JP4512970B2 - 抵抗溶接装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上部材と下部材を抵抗溶接して部品の自動生産を行う抵抗溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶接物を圧接した状態で瞬間的に大電流を通電し、接触部位に発生する抵抗発熱を利用して溶接を行う抵抗溶接装置は、種々の分野で用いられている。その中に、例えば、半導体チップをベース部材上においてリード線に結線したステムあるいはベースと呼ばれる下部材と、半導体材料の劣化を防止するため、半導体チップを窒素などの不活性ガスとともに封止して保護するキャップなどと呼ばれる上部材を、不活性ガス中の雰囲気で抵抗溶接して、半導体部品を連続自動生産する抵抗溶接装置がある。
このような装置では、人間の立ち入れない雰囲気で溶接を行うので、確実で安定した自動溶接を実現する必要がある。そこで従来、コンベア方式によって装置外部から被溶接物を連続供給する装置、あるいはバッチごとにパレットで被溶接物を供給する装置があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コンベア方式では、溶接機の外部で被溶接物の自動供給ラインを連続稼動させなくてはならず、自動運転による省力化の効果が不十分であった。また、バッチ処理方式は、1バッチの処理能力が低かったので、頻繁にパレットを供給しなければならないという問題があった。
そこで、本発明では、被溶接物および上部材と下部材を溶接した部材(以下、溶接済み部材という)を装置内に比較的大量にストックしながら自動運転させることが可能であり、被溶接物の追加供給および溶接済み部材の回収を、その消費量および生産量に応じて柔軟に行うことができる抵抗溶接装置を提供することを目的とする。
またそのことを通じて、製造コストを下げられる装置を提供することを目的とする。
【0004】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、不活性ガスを充満させて抵抗溶接を行う溶接室と、該溶接室に隣接して、溶接すべき上部材と下部材を供給するとともに溶接済み部材を受け入れる不活性ガス置換室とを備え、不活性ガス雰囲気下で前記上部材と下部材とを抵抗溶接する抵抗溶接装置であって、前記不活性ガス置換室に、外部から前記上部材、下部材を収納したトレイ部材を搬入するトレイ搬入口と、前記溶接済み部材を収納したトレイ部材を搬出するトレイ搬出口と、前記トレイ部材をそれぞれ重ねて積載し先入れ先出し順序で受け入れまたは搬出を行うトレイ積載機構とを設け、前記溶接室には、前記溶接室と前記不活性ガス置換室を隔てる隔壁に設けられた開閉可能な開口部を通して、延伸退行が可能なトレイ部材移動手段を設け、該トレイ部材移動手段によって、前記不活性ガス置換室と前記溶接室との間で前記トレイ部材を移動させるように構成する。この構成により、不活性ガス置換室において、被溶接物である上部材と下部材をトレイ部材に収納し、重ねて積載してストックし、トレイ部材移動手段により溶接室に開口部を通してトレイ部材単位で順次供給し、溶接済み部材を収納したトレイ部材を順次回収して排出する。また、被溶接物を収納したトレイ部材の減り具合および溶接済み部材を収納したトレイ部材の溜まり具合に応じて、追加供給および回収を行う。
したがって、被溶接物および溶接済み部材を装置内に比較的大量にストックしながら稼動させることが可能となり、被溶接物の追加供給および溶接済み部材の回収を、その消費量および生産量に応じて柔軟に行うことが可能となる。
【0005】
請求項2に記載の発明では、 請求項1に記載の抵抗溶接装置において、前記トレイ積載機構は、前記トレイ部材が下降して重ねて積載されるためのガイド部材と、該ガイド部材に沿って積載したトレイ部材を下方に移動させるためのトレイ部材下降手段と、前記重ねて積載されたトレイ部材の最下段から2番目のトレイ部材を選択してクランプするクランプ手段とを備え、前記トレイ部材下降手段によって、前記最下段のトレイ部材を前記トレイ部材移動手段に移載するように構成する。
そのため、トレイ部材が順次重ねて積載され、最下段のものから、先入れ先出し順序で、順次トレイ部材移動手段に移載されて、溶接室に送られる。それぞれのトレイ部材は積載によって占める空間の中で上方から下方への大部分の移動を行うものである。
したがって限られた空間をトレイ部材の積載によって占めても、トレイ部材を順次溶接室に移動することができ、被溶接物を装置内に比較的大量にストックしながら稼動させることが可能となり、被溶接物の追加供給を、その消費量に応じて柔軟に行うことが可能となる。
【0006】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の抵抗溶接装置において、前記トレイ積載機構は、前記トレイ部材移動手段によって前記不活性ガス置換室に移動されたトレイ部材を上方に押し上げるためのトレイ部材押し上げ手段と、前記押し上げられたトレイ部材が、上昇して重ねて積載されるためのガイド部材と、該ガイド部材に沿って押し上げられて積載された前記トレイ部材の最下段のトレイ部材を選択してクランプするクランプ手段とを備え、下方から押し上げられたトレイ部材を順次重ねて積載するように構成する。
そのため、溶接済み部材を収納したトレイ部材は、溶接室から不活性ガス置換室に移動されてから、順次下方から押し上げられて、先入れ先出し順序で順次積載される。それぞれのトレイ部材は積載によって占める空間の中で下方から上方への大部分の移動を行うものである。
したがって、溶接室内から順次移動されたトレイ部材を下方から上方に移動させながら積載してストックすることができ、溶接済み部材を装置内に比較的大量にストックしながら稼動させることが可能となり、溶接済み部材の回収を、その生産量に応じて柔軟に行うことが可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下では添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なおすべての図面を通して、同一符号を付している部材は、同一または相当する部材を表している。
