JP4512325B2 - 露光装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、露光装置に係り、特に、光源から射出された光ビームにより記録媒体を走査して画像を形成する露光記録装置において解像度を切り換え可能な露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、外周面に感光材料(記録媒体)が装着されたドラムを主走査方向に回転させると共に、上記感光材料に記録すべき画像の画像データに応じて変調されたレーザビームを上記主走査方向と直交する副走査方向に走査させることで、2次元画像を上記感光材料に記録するようにした露光記録装置が用いられている。
【0003】
この種の露光記録装置において、解像度を低くして画像を記録するためには、感光材料表面におけるレーザビームのスポット径を拡大すると共に、副走査方向に対する記録ピッチを大きくするか、又はスポット径の大きさ及び記録ピッチは変更せずに、同一の画像データからなる画素を解像度を低くした分だけ繰り返し記録する方法が採られている。一方、解像度を高くして画像を記録する場合は、これと逆の方法が採られている。
【0004】
しかしながら、このようにしてレーザビームのスポット径を拡大、ないし縮小するためには、駆動機構を用いて光学系のレンズ等を駆動する必要があることから、装置が大型化すると共に、コストが上昇する、という問題点があった。また、同一の画像データからなる画素を解像度を低くした分だけ繰り返し記録することで解像度を低くする場合には、副走査方向に対する記録ピッチが一定であるため、記録速度を向上できない、という問題点があった。
【0005】
そこで、これらの問題点を解消するために、本発明の出願人による特許文献1に記載の技術では、光源から射出された光を複数に分割し、集光光学系による記録媒体上での集光点を、当該記録媒体の副走査方向に対して複数生成する複数集光点生成手段と、解像度に応じて副走査方向の記録間隔を制御する副走査制御手段と、を備えておき、光源から射出された光を集光光学系を介して記録媒体上に集光させて画像を記録する際に、記録画像の解像度に応じて、複数集光点生成手段により副走査方向に分割して生成される集光点の数を制御することでビームスポットの大きさを調整すると共に、副走査方向のビームスポットの記録間隔を調整することにより、解像度に応じた画像を効率的に記録することを可能としていた。
【0006】
なお、この技術では、上記複数集光点生成手段として、一軸性結晶により構成された偏光光学素子、又は偏角プリズムを適用していた。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−284206公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術において複数集光点生成手段として一軸性結晶により構成された偏光光学素子を適用した場合には、一軸性結晶は高価であるため高コストとなってしまう、という問題点があった。
【0009】
また、特許文献1に記載の技術において複数集光点生成手段として偏角プリズムを適用した場合には、記録画像の画質が悪くなる場合がある、という問題点があった。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載の技術において複数集光点生成手段として偏角プリズムを適用した場合には、一例として図14に示すように、偏角プリズムで分割され集光レンズで集光されたレーザビームの焦点位置から光軸方向(深度方向)前後にずれた位置におけるレーザビームのボケ方が光軸方向に対して非対称となる。
【0011】
これは、偏角プリズムにより分割した光を各々焦点位置の分割方向における異なる位置に集光レンズによって集光しているため、例えば焦点位置から光の入射側を見たときには分割された光が互いに離れていく状態となり、焦点位置から光の出射側を見たときには分割された光が接近して交差した後に離れていく状態となって生じる現象であり、この現象によって深度方向に対する記録媒体の配置位置の許容範囲が少なくなり、当該配置位置の深度方向へのずれが僅かであっても、記録媒体への記録画像の画質が悪化する場合があるのである。
【0012】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、アレイ屈折素子又はアレイ回折素子を用いて、記録画像の画質を低コストで向上させることができる露光装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の露光装置は、外周面に記録媒体が装着されたドラムを主走査方向に回転させると共に、前記記録媒体に記録すべき画像の画像データに応じて変調された光ビームを集光する露光ヘッドを主走査方向と直交する副走査方向に走査させることで、2次元画像を当該記録媒体に記録する露光装置であって、少なくとも主走査方向についてはブロードエリアで発光し、前記画像データに応じて変調された前記光ビームを射出する光源と、前記露光ヘッドに設けられ、前記光源から射出された前記光ビームを前記記録媒体上に集光する集光光学系と、前記露光ヘッドに設けられ、前記光源と前記記録媒体との間に配置されると共に、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本の前記光ビームを2つに分割する単位表面形状を有する2つの屈折部材を、前記光ビームの分割方向が副走査方向となるように、当該副走査方向に直交する主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状に構成されたアレイ屈折素子と、を備えたものである。
請求項1に記載の露光装置によれば、少なくとも主走査方向についてはブロードエリアで発光する光ビームを射出する光源から射出された光ビームが集光光学系によって記録媒体上に集光される際に、当該光ビームが本発明のアレイ屈折素子によって副走査方向に分割される。なお、上記光源には、各種半導体レーザが含まれる。また、上記2つの屈折部材は、各々入射された1本の光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することができるものであれば、必ずしも双方とも入射された光ビームを屈折させるものでなくてもよく、何れか一方は入射された光ビームの進行方向を変化させないものとすることもできる。
【0014】
このようにアレイ屈折素子を構成することによって、当該アレイ屈折素子を露光記録装置で用いたときに、各々2つに分割された光ビームは、各々アレイ対の数分の光で構成される。従って、アレイ対の数の集光ビームで1つの集光スポットを構成するので、分割された光ビームを集光レンズによって焦点位置でアレイ対の数ずつ集光スポットをずらして重ね合わせた場合、アレイ方向に対して焦点位置から光ビームの入射側を見たときと、焦点位置から光ビームの出射側を見たときとで、各光ビームのボケ方が光軸方向に対して略対称となり、この結果として上記露光記録装置における記録画像の画質を向上することができるようにしている。
【0015】
また、本発明のアレイ屈折素子は、光ビームを2つに分割することができるものであれば如何なる材質の材料でも構成することができるので、光ビームを偏光方向に応じて分離する場合に必要となる一軸性結晶を必ずしも用いる必要がなく、低コストに構成することができる。なお、本発明のアレイ屈折素子は、例えば板状部材に対する切削やエッチング等により一体整形することもできるし、本発明の屈折部材を光学用接着剤でアレイ状に接合することによって製作することもできる。
