走査同期信号を検知するたびに値xKをカウントアップする動作を開始させ(ステップS12)、内蔵のクロックからの入力をもとに走査光受光部36Kからの主走査同期信号を検知してからの経過時間tKの測定を繰り返す動作を開始させる(ステップ13)。
開始タイミング決定部65は、副走査同期信号カウンタ60が副走査同期信号を検知して値yKがカウントアップされたか判定を繰り返し(ステップS14)、副走査同期信号カウンタ60の値yKがカウントアップされると、検知時における値xKと経過時間tKとを値yKに対応させて計測データ記憶部66に記憶させる(ステップS15)。開始タイミング決定部65は、値yKがあらかじめ設定されたしきい値ythに到達したか判定し(ステップS16)、値yKがしきい値ythに達していなければ、副走査同期信号の検知(ステップSS14)と、値xKと値yKと経過時間tKとの記憶(ステップS15)と、値yKとしきい値ythとの比較(ステップS16)とを繰り返す。開始タイミング決定部65は、値yKがしきい値ythに到達すると、計測された値yKと値xKとの関係を一次関数yK=(1/α)xK+βで近似することにより、所定の副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれを表すβ2を算出し、β記憶部67に記憶させる(ステップS17)。
開始タイミング決定部65は、β記憶部67にβ2を記憶すると、xstart1+β1-β2に最も近い整数を、値xKがいくつのときに2色目(ブラック)の1ライン目の露光を開始するかを示すxstart2として決定する(ステップS18)。
版ずれ低減処理部69は、版ずれ量xstart1+β1-xstart2-β2が大きいほど、画像処理部55に対し、高濃度トナーに対する低濃度トナーの使用率を低くさせる。版ずれ低減処理部69の具体的な版ずれ低減処理方法として、3つの処理方法について説明する。なお、版ずれ低減処理部69は、いずれの処理方法を用いてもよく、また、版ずれ量が大きいほど高濃度トナーに対する低濃度トナーの使用率を低くさせる他の処理方法を用いるものであってもよい。
第1の版ずれ低減処理方法では、版ずれ低減処理部69は、版ずれ量xstart1+β1-xstart2-β2が所定のしきい値βth以上(例えば0.5以上)であれば低濃度トナーを全く使用しないで画像形成するように画像処理部55を制御する。例えば、画像処理部55が高濃度トナーと低濃度トナーとを分けるしきい値Pthを0に設定して、第1画像ステーション11Lkの低濃度トナーで画像形成しないようにする。版ずれ低減処理部69は、版ずれ量xstart1+β1-xstart2-β2がしきい値βth未満であれば低濃度トナー及び高濃度トナーを通常通り使用させるように画像処理部55を制御する。
第2の版ずれ低減処理方法では、版ずれ低減処理部69は、版ずれ量xstart1+β1-xstart2-β2の値に応じて、画像処理部55のしきい値Pthを変化させることにより、低濃度トナーの使用量を変化させる。具体的には、版ずれ量xstart1+β1-xstart2-β2の絶対値をJとし、Pth=64-J×128の計算式に従ってPthを設定する。なおPthの計算式はこれに限られるものではない。例えば、J=0すなわち版ずれがない場合にはPth=64と設定され、通常通り濃度64以上の画素が高濃度トナーによって現像される。J=0.5以上の場合にはPth=0以下となり、全ての画像が高濃度トナーによって現像される。Jが0と0.5の間であれば、版ずれ量が大きくなるに従ってPthが0に近づき、低濃度トナーを使用する量が低下する。
第3の版ずれ低減処理方法では、版ずれ低減処理部69は、版ずれ量xstart1+β1-xstart2-β2の値に応じて画像処理部55のPthを離散的に設定する。具体的には、xstart1+β1-xstart2-β2の絶対値をJとし、J≦0の場合にはPth=64と設定し、0<J≦0.25ならPth=48と設定し、0.25<J<0.5ならPth=32と設定し、0.5≧JならPth=0と設定する。
画像処理部55は、版ずれ低減処理部69の設定に従って、第1画像ステーション11Lk及び第2画像ステーション11Kの書込み信号を作成し、走査制御部70に送る。なお、画像処理部55は、版ずれ低減処理部69による設定が行われた後に中間調処理などの画像処理を実施するものであってもよく、あらかじめ複数の画像処理を施した複数の中間調画像を記憶しておき、版ずれ低減処理部69による設定に応じて記憶された画像のいずれかを選択して出力するものであってもよい。あらかじめ複数の画像処理を施した複数の中間調画像を記憶しておくことにより、版ずれ低減処理部69による設定から露光開始までの時間を早めることができ、処理時間に余裕をもたせることができる。
