JP4511110B2 - 積層電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極層をセラミック層を介して複数積層させた積層電子部品の製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の積層電子部品は、積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタとして広く普及している。これら電子部品では、その製造過程でセラミックグリーンシートにコンデンサ電極或いはインダクタ電極を例えば印刷手法にて形成し、こうしたセラミックグリーンシートを積層させている。
【0003】
積層セラミックコンデンサでは、セラミックグリーンシートを介在して位置する電極間を導通させた例が提案されているが、その導通は、積層方向に貫通する貫通孔を形成し、その貫通孔に導電材料(導電ペースト)を加圧充填させることにより、なされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−241890号公報
【特許文献2】
特開平3−283490号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の積層電子部品では、次のような問題点が指摘されるに到った。
【0006】
上記した貫通孔の形成には、メカパンチやドリルを用いた孔形成手法の他、レーザー照射による熱溶融を利用した孔形成手法があるが、多数の貫通孔を必要とする製品においては生産効率の観点から後者の手法が多用されている。シートと電極層では、通常、電極層の方が低融点であることから、こうしたレーザー照射による貫通孔形成手法では、レーザー照射に伴う熱により電極層が先に熱溶融する。よって、電極層の貫通孔側端面が貫通孔内周壁から後退する現象、いわゆる電極の引き下がり現象が起き得る。こうした電極の引き下がり現象が起きたまま貫通孔に導電ペーストを充填(加圧充填)すると、貫通孔内は導電ペーストで充填されるものの、セラミック層間の電極層厚みは僅か数μmと薄いので、引き下がりを起こした電極層端面まで導電ペーストが達しない虞があった。こういった事態が起きると、貫通孔内の導電ペーストは電極層と接触しないので、導電ペーストと電極層の導通を採れなくなる。よって、電子部品としての設計性能を発揮できない虞がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされ、セラミック層間の電極層と貫通孔内の充填材との接触の信頼性を高めることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の製造方法は、電極層をセラミック層を介して複数積層させた積層電子部品の製造方法であって、
前記電極層を備えるセラミックグリーンシートを、複数層積層してシート積層体を形成すると共に、該シート積層体の最上段或いは最下段の少なくとも一方の前記セラミックグリーンシートに、押圧を受けて圧縮変形する圧縮可変シートを接触配設させた該シート積層体を形成する工程(a)と、
前記シート積層体の積層方向に前記セラミックグリーンシートと前記電極層と前記圧縮可変シートを貫通する貫通孔を形成する工程(b)と、
前記貫通孔に充填材を充填する工程(c)と、
前記貫通孔に充填済みの前記シート積層体をシート積層方向に沿って押圧しつつ、該押圧により前記圧縮可変シートの変形を起こす工程(d)とを有する、ことをその要旨とする。
【0009】
上記構成を有する本発明の積層電子部品の製造方法では、貫通孔に充填材を充填済みのシート積層体をその積層方法に沿って押圧することで、圧縮可変シートの圧縮変形を起こす。この圧縮可変シートにおける貫通孔内の充填材は、このシート変形の分だけ、シート積層体内の貫通孔に押し戻される。従って、こうした充填材の押し戻しによって、シート積層体における貫通孔に充填済みの充填材は、貫通孔内壁から外側に押し込まれ、引き下がり現象を起こした電極層端面と接触する。この結果、セラミック層間の電極層と貫通孔内の充填材との接触の信頼性を高めることができる。これにより、設計性能を有する積層電子部品を提供することができる。