【0016】
このように、請求項1に記載の露光装置によれば、前記露光ヘッドに設けられ、前記光源と前記記録媒体との間に配置されると共に、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本の前記光ビームを2つに分割する単位表面形状を有する2つの屈折部材を、前記光ビームの分割方向が副走査方向となるように、当該副走査方向に直交する主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状に構成されたアレイ屈折素子を備えているので、集光位置でも点光源のときより広がったスポット径となり、アレイ状に形成された各単位表面形状の対から回折される強度の強い光スポットのずれを相対的に小さくできる。これにより、前記回折によって生成された当該光スポットも画像形成用に利用することができ、光ビームを効率よく利用することができる。また、上記回折光は主走査方向にずれた状態で出現するためシャープな線画像を形成することができ、この結果として記録画像の画質を向上させることができると共に、本発明のアレイ屈折素子は、一軸性結晶を用いる場合に比較して低コストで構成することができるので、この結果として装置を低コストで構成することができる。
【0017】
なお、本発明の露光装置にアレイ屈折素子を用いる場合において、前述のように当該アレイ屈折素子の各単位表面形状により各々2つに分割された光ビームを集光レンズによって焦点位置でアレイ対の数ずつ重ね合わせるようにするためには、当該アレイ屈折素子を、分割対象とする光ビーム(露光光)が略平行光束となる部位に配置するときには、分割後の光ビームを互いに異なる角度方向に出射する必要があり、当該光ビームが発散する部位又は収束する部位に配置するときには、分割後の光ビームを光軸が分割前の光ビームの光軸と平行となるようにする必要がある。
【0018】
そこで、本発明の露光装置は、請求項2記載の発明のように、前記単位表面形状を、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる角度方向に分割して出射する形状とするか、又は入射された1本の前記光ビームを光軸が当該光ビームの光軸と平行となるように分割して出射する形状とする形態とすることが好ましい。これによって、本発明の露光装置のアレイ屈折素子を、分割対象とする光ビームが略平行光束となる部位に対応できるようにすることや、分割対象とする光ビームが発散する部位又は収束する部位に対応できるようにすることができる。
ところで、光源から射出された光ビームは、集光光学系によりファーフィールドパターン(Far Field Pattern)のできる位置で一旦重なる。
そこで、請求項3記載の露光装置のように、本発明における前記アレイ屈折素子を、前記光源から射出された前記光ビームのファーフィールドパターンができる位置に配置することが好ましい。これによって、光源から射出された光ビームに対して、本発明のアレイ屈折素子を同様に作用させることができる。
さらに、請求項4記載の露光装置は、本発明の露光装置に対し、走査露光によって前記記録媒体上に形成される画像の解像度を示す解像度情報を入力する入力手段と、前記解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度である場合に前記アレイ屈折素子が前記光源から射出された光ビームの光軸上から退避され、前記解像度情報によって示される解像度が前記第1解像度より低い第2解像度である場合に前記アレイ屈折素子が前記光軸上に位置されるように当該アレイ屈折素子を移動させる移動手段と、を更に備えたものである。
請求項4に記載の露光装置によれば、走査露光によって記録媒体上に形成される画像の解像度を示す解像度情報が入力手段によって入力され、当該解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度である場合にアレイ屈折素子が光源から射出された光ビームの光軸上から退避され、解像度情報によって示される解像度が第1解像度より低い第2解像度である場合にアレイ屈折素子が上記光軸上に位置されるように当該アレイ屈折素子が移動手段によって移動される。
このように、請求項4に記載の露光装置によれば、走査露光によって記録媒体上に形成される画像の解像度を示す解像度情報を入力し、当該解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度である場合にアレイ屈折素子が光源から射出された光ビームの光軸上から退避され、当該解像度情報によって示される解像度が第1解像度より低い第2解像度である場合にアレイ屈折素子が上記光軸上に位置されるように当該アレイ屈折素子を移動しているので、解像度情報を入力するのみによって、記録媒体に画像を記録する際の解像度を容易に変更することができる。
なお、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の露光装置の好適な態様として、前記光源を、前記光ビームの分割方向に沿って複数配置するものを挙げることができる。このように、本発明の光源を前記分割方向に沿って複数配置し、各光源から射出された光ビームを各々アレイ屈折素子によって分割して記録媒体に導くように構成すれば、記録画像の画質を向上できるばかりでなく、画像を高速に記録することができる。
【0019】
一方、上記目的を達成するために、請求項5記載の露光装置は、外周面に記録媒体が装着されたドラムを主走査方向に回転させると共に、前記記録媒体に記録すべき画像の画像データに応じて変調された光ビームを集光する露光ヘッドを主走査方向と直交する副走査方向に走査させることで、2次元画像を当該記録媒体に記録する露光装置であって、少なくとも主走査方向についてはブロードエリアで発光し、前記画像データに応じて変調された前記光ビームを射出する光源と、前記露光ヘッドに設けられ、前記光源から射出された前記光ビームを前記記録媒体上に集光する集光光学系と、前記露光ヘッドに設けられ、前記光源と前記記録媒体との間に配置されると共に、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本の前記光ビームを2つに分割する単位表面形状を有する、少なくとも1つが回折部材とされた2つの屈折部材を、前記光ビームの分割方向が副走査方向となるように、当該副走査方向に直交する主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状に構成されたアレイ回折素子と、を備えたものである。
請求項5に記載の露光装置によれば、少なくとも主走査方向についてはブロードエリアで発光する、画像データに応じて変調された光ビームを射出する光源から射出された光ビームが集光光学系によって記録媒体上に集光される際に、当該光ビームが本発明のアレイ回折素子によって副走査方向に分割される。なお、上記光源には、各種半導体レーザが含まれる。なお、上記アレイ回折素子を構成する上記2つの屈折部材は、各々入射された1本の光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することができるものであれば、必ずしも双方とも入射された光ビームを屈折させるものでなくてもよく、何れか一方は入射された光ビームの進行方向を変化させないものとすることもできる。