具体的には、版ずれ低減処理部69が第1の版ずれ低減処理方法を実行する場合、画像処理部55は、高濃度トナーのみで画像を形成する場合の中間調処理画像と、高濃度トナー及び低濃度トナーで画像を形成する場合の中間調処理画像との2つをあらかじめ記憶しておき、版ずれ低減処理部69の設定に応じていずれかの中間調処理画像を選択して出力する。版ずれ低減処理部69が第3の版ずれ低減処理方法を実行する場合、画像処理部55は、離散的なPthの値に対応したそれぞれの中間調処理画像を全て記憶しておき、版ずれ低減処理部69の設定に応じていずれかの中間調処理画像を選択して出力する。
走査制御部70は、図11のフロー図に示す露光方法を実行して、レーザ光源40を制御することにより、感光体30を走査する。1色目のライトブラックの露光時には、走査制御部70は、主走査同期信号カウンタ61の値xLkがxstart1に達したか繰り返しチェックする(ステップS20)。走査制御部70は、値xLkがxstart1に達すると、画像処理部55から入力されるライトブラックの書込み信号に基づいてレーザ光源を点灯させることにより、xLk=xstart1における1ライン目の露光を開始する(ステップ21)。2色目のブラックの露光時には、走査制御部70は、主走査同期信号カウンタ61の値xKがxstart2に達したか繰り返しチェックする(ステップS20)。走査制御部70は、値xKがxstart2に達すると、画像処理部55から入力されるブラックの書込み信号に基づいてレーザ光源を点灯させることにより、xK=xstart2における1ライン目の露光を開始する(ステップ21)。3色目以降の露光時には、走査制御部70は、あらかじめ定められたタイミングで露光を開始する。
xLkの1カウントあたり中間転写ベルト20の副走査方向の移動量が21μmであるので、xstart1=6000である場合、ホームポジション検知信号の発生からxLk=xstart1まで、中間転写ベルト20は距離にして21×6000=126000μm進む。なお、yth、xstart1の値は必要な計算時刻や画像の間隔に応じて適宜設定する。
第1画像ステーション11Lkと第2画像ステーションKとの間は、約10cm離れており、主走査同期信号は中間転写ベルト20上の距離に換算して21μmに一度検知される。第1画像ステーション11Lkのマーカ検知部37Lkで発生する副走査同期信号からホームポジション信号を検知してから、第2画像ステーション11Kのマーカ検知部37Kで発生する副走査同期信号からホームポジション信号を検知するまでの間に、10cm/21μm=4762回程度の主走査同期信号が検知される。すなわち、1色目(ライトブラック)におけるホームポジション信号を検知したxLk=0の時点から、2色目(ブラック)におけるホームポジション検知信号を検知するxK=0の時点までに、1色目のカウント値xLkは4762程度にカウントされる。xK=0の時点から版ずれ低減処理部69における処理が終了するまで、xのカウント値に換算して約300かかる場合、xLkのカウント値が4762に300を加えた約5000程度のときに版ずれ低減処理部69における処理が完了する。xstart1=6000とすることにより、すなわち、xLk=0の時点から版ずれ低減処理部69における処理まで全て終了するのに必要なカウント数に対してxstart1を十分大きく設定することにより、版ずれ低減処理部69による処理が終了する前に画像形成が開始する事態の発生を防ぐことができる。
高濃度トナー像を形成する画像ステーションと低濃度トナー像を形成する画像ステーションとが隣接していない場合であっても、版ずれ量計算が確実に終了してから上流側ステーションにおける作像が開始されるようにxstart1の値を定めておく。なお、版ずれ量の予測精度を高めるためには、第1画像ステーション11Lkと第2画像ステーション11Kとを隣接して配置することが望ましい。
より具体的に、例えば開始タイミング記憶部68にあらかじめxstart1=6000が記憶され、1色目にβ1=0.2が算出され、2色目にβ2=0.9が算出される場合、2色目のxstart2がどのように決定されるか、図12の副走査同期信号及び主走査同期信号の検出タイミングと各ドット位置との模式的な関係図を用いて説明する。
図12(a)に示すように、主走査同期信号は1色目及び2色目においてほぼ等間隔で検知される。一方、各主走査同期信号によって形成されるドットは、例えば図12(b)に示すように、1色目にやや長周期の振動を受けてドット間隔を徐々に小さくしながら形成され、2色目には1色目より短周期の振動を受けてドット間隔を徐々に大きくし、その後ドット間隔を小さくして形成されるなど、画像形成装置1本体の振動により中間転写ベルト20上で見れば等間隔には形成されない。
開始タイミング決定部65は、1色目の露光時に色ずれ量計算開始信号を検知し、β1=0.2を算出する。β1=0.2であることは、1色目については画像形成前に検知された複数の信号(本実施形態ではyth=100個分に相当する主走査同期信号および副走査同期信号)から、所定の副走査同期信号と平均的な主走査同期信号とが主走査同期信号間隔に換算して0.2ずれていることを示す。次に、開始タイミング決定部65は、2色目の露光時に色ずれ量計算開始信号を検知し、β2=0.9を算出する。β2=0.9であることは、2色目については所定の副走査同期信号と平均的な主走査同期信号とが主走査同期信号間隔に換算して0.9ずれていることを示す。次に、開始タイミング決定部65は、xstart1+β1-β2=6000+0.2-0.9=5999.3であることから、5999.3に最も近い整数5999をxstart2の値として決定する。
