JP4512852B2 - 連続染色装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続染色装置に関し、特に筒状編織布の連続染色に好適な連続染色装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に布帛の連続染色装置として、所謂Pad−Squeeze−SteamProcessによるパッダー式連続染色装置が従来多く用いられている。この装置は、通常の平面状編織布の染色においては省人効果が高く、高生産性の染色加工が可能であるなどの効果を有するが、筒状編織布に、そのままこの装置を適用すると、平面状布帛染色の場合と異なり、圧搾ロラ−による圧搾時、筒状編織布を押し潰した形状の二重平面状折り畳み状態となるため、染液の絞り率が、筒状編織布を押し潰した形状の二重平面状折り畳み状態の両端の耳部において、圧搾の程度が他の平坦部と異なる。その結果、圧搾圧が小さ過ぎると、図4に示すように、両端の耳部の側近においては絞りが悪く、この部分の保有染液量が多くなり、逆に圧搾圧が大き過ぎると、図5に示すように、両端の耳部の側近においては絞りが強く、この部分の保有染液量が少なくなり、往々にして染液の絞り斑発生の原因となっていた。
【0003】
また、筒状編織布の厚みも微妙に作用しており、耳部(エッジ部分)に筋状のむら(エッジマ−ク)が発生するという問題点がある。このためこの状態のままで、続くスチーム工程に通し染着固定を行うと、この絞り斑の影響がそのまま染色斑として出現し、均一に染色が行えなく不良品が発生する。
【0004】
しかしながら、かかる筒状編織布の両端ループ状部の絞り斑を、圧搾ロールの材質・硬度などの調整、及び絞り圧等の操業条件を調整して実施することにより、満足せしめることは事実上不可能であり、他の効果的手段を見い出して解消する以外には根本的解決方法がない。この対策の実施が筒状編織布のパッダー式連続染色装置による染色において解決すべき基本的問題点であり、この染色装置における筒状編織布表面上での結露による水滴に基づく、所謂フロスティングと称する霜降り状染着状態の出現のため、深みのある高品位の染色が行えない問題点の解決も又強く改善が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記のパッダー式連続染色装置による筒状組織の編織布の連続染色装置における、筒状物を押し潰した形状の二重平面状折り畳み状態の両端部の耳部の染色斑(エッジマーク)の発生を、既存の装置をそのまま活用し、改修を行わずに簡単な操業性に影響を与えない装置を付加して、筒状編織布の表面に高品位の染色を行い、かつ素材や色相に限定されない染色装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の課題解決の手段は、筒状編織布に染料を付与し圧搾して染液を絞り出す圧搾ローラーを備えたパッダー部と、染料を反応固着するスチーマ部とを備えたパッダー式連続染色装置において、前記パッダー部とスチーマ部との間に前記編織布の内側に円筒状の拡布を行いつつ乾熱処理を行う拡布・均染化装置を配設してなることにある。
【0007】
本発明の第2の課題解決の手段は、前記拡布・均染化装置は、拡布枠を装着してなることにある。
【0008】
本発明の第3の課題解決の手段は、前記拡布・均染化装置は、ほぼ筒状編織布内径に相当する球形案内ガイドとリング拡布枠と平面状型枠とからなることにある。
【0009】
本発明の第4の課題解決の手段は、前記拡布・均染化装置は、筒状編織布の周囲に円筒状予備加熱装置を配設してなることにある。
【0010】
本発明の第5の課題解決の手段は、前記予備加熱装置は、表面温度が400〜800℃であり、予備加熱後の筒状編織布の表面温度が90〜100℃にして筒状編織布の温度をスチーマ内で結露する温度(露点)以上に上げることにある
【0011】
本発明は、上記連続染色装置に構成したので、筒状編織布の連続染色を実施する際に、二重平面状折り畳み状態の両端染色斑(エッジマーク)の発生が抑制され、拡布・乾熱装置を従来の連続染色装置に付加し染色を行うことにより解消することができたのである。