【0010】
また、かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の他の製造方法は、電極層をセラミック層を介して複数積層させた積層電子部品の製造方法であって、
前記電極層を備えるセラミックグリーンシートを、複数層積層してシート積層体を形成すると共に、該シート積層体の最上段或いは最下段の少なくとも一方の前記セラミックグリーンシートに、押圧を受けて圧縮変形する圧縮可変シートを接触配設させた該シート積層体を形成する工程(a)と、
前記シート積層体の積層方向に前記セラミックグリーンシートと前記電極層と前記圧縮可変シートを貫通する貫通孔を形成する工程(b)と、
充填材を収納し該充填材を加圧注入する充填容器と前記シート積層体の押圧が可能な押圧体との間に前記シート積層体を配設し、前記押圧体により前記シート積層体を支えつつ前記充填容器から前記充填材を前記シート積層体の前記貫通孔に加圧注入する工程(c)とを備え、
前記工程(c)は、
前記押圧体と前記充填容器とによる前記シート積層体の押圧を、前記圧縮可変シートの圧縮変形が起こるよう実行する、ことをその要旨とする。
【0011】
上記構成を有する本発明の他の製造方法では、充填容器からの充填材の加圧注入に際し、押圧体は、充填容器の側からの充填材加圧注入圧に抗してシート積層体を支え、充填容器はシート積層体の貫通孔に充填材を充填させる。こうした充填材の充填を受ける際、シート積層体は押圧体と加圧容器により押圧され、圧縮可変シートはこの押圧により圧縮変形を起こす。
【0012】
こうしたシート積層体への充填材充填に際して圧縮可変シートの圧縮変形を起こすので、この製造方法によっても、圧縮可変シートにおける貫通孔内の充填材を、シート変形の分だけ、シート積層体内の貫通孔に押し込む。よって、本発明のこの他の製造方法によっても、既述したように、引き下がり現象を起こした電極層端面と貫通孔内の充填材との接触の信頼性を高めることができる。これにより、設計性能を有する積層電子部品を提供することができる。
【0013】
上記の構成を有する本発明の積層電子部品の製造方法において、前記圧縮可変シートとして、圧縮により変形可能な特性を有するポリエチレンテレフタレートのシートを用いるようにした場合は、前記工程(c)における前記充填容器からの前記加圧注入圧力を、2〜7.5MPaの範囲から選択すればよい。
【0014】
こうすれば、ポリエチレンテレフタレートのシートをより確実に変形させることができるので、当該シートの変形による充填材の押し込みが確実となる。よって、セラミック層間の電極層と貫通孔内の充填材との接触の信頼性をより高めることができる。
【0015】
この場合、加圧容器からの加圧注入圧力が上記下限値2MPa以上であれば、貫通孔への充填材の加圧注入を確実に図ることができる。また、加圧注入圧力が上限値7.5MPa以下であれば、充填材の粘性が高い場合であっても充填材を貫通孔に確実に充填できる。そして、加圧注入圧力が上記範囲であれば、ポリエチレンテレフタレートシートの変形を確実に起こして、上記した電極層端面に向けた充填材の押し込みを確実に起こすことができる。
【0016】
また、前記圧縮可変シートとして、圧縮により弾性或いは塑性変形可能な特性を有するシートであれば、その材質に関係なく、用いることもできる。この場合は、シート積層体押圧時の押圧圧力をシートの弾性或いは塑性変形を起こし得る圧力(例えば、上記した圧力)とすれば、シートが変形を起こす分だけ充填材の押し込みができるので、セラミック層間の電極層と貫通孔内の充填材との接触の信頼性をやはり高めることができる。
【0017】
また、充填容器を、収納した充填材を上方に向けて加圧注入するものとすれば、充填材の収納が容易である。しかも、充填容器を下にして充填材注入側を上向きとし、その上にシート積層体、押圧体と配置できる。よって、充填材注入側が下向きとならないので、シート積層体配置の際、或いは充填材注入の際、充填容器からの充填材の垂れ落ちを起こさないようにでき、取り扱いが容易である。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の手順で説明する。