【0008】
図1は、本発明に係る抵抗溶接装置の概略斜視図である。
本装置は、例えばレーザーダイオード、光電素子、水晶発振子などの半導体素子部品の製造に用いられる抵抗溶接機であり、例えば半導体チップを円板状あるいは角板状などのステムの上に固定して配線し、ステムの下方に延びるリードを有する半導体ステム部材のような下部材と、半導体チップを不活性ガスとしての窒素とともに封止するために下部材にかぶせる半導体キャップ部材のような上部材を溶接するものである。
【0009】
本装置の全体は、内部を窒素雰囲気に保つために箱状に覆われており、さらに内部が隔壁1a、1bによって間仕切りされて、下部材と溶接済み部材を収納する不活性ガス置換室としての窒素置換ボックス2aと、窒素ガスを充填して窒素雰囲気下で下部材と上部材の溶接を行う溶接室としての溶接ボックス1と、上部材を収納する不活性ガス置換室としての窒素置換ボックス2bとに分かれている。
【0010】
なお以下の説明では、方向を表す場合に、必要に応じて、鉛直方向がZ方向、窒素置換ボックス2a、溶接ボックス1、窒素置換ボックス2bの連なる方向がY方向となるような、図示の座標軸を参照して述べることにする。
【0011】
まず、本装置において、下部材および溶接済み部材を収納して搬送するための、パレット状のトレイ部材10(10a、10b、10c)について図6を参照して説明する。
トレイ部材10は、上面に、下部材と溶接済み部材とがいずれも収納可能な収納穴10fが、例えば格子状に整列して設けられており、上方からの下部材の出し入れが可能になっている。下面にはピンを挿入して搬送時の位置決めと固定を行う位置決め穴(図示せず)が2箇所に設けられている。またY方向の2つの側面には下面からそれぞれ2箇所の切り欠き10eが設けられている。また、トレイ部材10同士は、例えば上面と下面に入れ子形状を設けるなどして、下部材を収納したまま重ねて積載することが可能となっている。トレイ部材10の材料は、種々の合成樹脂が採用できる。必要があれば、導電性の帯電防止材料、もしくは帯電防止処理が施された合成樹脂としてもよい。
【0012】
また、上部材は、トレイ部材10の収納穴形状、配列などを、上部材の形状に合わせて変えた、同様のパレット状のトレイ部材11に収納されて搬送される。
【0013】
ただし、トレイ部材10、11は、工場での溶接以外の工程や、場合によっては工場外でも搬送に用いられるので、その形状は抵抗溶接機を使用する使用者の要望に合わせて変更されることが多く、上記の形状は一例にすぎないことは言うまでもない。
【0014】
次に図1を参照して、窒素置換ボックス2aから順次、本装置を説明する。
窒素置換ボックス2aの1つの外壁面をなす外壁2cには、下部材を収納した複数のトレイ部材10を重ねたまま装置内に搬入するための扉を備えたトレイ搬入口36aと、溶接済み部材を収納した複数のトレイ部材10を重ねたまま装置外に搬出するための扉を備えたトレイ搬出口36bが設けられている。
【0015】
窒素置換ボックス2aの内部には、トレイ搬入口36aに面して、下部材を収納して搬入されるトレイ部材10を重ねて積載するためのトレイローダ56(トレイ積載機構)と、トレイ搬出口36bに面して、溶接済み部材を収納したトレイ部材10を重ねて積載してトレイ搬出口36bに搬出するためのトレイアンローダ57(トレイ積載機構)が設けられている。これらは、窒素置換ボックス2a内におけるトレイ移動手段を構成する。
【0016】
トレイローダ56は、図1に示すように、トレイ部材10が下降して積載されるのを案内する鉛直方向に延びる4本のガイドシャフト31と、積載されたトレイ部材10を支えるための金属製のストッパ32aと、積載されたトレイ部材10の下方に位置して、積載されたトレイ部材10の最下面を支えて昇降させることが可能な昇降機33と、からなる。
【0017】
ストッパ32aは、不図示の直線駆動機構を備え、所定高さのトレイ部材10に対して、その両側面(X方向)にある切り欠き10eに向けて前進後退可能とされている。
また、昇降機33は、トレイ部材10裏面のX方向手前側と奥側をそれぞれZ方向に受ける受け面を有する、Y方向から見てほぼコの字上の部材を、不図示のボールねじ送り機構とボールねじ駆動モータなどの移動手段で上下に移動させるよう構成されている。その昇降量はあらかじめ制御データに基づいて設定されており、トレイ部材10の高さ分の昇降をはじめとした種々の昇降動作が可能となるように構成されている。
【0018】
一方、X方向に並んで設けられたトレイアンローダ57は、トレイローダ56において、X方向に前進後退するストッパ32aを、トレイ部材10を上方に通過させるラッチ機構をなすようなストッパ32bに置き換えて構成したものである。すなわち、ストッパ32bは、先端部がトレイ部材10の側面に設けられた切り欠き10eにそれぞれ嵌入して、トレイ部材10をクランプし、水平状態でトレイ部材10を支える金属製の部材であるが、一方、Y軸回りに回り止めされて水平状態から上方にのみ回動可能なように弾性復元力が付勢された回動軸を備えている。そこで先端部に外力が加わる場合にのみ水平状態から上方に回動可能で、外力がなくなると水平状態に戻されるように構成されている。その他のガイドシャフト31、昇降機33はトレイローダ56の場合とまったく同様の構成とする。
弾性復元力は、例えば板バネ、ねじりコイルバネ、トーションバーなどが採用できる。
【0019】
次に溶接ボックス1内の構成を説明する。
溶接ボックス1は、すべてが壁面に囲まれており、不図示の窒素ガス供給装置により、稼動中は窒素ガスが充填されている。窒素置換ボックス2aとは、側壁部1aを介して隔てられているが、側壁部1aの下部には、トレイローダ56の最下段のトレイ部材10を溶接ボックス1内に引き込める位置に開口するトレイ供給口34aと、トレイアンローダ57の最下段に向けて溶接ボックス1内にある、トレイ部材10を送り出せる位置に開口するトレイ回収口34bが設けられている。いずれの開口も上下に移動するシャッタ35が設けられていて、それぞれ遮口が可能である。また、シャッタ35の開口時は、不図示の層流形成装置により、開口を遮断する方向に窒素ガスカーテンを設ける構成としている。
