JP4511652B2 - 表示装置用電極基板の製造方法 - Google Patents

表示装置用電極基板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置などの表示装置で利用される電極基板であって、表示媒体に電圧を印加するための電極構造を有する電極基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マトリクス方式の一つである単純マトリクス方式は、液晶、EL(Electro Luminescence)などの多くの表示装置で利用されている。単純マトリクス方式は、例えば、透明な基板上に図14に示すようなストライプ形状の複数の透明電極101…を等しい長さで両端が揃うように形成し、これらの透明電極101…の向きが互いに直交するように2枚の基板を対向させることによって得られたマトリクス構造において、両基板の透明電極101…に選択的に信号を付与してマトリクスにおける任意のドットに電界を印加する方式である。
【0003】
ところで、上記の透明電極101としては、ITO(インジウム錫酸化物)に代表される透明電極材料が広く使われている。このような電極材料を用いた電極の形成は、一般に次の手順で行われる。まず、ガラスなどの基板上に所定の膜厚で上記の電極材料を蒸着した後に、その上を覆うようにフォトレジストを形成する。そして、ストライプ状にパターニングされたフォトレジストで電極材料の必要な部分を保護した状態でエッチングを用いて不要な部分を除去することによって電極材料の層を所定の形状にパターニングする。
【0004】
上記のようにして電極を形成する際、エッチングされるべき隣り合う電極間の部分においてエッチングされない箇所やエッチング不十分な箇所が存在すると、電極間のその箇所で短絡部分が形成され、この短絡部分を介してリーク電流が流れたり、電極材料層においてフォトレジストで保護されているはずの電極部分がエッチングされると、形成された電極が断絶するといった問題が少なからず発生する。このようなリークおよび断線は、信号を電極に選択的に付与するための妨げとなるので重大な問題である。リークおよび断線の原因としては、ITOを蒸着するときに混入する異物、フォトレジストを露光するときのフォトマスクの汚れなどの不良が挙げられるが、それらを完全に排除することは製造技術の面からもコストの面からも非常に困難である。
【0005】
そこで、従来、隣り合う電極間の導通をプローブ検査により1本ずつ調べることで、リークの有無およびリーク箇所を検査し、その後検出されたリーク箇所に残る不要なITOをレーザーなどで焼き切るといった修正を行っていた。
【0006】
ところで、上記の透明電極101としては、ITO電極(インジウム錫酸化物)に代表される透明電極材料が広く用いられている。このような透明電極材料は、導電体としては電気抵抗が高く、通常使用される膜厚1000Å程度でシート抵抗200Ω/□,5000Åと厚い膜を用いても5Ω/□程度である。これより厚い膜の場合、着色が生じたり、成膜やパターニングが困難になったりして実際に使用することができなくなる。
【0007】
近年および将来に向けての表示装置の大型化、大表示容量化および映像信号の伝送の高速化の要求に対して、このような電気抵抗の高い透明電極では、様々な問題が生じてしまう。最も重要であるのは、電気抵抗による信号レベルの減衰および歪みである。電極端に入力された信号のレベルが電極抵抗により減衰するため、表示装置の他方の電極端側では、駆動に充分な信号波形を確保することが困難であり、その結果、表示画面における表示特性が不均一になる。
【0008】
1Ω/□以下の任意の電極抵抗値を達成する方法としては、透明電極101に並列して接触する金属等の低抵抗導電体を設けることによって表示電極の抵抗値を低減させる方法が挙げられる。
【0009】
この問題を改善する手段として、(1)特開平1−280724号公報および(2)特開平2−63019号公報に、金属電極と透明電極との接触部分を小さくして、透明電極の開口部を広げる方法が開示されている。
【0010】
(1)の先行技術では、図20(a)に示すように、透明基板105上に形成されたストライプ状の透明電極101…の一側端の上端面と透明基板105とにわたって金属電極106が形成されている。また、(1)の先行技術では、図20(a)に示すように、透明基板105における透明電極101・101間および透明電極101の上端面を覆うように絶縁膜107が形成されており、金属電極106が透明電極101の一側端の上端面と接触するように絶縁膜107上に形成されている。
【0011】
一方、(2)の先行技術では、図20(b)に示すように、透明基板105上に透明電極101…ではなくストライプ状の金属電極106…が形成されている。この構造では、透明基板105における金属電極106・106間および金属電極106の上端面を覆うように絶縁膜107が形成されており、さらに、金属電極106の上端面と接触し、かつ金属電極106・106間を覆うように透明電極101…が形成されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、先行技術についての問題点について説明する。
【0013】
まず、リークの有無およびリーク箇所をプローブ検査により検査し、検出された不要部位を焼き切る修正方法において、各工程は、完全に機械化されているので技術的に困難ではないが、プローブを電極に正確に接触させたり、レーザーを検出箇所の位置に合わせたりするための精密な位置合わせ機構が必要である。したがって、検査および修正のために高価な装置および長い処理時間を必要とするので、製造コストの上昇を招くという問題が残る。
【0014】
図15は、従来の電極構造を得るための電極パターニングの工程において、レジスト不良などによって本来保護されるはずの透明電極部がエッチング液にさらされた結果、図14に示すような正常な電極構造が得られずに、一部の透明電極101が断絶した様子を示している。このような電極構造を有する電極基板に対し上記のプローブ検査を行う際、1本の透明電極101において離間したプローブ102・103間の導通を全ての透明電極101…について調べることで断線の有無を検査し、この電極基板が良品であるか不良品であるかの判定を行う。
【0015】
また、従来の電極構造では図16に示すように、隣り合う2本の透明電極101・101についてプローブ103・104の導通によってリークを検査する。これは前述の断線検査と同様であり、全ラインについて検査することでリークの有無を検査し、良品または不良品を判定する。実際には、前記の断線とリークは、プローブ102〜104によって同時に検査される。検査の結果リークの存在が確認された電極基板については、リーク箇所を特定し、そのリーク箇所にレーザーによる修正を施してリークを解消する。
【0016】
電極基板が、断線を含まない良品であれば問題はないが、断線を含む不良品である場合はリークのように修正することができないので、その基板は不良品として廃棄せざるを得ない。また、プローブによる断線検査は勿論のことリーク検査も、ライン数(電極数)が少なくラインピッチが粗い場合は比較的容易に行うことができるが、ライン数が多くなることに伴ってラインピッチが微細になる場合は難しくなるので検査結果に誤りが生じるおそれがある。したがって、誤った断線およびリーク検査のために、断線およびリークを含む電極基板が表示装置に組み込まれた後の最終工程である表示画像検査の段階で断線およびリークが発見されるようなことがあれば、その表示装置は製品として出荷することができなくなる。このように、断線およびリーク検査が正しく行われないと、表示装置の歩留りが低下し、製造コストの上昇を招く結果になる。
【0017】
このような問題に対し、特開昭62−143025号公報には、ストライプ状に形成された電極を1本ずつ交互にその端部を反対側に引き出して、それぞれの側に引き出された端部同士を短絡し、その間に電圧を印加することによって電極間のリーク検査を容易に行う先行技術が開示されている。この方法では、電極間にリークがあると確認された基板については、リーク箇所を従来の修正方法と同様にレーザーを用いて修正する。しかしながら、この先行技術に用いられる電極構造では電極間のリークの有無を容易に検査することができたとしても、その場所を特定することは容易ではない。
【0018】
前述のプローブ検査では、電極を1本ずつ検査するために、電極の単位面積抵抗(シート抵抗)、電極の形状(幅、長さなど)と検出される電流値の関係からリーク箇所の座標を正確に判定することができる。しかしながら、予め電極の端部同士を短絡しておく上記の先行技術の方法は、電極間のリークの有無を上記のプローブ検査法よりも迅速に判定できるものの、リーク箇所の特定が困難であるためにプローブ検査法のようにリークの修正を十分行うことができない。したがって、上記の先行技術は実用に供するには不十分であると言える。
【0019】
また、上記のプローブ検査法では、断線についての検査が可能ではあるものの、断線部分を修正することができない。このため、断線の発生した基板を不良品として廃棄せざるを得ず、さらなる製造コストの上昇を招く結果となる。さらに、上記の先行技術でも勿論、断線を解消するための有効な対策を提供し得ない。このような問題は、表示装置の大型化および高精細化に伴って、より深刻になっている。
【0020】