A.実施例
A−1.積層セラミックコンデンサ10の全体構成
A−2.積層セラミックコンデンサ10の製造工程
A−3.作用効果
B.変形例
【0019】
A.実施例:
A−1.積層セラミックコンデンサ10の全体構成:
図1は本発明の一実施例である積層セラミックコンデンサ10の縦断面を示す説明図である。
【0020】
積層セラミックコンデンサ10は、後述するようにセラミックグリーンシートの積層を経て製造されるが、焼成を経ると各シートは焼結一体化する。図1はこの焼結後の様子を示している。この図1に示すように、積層セラミックコンデンサ10は、導電性金属からなる電極層24をセラミック層22を介して複数積層させている。電極層24の間のセラミック層22は、電極層24間の誘導体(絶縁層)として機能する。
【0021】
各電極層24は、一層おきに、外部から電圧を供給するビア電極28に導通されている。従って、ビア電極28から各電極層24に電圧を加えると、誘電体であるセラミック層22を介在して対向する電極層24では、一方に正の電荷の蓄積が、他方に負の電荷の蓄積が起こる。こうした現象が対向する各電極層で起き、積層セラミックコンデンサ10はコンデンサとして機能する。しかも、この積層セラミックコンデンサ10では、上記のような電荷の蓄積が起きる部位が多層に亘ることから、積層セラミックコンデンサ10によれば、小型で大きな静電容量を有するコンデンサを提供することができる。
【0022】
A−2.積層セラミックコンデンサ10の製造工程:
図2は積層セラミックコンデンサ10の製造工程を示す工程図、図3は図2の工程の様子を説明する説明図である。積層セラミックコンデンサ10は、この図2のステップS100〜S180の各工程を経て製造される。各工程の内容につき、以下、工程順に説明する。
【0023】
A−2−1.キャリアフィルム上へのシート形成(ステップS100):
まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の長尺状のキャリアフィルムにチタン酸バリウムなどから成るセラミックスラリを均一に薄く塗布して乾燥させる。これにより、キャリアフィルム上にセラミックグリーンシート22aが形成される。このセラミックグリーンシート22aは、焼成後にセラミック層22となる。
【0024】
A−2−2.シート上への電極層の形成(ステップS110):
次に、乾燥後のセラミックグリーンシート22aに、スクリーン印刷手法などによってAp−Pd製の電極パターンを印刷する。これにより、セラミックグリーンシート22aの表面には、電極パターンが印刷された部分に電極層24が形成される。また、セラミックグリーンシート22aの表面には、電極パターンが印刷されていない部分もあり、この電極層24が形成されていない部分のことを窓部25という(図3を参照)。本実施例では、電極層24の厚みが2〜3μm、セラミックグリーンシート22aが5μmとなるようにされている。
【0025】
A−2−3.積層用セラミックシートの切り出しおよびキャリアフィルムの剥離(ステップS120、S130):
次に、上記のセラミックグリーンシート22aが形成された長尺状のキャリアフィルムを搬送させながらセラミックグリーンシート22aを、その表面の電極層24と共に一定形状で切り出す。切り出したセラミックグリーンシート22aは、キャリアフィルムの巻き取り等によりこのキャリアフィルムから剥離される。こうしたセラミックグリーンシート22aの切り出しに際しては、図3(A)、(B)に示すように、電極層24および窓部25のレイアウトが異なる2種類のセラミックグリーンシート22aの切り出しが行われる。
【0026】
A−2−4.セラミックシートの積層(ステップS140):
図4はシートの積層が完了したときの状況と後述するステップにおけるレーザー照射の様子を模式的に表す説明図である。
次に、上記のように形成された複数枚のセラミックグリーンシート22aを所定枚数だけ積層する。この積層に際しては、まず、ダミーシート34を予め敷設しておく。このダミーシート34は、図4に示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)製の剥離シート33上にセラミックスラリを厚めに塗布して乾燥させて形成したベースセラミック層32を有する。