次に、版ずれ低減処理部69は、版ずれ量xstart1+β1-xstart2-β2=0.3であることから、通常通り低濃度トナー及び高濃度トナーを使用して画像形成するように、画像処理部55にしきい値Pthを設定し、1色目及び2色目の書込み信号を出力させる。
走査制御部70は、カウント値xLk=6000となるタイミングで1色目(ライトブラック)の1ライン目の露光を開始し、カウント値xK=5999となるタイミングで2色目(ブラック)の1ライン目の露光を開始する。2色目の平均的な主走査同期信号は、1色目の平均的な主走査同期信号に対して0.7ずれている。従って、1色目の主走査同期信号x=Mに対して、2色目の主走査同期信号x=M-1が最も近い事が平均的にわかっている。すなわち、(0.9-0.2)よりも((0.9-1)-0.2)の方が絶対値が小さい。従って、1色目のx=6000を第1ラインとした場合、2色目はx=5999を第1ラインとすれば、1色目に対する2色目の色ずれは平均的に小さくなる。
なお、比較例として副走査同期信号検知直後の主走査同期信号のみを参照すると、図12(c)の例に示すように、2色目にもxstart2として6000を選択し、x=6000の主走査同期信号に対して露光を開始すると、実際にはドット位置は外乱によって変動しているため、2ライン目以降について色ずれが大きくなり、2色目の3ライン目が1色目の4ライン目に重なるなどの不具合が生じ、画像全体として色ずれを低減させることができない。
第1の実施形態の画像形成装置によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて版ずれ量を予測することができるため、高濃度トナーと低濃度トナーとの使用割合を版ずれ量に応じて変化させることができ、版ずれによる画質劣化を抑制することができる。第1の実施形態の画像形成装置によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて露光を開始する主走査同期信号を選択するので、単一の主走査同期信号の値を用いてどの主走査同期信号から露光を開始するのかを決定する場合に比べて、外乱の影響を受けにくく、高い精度で版ずれを低減させた高画質な画像を形成することができる。
なお、マーカを配置する画像支持体は、中間転写ベルトや感光体に限られるものではない。例えば、記録用紙などの記録媒体にマーカを設けたものであってもよい。版ずれ量は、記録媒体に高濃度トナーによるスケールパターンと低濃度トナーによるスケールパターンとを重ねて出力し、これをスキャンすることによって検知されるものであってもよい。版ずれ量は、画像支持体上にトナーによって重ねて形成されたスケールパターンを読み込むことによって検知されるものであってもよい。トナーパターンをスキャンすることによって版ずれ量を検知する場合、例えば、画像支持体上のホームポジションを検知できる場合には、張架ローラの偏芯などに基づく周期的な版ずれをスキャンによって把握することができ、ホームポジションからの距離と版ずれ量との関係を把握することができる。従って、ホームポジションからの距離を参照し、版ずれ量が大きくなる距離では低濃度トナーの使用割合を控えるように制御することができる。画像支持体上のホームポジションを検知できない場合には、トナーパターンをスキャンすることにより版ずれ量の平均的な大きさを検知し、画像形成装置の使用初期段階では版ずれ量が小さいため低濃度トナーを使用し、経時的な画像支持体の劣化などによって版ずれ量が大きくなると低濃度トナーの使用を控えるように制御することができる。トナーパターンを用いることにより、画像支持体上にマーカを設けるためのコストを低減することができる。なお、トナーパターンをスキャンする方法では、張架ローラの偏芯などに基づく版ずれのような、1枚の画像形成時に発生すれば次の1枚の画像形成時にも発生するという再現性のある版ずれしか検知することができない。一方、画像支持体上に形成されたマーカを用いる方法では、主走査同期信号と副走査同期信号とのずれなどの再現性の低い版ずれを検知することができるので制御の制度がよく、本発明により適している。
第2の実施形態の画像形成装置は、第1の実施形態の版ずれ低減処理方法において、版ずれ量だけではなく版ずれ量の変動に応じて画像処理の方法を切り替える点で異なるほか、他の構成及び制御において第1の実施形態と同様である。
