JP4511039B2 - 準安定原子衝撃源 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は準安定原子あるいは分子のビームを作る装置及び方法に関し、特に、質量分析等の、試料をイオン化あるいは励起することが要求される分析を受けるサンプル試料をイオン化するために使われる、準安定化学種のビームを作るシステム及び方法に関する。
【0002】
【背景技術】
質量分析は、化学構造の検出と同定及び物質の定量的基本分析に使われる良く知られているシステムである。全ての公知の質量分析法では、試料とされるべき原子あるいは分子は、イオン・ビームを作るように励起されイオン化される。そのイオン・ビームは次に電場あるいは磁場を通って加速されイオン・コレクターに到る。そのイオン・コレクターには、通例、電位計が設けられている。その電位計は、そのイオン・コレクターから受け取った信号を質量スペクトルに変換する。質量スペクトルは、そのサンプルの中にどのような元素(あるいはラジカルあるいは断片)が含まれているかを表示する。
【0003】
サンプル分子を励起してイオン化したり、これらの分子のイオンを断片化するために多くの技術が提案されている。これらの方法には、電子イオン化のように気相で存在する化学種を衝撃するために電子を使う方法、化学イオン化において使われているような陽子移行反応、レーザーあるいは他の強力な光源を用いた光イオン化等が含まれる。極めて最近になって、準安定原子衝撃を使ったイオン化が実現された。その際、サンプル分子そしてこれらの分子からの断片イオンを衝撃するために、中性の準安定化学種が使われている。サンプル分子をイオン化する際に準安定原子衝撃を使用することにより、選択的イオン化と、サンプル分子からの粒子の断片化の制御が可能になる。しかし、サンプル物質をむらなくイオン化する準安定原子衝撃を達成するためには、強度が大きく電荷が無くそして低速である準安定原子のむらの無い整合的な発生源を作る反応機構が必要とされる。
【0004】
準安定原子のビームを作る反応システムは従来技術として公知である。そのシステムは、一端に稀ガスの発生源を有する反応容器と、その容器の内部に位置する陰極と、その容器の他端に置かれた小さな音速域ノズルを含む。その容器の外部は概ね円錐形の陽極で、「スキマー」と呼ばれ、そしてさらにその円錐の頂点に開口を備えている。スキマーの背部は、偏向器として機能する一組の板となっている。作動中は、ガスがその容器の一端から注入され、他端のノズルを通過する。その容器の内部の陰極と外部の陽極は、その陰極と陽極との間にアークが発生するように、直流電源で電荷が与えられている。その放電の中を通るように注入されたガスの原子は励起されて準安定状態になる。同時にそのガス原子の幾つかはイオン化のレベルまで励起され、自由イオンと自由電子を準安定ガス流の中に放出する。その準安定ガス、自由イオン、自由電子は、それから、スキマーの頂点の開口を通過し、帯電された一組の偏向板の中に入る。そこで自由イオン/電子は偏向板に引き寄せられ、比較的電荷の無い準安定なガス粒子が残り、これらは偏向板を通過し、質量分析装置で分析されるべき試料物質を衝撃するために使用される。
【0005】
この従来技術の装置の公知の欠点は、準安定粒子のむらの無い流れを必ずしも常には作らないことであり、時には、イオン/電子と混合している準安定粒子の流れを作ることである。これが起こる原因は、陰極と陽極を取り巻いている電場が陰極と陽極を貫く縦軸に関して対称的であるからである。この対称的電場の結果として、放電によって作られたイオン/電子とイオン化した原子にかかる力が、これらの粒子をこの縦軸に向かうように働くからである。この縦軸は流れの軸とも一致するので、そのイオン/電子はその準安定ガス粒子と共に、流れの中に残留する傾向がある。前記偏向器はこれらのイオン化した粒子の幾らかは除去するが、対称的電場によって印加される力は偏向器によって印加される力と逆方向に働き、そして、イオンは粒子流の中に留まる傾向がある。このように、従来の装置は、純粋に準安定な原子からなるビームを作らない。そして、そのようなビームが質量分析によって試験されるべき試料をイオンするために使用されると、誤った予測不能な結果がもたらされる。スキマーと偏向器を使用すると、大きなアセンブリになり、これは準安定原子の損失を引き起こす。サンプル物質の選択的イオン化のために準安定原子衝撃を使うことの利点を得るためには、サンプル物質に投射される準安定原子のビームが準安定原子だけを高い密度で含むように、準安定原子衝撃システムを改良する必要性がある。