【0020】
このようにアレイ回折素子を構成することによって、当該アレイ回折素子を露光記録装置で用いたときに、各々2つに分割された光ビームは、各々アレイ対の数分の光で構成される。従って、アレイ対の数の集光ビームで1つの集光スポットを構成するので、分割された光ビームを集光レンズによって焦点位置でアレイ対の数ずつ集光スポットをずらして重ね合わせた場合、アレイ方向に対して焦点位置から光ビームの入射側を見たときと、焦点位置から光ビームの出射側を見たときとで、各光ビームのボケ方が光軸方向に対して略対称となり、この結果として上記露光記録装置における記録画像の画質を向上することができるようにしている。
【0021】
また、本発明のアレイ回折素子は、光ビームを2つに分割することができるものであれば如何なる材質の材料でも構成することができるので、光ビームを偏光方向に応じて分離する場合に必要となる一軸性結晶を必ずしも用いる必要がなく、低コストに構成することができる。なお、本発明のアレイ回折素子は、例えば板状部材に対する切削やエッチング等により一体整形することもできるし、本発明の屈折部材を光学用接着剤でアレイ状に接合することによって製作することもできる。
【0022】
このように、請求項5に記載の露光装置によれば、前記露光ヘッドに設けられ、前記光源と前記記録媒体との間に配置されると共に、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本の前記光ビームを2つに分割する単位表面形状を有する、少なくとも1つが回折部材とされた2つの屈折部材を、前記光ビームの分割方向が副走査方向となるように、当該副走査方向に直交する主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状に構成されたアレイ回折素子を備えているので、集光位置でも点光源のときより広がったスポット径となり、アレイ状に形成された各単位表面形状の対から回折される強度の強い光スポットのずれを相対的に小さくできる。これにより、前記回折によって生成された当該光スポットも画像形成用に利用することができ、光ビームを効率よく利用することができる。また、上記回折光は主走査方向にずれた状態で出現するためシャープな線画像を形成することができ、この結果として記録画像の画質を向上させることができると共に、本発明のアレイ回折素子は、一軸性結晶を用いる場合に比較して低コストで構成することができるので、この結果として装置を低コストで構成することができる。
【0023】
なお、本発明の露光装置にアレイ回折素子を用いる場合において、前述のように当該アレイ回折素子の各単位表面形状により各々2つに分割された光ビームを集光レンズによって焦点位置でアレイ対の数ずつ重ね合わせるようにするためには、当該アレイ回折素子を、分割対象とする光ビーム(露光光)が略平行光束となる部位に配置するときには、分割後の光ビームを互いに異なる角度方向に出射する必要がある。
【0024】
そこで、本発明の露光装置は、請求項6記載の発明のように、前記単位表面形状を、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる角度方向に分割して出射する形状とする形態とすることが好ましい。これによって、本発明の露光装置のアレイ回折素子を、分割対象とする光ビームが略平行光束となる部位に対応できるようにすることができる。
【0029】
また、請求項7記載の露光装置のように、本発明における前記アレイ回折素子を、前記光源から射出された前記光ビームのファーフィールドパターンができる位置に配置することが好ましい。これによって、光源から射出された光ビームに対して、本発明のアレイ回折素子を同様に作用させることができる。
【0030】
一方、請求項8記載の露光装置は、本発明の露光装置に対し、走査露光によって前記記録媒体上に形成される画像の解像度を示す解像度情報を入力する入力手段と、前記解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度である場合に前記アレイ回折素子が前記光源から射出された前記光ビームの光軸上から退避され、前記解像度情報によって示される解像度が前記第1解像度より低い第2解像度である場合に前記アレイ回折素子が前記光軸上に位置されるように当該アレイ回折素子を移動させる移動手段と、を更に備えたものである。
【0031】
請求項に記載の露光装置によれば、走査露光によって記録媒体上に形成される画像の解像度を示す解像度情報が入力手段によって入力され、当該解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度である場合にアレイ回折素子が光源から射出された光ビームの光軸上から退避され、解像度情報によって示される解像度が第1解像度より低い第2解像度である場合にアレイ回折素子が上記光軸上に位置されるように当該アレイ回折素子が移動手段によって移動される。
【0032】
このように、請求項8に記載の露光装置によれば、走査露光によって記録媒体上に形成される画像の解像度を示す解像度情報を入力し、当該解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度である場合にアレイ回折素子が光源から射出された前記光ビームの光軸上から退避され、当該解像度情報によって示される解像度が第1解像度より低い第2解像度である場合にアレイ回折素子が上記光軸上に位置されるように当該アレイ回折素子を移動しているので、解像度情報を入力するのみによって、記録媒体に画像を記録する際の解像度を容易に変更することができる。
【0033】
なお、請求項5乃至請求項の何れか1項に記載の露光装置の好適な態様として、前記光源を、前記光ビームの分割方向に沿って複数配置するものを挙げることができる。このように、本発明の光源を前記分割方向に沿って複数配置し、各光源から射出された光ビームを各々アレイ回折素子によって分割して記録媒体に導くように構成すれば、記録画像の画質を向上できるばかりでなく、画像を高速に記録することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下では、本発明のアレイ屈折素子及び露光装置をレーザ記録装置に適用した場合について説明する。
【0035】
〔第1実施形態〕
まず、図1を参照して、本第1実施形態に係るレーザ記録装置10Aの構成について説明する。同図に示すように、本第1実施形態に係るレーザ記録装置10Aは、各々レーザビームを射出する3以上の奇数個(本実施の形態では、7個)の半導体レーザLDと、各半導体レーザLDから射出された各レーザビームを集光する露光ヘッド12と、画像が記録される記録フィルムFが装着されかつ当該記録フィルムFが主走査方向に移動するように回転駆動されるドラム14と、ボールネジ18を回転駆動させることによってボールネジ18上に配置された露光ヘッド12を上記主走査方向に直交する方向である副走査方向に移動させる副走査モータ16と、を含んで構成されている。なお、本実施の形態では、半導体レーザLDとして、図13(A)に示される強度分布からなる光ファイバーカップルド半導体レーザを適用している。
【0036】
