JP4508563B2 - 真偽判定体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は真偽判定体に関する。
詳しくは、基材表面に微小な矩形状ないし台形状のプリズムが並行して配列してなり、当該微小プリズムの空間に面する上面または側面のいずれか一または二の面には、光反射層または光散乱層あるいは着色層または文字、絵柄のいずれかが、あるいはその双方が形成、印刷されているため、認証媒体に使用した場合、目視方向によって真偽判定体または認証媒体の外観状態が変化することを特徴とする真偽判定体に関する。
このような真偽判定体は、証券、株券、商品券、ギフト券などの金券類、クレジットカード、プリペイドカード、パスポート、IDカードなどの各種カード、ビデオソフト、パソコン用ソフトなどの真偽判定用シールとして用いられる。
【0002】
【従来技術】
従来から、証券、株券、商品券、ギフト券などの金券類、クレジットカード、プリペイドカード、パスポート、IDカードなどの各種カード、ビデオソフト、パソコン用ソフトなどの認証シールなど、偽造防止・真偽判定機能の付与が求められる分野において、ホログラムは優れた意匠性、およびカラー複写機においても複製できない偽造・変造の困難性から数多く利用されてきた。
しかし、近年、ホログラムにも巧妙な偽造品が出現し、一見しただけでは真偽の判別ができない場合があり、目視で容易に判別できる真偽判定体が求められてきている。
【0003】
そこで、ホログラムを使用しない真偽判定体として光学的特性を有する媒体が考えられる。特許文献1は、光学的セキュリティ物品であるが構成が複雑であり、製造品はコスト高なものになると考えられる。
また、特許文献2は、光拡散シートの製造技術に関し真偽判定体に関わる技術ではないが、本発明の真偽判定体の製造に参照できる技術を記載している。
【0004】
【特許文献1】
特表平10−508549号公報
【特許文献2】
特開平5−169015号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、光学的機能を有する簡易な構成の真偽判定体を完成すべく、上記、特許文献2の光拡散シートの光学特性を利用することを着想し、本発明の完成に至ったものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第1は、絵柄を有する認証媒体に使用する真偽判定体であって、基材面上に略直線状であって透明な材質からなり、断面が矩形状ないし台形状の微小プリズムが当該微小プリズムの高さと同等程度幅の平行な空間部を置いて並行して配列してなる真偽判定体において、当該矩形状ないし台形状の微小プリズムの底面は前記基材面に接しており、微小プリズムの空間に面する上面および前記空間部の基材面には光反射層または光散乱層が形成され、微小プリズムの側面には光反射層または光散乱層が形成されていないことにより、上面から観察した場合は、全面が鏡面体として観察され、側面から観察した場合は認証媒体の絵柄を視認できることを特徴とする真偽判定体、にある。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第2は、絵柄を有する認証媒体に使用する真偽判定体であって、基材面上に略直線状であって透明な材質からなり、断面が矩形状ないし台形状の微小プリズムが当該微小プリズムの高さと同等程度幅の平行な空間部を置いて並行して配列してなる真偽判定体において、当該矩形状ないし台形状の微小プリズムの底面は前記基材面に接しており、微小プリズムの空間に面する上面および一の側面には光反射層または光散乱層が形成され、微小プリズムの他の側面および前記空間部の基材面には光反射層または光散乱層が形成されていないことにより、前記一の側面から観察した場合は、全面が鏡面体として観察され、前記他の側面から観察した場合は認証媒体の絵柄を視認できることを特徴とする真偽判定体、にある。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の要旨の第3は、絵柄を有する認証媒体に使用する真偽判定体であって、基材面上に略直線状であって透明な材質からなり、断面が矩形状ないし台形状の微小プリズムが当該微小プリズムの高さと同等程度幅の平行な空間部を置いて並行して配列してなる真偽判定体において、当該矩形状ないし台形状の微小プリズムの底面は前記基材面に接しており、微小プリズムの空間に面する上面および一の側面には光反射層または光散乱層が形成され、微小プリズムの他の側面および前記空間部の基材面には光反射層または光散乱層が形成されず、かつ上面の光反射層または光散乱層上に着色層または文字、絵柄が形成されていることにより、上面および前記一の側面から観察した場合は、当該着色層または文字、絵柄が観察され、前記他の側面から観察した場合は認証媒体の絵柄を視認できることを特徴とする真偽判定体、にある。