【0020】
溶接ボックス1内部には、まずトレイ供給口34aの前に設置された支持台25上に、Y方向にスライド可能でトレイ供給口34aに貫入して延びることができるトレイ搬送テーブル26が設けられている。トレイ搬送テーブル26は、図5に示すように、その上面に、窒素置換ボックス2a内に積載された最下段のトレイ部材10(10c)をその下面に設けられた不図示の位置決め穴に嵌合させるための位置決めピン26aが設けられている。
【0021】
また図1に戻ると、トレイ回収口34bの前には、不図示の支持台の上にトレイ搬送テーブル26と同様にスライド可能とされ、位置決めピン24aを備えたトレイ搬送テーブル24が設けられている。
【0022】
トレイ搬送テーブル26とトレイ搬送テーブル24の中間には、X方向に延びる支持台27上に、X方向にスライド可能なスライドガイド28とその上をスライドするX軸スライダ29が設けられている。X軸スライダ29上には、Y方向にスライド可能で、トレイ部材10をX方向、Y方向に設けられた不図示の位置決めピンにそれぞれ突き当てて位置決めして、積載することができるY軸スライドテーブル30が設けられている。
【0023】
なお、煩雑になるので図示していないが、支持台27のX方向の両側には、トレイ部材10をトレイ搬送テーブル26からY軸スライドテーブル30へ、さらにY軸スライドテーブル30からトレイ搬送テーブル24へ移載するための移載ハンドがそれぞれ設けられている。
【0024】
以上に述べたトレイ搬送テーブル26、Y軸スライドテーブル30、不図示の移載ハンドなどは、トレイ部材10を窒素置換ボックス2aから溶接ボックス1に引き入れ、Y軸スライドテーブル30上に積載されたトレイ部材10をXY方向に移動させてトレイ部材10上の任意の下部材を任意の位置に移動させる、溶接ボックス1におけるトレイ移動手段を構成している。
【0025】
上記のスライド機構としては、いずれも例えばステッピングモータ、ボールねじ、リニアガイドなどからなる1軸移動ステージを採用することができる。
【0026】
次に、支持台27のY方向手前には、鉛直軸回りに回転可能な回転軸22を備えた回転台21が設けられている。回転台21は回転軸22に固定されているクランパアーム20を180度回転させて、クランパアーム20の先端に回転軸22から等距離の位置に取り付けられている、Z方向に移動可能な、溶接前の下部材と溶接済み部材を吸引クランプするためのハンドラ73a、73bのXY面内の位置を反転させることができる。すなわち、ハンドラ73a、73bは、回転軸22に関して回転対称な位置、形状に設けられている。
【0027】
これらは、溶接前の下部材と溶接済み部材を同時に入れ替えて搬送するワーク交換搬送手段Aをなすもので、図2にさらに詳しい構成を示す。回転軸22は回転台21の内部にあるベアリング78で回転可能に支持され、回転台21内部に固定されたモータ77のシャフトとカップリング76によって直結されている。
【0028】
ここでモータ77は、ダイレクトドライブモータを用い、コンパクトな機構で、高速かつ正確な位置制御を可能としている。正逆転可能ならさらに好都合である。もちろん、必要な出力条件を満たし、回転角度制御または停止位置制御が可能であれば、減速機構を設けた駆動であってもよい。また、モータの種類もAC、DCのサーボモータ、ステッピングモータなどが採用できる。また、位置制御はモータ77自身の回転制御に限るものではなく、例えば回転軸22にロータリーエンコーダを設けたり、停止位置に光電センサなどを設けてクランパアーム20の位置検出を行ったりして、モータ停止の制御信号を送るものであってもよい。
【0029】
またハンドラ73a、73bは、下部材および溶接済み部材を吸引クランプする吸引管74a、74bがそれぞれ底部に設けられたクランプ孔75a、75bを有するハンドラ本体80a、80bと、そのハンドラ本体80a、80bをZ方向にスライド移動可能とするスライドガイド71a、71b、スライダ72a、72bなどからなる移動機構とからなり、回転軸22がその中心に固定された回転アーム70のそれぞれの先端に取り付けフランジ70a、70bに取り付けられているものである。
【0030】
スライドガイド71a、スライダ72aなどによるスライド機構は、例えばステッピングモータ、ボールねじ、リニアガイドなどからなる1軸移動ステージを採用することができる。
【0031】
なお上記および図1、2で回転台21は、モータ77が本装置の土台上に設けられているように説明したが、もちろん、配置はこれに限るものではなく、例えば、装置の天井部から吊り下げてもよい。そのように構成すれば、配置を省スペース化できる利点がある。
【0032】
次に、図1において上記のワーク交換搬送手段Aのとなりに設けられた電極チップ入れ替え手段Bの構成を、図3を参照して説明する。
電極チップ入れ替え手段Bは、ベアリング53によって回転自在に支持された回転軸52と、回転軸52にカップリング54を介してシャフトが結合されたモータ55を備えた回転台15と、回転軸52が固定されてZ軸回りに回転が可能なテーブル14とからなり、テーブル14の上部には、その受け面に下部材を載せて溶接電流を通電するための電極チップ部17a、17bが設けられ、下部にはそれと同軸上に延びて固定電極本体16と当接するための2個の可動電極本体40が設けられている。なお溶接電極には大きな電流が流れるため、特に電極チップ部17a、17bの下部材が載せられて押圧される面域は汚れや損耗が激しいものである。そこで、電極チップ部17a、17bは、可動電極本体40に対して着脱可能に設けることにより、交換が可能とされている。
また、電極チップ部17a、17bの上方には、下部材をクランプするためのクランパ18a、18bなどからなるクランプ手段が設けられている。
【0033】