版ずれ低減処理部69は、y=(1/α)×x+βの式と実際に検知されるx、yとの差異を参照して画像処理を切り替える。具体的には、開始タイミング決定部65においてy=(1/α)×x+βの関係式が求められた後、版ずれ低減処理部69はyの分散Lを求める。分散Lは、y=Iの副走査同期信号が検知された時点におけるカウント値xをx(I)と表し、((1/α)×x(I)+β-I)の2乗という値をI=1からI=ythまで加算し、加算後の値をythで割ることにより求められる。((1/α)×x(I)+β-I)は、y=(1/α)×x+βという直線と実際に検知されるyの値との差をあらわし、この2乗をythで割ることにより、y=(1/α)×x+βという直線に対する実際に検知されたyの分散Lが求められる。
版ずれ低減処理部69は、分散Lが所定値以上の場合には1枚の画像の中での版ずれ量の変動が激しいものとみなし、低濃度トナーのみで画像形成するように画像処理部55を設定し、分散Lが所定値未満の場合には1枚の画像の中での版ずれ量の変動が少ないとみなし、通常通り低濃度トナーと高濃度トナーとを重ねて画像形成するように画像処理部55を設定する。具体的には、版ずれ低減処理部69は、yの分散Lが0.25以上であれば強制的にPth=0に設定する。
あるいは、版ずれ低減処理部69は、分散Lの変動の激しさに応じてPthの値を変化させる。具体的には、版ずれ低減処理部69は、Pth=128×(0.25-L)に従って画像処理部55にPthを設定する。分散Lが0.25以上であれば、高濃度トナーのみにより画像形成され、分散が0.25未満であれば分散Lが小さいほどPthが高くなり、低濃度トナーの使用割合が増加する。
画像形成装置を長時間使用する場合、例えばベルトを張架するローラの表面にトナーが付着することで中間転写体6表面の移動状態が変化することがある。このような場合には、1枚の画像形成中に発生する版ずれ量の変動が増加してしまう。版ずれ量の変動が増加すれば、平均的に版ずれ量が少なくても低濃度トナー像と高濃度トナー像の局所的な版ずれは大きくなる。yの分散値が所定値よりも大きい場合には強制的に高濃度トナーのみを用いて画像を形成することにより、1枚の画像形成中に発生する版ずれ量が変動した場合でも画質の劣化を抑制することができる。
なお第1の実施形態のように平均的な版ずれ量βに応じて低濃度トナーの使用割合を変更する方式と、本実施形態の方式とを併用しても良い。
第2の実施形態の画像形成装置によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて版ずれ量を予測することができるため、高濃度トナーと低濃度トナーとの使用割合を版ずれ量に応じて変化させることができ、版ずれによる画質劣化を抑制することができるとともに、1枚の画像形成中に発生する版ずれ量の変動が大きい場合に、低濃度トナー像と高濃度トナー像の局所的な版ずれを抑制することができる。第2の実施形態の画像形成装置によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて露光を開始する主走査同期信号を選択するので、単一の主走査同期信号の値を用いてどの主走査同期信号から露光を開始するのかを決定する場合に比べて、外乱の影響を受けにくく、高い精度で版ずれを低減させた高画質な画像を形成することができる。
第3の実施形態の画像形成装置は、第1の実施形態の画像形成装置1において、レーザ光源から複数のビームを出力するマルチビーム方式であり、開始タイミング決定部65で画像情報の1ライン目を露光する先頭ビームを選択し、走査制御部70で選択されたビームを先頭ビームとして露光を開始する点で第1の実施形態と異なる。他の構成及び動作は第1の実施形態と同様である。
具体的には、1つの主走査同期信号を検出するごとに1回走査し、1回の走査で副走査方向にBN(=4)個のビームを用いて、BN(=4)ライン分の露光を同時に行う。4ライン同時に露光するため、外乱による副走査方向のドット位置ずれは4ドット単位で発生する。ここで、副走査方向の下流側、すなわち形成される画像の先頭に近い方から順に第1ビーム、第2ビーム、第3ビーム、第4ビームと称する。例えば、先頭ビームとして第2ビームが選択された場合には、1走査目には第1ビームを使用せず、第2ビームで1ライン目、第3ビームで2ライン目、第4ビームで3ライン目を露光する。2走査目以降は全てのビームで同時に4ラインを露光する。
開始タイミング決定部65は、1色目(ライトブラック)について、図8のフロー図に従ってβ1を算出し、1ライン目を書き込むビームとして第1ビームを選択し、2色目(ブラック)について、図8のフロー図に従ってβ2を算出するとともにxstart2を決定し、図13のフロー図に従って2色目のビーム選択方法を実行することにより第B2ビームを先頭ビームとして選択する。2色目のビーム選択方法においては、まず開始タイミング決定部65は、(xstart1+β1)-(xstart2+β2)≧0であるか判定する(ステップS30)。次に、開始タイミング決定部65は、(xstart1+β1)-(xstart2+β2)≧0である場合、[(xstart1+β1)-(xstart2+β2)]×BN+B1に最も近い整数B2を選択し(ステップS31)、(xstart1+β1)-(xstart2+β2)<0である場合、[1+(xstart1+β1)-(xstart2+β2)]×BN+B1に最も近い整数B2を選択する(ステップS31)。