【0012】
【発明の実施の形態】
更に、具体的に本発明の装置の構成内容と、該装置による連染工程を図示して説明する。図1に示すように、符号2はタンク状のパッダー部を示しており、このパッダー部2に、円筒状編織布Fが、生地導入装置1より押圧され二重平面状体に形成されかつ、生地幅を調整されながら、染料を付与されて連続して供給される。パッダー部2に送り込まれた筒状編織布は、所定量の染液を付与されており、パッダー部2内に設けられた一対の圧搾ローラー2a,2aにより絞られる

【0013】
次いで、筒状編織布Fは、円筒状拡布装置3に送られる。拡布装置としては、たとえば、図2に示すようなプラスチック又はテフロン等の硬質合成樹脂で被覆された金属製面状型枠体31にステンレスワイヤからなる支持棒体32が接続されている。面状型枠体31にはスプリング311により外方に付勢された支持体312が取り付けられている。支持棒体32には数段からなるリング状拡布枠33が取り付けられている。拡布枠33は金属芯にテフロン等の硬質合成樹脂で被覆された金属製リング331に放射状に取り付けられたステンレスからなる補強体332を支持棒体32に固定している。また、金属製リング331にリング状拡布枠33同士を連結する連結体333が取り付けられている。更に、支持棒体32の下端にはプラスチック又は表面を合成樹脂で被覆された金属からなる中空球体34がバランスウエイトとして垂下されている。これら拡布装置は、拡布装置3の重量と筒状編織布Fの走行速度に対応して発生する拡布装置3と筒状編織布Fとの摩擦力とのバランスにより筒状編織布Fの内部に浮動させる。そして前記面状型枠体31の下方で編織布Fの外側に一対の支持ローラー35,35が設けられている。支持ローラー35は運転時に筒状編織布Fと接触させないように中空球体34の下方に配設してもよい。
【0014】
したがって、筒状編織布Fは拡布装置3を通過する間に、折り畳まれた編織布Fを中空球体34で拡布し、その後、数段のリング状拡布枠33で耳(エッジ)部の折り目を完全に拡布する。この際、運転停止時には、図3(a),(b)に示すように、拡布装置3は自重で降下しており、一対の支持ローラー35が面状型枠体31を支えている。そして、運転時には、図3(c),(d)に示すように、筒状編織布Fと拡布装置3との摩擦抵抗により、筒状編織布Fの走行方向に拡布装置3が持ち上げられるが、拡布装置3は自重で下がろうとする。このとき、前記面状型枠体31に設けられたスプリング311により外方に付勢された支持体312の拡布力とバランスウエイトとしての中空球体34の重量を調整することにより、拡布装置3は筒状編織布Fの中で浮動状態に保持される。
【0015】
さらに、拡布装置3の外側に予備加熱装置4が設けられていて、この予備加熱装置4により、筒状編織布Fは拡布装置3において、パッダー部2の温度乃至100°Cに加熱されるようになっている。
【0016】
又、本発明の拡布型枠の外周に円筒状に配置する400〜800℃の加熱を効率よく迅速に立ち上げて、精度良く温度制御出来るものであることが必要であるので、特に予備加熱装置の種類は、電熱ヒーター、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーター等、限定しないが、被加熱物との距離の加熱効果に対する影響が少ないこと、高出力が得易いこと、加熱効率がよいこと、温度制御がし易いことなどより、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーターの採用がより好ましい。
【0017】
また、予備加熱装置を用いることにより、筒状編織布の温度をスチーマ内で結露する温度(露点)以上に上げることにより、スチーマ内での筒状編織布の組織表面上での水蒸気の結露を予防し、このことにより、フロスティング(組織のごく表面が霜降り調になる)を防止することができる。これにより、深みのある高い品位の染色が可能となる。
【0018】
予備加熱装置のヒーター温度は、400〜800℃、望ましくは500〜600℃であり、予備加熱後の筒状編織布の組織の表面温度は露点以上、望ましくは90〜100℃が好適である。