【0006】
【発明の開示】
本発明の一つの目的は、良好な純度の準安定化学種のビームを効率的に作る装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、ペクトロスコピーへの応用のために純粋な準安定化学種のビームを作る方法を提供することである。
【0008】
本発明の第1の側面によれば、準安定ガスを作るために使われる電気アークが曲がった経路を辿る。
【0009】
本発明の第2の側面によれば、電気アークにさらされたガスは、低圧室からノズルを通ってより低い圧力の室に流れてガスのジェットを形成し、そのジェットの主要部がそのより低い圧力の室を出る前に、ガスのジェットからイオン化されたガスを除去するために、そのガスのジェットはより低い圧力の室の中で電場にさらされ、純粋な準安定ジェットとして質量分析計の反応室の中に入る。アークの強さはイオン化された準安定な化学種を高密度にするように選択されるが、そのより低い圧力の室を出るジェットはそのガスのほぼ準安定な化学種からのみなる。
【0010】
本発明の第3の側面によれば、そのアークはその長さの大きな部分を、より高い圧力の室とより低い圧力の室を連通するノズルの他端にある低圧室におけるより多く、より高い圧力の室に有し、より多くのエネルギーをより高い圧力の室で供給している。
【0011】
本発明の一つの実施形態では、ペニング・イオン化で用いるための準安定化学種のビームを作るための装置が設けられ、以下の構成を備える:すなわち、
エネルギーが与えられて準安定状態にされぺニング・イオン化とぺニング・エネルギ伝達を行うのに適したガスの、ガス入口とノズル出口を有し、そのガス入口はガスの実質的に低圧の供給源に連結されている第1の室と、
前記第1の室に配設された陰極と、
前記ノズルに連結され、そして前記陰極と前記ノズルとほぼ一直線のビーム出口を有し、実質的に粗い真空源に連結されている第2の室と、
前記陰極と前記ノズルと前記ビーム出口の間にほぼ延在している線の一端の近くにおいて前記第2の室の中に配置された陽極とを備え、前記陰極と前記陽極に間に形成される電気アークは前記ノズルを通り、そしてそのノズルから外れて前記陽極に到り、前記陰極と前記陽極の間の電場は非対称であり、
準安定でイオン化されている化学種を含む前記ノズルからの放出される前記ガスのジェットは前記ビーム出口に投射されるのに対し、イオン化された化学種は前記ビーム出口から方向転換され、そして、前記ビーム出口から放出されるガスのビームは準安定化学種の密度が改善されている。
【0012】
本発明は、添付図面を参照する好ましい実施例についての以下の詳細な記載によってよりよく理解されるであろう。
【0013】
【発明を実施するための最良の形態】
図1は希ガス15の供給源から準安定原子のビームを作る従来技術のシステム10を示す。供給源からの希ガス15は室20に放射され、室20はビームの入口から陽極50のある出口に向かって圧力勾配を有する。室20の中には励起された陰極25が置かれ、他方、励起された陽極50は室20の外側の直近に設けられている。陰極と陽極に印加されたエネルギーによって、電気アークが陰極から陽極に作られ、それは開口すなわち室20のノズル40を通る。室20に放射された希ガスは圧力勾配により陰極と陽極の間の放電部に投入される。次に、その放電は、希ガスの原子にエネルギーを与え、イオン/電子と準安定原子の混合体にする。その中では、これらの原子の電子は高いエネルギー・レベルに励起されている。
【0014】