版ずれ低減処理部69は、版ずれ量が大きいほど、画像処理部55に対し、高濃度トナーに対する低濃度トナーの使用率を低くさせる。ここで、版ずれ低減処理部69は、版ずれ量を[1+(xstart1+β1)-(xstart2+β2)]×BNとして処理を行う点で第1の実施形態と相違するほかは、第1の実施形態と同様の版ずれ低減処理方法を実行する。
走査制御部70は、開始タイミング記憶部68に記憶されたx=xstart1のタイミングで、あらかじめ定められた第B1ビームを先頭ビームとして露光を開始し、x=xstart2のタイミングで、第B2ビームを先頭ビームとして露光を開始する。
より具体的には、例えば、図14の主走査同期信号の検知時刻と対応するドット位置との関係図に示すように、あらかじめxstart1=6000、B1=1が設定されており、1色目にβ1=0.2が算出され、2色目にβ2=0.9が算出された場合、2色目のxstart2は5999と決定される。さらに、(xstart1+β1)-(xstart2+β2)=0.3となるため、[(xstart1+β1)-(xstart2+β2)]×BN+B1=0.3×4+1=2.2に最も近い整数である2がB2として選択される。走査制御部70は、2色目の先頭ビームとして第2ビームを選択し、x=5999のタイミングで1ライン目と2ライン目と3ライン目とを露光し、x=400のタイミングで4ライン目と5ライン目と6ライン目と7ライン目とを露光し、以下4ラインずつ順に露光する。
この例では、図14(a)に示すように2色目の主走査同期信号は1色目の主走査同期信号に対して主走査同期信号間隔換算で0.3だけ早い。つまり、2色目の主走査同期信号は1色目の主走査同期信号に対してビーム間間隔で1.2ビーム分だけ早いため、x=5999のタイミングで2色目の先頭ビームを第2ビームとして露光することにより、図14(b)の一色目のドット位置及び図14(c)の2色目のドット位置に示すように、副走査方向のドット間の平均的なずれを0.2ドット分に抑えることができる。
第3の実施形態の画像形成装置によれば、マルチビームを用いた画像形成装置において、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて先頭ビームを選択するとともに、版ずれ量を予測することができるため、高濃度トナーと低濃度トナーとの使用割合を版ずれ量に応じて変化させることができ、版ずれによる画質劣化を抑制することができる。第1の実施形態の画像形成装置によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて露光を開始する主走査同期信号を選択するので、単一の主走査同期信号の値を用いてどの主走査同期信号から露光を開始するのかを決定する場合に比べて、外乱の影響を受けにくく、高い精度で版ずれを低減させた高画質な画像を形成することができる。
第4の実施形態の画像形成装置は、第1の実施形態の画像形成装置1において、図15のブロック図に示すように制御部15に像域分離部71を備え、版ずれ低減処理部70は、出力する画像の特性に応じて版ずれ量に対する低濃度トナーの使用割合を変化させる点で第1の実施形態と異なり、他の構成及び動作において第1の実施形態と同様である。具体的には、版ずれ低減処理部70は、画像処理部55において低濃度トナーと高濃度トナーとの使用を切り分けるしきい値Pthを、絵柄領域と線画領域とで異ならせることにより、版ずれ量が大きくなるに従って低濃度トナーの使用を抑制する処理を、絵柄領域よりも線画領域ほうで強くさせる。
像域分離部71は、無彩色の画像情報を絵柄領域と線画領域とに分離する。具体的な像域分離手法を2つ説明する。なお、像域分離部71は、像域分離手法として論文「文字/絵柄(網点、写真)混在画像の像域分離方式」(電子情報通信学会論文誌、Vol.J75-DI1、No.1、pp39-47、1992.1)に記載されたエッジ分離のみを利用して行うもののほか、他の種々の方法を用いるものであってもよい。
第1の像域分離方法では、まず像域分離部71は、原稿をスキャンして入出力部53から入力された入力画像データにエッジ強調を施した後、画素単位にしきい値TH1としきい値TH2と(TH1>TH2)を用いて注目画素がしきい値TH1よりも大きければ白画素、しきい値TH2よりも小さければ黒画素と判定することにより3値化する。像域分離部71は、3値化後の黒画素と白画素の連続性をパターンマッチングにより検出し、5×5画素のブロック内において黒連続画素及び白連続画素が1個以上存在する場合には注目画素をエッジ領域と判断し、それ以外の場合には注目画素を非エッジ領域と判断する。像域分離部71は、エッジ領域を線画領域と判定し、非エッジ領域を絵柄領域と判定する。
第2の像域分離手法では、画像情報がページ記述言語などのコマンドで表現された画像の場合、像域分離部71は、形成しようとするオブジェクトが絵柄領域に属するか否かをページ記述言語から読み取り、ビットマップ表現であれば絵柄領域と判定し、それ以外を線画領域と判定する。
