以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明に係る要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明に係る実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
[粒子状物質検出装置]先ず、本発明に係る粒子状物質検出装置について、構成、機能、作用等を中心に説明する。
図1及び図7は、本発明に係る粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す図である。図1は断面図であり、図7は、電気制御系統を表す構成図である。図1及び図7に示される粒子状物質検出装置100は、板状を呈する一の電極1、板状を呈する二の電極2、一の電極1の(図1における)上面(一の面)を被覆する電極間誘電体4、一の電極1と二の電極2の間に電圧の印加をする集塵用電源9、電極間誘電体4の表面に対向して配設をされた線状を呈する測定電極5,15、一の電極1の(図1における)下面(他の面)を被覆する電極外誘電体6、電極外誘電体6の表面(図1における下面)に配設されたヒータ7、そのヒータ7に電気を供給するヒータ用電源10、ヒータ7を覆って保護し周りと隔離して保温するシート状の断熱材8、特性測定装置(手段)3、粒子状物質11の量を算出する粒子状物質量算出装置(手段)13、粒子状物質11の濃度を算出する粒子状物質濃度算出装置(手段)16、流量計14、及び制御装置12で構成される。尚、図1に示される一の電極1、二の電極2、電極間誘電体4、測定電極5,15、電極外誘電体6、ヒータ7、及び断熱材8で構成される部分が、粒子状物質11を含む排気ガスが通過する流路に設置される。これらをセンサ部ということがある。
粒子状物質検出装置100では、粒子状物質11を含む排気ガスが、図1において(矢印で示されるように)左から右へ、板状を呈する一の電極1を被覆する電極間誘電体4と、板状を呈する二の電極2との間の空間を流れる。この排気ガスの流量は、図1には示されない流量計14によって測定される。この状態で、集塵用電源9が、二の電極2に、例えば直流高電圧の印加をすると、放電が生じ、二の電極2の周囲の排気ガス(分子)はプラスイオンとマイナスイオンに分離し、プラスの直流高電圧の印加された一の電極1に向かって、マイナスイオンが移動する。このとき、排気ガスに含まれる粒子状物質11は、このマイナスイオンと衝突してマイナスに荷電する。そして、荷電された粒子状物質11は、プラスの一の電極1を被覆する電極間誘電体4の表面に、静電気力によって集塵され堆積する。そうすると、その粒子状物質11の堆積の程度によって、一対の測定電極5,15の間における(例えば)電気的特性は変化するから、その電気的特性の変化量を知れば、集塵によって電極間誘電体4の表面に堆積した粒子状物質(PM)の量が求まる。そして、そのPM堆積量から排気ガスのPM濃度が求まる。
図8は、粒子状物質量算出装置13のはたらきを説明するためのグラフであり、図9は、粒子状物質濃度算出装置16のはたらきを説明するためのグラフである。測定電極5,15の間における電気的特性の変化量E1は、PM堆積量W1と一定の関係にあり(図8を参照)、特性測定装置3によって電気的特性の変化量E1を知れば、図8に基づく算出機能を有する粒子状物質量算出装置13によって、PM堆積量W1が求まる。そして、排気ガスの流量を一定とすれば、PM堆積量W1は、PM濃度C1と一定の関係にあり(図9を参照)、PM堆積量W1がわかれば、図9に基づく算出機能を有する粒子状物質濃度算出装置16によって、PM濃度C1が求まる。排気ガスの流量が変る場合には、流量計14で求めた流量に基づいて粒子状物質濃度算出装置16が補正をして、PM堆積量W1からPM濃度C1を求める。
粒子状物質検出装置100では、粒子状物質濃度算出装置16は、制御装置12に組み込まれている。その制御装置12は、例えば電気信号入出力機能を備えたシーケンサ等で構成され、粒子状物質濃度算出装置16の他に、流量計14で測定された流量の電気信号を入力する機能を備えるとともに、ヒータ用電源10や集塵用電源9の制御や、測定モードの切換等を含め、装置全体の制御を行う。
測定電極5,15の間における電気的特性として、例えばインピーダンスを求める場合には、交流電源を用い、抵抗、静電容量、インダクタンスをそれぞれ測定することが出来る。又、定電流源を使い、測定電極5,15の間の電圧の変化を測定することによって、インピーダンスの変化を測定してもよく、定電圧源を使って、測定電極5,15の間に流れる電流の変化や、測定電極5,15の間に蓄積される電荷の変化を測定することによって、測定電極5,15の間のインピーダンスの変化を測定してもよい。特性測定装置3は、このような電気的特性及びその変化の求め方によって、適切な構成とすることが可能である。
例えば、特性測定装置3は、測定電極5,15に電圧を印加する交流電源と測定器とで構成することが出来る。好ましい測定器としては、LCRメータを挙げることが出来る。
既述のように、本発明に係る粒子状物質検出装置では、空間に空気が流れていない静的状態で粒子状物質の検出、量の測定、濃度の測定を行うことが可能であり、又、空間に空気が流れている動的状態で、粒子状物質の検出を行い、刻々と変化し得る粒子状物質の量の測定、濃度の測定を、リアルタイムで行うことも出来るが、荷電粒子の流速に伴う集塵効率が異なる。そのため、粒子状物質量算出装置13における電気的特性の変化量E1からPM堆積量W1を求める根拠(図8に示されるデータに相当するもの)、及び粒子状物質濃度算出装置16におけるPM堆積量W1からPM濃度C1を求める根拠(図9に示されるデータに相当するもの)は、前者と後者では、別の測定モードとして、異なる根拠(データ)を用いる必要がある。
排気ガスが流れる空間を形成する電極間誘電体4と二の電極2との間の好ましい距離は、0.5〜50mmであり、より好ましい距離は、0.6〜40mmである。このような間隔にすることにより、より効率的に放電させ、粒子状物質を集塵することが出来る。電極間誘電体4と二の電極2との間の距離が0.5mmより短いと、集塵率が低下することにより測定精度が低下することがあり、50mmより長いと、より高い電圧が必要になり無駄なエネルギーを要することがある。
集塵用電源9は、一の電極1と二の電極2との間に放電を発生させ得る安定した直流電圧又は交流電圧を供給するものである。集塵用電源9として、例えば、フライバック方式による電源回路等を用いた電源を採用することが出来る。これは、入力側の電源からトランスにエネルギーを蓄積し、蓄積されたエネルギーを出力側に放出することによって高圧の直流電圧を供給することが出来るものである。フライバック方式による電源回路においては、トランスへのエネルギーの蓄積と放出は、トランジスタ等により制御され、出力側の電流はダイオードにより整流される。
図4は、電極外誘電体6及び一の電極1を表した斜視図である。図4において矢印は排気ガスの流れ方向を示している。一の電極1は、二の電極2の対向電極として放電を行うとともに、荷電された粒子状物質11を吸引し集塵する部材としての役割を果たす。粒子状物質検出装置100における板状の一の電極1は、図4に示されるように、概ね長方形を呈しているが、他に、五角形等の多角形、円形、楕円形、トラック形状等の形状や、外周に凹凸が形成される形状、あるいは、1又は複数のスリットが形成された形状等を採ることが出来る。