準安定原子、並びにイオン化された原子と電子は、それから、電荷を有する偏向器60を通過する。偏向器60は、粒子の流れから幾らかのイオン/電子を除去する。しかし、陰極と陽極は互いに直線的に並べられているので、一様かつ対称的な電場がこれらの二つの構造物の間の放電の周りに作られる。この対称的電場は、次に、流れの中の荷電粒子に力を加える、すなわち、イオン化された原子/電子にはエネルギーを与え、準安定原子にはエネルギーを与えない。
【0015】
準安定原子は、電子を保持したままイオン化されていないので、電荷を持っていない。しかし、イオンと電子に加えられた力はこれらの粒子に、陰極と陽極を結ぶ縦軸方向の力を加える傾向がある。この結果、対称的電場による力は荷電粒子に流れの縦軸方向の力を加え、流れからこれらの粒子を除去するという偏向器の効果に逆らうこととなり、準安定原子の通路に干渉することとなる。正味の結果は、その偏向器60が粒子の流れから荷電粒子を除去することを完全には実行できず、そして、サンプル物質に当てられる粒子の流れは純粋な準安定原子ではない。さらに、準安定原子の生産効率が相対的に悪い。
【0016】
準安定原子が中性分子と相互作用するとき、ぺニング・イオン化と呼ばれる過程が起こる。図2に示したように、準安定化学種A*が気相中の中性分子BCと衝突する。BCの分子軌道からの電子が準安定化学種A*の空軌道と相互作用をし、そして、電子が空間に放出され(ガンマ)、図示されているようにイオン化することとなる。放出された電子は、気相衝突に巻き込まれた化学種によって規定される運動エネルギーの範囲を取る。図示されているように、結果は、単純なBCのイオン化、BCのB+とCへの(あるいはBとC+への)砕片化、あるいはABC+を作ることとなる。
【0017】
種々の希ガスの励起エネルギーは原子量によって変わる。例えば、Heの状態31103230と同様にそれぞれ19.82eVと20.61eVであり、Arの状態3230は11.55eVと11.72eVであり、Xeの状態3230は8.32eVと9.45eVである。窒素ガスについては、幾つかのより普通の準安定状態は8.52eVから11.88eVにある。この明細書では、準安定化学種を生み出すものとして、しばしば希ガスを採り上げる。しかし、他のガス、好ましくは小さい分子量のガス、例えば窒素ガスもそれに適している。重要なことは、放電に晒され、イオン化されるべき物質と混合されたときに実質的に不活性であり、そして、分析されるべき物質にイオン化及び/又は細分化のための適切な励起エネルギーを与えるガスを選択することである。
【0018】
図3は、粒子の流れの経路の中の対称的電場によって作られる問題点を克服する、本発明の好ましい実施例を示す。この好ましい実施例100は、第1の室120を含み、第1の室120は、陰極125と、所定の圧力で希ガス(あるは他の適切なガス)を供給するための第1の入口115と、ノズル・オリフィスフィス124を包含する。第2の室122は、軸を外して設けられた陽極150を有する。第1の室120は、ガスのジェットが作られるように、第2の室122より高い圧力に保たれている。第1と第2の出口128と140がそれぞれ第2の室122に設けられ、室122の圧力は約0.1Torr(13.33224Pa)に保たれている。そして、第2の出口140は反応室170に連結されている。その反応室170はテストされるべきサンプルを注入するための入口175と、質量分析計190に連通する出口180を含み、その質量分析計は真空に近い圧力に保たれている。
【0019】
第1の室120は希ガスのための入口115と出口124を有する。室122は、希ガスが注入される室120の右端の位置にてその圧力より小さい圧力に減圧保持され(好ましくは約0.1Torr(13.33224Pa))、減圧のための室出口128を有する。この結果、ノズル124の前後に圧力勾配が生じ、出口140に向かうガス・ジェットが作られる。室120と122にそれぞれ陰極125と陽極150が挿入される。陰極125と陽極150はそれらの間に放電が生じるように励起される。放電は室120に直線部分を有し、室122に曲線部分を有する。ガスは、放電130からエネルギーをほとんどその直線部分で受け取る。ガス原子はノズル124を通って放出され、荷電粒子は陽極150の影響を受け偏向させられる。