なお、下部材をその上にクランプして抵抗溶接を行うために、回転軸52から等距離の位置に設けられた電極チップ部17a、17bを、Z軸回りに180度回転させてXY面内の位置を反転させるための電極チップ入れ替え手段Bが備えられている。このため、電極チップ部17a、17bは、回転軸52に関して回転対称な位置、形状に設けられている。
モータ55および回転制御に関しては、前述したモータ77の場合と同様である。
【0034】
次に可動電極本体40のより詳しい構成を図3を用いて説明する。可動電極本体40は下部材を保持して溶接電流を通電するための電極であり、抵抗溶接機の固定電極本体16に当接する冶具プラテン46、可動電極42、電極チップ部17a、17bなどを同軸上に設けて結合することで構成されている。可動電極本体40は、テーブル14と接触部分が絶縁体からなる電極ホルダ45を介して取り付けられており、電極ホルダ45と可動電極本体40の間にはZ軸上向きに弾性復元力を付勢するための電極リターンスプリング44が設けられている。
【0035】
また、電極チップ部17a、17bおよび可動電極42の軸中心には下部材を吸引によって保持するための吸引管43が設けられている。
【0036】
次に、テーブル14上に設けられたクランプ手段の構成を図3、4を用いて説明する。
テーブル14上には、図3に示すように、位置調整のための互いに直交する方向に設けられた調整ねじ部50、調整ねじ部51を介して、クランパ18a、18bを駆動するための2つの平行チャック駆動部49が取り付けられている。平行チャック駆動部49の内部は、図4に模式的に示すように、互いに直交するT字状のスライドガイド62、67が上下に形成されている。その間にはテーブル14の外部に不図示の駆動源を有するエアシリンダ64によりY方向に駆動されるロッド63と直結し、スライドガイド67に沿ってY方向に移動が可能なスライダ65に、ヒンジ結合した2つの等長のロッド61が設けられ、ロッド61の他端は、スライドガイド62に沿ってX方向に移動可能な2つのスライダ60に回転ジョイント60aを介して結合され、スライダ60の先端にはそれぞれ下部材37の外周をクランプするための形状を備えた絶縁材料で作られたクランパ18a(18b)が取り付けられ、平行チャック機構が構成されている。
【0037】
図4の例では、下部材37が円板形状のステム部材なので、クランパ18a(18b)の形状は、下部材37をクランプする部分はステム部材と同径の半円状の切り欠きであり、さらにその下方には下部材37が吸引保持されている電極チップ部17a(17b)の円筒状の外形を逃げるための円筒状の切り欠きが設けられている。
【0038】
ここで、以上に述べたワーク交換搬送手段Aと電極チップ入れ替え手段Bの詳しい位置関係を述べる。それぞれが配置されているのは、前者のクランプ孔75a、75bの中心軸が描くピッチ円と、後者の電極チップ部17a、17bの中心軸が描くピッチ円が接点を有するような位置である。このピッチ円の接点位置は、ワーク交換搬送手段Aと電極チップ入れ替え手段Bが下部材と溶接済み部材を交換する位置であり、以下ではワーク交換位置と呼ぶことにする。
【0039】
なおクランプ孔75a、75bの一方がワーク交換位置にあるときの、他方の位置は、ハンドラ73a、73を下降させて下部材を取り出す位置であり、以下では下部材取り出し位置と呼ぶことにする。また混乱のおそれのない限り、クランプ孔75a、75bなどが、ワーク交換位置、下部材取り出し位置にあるとき、ハンドラ73a、73bがその位置にあるという言い方をする。
【0040】
また、電極チップ入れ替え手段Bと固定電極本体との位置関係は、例えばハンドラ73aと電極チップ部17bがワーク交換位置にあるとき、固定電極本体16と電極チップ部17aがほぼ同軸の位置にあるように配置される。このときの電極チップ部17aの位置を溶接位置と呼ぶことにする。
【0041】
下部材取り出し位置、ワーク交換位置、溶接位置のそれぞれの高さは、異なっていてもよいが、本実施の形態では、ほぼ同一平面内に配置している。
【0042】
次に、回転台15のとなりに位置する抵抗溶接機について図1,3を参照して説明する。
電極チップ部17a(17b)およびそれと同軸上にある可動電極本体40は、溶接位置にあるとき、上から押圧されることにより、可動電極本体40の最下部の冶具プラテン46と固定電極本体16が当接して溶接電流の通電が可能になり、抵抗溶接機の第2の溶接電極を形成する。また、固定電極本体16の側面に設けられたブラケット48には、図3に示すように、それぞれの当接を検知するための、発光部と受光部を備えた光電センサ47が設けられている。
【0043】
土台からZ方向に延ばされた抵抗溶接機の支持部3の上部には制御部4によってZ方向の位置、移動速度を油圧制御されるロッド5が取り付けられ、その先端に固定電極本体16と同軸上をZ方向に移動可能とされ、上部材を吸引クランプ可能な第1の溶接電極6が設けられている。
【0044】
さて、以上に述べた、トレイ積載機構、溶接ボックス1におけるトレイ移動手段、ワーク交換搬送手段A、電極チップ入れ替え手段Bは、全体として、装置外部から搬入された下部材を第2の溶接電極に供給搬送する下部材供給搬送手段を構成するものである。
【0045】
上記の抵抗溶接機のY方向側には、トレイ部材11上に収納された上部材を第1の溶接電極6に搬送するための手段として、不図示の支持部材によりZ方向に移動可能に支持されたスライドガイド9と、それに沿ってY方向に案内されて移動可能なスライダ8と、その先端にX軸回りに回動可能とされて、上部材を吸引クランプ可能なクランパ7からなる機構が設けられている。
【0046】
図示が煩雑になるのを避けるため、図1では省略しているが、上記の説明でトレイ部材10をトレイ部材11に入れ替え、位置関係をY方向に関して反転させただけの構成が設けられている。例えばトレイ搬送テーブル26、トレイ搬送テーブル24、Y軸スライドテーブル30などを駆動するための機構が側壁部1b近傍に設けられているが、詳細は繰り返しになるため説明を省略する。ただし、上記のように上部材を第1の溶接電極6に搬送する手段には、Y方向に移動可能なスライダ8が備えられているために、Y軸スライドテーブル30は、Y方向に移動は不要であり、X軸スライダ29に相当する移動機構が備えられていない点だけは異なっている。