板状の二の電極2は、斜視図を示さないが、一の電極1と同様に、概ね長方形を呈している。一の電極1と同様に、五角形等の多角形、円形、楕円形、トラック形状や、外周に凹凸が形成される形状、あるいは、1又は複数のスリットが形成される形状を採ることも出来る。
線状の測定電極5,15は、排気ガスが流れる(図1における矢印)方向に対し垂直方向に長く、測定電極5,15が互いに対向して配設をされ、測定電極5,15間の電気的特性の変化を測定する。測定電極5と測定電極15の間の距離は、一の電極1が粒子状物質11を集塵することによって生じた、測定電極5,15間の電気的特性の変化を、明確に測定することが出来る範囲に設定される。例えば、0.2〜10mm程度である。
図5及び図6は、線状を呈する一対の測定電極の他の態様を表す斜視図である。図5及び図6において矢印は排気ガスの流れ方向を示している。図5に示される測定電極105,115は、測定電極105と測定電極115が、それぞれ複数に分岐をされ、分岐をした後で対向しており、複数の対向部分が存在する。加えて、測定電極105と測定電極115が分岐して対向する複数の部分が、電極間誘電体4の表面の全面にわたって配設をされている。本発明に係る粒子状物質検出装置では、電気的特性の測定感度及び測定精度を向上させる観点から、一対の対向する測定電極の間の距離が長いことは好ましくなく、一方、一対の対向する測定電極が、排気ガスが流れる空間全てに対応する位置に配設されることが好ましい。図5に示される測定電極105,115は、このような好ましい態様を具現化したものである。図6に示される測定電極205,215も、同様であり、分岐の態様が異なるが、測定電極205,215はそれぞれ複数に分岐をされ、分岐をした後で対向しており、複数の対向部分が存在し、測定電極205と測定電極215が分岐して対向する複数の部分が、電極間誘電体4の表面の全面にわたって配設をされている。
粒子状物質検出装置100の説明に戻る。ヒータ7の形状、大きさは、電極間誘電体4の表面に集塵された粒子状物質11の全部を燃焼することが可能なように決定すればよい。
ヒータ7は、粒子状物質11を酸化して除去するときだけでなく、測定電極5,15の間の電気的特性の変化を測定する場合に、結露等の水分の影響を受けないようにするために使用される。例えば、インピーダンス変化の検出や放電の際に、適度に加熱することによって、測定電極5,15への水分の付着を防止することが出来る。このときの好ましい加熱温度は、200〜300℃である。
好ましいヒータ用電源10として、効率的な温度制御を可能とする観点から、降圧チョッパ方式の電源を挙げることが出来る。特に好ましいものは、自己消弧型の半導体スイッチを使用した降圧チョッパ方式のスイッチング電源である。この場合、好ましいスイッチング周波数は、可聴周波数以上の20kHz以上である。燃費に直接影響するため、ヒータ用電源の電流、電力は、より小さくすることが望ましい。又、好ましいヒータ用電源10は、電圧と電流からヒータ7の温度を算出して温度制御機能を有するものである。
断熱材8は、ヒータ7で発生する熱の放熱を抑制して、ヒータ7の熱を効率的に粒子状物質11の燃焼に使用することを可能とする。断熱材8の好ましい厚さは、放熱を抑制することが出来る厚さとして、例えば、100〜1000μm程度である。
尚、粒子状物質検出装置100では、ヒータ7及びヒータ用電源10の代わりに、又はそれらと併用して、一の電極1と一対の測定電極5,15との間に電圧の印加をして、電極間誘電体4の表面に沿面放電をさせるための除去用電源を備える態様を採ることが出来る。この場合、測定電極5,15と特性測定装置3、一の電極1と集塵用電源9、をそれぞれ切り離し、測定電極5と測定電極15を導通させ、それらと一の電極1とを除去用電源に接続する切換回路を構築する必要がある。除去用電源としては、交流電源やパルス電源を採用することが出来る。
以上、本発明に係る粒子状物質検出装置の一の実施形態を説明したが、他の実施形態として、二の電極を管壁面で構成した態様、あるいは針状又は棒状を呈する二の電極を採用した態様を挙げることが出来る。図2は、前者に相当する粒子状物質検出装置200を表す断面図である。図2では、排気ガスが流れる方向は、手前から奥側に向けた方向として表されている。図3は、後者に相当する粒子状物質検出装置300を表す断面図である。粒子状物質検出装置300では、放電はコロナ放電となる。粒子状物質検出装置200,300は、原理・作用、二の電極を除く装置構成は、粒子状物質検出装置100に準じたものであるので、説明は省略する。
次に、本発明に係る粒子状物質検出装置の更に他の実施形態について説明する。図10A〜図16に示すように、本実施形体の粒子状物質検出装置400は、一方の端部21aに、粒子状物質を含む気体が流れる空間である貫通孔22が形成された、一方向に長い誘電体からなる検出装置本体21を備え、一の電極31と二の電極32とが、一の電極31の一の面が貫通孔22側を向いた状態で貫通孔22を挟むようにして検出装置本体21の内部に埋設され、一対の測定電極41,42が、貫通孔22内の一の電極31が埋設されている側の壁面に配設されたものである。ここで、図10Aは、本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。図10Bは、本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態を模式的に示す側面図である。図11は、図10BのA−A’断面を示す模式図である。図12は、図11のB−B’断面を示す模式図である。図13は、図11のC−C’断面を示す模式図である。図14は、図11のD−D’断面を示す模式図である。図15は、図11のE−E’断面を示す模式図である。図16は、図11のF−F’断面を示す模式図である。
本実施形態の粒子状物質検出装置400においては、一の電極31と二の電極32とが、検出装置本体21の内部に埋設されており、検出装置本体21が誘電体から形成されることにより、一の電極31と二の電極32とがそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。つまり、一の電極31の一の面を被覆する誘電体が、誘電体からなる検出装置本体21の一部により構成されている。
これにより、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガスのみについてその粒子状物質の質量を測定することが可能となり、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質だけを測定することにより排ガス全体の粒子状物質量を推算することができるので、粒子状物質検出装置を小型化することが可能となり、それにより、狭いスペースに設置することが可能となり、更に安価に製造することが可能となる。また、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(粒子状物質)の一部だけを貫通孔内に導入するため、貫通孔内に放電を起こして貫通孔内の粒子状物質を荷電する場合、貫通孔内の粒子状物質を全て効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることが可能となる。また、検出装置本体が一方向に長く形成され、その一方の端部に、貫通孔が形成されるとともに、少なくとも一対の電極が配設(埋設)されるため、貫通孔及び一対の電極が配設される部分だけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、一対の電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