【0009】
上記において、微小プリズムの高さが、基材面から1μm〜200μmの範囲にされ、微小プリズム基底部の幅が1μm〜200μmの範囲にされている、ようにすれば真偽判定体として好適であり、微小プリズムの基材面からの高さが、上面部の幅の70%以上である、ようにすることもできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面を参照して説明することとする。
図1は、本発明の真偽判定体の例を示す外観斜視図、図2は、微小プリズムの断面を示す図、図3は、真偽判定体を観察する状態を示す図、図4、図5は、他の真偽判定体を観察する状態を示す図、である。
【0011】
図1のように、本発明の真偽判定体1は、基材2面上に断面が矩形状ないし台形状の微小プリズム3が並行して配列した構成からなっている。
基材2は、略平坦な面を有するもので、一般的にはプラスチックシート材料やフィルム基材が使用される。基材2のプリズム面側2aには絵柄等の印刷がされていても良いが、多くの場合、基材2の下面側2bは真偽判定の対象となる認証媒体に貼着されるので、透明にして認証媒体の絵柄等を観察できるようにすることが多い。
従って、図示していないが、基材2の下面側2bに接して粘着剤層、あるいは再湿性やホットメルト型の接着剤層が形成されていても良い。
【0012】
矩形状ないし台形状の微小プリズム3は、平面的には略直線状な形状であって透明または着色透明なプラスチック材質から構成されている。その柱状体の一の面は基材2a面に接し、上面および側面は空間に面するようにされている。
ここで、「透明」とは、矩形状ないし台形状の微小プリズム3を透して基材2a面またはその下の認証媒体を明瞭に視認できる程度な透明性をいう。
矩形状ないし台形状の微小プリズム3は、基材面上において平行な空間部6を置いて並行して配列している。平行な空間部6とは微小プリズム間のプリズムの無い領域であって、微小プリズムと並行して帯状の空間域を形成するようにされている。
【0013】
図2は、微小プリズム3の長さ方向に直交する断面を示す図で、図2(A)は、断面が四角形状の場合、図2(B)は、断面が台形状の場合、の拡大断面図である。図2(A)の場合、微小プリズム3は断面が四角形状であって、底面部3dが基材2に接し、上面部3bおよび側面部3a,3cは空間に面するようにされている。
微小プリズム3の断面は、図2(B)のように台形状であっても良く、この場合も、底面部3dが基材2に接し、上面部3bおよび側面部3a,3cは空間に面するようにされている。
【0014】
上記において、微小プリズム3の高さhは、上面部3bの幅w1の70%よりは大きい方が好ましい。微小プリズム3の高さhが小さ過ぎれば側面部の視覚効果が小さくなり過ぎるからである。ただし、断面台形状のプリズムの場合は比較的に成型しやすいが、断面矩形状の場合に、h>w1とするのは、型抜きする成型加工が実際上、困難になる。
また、空間部6の幅w2は、微小プリズム3の高さhと同等程度にするのが好ましい。上記のような0.7W1≦h≦w1の条件下において、真偽判定体と認証媒体を観察する場合に、微小プリズム3が有する外観が視覚に与える効果と認証媒体4の与える効果が1対1程度である場合に、視覚による視認状態の変化を顕著に生じさせるからである。
すなわち、一方が他方に比較して大き過ぎる場合にはどの方向から見ても顕著な視覚変化を生じ難い意味である。
【0015】
微小プリズム3の空間に面する上面には光反射層または光散乱層が形成されているようにできる(請求項1の発明)。
光散乱層はエンボス型の面をマット加工することにより得られ、光反射層はプリズム面に金属蒸着することにより得られる。光散乱層にした場合は、プリズムは白色マット状の物体に観察され、光反射層の場合は鏡面体に観察される。
微小プリズム3の空間に面する上面および一の側面には光反射層または光散乱層が形成され、微小プリズムの他の側面および前記空間部の基材面には光反射層または光散乱層が形成されていないようにできる(請求項2の発明)。
【0016】
また、微小プリズム3の上面および一の側面には光反射層または光散乱層が形成され、微小プリズムの他の側面および前記空間部の基材面には光反射層または光散乱層が形成されず、かつ上面の光反射層または光散乱層上に着色層または文字、絵柄が形成されているようにもできる(請求項3の発明)。
【0017】