一方、露光ヘッド12には、上記奇数個の半導体レーザLDから導波された各レーザビームを取り纏めて出射する横多モードのファイバーアレイ部30が備えられており、各半導体レーザLDから射出されたレーザビームは、各々横多モードの光ファイバー20によってファイバーアレイ部30まで案内される。なお、本実施の形態では、レーザビームを高出力とするために、コア径の比較的大きな多モード光ファイバーを光ファイバー20として用いている。
【0037】
図2には、ファイバーアレイ部30の図1矢印B方向に見た場合の構成が示されている。同図に示すように、本実施の形態に係るファイバーアレイ部30には、上面に半導体レーザLDと同数のV字溝が副走査方向に沿って隣接するように設けられた基台30Aが備えられると共に、各V字溝に対して光ファイバー20が1本ずつ嵌め込まれて構成されている。従って、ファイバーアレイ部30からは、各半導体レーザLDから射出された複数のレーザビームLが、副走査方向に沿った所定間隔毎に出射されることになる。
【0038】
なお、光源として各半導体レーザLDは一方向についてブロードバンドエリアで発光するものを用いてもよい。このときには、各半導体レーザLDから射出されたレーザビームLのブロードバンドエリア方向が主走査方向に一致するように配置する。
【0039】
また、露光ヘッド12には、ファイバーアレイ部30側より、コリメータレンズ32、アレイ屈折素子36、及び集光レンズ38が順に配列されている。
【0040】
更に、露光ヘッド12には、回転軸が図1矢印A方向に回転することにより、アレイ屈折素子36をレーザビームLの光路上に挿抜することができる素子移動モータ40が備えられている。
【0041】
本実施の形態に係るアレイ屈折素子36は、図3及び図7(B)に示すように、各々入射されたレーザビームLを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該レーザビームLを2つに分割する単位表面形状を有する2つの屈折部材a1及び屈折部材b1を、レーザビームLの分割方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に対単位でアレイ状に2組並べた形状となるように構成したものであり、レーザビームLの分割方向が副走査方向に一致し、かつコリメータレンズ32によるファーフィールドパターンができる位置に挿抜可能なように素子移動モータ40によって位置決めされる。なお、本実施の形態では、アレイ屈折素子36を光学硝子を用いて構成している。
【0042】
次に、図4を参照して、本実施の形態に係るレーザ記録装置10Aの制御系の構成について説明する。同図に示すように、当該制御系は、画像データに応じて半導体レーザLDを駆動するLD駆動回路54と、素子移動モータ40を駆動する素子移動モータ駆動回路56と、副走査モータ16を駆動する副走査モータ駆動回路58と、LD駆動回路54、素子移動モータ駆動回路56及び副走査モータ駆動回路58を制御する制御回路52と、を備えている。ここで、制御回路52には、記録フィルムFに記録する画像を示す画像データ、及び画像記録の解像度を示す解像度データが供給される。
【0043】
アレイ屈折素子36が本発明のアレイ屈折素子に、半導体レーザLDが本発明の光源に、コリメータレンズ32及び集光レンズ38が本発明の集光光学系に、素子移動モータ40が本発明の移動手段に、記録フィルムFが本発明の記録媒体に、各々相当する。
【0044】
次に、以上のように構成されたレーザ記録装置10Aの作用について、図5に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、ここでは、アレイ屈折素子36をレーザビームLの光路上に位置させない場合の、すなわちレーザビームLを分割させない場合の各レーザビームLによる記録フィルムF上の高解像度側での副走査方向の走査線ピッチ間隔をεとした場合、ビームスポットの間隔が2・εに設定されており、アレイ屈折素子36により分離された2つのレーザビームの記録フィルムF上のアレイ屈折素子36によるビームスポットのずらし量がεに設定されていることを前提に説明する。
【0045】
まず、作業者は、レーザ記録装置10Aに対して記録する画像の解像度Sを示す解像度データを入力する(ステップ100)。この解像度データ、及び記録すべき画像の画像データは制御回路52に供給され、制御回路52は、これらのデータに基づいて調整された信号をLD駆動回路54、素子移動モータ駆動回路56及び副走査モータ駆動回路58に供給する。なお、本実施の形態では、上記解像度SとしてK0(dpi)と2・K0(dpi)の2種類の解像度で画像を記録できるものとして以下の説明を行う。
【0046】
作業者によって入力された解像度が2・K0(dpi)である場合(ステップ102で肯定判定された場合)、素子移動モータ駆動回路56は素子移動モータ40を駆動し、アレイ屈折素子36がレーザビームLの光路上に位置しないようにアレイ屈折素子36を移動させる(ステップ104)。また、この場合、副走査モータ駆動回路58は副走査モータ16による露光ヘッド12の副走査方向に対する送り間隔Wを次のように設定する(ステップ106)。
【0047】
【数1】
Figure 0004512325
【0048】
但し、Nは半導体レーザLDの数(本実施の形態では‘7’)である。
【0049】
すなわち、解像度が2・K0(dpi)である場合、アレイ屈折素子36をレーザビームLの光路上から外すことによって、レーザビームLを副走査方向に分割しないようにしており、これによってレーザビームLを分割する場合の2倍の解像度を実現している。
【0050】
上述のようにアレイ屈折素子36の移動及び副走査方向に対する送り間隔の設定が終了すると、LD駆動回路54は、画像データに基づき、記録濃度に合わせて設定されたデータに応じた発光量となるように各半導体レーザLDの駆動を制御する(ステップ108)。
【0051】
各半導体レーザLDから射出されたレーザビームLは、コリメータレンズ32によって平行光束とされた後、集光レンズ38を介してドラム14の記録フィルムFに集光される。
【0052】
この場合、記録フィルムF上には、各々図13(A)に示す強度分布からなるビームスポットS1〜S7(図6(A))が形成される。このビームスポットS1〜S7は、図6(A)に示すように、露光ヘッド12が副走査方向に送り間隔Wのピッチで送られると共に、ドラム14が主走査方向に回転されることにより、解像度が2・K0(dpi)となる2次元画像が記録フィルムF上に形成される(ステップ110)。
【0053】
次に、解像度が2・K0(dpi)からK0(dpi)に変更された場合(ステップ102で否定判定された場合)について説明する。この場合、素子移動モータ駆動回路56は素子移動モータ40を駆動し、アレイ屈折素子36がレーザビームLの光路上に位置するようにアレイ屈折素子36を移動させる(ステップ112)。また、この場合、副走査モータ駆動回路58は副走査モータ16による露光ヘッド12の副走査方向に対する送り間隔W’を次のように設定する(ステップ114)。
【0054】
【数2】
Figure 0004512325
【0055】
すなわち、解像度がK0(dpi)である場合、アレイ屈折素子36をレーザビームLの光路上に位置させることによって、アレイ屈折素子36に入射されたレーザビームLを副走査方向に複数(本実施の形態では‘2’)のレーザビームに分割するようにしており、これによってレーザビームLを分割しない場合の2分の1の解像度を実現している。
【0056】