一方、図20(a)および(b)に示すいずれの構造においても、透明基板105の電極形成面すなわち液晶やELの発光層に電界を印加する基板表面に金属電極106…と透明電極101…とを接触させた部位に段差が形成される。この段差が、液晶表示装置では、液晶の配向性に悪影響を及ぼすことが避けられず、また、EL表示装置では、異常放電を発生させてしまう。また、これらの構造では、絶縁膜107を用いており、その絶縁膜107に透明電極101…と金属電極106…との接続を確保するためのスルーホールを形成する工程を含めて、それぞれの構造を実現するための多くのプロセス数を必要とする。それゆえ、これらの装置の製造歩留りが低くなり、結果として製造コストの削減が困難であった。
【0021】
また、図20(a)の構造では、透明電極101が金属電極106によって覆われる部分が少ないので、この電極基板を表示装置に組み込んだ場合、表示装置の開口率は比較的大きく確保できる。しかしながら、図20(b)の構造では、透明電極101において金属電極106と重なる部分が大きく、図20(a)の構造の構造に比べて開口率が小さい。
【0022】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、表示用電極のエッチング時に発生する断線およびリークのない表示装置用電極基板、および上記のエッチング時に発生する断線を防止し、かつ簡単な方法で電極間のリーク部分を修正することが可能な表示装置用電極基板の製造方法を提供することを目的としている。さらに、本発明は、電極基板の平坦性および開口率を向上させるとともに、製造のプロセス数を削減できる構造および製造方法を提供することを目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の表示装置用電極基板は、上記の課題を解決するために、ストライプ状の複数の電極が基板上に配列されている構造を有する表示装置用電極基板において、上記電極が以下のように構成されていることを特徴としている。
【0024】
すなわち、上記電極は、平行に並んで互いに接触する少なくとも2つの電極部によって形成され、該各電極部を構成する導電体のエッチング特性が互いに異なっており、1本おきに一方の端部で互いに短絡される一方、残余の他方の端部で互いに短絡された状態で、短絡された両側の端部間に電圧が印加されることによって上記電極間に形成されたリーク部分が切断されている。
【0025】
上記の構造では、電極を形成する少なくとも2つの電極部を構成するそれぞれの導電体が異なるエッチング特性を示す。これにより、例えば、ある電極部の上に他の電極部を形成する際に、レジストパターンに不良が生じていたために、エッチングによって形成された電極部が断絶しても、すでに形成されている下層の電極部は同じ箇所でエッチングによって侵されることはない。このように、異なる電極部が同一箇所で断絶することが防がれるので、電極全体は必ずいずれかの電極部でつながっている構造を得ることができる。
【0026】
さらに、電極が1本おきに一方の端部で短絡され、残余の電極が他方の端部で短絡された状態で両側の端部の間に電圧が印加されると、隣り合う電極間に形成されたリーク部分が切断される。このとき、通常ごく細く形成されるリーク部分に大きい電流が流れることによってリーク部分が焼失する。
【0027】
上記の電極基板は、さらに、上記導電体が、同一のエッチング液によってエッチングされない材料からなることが好ましい。例えば、電極が2つの電極部からなる場合、あるエッチング液に対して一方の電極部を構成する導電体はエッチングされるが他方の電極部を構成する導電体はエッチングされない。それゆえ、導電体に容易にエッチング選択性を付与することができる。
【0028】
あるいは、上記の電極基板は、さらに、上記導電体が、それぞれの導電体間で同一のエッチング液によりエッチングされる速度が5倍以上異なる材料からなることが好ましい。例えば、電極が2層の電極部からなる場合、下層の電極部を構成する導電体のエッチング速度(r1 )を、上層の電極部を構成する導電体のエッチング速度(r2 )に対してかなり低くする。すなわち、r1 ≦r2 /5となるように両エッチング速度を設定する。これによって、上層の電極部を形成するために導電体をエッチングする際に、レジストパターンの不良のために、形成された上層の電極部がレジストパターンの不良部分を介してのエッチングによって断絶しても、すでに形成されている下層の電極部がエッチング液によって侵される速度は非常に低いので、下層の電極部が上層の電極部と同じ箇所で断絶することはない。
【0029】
上記の各電極基板は、さらに、上記電極部のうち少なくとも1つが透明電極であり、他の1つが低抵抗導電体電極であることが好ましい。通常、レジストパターンの不良などによって形成される電極間のリーク部分は、ごく細いので電極に比較してその抵抗が高い。それゆえ、透明電極に低抵抗導電体電極が並設されると、透明電極および低抵抗導電体電極からなる電極の全体の抵抗値が非常に小さく抑えられるので、リーク部分へのジュール発熱の集中が高くなる。このため、電極の両端部の間に印加する電圧を比較的低い電圧に設定しても、リーク部分を焼失しうる大きい電流を透明電極に流すことができる。この結果、リーク部分は焼失するが、透明電極が損傷することはない。
【0030】
上記の各電極基板は、さらに、上記低抵抗導電体電極が、上記基板に埋設されるとともに、上記透明電極によって一部のみ覆われるように上記透明電極と接触することが好ましい。このような構造では、低抵抗導電体電極が基板に埋設されるので、低抵抗導電体電極が透明電極上に形成される構造と比べて、電極基板表面を平坦に形成することができる。また、低抵抗導電体電極が透明電極によって一部のみ覆われるので、透明電極によって形成される画素部が遮光性を有する低抵抗導電体電極によって覆われる面積が少なくなる。しかも、本電極基板では、前述の従来の基板構造が有していた透明電極と金属電極との間に介在する絶縁膜が不要であるので、構造が簡素化される。
【0031】
上記の各電極基板は、さらに、上記電極が、分割された画素を形成するために異なる幅の1対の第1電極と第2電極とからなり、隣り合う上記電極において、上記第1電極同士が隣り合うとともに、上記第2電極同士が隣り合うように配置されていることが好ましい。電極が上記第1および第2電極からなる構造において、電極の端部を1本おきに反対側に引き出すと、電圧印加のための1本おきの電極の短絡が容易になる(図13参照)。このような電極構造では、電極の端部がそれぞれの側で駆動回路を接続すると、これらの駆動回路の負荷が大きく異なる結果、電極駆動時の電力消費に伴う発熱などが不均一になる問題が生じる。これに対し、上記のように、隣り合う電極において、第1電極同士が隣り合うとともに、第2電極同士が隣り合うことによって(図12参照)、両駆動回路の負荷が等しくなるので、電極駆動時の電力消費を均一に保つことができる。
【0032】
本発明の表示装置用電極基板の製造方法は、上記の課題を解決するために、ストライプ状の複数の電極が基板上に配列されている構造を形成する表示装置用電極基板の製造方法において、以下の第1および第2工程を備えていることを特徴としている。
【0033】
すなわち、上記第1工程は、導電体をエッチングすることによって上記電極を構成する少なくとも2つの電極部が平行に並んで互いに接触するように、該各電極部を構成する導電体のエッチング特性を互いに異ならせて上記電極を複数形成する工程であり、上記第2工程は、上記電極の一方の端部を1本おきに短絡するとともに残余の電極の他方の端部を短絡し、短絡された端部の間に電圧を印加することによって隣り合う上記電極間に形成されたリーク部分を切断する工程である。
【0034】
上記の方法では、第1工程において各電極部を構成する導電体のエッチング特性を互いに異ならせることによって、例えば、ある電極部の上に他の電極部を形成する際に、レジストパターンに不良が生じていたために、エッチングによって形成された電極部が断絶しても、すでに形成されている下層の電極部は同じ箇所でエッチングによって侵されることはない。このように、異なる電極部が同一箇所で断絶することが防止されるので、電極全体は必ずいずれかの電極部でつながっている構造を得ることができる。
【0035】
さらに、第2工程において、電極の端部を1本おきに短絡し、残余の電極の他方の端部を短絡した状態で両側の端部の間に電圧が印加されると、上記電極間に形成されたリーク部分が切断される。このとき、通常ごく細く形成されるリーク部分に大きい電流が流れることによってリーク部分が焼失する。
【0036】
上記の製造方法における上記第1工程では、さらに、同一のエッチング液によってエッチングされない材料を上記導電体として用いることが好ましい。例えば、電極が2つの電極部からなる場合、あるエッチング液に対して一方の電極部を構成する導電体はエッチングされるが他方の電極部を構成する導電体はエッチングされない。それゆえ、導電体に容易にエッチング選択性を付与することができる。
【0037】
あるいは、上記の製造方法における上記第1工程では、さらに、それぞれの導電体間で同一のエッチング液によりエッチングされる速度が5倍以上異なる材料を上記導電体として用いることが好ましい。これによって、例えば、電極が2層の電極部からなる場合、上層の電極部を形成するために導電体をエッチングする際に、レジストパターンの不良のために、エッチングによって形成された上層の電極部が断絶しても、すでに形成されている下層の電極部がエッチング液によって侵される速度は非常に低いので、下層の電極部が上層の電極部と同じ箇所で断絶することはない。
【0038】