なお、像域分離部71は、グラフィック画像を画像形成装置の特性に応じて線画領域に含めるものでも絵柄領域に含めるものであってもよい。また、文字画像の中でも網点領域中の文字を絵柄領域に含めるものであってもよい。なお、「線画領域」とは少なくとも白地を背景とした文字画像が含まれるものであり、「絵柄領域」とは写真が含まれるものであればよい。すなわち、白地を背景とした文字画像と写真を出力し、両領域での版ずれ量と低濃度トナー使用量の関係をチェックすることにより、本実施形態の処理を使用しているか否かを確認することができる。
版ずれ量低減処理部70は、各画素ごとに絵柄領域であるか線画領域であるか判定し、絵柄領域であればK=1と設定し、線画領域であればK=2と設定する。次に、版ずれ量低減処理部70は、版ずれ量xstart1+β1-xstart2-β2の絶対値Jを用いて、画像処理部55のしきい値PthをPth=64-J×128×Kに設定する。例えば、J=0すなわち版ずれがない場合にはPth=64と設定され、濃度64以上の画素が高濃度トナーによって現像される。
絵柄領域ではJ=0.5以上の場合にPth=0以下となり、線画領域ではJ=0.25以上の場合にPth=0以下となり、Pth=0以下で全ての画像が高濃度トナーによって現像される。絵柄領域では、Jが0と0.5との間であれば、版ずれ量が大きくなるに従ってPthが0に近づき、低濃度トナーを使用する量は低下する。一方、線画領域では、Jが0と0.25の間であれば、版ずれ量が大きくなるに従ってPthが0に近づき、低濃度トナーを使用する量は低下する。
版ずれが発生した場合、線画領域では低濃度トナーと高濃度トナーの間に空白部が生じ、また転写時や定着時のチリやドットゲインが生じると文字エッジが乱れるために画質劣化が顕著に目立ちやすい。これに対して絵柄領域では版ずれが生じたからといって直ちに画質劣化が目立つわけではなく、むしろハイライト部における粒状性低減効果のほうが大きい。またハイライト部のように高濃度トナー使用割合が小さい領域では版ずれによる画質への影響は非常に少ないか、あるいは、全くない。そこで、版ずれ量増大時に高濃度トナーと低濃度トナーとを併用することによる画質劣化が大きいのは、写真などの絵柄領域よりも、文字、グラフィックなどの線画領域であることに着目し、線画領域における低濃度トナーの使用抑制を絵柄領域における低濃度トナーの使用抑制よりも強くしている。
第4の実施形態の画像形成装置によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて版ずれ量を予測することができるため、高濃度トナーと低濃度トナーとの使用割合を版ずれ量に応じて変化させることができ、版ずれによる画質劣化を抑制することができるとともに、版ずれによる画質劣化の影響が大きな線画領域における低濃度トナーの使用抑制を、絵柄領域における低濃度トナーの使用抑制よりも強くすることにより、線画領域の画質劣化を防止しつつ絵柄領域では低濃度トナーによる粒状性向上の効果を得ることができる。第1の実施形態の画像形成装置によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて露光を開始する主走査同期信号を選択するので、単一の主走査同期信号の値を用いてどの主走査同期信号から露光を開始するのかを決定する場合に比べて、外乱の影響を受けにくく、高い精度で版ずれを低減させた高画質な画像を形成することができる。
第5の実施形態の画像形成装置80は、図16の構成図に示すように、感光体81の周囲に第1マーカ検知部82Lkと第1帯電部83Lkと第1書込装置84Lkと第1現像装置85Lkと第2マーカ検知部82Kと第2帯電部83Kと第2書込装置84Kと第2現像装置85Kと転写装置86とクリーニング装置87とを順に備え、さらに、給紙部88と定着装置89と排紙部90と制御部91と第1走査光受光部92Lkと第2走査光受光部92Kとを備えるモノクロ画像形成装置である。
感光体81は、像担持体として機能し、矢印の方向に回転駆動され、表面には図17の平面図に示すように、回転方向に直交する主走査方向の一端側において、副走査方向に沿って内側に第1の実施形態と同様のマーカ97を設けている。マーカ97は、感光体81と反射率の異なる物質で形成された複数のスケールを、副走査方向に等間隔で配置して構成されており、スケールの間隔を広くしたマーカ97の切れ目を一部に設けている。各スケールは、副走査方向に10μm程度の幅をもち、副走査方向に間隔65μmで配置されている。
第1マーカ検知部82Lk及び第2マーカ検知部82Kは、第1の実施形態のマーカ検知部16と同様に、それぞれ副走査同期信号発生手段として機能し、具体的には、マーカ97の通過領域付近に固定され、LEDなどの発光素子から感光体81に光を照射し、ホトセンサなどの受光素子で反射光を受光し、反射光強度の変化からマーカ97を検出することにより、副走査同期信号を形成する。マーカの切れ目をホームポジション信号として使用する点も同じである。