上述のようにアレイ屈折素子36の移動及び副走査方向に対する送り間隔の設定が終了すると、LD駆動回路54は、画像データに基づき、記録濃度に合わせて設定されたデータに応じた発光量となるように各半導体レーザLDの駆動を制御する(ステップ116)。
【0057】
各半導体レーザLDから射出されたレーザビームLは、コリメータレンズ32によって平行光束とされた後、アレイ屈折素子36に供給され、各レーザビームL毎に主走査方向に4つに分割(ビームシェアリング)される。そして、この4分割されたレーザビームは、集光レンズ38を介してドラム14の記録フィルムFに、各レーザビーム毎に副走査方向に2つに分割された状態で集光される。
【0058】
すなわち、図7(A)に示すように、各レーザビームLの光軸上のレーザビームLが平行光束となる位置で、かつファーフィールドパターンのできる位置近傍にアレイ屈折素子36を配置した場合、図7(B)に示すように、各レーザビームLはアレイ屈折素子36によって一旦4つに分割され、図7(A)に示すように、アレイ屈折素子36により4つに分割された各レーザビームが集光レンズ38で集光されることによって、被走査面上で副走査方向に2つずつ重ね合わされ、結果的に2つに分割された状態になる。
【0059】
このとき、アレイ対の数の集光ビームで1つの集光スポットを構成するので、主走査方向に対して焦点位置からレーザビームの入射側を見たときと、焦点位置からレーザビームの出射側を見たときとで、各レーザビームのボケ方が光軸方向に対して略対称となり、この結果としてレーザ記録装置10Aにおける記録画像の画質を向上することができる。
【0060】
この場合、記録フィルムF上には、図13(B)に示す2つの強度分布、すなわち2つに分割されたレーザビームの各強度分布が副走査方向に合成された状態の強度分布からなるビームスポットS1’〜S7’(図6(B))が形成される。
【0061】
このビームスポットS1’〜S7’は、図6(B)に示すように、露光ヘッド12が副走査方向に送り間隔W’のピッチで送られると共に、ドラム14が主走査方向に回転されることにより、解像度がK0(dpi)となる2次元画像が記録フィルムF上に形成される(ステップ110)。
【0062】
このように、記録画像の解像度を2・K0(dpi)からK0(dpi)に変更した場合、アレイ屈折素子36をレーザビームLの光路上に挿入するだけでビームスポットS1〜S7をビームスポットS1’〜S7’に容易に拡大することができ、しかも、副走査速度が高速化されるので、高速で画像記録を行うことが可能となる。
【0063】
同様にして、解像度をK0(dpi)から2・K0(dpi)に変更することができる。
【0064】
上記ステップ100の処理が本発明の入力手段に相当する。
【0065】
以上詳細に説明したように、本第1実施形態に係るアレイ屈折素子36は、各々入射された1本のレーザビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本のレーザビームを2つに分割する単位表面形状を有する2つの屈折部材a1及びb1を、上記レーザビームの分割方向と直交する方向に対単位でアレイ状に並べた形状となるように構成しているので、レーザ記録装置10Aで用いられた際における記録画像の画質を低コストで向上させることができる。
【0066】
また、本第1実施形態に係るアレイ屈折素子36は、本発明の単位表面形状として、入射された1本のレーザビームを互いに異なる角度方向に分割して出射する形状を適用しているので、アレイ屈折素子36を、分割対象とするレーザビームが略平行光束となる部位に対応できるようにすることができる。
【0067】
更に、本第1実施形態に係るアレイ屈折素子36は、光学硝子によって構成しているので、当該アレイ屈折素子36を一軸性結晶により構成する場合に比較して格段に低コスト化することができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、アレイ屈折素子36として、図8(A)に示すように、平面視長方形状の屈折部材a1及びレーザビームの入射側に副走査方向の一端部から他端部にかけて直線状の傾斜面を有する屈折部材b1を、レーザビームの分割方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に対単位でアレイ状に並べた形状となるように構成されたものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各々入射された1本の光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本の光ビームを2つに分割する単位表面形状を有する2つの屈折部材を、上記光ビームの分割方向と直交する方向に対単位でアレイ状に並べた形状となるように構成されているものであれば、如何なるものも適用することができる。
【0069】
図8(B)〜図8(D)には、本実施の形態で示したアレイ屈折素子36と同様に適用できるアレイ屈折素子又はアレイ回折素子の形状を規定する2つの屈折部材の形状例(平面図)が示されている。図8(B)に示したものは、レーザビームの入射側に副走査方向の一端部から他端部にかけて直線状の傾斜面を有する屈折部材a2、及びレーザビームの入射側に副走査方向の他端部から一端部にかけて直線状の傾斜面(傾斜方向が屈折部材a2の傾斜面とは逆となる傾斜面)を有する屈折部材b2の例であり、これらの屈折部材を主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状となるように構成することにより本発明のアレイ屈折素子を得ることができる。このアレイ屈折素子によれば、入射されたレーザビームを、当該レーザビームの光軸に対して対象となる方向に分割して射出することができる。
【0070】
また、図8(C)に示したものは、レーザビームの入射側に副走査方向の一端部側から他端部側に向けた直線状の傾斜面を複数有する屈折部材a3、及びレーザビームの入射側に副走査方向の他端部側から一端部側に向けた直線状の傾斜面(傾斜方向が屈折部材a3の傾斜面とは逆となる傾斜面)を複数有する屈折部材b3の例であり、これらの屈折部材を主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状となるように構成することによっても本発明のアレイ屈折素子を得ることができる。このアレイ屈折素子によれば、図8(B)に示したアレイ屈折素子と同様に、入射されたレーザビームを、当該レーザビームの光軸に対して対象となる方向に分割して射出することができる。
【0071】
更に、図8(D)に示したものは、レーザビームの入射側に副走査方向の他端部側から一端部側に向けた直線状の傾斜面を多数有する回折部材a4、及び平面視長方形状の屈折部材b4の例であり、これらの回折部材及び屈折部材を主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状となるように構成することによっても本発明のアレイ回折素子を得ることができる。但し、各段差の高さは、回折部材の屈折率をn、空気の屈折率を1、光の波長をλとしたとき、λ/(n−1)の整数倍になるようにする。このアレイ回折素子によれば、入射されたレーザビームを、当該レーザビームの光軸方向と平行となる方向と、当該光軸から副走査方向に徐々に離間する方向とに分割して射出することができる。
【0072】