本実施形態の粒子状物質検出装置400においては、検出装置本体21の他方の端部21bに、一の電極31及び二の電極32の中の少なくとも一方の電極の取り出し端子が配設されていることが好ましい。取り出し端子は、粒子状物質検出装置400の検出装置本体21に配設された電極に電気的に接続され、外部からその電極に電圧を印加するための電源等からの配線を接続する部分である。粒子状物質検出装置400は、一の電極31、二の電極32、ヒータ33、測定電極41,42等に、それぞれ独立して接続された複数の取り出し端子(取り出し端子31a,32a,33a,41a,42a)を有している。図10Bに示す本実施形態の粒子状物質検出装置400においては、二の電極32の取り出し端子32aが、検出装置本体21の他方の端部21bに配設されている。このように、一の電極31及び二の電極32の中の少なくとも一方の電極の取り出し端子を、検出装置本体21の他方の端部21bに配設することにより、貫通孔22、一の電極31、二の電極32及び一対の測定電極41,42が配設される部分(一方の端部21a)と取り出し端子との間隔を大きくとることができるため、貫通孔22等が配設される一方の端部21aだけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、取り出し端子32aが配設されている他方の端部21b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。取り出し端子32aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になることがあるため、取り出し端子32aを配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
検出装置本体21の他方の端部21bに配設された取り出し端子32aは、図10Bに示すように、検出装置本体21の他方の端部21bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。取り出し端子32aを配設する面は、検出装置本体21の他方の端部21bの側面である必要はなく、いずれの面であってもよい。また、図10Bにおいては、検出装置本体21の他方の端部21bは、幅が狭く形成されているが、他方の端部21bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。取り出し端子32aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。取り出し端子32aの材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
一の電極31及び二の電極32の両方の取り出し端子を、検出装置本体21の他方の端部21bに配設してもよいが、二の電極32の取り出し端子32aを検出装置本体21の他方の端部21bに配設し、一の電極31の取り出し端子31aを、検出装置本体21の一方の端部21aと他方の端部21bとの間の位置に配設することが好ましい。これにより、二の電極32の取り出し端子32aと、一の電極31の取り出し端子31aとを、間隔を開けて配設することになり、それにより、一の電極31と二の電極32との間に電圧を印加するために、取り出し端子31aと取り出し端子32aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体21の表面に沿面放電による短絡が生じることを防止することができる。ここで、本実施形態において、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分21cから、検出装置本体21の全長の30%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分21dから、検出装置本体21の全長の30%の長さに相当する位置までの範囲をいう。従って、検出装置本体21の一方の端部21aと他方の端部21bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部21aと他方の端部21bの範囲を除いた部分ということになる。本実施形態の粒子状物質検出装置400においては、取り出し端子31aと取り出し端子32aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がしやすくなることがあり、100mmより長いと、取り出し端子31aが配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置400の検出装置本体21を配管等に装着したときに、検出装置本体21の配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体21を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
また、検出装置本体21の一方の端部21aと他方の端部21bとの間の位置に配設した取り出し端子31aと、貫通孔22との間の距離は、10mmより長いことが好ましく、20mmより長いことが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置400を、貫通孔22の部分が配管内に挿入されるように、配管に装着したときに、配管内を流通する高温の排ガスの熱が取り出し端子31aに影響を及ぼし易くなることがある。
取り出し端子31aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜3mmの四角形等の多角形状であることが好ましいが、円形、楕円形、レーストラック形状、その他の形状等であってもよい。取り出し端子31aの材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