【0047】
なおこれらの機構は、上部材を収納したトレイ部材11をトレイ搬入口36aから搬入してY軸スライドテーブル30上まで搬送する搬送機構と合わせて、上部材供給搬送手段を構成するものであるが、残りの機構は、下部材供給搬送手段におけるトレイ積載機構、溶接ボックス1内のトレイ移動手段とほとんど同様なので、特に必要な場合以外は説明を省略する。
【0048】
窒素置換ボックス2aに対向する位置に設けられた窒素置換ボックス2bの内部は、煩雑になるため図示を省略しているが、窒素置換ボックス2aの内部とほぼ面対称の構成を備えるものである。ただし、トレイ部材10は、上部材を収納するためのトレイ部材11に替えられる。その他は、窒素置換ボックス2aの説明にある部材・手段の説明が名称・符号を含めてすべてが当てはまるので説明を省略する。すなわち、外壁2cのX方向手前側に設けられたトレイ搬入口36aは、上部材をその上面に収納したトレイ部材11を重ねたまま搬入するためのものであり、不図示のトレイローダ56は、上部材を収納したトレイ部材11を重ねて積載し、外壁2cのX方向奥側に設けられたトレイ搬出口36bに面する不図示のトレイアンローダ57は、空のトレイ部材11を重ねて積載し、トレイ搬出口36bは、空のトレイ部材11を重ねて積載したまま搬出するためのものである。
【0049】
以下では、上述した本発明に係る抵抗溶接装置の構成の動作を説明する。
はじめに、下部材供給搬送手段の動作について、図1、5を参照して説明する。
下部材を収納したトレイ部材10は、本装置の自動運転中においても、シャッタ35を閉じて溶接ボックス1への外気の流入を防止した状態で、トレイ搬入口36aの扉を開放し、複数を重ねたままで外部から搬入することができる。トレイローダ56に、すでに積載されている他のトレイ部材10があればその上に、なければ昇降機33の上に積載される。
【0050】
図5は、トレイ部材10(10c)がトレイ搬送テーブル26に受け渡されて、窒素置換ボックス2aに引き込まれる過程の概略を示している。
まずトレイ部材10(10a、10c、10d)を積載した昇降機33が、最下段から2番目のトレイ部材10cをクランプできるような所定位置まで降下すると、ストッパ32aが、最下段から2番目のトレイ部材10cの切り欠き10eに向かって前進する。また、溶接ボックス1内部からトレイ供給口34aを通ってトレイ搬送テーブル26がスライドして差し入れられる(図5(a))。
【0051】
すると、図5(b)に示すように、ストッパ32aはトレイ部材10cの切り欠き10eに嵌入して、トレイ部材10cを水平面内でクランプし、その上に積載されたトレイ部材10(10a)全体の荷重を支える。トレイ搬送テーブル26は位置決めピン26aが昇降機33に支えられた最下段のトレイ部材10(10)の裏に設けられた不図示の位置決めピン穴に嵌合する位置で停止される。一方、昇降機33は、そのまま降下を続け、トレイ部材10(10)を位置決めピン26aと嵌合させ、水平方向に係止された状態でトレイ搬送テーブル26上に受け渡す。
【0052】
そしてトレイ搬送テーブル26は、トレイ部材10(10)を載せたまま後退し、溶接ボックス1の中へトレイ部材10(10)を引き込む。一方、昇降機33はトレイ部材10(10)をその上面で受ける位置にまで上昇し、さらにトレイ部材10(10)を若干持ち上げる位置で停止する(図5(c))。この状態で、トレイ部材10の鉛直方向の荷重支持はストッパ32aから昇降機33に受け継がれ、ストッパ32aの後退が可能となる。そこで、ストッパ32aは先端部を切り欠き10eから引き抜き、昇降機33はトレイ部材10の1段分の高さだけ降下を行い、トレイ部材10(10a)を最下段から2番目の位置に位置させる図5(a)の状態に至る。このような過程を繰り返すことによって、重ねて積載されたトレイ部材10は、その最下段にあるものから順に溶接ボックス1内に搬入され、先入れ先出し順序のトレイ搬入が実現できるものである。
【0053】
またトレイ部材10は積載されている空間の範囲で順次下降し、移動のため空間をほとんど必要としないので、窒素置換ボックス2aの限られた空間に多くのトレイ部材10を積載できる。
【0054】
このような構成によれば、連続自動運転が継続している間も、トレイ部材10をセットでき、先入れ先出し順序でトレイ部材10に収納した部品を供給できるので、連続自動運転を行うのに好適である。
【0055】
さらに窒素置換ボックス2a内には多くのトレイ部材10がストックされているので、それがある程度減ってから、まとめて複数のトレイ部材10を連続して搬入することができ、装置外部からの搬入量、搬入周期は柔軟に対応する余地がある。
【0056】
また下部材の溶接ボックス1内への搬入をトレイ部材10とトレイ搬送テーブル26のみが通過するシャッタ35のついたトレイ供給口34aを通じて1パレットずつ搬入するので、トレイ搬入口36aの扉を開放してトレイ部材10をセットして、窒素置換ボックス2aに空気が流入したあとでも、溶接ボックス1の窒素ガス雰囲気が乱されにくい。また逆に、トレイ部材10の搬入作業中は、トレイ供給口34aをシャッタ35で閉じているので、溶接ボックス1から外に窒素ガスが漏れるのも抑えられ、搬入作業が安全に行える。
【0057】
なお、トレイ部材10をクランプするクランプ手段として、上記では、水平方向に前進後退するストッパ32aを設けたが、図6に示すように、最下段から2番目のトレイ部材10(10b)を支える位置で水平方向にスライド可能に設けられた金属製の櫛歯状のストッパ58を採用してもよい。図示では、Y方向にスライドさせているが、もちろんX方向にスライドさせるようにして、トレイ部材10の切り欠き10eを図5のままとしてもよく、装置のスペースなどの関係でその方向を変えることができる。
【0058】