なお、ここでは、アレイ回折素子を、回折部材及び屈折部材の双方を用いて構成した場合について説明したが、屈折部材b4を回折部材にすることにより回折部材のみで構成することもできるし、回折部材a4を屈折部材にすると共に、屈折部材b4を回折部材として構成することもできる。
【0073】
また、図8に示した例では、屈折部材又は回折部材の傾斜面を全てレーザビームの入射側に設けた場合について示したが、同様の傾斜面をレーザビームの出射側に設ける形態とすることもできる。これらのアレイ屈折素子やアレイ回折素子でも、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0074】
ここで、本実施の形態に係るアレイ屈折素子又はアレイ回折素子の製造方法の具体例について説明する。当該アレイ屈折素子又はアレイ回折素子の製造方法としては、板状の光学硝子に対して図8に示されるような傾斜面を切削により形成することによって製造する方法や、当該傾斜面を板状の光学硝子に対してバイナリ・オプティクスと呼ばれる手法により形成することによって製造する方法等を例示することができる。ここでは、アレイ回折素子をバイナリ・オプティクスにより製造する方法について、図9を参照しつつ説明する。また、図9では、一例として、図8(D)に示される形状の回折部材をレーザビームの分割方向と直交する方向にアレイ状に並べた形状となるように構成されたアレイ回折素子を製造する場合について図示している。
【0075】
まず、図9(A)に示すように、所定板厚の板状硝子GLの一方の表面(以下、「加工面」という。)全域をマスクし、次に、図9(B)に示すように、当該マスクの一部領域に光を照射して、光の照射された当該領域のマスクを除去し、次に、図9(C)に示すように、当該領域をエッチングによって板厚方向に所定深さだけ掘り下げて凹部を形成し、更に、図9(D)に示すように、板状硝子GLの加工面全域に残されたマスクを全て除去する。
【0076】
その後、図9(E)に示すように、板状硝子GLの加工面とエッチングにより形成された凹部の底面とをマスクし、次に、図9(F)に示すように、各マスクの同一側端部(図9の場合は左端部)から当該マスクの中心位置までの領域に光を照射して光の照射された領域を除去し、次に、図9(G)に示すように、当該領域をエッチングによって板厚方向に所定深さだけ掘り下げ、更に、図9(H)に示すように、板状硝子GLの加工面全域に残されたマスクを全て除去する。
【0077】
以上の工程により、板状硝子GLの加工面には断面視階段状の凹部を形成することができ、以下、図9(E)〜図9(H)に示される工程を繰り返し行うことによって、当該加工面に傾斜面を形成することができる。
【0078】
このようなバイナリ・オプティクスにより形成される階段状の凹部の段数をレベル(図9(H)に示される状態は4レベル。)と呼んでいるが、理論的に、当該凹部に形成された傾斜面により所望の方向に回折される光の割合は、8レベルの傾斜面の場合で約95%、16レベルの傾斜面の場合で約98.7%となる。従って、16レベル程度の加工でも、十分実用に耐え得るアレイ回折素子を製造することができると考えられる。
【0079】
なお、本実施の形態では、光学硝子を用いてアレイ屈折素子を一体整形する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図8(A)〜図8(D)に各々示される形状の屈折部材a1〜a3或いは回折部材a4、及び屈折部材b1〜b4を対単位でアレイ状に並べて接着することによりアレイ屈折素子又はアレイ回折素子を構成する形態とすることができることは言うまでもない。この場合にも、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0080】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、本発明のアレイ屈折素子を光が略平行光束となる部位に配設し、入射光を互いに異なる角度に分割して出射するものとした場合の形態について説明したが、本第2実施形態では、アレイ屈折素子を光が収束する部位に配設し、入射光を光軸が当該入射光の光軸と平行となるように分割して出射するものとした場合の形態について説明する。
【0081】
まず、図10を参照して、第2実施形態に係るレーザ記録装置10Bの構成について説明する。なお、同図における図1に示されるレーザ記録装置10Aと同一の構成要素には図1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
同図に示すように、本第2実施形態に係るレーザ記録装置10Bは、アレイ屈折素子36に代えてアレイ屈折素子36’を用いている点と、アレイ屈折素子36’を集光レンズ38と記録フィルムFとの間のレーザビームLの収束する部位に配設した点のみが、上記第1実施形態に係るレーザ記録装置10Aと相違している。
【0083】
本第2実施形態に係るアレイ屈折素子36’は、図11(B)及び図11(C)に示すように、各々入射されたレーザビームLを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該レーザビームLを2つに分割する単位表面形状を有する2枚の屈折部材c(本実施の形態では、板状の光学硝子。)を、レーザビームLの分割方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に対単位でアレイ状に2組並べた形状となるように構成したものであり、レーザビームLの分割方向が副走査方向に一致するように素子移動モータ40によって位置決めされる。
【0084】
なお、本実施の形態に係るアレイ屈折素子36’は、図11(B)及び図11(C)に示すように、所定板厚の4枚の光学硝子を、各々所定方向(同図では、副走査方向)に対して一方向及び当該一方向と逆方向に交互に所定角度傾斜するように、各々の上記所定方向中心位置で光学用接着剤を用いて接着することにより構成されている。ここで、上記光学用接着剤としては、バルサム、エポキシ系接着剤、シリコン系接着剤等を用いることができる。また、一例として、分割されたレーザビームLの被走査面におけるビームスポットの間隔を11.6(μm)とし、上記光学硝子の板厚が0.15(mm)である場合の上記所定角度は6°である。
【0085】
解像度をK0(dpi)に設定した場合において、各半導体レーザLDから射出されたレーザビームLは、コリメータレンズ32によって平行光束とされた後、図11(A)に示すように集光レンズ38に供給されて集光される。
【0086】
集光レンズ38によって集光されたレーザビームLは、アレイ屈折素子36’に供給され、図11(C)に示すように主走査方向に4つに分割(ビームシェアリング)されると共に、アレイ屈折素子36’の単位表面形状に対応する一対の部位の各々から、分割された2つのレーザビームD1、D2の光軸がレーザビームLの光軸と平行となるように出射される。そして、この4分割されたレーザビームは、ドラム14に設けられた記録フィルムFの被走査面上で副走査方向に2つずつ重ね合わされ、結果的に各レーザビームL毎に副走査方向に2つに分割された状態で集光される。
【0087】
このとき、アレイ対の数の集光ビームで1つの集光スポットを構成するので、主走査方向に対して焦点位置からレーザビームの入射側を見たときと、焦点位置からレーザビームの出射側を見たときとで、各レーザビームのボケ方が光軸方向に対して対称となり、この結果としてレーザ記録装置10Bにおける記録画像の画質を向上することができる。