【0020】
従来技術とは異なり、陽極150と陰極125によって作られる電場は非対称である。このことは、陰極125と陽極150が半径方向で互いに離れた軸にそって置かれていることによる。半径方向に離れていることが非対称電場を作り、その非対称電場は、イオンに中性の準安定原子の経路から引き離すような力を加える傾向がある。このようにして、ガスの流れが分離板160と細孔162に到着した時、荷電粒子は準安定原子から既に良く分離されており、そしてその分離板は更に効率的にこれらの荷電粒子をガスの流れから除去する。両電極の間の電流の方向を逆にすることも可能であるが、陰極を第1の室の内部に置き、陽極を平らな電極にすることが好ましい。
【0021】
室170に到るガスは、このようにして、ほぼ純粋に準安定原子のビームである。このビームは、入口175から反応室170に注入されたサンプル分子に衝撃される。準安定原子のエネルギーに応じて、準安定原子はそのサンプルを、前に説明したように、相互作用により幾つかのエネルギー・レベルまでイオン化する。そのイオン化したサンプルは出口180を通って質量分析計190に到り、そこで分析される。
【0022】
好ましい実施例では、コリメートされ、低い運動エネルギーで、荷電粒子が無く、そして高密度(例えば1015個/秒/流れ)の準安定原子の流れあるいはビームを作る。そのようなビームは、質量分析のための準安定原子イオン化を非常に効率的に行う。
【0023】
この実施例に係る装置が図4に詳しく示されている。陰極125は先細りになっている頂点を有する小直径の円筒形の尖端部を含み、陽極150は平面形状でありそしてノズルを出た直ぐ後で軸から外されて置かれている。曲った放電が形成され、その中で、電場の影響を受けない準安定化学種を含んでいるガス流れ中心部から電子が除去される。陽極として平面電極を使用することは(電子を集める面積を大きくするので)放電の安定性を増加し、装置のその領域における電場を小さくする。平面電極を使用すると、設計を非常にコンパクトにすることもでき、その結果、放電を維持するために必要な電圧を小さくできる。電子を集める面積が大きく、電圧が小さいことは陽極の熱伝達を局所的に小さくすることと結びつき、このようにして、過熱と陽極腐食が避けられる。この結果、動作の安定性が増加する。
【0024】
陰極とノズルの間の距離はノズルと陽極の間の距離の約3倍であることが示されている。この距離は、1.5〜4.0(あるいはそれ以上)倍であってもよく、エネルギーの大部分は第1の室の中で与えられる。
【0025】
陰極について種々の形状と材質を検討したが、一番良好な結果は(O2を含まない)純銅の単純な針形状のもので得られた。陰極は円筒形本体に取り付けられた鋭い針(あるいは鋭い針の集まり)である。本体は図4に示すように多面体に加工されたり、あるいは小さな穴を設けられたり、ギザギザを付けたり、(対角線、直線、ダイアモンド・パターンにしたり)、(単螺旋又は複螺旋の)ネジを切ったりすることもできる。これらの配置は、本体を通る希ガスの流れを確実にし、陰極を細孔の軸に再びセンター合わせすることを確実にする。この配置は、希ガスがプラズマに入る前に予熱するという利点を有し、これは放電の安定性に関係する。それは、また、陰極を冷却することを可能にし、それにより安定性が増す。陰極は内部ネジ山あるいは外部ネジ山(図4に図示)を備え、ガン・アセンブリの適当な位置合わせ、簡単な分解、そして電源との良好な電気的接触が保証されている。
【0026】
陰極と陽極の間に位置するノズル124は、ガン・アセンブリの中に圧力差を作るために使われ、それによりガス・ジェットが形成される。第1の室120の中の圧力は10〜100Torr(1333.224〜13332.24Pa)のオーダーであり、第2の室122の底部の圧力は別のポンプで1Torr(133.3224Pa)以下にされている。ノズルはLava(登録商標)材(グレードA、高温処理せず)で加工され、次に一部を1100℃で30分間高温処理し、材料をセラミックに結晶化させた(膨張率2%)。ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及び窒素(N2)等のガスについての最良の動作条件では、ノズルの直径は120〜180μmの範囲で変わる。図4に示すように、ガンを中心板に直線的に合わせるために室が設けられている。細孔124の基部における舌部が、Oリング(あるいは他の適当なシール手段)と協働してノズルを本体にシールし、そしてシールを維持するために使用されている。そのノズルはその位置に、本体に直接ネジ切りしたポリイミド・キャップによって維持される(内部ネジあるいはキャップを通るネジ)。そのキャップは、陽極と偏向器を支持したり、あるいは図4に示すように、偏向器接触子と陽極接触子を貫通させるための通路として使ったり、あるいは装置に依存するが、これらの二つの形態の組み合わせで使ったりすることができる。このような構成により、陰極がシールと装置本体から絶縁される。これらの決定的に重要な部品、すなわち本体とシールはセラミック・スペーサを用いて過熱から保護されている。そのセラミック・スペーサはノズルのセラミック壁の延長部であってもよい。そのキャップを取り外すことにより、容易にノズル、陰極、あるいはシールを交換することができる。
【0027】
陽極150は、装置の配置、あるいは利用可能な空間に依存して、中心板にボルト固定されたり、あるいはそれに代えて、ノズルのキャップに直接的に取り付けることができる。これにより、陽極は簡単に交換できる。陽極は単純なステンレス鋼のブロックあるいは板であって、ノズルの出口の近くに軸から外して置かれたものである(他の導電性材料で作ることも可能である)。この幾何学的構造は、軸外し非対称電場を作り、それは荷電化学種を準安定ビームから効率的に除去する。
【0028】
負(又は正)の±1kVの電圧が印加されている円形偏向板が陽極の後に置かれている。その偏向板はカップ・ダイアフラムであり、普通のダイアフラムと円筒体の結合体である。このカップ・ダイアフラムは従来のシステムに比べて多くの利点を有し、多くの機能を満たす。先ず、ビームの中に残っている荷電粒子を除去するために使われる。ダイアフラムの小さい円筒体は陽極をシールドし、この幾何的配置は近くの他の電極で作られた電場の進入を少なくする。このダイアフラムはビーム・コリメーターとしても機能し、軸の中のガス・ジェットの通過量を少なくする。この結果、準安定化学種をビームの中心に集中させる。この配置は、平面コンデンサを用いる場合に比べて極めてコンパクトであり、この領域に別のポンプを動作させることを可能にする。偏向器は、ノズルのキャップあるいは、イオンを分析するための装置に直接的に取り付けることができる。
【0029】
準安定化学種のビームを作るために使われるガス(He、Ne,Ar,Kr,XeあるいはN2)は、(図示しない)テフロン(あるいは他の非汚染物質の)管を介して装置に注入される。そして、ガン・アセンブリが設けられている(イオン・ボリューム又は衝突セル)室に中に入れられている分子/原子を衝撃するために使われる。陰極と容器(あるいは接地部分)の間でアークが発生することを防止するために、その管の内径は十分に小さく(例えば1/32”)、その長さは十分に長い(例えば6フィート以上)。融通性と生産性を増加するために、装置は空圧制御ユニットと結合され、一つのガスから他のガスへの選択と切り替えが可能になっている。そのガス供給ユニットは、ガン・アセンブリの中の圧力が、ポンプが動作するガスのラインで、制御されることを可能にする。ガスの選択は手動であるいは自動的に(コンピュータ制御)行ってもよい。
【0030】
ガス供給ユニットに加えて、ガン・アセンブリもまた電子制御ユニットを有し、その電子制御ユニットは、放電を開始させ、維持し、そしてガン・パラメータを最適化する。図5と6を参照すると、その電子ユニットは沢山の新規な特徴を備える。電子ユニットは放電を開始させるための電圧ブースト装置(電圧増倍器)を使用する。電圧ブースト装置は古典的な電子機能装置であって、AC電圧を(整数単位で)増倍しDC電圧に変換する。この装置の出力は、その充電期間に亙って利用可能であり、電力変換器の沢山のサイクルを必要とする。このようにして、そのブースタがターン・オンした後は、最小可能電圧でいつでも放電は開始させられる。