上記の各上記第1工程では、さらに、上記電極部のうち少なくとも1つを透明電極として形成し、他の1つを低抵抗導電体電極として形成することが好ましい。これにより、透明電極および低抵抗導電体電極からなる電極全体の抵抗値が非常に小さく抑えられるので、隣り合う電極間でごく細く形成されて抵抗値が高くなっているリーク部分へのジュール発熱の集中が大きくなる。このため、電極の両端部の間に印加する電圧を比較的低い電圧に設定しても、リーク部分を焼失しうる大きな電流を透明電極に流すことができる。この結果、リーク部分は焼失するが、透明電極が損傷することはない。
【0039】
さらに、上記の第1工程において、上記低抵抗導電体電極を上記基板に埋設して形成した後に、上記低抵抗導電体電極を一部のみ覆い、かつ上記低抵抗導電体電極と接触するように上記透明電極を上記基板上に形成することが好ましい。このような第1工程によって得られた構造では、低抵抗導電体電極が基板に埋設されるので、低抵抗導電体電極が透明電極上に形成される構造と比べて、電極基板表面を平坦に形成することができる。また、低抵抗導電体電極が透明電極によって一部のみ覆われるので、透明電極によって形成される画素部が遮光性を有する低抵抗導電体電極によって覆われる面積が少なくなる。しかも、本第1工程では、前述の従来の基板構造が有していた透明電極と金属電極との間に介在する絶縁膜を作製するプロセスが不要であるので、製造プロセスが簡素化される。
【0040】
上記の各製造方法における上記第1工程では、さらに、分割された画素を形成するために異なる幅の1対の第1電極と第2電極とからなり、隣接する上記電極において、上記第1電極同士が隣接するとともに、上記第2電極同士が隣接するように上記電極を形成することが好ましい。このように第1および第2電極を配置することによって、第1および第2電極を交互に反対方向に引き出してそれぞれの側の端部に駆動回路を接続する場合、両駆動回路の負荷が等しくなるので、電極駆動時の電力消費を均一に保つことができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図13および図17ないし図19に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0042】
本実施の形態に係る表示装置は、図17に示すように、互いに対向する2枚のガラス基板1・2を透光性基板として備えている。なお、透光性かつ絶縁性を有しておれば、ガラス基板1・2の代わりにポリメチルメタクリレートのような樹脂からなる基板を用いてもよい。
【0043】
ガラス基板1の表面には、例えば前述のITOからなる複数の信号電極3…(電極部)が互いに平行に配置されている。一方、ガラス基板2の表面には、例えばITOからなる複数の透明な走査電極5…(電極部)が信号電極3…と直交するように互いに平行に配置されている。
【0044】
上記のガラス基板1・2は、一定の間隔(セルギャップ)をおいて対向するように貼り合わされている。そのガラス基板1・2の間に形成される空隙には、液晶表示装置の場合は液晶の注入によって液晶層が形成され、EL装置の場合は発光層が形成される。
【0045】
続いて、表示装置が液晶表示装置である場合について、より詳細に説明する。本液晶表示装置は、図2に示すように、互いに対向する2枚のガラス基板1・2を備えている。ガラス基板1における上記の信号電極3…が配置されている面には、例えば酸化シリコン(SiO2 )からなる透明な絶縁膜4が積層される。一方、ガラス基板2における上記の走査電極5…が配置されている面は、SiO2 などからなる透明な絶縁膜6で覆われている。
【0046】
上記の絶縁膜4・6上には、ラビング処理などの一軸配向処理が施された配向膜7・8がそれぞれ形成されている。配向膜7・8としては、ポリイミド、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)などの有機高分子からなる膜やSiO2 斜方蒸着膜が用いられる。
【0047】
上記のようにして信号電極3…、絶縁膜4および配向膜7が形成されたガラス基板1と、走査電極5…、絶縁膜6および配向膜8が形成されたガラス基板2とは、一定の間隔(セルギャップ)をおいて対向するようにシール剤9で貼り合わされている。そのガラス基板1・2の間に形成される空隙には、液晶層10を形成するように液晶が充填されている。液晶は、シール剤9に設けられた図示しない注入口から注入され、その注入口が封止剤11で封止されることにより封入される。
【0048】
ガラス基板1・2のそれぞれの外面には、偏光軸が互いに直交するように配置された2枚の偏光板12・13が設けられている。また、表示面積が広い場合には、セルギャップを一定に保持するためのスペーサ14…が配向膜7・8の間に配置される。
【0049】
上記の信号電極3…および走査電極5…が対向する各方形の領域により、図示しない画素領域が形成されている。この画素領域においては、信号電極3と走査電極5とにそれぞれ電圧が印加されると、信号電極3と走査電極5との間に生じる電界によって液晶分子の配向状態が切り替わることにより、表示状態を明と暗と(さらには中間調と)で変化させて表示を行うようになっている。
【0050】
また、ガラス基板1上には、信号電極3…の一方の側端に接触するように補助電極15…が並設され、ガラス基板2上には、走査電極5…の一方の側端に接触するように補助電極16…が並設されている。補助電極15・16は、信号電極3および走査電極5の配線抵抗を低下させるように、両電極3・5の抵抗値より低い抵抗値の、例えばCu、Taといった金属材料によって形成されている。補助電極15・16は、信号電極3および走査電極5に対し、それぞれエッチング選択性を有する材料によって形成されている。
【0051】
信号電極3…および補助電極15…を有する電極基板ならびに走査電極5…および補助電極16…を有する電極基板は、例えば次のようにして作製される。なお、以下の説明では、ガラス基板1上に信号電極3…および補助電極15…を形成する手順のみを示すが、ガラス基板2上に走査電極5…および補助電極16…を形成する場合も同様の手順にしたがう。
【0052】
まず、ガラス基板1上にITOを2000Å蒸着して透明電極膜を形成し、その上に電極パターンに対応するレジストパターンを形成する。次に、透明電極膜をエッチングすることによって信号電極3…を形成する。さらに、この上から例えばCuを2000Å蒸着して金属層を形成する。その後、レジストパターンを剥離することによってレジストパターン上の金属層をリフトオフした結果、信号電極3…間に残った金属層の一部が金属電極パターンを形成する。
【0053】
この金属電極パターンは、隣り合う信号電極3・3の両方に接触しているので、一方の信号電極3にのみ接触するように加工される。このとき、信号電極3…および金属電極パターンの上に、金属電極パターンにおける他方の信号電極3に接触する一部を除くようにレジストパターンを形成し、金属電極パターンをエッチングする。その結果、補助電極15…が形成される。
【0054】
続いて、信号電極3…および走査電極5…の構成について図3に基づいて説明する。なお、ここでは、信号電極3および走査電極5を透明電極22(電極部)とし、補助電極15・16を金属電極23(電極部および低抵抗導電体電極)として共通化する。
【0055】
図3に示すように、透明電極22は、それぞれ同じ長さに形成されているが、一つおきに端部が揃うように互いに平行に配置されている。具体的には、奇数番目の透明電極22−1〜22−N(ここではN=7)のそれぞれの一端が偶数番目の透明電極22−2〜22−M(ここではM=8)それぞれの一端より突出し、偶数番目の透明電極22−2〜22−Mのそれぞれの他端が奇数番目の透明電極22−1〜22−Nのそれぞれの他端より突出している。
【0056】
透明電極22…および金属電極23としては、前述の構造以外に、例えば図4(a)ないし(c)に示すような構造が挙げられる。なお、以降、便宜上、ガラス基板1・2を基板21として共通化する。
【0057】
まず、図4(a)に示す構造では、基板21に金属電極23…が埋設されるとともに、その上を覆うように透明電極22が形成されている。金属電極23は、基板21の表面に現れた端面で透明電極22と接触している。次に、図4(b)に示す構造では、金属電極23が透明電極22上に形成されている。そして、図4(c)に示す構造では、透明電極22と金属電極23とがともに基板21上に形成されており、透明電極22の一部が金属電極23の上端面を覆っている。
【0058】
図4(b)および(c)に示す構造では、上記のように、電極抵抗を低下させるために、透明電極22と金属電極23とが積層されている。これらの構造では、先行技術(図20(a)および(b)参照)として挙げた構造のように、絶縁膜に設けられたスルーホールを介して透明電極22と金属電極23とが接触することはないので、その接触を確保するためのプロセスを削減することができる。しかしながら、これらの構造では、金属電極23を設けたことによって基板上に突出する部分が形成されるので、基板表面の平坦性を図るには不十分である。
【0059】
これに対し、図4(a)に示す構造は、特開平9−127494号公報にも開示されているが、金属電極23…が透明電極22…上に現れないため、基板表面の平坦性を高めることができる。しかしながら、この構造では、金属電極23を覆うように透明電極22が形成されるため、透光性を有さない金属電極23によって透明電極22によって形成される画素の開口率が低下する。このため、表示輝度およびコントラストの低下が避けられない。このことは、図4(b)および(c)に示す構造にも共通している。
【0060】