【0019】
つまり筒状編織布Fは、ここで、予備加熱装置4で拡布状態下で乾熱され、パッダー2で付与された染液の昇温・蒸発に伴う移行(所謂migration)拡散効果により、染液の付着斑を、均等拡散分布させながら、拡布装置3の上方(出口部)に配した第二ガイドローラー5(なお、第二ガイドローラー5は平行に二本設けられている)により、再度二重平面状に折り畳まれ、次段階としてのスチーマ6に送り込まれ、ここでスチーミングされて付与染料の染着固定が実施され、連続染色工程が完了する。
【0020】
そして、スチーマ部6はパッダー部2に対して、平行に配置されており、編織布Fは導入方向と同じ方向に順次走行される。
【0021】
スチーマ部6は、密封容器からなる外殻62と外殻62内の上部および下部にそれぞれ平行に配設された複数のガイド軸63a,63bとを備え、筒状編織布Fは順次各ガイド軸63a,63bを交互に掛けめげぐらされて、蒸気供給管(図示しない)から供給される蒸気で加熱されて、外部へ送り出される。なお、スチーマ部6は、従来のパッダー式連続染色装置のスチーマ部と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0022】
前述した通り、従来の筒状体を押圧した二重平面状体となしたままでこの連続染色装置で実施すると、図4に示した通り、圧搾ローラー2a,2aの絞り圧が小さいと、筒状編織布が押圧された二重平面状体の両端折り曲げ部(エッジ)(斜線部分)において、その内側に微少な空隙部ができ、この部分に染液が多く包含されることになり、この状態のままでスチーマ6に入り染着固定が実施されると、染液包含量に対応する染着濃度が発現するため、押圧された二重平面状体の両端折り曲げ部耳部近傍が濃色・筋状に染着する、所謂エッジマークが発現するのである。
【0023】
一方、逆に絞り圧が高過ぎると、図5に示すように、筒状編織布が圧搾ローラー2a,2aにより押圧された二重平面状体の両端折り曲げ部の局部的過圧搾により、この両端折り曲げ部(エッジ)(斜線部分)の染液包含量が局部的に少なくなり、この状態のままでスチーマ6に入り、染着固定が実施されると、押圧された二重平面状体の両端折り曲げ部近傍が淡色・筋状に染着する、という先とは逆の淡色のエッジマークが発現するのである。
これが従来の連染システムを筒状編織布に適用した際のエッジマーク出現の発生因と実態である。
【0024】
この問題点を解消するために実施した本発明の装置は、染液付着量の不均等の解消を局部的な染液不均等包含量状態を惹起せしめている押圧二重平面状物の両端折り曲げ部の存在を円筒状に再拡幅しなおすと共に、既に付与されてしまった染液の不均等付着状態の解消を、この拡幅状態で乾熱することにより、染液の昇温・蒸発に基づく移行(migration)により均等化を行うことにあり、且つこの発明の装置に基づく余熱状態で90〜100℃の被染色物をスチーマへ導入することにより、低温の被染色物がスチーマに導入された時、その表面に水蒸気が結露するために生じた霜降り状染着状態、所謂フロスティングの発現をも解消することができる。
【0025】
更に、本発明の装置は、既存連染設備を大幅に改修することなく、簡単な拡布装置を既存連続染色装置に挿入するだけで、設備投資負担も極度に少なく特別の操業面での困難さも全くなく、大きな成果を達成できるのである。
【0026】
拡布装置としては、他にも本装置の他、エアー拡布方式などもあるが、対象物が湿潤状態であり吹き付けエアーによるバタツキやよじれ、及びガイド等との不均等摩擦は絶対に避けねばならないこと、及びエアー方式ではかかる状態の維持調整が難しいことなどの問題点を有するのに反し、本発明の内枠拡幅方式は最も単純・確実であり、何等の調整操作も要求されないため、目的達成に最適と評価し採用したのである。
【0027】
本発明の対象となる筒状編織布とは、別に限定する物ではなく何れのものであっても構わないが、その代表例としては綿糸よりなる丸編みニットなどがある。その他、多くの場合、綿或いはビスコーススフ等とポリエステル短繊維、ポリアミド短繊維、アクリル短繊維等との混紡糸、アクリル短繊維−紡績糸のニット等が、本装置により頻度良く染色が行われる例である。また、ポリウレタン等の高伸縮性繊維、またはこのような繊維の混合物であってもよい。