【0027】
続いて、敷設されたダミーシート34のベースセラミック層32上に、図3(A)、(B)に示した二種類のセラミックグリーンシート22aを図4に示すように交互に積層する。この積層に際しては、図示するように、最下段のセラミックグリーンシート22aをその電極層24がベースセラミック層32に接するようにし、その後は、次のセラミックグリーンシート22aをその電極層24が積層済みのセラミックグリーンシート22aに重なるようにする。こうしたシート積層により、セラミックのシート積層体100ができあがる。
【0028】
ダミーシート34を含むシート積層体100全体の厚みdaは、完成品の積層セラミックコンデンサ10の厚みを規定する。この厚みdaを定めるセラミックグリーンシート22aの厚みd0(図3参照)やその総積層数、ダミーシート34の厚みは、所望される積層セラミックコンデンサ10のスペック、サイズで定まる。本実施例では、セラミックシート積層体全体の厚みdaを1mmとした。
【0029】
こうして積層が終わった状況では、グリーンシートである都合上、窓部25および積層体端部においてその上部のグリーンシートが撓んで当該窓部にある程度入り込んでいる。
【0030】
A−2−5.レーザー照射による貫通孔の形成(ステップS150):
次に、レーザー加工機を用いて、上記のシート積層体100に導電材料充填用の貫通孔26を次のようにして形成する。本実施例では、この貫通孔26に充填された導電材料は、製品完成後に図1に示すビア電極28となる。
【0031】
図4に示すように、上記のシート積層体100では、セラミックグリーンシート22aに設けられたそれぞれの窓部25が、一層おきにシート積層方向に上下に並ぶ。レーザー加工機は、この上下に並んだ窓部25の中心を結ぶ軸線(図4における一点鎖線)に沿ってレーザービーム50を照射する。これにより、上記軸線上に位置するセラミックグリーンシート22a、電極層24およびダミーシート34がレーザー照射による熱で溶融され、上記軸線の周囲に、積層体を上下に貫通する貫通孔26が形成される。図5は貫通形成された貫通孔26をその形状をストレート状であるとして模式的に示す説明図である。この図5に示すように、貫通孔26は、窓部25を取り囲む電極層24と貫通孔26に充填形成されたビア電極28とを非導通の状態に維持するために、窓部25よりも小さな孔径で形成される。本実施例では、焼成後の貫通孔径が100μmとなるよう貫通孔26の孔径を120μmとし、窓部25の径を350μmとした。なお、これら径はこうした数値のものに限られるわけではなく、貫通孔26にあっては60〜150μmとすることもできる。この場合、貫通孔孔径の決定に際しては、貫通孔26に充填する後述の充填材の粘度等を考慮すればよい。また、窓部25の径にあっては、窓部25の形成ピッチ等を考慮すればよい。
【0032】
図4に示すシート積層体100は、上面視すれば方形形状であるため、窓部25をマトリックス状に有する。従って、上記のレーザービーム50の照射は、図5に示した4箇所のみならず、方形形状のシート積層体の上面から、マトリックス状の個々の窓部25について、同様に行なわれる。このため、シート積層体100には多数の貫通孔26がマトリックス状に形成されることになる。
【0033】
このようにシート積層体100の異なる複数の位置に貫通孔26を形成する手法として、本実施例では、いわゆるサイクル加工法を採用している。サイクル加工法は、図4に示すように、各貫通孔形成位置に順次にレーザービーム50を照射する工程CYを何回か繰り返し、各貫通孔形成位置における穴の深さを徐々に深めながら、最終的に全ての貫通孔形成位置に貫通孔を形成する手法である。
【0034】
図示するように、本実施例では、レーザービーム50の照射の照射側にダミーシート34が位置するようにした。よって、レーザービーム50の照射による溶融物(例えば、電極やグリーンシート中の有機成分の溶融物)がセラミックグリーンシート22aの表面に付着することがないので、好ましい。