これに対し、開口率を高くするために、図5(a)ないし(c)に示すような構造を採ることも可能である。図5(a)および(c)に示す構造では、図4(a)および(c)の構造における金属電極23の位置が透明電極22から露出するようにずれている。図5(b)に示す構造では、図4(b)の構造における金属電極23の一部が基板21上に形成されている。
【0061】
特に、図5(a)に示す構造では、金属電極23が基板21に埋設されており、基板21の表面は、金属電極23が設けられない構造と同様に平坦である。また、透明電極22は、その底面で金属電極23の一部と接触するように基板21上に形成されている。これにより、電極抵抗が金属電極23を備えない構造に比べて低減するとともに、開口率が図4(a)の構造および先行技術の構造(図20(a)および(b)参照)に比べて高くなる。
【0062】
従来の技術で述べたように(図15参照)、金属電極23が設けられていない透明電極101…のみの場合では、一部の透明電極101が、その形成時におけるエッチングの際に完全に断絶するおそれがある。これに対し、図6に示すように、上記のようにエッチング選択性を有する導電体によって形成された透明電極22と金属電極23とを設けることによって、エッチングの際にレジスト不良などによりいずれか一方が断絶しても、両方がともに断絶することはほとんどない。したがって、断線故障を大幅に低減することができる。
【0063】
ここで、2種類の導電体によって断線を防止できる原理について説明する。図7(b)に示す第1の導電体31と第2の導電体32とは、いわゆるエッチング選択性を有する材料からなっており、第1の導電体31は第2の導電体32をエッチングするためのエッチング液ではエッチングされない。また、図7(a)に示すように、第1の導電体31をエッチングした際に断絶部31aが形成されると、図7(b)に示すように、その上を覆うように第2の導電体32を形成すれば、第2の導電体32にも断絶部32aが形成されても、第1の導電体31と第2の導電体32とではエッチング特性が異なるため、断絶部32aにおいて第1の導電体31が断絶することはない。
【0064】
このように、第1の導電体31および第2の導電体32の双方が断絶しても、エッチング選択性を有する材料からなる第1の導電体31および第2の導電体32を積層することによって、電極全体の導通状態が確保される。第1の導電体31および第2の導電体32はエッチング選択性を有する物質からなるが、同一のエッチング液に対してエッチング時間が大きく異なる場合でも同一箇所が断線することはないので、このような場合でも以下に述べるように断線を防止することができる。したがって、このような場合は、必ずしも第1の導電体31および第2の導電体32がエッチング選択性を有していなくてもよい。
【0065】
エッチングは、導電体の厚み分だけ行えば十分であると考えられるが、実際には次のような不都合が生じる。すなわち、厚み分だけのエッチング(ジャストエッチング)では、後述の各実施例における電極構造のようにライン間隔がかなり狭い(μmオーダー)透明電極を多数本形成する場合、大型の基板において、全体にわたってリーク部分が形成されることなくエッチングすることが非常に困難である。したがって、通常、ジャストエッチングの200〜300%エッチングする、いわゆるオーバーエッチングが広く行われており、定格(ジャストエッチング)の2〜3倍の時間をかけてエッチングを行うことが常識となっている。
【0066】
このため、レジストパターンに不良が生じている場合、その不良部分では、図7(b)では、第2の導電体32がその厚み分だけエッチングされた後に第1の導電体31がエッチング液にさらされてしまう。それゆえ、上下層をそれぞれ形成する第1の導電体31と第2の導電体32とが同一のエッチング液によりエッチングされるときの両導電体31・32間のエッチング速度に大きな差があることが必要である。
【0067】
具体的には、上層の第2の導電体32のエッチング速度が、少なくとも下層の第1の導電体31のエッチング速度の2〜3倍程度であることが必要である。また、両導電体31・32間のエッチング速度が5倍以上異なることがより望ましい。すなわち、第1の導電体31のエッチング速度(r1 )を、第2の導電体32のエッチング速度(r2 )に対してr1 ≦r2 /5となるように設定する。このようなエッチング速度差があることによって、第2の導電体32のエッチング時におけるオーバーエッチングのために第1の導電体31がエッチング液にさらされても、そのエッチング速度が低いので、第1の導電体31が断絶することはない。
【0068】
続いて、前述の電極構造におけるリーク検査について説明する。
【0069】
本実施の形態では、図1に示すように、奇数番目の透明電極22−1〜22−7の一端が導電性ペースト41によって短絡される一方、偶数番目の透明電極22−2〜22−8の一端が導電性ペースト42によって短絡されており、導電性ペースト41・42間にDC電圧を印加する。したがって、導電性ペースト41・42間の導通の有無を調べることによって、容易にリークを検査することができる。また、このような検査方法では、短絡部Sが存在しても、一般にはごく細く形成される短絡部Sの両端に電圧が印加されると、大きな電流が流れることでその短絡部Sが焼失するので、リーク箇所を検出する必要はなく、リーク検査と同時にリーク修正を行うことができる。
【0070】
前述の先行技術(特開昭62−143025号公報)のように、1本ずつ交互に反対側に引き出された電極の端部をそれぞれの側で短絡して、その短絡部間に電圧を印加することによって電極間のリーク検査を行う場合、上記の電極が金属電極を含んでいないので、電極全体の抵抗値が高くなる。それゆえ、実用的な電圧を印加してもリーク箇所に大きな電流が流れないため、電流によってリーク箇所を焼き切ることができない。これに対し、短絡された端部間に高電圧を印加すれば電極間のリーク箇所は焼失するが、表示に供される電極も損傷してしまう。
【0071】
通常、レジスト不良などによって形成される電極間の短絡部Sは、上記のようにごく細いので、表示に供される透明電極22に比較してその抵抗値が高い。したがって、短絡部Sにはジュール発熱が集中する。本実施の形態では、透明電極22に金属電極23が並設されていることで、透明電極22および金属電極23からなる電極の全体の抵抗値が非常に低く抑えられるので、短絡部Sへのジュール発熱の集中がより大きくなる。このため、上記のDC電圧を高く設定せずに実用的な値に設定するだけで、短絡部Sを焼失しうる大きな電流を透明電極に流すことができる。この結果、短絡部Sは焼失するが、表示に必要な本来の透明電極22が損傷することはない。
【0072】
通常、ITOの低抗値は2000Åの厚さで15Ω/□(シート抵抗)程度であり、Ta(0.1Ω/□)、Cu(0.05Ω/□)などと比較すると非常に大きい。
【0073】
前述の実用的な電圧とは、表示用の透明電極22が損傷しない程度の範囲(±30V程度を越えない範囲)の電圧である。ただし、実際の表示装置においては、この範囲を越える電圧が透明電極22に印加されることもあるが、液晶の容量と透明電極22(信号電極3および走査電極5)および金属電極23の合成抵抗である配線抵抗とによって負荷が大きくなっている信号電極3と走査電極5との間に電圧を印加するので、透明電極22にはこれが損傷するような大きな電流は流れない。
【0074】
また、上記の検査方法ではDC電圧を印加しているが、AC電圧を印加してもよい。
【0075】
なお、本実施の形態では、導電性ペースト41・42の代わりに、導電性シートなどを用いることができる。また、図示はしないが、初めから奇数番目の透明電極22−1〜22−7の端部同士を短絡する電極パターンと、偶数番目の透明電極22−2〜22−8の端部同士を短絡する電極パターンとを予め形成しておき、リーク検査および修正の後にこれらの電極パターンの部分だけを切り離すことも実用的である。
【0076】
さらに、透明電極22および金属電極23の対は、図1のように交互に突出するような構造ではなく、全ての端部が揃っている構造(図14参照)であってもよい。このような構造では、直線状の導電性ペースト41・42を用いることはできないが、透明電極22および金属電極23の対を1つおきに短絡するような形状の導電性ペーストを用いればよい。
【0077】
本実施の形態の電極基板の構成およびリーク検査方法は、すべて透明電極を用いる構造を対象としているが、反射型表示装置のように一方の基板に透明電極を設ける必要のない構成においても同様に適用できる。すなわち、複数のエッチング選択性のある金属、あるいはエッチング時間の大きく異なる金属を積層して電極を形成することで断線を防ぐことができる。また、反射型表示装置においては、一方の基板に反射板を兼ねた金属電極が設けられているが、これを表示用電極として利用できるため、電極抵抗値が透明電極を用いる場合よりもかなり低くなり、電流によって容易にリーク箇所を修正することができる。反射金属電極の場合は、光を透過させる透明電極と異なり、金属電極の積層によって開口率が低下するという問題は生じない。したがって、反射型の液晶表示素子においては、図8に示すように、積層される電極51・52(反射金属電極)の幅は同じでよい。
【0078】
【実施例】
続いて、本実施の形態を以降の各実施例に基づいて、より詳細に説明する。
【0079】
〔実施例1〕