微小プリズム3の基材2面からの高さhは、1μmから〜200μm程度が好ましい。1μm以下では光回折現象が生じるとともに精密なエンボス型の製造が困難であるからである。型の製造の容易さからは5μm以上がより好ましい。
また、200μm以上では認証媒体に貼着する媒体にしては厚みが厚くなり過ぎるからである。
したがって、微小プリズム3が矩形状の場合のw1(上面部幅),w2(空間部6の幅),w3(基底部幅)や台形状の場合のw2,w3も同程度の数値範囲となる。
図2において、矩形状または台形状の微小プリズム3の基材2面からの立ち上がり角度αは、90°から120°程度が好ましい。90°以下とする加工は実際上困難であり、120°以上とすると、上面部3bの幅を確保できなくなるからである。
【0018】
次に、本発明の真偽判定体を観察する状態について説明する。
図3は、真偽判定体の例を観察する状態を示す図、図4、図5は、他の真偽判定体を観察する状態を示す図、である。
図3の場合、断面四角形状の微小プリズム3の側面部3aと側面部3cに光反射層3mが形成されている。上面部3bとプリズム間の面6aは透明な未処理のままである。この状態で、真偽判定体1を矢印A方向から観察するとほぼ鏡面状態であって認証媒体4の絵柄は観察できない。矢印C方向から観察する場合も同様である。しかし、矢印Bの直上から観察すると、混ざり気のない認証媒体4の絵柄を観察できる。
光反射層3mに代えて光散乱層を形成した場合には、矢印A,C方向からはマット状の物体に見えるが、矢印B方向からは認証媒体4の絵柄を観察できる。
【0019】
図4の場合、断面矩形状の微小プリズム3の上面3bとプリズム間の面6aに着色層3hが形成されている。側面部3a,3cは未処理透明のままである。
この状態で、真偽判定体1を矢印AまたはC方向から観察すると認証媒体4の隠し絵柄を観察できるが、直上の矢印B方向から観察する場合は全面均一な着色状態に見える。
微小プリズム3の上面部3bとプリズム間の面6aのみにする均一な着色は、インキジェット印刷や蒸着源に対して真偽判定体1を直交して配置する着色蒸着法等により行うことができる。
【0020】
図5の場合、断面台形状の微小プリズム3の上面3bと側面3cが、一様に青色に着色3hされている。側面3aは未処理で透明なままである。認証媒体4の表面は一様な黄色にされている。
この状態で、真偽判定体を矢印C方向から観察すると微小プリズム3の青色が視認できるが、矢印A方向から観察すると認証媒体4の黄色を視認できる。
真偽判定体1を直上のB方向から観察すると青色と黄色がまだらになり、ほぼ緑色に観察できる。
微小プリズム3の上面部3bと側面部3cを着色するには、インキジェット印刷法や着色蒸着法等を採用できる。
【0021】
このように、本発明の真偽判定体1では、観察者が見る方向によって微小プリズム3または認証媒体4が有する姿態や模様が切り替わって見えるという特徴を有する。このような真偽判定体は以下に説明するように高度の製造技術を必要とし、容易には製造できない利点を有する。
したがって、このような真偽判定体を認証媒体に用いれば、偽造、模造を効果的に防止できると考えられる。
【0022】
次に、真偽判定体の製造方法について説明する。
図6は、微小プリズムの製造装置を示す図、図7は、真偽判定体に光反射層を形成する工程を示す図である。
真偽判定体のエンボス型製作以外の微小プリズムの製造工程は、図6の装置を用いて行うことができる。当該装置による製造工程は、型の凹部に対する樹脂の充填工程、接触工程、硬化工程、密着工程、剥離工程、より構成されている。
【0023】
図6において、10は矩形状ないし台形状の微小プリズムの凹部が形成されたロール凹版、11はそのロール凹版の凹部、12は電離放射線硬化性樹脂液をロール凹版10に塗工するための塗工装置、13は電離放射線硬化性樹脂液、2はシート基材、14は溶剤乾燥装置、15,16は硬化装置、17はロール凹版に当接してロール凹版10を押圧する押圧ロール、18は送りロール、である。
微小プリズムの形成は、ロール凹版に注型する方法で製造できるが、本発明の目的には、グラビアシリンダーに用いられる銅材料を切削したものをロール凹版として用いることができる。
【0024】
なお、図6において、矩形状ないし台形状の微小プリズムを形成するための凹部11がシート基材2の流れ方向に直交するように図示さているが、実際には、シート基材2の流れ方向に平行に形成されていても良いものであり、回転する型ロールの円周に沿って凹部11を形成する方が製作が容易と考えられる。
【0025】
微小プリズム製造工程における充填工程は、矩形状ないし台形状の微小プリズムの型が形成されたロール凹版10を回転させ、そのロール凹版10の少なくとも凹部11に電離放射線硬化性樹脂液13を充填する工程である。
