JP4512253B2 - スピニングリールのスプール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプール、特に、釣り糸を係止するための釣糸係止部を有するスピニングリールのスプールに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にスピニングリールは、ハンドルを回転自在に支持するリール本体と、ロータと、スプールとを備えている。スピニングリールのスプールは、リール本体に対して前後移動自在であり、釣り糸が巻かれる糸巻胴部と、糸巻胴部の前端に配置された大径のフランジ部と、糸巻胴部の後方に一体で形成されたスカート部とを有している。スカート部には糸巻胴部に巻かれた釣り糸を係止するための釣糸係止部が設けられている。
【0003】
このような釣糸係止部は、糸巻胴部に巻かれた釣り糸の先端部分を係止し、釣り糸が糸巻胴部からばらけないようにするためのものである。この種の釣糸係止部は、たとえば合成樹脂製の係止部と、係止部と一体成形された板状の取付部とを有している。係止部は、たとえばスカート部の外周面に沿って露出し、スカート部と僅かな隙間をあけて後方側に開口するように配置されている。
【0004】
この釣糸係止部を用いて釣り糸を係止するには、釣人が係止部を持ち上げて開口を広げ、釣り糸の先端部を係止部とスカート部との隙間に挟み込むようにして係止する。この場合は、係止部が合成樹脂によって形成されているので、合成樹脂の弾性力によって、係止された釣り糸が容易に外れないようになっている。このため、係止された釣り糸を外すには、釣人が係止部を持ち上げ、釣り糸が係止される方向と逆方向に引っ張ることにより釣り糸の係止を解除する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなスプールにおいて、たとえばキャスティング長さを決定するために釣り糸の中間部分を係止する釣法が知られている。この場合、まず所望のキャスティング長さとなるように釣り糸の中間部分を係止部に係止し、残りの釣り糸を巻き付ける。そして、ベールを開いてキャスティングを行うと、所望のキャスティング長さだけ釣り糸が繰り出され、この釣り糸の中間部分の係止が維持される。一方、魚等がかかって係止部に係止された釣り糸に大きなテンションが生じたときには、ラインローラを経由して釣り糸が繰り出されるときに作用する張力により係止部から釣り糸が自然に外れる必要がある。
【0006】
しかし、前記従来の釣糸係止部を用いると、釣人が釣り糸の係止解除を行わなければならない。このため、釣り糸の中間部分を係止する釣法を行う際、釣り糸が自然に外れないので、不便である。
【0007】
本発明の課題は、釣り糸の中間部分を係止できる利便性のよいスプールを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るスピニングリールのスプールは、リール本体に対して前後移動自在かつベールの回転によりラインローラを経由して釣り糸が巻き付けられるスピニングリールのスプールであって、外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、糸巻胴部の後端部に設けられたスカート部と、スカート部の外周において釣り糸を周方向に沿って係止しラインローラを経由して釣り糸が繰り出されるときに作用する張力により釣り糸の係止が解除される釣糸係止部とを備えている。釣糸係止部の釣り糸が係止される部分の前後方向長さは、釣糸係止部の釣り糸が係止される部分の周方向長さより短くなるように形成されている。
【0009】
このようなスプールには、たとえば釣り糸の中間部分を係止する釣糸係止部が設けられている。この釣糸係止部は、釣り糸の中間部分を係止した際、ラインローラを経由して釣り糸が繰り出されるときに大きなテンションが作用すると、釣糸係止部に係止された釣り糸が容易に外れるように構成されている。このように、ラインローラを経由して釣り糸が繰り出されるときに作用する張力により釣糸係止部から釣り糸が自然に外れるので、釣り糸の中間部分を係止することが可能な利便性のよいスプールを提供することができる。さらに、この場合、釣り糸の係止部分が短くなるので、釣糸係止部に係止された釣り糸が外れやすくなる。
【0010】
発明2に係るスプールは、発明1のスプールにおいて、釣糸係止部の先端部は略円弧状に形成されている。この場合、釣糸係止部の先端部は略半円等の略円弧状に形成されているので、釣糸係止部に係止された釣り糸が外れやすくなる。
【0011】
発明3に係るスプールは、発明1又は2のスプールにおいて、釣り糸が釣糸係止部に進入するのを防止する釣糸進入防止部をさらに備えている。この場合、たとえば釣糸係止部に対向するように釣糸進入防止部を設けることにより、ふけた釣り糸が釣糸係止部に進入しにくくなるので、ふけた釣り糸が釣糸係止部に絡みにくくなる。