本実施形態の粒子状物質検出装置400において、検出装置本体21は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排ガス配管に挿入した時に排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。例えば、50〜200mm程度が好ましい。本実施形態の粒子状物質検出装置400においては、上記長手方向の一方の端部21aに貫通孔22が形成されている。また、検出装置本体21の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体21の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体21の、貫通孔22にガスが流通するときの流通方向における長さは、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。検出装置本体1の形状は、図10A及び図10Bに示すように、長手方向に直行する断面形状が長方形の板状であってもよいし、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよいし、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。検出装置本体21の好ましい材質としては、上記本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態において、電極間誘電体4及び電極外誘電体6の好ましい材質として挙げられた材質を挙げることができる。そして、耐熱衝撃性に優れるため、コーディエライトが更に好ましい。これらの材質はいずれも誘電体であるため、一の電極31及び二の電極32を検出装置本体21の内部に埋設することにより、誘電体に覆われた一の電極31及び二の電極32を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置400が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、本実施形態において、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
図11に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置400は、貫通孔22を形成する壁の内部に一の電極31及び二の電極32が埋設されており、貫通孔22を挟むようにして誘電体で覆われた一の電極31及び二の電極32が配置された状態になっている。これにより、一の電極31と二の電極32との間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔22内に放電を起こすことが可能となる。尚、電極としては、少なくとも一対配設されていることが必要である。また、電極は、貫通孔22を形成する壁の内部に埋設されていればよく、図11に示すように貫通孔22を挟むように配設されていることが好ましいが、壁の電気的特性を検知でき、貫通孔22内に放電を起こせれば、貫通孔22を取り囲む壁のどの位置に一対の電極が配設されてもよい。放電の種類としては、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群から選択される一種であることが好ましい。このような放電を生じさせるため、本実施形態の粒子状物質検出装置400は、取り出し端子31a,32aに接続された、集塵用電源を更に備えている。集塵用電源としては、高電圧の交流電源、直流電源等が好ましい。また、放電させるために印加する電圧としては、パルス電圧、矩形波等交流電圧が好ましい。また、印加する電圧の条件としては、ギャップ、ガス温度によって変わるが200kV/cm以下が好ましい。また、電圧を印加するときの、電力は、0.1〜10Wが好ましい。
本実施形態の粒子状物質検出装置400は、貫通孔22内に流入する流体に含有される粒子状物質が荷電されていない場合に、貫通孔22内に放電を起こすことにより、粒子状物質を荷電して、貫通孔22の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させるものである。そして、貫通孔22内に流入する流体に含有される粒子状物質が、貫通孔22内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔22内の放電により改めて荷電させる必要がないため、貫通孔22内に放電を起こすことなく、貫通孔22の壁面にその荷電されている粒子状物質を電気的に吸着させるものである。貫通孔22内に放電を起こして粒子状物質を荷電させる場合には、荷電した粒子状物質は、放電中に、その荷電した粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する電極側に電気的に引き寄せられ、壁面に吸着される。これに対し、粒子状物質が貫通孔22内に流入する前から荷電されている場合には、一の電極31と二の電極32との間に、所定の条件の電圧を印加し、荷電している粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する電極側に電気的に引き寄せられるようにする。ここで、粒子状物質が貫通孔22内に流入する前から荷電されている場合に、一の電極31と二の電極32との間に印加する電圧の条件は、4kV/cm〜40kV/cmであることが好ましい。
一の電極31及び二の電極32の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、一の電極31と二の電極32の大きさは、例えば、貫通孔22の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
一の電極31と二の電極32のそれぞれの厚さは特に限定されず、貫通孔22内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、5〜30μmであることが好ましい。一の電極31と二の電極32の好ましい材質としては、上記本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態において、一の電極31と二の電極32の好ましい材質として挙げられた材質を挙げることができる。
一の電極31と貫通孔22との間の距離、及び二の電極32と貫通孔22との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に放電を生じさせることができる。一の電極31及び二の電極32のそれぞれと、貫通孔22との間の距離は、一の電極31を覆う誘電体及び二の電極32を覆う誘電体の、貫通孔22に面する部分の厚さということになる。
本実施形態の粒子状物質検出装置400においては、図12に示すように、一の電極31には、検出装置本体21の長手方向に延びる配線31bが接続されて居り、配線31bが、その先端(一の電極31に接続されていない側の先端)部分で、図10Bに示す取り出し端子31aに層間接続(ビア接続)されている。また、図13に示すように、測定電極41,42のそれぞれには、検出装置本体21の長手方向に延びる配線41b,42bのそれぞれが接続されて居り、配線41b,42bのそれぞれが、その先端(測定電極41,42のそれぞれに接続されていない側の先端)部分で、図10Bに示す取り出し端子41a,42aのそれぞれに層間接続されている。そして、測定電極41,42の取り出し端子41a,42aに、特性測定装置3(図7を参照)が接続されている。そして特性測定装置3(図7を参照)に粒子状物質量算出装置13(図7を参照)が接続されている。また、図14に示すように、検出装置本体21の一方の端部21aに貫通孔22が形成されている。ここで、図12は、図11のB−B’断面を示す模式図であり、図13は、図11のB−B’断面を示す模式図であり、図14は、図11のD−D’断面を示す模式図である。