【0088】
この場合、記録フィルムF上には、図13(B)に示す2つの強度分布、すなわち2つに分割されたレーザビームの各強度分布が副走査方向に合成された状態の強度分布からなるビームスポットS1’〜S7’(図6(B))が形成される。
【0089】
このビームスポットS1’〜S7’は、図6(B)に示すように、露光ヘッド12が副走査方向に送り間隔W’のピッチで送られると共に、ドラム14が主走査方向に回転されることにより、解像度がK0(dpi)となる2次元画像が記録フィルムF上に形成される。
【0090】
一方、解像度が2・K0(dpi)の画像を形成する場合は、アレイ屈折素子36’をレーザビームLの光路上に位置しないように移動させ、図6(A)に示すビームスポットS1〜S7を得るように制御すればよい。
【0091】
以上詳細に説明したように、本第2実施形態に係るアレイ屈折素子36’は、各々入射された1本のレーザビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本のレーザビームを2つに分割する単位表面形状を有する2枚の屈折部材cを、上記レーザビームの分割方向と直交する方向に対単位でアレイ状に並べた形状となるように構成しているので、レーザ記録装置10Bで用いられた際における記録画像の画質を低コストで向上させることができる。
【0092】
また、本第2実施形態に係るアレイ屈折素子36’は、上記単位表面形状を、入射された1本のレーザビームを光軸が当該レーザビームの光軸と平行となるように分割して出射する形状としているので、分割対象とするレーザビームが発散する部位又は収束する部位に対応することができる。
【0093】
更に、上記各実施形態に係るアレイ屈折素子36、36’は、屈折部材を主走査方向にアレイ状に並べた形状となるように構成しているので、屈折部材を副走査方向に並べた形状となるように構成した場合に比較して、形成される画像の画質を向上させることができると共に、レーザビームを効率よく利用することができる。
【0094】
すなわち、屈折部材或いは回折部材をアレイ状に並べた形状では、各部材の接合部において回折光が発生する。一例として、図12(A)に示す実施形態にかかわるアレイ屈折素子では、屈折部材をアレイ状に並べた形状となるように構成しているので、上記接合部において回折される光は、理論的には、0次光の光強度に対して一次回折光は約40%もの光強度を有する。この場合、図12(B)に示すように、光源のブロードエリア方向を少なくとも主走査方向にとることにより、被走査面での主走査方向の0次のスポット径に対し前記主走査方向に一次で回折される光のスポット位置のずれを相対的に小さくすることができるため、これにより、当該回折光を主走査方向の画像形成用に利用することができ、レーザービームを効率よく利用することができる。この回折光を利用できることは非常に効果的である。
【0095】
また、この場合の被走査面での副走査方向の光強度分布は、一例として図12(B)の下図に示すものとなるのに対し、屈折部材を副走査方向に並べた形状となるようにアレイ屈折素子を構成した場合の回折光は、ビームスポットの位置から副走査方向にずれた状態で出現するため、図12(B)に示す状態のような副走査方向の光強度分布両端のエッジ部をシャープなままに維持することができない。これに対し、主走査方向にアレイ状に並べた形状となるようにアレイ屈折素子を構成することでシャープな線画像を形成することができ、当該線画像の線幅が変動しにくくなり、この結果として画質を向上させることができる。
【0096】
一方、上記各実施形態に係るレーザ記録装置10A、10Bでは、アレイ屈折素子を、ファイバーアレイ部30と記録フィルムFとの間で、かつアレイ方向が当該レーザビームのブロードエリア方向と平行となるように配置しているので、当該レーザビームの焦点位置から光軸方向(深度方向)前後にずれた位置における当該レーザビームのボケ方が光軸方向に対して対称となるようにでき、この結果として記録画像の画質を向上することができると共に、アレイ屈折素子は、一軸性結晶を用いる場合に比較して低コストで構成することができるので、この結果として装置を低コストで構成することができる。
【0097】
また、上記各実施形態に係るレーザ記録装置10A、10Bでは、アレイ屈折素子を、レーザビームのファーフィールドパターンができる位置に配置しているので、各半導体レーザLDから射出されたレーザビームLの全てに対して、アレイ屈折素子を同様に作用させることができる。
【0098】
また、上記各実施形態に係るレーザ記録装置10A、10Bでは、走査露光によって記録フィルムF上に形成される画像の解像度を示す解像度情報(上記各実施形態の「解像度データ」に相当。)を入力し、当該解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度(上記各実施形態では、2・K0(dpi))である場合にアレイ屈折素子が半導体レーザLDから射出されたレーザビームの光軸上から退避され、当該解像度情報によって示される解像度が第1解像度より低い第2解像度(上記各実施形態では、K0(dpi))である場合にアレイ屈折素子が上記光軸上に位置されるように当該アレイ屈折素子を移動しているので、解像度情報を入力するのみによって、記録フィルムFに画像を記録する際の解像度を容易に変更することができる。
【0099】
更に、上記各実施形態に係るレーザ記録装置10A、10Bでは、半導体レーザLDをアレイ屈折素子によるレーザビームLの分割方向に沿って複数配置し、各半導体レーザLDから射出されたレーザビームLを各々アレイ屈折素子によって分割して記録フィルムFに導くように構成しているので、画像を高速に記録することができる。
【0100】
なお、上記第2実施形態では、アレイ屈折素子36’をレーザビームが集光する部位に配設した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、レーザビームが発散する部位、すなわち、ファイバーアレイ部30とコリメータレンズ32との間に配設する形態とすることもできる。この場合も、上記第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0101】
また、上記各実施形態では、本発明をマルチビームスキャンを行うレーザ記録装置10A、10Bに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、光源が1つの半導体レーザで構成されたシングルビームスキャンを行うレーザ記録装置に適用することもできる。この場合も、上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0102】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係るアレイ屈折素子及びアレイ回折素子によれば、各々入射された1本の光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本の光ビームを2つに分割する単位表面形状を有する2つの屈折部材を、上記光ビームの分割方向と直交する方向に対単位でアレイ状に並べた形状となるように構成しているので、露光記録装置で用いられた際における記録画像の画質を低コストで向上させることができる、という効果が得られる。
【0103】