【0012】
発明4に係るスプールは、発明1から3のいずれかのスプールにおいて、スカート部の外周において釣り糸の先端部分を係止する補助釣糸係止部をさらに備えている。この場合、釣り糸の先端部分を係止する従来の補助釣糸係止部と、釣り糸の中間部分を係止し、たとえば釣糸進入防止部が作用する釣糸係止部との2種類の釣糸係止部を設けることができる。
【0013】
発明5に係るスプールは、発明4のスプールにおいて、釣糸係止部は釣糸係止部の係止力が補助釣糸係止部の係止力よりも弱くなるように形成されている。この場合、釣り糸の先端部分を係止する補助釣糸係止部の係止力は比較的強いのに対して、釣り糸の中間部分を係止する釣糸係止部の係止力は補助釣糸係止部の係止力よりも弱くなっている。このため、釣糸係止部に係止された釣り糸は補助釣糸係止部に係止された釣り糸よりも容易に外れるようになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、図1に示すように、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0015】
リール本体2は、リールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に延びる竿取付脚2bとを有している。リールボディ2aは、図2に示すように内部に空間を有しており、その空間内には、ロータ3をハンドル1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。
【0016】
ロータ駆動機構5は、ハンドル1が固定されたハンドル軸10とともに回転するフェースギア11と、このフェースギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は筒状に形成されており、その前部12aはロータ3の中心部を貫通し、ナット13によりロータ3に固定されている。また、ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、それぞれ軸受14a、14bを介してリール本体2に回転自在に支持されている。
【0017】
オシレーティング機構6は、スプール4の中心部にドラグ機構60を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、スプール軸15の下方に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定されている。中間ギア23はピニオンギア12に噛み合っている。
【0018】
ロータ3は、図2に示すように、円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31、32とを有している。円筒部30と両ロータアーム31、32とは、たとえばアルミニウム合金製であり一体成形されている。
【0019】
円筒部30の前部には前壁33が形成されており、前壁33の中央部にはボス部33aが形成されている。ボス部33aの中心部には貫通孔が形成されており、この貫通孔をピニオンギア12の前部12a及びスプール軸15が貫通している。前壁33の前部にナット13が配置されており、ナット13の内部にスプール軸15を回転自在に支持する軸受35が配置されている。
【0020】
第1ロータアーム31の先端の外周側には、第1ベール支持部材40が揺動自在に装着されている。第1ベール支持部材40の先端には、釣り糸をスプール4に案内するためのラインローラ41が装着されている。また、第2ロータアーム32の先端内周側には、第2ベール支持部材42が揺動自在に装着されている。
【0021】
ラインローラ41と第2ベール支持部材42との間には線材を略U状に湾曲させた形状のベール43が固定されている。これらの第1及び第2ベール支持部材40、42、ラインローラ41及びベール43により釣り糸をスプール4に案内するベールアーム44が構成される。ベールアーム44は、図2に示す糸案内姿勢とそれから反転した糸開放姿勢との間で揺動自在である。
【0022】
ロータ3の円筒部30の内部にはロータ3の逆転を禁止・解除するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、図2に示すように、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換機構52とを有している。
【0023】