また、図15に示すように、二の電極32には検出装置本体21の長手方向に延びる配線32bが接続され、配線32bは、図10Bに示す取り出し端子32aに層間接続されている。ここで、図15は、図11のE−E’断面を示す模式図である。
配線31b、配線32b、配線41b及び配線42bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線31b、配線32b、配線41b及び配線42bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線31b、配線32b、配線41b及び配線42bの材質としては、白金、モリブデン、タングステン等を挙げることができる。
図11及び図16に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置400は、貫通孔22の壁面(検出装置本体21の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体21の内部に配設(埋設)されたヒータ33を更に備えることが好ましい。ヒータ33により、電極に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができ、また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔22の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。ヒータ33は、幅広のフィルム状であってもよいが、図16に示すように、線状の金属材料を、波状に配置し、先端部分でU−ターンするように配置したものであることが好ましい。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱することが可能となる。ヒータ33の材質としては、白金、モリブデン、タングステン等を挙げることができる。ヒータ33は、貫通孔22の壁面に沿うようにして検出装置本体21の内部に埋設されることが好ましいが、図14、図16に示すように、貫通孔2が配置されている位置だけでなく更に検出装置本体21の他方の端部21b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子の破損が起きにくい利点がある。ヒータ33により、貫通孔22の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。
本実施形態の粒子状物質検出装置400においては、一の電極31及び二の電極32のなかの少なくとも一方の電極の、貫通孔22が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一のヒータ33が配設されていることが好ましい。図11に示す本実施形態の粒子状物質検出装置400においては、二の電極32の貫通孔22が形成されている側に対して反対側の位置に、ヒータ33が配設されている。このように、ヒータ33が、一の電極31及び二の電極32のなかの少なくとも一方の電極の、貫通孔22が形成されている側に対して反対側の位置に配設されていることにより、ヒータ33を構成する導体の電気的な影響を受けることなく、一の電極31と二の電極32との間に放電を起こすことができる。図11においては、ヒータ33は一つであるが、二の電極32の貫通孔22が配設されている側に対して反対側の位置に複数配設されてもよい。また、図11においては、二の電極32の、貫通孔22が配設されている側に対して反対側の位置にヒータ33が配設されているが、一の電極31及び二の電極32のそれぞれの(両方の)、貫通孔22が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一のヒータ33が配設されることも好ましい。ヒータ33の配置及び数は、温度調節、捕集した粒子状物質の酸化除去等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。
図16に示すように、ヒータ33は、配線33b,33bに接続され、配線33b,33bは、それぞれ図10Bに示す取り出し端子33a,33aに層間接続されている。ヒータ33の取り出し端子33aも、一の電極31及び二の電極32の取り出し端子31a,32aの場合と同様に、検出装置本体21の一方の端部21a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体21の他方の端部21bに配設されることが好ましい。図10Bにおいては、取り出し端子41a,42aが、検出装置本体21の側面においてその幅方向における両端縁に配置され、取り出し端子33a,33aが、検出装置本体21の側面においてその幅方向における中央部に、2本が並ぶように配置され、取り出し端子32aが、取り出し端子41aと取り出し端子33aとの間に配置されている。これらの取り出し端子の配置は、このような配置であることが好ましい態様の一つであるが、このような配置に限定されるものではない。
ヒータ33が線状である場合、その線の幅は、特に限定されず、例えば、0.05〜1mm程度が好ましい。また、ヒータ33の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。配線33bの幅は、特に限定されず、例えば、0.7〜4mm程度が好ましい。また、配線33bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。ヒータ33に対応する取り出し端子33aの幅は、特に限定されず、例えば、0.1〜2mm程度が好ましい。また、取り出し端子33aの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜1000μm程度が好ましい。配線33b及び取り出し端子33aの材質としては、ニッケル、白金、クロム、タングステン、モリブデン、アルミニウム、金、銀、銅、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
また、本実施形態の粒子状物質検出装置400は、一の電極31と一対の測定電極41,42との間に電圧の印加をして貫通孔2内に放電を起こして、電極に吸着された粒子状物質を酸化除去することができるものであることが好ましい。貫通孔内に生じる放電は、一の電極31の一の面に被覆された誘電体の表面に生じる沿面放電であることが好ましい。粒子状物質を酸化除去する場合の放電を生じさせる条件としては、電界強度が10〜200kV/cmであり、エネルギー投入量が、被処理物質に対して0.05〜10J/μgであることが好ましい。このような放電を起こすために、除去用電源を更に備えることが好ましい。
本実施形態の粒子状物質検出装置400は、ヒータ33の取り出し端子33aに接続された、加熱用電源を更に備えることが好ましい。加熱用電源としては、定電流電源等を挙げることができる。