この動作は、上記においてストッパ32aの前進後退動作の部分を、それぞれストッパ58をスライドさせて引き抜く動作、トレイ部材10(10b)の側面に設けられた切り欠き10eに貫入させる動作に置き換えればよい。そのため詳細の説明は省略する。
【0059】
次に、図1、7を参照してトレイアンローダ57の動作を説明する。
溶接済み部材を収納したトレイ部材10(10d)は、溶接ボックス1の内部からスライドしてトレイ回収口34bに貫入するトレイ搬送テーブル24によって、窒素置換ボックス2aに搬出される。このときトレイアンローダ57は図7(a)に示すように、トレイ部材10が積載され、最下段のトレイ部材10cの切り欠き10eにストッパ32bが嵌入することによってクランプされている。このとき、昇降機33は降下しているので、トレイ部材10dは、昇降機33とトレイ部材10cの間にはスペースができている。
【0060】
トレイ搬送テーブル24は、そのスペースに延びてトレイ部材10dをトレイ部材10cにちょうど重ねられるような所定位置に配置する。すると昇降機33が上昇して、トレイ部材10dの底面に当接し、そのまま上昇してトレイ部材10dを持ち上げる(図7(b))。
【0061】
昇降機33の上昇により、まずトレイ部材10dから位置決めピン24aが外れる。そのためトレイ搬送テーブル24は、後退して、溶接ボックス1内に戻ることができる。一方、昇降機33はさらに上昇し、トレイ部材10cにトレイ部材10dが当接する。そして、すでに重ねて積載されているトレイ部材10(10a、10c)とトレイ部材10dとを共に押し上げる。すると、ストッパ32bの先端が、トレイ部材10dによって押し上げられ、回動軸回りに回転し、先端はさらに上方に押し上げられ、切り欠き10eから外れる状態になる(図7(c))。ストッパ32bは弾性復元力が付勢されているので、その先端部は常に水平状態に戻ろうとするが、トレイ部材10dの側面に当たるためそれに沿って滑る。ところが、さらに昇降機33の上昇が続き、トレイ部材10dの切り欠き10eが出現すると、ストッパ32bの先端は弾性復元力によって回動し、切り欠き10eに嵌入した状態で、水平状態に戻る。この状態で、昇降機33の下降を始め、最下段にトレイ部材10dを収めて積載されたトレイ部材10は、ストッパ32bによってクランプされたまま、その荷重が支えられる。したがって、図7(a)と同様な状態になる。以上の動作を繰り返すことにより、溶接ボックス1内から搬出されるトレイ部材10が下から順次トレイアンローダ57に重ねて積載される。
【0062】
次に図1を参照して溶接ボックス1内でのトレイ移動手段の動作を説明する。溶接ボックス1内に引き入れられたトレイ部材10は、不図示の移載ハンドによって、Y軸スライドテーブル30に、トレイ部材10の端面を不図示の基準ピンに押し当てて位置決めして載置される。Y軸スライドテーブル30はY方向に移動可能で、X軸スライダ29によってX方向にも移動できるので、例えばあらかじめトレイ部材10内の下部材の配置位置データをY軸スライドテーブル30、X軸スライダ29の位置制御部に記憶させておくことにより、トレイ部材10上の任意の下部材を、可動範囲内で任意の位置に移動させることができる。したがって、取り出すべき下部材を、ワーク交換搬送手段Aのハンドラに受け渡す下部材取り出し位置に位置させることができる。
【0063】
次に、図8、9を参照して、下部材37が第2の溶接電極まで搬送され、上部材を溶接されたあとの下部材がトレイ部材10に戻される動作過程を説明する。図8(a)において、トレイ部材10上に置かれた下部材37aは下部材取り出し位置にあり、ワーク交換位置にある電極チップ部17b上にはすでに前工程で溶接済み部材39aがクランパ18bの平行チャック機構によりクランプされている。溶接位置にある電極チップ部17a上には前工程で供給された下部材37cがクランパ18aの平行チャック機構によりクランプされている。またクランパ7には、不図示の上部材38cが前工程で吸引クランプされている。トレイ部材11は移動されて、上部材38aが上部材取り出し位置に来るように配置されている。
【0064】
そこで、ハンドラ73b、73aをそれぞれ、下部材取り出し位置、ワーク交換位置に位置させているワーク交換搬送手段Aは、ハンドラ73b、73aを同時に下降させ、その直下にある下部材37a、溶接済み部材39aをそれぞれ同時にクランプする。またこのとき同時に、上部材供給搬送手段の方では、スライダ8を移動させて、クランパ7にクランプさせた上部材38aを第1の溶接電極6に搬送し、第1の溶接電極6にクランプさせる。また、Y軸スライドテーブル30の移動によって、トレイ部材11が移動させられ、次の溶接に用いる上部材38aが上部材取り出し位置に配置される。ただし、ここで同時というのは、厳密な同時刻という意味ではなく、それぞれの動作に時間的な順序関係をつけないで同時並行的に行うという意味である。以下でも同じ意味に用いる。
【0065】
次の動作では、図8(b)に示すように、ハンドラ73b、73aは、クランプした下部材37a、溶接済み部材39aが障害物に当たらずにクランパアーム20を回転できる程度に、上方に退避する。同時に、スライダ8が図示右側の上部材取り出し位置に退避し、クランパ7が反時計方向に回転してクランプ孔を下方に向ける。
【0066】
また同時に、ロッド5が下方に延び、第1の溶接電極6にクランプされた上部材38cが、電極チップ部17a上に置かれた下部材37cに当接し、さらに加圧が続けられて、図3に示す光電センサ47が可動電極本体40と固定電極本体16の当接を検知し、上部材38cと下部材37cが適切な接触圧となるタイミングで、通電が行われ、抵抗溶接が行われる。
【0067】
次の動作では、図8(c)に示すように、クランパアーム20が180度回転して、ハンドラ73a、73bの位置が入れ替えられる。溶接が終了すると、ロッド5は、上部材38cのクランプを解除して、上方へ退避する。クランパ7は、下降して、上部材38aをクランプする。
【0068】