接触工程は、充填工程で充填された電離放射線硬化性樹脂液13に対して、ロール凹版10の回転方向に同期して走行するシート基材2を接触させる工程である。
【0026】
硬化工程は、接触工程でシート基材2がロール凹版10に接触している間に、ロール凹版10とシート基材2間にある電離放射線硬化性樹脂液13に、硬化装置15からの電離放射線を照射して硬化させる工程である。
密着工程は、硬化工程で硬化する電離放射線硬化性樹脂液13とシート基材2とを密着させる工程である。なお、硬化工程と密着工程は通常同時に進行する。
剥離工程は密着工程で密着した電離放射線硬化性樹脂液13の半硬化物13aとシート基材2をロール凹版10から剥離する工程である。
【0027】
ロール凹版10は、円筒状の版材に所定形状の凹部11を設けたものである。
塗工装置12は、電離放射線硬化性樹脂液13をロール凹版10に塗工するための装置であって、ノズル塗工装置を用いることが多い。ノズル塗工装置は、所定寸法のノズルがTダイ状の長方形または線状の吐出口を有し、その吐出口の長手方向がロール凹版回転方向と直交する方向に設置されていて、ロール凹版の全幅のうち所定の幅部分にのみ樹脂液を吐出するようにされている。
【0028】
溶剤乾燥装置14は、樹脂の溶剤を揮発させるための装置である。溶剤乾燥装置14としては、温風や赤外線ヒータ等を用いることができる。この溶剤乾燥装置14を設けることにより、溶剤型の樹脂を用いることもでき、使用する樹脂の選択の幅を広げることができる。なお、無溶剤型の電離放射線硬化性樹脂液13を用いる場合には、溶剤乾燥装置14は不使用となる。
【0029】
硬化装置15は、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂液13を硬化させる装置である。なお、剥離工程後に脱離した電離放射線硬化性樹脂液の半硬化物13aを完全に硬化させるために、硬化装置16を設けてもよい。
ここで、電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線、電子線等が用いられる。硬化装置15,16として紫外線の場合には、超高圧水銀灯、ブラックライトランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ灯の光源を用いることができる。
【0030】
<微小プリズムの製造>
上記装置による矩形状ないし台形状の微小プリズムの製造方法は、まず、ロール凹版10の凹部11に、電離放射線硬化性樹脂液13を塗工装置12により充填し、シート基材2をロール凹版10の凹部11に充填させた電離放射線硬化性樹脂液13に接するように接触させる。
電離放射線硬化性樹脂液13を凹部11に充填する方法としては、ロール凹版10の表面に予め電離放射線硬化性樹脂液13を所定量塗工しておいて、基材シート2をロール凹版10面に供給したときに、押圧ロール17の押圧により、基材シートを介して、塗工されている電離放射線硬化性樹脂液13を凹部11内に配分充填させる。
【0031】
この場合に、溶剤タイプの硬化性樹脂が使用でき、シート基材2に塗工された電離放射線硬化性樹脂液13は、流動性をある程度制御するために、その樹脂液の溶剤を希釈するために使用した溶剤などを溶剤乾燥装置14により乾燥除去し、さらに硬化装置15により溶剤を乾燥した樹脂液を半硬化させる。
【0032】
シート基材2がロール凹版10に接している間に、硬化装置15により電離放射線硬化性樹脂液13を硬化させる。硬化装置は必要により、ロール凹版の回転方向に沿って複数個設けることができる。多段による硬化により硬化物の歪みやシート基材2のカール等を低減させることができる。
また、ロール凹版10を石英、ガラス等の電離放射線の透過性がよい材質により形成して、ロール凹版10の内部側から照射することもできる。
【0033】
硬化装置15により、ロール凹版10の凹部11内にある電離放射線硬化性樹脂液13をシート基材2に密着させる。このとき、硬化度合は、少なくとも樹脂の流動性を失わせ、かつ、シート基材2との密着性を生じさせる程度であればよい。
硬化装置15を通過した後、シート基材2をロール凹版10から剥離する。
これにより、半硬化した電離放射線硬化性樹脂液13aがシート基材2と一体になって、凹部11から脱離され、プリズム化された表面を有する真偽判定体シートが得られる。
【0034】
<光反射層の形成>
矩形状ないし台形状の微小プリズムの一または二の面に対する光反射層の形成は、真空蒸着、スパッタリング法、イオンプレーティング法、などにより形成することができる。