本実施形態の粒子状物質検出装置400において、貫通孔22の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔22の、検出装置本体の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔22の、一の電極31と二の電極32とにより挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、3〜30mm程度が好ましい。このような範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔22内に十分に流通させることができ、更に、貫通孔22内に粒子状物質を荷電するために効果的な放電を起こすことが可能となる。また、貫通孔22の形状としては、貫通孔22の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることが好ましい。貫通孔22の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることにより、より効率的に配管内を流通する排ガス等を粒子状物質検出装置の貫通孔内に流入(入口部分が拡開された場合)及び/又は流出(出口部分が拡開された場合)させることが可能となる。図17に示す本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置500)においては、貫通孔22の、流体が流入する入口部分22aのみが拡開され、拡開部分22bが形成されている。また、図17に示す粒子状物質検出装置500においては、貫通孔22は、検出装置本体21の長手方向に広がるように拡開されているが、検出装置本体21の厚さ方向に広がるように拡開されてもよい。図17は、本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態を示し、図14に示す本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態(粒子状物質検出装置400)の断面を示す模式図に相当する、模式図である。
拡開部分22bの拡開された幅(貫通孔22のガス流通方向における最先端部分の幅)T1は、貫通孔22の拡開されていない部分の幅T2に対して2〜200%が好ましい。また、拡開部分22bの、貫通孔22のガス流通方向における奥行き(拡開部分の奥行き)L1は、検出装置本体21の、貫通孔22のガス流通方向における長さL2の5〜30%が好ましい。
図18A及び18Bに示すように、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置600)は、検出装置本体21の中心軸に直交する断面形状が、貫通孔22の貫通方向において、一方の端部側から中央部に向かって漸次太くなり、中央部分で最も太く、更に他方の端部側に向かって漸次細くなる形状であることが好ましい。検出装置本体の形状をこのようにすることにより、貫通孔のガスの流通方向を、配管内の排気ガスの流通方向に合わせた(平行にした)ときに、配管内の排気ガスの流れを良好にすることができる。粒子状物質検出装置(検出装置本体)の、貫通孔の貫通方向における「中央部分」とは、粒子状物質検出装置の、貫通孔の貫通方向における長さを3等分したときの、中央に位置する「3分の1の範囲」を意味する。従って、「粒子状物質検出装置の、貫通孔の貫通方向において、中央部分で最も太く」というときは、上記「中央部分に位置する3分の1の範囲」に最も太い部分が位置することを意味する。ここで、図18Aは、本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含む断面を示す模式図であり、図18Bは、本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含まない断面を示す模式図である。
本実施形態の粒子状物質検出装置400は、検出装置本体21が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極、配線等を挟みながら積層して粒子状物質検出装置400を作製することができるため、本実施形態の粒子状物質検出装置400を効率的に製造することが可能となる。
本実施形態の粒子状物質検出装置400は、貫通孔22内を通過する粒子状物質が、ディーゼルエンジンより排出される煤であるときに、特にその効果を発揮させることができる。
上述した本実施形態の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態(粒子状物質検出装置400)は、上述した各要素の内容以外については、上述した本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態の場合と同様であることが好ましい。
[粒子状物質検出装置の材料]次に、本発明に係る粒子状物質検出装置の各構成要素を形成する材料について、粒子状物質検出装置100の場合を例にして、説明する。
一の電極1、二の電極2、及び測定電極5,15、並びにこれらの接続に用いる配線を形成する好ましい材料として、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、チタン、マンガン、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される少なくとも一種を含有するものが挙げられる。これらの成分の好ましい含有率は、20体積%以上、より好ましい含有率は60体積%以上である。又、一の電極1、二の電極2、及び測定電極5,15、並びにこれらの接続に用いる配線を形成する材料として、ステンレススチールを採用することが出来る。
電極間誘電体4、電極外誘電体6、及び断熱材8を形成する好ましい材料として、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、ジルコニア、コーディエライト、ムライト、スピネル、アルミニウム−チタン系酸化物、マグネシウム−カルシウム−チタン系酸化物、バリウム−チタン−亜鉛系酸化物、及びバリウム−チタン系酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むセラミックを挙げることが出来る。上記セラミックスにガラス成分を混合した低温焼成可能なセラミック−ガラス複合材料も使用することが出来る。このようなセラミック製の電極間誘電体4及び電極外誘電体6は、温度変動が発生しても破壊され難く、耐熱衝撃性に優れる。断熱材8の場合は、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、ジルコニア、コーディエライト、ムライト、スピネル、アルミニウム−チタン系酸化物、マグネシウム−カルシウム−チタン系酸化物、バリウム−チタン−亜鉛系酸化物、及びバリウム−チタン系酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むセラミックを挙げることが出来る。上記セラミックスにガラス成分を混合した低温焼成可能なセラミック−ガラス複合材料も使用することが出来る。又、これらを多孔質やファイバ状とすることも可能である。