適用される染料も直接染料、酸性染料、分散染料、媒染染料ほか一般に該連続染色装置で適用される物は全て適用可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように従来の筒状編織布のパッダー式連続染色装置による染色では、生地供給装置から供給されるエンドレス筒状編織布を押圧し二重平面状に折り畳まれた状態でパッダーに導入し、押圧二重平面状折り畳み状態で絞り染液を付与すると、該押圧二重平面状折り畳み状態の筒状編織布の両端の折り曲がり部近傍において絞り効果の不均等に基づく染液含有斑が発生し、これがその侭染色製品に筋状の染め斑、所謂エッジマークを発現させるため、かかる高生産性のパッダー式連続染色工程の適用が不可能であったが、本発明の連続染色装置によれば、筒状編織布が押圧二重平面状折り畳み状態で染液を付与されていても、拡布装置において拡布されるため、筒状編織布に筋状のむら(エッジマ−ク)が発生するおそれは無く、また素材や色相に限定されない筒状編織布の連続染色装置を得ることができる。
【0029】
また、従来の連続染色装置に単純な構造の拡布装置を追加するのみで、生産性が良く、特別な(煩雑な)調整操作も必要とせずにエンドレスの筒状編織布の均一な染め斑のない染色が行うことができる。
【0030】
さらに、スチーミング部に導入する直前に、被染色物(筒状編織布)は乾熱され90〜100℃に余熱されているため、かかるプロセスでしばしば発生した水蒸気の被染色物表面への結露に基づく、所謂フロスティングと呼ばれる霜降り調染着状態の発生も抑制することができ、高品位の染色を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての連続染色装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態としての連続染色装置の拡布装置を示す斜視図である。
【図3】(a)は運転時の拡布装置の側面図、(b)は同正面図、(c)は停止時の拡布装置の側面図、(b)は同正面図である。
【図4】従来のパッダー式連続染色装置による筒状編織布の押圧二重平面状折り畳み状態絞りにおける染液付着状態(絞りが弱い場合)を示す模式断面図である。
【図5】従来のパッダー式連続染色装置による筒状編織布の押圧二重平面状折り畳み状態絞りにおける染液付着状態(絞りが強い場合)を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 生地導入装置
2 パッダー
3 拡布装置
31 金属製面状型枠体
32 支持棒体
33 リング状拡布枠
34 中空球体
35 支持ローラー
4 予備加熱装置
5 第にガイドローラー
6 スチーマ

Claims (3)

  1. 筒状編織布に染料を付与し圧搾して染液を絞り出す圧搾ローラーを備えたパッダー部と、染料を反応固着するスチーマ部とを備え、前記パッダー部とスチーマ部との間に前記編織布の内側に円筒状の拡布を行いつつ乾熱処理を行う拡布装置を配設してなる連続染色装置において、前記拡布装置は、面状型枠体に支持棒体が接続され該支持棒体にリング状拡布枠が取り付けられ、前記支持棒体の下端には中空球体が垂下されてなり、前記筒状編織布の周囲に円筒状予備加熱装置を配設し、該予備加熱装置は、表面温度が400〜800℃であり、予備加熱後の筒状編織布の表面温度が90〜100℃にして筒状編織布の温度をスチーマ部内で結露する温度(露点)以上に上げることを特徴とする連続染色装置。
  2. 前記面状型枠体はスプリングにより外方に付勢された支持体が取り付けられている請求項1に記載の連続染色装置。
  3. 前記リング状拡布枠はリングに放射状に取り付けられた補強体を支持棒体に固定してなる請求項1又は請求項2に記載の連続染色装置。
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