【0035】
上記したステップS150までの工程において、工程の前後を変更することもできる。例えば、ステップS130のキャリアフィルム剥離とステップS140のシート積層を逆に行ったり、ステップS120のシート切り出しをステップS110の配線層の形成に先だって行うこともできる。なお、ステップS120とステップS110の順に工程を行って、更にステップS140、ステップS130の順に工程を行うようにすることもできる。
【0036】
A−2−6.貫通孔への導電材料の充填(ステップS160):
次に、シート積層体100の各貫通孔26に導電材料を充填する。図6は貫通孔26に導電材料を充填する充填装置の概略構成図である。
【0037】
図示するように、シート積層体100を充填容器110に載置する。この積層体載置に当たっては、後述するように充填容器110にて導電材料を充填する際、セラミックグリーンシート22aの表面に導電材料を付着させないためのマスクとして、ダミーシート34の剥離シート33を充填容器110の側に配置する。このマスクには、同様の効果を得られるものであればその材質等については制限がなく、金属板などを用いても構わない。なお、シート積層体100は、図示しない位置決めピン等にて充填容器110に対して位置決めされる。
【0038】
充填容器110は、充填材である導電材料を容器筐体112の内部に収納し、底板114を、油圧シリンダ等のアクチュエータ116で押し上げる。充填容器110は、底板114の押し上げにより、容器載置済みのシート積層体100の貫通孔26に、収納済み導電材料を貫通孔下方側から加圧注入する。なお、図6では、導電材料が容器筐体112のほぼ上端端面に達するまで収納されている様子を示す。
【0039】
また、充填容器110に載置したシート積層体100に対しては、その上方から、押圧板118が押し当てられる。この押圧板118は、油圧シリンダ等のアクチュエータ120の押圧力を受けて、シート積層体100を下方に押圧する。
【0040】
こうしてシート積層体100を充填容器110と押圧板118との間に位置させると、充填容器110の底板114の押し上げと押圧板118の押し下げを行う。本実施例では、押圧板118によるシート積層体100の押圧圧力、即ち、充填容器110が底板114の押し上げを経て導電材料を加圧注入する圧力を次のように設定した。この加圧注入圧力は、PET製の剥離シート33の変形を起こし得る圧力である。具体的には、2.5MPaとした。
【0041】
こうした圧力は、2〜7.5MPaの範囲から選択すればよい。そして、その圧力値の設計に際しては、PET製の剥離シート33の変形を起こし得ることのほか、充填する導電材料の粘度、貫通孔26の孔径等を考慮すればよい。本実施例では、導電材料を1万〜200万Pa・s(好ましくは10万〜100万Pa・s)とし、貫通孔26の孔径を120μm(焼成後で100μm)としたので、こうした粘度・孔径等に応じて圧力を設計すればよい。
【0042】
こうした圧力設計に際し、充填容器110からの加圧注入圧力が下限値2MPa以上であれば、貫通孔26への充填材の加圧注入を確実に図ることができる。また、加圧注入圧力が上限値7.5MPa以下であれば、本実施例のように導電材料の粘性が高い場合であってもこうした導電材料を貫通孔26に確実に充填できる。
【0043】
充填容器110から加圧注入された導電材料は、貫通孔26に充填されると共に、この貫通孔26内から電極層24にまで達して固化する。このように固化した導電材料が、既述したビア電極28として機能する(図1参照)。この導電材料の充填の様子については、後述する。なお、導電材料の充填に際し、貫通孔26内のエアは適宜な方法で貫通孔26の外部に排出される。例えば、押圧板118の下面に、通気性を有するシートを配置したり、この押圧板118自体を多孔質で通気性を有する板材とすればよい。
【0044】
A−2−7.本圧着・表面電極の形成(ステップS170):
次に、導電材料充填済みのシート積層体100に図示しないベースセラミック層を、ダミーシート34と反対側(導電材料の注入側)に接触させ、これらを高温・高圧プレスによって圧着する。図7は本圧着の様子を説明するための説明図である。