測定電極5,15は膜状の誘電体で被覆することが出来るが、この場合の誘電体を形成する材料としては、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、ジルコニア、コーディエライト、ムライト、スピネル、アルミニウム−チタン系酸化物、マグネシウム−カルシウム−チタン系酸化物、バリウム−チタン−亜鉛系酸化物、及びバリウム−チタン系酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むセラミックを挙げることが出来る。上記セラミックスにガラス成分を混合した低温焼成可能なセラミック−ガラス複合材料も使用することが出来る。
ヒータ7を形成する好ましい材料は、白金、銅、ニッケル、チタン、マンガン、タングステン、モリブデン、タングステンカーバイド等である。特に、白金は、抵抗値と温度との関係において高い精度を示すので、これをヒータ7の材料として使用することにより、精度の高い温度制御が可能となる。
[粒子状物質検出装置の製造方法]次に、本発明に係る粒子状物質検出装置を製造する方法について、粒子状物質検出装置100を作製する場合を例にして、説明する。
先ず、既述の電極間誘電体4、電極外誘電体6、及び断熱材8として好ましいセラミック原料に、必要に応じて、バインダ、可塑剤、分散剤、水や有機溶剤等の溶媒を混合して、スラリー状の成形用原料を調製する。混合に際しては、アルミナ製ポット及びアルミナ玉石、又は、モノボール(ボールミル)を使用することが出来る。電極間誘電体4、電極外誘電体6、及び断熱材8の原料は、同じ組成としてもよいし、異なる組成としてもよい。断熱材8の成形用原料には、発泡剤を入れることが好ましい。
バインダは、水系バインダとして、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等を好適に使用することが出来、非水系バインダとして、ポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を好適に使用することが可能である。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることが出来る。のちのグリーンシートの成形、乾燥、焼成のときにおいて、クラックの発生を抑制するという観点から、バインダの好ましい添加量は、セラミック原料100質量部に対して、3〜20質量部であり、特に好ましい添加量は、6〜17質量部である。
好ましい可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等である。可塑剤の好ましい添加量は、バインダ100質量部に対して、30〜70質量部であり、特に好ましい添加量は、45〜55質量部である。70質量部より多いと、グリーンシートが柔らかくなりすぎ、シートを加工する工程において変形し易くなることがあり、30質量部より少ないと、グリーンシートが硬くなりすぎ、曲げただけでクラックが入る等、ハンドリング性が悪くなることがある。
好ましい分散剤は、水系ではアニオン系界面活性剤、ワックスエマルジョン、ピリジン等であり、非水系では脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤等である。分散剤の好ましい添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜3質量部であり、特に好ましい添加量は、1〜2質量部である。0.5質量部より少ないと、セラミック原料の分散性が低下することがあり、グリーンシートにクラック等が生じることがある。3質量部より多いと、セラミック原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる。
好ましい有機溶剤(溶媒)は、キシレン、ブタノール等である。有機溶剤は、一種単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。好ましい溶媒の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、50〜200質量部であり、特に好ましい添加量は、75〜150質量部である。
そして、スラリー状の成形用原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、更に所定の粘度となるように調製する。シート状に成形し易くなるという観点から、好ましい粘度は、B型粘度計で測定した値として、2.0〜6.0Pa・sであり、より好ましい粘度は、3.0〜5.0Pa・sであり、特に好ましい粘度は、3.5〜4.5Pa・sである。スラリーをめ好ましい。
次に、得られた成形原料を、シート状に成形して、のちに電極間誘電体4、電極外誘電体6、及び断熱材8となるグリーンシートを形成する。好ましい成形方法は、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、カレンダーロール法等である。好ましいグリーンシートの厚さは、50〜800μmである。
そして、得られたグリーンシートの表面に、のちに一の電極1、一対の測定電極5,15、ヒータ7、及び必要な配線となる導体ペーストを配設するとともに、グリーンシートを積層してグリーン積層体を得る。導体ペーストは、既述の一の電極1、一対の測定電極5,15、ヒータ7、及び必要な配線に好適な材料からなる粉末に、バインダ及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミル等を用いて十分に混錬して調製することが出来る。導体ペーストの好適な配設手段は、スクリーン印刷法である。導体ペーストの配設は、具体的には、電極外誘電体6となるグリーンシートの一の面には、一の電極1及び必要な配線となる導体ペーストを印刷し、更に電極間誘電体4となるグリーンシートを積層し、その電極間誘電体4となるグリーンシートの表面に、測定電極5,15及び必要な配線を、所望のパターンで(測定電極5,15につき図5及び図6を参照)印刷することで行う。他方、電極外誘電体6となるグリーンシートの他の面には、ヒータ7及び必要な配線となる導体ペーストを印刷し、更に断熱材8となるグリーンシートを積層する(図1を参照)。グリーンシートの積層は加圧しながら行うことが好ましい。
次に、得られたグリーン積層体を、60〜150℃で乾燥し、有機バインダを含有する場合には400〜800℃で脱脂し、その後、1200〜1600℃で焼成する。このようにして、粒子状物質検出装置100を構成する、一の電極1、電極間誘電体4、測定電極5,15、電極外誘電体6、ヒータ7、及び断熱材8を含む焼成積層体が得られる。
二の電極2は、既述の好適な材料からなる市販の薄板を購入して用い上記焼成積層体に支持部材を介して一体化させる。二の電極として、セラミックスと導体ペーストを積層したものを用いてもよい。この支持部材としては、既述の電極間誘電体4、電極外誘電体6、及び断熱材8に好適な材料からなる焼結体を使用することが出来る。