第1帯電部83Lkは、感光体81を暗中にて所定の電位に一様に帯電する。第1書込装置84Lkは、図17の平面図に示すように、ライトブラックの画像情報に応じて変調されて光源93Lkから出力されるレーザービームをコリメートレンズ94Lkによりコリメートし、回転多面鏡用モータにより回転する回転多面鏡95Lkの偏向反射面により走査し、結像レンズ96Lkで絞り込んでレーザースポットを形成し、感光体81を回転方向と直交する主走査方向に走査露光することにより、感光体81の回転と連動して感光体81を2次元に露光する。露光部分は除電されて画像部を形成し、非露光部分は非画像部を形成し、感光体81に静電潜像が形成される。
第1走査光受光部92Lkは、第1の実施形態の走査光受光部15と同様に主走査同期信号発生手段として機能し、具体的には、第1書込装置84Lkによるレーザの走査範囲内であって画像範囲外に配置された受光素子によりレーザービームを受光し、主走査方向の記録開始位置(横レジスト)を決定する主走査同期信号を形成する。
第1現像装置85Lkは、負帯電トナー粒子を担持した現像剤担持体を感光体81に対向させ、現像剤担持体に対して静電潜像の非画像部電位と画像部電位との中間の電位を印加することにより現像剤担持体上の負帯電トナー粒子を露光された部分に静電的に移動させ、感光体81の潜像からライトブラックのトナー像を現像する。
第2帯電部83Kは、担持されたライトブラックトナー像ごと感光体81を暗中にて所定の電位に一様に帯電する。ライトブラック用トナー像も帯電を受けるが、もともと負帯電したトナー粒子であるために極性が変化することはない。第2書込装置84Kは、ブラックの画像情報に応じて変調され、第1書込装置84Lkと同様に、感光体81に静電潜像を形成する。第2走査光受光部92Kは、第1走査光受光部92Lkと同様に、主走査同期信号を形成する。第2現像装置85Kは、第1現像装置85Lkと同様にして感光体81の潜像からブラックのトナー像を現像する。
転写装置86は、ブラックトナー像とライトブラックトナー像とを同時に担持した感光体81から、記録媒体へ、全トナー像を転写する。クリーニング装置87は、転写後に感光体81上に残留した転写残トナーを清掃する。定着装置89は、ブラックトナー像とライトブラックトナー像とを担持した記録媒体を定着し、記録媒体上にトナー像を固定する。排紙部90は、定着後の記録媒体を排紙トレイに排紙する。
第1走査光受光部92Lk、第1マーカ検知部82Lk、レーザ光源93Lkは、第1の実施形態の第1画像ステーション11Lkが備える走査光受光部36Lkとマーカ検知部37Lkとレーザ光源40Lkに相当する。第2走査光受光部92K、第2マーカ検知部82K、レーザ光源93Kは、それぞれ、第1の実施形態の第2画像ステーション11Kが備える走査光受光部36Kとマーカ検知部37Kとレーザ光源93Kに相当する。
中間転写ベルト20ではなく、感光体81に直接トナー像を重ねる点で大きく異なるが、制御部91が備える書込み制御部による動作は第1の実施形態と同様である。
感光体81の表面に低濃度トナー及び高濃度トナーを重ねる場合には、中間転写体上で重ねる場合と比較して一般に版ずれは少ないが、第1書込装置84Lk及び第2書込装置84Kの露光に使用する主走査同期信号と副走査同期信号との同期が取れていないので、やはり版ずれは生じる。また、感光体81の偏芯や画像形成装置の振動などが生じると版ずれ量の変動も発生する。
第5の実施形態の画像形成装置80によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて版ずれ量を予測することができるため、高濃度トナーと低濃度トナーとの使用割合を版ずれ量に応じて変化させることができ、版ずれによる画質劣化を抑制することができる。第5の実施形態の画像形成装置によれば、副走査同期信号に対する主走査同期信号の平均的なずれに基づいて露光を開始する主走査同期信号を選択するので、単一の主走査同期信号の値を用いてどの主走査同期信号から露光を開始するのかを決定する場合に比べて、外乱の影響を受けにくく、高い精度で版ずれを低減させた高画質な画像を形成することができる。
第6の実施形態の画像形成装置は、図18のブロック図に示すように第1の実施形態の画像形成装置の書込装置32Lkと書込装置32Kと書込制御部56とに変えて、それぞれ対応する書込装置100Lkと書込装置100Kと書込制御部110を備える。他の構成については第1の実施形態と同様であるので、以下、相違点を重点に説明する。
書込装置100Lkは、ライトブラックの画像情報に応じて感光体30Lkを露光する点では第1の実施形態と同様であるが、レーザを走査するのではなく図19の平面図に示すように感光体30Lkの回転する副走査方向と直交する主走査方向に、ライン状に配置したLEDアレイ102を点灯させることにより感光体30Lkを露光する。
書込制御部110は、図18のブロック図に示すように、副走査同期信号カウンタ111と主走査同期信号生成部112と主走査同期信号カウンタ113としきい値記憶部114と計測部115と計測データ記憶部116と版ずれ低減処理部117と走査制御部118とをもつ。