本実施例に係る電極基板は、図4(a)に示す構造をなしており、透明電極22がITOで形成され、金属電極23がTaで形成されている。ITOは2000Åの膜厚および100μmの幅で形成され、Taは2000Åの膜厚および10μmの幅で形成されている。また、透明電極22および金属電極23は、300mmの長さに形成されており、リーク検査用として1本毎に突出する部分の長さは30mmである。したがって、透明電極22において表示部分として使用される部分の長さは270mmである。さらに、1対の透明電極22および金属電極23からなる電極同士の間隔は10μmである。
【0080】
このように構成される電極基板の作製プロセスについて説明する。
【0081】
まず、図9(a)に示すように、ガラスまたは樹脂からなる基板21上に金属電極23の逆パターンに対応したレジストパターン24を形成し、図9(b)に示すように、基板21を2000Åエッチングして、基板21に凹部21a…を形成する。このとき、ガラスからなる基板21を用いた場合、フッ酸溶液を用いたウエットエッチングで基板21を処理する一方、樹脂からなる基板21を用いた場合、酸素プラズマを用いたドライエッチングで基板21を処理する。
【0082】
次に、図9(c)に示すように、この上から2000Åの厚さでTaからなる金属層25を、スパッタリング、EB蒸着、メッキなどの方法によって形成する。その後、基板21をアセトン、ディメチルスルホキシド、水酸化ナトリウム溶液などに浸漬してレジストパターン24を剥離することによって、レジストパターン24上の金属層25をリフトオフした結果、図9(d)に示すように、凹部21a…に金属電極23…を形成する。
【0083】
さらに、図9(e)に示すように、2000Åの厚さでITOからなる透明電極膜26を、スパッタリングまたはEB蒸着によって形成する。さらに、図9(f)に示すように、レジストパターン27を、金属層25を完全に覆うように位置合わせを行った上で露光および現像によって透明電極膜26上に形成する。そして、図9(g)に示すように、透明電極膜26を臭化水素(HBr)、塩化第2鉄(FeCl3 )などの溶液でエッチングすることによって透明電極22…が形成される。
【0084】
臭化水素溶液は、ITOのエッチング液として最適である。また、Taは臭化水素も含めてほとんどの酸に侵されることがない。
【0085】
ここで、1本毎に互いに反対側に突出した透明電極22…の端部を図1に示すように導電性ペースト41・42で短絡したところ、その間に導通が確認され、電極間でリークが生じていることがわかった。そこで、短絡した端子間に±10V,1Hzの電圧を5秒間印加した後の電極基板上に透明電極22…を覆うように前述のポリビニルアルコール(PVA)を塗布してラビング処理を行う。さらに、2枚の電極基板をそれぞれの透明電極22…がマトリクス状に交差するように貼り合わせ、その間にネマティック液晶E7(メルク社製)を注入してTN液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子の全面に表示試験を行ったところ、断線およびリークのないことが確認された。
【0086】
Taは、ほとんどの酸に侵されることがないので、エッチングでTaをパターニングすることは難しい。したがって、本実施例のようにリフトオフを用いて図4(a)の構造を得ることが望ましい。また、その安定性を活かして開口率の高い図5(a)の構造を得ることもできる。この構造の作製プロセスについては、後述の実施例5において説明する。
【0087】
〔実施例2〕
本実施例に係る電極基板は、図4(b)に示す構造をなしており、透明電極22がITOで形成され、金属電極23がCuで形成されている。ITOは2000Åの膜厚および100μmの幅で形成され、Cuは2000Åの膜厚および10μmの幅で形成されている。また、透明電極22および金属電極23は、300mmの長さに形成されており、リーク検査用として1本毎に突出する部分の長さは30mmである。したがって、透明電極22において表示部分として使用される部分の長さは270mmである。さらに、1対の透明電極22および金属電極23からなる電極同士の間隔は10μmである。
【0088】
このように構成される電極基板の作製プロセスについて説明する。
【0089】
まず、図10(a)に示すように、基板21上にITOを2000Å蒸着して透明電極膜26を形成し、その上に電極パターンに対応するレジストパターン24を形成する。次に、図10(b)に示すように、臭化水素溶液により透明電極膜26をエッチングすることによって透明電極22…を形成する。さらに、図10(c)に示すように、この上からCuを2000Å蒸着して金属層25を形成する。その後、図10(d)に示すように、透明電極22…上方の領域における金属層25上に金属電極23…に対応するレジストパターン27を形成する。そして、図10(e)に示すように、金属層25をリン酸/酢酸混合液でエッチングすることによって金属電極23…が形成される。
【0090】
臭化水素溶液はITOのエッチング液として最適である一方、リン酸/酢酸混合液はCuのエッチング液に適している。また、ITOは、リン酸/酢酸混合液でエッチングされることがない。したがって、図10(d)に示す金属層25(Cu)のエッチングにおいてレジストパターン27に不良があっても、透明電極22は、その不良部分を介してエッチングされることはないので断絶しない。
【0091】
ここで、1本毎に交互に反対側に突出した透明電極22…の端部を図1に示すように導電性ペースト41・42で短絡したところ、その間に導通が確認され、電極間でリークが生じていることがわかった。そこで、短絡した端子間に±10V,1Hzの電圧を5秒間印加した後の電極基板上に透明電極22…を覆うように前述のPVAを塗布してラビング処理を行う。さらに、2枚の電極基板をそれぞれの透明電極22…がマトリクス状に交差するように貼り合わせて、その間にネマティック液晶E7を注入してTN液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子の全面に表示試験を行ったところ、断線およびリークのないことが確認された。
【0092】
なお、本実施例では、図4(b)の構造を有する電極基板について述べたが、上記の作製プロセスによって開口率の高い図5(b)の構造を有する電極基板を得てもよい。
【0093】
〔実施例3〕
本実施例に係る電極基板は、図4(c)に示す構造をなしており、透明電極22がITOで形成され、金属電極23がCuで形成されている。ITOは2000Åの膜厚および100μmの幅で形成され、Cuは2000Åの膜厚および10μmの幅で形成されている。また、透明電極22および金属電極23は、300mmの長さに形成されており、リーク検査用として1本毎に突出する部分の長さは30mmである。したがって、透明電極22において表示部分として使用される部分の長さは270mmである。さらに、1対の透明電極22および金属電極23からなる電極同士の間隔は10μmである。
【0094】
このように構成される電極基板の作製プロセスについて説明する。
【0095】
まず、図11(a)に示すように、基板21上にCuを2000Å蒸着して金属層25を形成し、その上に金属電極23…に対応するレジストパターン27を形成する。次に、図11(b)に示すように、リン酸/酢酸混合液により金属層25をエッチングすることによって金属電極23…を形成する。さらに、図11(c)に示すように、この上からITOを2000Å蒸着して透明電極膜26を形成する。その後、図11(d)に示すように、透明電極膜26上に電極パターンに対応するレジストパターン24を形成する。そして、透明電極膜26を臭化水素溶液でエッチングすることによって、図11(e)に示すように、透明電極22…が形成される。
【0096】
臭化水素溶液は、ITOのエッチング液として最適である一方、Cuに対してもエッチング効果がある。しかし、ITOとCuとでは臭化水素溶液に対するエッチング速度が異なる。例えば、40℃,47%の臭化水素溶液に対して、ITOのエッチング速度は約1000Å/minであり、Cuのエッチング速度は約150Å/minである。このため、ITOが2000Åエッチングされる間に、Cuは300Åしかエッチングされない。これにより、たとえ透明電極膜26のエッチングにおいてレジストパターン24の不良のために下層の金属電極23がオーバーエッチングされても、金属電極23が断絶することはない。
【0097】
ここで、1本毎に互いに反対側に突出した透明電極22…の端部を図1に示すように導電性ペースト41・42で短絡したところ、その間に導通が確認され、電極間でリークが生じていることがわかった。そこで、短絡した端子間に±10V,1Hzの電圧を5秒間印加した後の電極基板上に透明電極22…を覆うように前述のPVAを塗布してラビング処理を行う。さらに、2枚の電極基板をそれぞれの透明電極22…がマトリクス状に交差するように貼り合わせて、その間にネマティック液晶E7を注入してTN液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子の全面に表示試験を行ったところ、断線およびリークのないことが確認された。
【0098】
なお、本実施例では、図4(c)の構造を有する電極基板について述べたが、上記の作製プロセスによって開口率の高い図5(c)の構造を有する電極基板を得てもよい。
【0099】
〔比較例1〕
本比較例では、臭化水素溶液に代えて塩化第2鉄溶液で透明電極膜26(ITO)をエッチングする以外は、実施例3と同様にして電極基板を作製した。塩化第2鉄溶液は、臭化水素溶液と同様にITOのエッチング液として最適である一方、Cuに対してもエッチング効果がある。例えば、50℃の30%塩化第2鉄溶液に対して、ITOのエッチング速度は約1000Å/minであり、Cuのエッチング速度は約5000Å/minである。それゆえ、ITOが2000Åエッチングされる間にCuが10000Åエッチングされるので、透明電極膜26のエッチングにおいてレジストパターン24に不良があれば、金属層25が断絶してしまう。