【0045】
図示するように、この高温・高圧プレスを行う際には、シート積層体100を方形の加圧容器127に入れ、押圧板128を油圧シリンダ等のアクチュエータ130で押し下げる。これにより、シート積層体100は、外郭形状(方形形状)を維持されたまま、高圧プレスを受ける。このプレスに当たっては、本実施例では、60MPaの条件で高圧プレスしつつ、押圧板128を経て加熱(80℃)する。加圧容器127は、シート積層体の方形形状を崩さないように機能すると共に、積層体側面からのエア抜きも行う。こうした圧着により、シート積層体100に含まれるそれぞれのセラミックグリーンシート22aは、ダミーシート34と上記のベースセラミック層で挟まれた状態で、互いに密着する。また、窓部25や電極層端部にあっては、押圧された上下のグリーンシートで埋まることになる。
【0046】
続いて、シート積層体の表面のダミーシート34から剥離シート33を剥離する。こうした剥離により、シート積層体は、剥離シート33内で固化した部分のビア電極28を外部に突出させる。本実施例では、ビア電極28の突出した部分を、電池等の供給電源に接続される表面電極として機能させているが、表層印刷などにより別途表面電極を設けても良い。
【0047】
A−2−8.溝入れ・脱脂・焼成・ブレーク(ステップS180):
次に、シート積層体100に、使用される積層セラミックコンデンサ10の大きさに合わせて溝を入れ、溝入れ後の積層体を脱脂した後に焼成する。こうした焼成の後に、図1に示したようなセラミックコンデンサ10が形成される。なお、焼成後のシート積層体100を、溝入れ工程において入れられた溝(図示せず)に沿ってブレークすれば、より小型のセラミックコンデンサ10を形成することができる。
【0048】
A−3.実施例の作用効果:
以上説明した製造工程を取ることで得られる効果について図面を用いて説明する。
図8は導電材料充填前の貫通孔26周辺の様子を説明するための説明図、図9は本実施例による導電材料充填の様子を説明する説明図である。
【0049】
図8に示すように、貫通孔26の形成過程では、既述したようにレーザービーム50が孔形成箇所に繰り返し照射され、その都度、孔深さは増していく。こうした孔形成の過程で、Ap−Pdの電極パターンである電極層24は、セラミックグリーンシート22aに比して低融点であるので、レーザービーム照射に伴う熱により、その端面24aから先に溶融する。この溶融の様子は図中に波線矢印で示されており、端面24aは貫通孔26の形成箇所から後退する。こうして後退した端面24aと貫通孔26周壁との隔たり(即ち、端面の後退程度)は、最大でも20μmと予想され、窓部25を形成する電極層24の端面と貫通孔26周壁との隔たり(110μm)に比べれば格段に小さい。
【0050】
こうした貫通孔26への導電材料充填に際し、本実施例では、充填容器110の加圧注入圧力を2.5MPaとすることにより、導電材料は、貫通孔26に入り込み、当該貫通孔はこの導電材料で充填される。
【0051】
こうした貫通孔充填に際しては、導電材料が加圧注入されることから、上記した電極層24の端面24aの後退を起こした箇所にも導電材料は入り込む。図9では、この端面24aに導電材料が達していない状況を示しているが、導電材料の加圧注入の過程で、導電材料は、端面24aに接触する若しくは端面近傍まで達する。なお、こうした導電材料の入り込みは、窓部25においても起きるが、セラミックグリーンシート22aの自重による撓みや積層体上下からの押圧によるシートの曲がり等により、窓部25はグリーンシートでほぼ塞がれているので、この窓部25においては、導電材料と電極層端面との接触は起き得ない。
【0052】