さらに、いつ放電がターン・オフしても、放電は自動的に再開始させられる。従って、この装置は確実であり、好ましくない電圧スパイクを無くしている。ブースト装置は、プラズマあるいはアークを保持する手段に直列に結合されている。ブースト装置のコンデンサの値は非常に低いので(4.7nF;3kV)、一度開始させられたプラズマ電流の大きさ(約10mA DC)は、非常に急速にこれらのコンデンサを放電させる。プラズマの維持電流はDCであるので、プラズマが開始させられたとき、ブースト装置のコンデンサの電荷は、この装置の順バイアス・ダイオード(R3000F)によってブロックされる。さらに、高電圧ブリーダ抵抗(500MΩ;20kV)がブースト装置と並列に設けられ、プラズマを開始しないときにこの装置のコンデンサを完全に放電させ、ユーザの安全性を保証している。電源は、放電電流を制御するとともに、偏向器及びそれらの監視装置を制御する。偏向器電圧回路は高電圧ダイオード(HVR3−12)によって過剰な充電(陰極との短絡等)から保護されている。電子回路基板のZ字形の設計は占有空間を最適にし、同時に電気的干渉を最小に、さらに機械的強度を良くしている。高い電圧と低い電圧の結合は光学ファイバと、電圧分割器として配置されている特別の高電圧用抵抗を用いて行われ、その電圧分割器は(二つの電圧分割器を用いる)差分読み取り手段を備える。基板上の低い電圧のための部品はその周りの基板の両面に設けられた連続的接地部分によって取り囲まれている。この保護手段は、その電子部品を、その基板の高電圧域からの高電圧表面放電から保護する。この電子回路の設計はそのガン・アセンブリを低い電圧装置あるいは高い電圧(例えば8kV)の装置の中に装着することを可能にする。
【0031】
本発明の特別な実施例の以上に述べた説明は図解と説明を目的とするものである。この説明は、本発明を徹底的に説明したものではなく、開示された詳細な態様に本発明を限定する意図はなく、多数の変形と改変が前記説明から可能であることを理解するべきである。本発明の技術的範囲はこの明細書に添付されている特許請求の範囲及びその均等物によって定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 希ガス源から準安定原子のビームを作る従来技術のシステムの概念図である。
【図2】 準安定原子源を用いるイオン化の公知のメカニズムを示す図である。
【図3】 好ましい実施例の装置の概念図である。
【図4】 好ましい実施例の装置の断面図である。
【図5】 好ましい実施例の電源電子ユニットのブロック図である。
【図6】 好ましい実施例の電源電子ユニットの中で使用されている回路板の概念図である。

Claims (15)

  1. ぺニング・イオン化のための準安定化学種のビームを作る装置において、
    ガス入口及びノズル出口を有し、前記ガス入口がガス供給源に接続され、前記ガスが準安定状態に励起されぺニング・イオン化とぺニング・エネルギ伝達をするのに適したものである、第1の室と、
    前記第1の室に配置された陰極と、
    前記ノズル出口と連通し、前記陰極と前記ノズル出口とほぼ一直線のビーム出口を有し、真空に連通している第2の室と、
    前記陰極、前記ノズル出口及び前記ビーム出口の間にほぼ延在している線から外れた位置において前記第2の室の中に配置された陽極と、を備え、
    前記陰極と前記陽極の間に形成される放電経路が前記ノズル出口を通り、その後、そのノズル出口から外れて陽極に到り、そして前記陰極と前記陽極の間の電場が非対称的であり、
    もって、前記ノズル出口から放出される中性の準安定化学種およびイオン化された化学種を含むガスのジェットは前記ビーム出口に放射されるが、イオン化している化学種は前記ビーム出口から方向変換させられ、そして前記ビーム出口から放出されるガスのビームは準安定化学種の濃度が前記ビーム出口を通過する前の準安定化学種の濃度よりも高められていることを特徴とする装置。