又、粒子状物質11を含む排気ガスが流れる空洞(空間)が形成されるように、上記焼成積層体と二の電極2の支持部材とを、一体化させた積層構造としてもよい。この場合、上記焼成積層体を得る前に、上記のグリーン積層体の電極間誘電体4(測定電極5,15)の側に、空洞を形成するグリーンシートと、天板となるグリーンシートと、を更に積層し、その天板となるグリーンシートの内面(空洞に対向する面)に、のちに二の電極2及び必要な配線となる導体ペーストを配設し、これら全体からなるグリーン積層体を得て、乾燥、必要な脱脂、焼成を行えばよい。
集塵用電源9、特性測定装置3、ヒータ用電源10は、既述の好ましい仕様に合致した市販品を購入する。流量計14も市販品を採用することが出来る。集塵用電源9は、一の電極1と二の電極2に接続し、特性測定装置3は、測定電極5,15に接続し、ヒータ用電源10はヒータ7に接続する。粒子状物質量算出装置13及び粒子状物質濃度算出装置16は、シーケンサ等のコンピュータにおいてソフトウエアで構築することが出来る。制御装置12は、既述又は後述する粒子状物質検出装置100の動作を実現するように、シーケンサ等のコンピュータにおけるソフトウエア及び制御回路(ハードウエア)で構築することが出来る。以上によって、粒子状物質検出装置100を作製することが出来る。
また、図10A、図10Bに示す本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態(粒子状物質検出装置400)を作製する場合には、成形原料をシート状に加工してグリ−ンシートを作製するときに、グリーンシートの形状を、図12〜図16に示すような一方向に長い形状とし、積層したときに、図10A、図10B及び図11に示すような粒子状物質検出装置の形状になるようにする。そして、複数のグリーンシートを形成して、所定のグリーンシートの表面の所定の位置に、のちに一の電極31等となる導体ペーストを配設し、各グリーンシートを積層してグリーン積層体を得る。このとき、二の電極32についても、グリーンシートに、のちに二の電極32となる導体ペーストを配設することにより形成する。
[粒子状物質検出装置の使用方法]次に、本発明に係る粒子状物質検出装置を使用する方法について、粒子状物質検出装置100を使用する場合を例にして、説明する。
(集塵工程)先ず、粒子状物質検出装置100のセンサ部を、例えばディーゼルエンジンの排気系(排気ガス管)に設置し、電源供給、制御線接続等を行い、使用可能な状態とする。そして、集塵用電源9によって二の電極2と一の電極1との間に、例えば直流の高電圧を印加し、粒子状物質11を荷電させ、電極間誘電体4の表面に堆積させる。尚、図10A、図10Bに示す粒子状物質検出装置400を使用する場合には、粒子状物質検出装置400の一方の端部21aを排気ガス管内に挿入して、貫通孔22が排気ガス管内に位置するようにし、他方の端部21bが排気ガス管の外に位置するように、粒子状物質検出装置を配置することが好ましい。このとき、一の電極31の取り出し端部31aは、排気ガス管から外に出すことが好ましい。
高電圧を印加する好ましい時間は、0.5〜120秒であり、より好ましくは2〜10秒である。0.5秒より短いと、粒子状物質11の集塵量が少なくなるため、粒子状物質量11の測定精度が低下することがあり、120秒より長いと、粒子状物質11の集塵量が多くなるため、インピーダンスの変化量の検出から粒子状物質11の量を正確に把握し難くなることがある。
一の電極1及び二の電極2に供給するための好ましい電圧は、電極間の距離によって異なるが、印加する電圧を高くすることで電界が強まり集塵力が向上する。その一方で、絶縁及び絶縁距離等が問題となり装置が大型化するため、実際上は、上記電圧は10kV以下が望ましい。
一の電極1と二の電極2との間を流れる放電による好ましい電流は、1mA以下であり、更に好ましい電流は、1〜100μAである。1μAより小さいと、集塵率が低下することがある。
使用電力は、燃費に直接影響を与えるので小さい方が望ましい。又、発生する電磁ノイズの低減や、放電を発生させる回路の大きさから考えても、好ましい使用電力は10W以下であり、より好ましい使用電力は1W以下である。
(測定工程)粒子状物質11の堆積を終えたら、二の電極2と一の電極1との間における高電圧の印加を停止し、特性測定装置3を稼動させ、好ましくは1〜60秒程度の時間で、測定電極5,15間のインピーダンスの変化量を測定する。このインピーダンスの変化量によって、粒子状物質11の量及び濃度が求まる。尚、既述のように、電極間誘電体4の表面に堆積させつつ(高電圧を印加させつつ)、測定電極5,15間のインピーダンスの変化量を測定することも出来る。但し、これらは別の測定モードとして取り扱うようにする。
特性測定装置3を測定電極5,15に電圧を印加する交流電源と測定器とで構成する場合に、交流電源から印加される好ましい電圧の値は、1〜60Vであり、より好ましい電圧の値は2〜30Vである。1Vより小さいと検出信号が小さくなってノイズの影響を受け易くなり、60Vより大きいと汎用ICの使用が出来なくなることがある。好ましい測定周波数は、300kHz以下である。
(除去工程)測定電極5,15間におけるインピーダンスの変化量の測定を終えたら、ヒータ用電源10によってヒータ7を稼動させ、電極間誘電体4の表面に堆積した粒子状物質11を酸化して除去する。
ヒータ用電源10が降圧チョッパ方式のスイッチング電源である場合に、ヒータ7に流される好ましい電流は0.8〜4A程度であり、好ましい使用電力は、48W以下である。
ヒータ7によって、粒子状物質11を酸化除去するときの好ましい時間は、1〜600秒であり、特に好ましい時間は、3〜120秒である。1秒より短いと粒子状物質11の酸化除去が不十分になることがあり、600秒より長いと無駄にエネルギーを消費することがある。
ヒータ7によって、電極間誘電体4の表面に集塵された粒子状物質11を酸化除去するときの好ましい温度は、500〜900℃であり、特に好ましい温度は、550〜700℃である。500℃より低いと粒子状物質が酸化除去され難くなることがあり、900℃より高いと素子の寿命が短くなることがある。
尚、既述のように、ヒータ7及びヒータ用電源10の代わりに、又はそれらと併用して、一の電極1と一対の測定電極5,15との間に電圧の印加をして、電極間誘電体4の表面に沿面放電をさせるための除去用電源を備え、その沿面放電によって、集塵された粒子状物質11を酸化除去することが出来る。この場合、沿面放電させるときの好ましい電圧は、電極間誘電体4の厚さによって異なるが、例えば2〜15kVである。好ましい使用電力は、10〜30Wである。沿面放電する好ましい時間は、1〜600秒であり、特に好ましい時間は、3〜120秒である。1秒より短いと粒子状物質11の酸化除去が不十分になることがあり、600秒より長いと無駄にエネルギーを消費することがある。
以上のように、集塵工程、測定工程、除去工程を繰り返すことによって、安定して、長期にわたり、粒子状物質11の検出を続けることが可能である。尚、ディーゼルエンジンの排気ガスを粒子状物質検出対象とする場合には、ディーゼルエンジンの回転数、トルク、排気ガスの流量、温度等の条件が、特定の状態となったときに放電を行うことが好ましい。これらは、ディーゼルエンジンの情報を信号として制御装置12へ入力するとともに、排気ガス管に温度計を設け、その情報を信号として制御装置12へ入力することによって、制御装置12(シーケンサ等)で判断をさせることが可能である。