本実施例では、シート積層体100は、導電材料の加圧注入充填時における押圧と、充填後の本圧着における押圧とを受け、この本圧着では押圧板128にて方形加圧容器内で60MPaの条件で高圧プレスされる。この本圧着では、こうした高圧プレスによるシート積層体100の積層方向の押圧を及ぼすことから、PET製の剥離シート33を変形して圧縮させる。従って、この剥離シート33の部分における貫通孔内の導電材料は、剥離シート33の変形(圧縮)の分だけ、シート積層体100における貫通孔26に押し戻されるので、貫通孔26に充填済みの導電材料は、貫通孔内壁から外側に押し込まれる。よって、端面24aの後退を起こした電極層24において、仮に導電材料がこの端面24aの近傍までしか達していないとしても、上記した導電材料の更なる押し込みにより、図9に矢印で示すように、導電材料は後退済みの端面24a側に押されて当該端面と確実に接触する。導電材料が端面24aと既に接触を起こしている電極層24の端面24aでは、その接触状況はより一層確実なものとなる。この結果、本実施例によれば、シート積層体100におけるセラミック層間の電極層24と貫通孔26内の導電材料との接触の信頼性を高めることができる。これにより、設計性能を有する積層セラミックコンデンサ10を容易に提供することができる。
【0053】
なお、窓部25においても、導電材料が電極層端面側に押されるが、既述したようにこの窓部25はグリーンシートでほぼ塞がれていること、窓部25の周縁が貫通孔26から大きく隔たっていることから、この窓部25において導電材料が電極層24と接触することは起き得ない。
【0054】
更に、本実施例では、ステップS160の導電材料充填の際にも、シート積層体100を加圧容器110と押圧板118で上下から押圧する。よって、導電材料充填の最中にあっても、剥離シート33の変形(圧縮)を通した貫通孔26の導電材料の押し込みを図ることができる。よって、シート積層体100におけるセラミック層間の電極層24と貫通孔26内の導電材料との接触の信頼性をより高めることができる。
【0055】
また、上記実施例の積層セラミックコンデンサ10の製造工程では、焼成前のシート積層体100に対して貫通孔26を形成するようにした。これにより、未焼結のセラミックグリーンシート22aをレーザービーム50により熱溶融すればよい。このため、少ない照射量で貫通孔26を形成することができる。
【0056】
B.変形例
以上、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0057】
図10は積層セラミックコンデンサ10の製造方法の変形例を説明するための説明図である。
この変形例では、ステップS160における貫通孔26への導電材料の充填を、通常の方法、例えば上記の特許文献に示された既存の方法で行い、その後に導電材料の押し込みを図る点に特徴がある。つまり、上記した本圧着においてのみ導電材料の押し込みを図る。
【0058】
この変形例では、シート積層体100をプレス台132に載置し、当該積層体をその積層方向に沿って押圧板128で押圧する。この押圧板の駆動源には、油圧プレス等のアクチュエータ130を用いる。そして、こうした積層体押圧に際しては、押圧板128による押圧で、剥離シート33の変形を起こすようにした。よって、この変形例によっても、上記の実施例と同様に、剥離シート33の変形(圧縮)を経て貫通孔26内の導電材料の押し込みを図り、導電材料と端面24aとの接触の信頼性向上、積層セラミックコンデンサ10の設計性能維持を図ることができる。
【0059】
この場合、シート積層体100の上下向きは、図示するものに限られるものではなく、剥離シート33をプレス台127の側にすることもできる。また、シート積層体100を方形の容器に入れて積層体側壁を容器壁面で受けた上で、押圧板128で押圧するようにすることもできる。なお、こうした押圧板128の押圧圧力は、既述した2〜7.5MPaの範囲の値とすることもできるが、この値より大きくすることもできる。例えば、上記のステップS170で例示した本圧着の際の圧力(60MPa)とすることもできる。こうすれば、上記ステップS170の本圧着において、剥離シート33の変形(圧縮)を経た貫通孔26内の導電材料の押し込みを図ることができる。
【0060】
その他、上記の実施例では、レーザー照射に当たり、サイクル加工法を採用したが、レーザービームを連続的に照射するバースト加工法を採ることもできる。
【0061】