図7は、真偽判定体に光反射層を形成する工程を示し、真空蒸着による方法を示している。図7(A)のように蒸着源7の蒸着金属の飛散方向に対して、真偽判定体1を45度に傾斜して蒸着することにより、矩形状ないし台形状の微小プリズム3の上面部と側面部に対してのみ蒸着して光反射層3mを形成できる。
特定の顔料を使用する着色蒸着の場合も同様である。
【0035】
図7(B)のように蒸着源7の蒸着金属の飛散方向に対して、真偽判定体1を直交させて蒸着することにより、矩形状ないし台形状の微小プリズム3の上面部3bと基材2の露出面に対してのみ蒸着して光反射層3mを形成できる。
光反射層の形成には、アルミニュウム、その他の後述する反射性金属材料を蒸着材料として使用することができる。
光反射層3mを形成した後に、1の面の光反射層を除去するためには、当該除去面に水溶性樹脂をあらかじめ塗工しておいてから蒸着し、蒸着後に水処理する加工(いわゆるシーライト加工)を施すことにより除去することができる。
【0036】
<光散乱層の形成>
光散乱層は拡散材料を含む材料を塗工することによっても行われるが、微小プリズムの片側面にのみこのような材料を塗工することが困難な場合は、前記のようにプリズム成型時のロール凹版10の凹部11の一面のみをマット状の加工面として、プリズム成型と同時に、光散乱層を形成するようにする。
【0037】
<材質に関する実施形態>
(1)基材
基材としては、高分子フィルム、紙、金属、布地等、特に制約はないが、透明性が求められる場合は高分子フィルムが加工適性の点から好ましい。
高分子フィルムの素材のプラスチックとしてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂等が使用できる。また、液晶材料を使用することもできる。
この基材の厚みは、加工のしやすさ等の観点から12〜200μm程度の範囲のものが好ましい。
【0038】
基材は、透明であっても不透明であっても良いが、透明な基材を使用した場合は、絵柄、文字などの情報が表示されている認証媒体と組合せし、透過時にその情報を視認することができる。基材が不透明である場合は、基材下の認証媒体の絵柄等を視認することはできないが、基材面上に絵柄、文字などの情報を印刷等の方法で付与することにより、これらの情報を視認することができる。
【0039】
(2)矩形状ないし台形状の微小プリズム体
微小プリズム体の素材は特に制約はないが、加工適性の点から樹脂材料が好ましい。また、プリズム特性から透明または着色透明であることが求められる。
上述した紫外線硬化樹脂でプリズム形状を形成する製造方法では、紫外線硬化型の電離放射線硬化性樹脂液が好ましく使用される。
このような樹脂液の具体例としては、分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマーおよび/または単量体を適宜混合した組成物を用いることができる。
【0040】
前記プレポリマー、オリゴマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多値アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等があげられる。
【0041】
また、単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブチル、等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシメチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル等の不飽和の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、ビニルピロリドン、および/または分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等があげられる。
【0042】
特に、紫外線によって硬化させる場合には、前記電離放射線硬化性樹脂の組成物に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルメウラムモノサルファイド、チオキサントン類、及び/又は光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。また、プリズムの微細の凹部11を持ったロール凹版10の形状を忠実に再現するためには、粘度は5000cps以下、特に1000cps以下にすることが好ましい。なお、プリズムを着色透明にする場合は硬化を阻害しない染料を添加しても良い。
【0043】
(3)光反射層