【0100】
さらに、上記の電極基板上に透明電極22…を覆うように前述のPVAを塗布してラビング処理を行う。さらに、2枚の電極基板をそれぞれの透明電極22…がマトリクス状に交差するように貼り合わせて、その間にネマティック液晶E7を注入してTN液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子の全面に表示試験を行ったところ、断線の発生が確認された。
【0101】
〔実施例4〕
本実施例に係る電極基板は、図12に示すように、2分割された画素を形成するように、異なる幅の2本の分割電極22a・22bを一組とする透明電極22(画素分割電極)を面積階調表示用として備えている。本実施の形態をこのような画素分割電極に適用した場合、通常、図13に示すように、広い幅の分割電極22a(第1電極)と狭い幅の分割電極22b(第2電極)とが交互に配置され、かつ分割電極22a…同士と分割電極22b…同士とがそれぞれ同じ側に突出するように配置される。
【0102】
しかしながら、このような構造では、幅の異なる分割電極22a…と分割電極22b…とがそれぞれ個別の駆動回路(図示せず)によって駆動されるので、これらの駆動回路の負荷が大きく異なる結果、電極駆動時の電力消費に伴う発熱などが不均一になる問題が生じる。これに対し、図12に示すように、分割電極22a・22bの位置を透明電極22の1本おきに入れ替えることによって、両駆動回路の負荷が等しくなるので、電極駆動時の電力消費を均一に保つことができる。
【0103】
なお、図12および図13では金属電極23の図示を省略している。
【0104】
ここで、実施例1と同様にして図12の電極構造を有する電極基板を2枚作製し、これらの電極基板をそれぞれの透明電極22…がマトリクス状に交差するように貼り合わせて、その間にネマティック液晶E7を注入してTN液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子の全面に表示試験を行ったところ、断線およびリークのないことが確認された。また、一方の駆動回路の駆動による消費電力と他方の駆動回路の駆動による消費電力には差がなく、それぞれの駆動回路により駆動される電極の発熱の不均一もなかった。
【0105】
〔比較例2〕
第2の比較例として、ITOからなる透明電極22…を備えるが金属電極23…を備えていないことを除いては実施例1ないし4の電極基板と同じ電極基板をそれぞれ作製した。これらの電極基板において、1本ごとに互いに反対側に突出した透明電極22…の端部を実施例1ないし4と同様に導電性ペースト41・42で短絡したところ、その間に導通が確認され、電極間でリークが生じていることがわかった。そこで、短絡された端部間に±10V,1Hzの電圧を5秒間印加した後の電極基板上に透明電極22…を覆うようにPVAを塗布してラビング処理を行う。さらに、2枚の電極基板をそれぞれの透明電極22…がマトリクス状に交差するように貼り合わせて、その間にネマティック液晶E7を注入してTN液晶表示素子を作製した。これらの液晶表示素子の全面に表示試験を行ったところ、断線およびリークが確認された。再度、上記の電極基板と同じ4種類の電極基板を作製し、各電極基板について、導電性ペースト41・42で短絡された端部間に±20V、±50V、±80Vという異なる電圧を印加することで修正処理を施した3つの電極基板を用意し、それぞれの電極基板を用いて実施例1ないし4と同様に液晶表示素子を作製した。
【0106】
これらの液晶表示素子の全面に表示試験を行ったところ、印加電圧が±10Vであるときと同様に断線およびリークが確認された。さらに、印加電圧を±100Vにしたところ、一部の透明電極22…が部分的に焼失していることが確認された。
【0107】
このように、金属電極23…を備えていない電極基板では、電極抵抗が高いので、隣接する透明電極22・22間に形成される短絡部を電流によって焼失させることができない。また、この短絡部を焼失させるために、より高電圧を印加した結果、表示に供される透明電極22…が損傷してしまった。
【0108】
〔実施例5〕
本実施例に係る電極基板は、図5(a)に示す構造をなしており、透明電極22がITOで形成され、金属電極23がTaで形成されている。ITOは2000Åの膜厚、105μmの幅および120μmのラインピッチ(隣り合う透明電極22・22同士の間隔は15μm)で形成され、Taは5000Åの膜厚および20μmの幅で形成されている。また、透明電極22および金属電極23は、300mmの長さに形成されており、リーク検査用として1本毎に突出する部分の長さは30mmである。したがって、透明電極22において表示部分として使用される部分の長さは270mmである。金属電極23は、10μmの幅の部分で透明電極22と接触している。
【0109】
このように構成される電極基板の作製プロセスについて説明する。
【0110】
まず、図18(a)ないし(e)に示すように、実施例1の図9(a)ないし(e)に示すプロセスと同様のプロセスによって、基板21に金属電極23…を埋設し、基板21上に透明導電膜26を形成する。さらに、実施例1とは異なり、図18(f)に示すプロセスでは、レジストパターン27を、金属層25の一部を覆うように位置合わせを行った上で露光および現像によって透明電極膜26上に形成する。そして、図18(g)に示すように、透明電極膜26を47%の臭化水素の水溶液でエッチングすることによって透明電極22…が形成される。
【0111】
臭化水素溶液は、ITOのエッチング液として非常に適している。また、Taは臭化水素も含めてほとんどの酸に侵されることがない。したがって、図18(g)のプロセスにおいて透明電極膜26をエッチングする際に、金属電極23…が臭化水素の水溶液でエッチングされることはない。
【0112】
ここで、1本毎に交互に反対側に突出した透明電極22…の端部を図1に示すように導電性ペースト41・42で短絡したところ、その間に導通が確認され、電極間でリークが生じていることがわかった。そこで、短絡した端子間に±10V,1Hzの電圧を5秒間印加した後の電極基板上に透明電極22…を覆うように前述のPVAを塗布してラビング処理を行う。さらに、2枚の電極基板をそれぞれの透明電極22…がマトリクス状に交差するように貼り合わせて、その間にネマティック液晶E7を注入してTN液晶表示素子を作製した。この液晶表示素子の全面に表示試験を行ったところ、断線およびリークのないことが確認された。
【0113】
なお、以降の実施例6ないし12においても、同様のTN液晶表示素子を作製し、それらの全面に表示試験を行ったところ、断線およびリークのないことが確認された。
【0114】
〔実施例6〕
本実施例に係る電極基板は、実施例5の電極基板と同様、図5(a)に示す構造をなしているが、その作製プロセスにおいて実施例5の電極基板と異なる。具体的には、図18(g)のプロセスで透明電極膜26をエッチングする際に、エッチング液として50℃、30%の塩化第2鉄溶液を用いている。このような塩化第2鉄溶液に対して、透明電極膜26は約1000Å/minのエッチング速度でエッチングされる。
【0115】
塩化第2鉄溶液は、臭化水素溶液と同様、ITOのエッチング液として非常に適している。また、Taは塩化第2鉄にも侵されることがない。したがって、図18(g)のプロセスにおいて透明電極膜26をエッチングする際に、金属電極23…が塩化第2鉄溶液でエッチングされることはない。
【0116】
〔実施例7〕
本実施例に係る電極基板は、実施例5の電極基板と同様、図5(a)に示す構造をなしているが、金属電極23がTaではなくCuで形成されている。ITOは2000Åの膜厚および110μmの幅で形成され、Cuは5000Åの膜厚および10μmの幅で形成されている。また、ITOは120μmのラインピッチ(隣り合う透明電極22・22同士の間隔は10μm)で形成され、また、金属電極23は、5μmの幅で透明電極22と接触している。
【0117】
このように構成される電極基板を作製する際には、図18(c)のプロセスおいて、Cuを5000Å蒸着して金属層25を形成し、レジストパターン24上の金属層25をリフトオフすることによって、金属電極23…を形成する(図18(d))。そして、ITOからなる透明電極膜26を、図18(g)のプロセスにおいて47%の臭化水素の水溶液にてエッチングすることによって、透明電極22…を形成する。
【0118】
金属層25を形成するCuは、Taなどの他の金属に比較して抵抗値が低く、狭い幅で電極抵抗を低減できるため、開口率を向上する点で有利である。また、臭化水素溶液は、40℃でITOを約1000Å/minのエッチング速度でエッチングする一方、Cuを約150Å/minのエッチング速度でエッチングするだけである。これにより、たとえ透明電極膜26におけるエッチング部分の下の金属電極23がオーバーエッチングされても、金属層25が消失することはない。
【0119】
〔比較例3〕