副走査同期信号カウンタ111は、副走査同期信号をカウントして値yとして保持する。マーカ検知部37Lkから入力される副走査同期信号のカウント値yLkと、マーカ検知部37Kから入力される副走査同期信号のカウント値yKとは区別してカウント及び保持される。しきい値記憶部114は、しきい値ythを記憶している。主走査同期信号生成部112は、主走査同期信号を発生させる。主走査同期信号カウンタ101は、主走査同期信号をカウントして値xLx及び値xKとして区別して保持する。
計測部115は、図20のフロー図に示すタイミング決定方法に従って、まず、マーカ検知部37Lkから副走査同期信号を入力し、ホームポジション検知信号、すなわち版ずれ量計算開始信号を検知したか所定のタイミングで判定し続ける(ステップS40)。計測部115は、版ずれ量計算開始信号を検知すると、副走査同期信号カウンタ111の値yLkを0に設定し、副走査同期信号を検知するたびに値yLkをカウントアップする動作を開始させ(ステップS41)、主走査同期信号カウンタ113の値xLkを0に設定し、主走査同期信号を検知するたびに値xLkをカウントアップする動作を開始させる(ステップS42)。計測部115は、値yLkがカウントアップされたか判定を繰り返し(ステップS43)、値yLkがカウントアップされると、その後初めて値xLkがカウントアップされたときの値xLkを値yLkに対応させて計測データ記憶部116に記憶させる(ステップS44)。計測部115は、値yLkがしきい値ythに到達したか判定し(ステップS45)、値yLkがしきい値ythに達していなければ、副走査同期信号の検知(ステップS43)と、値xLkと値yLkとの記憶(ステップS44)と、値yLkとしきい値ythとの比較(ステップS15)とを繰り返す。
計測部115は、マーカ検知部37Kから副走査同期信号を入力し、版ずれ量計算開始信号を検知した場合も同様に値yKと値xKとの組み合わせを計測して計測データ記憶部116に記憶させる。測定データ記憶部116には、P番目に検知される副走査同期信号のカウント値をy(P)とし、y(P)検知後に初めて検知される主走査同期信号のカウント値をX(P)とした組み合わせが記憶されている。
版ずれ低減処理部117は、版ずれ量だけではなく版ずれ量の変動に応じ、画像処理部55に対して高濃度トナーと低濃度トナーとの使用割合を設定する。具体的には、版ずれ低減処理部117は、Δyave=(X(yth)-X(1))/Nを計算し、Δy(P)=X(P+1)-X(P)をN=1からyth-1まで計算し、(Δyave-Δy(N))の2乗をP=1からyth-1まで加算してythで割った値、すなわち、ある副走査同期信号が検知されてから次の副走査同期信号が検知されるまでの時間の分散を算出する。
版ずれ低減処理部117は、分散値が所定の値よりも大きければ低濃度トナーの使用割合を低くするように画像処理部のしきい値を設定し、分散値が所定の値以下であれば低濃度トナーの使用割合を高くするように画像処理部55のしきい値を設定する。例えば、分散値にたいするしきい値が0.1であれば、版ずれ低減処理部117は、分散値が0.1よりも大きければ画像処理部のしきい値Pthを0に設定することにより低濃度トナーの使用割合を低くさせ、分散値が0.1以下であれば画像処理部55のしきい値Pthを64に設定することにより低濃度トナーの使用割合を高くする。
なお、版ずれ低減処理部117は、副走査同期信号にフィルタをかけ、高周波のノイズが大きい場合には版ずれ低減困難と判断して低濃度トナーの使用割合を低く設定するものであってもよい。
走査制御部70は、各画像ステーションのレーザ光源40を制御することにより、画像処理部55から送られる書込み信号に従った書込みを、計測部105で決定されたタイミングで開始させる。走査制御部118は、主走査同期信号に従って書込装置100Lk及び書込装置100KのLEDアレイを点灯させることにより、画像処理部55から送られる書込信号に従った書込みを開始させる。
第6の実施形態の画像形成装置は、LEDアレイにより露光するため主走査同期信号と副走査同期信号とのずれという問題は生じず、原理的には、中間転写体上のマーカ26を検知して発生する副走査同期信号に応じ、適切なタイミングでLEDアレイによる書込みを実施すれば版ずれは生じない。実際には、副走査方向の移動状態の変動が大きい場合、版ずれを起こさないようにLEDアレイの書込タイミングを制御することは困難であるため、副走査方向の移動速度が大きい場合には版ずれを押さえ込むことはできない。従って、副走査同期信号の平均的な速度に対する個々の副走査同期信号の速度の大きさをチェックし、この値が大きい場合には低濃度トナーの使用量を低減することにより、版ずれを低減させることができる。
第6の実施形態の画像形成装置によれば、LEDアレイ書込を用いた場合に、版ずれ量及び速度の分散に応じ、高濃度トナーと低濃度トナーとの使用割合を変化させることにより、版ずれによる画質劣化を抑制することができる。