光反射層の形成に使用する材料は、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、錫(Sn)、セレン(Se)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、テルル(Te)、銅(Cu)、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)などの単体金属、もしくはそれらの合金を使用することができる。
【0044】
【実施例】
図2、図4、図5、図6、図7を参照して本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
<エンボスロール凹版の製造>
円周500mmのグラビアロールを使用して、四角形状微小プリズムを成型するエンボス型を有するエンボスロール凹版を製作した。
まず、真円にしたグラビア用の鉄芯ロールに銀メッキを薄層に施した後、バラード銅層を厚み、200μmにメッキした。この銅層表面を平滑に研磨した後、ダイヤモンドカッターを用いて、凹部11をロールを回転させながら、円周に沿うように連続状に刻設した。
凹部11は、微小プリズムの上面となる部分の幅w1が78μm、基底部となる部分の幅w3が80μm、プリズム高さ(凹溝深さ)hを78μmとした略四角形状のものとした。また、1つの凹部と隣接する凹部との空間部6の幅w2も80μmとした。
最後に、凹部を含む全面にクロムメッキを施した後、表面研磨してエンボスロール凹版10を完成した。
【0045】
<真偽判定体の製作>
上記で準備したエンボスロール凹版を使用して、真偽判定体を製作した。
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)基材2上に、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化性樹脂液を硬化させる図6の製造装置によって、図2(A)のように、高さhが78μm、上面部幅w1が78μm、基底部幅w3が80μmの断面四角形状の微小プリズム3が並行して配列するプリズムシートを形成した。
【0046】
この断面四角形状微小プリズムシートの上面部3bと微小プリズム3間の面6aに対して、図7(B)に図示する方法で真偽判定体1を蒸着金属の飛散方向に対して直交するように配置して金属アルミニュウムを蒸着し、光反射層3mを形成した。
この真偽判定体1を、絵柄を有する認証媒体4に貼着してから、図4に示すように、直上のB方向から観察すると全面が鏡面体として観察されたが、A方向またはC方向から観察すると認証媒体4の絵柄を視認することができた。
【0047】
(実施例2)
<エンボスロール凹版の製造>
実施例1と、ほぼ同一の条件でエンボスロール凹版を製作したが、凹部11の形状は逆台形状となるようにした。
円周500mmのグラビアロールを使用して、バラード銅層を厚み、200μmにメッキした。この銅層表面を平滑に研磨した後、ダイヤモンドカッターを用いて、凹部11をロールを回転させながら、円周に沿うように連続状に刻設した。凹部は、微小プリズムの上面となる部分の幅w1が50μm、基底部となる部分の幅w3が70μm、プリズム高さ(凹溝深さ)hを60μmとし、成型後の形状が台形状となるようにした。また、1つの凹部と隣接する凹部との空間域部の幅w2を70μmとした。
最後に、凹部を含む全面にクロムメッキを施した後、表面研磨してエンボスロール凹版10を完成した。
【0048】
<真偽判定体の製作>
上記で準備したエンボスロール凹版を使用して、真偽判定体を製作した。
厚み100μmのPETフィルム基材2上に、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化性樹脂液を硬化させる図6の製造装置を使用して、図2(B)のように、高さhが60μm、上面部幅w1が50μm、基底部幅w3が70μmの断面台形状の微小プリズム3を形成した。
【0049】
上記により製作した微小プリズム3を、図7(A)のように蒸着金属の飛散方向に対して45度の傾斜をつけて配置し、アルミニュウム(Al)金属を蒸着することにより、断面台形状の微小プリズム3の上面と側面にのみ光反射層3mを形成した真偽判定体1が得られた(図5)。
この真偽判定体1を、絵柄を有する認証媒体4に貼着してから、図5に示すA方向から観察すると認証媒体4の絵柄を視認することができ、C方向から観察すると鏡面として観察された。また、直上のB方向から観察すると両者の中間の状態であった。
【0050】
(実施例3)
実施例2で製作した真偽判定体1に対して、断面台形状の微小プリズム3の上面のみに対して、さらにシルクスクリーン印刷法により一様な青色の印刷3hを行った。