  2. 前記ジェットが前記ビーム出口を通る前に荷電物質を分離する荷電分離手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. 前記分離手段が前記ビーム出口をその中に有するダイアフラムを含み、前記ダイアフラムが前記ビームの方向に対して垂直な平面にあることを特徴とする請求項2に記載の装置。
  4. 前記陽極が軸外しであり、かつ平面的であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  5. 前記陰極が少なくとも一つの銅製の針からなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  6. 前記ガスが希ガス及び2原子分子ガスから選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  7. 前記ノズル出口が120μmから180μmの直径を有することを特徴とする請求項6に記載の装置。
  8. 前記ノズル出口が120μmから180μmの直径を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  9. 前記ガス供給源が前記第1の室で10から100Torr(1333.224〜13332.24Pa)の圧力を作り、前記第2の室は1Torr(133.3224Pa)以下であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  10. 前記ビーム出口及び質量分析計の入口に連通しているイオン化反応室をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  11. 前記ノズルがLava(登録商標)で作られたものであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  12. 前記陰極と前記陽極に接続されている電子制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  13. 前記電子制御手段が電圧ブースト手段であることを特徴とする請求項12に記載の装置。
  14. ぺニング・イオン化のための準安定化学種のビームを作る装置において、
    ガス入口及びノズル出口を有し、前記ガス入口がガスの供給源に接続され、前記ガスが準安定状態に励起されぺニング・イオン化とぺニング・エネルギ伝達をするのに適したガスである、第1の室と、
    前記第1の室に配置された第1の電極と、
    前記ノズル出口と連通し、前記陰極と前記ノズル出口とほぼ一直線のビーム出口を有し、真空に連通している第2の室と、
    前記第1の電極、前記ノズル出口及び前記ビーム出口との間にほぼ延在している線から外れた位置において前記第2の室の中に配置された第2の電極と、を備え、
    前記第1の電極と前記第2の電極の間に形成される放電経路が前記ノズル出口を通り、その後、そのノズルから外れて第2の電極に到り、そして前記第1の電極と前記第2の電極の間の電場が非対称的であり、
    もって、前記ノズルから放出される中性の準安定化学種およびイオン化された化学種を含むガスのジェットは前記ビーム出口に放射されるが、イオン化している化学種は前記ビーム出口から方向転換され、そして前記ビーム出口から放出されるガスのビームは準安定化学種の濃度が前記ビーム出口を通過する前の準安定化学種の濃度よりも高められていることを特徴とする装置。
  15. ぺニング・イオン化のための準安定化学種のビームを作る方法において、
    第1の室に設けられた第1の電極と第2の室に設けられた第2の電極との間における電気放電により励起され準安定状態になりぺニング・イオン化を誘起するのに適したガスのジェットを作り、
    前記ガスを準安定状態に励起するために、前記ジェットが放射される前記第2の室において前記ジェットから離れ第2の電極に到る放電経路を形成し、
    前記ジェットの下流部分をビーム出口に連通させる各ステップを備えることを特徴とする方法。
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