また、本発明に係る露光装置によれば、本発明のアレイ屈折素子又はアレイ回折素子を、光源と記録媒体との間で、かつアレイ方向が光源から射出された光ビームのブロードエリア方向と略平行となるように配置しているので、当該光ビームの焦点位置から光軸方向(深度方向)前後にずれた位置における当該光ビームのボケ方が光軸方向に対して対称となるようにでき、この結果として記録画像の画質を向上させることができると共に、本発明のアレイ屈折素子及びアレイ回折素子は、一軸性結晶を用いる場合に比較して低コストで構成することができるので、この結果として装置を低コストで構成することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るレーザ記録装置10Aの概略構成図(平面図)である。
【図2】実施の形態に係るファイバーアレイ部30の概略構成図(側面図)である。
【図3】第1実施形態に係るアレイ屈折素子36の構成を示す概略構成図(平面図)である。
【図4】実施の形態に係るレーザ記録装置10の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】解像度に応じて画像記録を行う場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係るレーザ記録装置10による記録フィルムF上でのビームスポットの状態を示す概略図である。
【図7】第1実施形態に係るレーザ記録装置10Aの作用及びアレイ屈折素子36の構成の説明に供する概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は斜視図である。
【図8】本発明のアレイ屈折素子又はアレイ回折素子の形状を規定する2つの屈折部材の形状例を示す平面図である。
【図9】本発明のアレイ回折素子のバイナリ・オプティクスによる製造方法の説明に供する断面図である。
【図10】第2実施形態に係るレーザ記録装置10Bの概略構成図(平面図)である。
【図11】(A)は第2実施形態に係るレーザ記録装置10Bの作用の説明に供する概略図(平面図)であり、(B)及び(C)は第2実施形態に係るアレイ屈折素子36’の構成及び作用の説明に供する概略図((B)は平面図、(C)は側面図)である。
【図12】各実施の形態に係るアレイ屈折素子の効果の説明に供する説明図である。
【図13】集光点におけるレーザビームの強度分布の状態例を示すグラフである。
【図14】従来技術の問題点の説明に供する概略図である。
【符号の説明】
10A、10B レーザ記録装置
12 露光ヘッド
14 ドラム
16 副走査モータ
20 光ファイバー
30 ファイバーアレイ部
32 コリメータレンズ(集光光学系)
36、36’ アレイ屈折素子
38 集光レンズ(集光光学系)
40 素子移動モータ(移動手段)
L レーザビーム
LD 半導体レーザ(光源)
F 記録フィルム(記録媒体)

Claims (8)

  1. 外周面に記録媒体が装着されたドラムを主走査方向に回転させると共に、前記記録媒体に記録すべき画像の画像データに応じて変調された光ビームを集光する露光ヘッドを主走査方向と直交する副走査方向に走査させることで、2次元画像を当該記録媒体に記録する露光装置であって、
    少なくとも主走査方向についてはブロードエリアで発光し、前記画像データに応じて変調された前記光ビームを射出する光源と、
    前記露光ヘッドに設けられ、前記光源から射出された前記光ビームを前記記録媒体上に集光する集光光学系と、
    前記露光ヘッドに設けられ、前記光源と前記記録媒体との間に配置されると共に、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本の前記光ビームを2つに分割する単位表面形状を有する2つの屈折部材を、前記光ビームの分割方向が副走査方向となるように、当該副走査方向に直交する主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状に構成されたアレイ屈折素子と、
    を備えた露光装置。
  2. 前記単位表面形状を、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる角度方向に分割して出射する形状とするか、又は入射された1本の前記光ビームを光軸が当該光ビームの光軸と平行となるように分割して出射する形状とした
    請求項1記載の露光装置。
  3. 前記アレイ屈折素子を、前記光源から射出された前記光ビームのファーフィールドパターンができる位置に配置した
    請求項1又は2記載の露光装置。
  4. 走査露光によって前記記録媒体上に形成される画像の解像度を示す解像度情報を入力する入力手段と、
    前記解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度である場合に前記アレイ屈折素子が前記光源から射出された前記光ビームの光軸上から退避され、前記解像度情報によって示される解像度が前記第1解像度より低い第2解像度である場合に前記アレイ屈折素子が前記光軸上に位置されるように当該アレイ屈折素子を移動させる移動手段と、
    を更に備えた請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の露光装置。
  5. 外周面に記録媒体が装着されたドラムを主走査方向に回転させると共に、前記記録媒体に記録すべき画像の画像データに応じて変調された光ビームを集光する露光ヘッドを主走査方向と直交する副走査方向に走査させることで、2次元画像を当該記録媒体に記録する露光装置であって、
    少なくとも主走査方向についてはブロードエリアで発光し、前記画像データに応じて変調された前記光ビームを射出する光源と、
    前記露光ヘッドに設けられ、前記光源から射出された前記光ビームを前記記録媒体上に集光する集光光学系と、
    前記露光ヘッドに設けられ、前記光源と前記記録媒体との間に配置されると共に、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる位置に向けて出射することにより当該1本の前記光ビームを2つに分割する単位表面形状を有する、少なくとも1つが回折部材とされた2つの屈折部材を、前記光ビームの分割方向が副走査方向となるように、当該副走査方向に直交する主走査方向に対単位でアレイ状に並べた形状に構成されたアレイ回折素子と、
    を備えた露光装置。
  6. 前記単位表面形状を、入射された1本の前記光ビームを互いに異なる角度方向に分割して出射する形状とした
    請求項5記載の露光装置。
  7. 前記アレイ回折素子を、前記光源から射出された前記光ビームのファーフィールドパターンができる位置に配置した
    請求項5又は請求項6記載の露光装置。
  8. 走査露光によって前記記録媒体上に形成される画像の解像度を示す解像度情報を入力する入力手段と、
    前記解像度情報によって示される解像度が予め定められた第1解像度である場合に前記アレイ回折素子が前記光源から射出された前記光ビームの光軸上から退避され、前記解像度情報によって示される解像度が前記第1解像度より低い第2解像度である場合に前記アレイ回折素子が前記光軸上に位置されるように当該アレイ回折素子を移動させる移動手段と、
    を更に備えた請求項5乃至請求項7の何れか1項記載の露光装置。
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