スプール4は、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構60を介して装着されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる筒状の糸巻胴部7aと糸巻胴部7aの後部に一体で形成された大径筒状のスカート部7bとを有するスプール本体7と、糸巻胴部7aの前端に装着された大径のフランジ部8と、フランジ部8をスプール本体7に固定するためのフランジ固定部材9とを有している。
【0024】
スプール本体7は、たとえばアルミニウム合金を鍛造成形して得られた大小2段の円筒状の部材であり、2つの軸受56、57によりスプール軸15に回転自在に装着されている。
【0025】
糸巻胴部7aは、図3に示すように、筒状部16と筒状部16の内周側に一体形成された円板部17と円板部17の内周側に形成された1対のボス部18a、18bとを有している。筒状部16の内周面には、フランジ固定部材9を装着するための雌ネジ部16aが形成されている。ボス部18a、18bの内周部には軸受56、57が装着されている。
【0026】
スカート部7bは、ロータ3の円筒部30を覆うように筒状に糸巻胴部7aと一体で鍛造成形されている。またその外周の前端側には、図4に示すように、釣糸係止部70が装着可能にスカート部7bを貫通する貫通孔7cが形成されている。そして、スカート部7b前端部の内周側には後方に突出した係止ピン7dが形成されている。また、スカート部7b外周の釣糸係止部70の後方側には、釣糸係止部70より外周側に突出する釣糸進入防止部90がスカート部7bと一体成形されている。
【0027】
釣糸係止部70は、図4に拡大して示すように、たとえば合成樹脂製であり、ラインローラ41を経由して釣り糸が繰り出されるときに作用する張力により釣り糸の係止が解除されるようになっている。釣糸係止部70は、スカート部7b外周に面して外方に露出して設けられた係止部70aと、係止部70aから略直角に折れ曲がり、貫通孔7cを貫通してスカート部7b内部に延びる取付部70bとを有している。
【0028】
係止部70aはスカート部7bの外周面とともに釣り糸を挟持して係止するためのものである。係止部70aは、図4に示すように、先端部が丸みを帯びた形状になっており、係止部分の厚み(係止部70aの下端面とスカート部7b外周面との間の距離)は狭くなっている。また、図5に示すように、係止部70aの外形の形状も略半円形となるように形成されている。さらに、係止部70aの前後方向長さAは係止部70aの周方向長さBより短くなるように形成されている。このため、係止部70aに釣り糸を係止したとき、小さな力で容易に釣り糸を外すことができる。たとえば、釣り糸の中間部分を係止するような釣法を用いる場合、魚等がヒットしてラインローラ41を経由して釣り糸が放出されたとき、釣人が係止部70aから釣り糸の係止を解除することなく自然に係止部70aから釣り糸が外れるので、好適である。
【0029】
取付部70bは、図4に示すように、スカート部7bの前端部に当接し、係止ピン7dが挿入される取付孔が形成されている。取付部70bをスカート部7bに取り付けるには、取付孔に係止ピン7dを挿入し、取付部70bより突出した係止ピン7dの頭部に係止金具80を装着して固定する。係止金具80は、たとえば中央に孔部80aを有する円盤状の金属製部材である。孔部80aの径は係止ピン7dの径より小さくなるように形成されており、孔部80aの内径部には4箇所の切り欠きが形成されている。この孔部80aを係止ピン7dに押し込むと、内径部分が係止ピン7dを挟む方向に広がって挟持されるので、係止金具80が係止ピン7dに固定される。
【0030】
釣糸進入防止部90は、図6に拡大して示すように、釣り糸が釣糸係止部70に進入するのを防止するためのものであり、スカート部7bの一部が隆起して一体成形され、係止部70aの開口部分と対向する壁面を生成するような段差部90aを有している。釣糸進入防止部90は釣糸係止部70より外周側に突出するように設けられている。つまり、釣糸進入防止部90の外方への突出量Cが釣糸係止部70の外方への突出量Dよりも大きくなっており、釣り糸が釣糸係止部70に進入しにくくなっている。
【0031】
フランジ部8は、外周に行くほど前方に傾斜するように形成された金属製又は硬質セラミックス製の傷つきにくい円板状の部材である。そしてフランジ部8は、糸巻胴部7aの内周面の雌ネジ部16aに螺合するフランジ固定部材9により糸巻胴部7aとの間に挟持されて固定されている。
【0032】
フランジ固定部材9は、スプール本体の内周面に形成された雌ネジ部16aに螺合する筒状の雄ネジ部9aと、雄ネジ部9aの内周側に一体で形成されドラグ機構60の後述する複数のドラグ板62を収納可能な空間を内部に有する筒状のドラグ収納部9bと、雄ネジ部9aの先端にフランジ部8に当接可能に設けられた当接部9cとを有している。
【0033】