本比較例では、臭化水素溶液に代えて塩化第2鉄溶液で透明電極膜26(ITO)をエッチングする以外は、実施例7と同様にして電極基板を作製した。塩化第2鉄溶液は、臭化水素溶液と同様にITOのエッチング液として最適である一方、Cuに対してもエッチング効果がある。例えば、50℃の30%塩化第2鉄溶液に対して、ITOのエッチング速度は約1000Å/minであり、Cuのエッチング速度は約5000Å/minであるので、ITOが2000Åエッチングされる間にCuが10000Åエッチングされる。このため、本電極基板においては金属電極23が消失してしまい、図5(a)に示す基板構造を得ることができなかった。
【0120】
〔実施例8〕
本実施例に係る電極基板において、金属電極23は、図19(a)に示すように、第1層23a、第2層23bおよび第3層23cからなる3層構造をなしており、10μmの幅で形成されている。第1および第3層23a・23cは、ともに厚さ1000ÅのTaによって形成されている。第1および第3層23a・23cの間に挟持される第2層23bは、厚さ5000ÅのCuによって形成されている。また、透明電極22の幅、透明電極22のラインピッチおよび金属電極23と透明電極22との接触幅は、実施例7の電極基板と同様、それぞれ110μm、120μmおよび5μmである。
【0121】
このように構成される電極基板を作製する際には、図18(c)のプロセスにおいて、1つの金属で金属層25を形成する代わりに、図19(b)に示すように、Taからなる第1膜25a、Cuからなる第2膜25b、Taからなる第3膜25cを順次成膜する。そして、図18(e)のプロセスにおいて、透明電極膜26として通常のITOを2000Å成膜し、図18(g)のプロセスにおいて、ITOを臭化水素の47%水溶液でエッチングする。
【0122】
前述のように、臭化水素溶液は、40℃でITOを約1000Å/minのエッチング速度でエッチングする一方、Taを全くエッチングすることはない。また、Cuは、同じ臭化水素溶液で約150Å/minの速度でエッチングされるだけであるが、多少なりともエッチングされるため、実施例7の電極基板のように金属層25がCuのみからなる構造では、凹部21aから剥離する可能性があり、電極基板の歩留りを低下させるおそれがある。しかしながら、金属電極23において、Cuからなる第2層23bをTaからなる第1および第3層23a・23cで挟持する構造を採用することによって、第2層23bが直接臭化水素溶液に触れることがないため、図19(a)に示す基板構造を容易に得ることができる。
【0123】
〔実施例9〕
本実施例に係る電極基板は、実施例8の電極基板と同様、図19(a)に示す構造をなしているが、その作製プロセスにおいて実施例8の電極基板と異なる。具体的には、図18(g)のプロセスで透明電極膜26をエッチングする際に、エッチング液として50℃、30%の塩化第2鉄溶液を用いている。
【0124】
比較例3のように、塩化第2鉄溶液はCuを素早くエッチングしてしまうが、図19(a)に示す第2層23b(Cu)が、塩化第2鉄でエッチングされない第1および第3層23a・23c(Ta)に挟持されている。したがって、第2層23bが塩化第2鉄溶液によるエッチングプロセスを経ても消失することはないので、所望の基板構造を容易に得ることができる。
【0125】
〔実施例10〕
本実施例に係る電極基板は、図5(a)に示す構造をなしており、透明電極22の幅、透明電極22のラインピッチおよび金属電極23と透明電極22との接触幅は、実施例7の電極基板と同様、それぞれ120μm、110μmおよび5μmである。
【0126】
この電極基板の作製を作製する際には、図18(d)のプロセスにおいて、Cuからなる金属層25を、10μmの幅、かつ5000Åの厚さで形成する。そして、図18(e)のプロセスにおいて、アモルファスITO(出光興産社製、IDIXO)からなる透明電極膜26を2000Åの厚さで成膜する。さらに、図18(g)のプロセスにおいて、透明電極膜26を蓚酸の水溶液でエッチングする。IDIXOは、5%、25℃の蓚酸溶液により200Å/minのエッチング速度でエッチングされるが、その一方、Cuは同じ蓚酸溶液によっても全くエッチングされない。このため、所望の基板構造を容易に得ることができる。
【0127】
〔実施例11〕
本実施例では、実施例5および6で作製した電極基板を用いて図2に示す図2に示す液晶表示装置を作製した。この液晶表示装置は、強誘電性液晶によって形成される液晶層10を含んだ強誘電性液晶表示装置である。
【0128】
上記の電極基板において、金属電極23と重ならない透明電極22の透光部は95μmの幅を有している。これによって、本液晶表示装置では、62.67%の開口率が得られた。また、この液晶表示装置では、電極抵抗による信号の減衰および歪み、ならびに基板表面段差による配向不良がなく、高輝度かつ高コントラスト(200以上のコントラスト比)の特性が得られた。
【0129】
〔比較例4〕
本比較例では、実施例11の電極基板を先行技術の構成(図21(a)参照)に示す構造で作製し、図2に示す液晶表示装置(強誘電性液晶表示装置)を作製した。この液晶表示装置でも、電極抵抗による信号の減衰および歪みがなく、高輝度かつ高コントラスト(200以上のコントラスト比)の特性を得ることができた。
【0130】
しかしながら、この液晶表示装置では、基板表面段差による配向不良が発生し、表示の均一性が損なわれていた。
【0131】
〔実施例12〕
本実施例では、実施例7ないし10で作製した電極基板を用いて、実施例11と同様、図2に示す液晶表示装置(強誘電性液晶表示装置)を作製した。
【0132】
上記の電極基板において、金属電極23と重ならない透明電極22の透光部は105μmの幅を有している。これによって、本液晶表示装置では、76.56%の開口率が得られた。また、この液晶表示装置では、電極抵抗による信号の減衰および歪み、ならびに基板表面段差による配向不良がなく、高輝度かつ高コントラスト(250以上のコントラスト比)の特性が得られた。
【0133】
〔比較例5〕
本比較例では、実施例12の電極基板を先行技術の構成(図21(a)参照)に示す構造で作製し、図2に示す液晶表示装置(強誘電性液晶表示装置)を作製した。この液晶表示装置でも、電極抵抗による信号の減衰および歪みがなく、高輝度かつ高コントラスト(250以上のコントラスト比)の特性を得ることができた。
【0134】
しかしながら、この液晶表示装置では、基板表面段差による配向不良が発生し、表示の均一性が損なわれていた。
【0135】
以上、本発明の実施例1ないし12について説明したが、本発明はこれらの実施例1ないし12に限定されるものではない。
【0136】
【発明の効果】
以上のように、本発明の表示装置用電極基板は、基板上にストライプ状に配列される複数の電極を有し、この電極が、平行に並んで互いに接触する少なくとも2つの電極部によって形成され、該各電極部を構成する導電体のエッチング特性が互いに異なっており、1本おきに一方の端部で互いに短絡される一方、残余の他方の端部で互いに短絡された状態で、短絡された両側の端部間に電圧が印加されることによって上記電極間に形成されたリーク部分が切断されている構成である。
【0137】
これにより、異なる電極部が同一箇所で断絶することが防がれるので、電極全体は必ずいずれかの電極部でつながっている構造を得ることができる。また、電極が1本おきに一方の端部で短絡され、残余の電極が他方の端部で短絡された状態で両側の端部の間に電圧が印加されると、隣り合う電極間に通常ごく細く形成されるリーク部分に大きい電流が流れることによってリーク部分が焼失する。したがって、ほとんど断絶することのない電極構造を提供するとともに、リーク部分の検出およびレーザーなどによらずに簡単にリーク部分の修正を行うことができるという効果を奏する。
【0138】
本発明の表示装置用電極基板は、さらに、上記導電体が、同一のエッチング液によってエッチングされない材料からなるので、導電体に容易にエッチング選択性を付与することができる。したがって、電極の断絶を確実に防止することができるという効果を奏する。
【0139】
あるいは、本発明の表示装置用電極基板は、さらに、上記導電体が、それぞれの導電体間で同一のエッチング液によりエッチングされる速度が5倍以上異なる材料からなるので、例えば、電極が2層の電極部からなる場合、上層の電極部を形成するために導電体をエッチングする際に、レジストパターンの不良のために、エッチングによって形成された上層の電極部が断絶しても、すでに形成されている下層の電極部がエッチング液によって侵される速度は非常に低いため、下層の電極部が上層の電極部と同じ箇所で断絶することはない。したがって、エッチング液の共通化が図られる結果、製造コストを低減することができるという効果を奏する。
【0140】
上記の各電極基板は、さらに、上記電極部のうち少なくとも1つが透明電極であり、他の1つが金属電極であるので、透明電極および金属電極からなる電極全体の抵抗値が非常に低く抑えられる一方、通常、ごく細く形成される抵抗値の高いリーク部分へのジュール発熱の集中が大きくなる。それゆえ、比較的低い電圧の印加によっても、透明電極を損傷させることなく、リーク部分を焼失しうる大きな電流を透明電極に流すことができる。したがって、より確実にリーク部分を修正することができるという効果を奏する。
【0141】
上記の各電極基板は、さらに、上記低抵抗導電体電極が、上記基板に埋設されるとともに、上記透明電極によって一部のみ覆われるように上記透明電極と接触するので、低抵抗導電体電極が透明電極上に形成される構造と比べて、電極基板表面を平坦に形成することができ、また、透明電極によって形成される画素部が遮光性を有する低抵抗導電体電極によって覆われる面積が少なくなる。しかも、本電極基板では、前述の従来の基板構造が有していた透明電極と金属電極との間に介在する絶縁膜が不要であるので、構造が簡素化される。したがって、簡素な構造で電極基板の平坦性および開口率の向上を容易に図ることができるという効果を奏する。