また、上記実施例では、積層セラミックコンデンサを例としてその製造工程について説明したが、上記の製造工程を積層セラミックコンデンサ以外の他の積層電子部品に適用することも可能である。
【0062】
この他、上記実施例では、圧縮により変形可能な剥離シート33を用いたが、ゴム、エラストマー等の弾性率の低い性質のシートを剥離シート33に代えて用いることもできる。この場合は、それらのシートが弾性変形(もしくは弾性による復元限界を超えた変形)を起こすようにシート積層体100を上下方向から押圧すればよい。こうしても、シート変形の分だけの導電材料の押し込みができるので、既述したようにシート積層体100におけるセラミック層間の電極層24と貫通孔26内の導電材料との接触の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である積層セラミックコンデンサ10の縦断面を示す説明図である。
【図2】 積層セラミックコンデンサ10の製造工程を示す工程図である。
【図3】 図2の工程の様子を説明する説明図である。
【図4】 シートの積層が完了したときの状況と後述するステップにおけるレーザー照射の様子を模式的に表す説明図である。
【図5】 貫通形成された貫通孔26をその形状をストレート状であるとして模式的に示す説明図である。
【図6】 貫通孔26に導電材料を充填する充填装置の概略構成図である。
【図7】 本実施例で行う本圧着の様子を説明するための説明図である。
【図8】 導電材料充填前の貫通孔26周辺の様子を説明するための説明図である。
【図9】 本実施例による導電材料充填の様子を説明する説明図である。
【図10】 積層セラミックコンデンサ10の製造方法の変形例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10…積層セラミックコンデンサ
22…セラミック層
22a…セラミックグリーンシート
24…電極層
24a…端面
25…窓部
26…貫通孔
28…ビア電極
32…ベースセラミック層
33…剥離シート
34…ダミーシート
50…レーザービーム
100…シート積層体
110…加圧容器
112…充填筐体
114…底板
116…アクチュエータ
118…押圧板
120…アクチュエータ
Claims (2)
- 電極層をセラミック層を介して複数積層させた積層電子部品の製造方法であって、
前記電極層を備えるセラミックグリーンシートを、複数層積層してシート積層体を形成すると共に、該シート積層体の最上段或いは最下段の少なくとも一方の前記セラミックグリーンシートに、押圧を受けて圧縮変形する圧縮可変シートを接触配設させた該シート積層体を形成する工程(a)と、
前記シート積層体の積層方向に前記セラミックグリーンシートと前記電極層と前記圧縮可変シートを貫通する貫通孔を形成する工程(b)と、
前記貫通孔に充填材を充填する工程(c)と、
前記貫通孔に充填済みの前記シート積層体をシート積層方向に沿って押圧しつつ、該押圧により前記圧縮可変シートの変形を起こす工程(d)とを有する、積層電子部品の製造方法。 - 電極層をセラミック層を介して複数積層させた積層電子部品の製造方法であって、
前記電極層を備えるセラミックグリーンシートを、複数層積層してシート積層体を形成すると共に、該シート積層体の最上段或いは最下段の少なくとも一方の前記セラミックグリーンシートに、押圧を受けて圧縮変形する圧縮可変シートを接触配設させた該シート積層体を形成する工程(a)と、
前記シート積層体の積層方向に前記セラミックグリーンシートと前記電極層と前記圧縮可変シートを貫通する貫通孔を形成する工程(b)と、
充填材を収納し該充填材を加圧注入する充填容器と前記シート積層体の押圧が可能な押圧体との間に前記シート積層体を配設し、前記押圧体により前記シート積層体を支えつつ前記充填容器から前記充填材を前記シート積層体の前記貫通孔に加圧注入する工程(c)とを備え、
前記工程(c)は、
前記押圧体と前記充填容器とによる前記シート積層体の押圧を、前記圧縮可変シートの圧縮変形が起こるよう実行する、積層電子部品の製造方法。
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