ドラグ機構60は、図3に示すように、スプール4とスプール軸15との間に装着されスプール4にドラグ力を作用させるための機構である。ドラグ機構60は、ドラグ力を手で調整するためのつまみ部61と、つまみ部61によりスプール4側に押圧される複数枚のドラグ板62とを有している。
【0034】
このような構成のスプール4では、釣糸係止部70は、ラインローラ41を経由して釣り糸が繰り出されるときに作用する張力により釣り糸の係止が解除されるようになっている。このため、特に釣り糸の中間部分を係止する釣法を用いる場合、ラインローラ41を経由して釣り糸が繰り出されるときに作用する張力により、釣り糸が釣糸係止部70から自然に外れる。したがって、このような釣糸係止部70を設けることにより、釣り糸の中間部分を係止することが可能な利便性のよいスプールを提供することができる。
【0035】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、釣糸係止部70は合成樹脂製であったが、これに限定されるものではなく、たとえば金属製であってもよい。また、係止部70aの形状は、先端部が丸みを帯びた形状に限定されるものではない。
【0036】
(b) 図7及び図8に示すように、釣り糸の先端部を係止するために係止部71a及び取付部71bを有する釣糸進入防止部90が作用しない補助釣糸係止部71をさらに備えていてもよい。なお、釣糸係止部70の係止力は補助釣糸係止部71の係止力よりも弱くなっている。
【0037】
(c) ラインローラ41が装着される第1ロータアーム31の糸巻き取り方向上流側に、釣糸係止部70とラインローラ41との間で釣り糸を引っ掛けるための図示しない突起部をさらに設けてもよい。この場合、ドラグ作動時に釣り糸が突起部に引っ掛かると、釣糸係止部70におけるラインローラ41への釣り糸の巻き取り角度が緩やかになるので、係止された釣り糸が釣糸係止部70から外れやすくなる。特に、スプール4のストロークが長いスピニングリールでは、釣糸係止部70におけるラインローラ41への釣り糸の巻き取り角度が鋭角になりやすいので、突起部を設けることにより、係止された釣り糸が釣糸係止部70からさらに外れやすくなる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、ラインローラを経由して釣り糸が繰り出されるときに作用する張力により釣り糸の係止が解除される釣糸係止部を設けることにより、釣り糸の中間部分を係止することが可能な利便性のよいスプールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるスピニングリールの右側面図。
【図2】 前記スピニングリールの左側面断面図。
【図3】 前記スピニングリールのスプールの拡大断面図。
【図4】 前記スプールの釣糸係止部周辺の拡大断面図。
【図5】 前記スプールの釣糸係止部周辺の拡大平面図。
【図6】 前記スプールの釣糸進入防止部周辺の拡大断面図。
【図7】 他の実施形態の図4に相当する図。
【図8】 他の実施形態の図1に相当する図。
【符号の説明】
4 スプール
7a 糸巻胴部
7b スカート部
41 ラインローラ
70 釣糸係止部
71 補助釣糸係止部
90 釣糸進入防止部
Claims (5)
- リール本体に対して前後移動自在かつベールの回転によりラインローラを経由して釣り糸が巻き付けられるスピニングリールのスプールであって、
外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、
前記糸巻胴部の後端部に設けられたスカート部と、
前記スカート部の外周において前記釣り糸を周方向に沿って係止し、前記ラインローラを経由して前記釣り糸が繰り出されるときに作用する張力により前記釣り糸の係止が解除される釣糸係止部とを備え、
前記釣糸係止部の前記釣り糸が係止される部分の前後方向長さは、前記釣糸係止部の前記釣り糸が係止される部分の周方向長さより短くなるように形成されている、スピニングリールのスプール。 - 前記釣糸係止部の先端部は略円弧状に形成されている、請求項1に記載のスピニングリールのスプール。
- 前記釣り糸が前記釣糸係止部に進入するのを防止する釣糸進入防止部をさらに備えている、請求項1又は2に記載のスピニングリールのスプール。
- 前記スカート部の外周において前記釣り糸の先端部分を係止する補助釣糸係止部をさらに備えている、請求項1から3のいずれかに記載のスピニングリールのスプール。
- 前記釣糸係止部は、前記釣糸係止部の係止力が前記補助釣糸係止部の係止力よりも弱くなるように形成されている、請求項4に記載のスピニングリールのスプール。
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