【0142】
上記の各電極基板は、さらに、上記電極が、分割された画素を形成するために異なる幅の1対の第1電極と第2電極とからなり、隣り合う上記電極において、上記第1電極同士が隣り合うとともに、上記第2電極同士が隣り合うように配置されているので、電極の端部を1本おきに反対側に引き出して、電極の端部にそれぞれの側で駆動回路を接続する場合、両駆動回路の負荷が等しくなる結果、電極駆動時の電力消費を均一に保つことができる。したがって、表示品位に悪影響を与える電極からの発熱の不均一を抑えることができるという効果を奏する。
【0143】
本発明の表示装置用電極基板の製造方法は、導電体をエッチングすることによって上記電極を構成する少なくとも2つの電極部が平行に並んで互いに接触するように、該各電極部を構成する導電体のエッチング特性を互いに異ならせて電極を基板上にストライプ状に複数形成する第1工程と、上記電極の一方の端部を1本おきに短絡するとともに残余の電極の他方の端部を短絡し、短絡された端部の間に電圧を印加することによって隣り合う上記電極間に形成されたリーク部分を切断する第2工程とを備えている。
【0144】
これにより、異なる電極部が同一箇所で断絶することが防止されるので、電極全体は必ずいずれかの電極部でつながっている構造を得ることができる。また、電極の端部を1本おきに短絡し、残余の電極の他方の端部を短絡した状態で両側の端部の間に電圧を印加すると、隣り合う電極間に通常ごく細く形成されるリーク部分に大きい電流が流れることによってリーク部分が焼失する。したがって、ほとんど断絶することのない電極構造を提供するとともに、リーク部分の検出およびレーザーなどによらずに簡単にリーク部分の修正を行うことができるという効果を奏する。
【0145】
本発明の製造方法は、さらに、上記第1工程において、同一のエッチング液によってエッチングされない材料を上記導電体として用いるので、導電体に容易にエッチング選択性を付与することができる。したがって、電極の断絶を確実に防止することができるという効果を奏する。
【0146】
あるいは、本発明の製造方法は、さらに、上記第1工程において、それぞれの導電体間で同一のエッチング液によりエッチングされる速度が5倍以上異なる材料を上記導電体として用いるので、例えば、電極が2層の電極部からなる場合、レジストパターンの不良のために、エッチングによって形成された上層の電極部が断絶しても、すでに形成されている下層の電極部がエッチング液によって侵される速度は非常に低いため、下層の電極部が上層の電極部と同じ箇所で断絶することはない。したがって、エッチング液の共通化が図られる結果、製造コストを低減することができるという効果を奏する。
【0147】
本発明の上記の各製造方法は、さらに、上記第1工程において、上記低抵抗導電体電極を上記基板に埋設して形成した後に、上記低抵抗導電体電極を一部のみ覆い、かつ上記低抵抗導電体電極と接触するように上記透明電極を上記基板上に形成するので、低抵抗導電体電極が透明電極上に形成される構造と比べて、電極基板表面を平坦に形成することができ、また、透明電極によって形成される画素部が遮光性を有する低抵抗導電体電極によって覆われる面積を少なくすることができる。しかも、本第1工程では、前述の従来の基板構造が有していた透明電極と金属電極との間に介在する絶縁膜を作製するプロセスが不要であるので、製造プロセスが簡素化される。したがって、簡素なプロセスで電極基板の平坦性および開口率の向上を容易に図ることができるという効果を奏する。
【0148】
本発明の上記の各製造方法は、さらに、上記第1工程において、上記電極部のうち少なくとも1つを透明電極として形成し、他の1つを金属電極として形成するので、透明電極および金属電極からなる電極全体の抵抗値が非常に小さく抑えられる一方、通常、ごく細く形成されるて抵抗の高いリーク部分へのジュール発熱の集中が大きくなる。それゆえ、比較的低い電圧の印加によっても、透明電極を損傷させることなく、リーク部分を焼失しうる大きな電流を透明電極に流すことができる。したがって、より確実にリーク部分を修正することができるという効果を奏する。
【0149】
本発明の上記の各電極基板の製造方法は、さらに、上記第1工程において、分割された画素を形成するために異なる幅の1対の第1電極と第2電極とからなり、隣り合う上記電極において、上記第1電極同士が隣り合うとともに、上記第2電極同士が隣り合うように上記電極を形成するので、電極の端部を1本おきに反対側に引き出して、電極の端部にそれぞれの側で駆動回路を接続する場合、両駆動回路の負荷が等しくなる結果、電極駆動時の電力消費を均一に保つことができる。したがって、表示品位に悪影響を与える電極からの発熱の不均一を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る電極基板における断線の検出および短絡部の修正を行うための構成を示す平面図である。
【図2】上記電極基板を有する液晶表示装置の構成を示す断面図である。
【図3】上記電極基板における透明電極の配置構成を示す平面図である。
【図4】(a)ないし(c)は上記電極基板における他の透明電極の配置構成を示す断面図である。
【図5】(a)ないし(c)は上記電極基板におけるさらに他の透明電極の配置構成を示す断面図である。
【図6】図1の電極基板における一部の透明電極および補助電極に断絶が生じた状態を示す平面図である。
【図7】(a)および(b)は本実施の形態に係る電極構造における断線が防止できるメカニズムを2層構造の電極の作製工程を例に示す斜視図である。
【図8】上記電極基板を有する反射型の液晶表示素子の構成を示す断面図である。
【図9】(a)ないし(g)は図4(a)または図5(a)の電極基板の各作製プロセス(本発明の実施例1)における構造を示す断面図である。
【図10】(a)ないし(e)は図4(b)または図5(b)の電極基板の各作製プロセス(本発明の実施例2)における構造を示す断面図である。
【図11】(a)ないし(e)は図4(c)または図5(c)の電極基板の各作製プロセス(本発明の実施例3)における構造を示す断面図である。
【図12】本発明の実施例4に係る分割画素用の電極構造を示す平面図である。
【図13】上記実施例4の電極構造の比較例としての分割画素用の電極構造を示す平面図である。
【図14】従来の電極基板における電極構造を示す平面図である。
【図15】図14の電極構造の断線検査の方法を示す平面図である。
【図16】図14の電極構造のリーク検査の方法を示す平面図である。
【図17】本発明の実施の一形態に係る電極基板を有する表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【図18】(a)ないし(g)は図5(a)の電極基板の各作製プロセスにおける構造を示す断面図である。
【図19】(a)は本発明の実施例8に係る電極基板の一部を拡大して示す断面図であり、(b)は(a)の電極基板を作製する際の図18(d)のプロセスに代わるプロセスにおける電極基板を示す断面図である。
【図20】(a)および(b)は、従来の他の電極基板の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1・2 ガラス基板(基板)
3 信号電極(電極部)
5 走査電極(電極部)
15・16 補助電極(電極部)
21 基板
22 透明電極(電極部)
22a 分割電極(第1電極)
22b 分割電極(第2電極)
23 金属電極(電極部、低抵抗導電体電極)
S 短絡部(リーク部分)

Claims (4)

  1. ストライプ状の複数の電極が基板上に配列されている構造を形成する表示装置用電極基板の製造方法において、
    上記基板に低抵抗導電体電極を埋設して形成する第1工程と、
    上記複数の電極がストライプ状に配列する方向において上記低抵抗導電体電極の幅の一部のみを覆い、かつ上記低抵抗導電体電極と平行に並んで互いに接触するように、上記低抵抗導電体電極とはエッチング特性が異なる透明電極をエッチングによって上記基板上に形成し、上記低抵抗導電体電極と上記透明電極とからなる上記電極を複数形成する第2工程と
    上記電極の一方の端部を1本おきに短絡するとともに残余の電極の他方の端部を短絡し、短絡された端部の間に電圧を印加することによって隣り合う上記電極間に形成されたリーク部分を焼失させ、リーク箇所を修正する第3工程とを備えていることを特徴とする表示装置用電極基板の製造方法。
  2. 上記第2工程において、上記低抵抗導電体電極をエッチングしないエッチング液を用いて上記透明電極をエッチングすることを特徴とする請求項に記載の表示装置用電極基板の製造方法。
  3. 上記第2工程において、上記透明電極をエッチングする速度が上記低抵抗導電体電極をエッチングする速度の5倍以上大きいエッチング液を用いて上記透明電極をエッチングすることを特徴とする請求項に記載の表示装置用電極基板の製造方法。
  4. 上記第2工程において、上記電極が分割された画素を形成するために異なる幅の1対の第1電極と第2電極とからなり、隣り合う上記電極において、上記第1電極同士が隣り合うとともに、上記第2電極同士が隣り合うように上記電極を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置用電極基板の製造方法。
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