この真偽判定体1を、絵柄を有する認証媒体4に貼着してから、図5に示すA方向から観察すると認証媒体4の絵柄を視認することができたが、直上のB方向またはC方向から観察すると青色または鏡面が目立ち認証媒体4の絵柄を十分には視認できなかった。
【0051】
【発明の効果】
以上、詳述のように本発明の真偽判定体によれば以下の効果が得られる。
本発明の真偽判定体は、目視方向によって真偽判定体または認証媒体の視認状態が顕著に切り替わりするので、そのような状態変化を伴わない物品と対比して、直ちに真偽を判定することができる。
また、真偽判定体の貼着された認証媒体等は複写機で正常に複写することができず、偽造、模造を防止できる。
本発明の真偽判定体の製造は比較的に困難であることから、入手し難く、その点においても偽造、模造を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の真偽判定体の例を示す外観斜視図である。
【図2】 微小プリズムの断面を示す図である。
【図3】 真偽判定体の例を観察する状態を示す図である。
【図4】 他の真偽判定体を観察する状態を示す図である。
【図5】 他の真偽判定体を観察する状態を示す図である。
【図6】 微小プリズムの製造装置を示す図である。
【図7】 真偽判定体光反射層を形成する工程を示す図である。
【符号の説明】
1 真偽判定体
2 基材、シート基材
3 微小プリズム
3m 光反射層
3h 着色層
4 認証媒体
6 空間部
7 蒸着源
10 ロール凹版
11 凹部
12 塗工装置
13 電離放射線硬化性樹脂液
14 溶剤乾燥装置
15,16 硬化装置
17 押圧ロール
18 送りロール

Claims (5)

  1. 絵柄を有する認証媒体に使用する真偽判定体であって、基材面上に略直線状であって透明な材質からなり、断面が矩形状ないし台形状の微小プリズムが当該微小プリズムの高さと同等程度幅の平行な空間部を置いて並行して配列してなる真偽判定体において、当該矩形状ないし台形状の微小プリズムの底面は前記基材面に接しており、微小プリズムの空間に面する上面および前記空間部の基材面には光反射層または光散乱層が形成され、微小プリズムの側面には光反射層または光散乱層が形成されていないことにより、上面から観察した場合は、全面が鏡面体として観察され、側面から観察した場合は認証媒体の絵柄を視認できることを特徴とする真偽判定体。
  2. 絵柄を有する認証媒体に使用する真偽判定体であって、基材面上に略直線状であって透明な材質からなり、断面が矩形状ないし台形状の微小プリズムが当該微小プリズムの高さと同等程度幅の平行な空間部を置いて並行して配列してなる真偽判定体において、当該矩形状ないし台形状の微小プリズムの底面は前記基材面に接しており、微小プリズムの空間に面する上面および一の側面には光反射層または光散乱層が形成され、微小プリズムの他の側面および前記空間部の基材面には光反射層または光散乱層が形成されていないことにより、前記一の側面から観察した場合は、全面が鏡面体として観察され、前記他の側面から観察した場合は認証媒体の絵柄を視認できることを特徴とする真偽判定体。
  3. 絵柄を有する認証媒体に使用する真偽判定体であって、基材面上に略直線状であって透明な材質からなり、断面が矩形状ないし台形状の微小プリズムが当該微小プリズムの高さと同等程度幅の平行な空間部を置いて並行して配列してなる真偽判定体において、当該矩形状ないし台形状の微小プリズムの底面は前記基材面に接しており、微小プリズムの空間に面する上面および一の側面には光反射層または光散乱層が形成され、微小プリズムの他の側面および前記空間部の基材面には光反射層または光散乱層が形成されず、かつ上面の光反射層または光散乱層上に着色層または文字、絵柄が形成されていることにより、上面および前記一の側面から観察した場合は、当該着色層または文字、絵柄が観察され、前記他の側面から観察した場合は認証媒体の絵柄を視認できることを特徴とする真偽判定体。
  4. 微小プリズムの高さが、基材面から1μm〜200μmの範囲にされ、微小プリズム基底部の幅が1μm〜200μmの範囲にされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の真偽判定体。
  5. 微小プリズムの基材面からの高さが、上面部の幅の70%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1の請求項に記載の真偽判定体。
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