次の動作では、図9(d)に示すように、ハンドラ73a、73bが同時に下降する。このとき、ハンドラ73aは、クランプしている溶接済み部材39aを、すでに下部材37aが取り出されて空きになっている位置の収納穴10fに収納してクランプを解除し、ハンドラ73bは、吸引保持している下部材37aを解放して電極チップ部17b上に配置する。下部材37aは不図示のクランパ18bによってクランプされる。一方、これと同時に、スライダ8が上方に引き上げられ、クランパ7が上部材38aをクランプしたまま上下反転させられて、上方に向けられ、上部材38aを下方から第1の溶接電極6に供給する。同時に、トレイ部材11がX軸スライダ29によりX方向へ移動して、次の溶接に用いられる上部材38bが上部材取り出し位置に配置される。
【0069】
次の動作では、図9(e)に示すように、ハンドラ73a、73bが、それぞれ上方へ引き上げられる。同時に、テーブル14が、回転軸22を中心に180度回転し、電極チップ部17a、17bの位置を入れ替える。したがって、それぞれ、ワーク溶接位置、ワーク交換位置にあった溶接済み部材39bと下部材37aが同時にその位置を入れ替えられる。またこれと同時にトレイ部材10がX軸スライダ29により、X方向に移動させられ、次の溶接に用いる下部材37bを下部材取り出し位置に位置させる。
【0070】
以上で、クランパアーム20、テーブル14が、それぞれ180度回転し、ハンドラ73a、73bが2回上下する間に、下部材取り出し位置にあった溶接すべき下部材37aをワーク溶接位置に配置し、同時にワーク溶接位置にあった溶接済み部材39aを下部材取り出し位置にあるトレイ部材10の空き場所に収納する工程が終了し、図8(a)に戻って次の溶接工程が開始可能となる。
ここでワーク溶接位置に下部材37aが位置すると、第1の溶接電極6が加工し、下部材37aと上部材38aの間に所定の加圧力が印加される。この加圧力で可動電極本体40が降下して固定電極本体16に当接し、第1の溶接電極6と第2の溶接電極間に溶接電流が流れて溶接が行われる。
【0071】
以上に述べた下部材の搬送と、溶接済み部材の回収は、ワーク交換搬送手段Aと電極チップ入れ替え手段Bをモータ55、モータ77のダイレクトドライブによって、180度回転、すなわち2分の1回転させるだけなので、きわめて簡便な機構から構成されて信頼性が高く、しかも高速の動作が可能である。ボールねじやギヤトレインを介する機構のように摺動部の経時磨耗によって位置決め精度が悪化する心配がないために、高速運転をしても信頼性が保てるものである。
【0072】
またハンドラ73a、73bの上下移動は、図2では、それぞれ別駆動されるようになっているが、本実施の形態では下部材取り出し位置とワーク交換位置を同一平面に設けるので、移動距離が同一になり、移動距離の長い方に合わせて動作を協調させる必要もないから、クランパアーム20または回転台21全体が上下移動するように構成し、スライダ機構を減らすような簡素化を行ってもよい。
【0073】
なおワーク交換搬送手段A、電極チップ入れ替え手段Bの180度回転は、同方向に回転させてもよいが、逆転可能なモータを用いて、回転方向を交互に変えてもよい。そのようにすれば、クランパアーム20、テーブル14上でエア吸着あるいはエアシリンダなどを利用する場合、回転軸内にエア流路を回転可能にシールして設けるのではなく、例えば柔軟性のあるホースなどで構成することができるので、より簡素な装置とすることができる。
【0074】
また、上記での構成では、下部材と溶接済み部材の交換のためのZ軸方向の移動は、第1の溶接電極6の移動領域の外で行われるので、溶接位置における第1の溶接電極6と電極チップ部17a(17b)の間の空間は、クランパ7が上部材を第1の溶接電極6にセットするための空間のみを空ければよく、装置全体の高さを比較的低く構成できる利点がある。
【0075】
なお、ワーク交換搬送手段Aと電極チップ入れ替え手段Bは、それぞれ2つのハンドラと電極チップ部を、同時に入れ替えられれば、他の機構でもよい。例えば、それぞれの部材を歯付きベルトの周長を二分する位置にそれぞれを取り付けて、モータで駆動する機構などが採用できる。歯付きベルトを半周させるためのモータの回転数は多くなるが、移動距離が長い場合でも回転慣性が増大することがないので、比較的低負荷で駆動できる利点がある。バックラッシレスタイプの歯付きベルトを用いれば非常に高精度の位置決めが可能である。
【0076】
次に、平行チャック機構の動作を、図4を参照して説明する。
エアシリンダ64によりロッド63がY方向に引かれると、スライドガイド67に沿ってスライダ65が移動し、ロッド61を介してスライダ60が引かれる。スライドガイド62によりX方向にのみ移動するスライダ60は、それぞれX方向に移動して、先端に固定されているクランパ18aが電極チップ部17a上の下部材37の外周をクランプする。ロッド61がたがいに等長で、スライドガイド62、67が直交してT字状をなしているため、クランパ18a(18b)はスライドガイド67の中心軸に平行な直線を対称軸とする線対称の動作をし、クランプ中心から等距離の拡縮動作が可能である。
【0077】
したがって、クランパ18a(18b)の形状を変更すれば比較的多様な溶接部品の大きさや形状に対応でき、その場合でもクランプ中心位置は一定なので改めて位置合わせする手間が省けるという利点がある。
【0078】
また上部材と下部材を正確に位置合わせして溶接することは品質上重要であるが、クランパ18a(18b)は、下部材37の電極チップ部17a(17b)における受け面に平行な面内で荷重を受けてクランプされ、受け面方向にはクランプ荷重の分力持たないので、溶接時に受け面に垂直な方向から加圧を受けてもクランプ状態に影響を与えず安定したクランプが可能である。
【0079】
上部材と下部材の位置あわせは、第1の溶接電極6の中心軸に関してそれぞれの搬送位置をあらかじめ位置合わせしておくことにより行う。すなわち上部材は、クランパ7の搬送の位置制御情報を最適化することにより、上部材が第1の溶接電極6の中心軸上に吸引クランプされるよう位置調整しておく。また、下部材は、回転台15の設置誤差による電極チップ部17a、17bの位置ずれを測定して、図3に示されているように平行チャック駆動部49の位置をテーブル14に対して調整ねじ部50、51で微調整し、クランパ18a、18bのチャック中心が第1の溶接電極6の中心軸上にそろうように設定しておく。したがって、下部材を最初に電極チップ部17a、17b上に配置する精度は比較的ラフでもクランプすると位置が決まるものである。
【0080】
なお、上記では、クランパ18a(18b)は平行チャック機構だったので、それぞれ2体としたが、例えば、3体のクランプ部材がクランプ中心から等距離に拡縮する機構であってもよい。このような機構は、例えば回転円板に流線状の溝を設けたカムなどによって実現することができる。さらに、上部材と下部材の位置合わせ精度を高めるには、第1、第2の溶接電極をコレットチャック構造とすればよい。この場合は、クランパ18a、18bは省略できる。
【0081】
【発明の効果】
以上に述べたように、請求項1に記載の発明では、不活性ガス置換室において、被溶接物を収納したトレイ部材を重ねて積載してストックし、先出し先入れ順序で、順次被溶接部材の搬入と溶接済み部材の排出回収を行うので、被溶接物および溶接済み部材を装置内に比較的大量にストックしながら稼動させ、被溶接物の追加搬入および溶接済み部材の排出回収を、その消費量および生産量に応じて柔軟に行うことができるという効果を奏する。
【0082】
請求項2に記載の発明では、トレイ搬入口から搬入されたトレイ部材が順次重ねて積載され、それぞれのトレイ部材は積載によって占める空間の中で上方から下方への大部分の移動を行うので、限られた空間をトレイ部材の積載によって占めても、トレイ部材を順次溶接室に移動することができるので、被溶接物を装置内に比較的大量にストックしながら稼動させ、被溶接物の追加搬入の搬入量、搬入周期を柔軟に対応することができるという効果を奏する。
【0083】
請求項3に記載の発明では、溶接済み部材を収納したトレイ部材が活性ガス置換室で上方のトレイ排出口まで順次下方から押し上げられて積載され、それぞれのトレイ部材は積載によって占める空間の中で下方から上方への大部分の移動を行うので、限られた空間の中で溶接済み部材を装置内に比較的大量にストックしながら稼動させることができ、溶接済み部材の排出回収を、その生産量に応じて柔軟に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る抵抗溶接装置の概略斜視図である。
【図2】 ワーク交換搬送手段Aの構成を示す概略図である。
【図3】 電極チップ入れ替え手段Bの構成を示す部分断面図である。
【図4】 電極チップ部における下部材のクランプ手段の概略構成を示す説明図である。
【図5】 トレイ積載機構(トレイローダ56)の動作を説明する説明図である。
【図6】 トレイ積載機構の他の実施の形態の構成を示す斜視図である。
【図7】 トレイ積載機構(トレイアンローダ57)の動作を説明する説明図である。
【図8】 ワーク交換搬送手段Aと電極チップ入れ替え手段Bの動作を説明する説明図である。
【図9】 ワーク交換搬送手段Aと電極チップ入れ替え手段Bの動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
A ワーク交換搬送手段 B 電極チップ入れ替え手段
1 溶接ボックス(溶接室)
2a、2b 窒素置換ボックス(不活性ガス置換室)
6 第1の溶接電極
10、10a、10b、10c トレイ部材
16 固定電極本体 17a、17b 電極チップ部
18a、18b クランパ
30 Y軸スライドテーブル
24、26 トレイ搬送テーブル(トレイ部材移動手段)
29 X軸スライダ 32a、32b ストッパ
37a、37b 下部材 38a、38b 上部材
39a、39b 溶接済み部材
40 可動電極本体 49 平行チャック駆動部
56 トレイローダ(トレイ積載機構)
57 トレイアンローダ(トレイ積載機構)

Claims (3)

  1. 不活性ガスを充満させて抵抗溶接を行う溶接室と、該溶接室に隣接して、溶接すべき上部材と下部材を供給するとともに溶接済み部材を受け入れる不活性ガス置換室とを備え、不活性ガス雰囲気下で前記上部材と下部材とを抵抗溶接する抵抗溶接装置であって、
    前記不活性ガス置換室に、外部から前記上部材、下部材を収納したトレイ部材を搬入するトレイ搬入口と、前記溶接済み部材を収納したトレイ部材を搬出するトレイ搬出口と、前記トレイ部材をそれぞれ重ねて積載し先入れ先出し順序で受け入れまたは搬出を行うトレイ積載機構とを設け、
    前記溶接室には、前記溶接室と前記不活性ガス置換室を隔てる隔壁に設けられた開閉可能な開口部を通して、延伸退行が可能なトレイ部材移動手段を設け、
    該トレイ部材移動手段によって、前記不活性ガス置換室と前記溶接室との間で前記トレイ部材を移動させることを特徴とする抵抗溶接装置。
  2. 請求項1に記載の抵抗溶接装置において、
    前記トレイ積載機構は、前記トレイ部材が下降して重ねて積載されるためのガイド部材と、該ガイド部材に沿って積載したトレイ部材を下方に移動させるためのトレイ部材下降手段と、前記重ねて積載されたトレイ部材の最下段から2番目のトレイ部材を選択してクランプするクランプ手段とを備え、
    前記トレイ部材下降手段によって、前記最下段のトレイ部材を前記トレイ部材移動手段に移載することを特徴とする抵抗溶接装置。
  3. 請求項1に記載の抵抗溶接装置において、
    前記トレイ積載機構は、前記トレイ部材移動手段によって前記不活性ガス置換室に移動されたトレイ部材を上方に押し上げるためのトレイ部材押し上げ手段と、前記押し上げられたトレイ部材が、上昇して重ねて積載されるためのガイド部材と、該ガイド部材に沿って押し上げられて積載された前記トレイ部材の最下段のトレイ部材を選択してクランプするクランプ手段とを備え、
    下方から押し上げられたトレイ部材を順次重ねて積載することを特徴とする抵抗溶接装置。
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